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特許7565941ポリアミド並びに対応するポリマー組成物及び物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ポリアミド並びに対応するポリマー組成物及び物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/36 20060101AFI20241004BHJP
   C08L 77/10 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08G69/36
C08L77/10
C08K7/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021557804
(86)(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020059209
(87)【国際公開番号】W WO2020201327
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-01
(31)【優先権主張番号】62/828,809
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19198868.2
(32)【優先日】2019-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フロレス, ジョエル
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭47-025155(JP,B1)
【文献】英国特許出願公告第01202659(GB,A)
【文献】特公昭48-017210(JP,B1)
【文献】特公昭48-000289(JP,B1)
【文献】特表2015-516560(JP,A)
【文献】特表2016-521777(JP,A)
【文献】特開2017-129660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00-69/50
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位X及びYを含み、且つ以下の式(I)で表されるポリアミド(PA):
(式中、
- n及びnは、それぞれ、各繰り返し単位X及びYのモルパーセント(モル%)であり;
- 10モル%≦n≦90モル%であり;
≦90モル%であり;
- n+n=100モル%であり;ここで、
- Rは、C~C15アルキレン及びC~C30アリーレンからなる群から選択され;
- Rは、C~C20アルキレン、フェニレン、インダニレン、及びナフチレンからなる群から選択されるが;
但し、
- 繰り返し単位Yがp-キシリレンジアミンとC12ジカルボン酸との縮合から形成される場合には:
- 30モル%≦n≦90モル%であり;
≦70モル%であり;
- n+n 100モル%であることを条件とし;
- 繰り返し単位Yがテレフタル酸とジアミンとの縮合から形成される場合には、Rは、C~Cアルキレン、C11~C15アルキレン、及びC~C30アリーレンからなる群から選択されることを条件とする)。
【請求項2】
p-キシリレンジアミンとC12ジカルボン酸との縮合から形成される繰り返し単位を含まない、請求項1に記載のポリアミド(PA)。
【請求項3】
繰り返し単位Yが、ジカルボン酸成分とジアミン成分との縮合から形成され、
- 前記ジカルボン酸成分が、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され;
- 前記ジアミン成分が、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、HN-(CH-O-(CH-O(CH-NH、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項1又は2に記載のポリアミド(PA)。
【請求項4】
繰り返し単位Yが、ジカルボン酸成分とジアミン成分との縮合から形成され、
- 前記ジカルボン酸成分が、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され;
- 前記ジアミン成分が、ヘキサメチレンジアミン、1,12-ジアミノドデカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される、
請求項1~3のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項5】
50℃~190℃のTgを有するアモルファスポリアミドである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項6】
50℃~190℃のTgを有する半結晶性ポリアミドである、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項7】
170℃~400℃の溶融温度を有する、請求項1~4及び6のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項8】
ポリマー組成物(C)であって、
- 請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)、
- 補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分
を含む、ポリマー組成物(C)。
【請求項9】
平均長さが3mm~50mmの補強繊維を含む、請求項8に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項10】
前記組成物(C)の総重量を基準として10重量%~60重量%のガラス繊維を含む、請求項8又は9に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項11】
40重量%~70重量%のポリアミド(PA)を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)。
【請求項12】
携帯用電子デバイス物品又は構成部品、複合材料又は3Dプリント物品である、請求項8~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物(C)を含む物品。
【請求項13】
携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールからなる群から選択されるモバイル電子デバイスの物品又は構成部品である、請求項12に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、特許出願である米国で2019年4月3日に出願されたNr62/828809号及び欧州で2019年9月23日に出願されたNr19198868.2号に基づく優先権を主張し、それぞれの全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、繰り返し単位X、Y、及びZを含み、且つ以下の式(I)で表されるポリアミド(PA):
(式中、
- n、n及びnは、それぞれ、各繰り返し単位X、Y、及びZのモルパーセント(モル%)であり;
- 10モル%≦n≦90モル%であり;
- 0モル%≦n≦90モル%であり;
- 0モル%≦n≦90モル%であり;
