(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】体内のマーカの場所を限定するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/06 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
A61B5/06
(21)【出願番号】P 2021576410
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020040353
(87)【国際公開番号】W WO2021007077
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-18
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508356308
【氏名又は名称】シアンナ・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CIANNA MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】ジョン イー グリーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エドワード ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】コール イアン ソーラクソン
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-524059(JP,A)
【文献】米国特許第06061589(US,A)
【文献】米国特許第05704355(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/01
A61B 5/06-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内でマーカの場所を限定するためのプローブであって:
近位端部、患者の体に隣接して配置されるように構成された遠位端部、及びそれらの間に延在する長手方向軸を含む、第1の部材;
前記長手方向軸に対して実質的に垂直に延在する平面の遠位面と、前記長手方向軸に対して、ある角度で延在する複数の近位面とを含むベースを含む、前記遠位端部に隣接するアンテナアセンブリであって、各近位面は1つのアンテナ素子を含んで複数のアンテナ素子を提供する、アンテナアセンブリ;及び
前記アンテナ素子に結合されて、前記マーカを特定するか又はその場所を限定するために、患者の体内へ送信信号を送信し且つ前記患者の体内のマーカから反射された反射信号を受信するためのコントローラ
を含む、プローブ。
【請求項2】
前記ベースは、前記長手方向軸の周りで互いにオフセットされた4つの近位面を含み、及び前記アンテナ素子は、対向する近位面に1対の送信アンテナ素子、及び前記送信アンテナ素子からオフセットされた対向する近位面に1対の受信アンテナ素子を含んで、前記送信及び受信アンテナが、マルタ十字として構成されるように、ボウタイアンテナ素子を規定する、請求項1に記載のプローブ。
【請求項3】
前記近位面のそれぞれは、前記長手方向軸に対して鋭角を規定する平面を規定する、請求項1又は2に記載のプローブ。
【請求項4】
前記近位面は、前記ベースの前記遠位面から近位端部まで延在する全体的にピラミッド形状を規定する、請求項1~3のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項5】
前記コントローラは、少なくとも一部には前記送信信号及び受信信号に基づいて、前記遠位端部から前記マーカまでの距離を決定するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項6】
さらに、前記遠位端部から前記マーカまでの前記距離を表す情報を提示するように構成されたディスプレイを含む、請求項
5に記載のプローブ。
【請求項7】
さらに、前記アンテナ素子の1つ以上の送信アンテナに結合されて、振動する信号を発生させる信号発生器を含み、この振動する信号は、前記1つ以上の送信アンテナへ送られて、これら送信アンテナは、前記振動する信号を、前記患者の体内へ送信するためのパルス信号へ変換する、請求項1~6のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項8】
前記ベースはセラミック材料を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項9】