- n+n+n≦100モル%であり;
- nとnのうちの少なくとも1つは0モル%より大きく;
ここで、
- Rは、水素、アルキル、又はアリールからなる群から選択され、
- R’は、各位置において、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- iは0~10の整数であり;
- Rは、結合、並びに1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ、及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C15アルキル及びC~C30アリールからなる群から選択され;
- Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C20アルキル、フェニル、インダニル、及びナフチルからなる群から選択され;
- Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換された直鎖又は分岐C~C14アルキルからなる群から選択され;
- R~RのそれぞれにおけるMは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg、及びCaからなる群から独立して選択されるが;
但し、
- 繰り返し単位Yがp-キシリレンジアミンとC12ジカルボン酸との縮合から形成される場合には:
- 30モル%≦n≦90モル%であり;
- 0モル%≦n≦70モル%であり;
- 0モル%≦n≦70モル%であり;
- n+n+n≦100モル%であることを条件とし;
- 繰り返し単位Yがテレフタル酸とジアミンとの縮合から形成される場合には、Rは、結合、並びに1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ、及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~Cアルキル、C11~C15アルキル、及びC~C30アリールからなる群から選択されることを条件とする)
に関する。
【0003】
本発明は、そのようなポリアミドを含むポリマー組成物にも関する。
【0004】
本発明は、そのようなポリマー及びポリマー組成物を含む物品にも関する。
【背景技術】
【0005】
脂環式ポリアミドは、ガラス転移温度(「Tg」)の増加した可変性のため、それらの半芳香族性のものと比較して非常に興味深い。しかしながら、例えば、1,4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(1,4-AMCC)の重縮合から形成されるポリアミドホモポリマーは、非常に高い融解温度(例えば370℃)を有する場合がある。そのようなポリアミドは、少なくとも一部には溶融処理温度及び保持時間におけるポリマーの分解に起因して、望まれる溶融処理を行うことができない。
【0006】
前述の問題に対処するための1つのアプローチでは、1,4-AMCCは、Tg及びTmの可変性を提供することができるカプロラクタム(PA 1,4-AMCC/6)と共重合される。例えば、コポリマーのTmは290℃~300℃とすることができる。しかしながら、これらのコポリアミドの同形性に起因して、コポリアミド溶融物の溶融加工性及び半結晶性を維持しながらもTgを120℃よりもかなり高くすることは、フレキシブルなPA6繰り返し単位のため通常不可能である。また、同形性に起因して、1,4-AMCCとカプロラクタムのみの反応からアモルファス且つ高Tgのコポリアミドを合成することは不可能である。繰り返し単位を含み、同形性を示さず、溶融加工可能であり、且つ改善されたTgを有する、コポリアミドを開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、繰り返し単位X、Y、及びZを含み、且つ以下の式(I)で表されるポリアミド(PA):
(式中、
- n、n、及びnは、それぞれ、各繰り返し単位X、Y、及びZのモルパーセント(モル%)であり;
- 10モル%≦n≦90モル%であり;
- 0モル%≦n≦90モル%であり;
- 0モル%≦n≦90モル%であり;
- n+n+n≦100モル%であり;
- nとnのうちの少なくとも1つは0モル%より大きく;
ここで、
- Rは、水素、アルキル、又はアリールからなる群から選択され、
- R’は、各位置において、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- iは0~10の整数であり;
- Rは、結合、並びに1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C15アルキル及びC~C30アリールからなる群から選択され;
- Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C20アルキル、フェニル、インダニル、及びナフチルからなる群から選択され;
- Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換された直鎖又は分岐C~C14アルキルからなる群から選択され;
- R~RのそれぞれにおけるMは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg、及びCaからなる群から独立して選択されるが;
但し、
- 繰り返し単位Yがp-キシリレンジアミンとC12ジカルボン酸との縮合から形成される場合には:
- 30モル%≦n≦90モル%であり;
- 0モル%≦n≦70モル%であり;
- 0モル%≦n≦70モル%であり;
- n+n+n≦100モル%であることを条件とし;
- 繰り返し単位Yがテレフタル酸とジアミンとの縮合から形成される場合には、Rは、結合、並びに1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~Cアルキル、C11~C15アルキル、及びC~C30アリールからなる群から選択されることを条件とする)
に関する。
【0008】
いくつかの実施形態では、繰り返し単位Xは、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(1,4-AMCC)の縮合から形成される。
【0009】
一実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、50℃~190℃、好ましくは130℃~170℃のTgを含むアモルファスポリアミドである。
【0010】
一実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、50℃~190℃、好ましくは60℃~170℃のTgを含む半結晶性ポリアミドである。
【0011】
一実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、170℃~400℃の溶融温度Tmを含む。
【0012】
本発明は、また、本発明のポリアミドを含む又はこのポリアミド(PA)を組み入れた物品に関する。物品は、例えば携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールからなる群の中で選択され得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1,4-脂環式アミノ酸(以降で詳細に説明する)の縮合に由来する繰り返し単位(RPA1)を10モルパーセント(モル%)~90モル%含むポリアミド(PA)、並びにこのポリアミドと任意選択的な1種以上の添加剤とを含むポリマー組成物(C)が本明細書に開示される。本明細書で使用される場合、モル%は、別途明記しない限り、ポリアミド(PA)中の繰り返し単位の全モル数に対するものである。本発明のポリアミド(PA)は、改善されたガラス転移温度(「Tg」)を有し、半結晶性ポリアミド(PA)については望ましい溶融温度(「Tm」)を有する。
【0014】
本出願において:
- いずれの記載も、特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つそれらと交換可能であり、
- 要素若しくは成分が、列挙された要素若しくは成分のリストに含まれる及び/又はリストから選択されると言われる場合、本出願で明示的に企図される関連実施形態では、要素若しくは成分はまた、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであることができるか、又は明示的にリストアップされた要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からまた選択することができ;要素若しくは成分のリストに列挙されたいかなる要素若しくは成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり;
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数、並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0015】
- 表現「少なくとも」は、本明細書では、「~に等しいか又はそれを超える」を意味することを意図する。例えば、本明細書では表現「少なくとも10モル%の繰り返し単位X」は、ポリアミド(PA)が10モル%の繰り返し単位X、又は10モル%より多い繰り返し単位Xを含み得ることを意味する。したがって、表現「少なくとも」は、本発明との関連で数学的記号「≧」に対応する。
【0016】
- 表現「未満」は、本発明との関連で数学的記号「<」に対応する。例えば、表現「90モル%未満の繰り返し単位X」は、本明細書では、ポリアミドが厳密に90モル%未満の繰り返し単位Xを含み、したがって繰り返し単位Xと少なくとも1つの別の繰り返し単位X及び/又はZとから製造されるコポリアミドとみなされることを意味する。
【0017】
- 全ての温度は摂氏度(℃)単位で与えられる。
【0018】
- 特に具体的に限定しない限り、用語「アルキル」、並びに「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語は、本明細書で用いる場合、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖及び環状部分を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル、及びシクロプロピルである。特に具体的に記述しない限り、各アルキル及びアリール基は、無置換であるか、又はハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ若しくはC~C15アリールから選択されるがそれらに限定されない1個以上の置換基で置換されていてもよい。ただし、置換基が立体的に適合性を有し、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0019】
- 用語「アリール」は、フェニル、インダニル、又はナフチル基を意味する。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含んでいてもよく、この場合、「アルキルアリール」と呼ばれることもあり;例えば芳香族基と2つのC~C基(例えばメチル又はエチル)から構成され得る。また、アリール基は、1つ以上のヘテロ原子、例えばN、O、又はSも含むことができ、この場合、これは「ヘテロアリール」基と呼ばれることもあり;これらのヘテロ芳香環は、他の芳香族系と縮合していてもよい。そのようなヘテロ芳香環には、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が含まれるが、それらに限定されない。アリール又はヘテロアリール置換基は、無置換であっても、又はハロゲン、ヒドロキシ、C~Cアルコキシ、スルホ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ若しくはC~C15アリールから選択されるがそれらに限定されない1個以上の置換基で置換されていてもよい。但し、置換基が立体的に適合性を有し、且つ化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0020】
- 表現「その誘導体」は、表現「ジカルボン酸」と組み合わせて用いられる場合、重縮合条件で反応を受けてアミド結合を生成するいずれの誘導体も意味することを意図する。アミド形成誘導体の例としては、そのようなカルボン酸の、モノ-若しくはジ-メチル、エチル、又はプロピルエステルなどの、モノ-又はジ-アルキルエステル;そのモノ-又はジ-アリールエステル;その一酸又は二酸ハロゲン化物;そのカルボン酸無水物及びその一酸又は二酸アミド、モノ-又はジ-カルボキシレート塩が挙げられる。
【0021】
ポリアミド(PA)
本発明は、繰り返し単位X、Y、及びZを含み、且つ以下の式(I)で表されるポリアミド(PA):
(式中、
- n、n、及びnは、それぞれ、各繰り返し単位X、Y、及びZのモルパーセント(モル%)であり;
- 10mol%≦n≦90モル%であり;
- 0mol%≦n≦90モル%であり;
- 0mol%≦n≦90モル%であり;
- n+n+n≦100モル%であり;
- nとnのうちの少なくとも1つは0モル%より大きく;
ここで、
- Rは、水素、アルキル、又はアリールからなる群から選択され、
- R’は、各位置において、アルキル、アリール、アルカリ又はアルカリ土類金属スルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、及び第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され;
- iは0~10の整数であり;
- Rは、結合、並びに1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C15アルキル及びC~C30アリールからなる群から選択され;
- Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~C20アルキル、フェニル、インダニル、及びナフチルからなる群から選択され;
- Rは、1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換された直鎖又は分岐C~C14アルキルからなる群から選択され;
- R~RのそれぞれにおけるMは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg、及びCaからなる群から独立して選択されるが;
但し、
- 繰り返し単位Yがp-キシリレンジアミンとC12ジカルボン酸、好ましくはC12脂肪族ジカルボン酸、最も好ましくは1,12-ジアミノドデカンとの縮合から形成される場合には:
- 30モル%≦n≦90モル%であり;
- 0モル%≦n≦70モル%であり;
- 0モル%≦n≦70モル%であり;
- n+n+n≦100モル%であることを条件とし;