前記ベースは、組織と同様の誘電定数を有する材料から形成されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項10】
前記ベースは、少なくとも20の誘電定数を有する材料から形成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項11】
前記近位面に隣接する領域は、前記ベースの
材料との誘電性又はインピーダンスの不整合をもたらして、前記プローブから遠位側に患者の体内への前記送信信号の指向性を高める、請求項1~10のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項12】
前記領域は空気を含む、請求項11に記載のプローブ。
【請求項13】
前記アンテナ素子は、前記セラミック材料の前記近位面に印刷又は堆積された材料を含む、請求項8に記載のプローブ。
【請求項14】
前記ベースは、隣接する近位面間にスロットを含み、前記アンテナ素子を互いに実質的に絶縁する、請求項1~13のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項15】
さらに、前記遠位端部を取り囲む遮蔽体を含んで、前記アンテナ素子を遮蔽する、請求項1~14のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項16】
前記遮蔽体は、内側絶縁層と、前記内側絶縁層を取り囲む外側ファラデーシールドとを含む、請求項15に記載のプローブ。
【請求項17】
前記近位面のそれぞれは、前記長手方向軸に対して鋭角を規定する平面を規定する、請求項1又は2及び請求項4~16のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項18】
前記近位面のそれぞれは、凸形状及び凹形状のうちの一方を有する、請求項1又は2及び請求項4~16のいずれか1項に記載のプローブ。
【請求項19】
患者の体内でマーカの場所を限定するためのプローブであって:
近位端部、患者の体に隣接して配置されるように構成された遠位端部、及びそれらの間に延在する長手方向軸を含む、第1の部材;
前記長手方向軸に対して実質的に垂直に延在する平面の遠位面と、全体的にピラミッド形状を規定するように、前記長手方向軸に対して、ある角度で延在する4つの近位面と、前記近位面上のアンテナ素子と、前記アンテナ素子を互いに実質的に絶縁するための、隣接する近位面間に放射状スロットとを含むベースを含む、前記遠位端部に隣接するアンテナアセンブリ;及び
前記アンテナ素子に結合されて、前記アンテナ素子の1つ以上に、患者の体内へ信号を送信させるようにし、且つ前記アンテナ素子の1つ以上を介して、患者の体内に植込まれたマーカから反射した反射信号を受信するためのコントローラであって、前記マーカを特定するか又はその場所を限定するために前記反射信号を処理するコントローラ
を含む、プローブ。
【請求項20】
前記アンテナ素子は、対向する近位面に1対の送信アンテナ素子、及び前記送信アンテナ素子からオフセットされた対向する近位面に1対の受信アンテナ素子を含んで、前記送信及び受信アンテナが、マルタ十字として構成されるように、ボウタイアンテナ素子を規定する、請求項19に記載のプローブ。
【請求項21】
患者の体内でマーカを特定し且つその場所を限定するためのシステムであって:
患者の体内にマーカを送達するための送達機器;
患者の体に隣接して配置されるように構成された遠位端部と、それらの間に延在する長手方向軸と、前記長手方向軸に対して実質的に垂直に延在する平面の遠位面、及び前記長手方向軸に対して、ある角度で延在する複数の近位面を含むベースを含む、前記遠位端部に隣接するアンテナアセンブリであって、各近位面は1つのアンテナ素子を含んで複数のアンテナ素子を提供する、アンテナアセンブリとを含む、アンテナプローブ;及び
前記アンテナ素子に結合されて、前記マーカを特定するか又はその場所を限定するために、患者の体内へ送信信号を送信し且つ前記患者の体内のマーカから反射された反射信号を受信するためのコントローラ
を含む、システム。
【請求項22】
さらに、前記