- 繰り返し単位Yがテレフタル酸とジアミンとの縮合から形成される場合には、Rは、結合、並びに1つ以上のヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を任意選択的に含み、且つハロゲン、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SOM)、C~Cアルコキシ、C~Cアルキルチオ、C~Cアシル、ホルミル、シアノ、C~C15アリールオキシ、及びC~C15アリールからなる群から選択される1個以上の置換基で任意選択的に置換されたC~Cアルキル、C11~C15アルキル、及びC~C30アリールからなる群から選択されることを条件とする)
に関する。
【0022】
好ましくは、R及びR’は、各位置において水素である(例えば、繰り返し単位Xは、1,4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸(1,4-AMCC)の縮合から形成される)。更に、明確にするために記載しておくと、式(1)では、左、中央、及び右の繰り返し単位は、それぞれ繰り返し単位X、Y、及びZである。
【0023】
式(1)に関し、n+n+n≦100モル%である。当然、いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、繰り返し単位X、Y、及びZとは異なる追加の繰り返し単位を含み得る。いくつかのそのような実施形態では、n+n+nは、少なくとも50モル%、少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも98モル%、少なくとも99モル%、少なくとも99.5モル%、又は少なくとも99.9モル%である。或いは、いくつかの実施形態では、n+n+n=100モル%である。本発明のポリアミド(PA)は、繰り返し単位XとYとから、繰り返し単位XとZとから、又は繰り返し単位XとYとZとから構成され得る。繰り返し単位X、Y、及びZは、ブロックで、交互に、又はランダムに配置される。
【0024】
一実施形態によれば、nは10モル%~90モル%である。いくつかのそのような実施形態では、nは、少なくとも15モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、又は少なくとも30モル%である。それに加えて又はその代わりに、いくつかの実施形態では、nは、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下、65モル%以下、60モル%以下、55モル%以下、又は50モル%以下である。いくつかの実施形態では、nは、10モル%~85モル%、10モル%~80モル%、10モル%~75モル%、10モル%~70モル%、10モル%~65モル%、10モル%~60モル%、10モル%~55モル%、又は10モル%~50モル%である。いくつかの実施形態では、nは、30モル%~90モル%、30モル%~85モル%、30モル%~80モル%、30モル%~75モル%、又は30モル%~70モル%である。
【0025】
いくつかの実施形態では、nは10モル%~90モル%であり、n+nは、合計で、10モル%~90モル%、好ましくは20モル%~90モル%、より好ましくは30モル%~90モル%、更に好ましくは40モル%~90モル%、最も好ましくは50モル%~70モル%である。当然、n及びnのうちの少なくとも1つはゼロよりも大きいが、いくつかの実施形態ではnとnの両方がゼロよりも大きい。
【0026】
本発明のポリアミド(PA)は、1,000g/モル~40,000g/モル、例えば2,000g/モル~35,000g/モル、4,000~30,000g/モル、又は5,000g/モル~20,000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有し得る。数平均分子量Mnは、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0027】
本開示のポリアミド(PA)では、繰り返し単位Yは脂肪族であっても又は芳香族であってもよい。本発明の目的のためには、表現「芳香族繰り返し単位」は、少なくとも1つの芳香族基を含む任意の繰り返し単位を意味することが意図される。芳香族繰り返し単位は、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの縮合、又は少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとの縮合によって形成され得る。本発明の目的のためには、ジカルボン酸又はジアミンは、それが1つ以上の芳香族基を含む場合に「芳香族」とみなされる。本開示のポリアミド(PA)において、繰り返し単位Zは脂肪族である。
【0028】
いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、p-キシリレンジアミン(PXDA)と、C12ジカルボン酸、好ましくはC12脂肪族ジカルボン酸、最も好ましくはドデカン二酸との縮合から形成される繰り返し単位を含まない。本明細書で使用される、繰り返し単位を「含まない」とは、ポリアミド(PA)が20モル%未満、好ましくは10モル%未満、より好ましくは5モル%未満、更に好ましくは2モル%未満、好ましくは1モル%未満、より好ましくは0.5モル%未満、最も好ましくは0.1モル%未満の指定された繰り返し単位(例えばPXDAとC12ジカルボン酸との縮合から形成される繰り返し単位)を含むことを意味する。或いは、繰り返し単位YがPXDAとC12ジカルボン酸(例えばドデカン二酸)との縮合から形成されるいくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、少なくとも30モル%の繰り返し単位Y、例えば30モル%~90モル%、30モル%~85モル%、30モル%~80モル%、30モル%~75モル%、又は30モル%~70モル%の繰り返し単位Yを含む。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、C10脂肪族ジアミン(例えば1,10-ジアミノデカン)とテレフタル酸との縮合から形成される繰り返し単位を含まない。
【0029】
ポリアミド(PA)の一実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、1,4-AMCC(繰り返し単位Xを形成する)と、以下からなる群から選択される成分のうちの少なくとも1つとの縮合から形成される:
- 少なくとも1つのジカルボン酸成分(本明細書では二酸とも呼ばれる)又はその誘導体、及び少なくとも1つのジアミン成分(繰り返し単位Yを形成する)、
- アミノカルボン酸骨格に7個以上の炭素原子を有する少なくとも1種のアミノカルボン酸(繰り返し単位Zを形成する)、及び
- ラクタム環に7個以上の炭素原子を有する少なくとも1種のラクタム(繰り返し単位Zを形成する)。
【0030】
この実施形態によれば、ジカルボン酸成分は、少なくとも2個の酸性部位-COOHを含む多様な脂肪族又は芳香族ジカルボン酸成分の中で選択することができる。この実施形態によれば、ジアミン成分は、少なくとも2個のアミン部分-NHを含む多様な脂肪族又は芳香族成分の中で選択することができる。
【0031】
脂肪族ジカルボン酸成分の非限定的な例は、とりわけ、シュウ酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH-COOH)、コハク酸[HOOC-(CH-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH-COOH]、2,2-ジメチルグルタル酸[HOOC-C(CH-(CH-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH)-CH-C(CH-CH-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH10-COOH]、トリデカン二酸[HOOC-(CH11-COOH]、テトラデカン二酸[HOOC-(CH12-COOH]、ペンタデカン二酸[HOOC-(CH13-COOH]、ヘキサデカン二酸[HOOC-(CH14-COOH]、オクタデカン二酸[HOOC-(CH16-COOH]である。このカテゴリーに1,4-シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)などの脂環式ジカルボン酸も含まれる。
【0032】
芳香族ジカルボン酸成分の非限定的な例は、とりわけ、イソフタル酸(IA)、テレフタル酸(TA)などのフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’-ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0033】
芳香族ジアミン成分の非限定的な例は、とりわけ、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)、p-キシリレンジアミン(PXDA)及びm-キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0034】
脂肪族ジアミン成分の非限定的な例は、とりわけ、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン(すなわち1,6-ジアミノヘキサン)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,13-ジアミノトリデカン、2,5-ジアミノ(diamono)テトラヒドロフラン及びN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンである。このカテゴリーには、イソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミンも含まれる。
【0035】
脂肪族ジアミン成分は、ポリエーテルジアミンの群の中で選択することもできる。ポリエーテルジアミンは、エトキシレート化(EO)主鎖を及び/又はプロポキシレート化(PO)主鎖をベースとすることができ、それらは、エチレンオキシド末端、プロピレンオキシド末端又はブチレンオキシド末端ジアミンであることができる。そのようなポリエーテルジアミンは、例えば、商品名Jeffamine(登録商標)及びElastamine(登録商標)(Hunstman)で販売されている。
【0036】
アミノカルボン酸は、アミノカルボン酸骨格に少なくとも7個の炭素原子、例えばアミノカルボン酸骨格に7~15個の炭素原子又は7~13個の炭素原子を有する。一実施形態によれば、アミノカルボン酸は、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸からなる群から選択される。ラクタムは、ラクタム環に少なくとも7個の炭素原子、例えばラクタム環に7~15個の炭素原子又は7~13個の炭素原子を有する。一実施形態によれば、ラクタムはラウロラクタムである。
【0037】
一実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、10モル%~90モル%の繰り返し単位Xと、
- 繰り返し単位Yと
を含み、繰り返し単位Yは:
- アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択されるジカルボン酸成分と、
- 1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン(diamonopentane)、2-メチル-1,5ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン(diaminooctoane)、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、HN-(CH-O-(CH-O(CH-NH、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択されるジアミン成分と、
の縮合から形成されるが、但し:
- ジアミン成分がp-キシリレンジアミンであり、且つジカルボン酸成分がドデカン二酸である場合には:
- 30モル%≦n≦90モル%;
- 0モル%≦n≦70モル%;
- 0モル%≦n≦70モル%;
- n+n+n≦100モル%であり;
- ジカルボン酸成分がテレフタル酸の場合には、ジアミン成分は、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,5ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、1,12-ジアミノドデカン、HN-(CH-O-(CH-O(CH-NH、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0038】
いくつかのそのような実施形態では、ジカルボン酸成分は、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物、好ましくはアジピン酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され;ジアミン成分は、ヘキサメチレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,10-ジアミノデカン、1,12-ジアミノドデカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。ただし、ジカルボン酸成分がテレフタル酸である場合には、ジアミン成分は、ヘキサメチレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,12-ジアミノドデカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。さらなるそのような実施形態では、ジカルボン酸成分は、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、ジアミン成分は、ヘキサメチレンジアミン、1,12-ジアミノドデカン、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
別の実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、10モル%~90モル%の繰り返し単位Xと、
- 少なくとも1種のラクタム又はアミノカルボン酸の縮合から形成される繰り返し単位Zと、
を含み、ここでのラクタムはラウロラクタムであり、アミノカルボン酸は11-アミノウンデカン酸、及びそれらの混合物である。
【0040】