アンテナプローブの前記遠位端部から前記マーカまでの距離に関する情報を提示するための出力機器を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記出力機器は、ディスプレイ及びスピーカの少なくとも一方を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記アンテナ素子は、対向する近位面に1対の送信アンテナ素子、及び前記送信アンテナ素子からオフセットされた対向する近位面に1対の受信アンテナ素子を含んで、前記送信及び受信アンテナが、マルタ十字として構成される、ボウタイアンテナ素子を規定する、請求項21~23のいずれか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年7月5日出願の米国仮特許出願第62/871,059号(「Systems and Method for Localizing Markers within a Body」)の優先権を主張し、その全体を参照することにより本書に援用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本開示は、例えば、外科的処置又は他の処置中、例えば腫瘤摘出処置中に、マーカ、例えば患者の体内に植込まれたマーカを特定及び/又は位置決定するためのシステム及び方法に関する。
【0003】
本明細書に記載の開示は、非限定的で包括的でない、説明に役立つ実施形態を説明している。図面に示されているそのような説明に役立つ実施形態のいくつかを参照する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】プローブと、患者の体内に1つ以上のマーカを植込むための送達機器とを含む、患者の体内にマーカを送達してその場所を限定するためのシステムの例示的な実施形態を示す。
【
図2】
図1のプローブの例示的な構成要素を示すブロック図である。
【
図3】
図3A-3Cは、
図1~2に示すようなシステムに含まれ得る例示的なプローブの、それぞれ、斜視図、側面図及び端面図である。
【
図4】
図4A-4Cは、
図3A及び
図3Bのプローブに含まれ得る例示的なアンテナアセンブリの斜視図、側面図及び底面図である。
【
図5】
図5A-5Bは、患者の体内に植込むための、マーカの例示的な実施形態の、それぞれ、上面図及び側面図である。
【
図6】
図5A及び
図5Bのマーカに含まれ得る回路の概略図の例示的な実施形態である。
【
図7】
図7A-7Bは、
図6の回路のスイッチの動作を明示する概略図である。
【
図8】
図8A-8Bは、乳房内の組織へマーカを送達するために使用中の送達機器を示す、乳房の側面図である。
【
図9】乳房内に植込まれたマーカの場所を限定するプローブの例示的な実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
生検、又は例えば腫瘤摘出処置中に乳房内の病変部を除去するための外科的処置の前に、病変部の位置を特定する必要がある。例えば、マンモグラフィ又は超音波画像化を使用して、処置前に病変部の位置を特定及び/又は確認してもよい。結果として得られる画像は、外科医によって、病変部の位置を特定するための処置中に使用され、且つ、例えば、病変部にアクセスする及び/又はそれを除去するための切り離し(dissection)中に、外科医をガイドし得る。しかしながら、そのような画像は一般的に2次元であるため、病変部の場所の限定に関して、乳房及び除去されるべきいずれの病変部も3次元構造であるゆえに、限られたガイダンスしか与えない。さらに、そのような画像は、病変部の周りの適切なマージンすなわち余地部を決定する、すなわち、除去されるべき所望の検体量を規定する際に、限られたガイダンスしか与えないかもしれない。
【0006】
処置の直前に、場所の限定を容易にするために、ワイヤが、例えば針を経由して、乳房内に挿入されて、ワイヤの先端が病変部の位置に置かれるようにし得る。ひとたびワイヤが置かれたら、ワイヤは、例えばワイヤが乳房から出現する箇所の患者の皮膚に当てられた包帯やテープを使用して、適所に固定され得る。ワイヤが適所に配置されて固定されたら、患者は外科処置に進み、例えば生検又は腫瘤摘出が行われる。
【0007】
場所の限定のためにワイヤを使用することに関連する1つの問題は、ワイヤが、配置時と外科的処置との間に動く可能性があることである。例えば、ワイヤが十分に固定されていない場合、ワイヤは、病変部にアクセスするために使用した道(tract)に対して動く可能性があり、それゆえ、先端は病変部の位置を不正確に伝える可能性がある。これが起こる場合に、その位置にアクセスして組織が除去されると、病変部が十分に除去されない可能性があり及び/又は健康な組織が不必要に除去される可能性がある。さらに、処置中、外科医は、単に、例えば乳房X線像又はワイヤ配置中に得た他の画像に基づいて、ワイヤの先端及び病変部の位置を推定するかもしれず、さらなるガイダンスを全く用いずに、切り離しを進めるかもしれない。ここでも、そのような画像は2次元であるため、それら画像は、治療又は除去中の病変部の場所を限定するために限られたガイダンスをもたらし得る。
【0008】
或いは、処置中に、放射性シードを配置して、場所の限定を行うことが提案されてきた。例えば、針が、乳房を通って病変部内へ導入され得、その後、シードが針から展開され得る。針は引き出され得、及びシードの位置が、マンモグラフィを使用して確認され得る。それに続く外科的処置中、手持ち型ガンマプローブが乳房の上側にわたって配置されて、シードの上を覆っている場所を特定する。切開が行われ得、且つプローブが、シード及び病変部の切除をガイドするために使用され得る。
【0009】
シードは、すぐに除去される針を通して送達されるため、シードが患者の体内で配置時と外科的処置との間に移動し得るというリスクがある。それゆえ、場所限定用ワイヤの使用と同様に、シードは、特に、ひとたび配置されたら外部からシードを安定化させる方法がないため、病変部の位置を正確に特定しないかもしれない。さらに、そのようなガンマプローブは、例えば3次元で、シードの位置を所望の正確さで特定しないかもしれず、それゆえ、病変部の場所の限定に限られたガイダンスしか与えないかもしれない。
【0010】
それゆえ、外科的処置、診断処置、又は他の医療処置の前に及び/又はその最中に、病変部又は他の組織構造の場所を限定するための装置及び方法が有用である。
【0011】
本開示は、例えば、外科的処置又は他の処置中に、例えば腫瘤摘出処置中に、患者の体内に植込まれたマーカを特定及び/又は位置決定するためのシステム及び方法に関する。
【0012】
一実施形態によれば、患者の体内でマーカの場所を限定するためにプローブが提供され、プローブは、近位端部、患者の体に隣接して配置されるように構成された遠位端部、及びそれらの間に延在する長手方向軸を含む、第1の部材又はハウジング;長手方向軸に対して実質的に垂直に延在する平面の遠位面と、長手方向軸に対して、ある角度で延在する複数の近位面とを含むベースを含む、遠位端部に隣接するアンテナアセンブリであって、各近位面は1つのアンテナ素子を含んで複数のアンテナ素子を提供する、アンテナアセンブリ;及びアンテナ素子に結合されて、マーカを特定するか又はその場所を限定するために、患者の体内へ送信信号を送信し且つ患者の体内のマーカから反射された反射信号を受信するためのコントローラを含む。
【0013】
別の実施形態によれば、患者の体内でマーカの場所を限定するためにプローブが提供され、プローブは、近位端部、患者の体に隣接して配置されるように構成された遠位端部、及びそれらの間に延在する長手方向軸を含む、第1の部材又はハウジング;遠位端部に隣接するアンテナアセンブリであって、長手方向軸に対して実質的に垂直に延在する平面の遠位面と、全体的にピラミッド形状を規定するように、長手方向軸に対して、ある角度で延在する4つの近位面と、近位面上のアンテナ素子と、アンテナ素子を互いに実質的に絶縁するための、隣接する近位面間に放射状スロットとを含むベースを含む、アンテナアセンブリ;及びアンテナ素子に結合されて、アンテナ素子の1つ以上に、患者の体内に信号を送信させるようにし、且つアンテナ素子の1つ以上を介して、患者の体内に植込まれたマーカから反射された反射信号を受信するためのコントローラであって、マーカを特定する又はその場所を限定するために反射信号を処理するコントローラを含む。
【0014】
さらに別の実施形態によれば、患者の体内でマーカを特定し且つその場所を限定するためのシステムが提供され、システムは、患者の体内にマーカを送達するための送達機器;近位端部と、患者の体に隣接して配置されるように構成された遠位端部と、それらの間に延在する長手方向軸と、長手方向軸に対して実質的に垂直に延在する平面の遠位面、及び長手方向軸に対して、ある角度で延在する複数の近位面を含むベースを含む、遠位端部に隣接するアンテナアセンブリであって、各近位面は1つのアンテナ素子を含んで複数のアンテナ素子を提供する、アンテナアセンブリとを含む、アンテナプローブ;及びアンテナ素子に結合されて、マーカを特定するか又はその場所を限定するために、患者の体内へ送信信号を送信し且つ患者の体内のマーカから反射された反射信号を受信するためのコントローラを含む。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、体内でマーカの場所を限定するための方法が提供され、方法は、組織に接してプローブの遠位端部を配置することであって、プローブは、遠位端部に隣接するアンテナアセンブリであって、組織に隣接して配置された平面の遠位面と、プローブの長手方向軸に対して、ある角度で延在する複数の近位面とを含むベースを含む、アンテナアセンブリを含むこと;近位面の1つ以上にある1つ以上の送信アンテナ素子によって、体内へ送信信号を送信すること;近位面の1つ以上にある1つ以上の受信アンテナ素子によって、マーカから反射される受信信号を受信すること;及び少なくとも一部には受信信号に基づいて、マーカを特定することを含む。