式(1)に関し、本発明の異なる実施形態の例として、本発明のポリアミド(PA)が繰り返し単位xとyとのみから構成される場合には、n+n=100%且つn=0である。この場合、繰り返し単位yは、ジアミン成分とジカルボン酸成分とから構成され;縮合反応に添加されるジアミンのモル数と二酸のモル数は等しい。例えば、ポリアミド(PA)が、1,4-AMCCの縮合に由来する繰り返し単位(繰り返し単位X)と、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの縮合に由来する繰り返し単位(繰り返し単位Y)のみでn=60モル%且つn=40モル%で構成されている場合、実質的に同じモル数、すなわち40モル%の、テレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンが縮合混合物に添加されるべきである。用語「実質的に」は、本明細書では、比二酸/ジアミンが0.9~1.1、例えば0.95~1.05で変わることを意味することを意図する。
【0041】
本発明のポリアミド(PA)は、半結晶性のアモルファスであってもよい。本明細書で使用される半結晶性ポリアミドは、20C/分の加熱速度で少なくとも5ジュール/グラム(J/g)の融解熱(ΔH)を含む。同様に、本明細書で使用されるアモルファスポリアミドは、20C/分の加熱速度で5J/g未満のΔHを含む。ΔHは、ASTM D3418に従って測定することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、少なくとも50℃、少なくとも60℃、少なくとも100℃、少なくとも120℃、少なくとも130℃、又は少なくとも140℃のTgを有する。それに加えて又はその代わりに、いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、190℃以下、180℃以下、170℃以下、又は165℃以下のTgを有する。いくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、50℃~190℃、60℃~190℃、100℃~190℃、110℃~190℃、120℃~190℃、130℃~180℃、130℃~170℃、140℃~170℃、145℃~170℃、又は145℃~165℃のTgを有する。好ましくは、アモルファスポリアミド(PA)についてはTgは130℃~170℃であり、半結晶性ポリアミド(PA)については60℃~170℃である。TgはASTM D3418に従って測定することができる。
【0043】
ポリアミド(PA)が半結晶性ポリアミドであるいくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、少なくとも170℃、少なくとも190℃、少なくとも200℃、少なくとも210℃、少なくとも220℃、少なくとも230℃、少なくとも240℃、又は少なくとも250℃のTmを有する。それに加えて又はその代わりに、ポリアミド(PA)が半結晶性ポリアミドであるいくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、400℃以下、390℃以下、380℃以下、370℃以下、360℃以下、又は350℃以下のTmを有する。ポリアミド(PA)が半結晶性ポリアミドであるいくつかの実施形態では、ポリアミド(PA)は、170℃~400℃、190℃~400℃、200℃~400℃、210℃~390℃、220℃~380℃、230℃~370℃、240℃~360℃、又は250℃~350℃のTmを有する。TmはASTM D3418に従って測定することができる。
【0044】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、ポリアミド及びポリフタルアミドの合成に適合された任意の従来の方法によって調製することができる。
【0045】
好ましくは、本発明のポリアミドは、60重量%未満、好ましくは30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満の水の存在下、好ましくは水を加えずに、少なくともTm+10℃(Tmは半結晶性ポリアミドのポリアミド溶融温度である)の温度まで、又は少なくともTg+50C(Tgはアモルファスポリアミドのポリアミドガラス転移温度である)の温度まで、モノマーを加熱することで反応させることにより調製される。
【0046】
本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、例えばモノマー及びコモノマーの水溶液の熱重縮合(重縮合又は縮合とも呼ばれる)によって調製することができる。ポリアミドは、鎖制限剤を含んでいてもよく、これはアミン部位又はカルボン酸部位と反応することができる一官能性分子であり、ポリアミドの分子量を制御するために使用される。例えば、連鎖制限剤は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、及び/又はベンジルアミンであってもよい。触媒も使用することができる。触媒の例は、亜リン酸、オルト-リン酸、メタ-リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属ハイポホスファイト及びフェニルホスフィン酸である。また、ホスフィットなどの安定剤も使用することができる。
【0047】
また、本明細書で説明されるポリアミド(PA)は、無溶媒プロセスによって、すなわち、溶媒の非存在下で、溶融体として行われる方法によって調製することができる。縮合が無溶媒である場合、反応は、モノマーに対して不活性な材料製の装置の中で行うことができる。この場合、装置は、モノマーの十分な接触を提供するために選択され、この装置では、揮発性反応生成物の除去が実行可能である。好適な装置としては、撹拌反応器、押出機及び混錬機が挙げられる。
【0048】
ポリマー組成物(C)
ポリマー組成物(C)は、上述した本発明のポリアミド(PA)を含む。
【0049】
ポリアミド(PA)は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、30重量%超、35重量%超、40重量%超、又は45重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0050】
ポリアミド(PA)は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、99.95重量%未満、99重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、又は60重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0051】
ポリアミド(PA)は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として35~60重量%、例えば40~55重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0052】
組成物(C)は、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される1種の成分も含み得る。
【0053】