【0016】
本開示の他の態様及び特徴は、添付図面と併せて、以下の説明を考慮することから明らかになる。
【0017】
以下の説明では、システムのより綿密な説明を提供するために多数の詳細が説明される。しかしながら、本開示の恩恵をあずかる当業者には、開示のシステムは、これらの具体的詳細がなくても実施され得ることが明らかになる。他の例では、周知の特徴は、システムを不要に曖昧にしないために、詳細には説明されていない。
【0018】
図面を検討すると、
図1~4Cは、患者の体内にある標的組織領域の場所を限定するための、例えば、腫瘍、病変部、又は他の組織構造などの標的組織領域内に若しくはそれに隣接して植込まれた1つ以上のマーカ、例えば、
図9に示すように乳房90内に植込まれたマーカ40を特定及び/又は位置決定するためのシステム10の例示的な実施形態を示している。
図1に示すように、システム10は、1つ以上の標的、タグ、又はマーカ(1つのマーカ40が示されている)を備えている送達機器60と、例えば超広帯域レーダを使用して、マーカ40を検出及び/又は位置決定するためのプローブ20と、例えば1本以上のケーブル36を使用して、プローブ20に結合されたコントローラ及び/又は表示装置38とを含み得、これは、全体的に米国特許出願公開第2011/0021888号明細書、同第2014/0309522号明細書、同第2016/0354177号明細書、及び同第2017/0319102号明細書(それらの開示全体を参照することにより本書に明白に援用する)に説明されている実施形態と同様である。
【0019】
プローブ20は、電磁信号を発する及び受信する能力を有する持ち運び可能な機器、例えば、例えばユーザによって保持され得る第1のすなわち近位端部22と、組織、例えば患者の皮膚又は下層組織に接して又は隣接して配置されることを意図した第2のすなわち遠位端部24とを含み、それらの間に長手方向軸25を規定する、長尺状の手持ち型機器である。一般的に、例えば、プローブ20は、例えば
図4A~4Cに示すようなアンテナアセンブリ30に装着された又はそこに備えられた、1つ以上のアンテナを含み、下記にさらに説明するように、アンテナは、ベース32上に1つ以上の送信アンテナ32T及び受信アンテナ32Rを含む。さらに、プローブ20は、
図9に示すように、遠位端部24が接触している組織へ、例えば、全体的に長手方向軸25に沿って乳房組織90内へ、光パルス28aを伝達するように構成された、光送信器、例えば、複数本の光ファイバー28(
図3Cに示す)を含む。光ファイバー28は、例えば結合器29(
図9に示す)によって光源(図示せず)に結合され得、光源からの光が、光ファイバー28を、プローブ20の遠位端部24から遠位側へと通過するようにする。
【0020】
例示的な実施形態では、例えば、光源は、例えば800~950ナノメートル(800~950nm)波長の近赤外光を送ることができる、赤外光源である。任意選択的に、光ファイバー28は、所望の場合には、例えば、プローブ20によって所望の方法で伝達された光を、例えば、より広角なビーム内などにおいて、長手方向軸25に対して実質的に平行に延在する比較的狭いビームに収束させるために、レンズ、フィルターなど(図示せず)のうちの1つ以上を含み得る。或いは、1つ以上の光源、例えば、IR LEDが、光パルス28aを送るために、光ファイバー28の代わりに、遠位端部24に設けられ得る。
【0021】
プローブ20は、1つ又は複数の送信アンテナ32Tによって送信するための信号を発生させる及び/又は1つ又は複数の受信アンテナ32Rから受信した信号を処理するために必要な1つ以上の回路、信号発生器、ゲートなど(図示せず)を含むプロセッサーを、プローブハウジング21及び/又は表示装置38内に含み得る。プロセッサーの構成要素は、所望通り、別個の構成要素、固体素子、プログラマブル素子、ソフトウェアコンポーネントなどを含み得る。
【0022】
図2は、プローブ20のコントローラ(或いは、構成要素のうちのいくつかは
図1のコントローラ/表示装置38内に置かれているかもしれないが)の例示的な構成要素を示すブロック図である。図示の例では、プローブ20は、信号発生器20a、増幅器20b、アナログ-デジタル(A/D)変換器20c、及びデジタル信号プロセッサー(DSP)20dを含み得る。信号発生器20a、例えば基準発振器は、振動する信号、例えば方形波信号、三角波信号、又は正弦波信号を生じる。
【0023】
例えば、プローブ20は、送信信号を発生するために送信アンテナに結合された、インパルス発生器、例えばパルス発生器及び/又は擬似雑音発生器(図示せず)と、受信アンテナによって検出された信号を受信するためのインパルス受信器とを含み得る。プローブ20は、マイクロコントローラ及び距離ゲート制御器を含み得、これらは、例えば本明細書の他の実施形態と同様に、インパルス発生器及びインパルス受信器を交互に起動し、送信アンテナによって電磁パルス、電磁波、又は他の信号を送信し、その後、受信アンテナによっていずれの反射した電磁信号も受信する。使用され得る例示的な信号は、例えば、超低帯域幅領域にある、マイクロ波、電波、例えばマイクロインパルスレーダ信号を含む。
【0024】
図2に示す例では、方形波信号は、信号発生器20aからプローブ20のアンテナアセンブリ30の1つ又は複数の送信アンテナ32Tへ送られ得る。方形波信号が1つ又は複数の送信アンテナ32Tを通過するとき、1つ又は複数の送信アンテナ32Tは、帯域通過フィルター(「BPF」)の機能を果たし、且つ方形波信号を、一連のパルス又は他の送信信号34Tへ変換し得る。そのようなものとして、プローブ20によって送信された送信信号34T(
図9に示す)は、一連のパルスを含み得る。或いは、例えば参照することにより本書に援用される刊行物で説明される実施形態と同様に、プローブ20は、連続波信号を送信するように構成され得る。
【0025】
送信信号34Tは、組織内へ送信され、且つ受信信号34Rによって表されるように、マーカ40から反射され得る(
図9に示すように)。ひとたび送信信号34Tがマーカ40から反射されると、反射信号(すなわち、受信信号34R)は、一連の減衰したパルスを含む(
図2に示す)。
【0026】
プローブ20のアンテナアセンブリ30の1つ又は複数の受信アンテナ32Rは、受信信号34R(
図6に示す)、例えば一連の減衰したパルスを受信し得、これらは、パルスのゲインを増幅させるために増幅器20bに入力され得る。増幅器20bの出力は、増幅されたアナログ信号をデジタル信号へ変換するために、A/D変換器20cに入力され得る。A/D変換器20cから出力されたデジタル信号は、さらなる処理のためにDSP20dに入力され得る。DSP20dは、限定されるものではないが、例えば参照することにより本書に援用される刊行物に説明されているように、送信信号34Tが送られた時点から受信信号34Rが受信された時点までの時間の差を計算し、プローブ20の遠位端部24からマーカ40までの距離を決定し、プローブ20の遠位端部24に対するマーカ40の位置を決定し、受信信号34Rの振幅を測定し、及び/又はプローブ20の遠位端部24に対するマーカ40の方向を決定することを含め、いくつかの処理機能を実行し得る。
【0027】
プローブ20は、プローブ20のユーザに情報、例えば、アンテナ32Rを介して得た空間若しくは画像データ及び/又はDSP20dからの他の出力を表示するために、例えばケーブル36によって、表示装置38のディスプレイ38aに結合され得る。任意選択的に、プローブ20は、他の特徴又は構成要素、例えば1つ以上のユーザインターフェース、メモリ、送信器、受信器、コネクタ、ケーブル、電源など(図示せず)を含み得る。例えば、プローブ20は、プローブ20の構成要素を動作させるために、1つ以上のバッテリー又は他の内部電源を含み得る。或いは、プローブ20は、ケーブル、例えばプローブ20の構成要素を動作させるために、外部電源、例えば標準的な交流電力へ結合され得るケーブル36のうちの1つを含み得る。
【0028】
図1及び
図9に示すように、プローブ20の内部構成要素、例えば
図3A~4Cに示す構成要素は、外側ハウジング又はケーシング21内に設けられて、プローブ20が自給式であるようにし得る。例えば、ケーシング21は、比較的小さくて持ち運び可能であり、例えば、プローブ20全体がユーザの手で保持され得るようにする。任意選択的に、プローブ20の一部分、例えば遠位端部24に隣接する一部分は使い捨てとしてもよいし、又は使い捨てのカバー、スリーブなど(図示せず)が所望であれば提供されて、プローブ20の少なくとも近位部分が再使用可能となるようにしてもよい。或いは、プローブ20全体を使い捨ての単回使用の機器としてもよい一方で、表示装置38は、新しいプローブ20を表示装置38に接続することによって、複数回の処置中に使用されてもよく、これは、手術野外に留まるが、望み通りにアクセス可能である及び/又は見ることができるとし得る。プローブ20の構造及び/又は動作に関する追加的な情報は、参照することにより本書の他の部分に援用される刊行物に見出され得る。