幅広い選択肢の補強剤(補強繊維又は充填剤とも呼ばれる)が本発明による組成物に添加され得る。それらは、繊維状及び粒子状の補強剤から選択することができる。繊維補強充填剤は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも50の、長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義されるアスペクト比を有する。いくつかの実施形態では、補強繊維(例えばガラス繊維又は炭素繊維)は3mm~50mmの平均長さを有する。いくつかのそのような実施形態では、補強繊維は、3mm~10mm、3mm~8mm、3mm~6mm、又は3mm~5mmの平均長さを有する。代替の実施形態では、補強繊維は、10mm~50mm、10mm~45mm、10mm~35mm、10mm~30mm、10mm~25mm、又は15mm~25mmの平均長さを有する。補強繊維の平均長さは、ポリマー組成物(C)に組み込まれる前の補強繊維の平均長さとして理解することができ、或いはポリマー組成物(C)中の補強繊維の平均長さとして理解することができる。
【0054】
補強充填剤は、鉱物充填剤(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0055】
繊維充填剤の中ではガラス繊維が好ましい;これらには、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのチャプター5.2.3,p.43~48に記載されているようなチョップドストランドであるA-、E-、C-、D-、S-及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、充填剤は、繊維充填剤から選択される。充填剤は、より好ましくは、高温の用途に耐えられる補強繊維である。
【0056】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として15重量%超、20重量%超、25重量%超又は30重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0057】
補強充填剤は、例えば、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として20~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0058】
本発明の組成物(C)は、強化剤も含み得る。強化剤は、一般に、低いガラス転移温度(T)のポリマーであり、例えば室温未満、0℃未満、又は更に-25℃未満のTを有する。その低いTの結果として、強化剤は、典型的には室温でエラストマー性である。強化剤は、官能化されたポリマー主鎖であってもよい。
【0059】
強化剤のポリマー主鎖は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストマー主鎖から選択することができる。
【0060】
強化剤が官能化されている場合、主鎖の官能化は、官能基を含むモノマーの共重合に、又はさらなる成分でのポリマー主鎖のグラフト化に由来することができる。
【0061】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとブチルエステルアクリレートとのコポリマー;エチレンと、ブチルエステルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0062】
強化剤は、組成物(C)の総重量を基準として1重量%超、2重量%超、又は3重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。強化剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満又は10重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0063】
組成物(C)は、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、直鎖低密度、ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤など、当技術分野で一般に使用されている他の従来の添加剤も含み得る。
【0064】
組成物(C)は、1種以上の他のポリマー、好ましくは本発明のポリアミド(PA)と異なるポリアミドも含み得る。とりわけ、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、より一般的には芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と脂肪族飽和若しくは芳香族第一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物との間の重縮合によって得られるポリアミドなど、半結晶性又は非晶性ポリアミドを挙げることができる。
【0065】
ポリマー組成物(C)の調製
本発明は、更に、上で詳述されたような組成物(C)の製造方法であって、前記方法が、ポリアミド(PA)と、特定の成分、例えば充填材、強化剤、安定化剤、及び任意の他の任意選択の添加剤とを溶融ブレンドする工程を含む方法に関する。
【0066】
任意の溶融ブレンディング方法が、本発明との関連でポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために用いられ得る。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリュー混練機、又はバンバリーミキサーなどの、溶融ミキサーへ供給され得、添加の工程は、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であり得る。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式で徐々に添加される場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部が先ず添加され、次いで、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、補強された組成物を調製するために延伸押出成形が用いられ得る。
【0067】
物品及び用途
本発明は、また、本発明のポリアミド(PA)を含む物品、及び上記のコポリマー組成物(C)を含む物品にも関する。
【0068】
この物品は、特に、移動電子機器、LEDパッケージング、石油及びガス用途、食品接触用途、電気用途、医療機器部品、建設用途、産業用途、配管部品、自動車部品、及び航空宇宙部品で使用することができる。
【0069】
本物品は、例えば、携帯用電子デバイス構成部品であり得る。本明細書で用いる場合、「携帯用電子デバイス」は、様々な場所で便利に運ばれ且つ使用されることを意図される電子デバイスを意味する。モバイル電子デバイスとしては、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス等)、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0070】
携帯用電子デバイス構成部品は、例えば、無線アンテナ及び本組成物(C)を含み得る。この場合、無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナであることができる。携帯用電子デバイス構成部品は、また、アンテナハウジングであり得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、携帯用電子デバイス構成部品は、アンテナハウジングである。いくつかのそのような実施形態では、無線アンテナの少なくとも一部分は、ポリマー組成物(C)上に配置される。それに加えて又はその代わりに、無線アンテナの少なくとも一部をポリマー組成物(C)からずらすことができる。いくつかの実施形態では、デバイス構成部品は、取付け穴又は他の締結デバイス(それ自体と、回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ、又はスイッチパッドを含むが、それらに限定されない、モバイル電子デバイスの別の構成部品との間のスナップフィットコネクタを含むが、それらに限定されない)を持った取付け構成部品のものであることができる。いくつかの実施形態では、モバイル電子デバイスは、入力デバイスの少なくとも一部であることができる。
【0072】
電気及び電子デバイスの例は、コネクタ、コンタクタ及びスイッチである。
【0073】
ポリアミド(PA)、ポリマー組成物(C)及びそれらから調製された物品は、単層又は多層物品において、包装用途向けのガスバリア材料としても使用され得る。
【0074】
ポリアミド(PA)、ポリマー組成物(C)及びそれらから調製された物品は、また、自動車用途、例えば空気導入系、冷却及び加熱系、駆動系及び燃料系において使用することができる。
【0075】
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)から、熱可塑性樹脂に適応した任意のプロセス、例えば押出、射出成形、ブロー成形、回転成形又は圧縮成形によって成形することができる。
【0076】
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)から、例えばフィラメントの形態にある、材料の押出の工程を含むか、又はこの場合に粉末の形態にある、材料のレーザー焼結の工程を含む方法によって印刷することができる。
【0077】
本発明は、また、付加製造システムでの3次元(3D)物体の製造方法であって、
- 本発明のポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)を含む部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元物体の層を印刷する工程と
を含む、方法に関する。
【0078】
ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)は、それ故、3D印刷のプロセス、例えば、熱溶解積層法(FDM)としても知られる、溶融フィラメント製造法に使用されるスレッド又はフィラメントの形態にあることもできる。
【0079】
ポリアミド(PA)又はポリマー組成物(C)は、また、3D印刷のプロセス、例えば選択的レーザー焼結法(SLS)に使用される、粉末、例えば実質的に球形の粉末の形態にあることができる。
【0080】
ポリアミド(PA)、組成物(C)及び物品の使用
本発明は、上で記載されたような、モバイル電子デバイス構成部品を製造するための上記のポリアミド(PA)、組成物(C)又は物品の使用に関する。
【0081】
本発明は、また、物体を3D印刷するための上記のポリアミド(PA)又は組成物(C)の使用に関する。
【0082】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例
【0083】
これらの実施例は、いくつかの本発明の又は比較用ポリアミドの熱的性能、誘電性能及び機械的性能を実証する。
【0084】
原材料
トランス-1,4-AMCC:Sigma-Aldrichから入手
ヘキサメチレンジアミン(70重量%):Ascend Performance Materialsから入手
1,12-ジアミノドデカン:Invistaから入手
アジピン酸:Ascend Performance Materialsから入手
セバシン酸:Sigma-Aldrichから入手
イソフタル酸:Flint Hilss Resourcesから入手
1,4-シクロヘキサンジカルボン酸:Eastman Chemicalから入手
テレフタル酸:Flint Hills Resources
イソフタル酸:Flint Hills Resources。
【0085】
ポリアミド調製
E1~E3の合成:モル当量の量の1,4-AMCCと、ヘキサメチレンジアミンと、イソフタル酸とを撹拌されている反応器の中に入れ、DI水(35重量%)を添加した。重合の添加剤として亜リン酸(120ppm当量のP)を使用した。混合物を335℃に加熱した。生成された蒸気を放出し、反応している混合物をこの温度で周囲圧力で更に60分間加熱した。加熱を止める前に10分間真空にした。形成されたポリマーを払い出し、その熱的特性を分析した。
【0086】
E4の合成:PA E1~E3と同様のプロセスに従ってPA E4を製造したが、イソフタル酸の代わりに等モル量のアジピン酸を使用した。
【0087】
E5の合成:PA E1~E3と同様のプロセスに従ってPA E5を製造したが、ヘキサメチレンジアミン及びイソフタル酸の代わりに等モル量のドデカメチレンジアミン及びアジピン酸を使用した。
【0088】
E6の合成:PA E1~E3と同様のプロセスに従ってPA E6を製造したが、ヘキサメチレンジアミンの代わりに、等モル量のドデカメチレンジアミンを使用した。
【0089】
E7の合成:PA E1~E3と同様のプロセスに従ってPA E7を製造したが、ヘキサメチレンジアミン及びイソフタル酸の代わりに等モル量のドデカメチレンジアミン及び1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を使用した。
【0090】
E8の合成:PA E1~E3と同様のプロセスに従ってPA E8を製造したが、イソフタル酸の代わりに等モル量のテレフタル酸を使用した。
【0091】
試験
熱転移(Tg、Tm)
様々なポリアミドのガラス転移温度及び溶融温度は、20℃/分の加熱及び冷却速度を用いてASTM D3418に従って示差走査熱量分析を使用して測定した。3つの走査:340℃までの第1加熱、続いて30℃への第1冷却、続いて350℃までの第2加熱を各DSC試験について用いた。Tg及びTmは、第2加熱から測定した。ガラス転移温度及び溶融温度を下の表1に一覧にする。表1では、反例CE1のTgとTmは、1970年4月28日に発行されたPedersenの米国特許第3,509,105号明細書から得た;反例C2及びC3についてはEllis,Bryan Smith,Ray.(2009).Polymers-A Property Database(2nd Edition),Taylor & Francisから得た。これらの全ては参照により本明細書に組み込まれる。更に、表1では、CHDAは1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を指す。
【0092】
【0093】
実施例E2~E4と反例CE1~CE3との比較から、ポリアミド(PA)のTgの可変性が示される。CE1(1,4-AMCCの縮合から形成されたホモポリマー)は370℃を超えるTmを有しているため、溶融加工が困難になる可能性がある。CE2(ヘキサメチルアミンジアミンとアジピン酸との縮合から形成されるホモポリマー)は、265℃のTmを有しているものの、Tgはわずか60℃である。一方で、E4はCE2と比較してTgが大幅に増加し、TmがCE1と比較して大幅に減少している。更に、E2及びE3のCE3との比較から、E2及びE3はCE3と比較して大幅に増加したTgを有していることが示されている。
【0094】
実施例E1、E2、E3のアモルファスコポリアミドは、わずか20モル%のAMCCが使用された場合でさえも、ポリアミドPA 6Iよりも大幅に高いTgを示す。これは高温環境で高レベルの機械的強度を必要とする用途に重要である。