【0029】
図3A~3Cを検討すると、例えば、アンテナアセンブリ30を備えている内部スリーブ又はハウジング26、及び、任意選択的に、その遠位端部26bに又はその内部に遮蔽体37を含む、プローブ20の例示的な内部構成要素が示されている(外側ハウジング21の除去後の)。
【0030】
さらに
図4A~4Cを参照して説明すると、アンテナアセンブリ30は、例えば軸25に対して垂直に延在する実質的に平面の遠位面32aと、アンテナ素子32T、32Rを含む複数の平面の近位面32bとを含むベース32を含む。遠位面32aは、プローブ20の遠位端部24の最も遠位の箇所に位置し得、例えば、遠位面32aが組織に直接接して配置され得るようにする(例えば、流体がプローブに流入すること及び/又は他の汚染物を防止するために薄膜又はカバーで覆われ得る)。ベース32は、セラミック及び/又は例えば所望の誘電特性を有する他の非導電性材料から形成され得る。例えば、ベース32は、プローブが使用されることが意図される組織型と同様の誘電定数(誘電率)、例えば、ヒトの乳房組織、皮膚、筋肉、骨、脂肪又は他の組織と同様の誘電定数を有する材料から形成され得る。それゆえ、ベース32の材料は、約1から約100に及ぶ、例えば、脂肪に使用されることを意図した実施形態では約1~14、乳房組織に使用されることを意図した実施形態では約5~8、筋肉に使用されることを意図した実施形態では約60~70、皮膚に使用されることを意図した実施形態では約70~80、及び骨に使用されることを意図した実施形態では約6~25の誘電定数を含み得る。
【0031】
図4A及び
図4Bに示す実施形態では、ベース32は、4つの平面の近位面32bを含み、各近位面32bの平面が、軸25と鋭角θ、例えば約30~60度(30~60°)を規定するようにし、近位面32bは、軸25の周りで互いに90度オフセットされており、近位面32bが、全体的にピラミッド形状を規定するようにしている。或いは、近位面は、非平面的な形状、例えば、ベースの遠位面から近位端部までテーパが付けられる(図示せず)凸面又は凹面(図示せず)を有してもよい。
【0032】
この形態では、アンテナ素子は、ベース32の近位面32bに、ボウタイ形態に配置された、1対の送信アンテナ32T及び1対の受信アンテナ32Rを含み得、例えば、送信アンテナ32Tは受信アンテナ32Rから90度(90°)オフセットされて、マルタ十字アンテナを規定している。アンテナ素子32T、32Rのそれぞれは、別々に形成されてから、対応する近位面32bに取り付けられても、又は近位面32bに直接配置されてもよい。例示的な実施形態では、アンテナ素子32T、32Rは、銀フィルム又はベース32の近位面32bに堆積された他の材料から形成され得る。
【0033】
回路構成要素35、例えば、プリント回路基板、フレックス回路などは、アンテナ32T、32Rに結合され得る、例えば1つ以上の変圧器及び/又はコネクタ(図示せず)が設けられているPCBが、適切なリード線35aによってそれぞれのアンテナ素子32T、32Rに結合されるなどである。
図3A及び
図3Bに示すように、同軸ケーブル又は他のリード線35bが、PCBにあるコネクタに結合され得、アンテナ素子32T、32Rをシステムの他の構成要素に結合できるようにし、例えば、本明細書で説明する他の実施形態と同様に、アンテナ素子32Tに、システム10の他の構成要素へ信号を送信させる及び/又は受信した信号を通信させるようにする。
【0034】
図4A~4Cに示すように、ベース32はまた、複数の放射状スロット33、例えば、隣接する平面の面32b間のスロット33を含む。スロット33は、遠位面32aから近位面32bまで軸方向に延在して、アンテナ素子32T、32Rを互いから、スロット33内の空気によって実質的に絶縁し得、それにより感度を高め、クロストーク及び/又は他の雑音などを低減させ得る。或いは、スロット33は、他の絶縁材、例えば発泡体など(図示せず)で埋められていてもよく、これは、所望の比較的低い誘電定数を有して、アンテナ素子32T、32Rを互いから実質的に絶縁し得る。さらに、
図3Cに示すように、光ファイバー28は、本明細書の他の箇所で説明するように、スロット33の1つ以上内に位置決めされて、例えば、光パルスを、ベース32の遠位面32aを通り越して送り得る。
【0035】
任意選択的に、
図3A及び
図3Bに示すように、ベース32は遮蔽体37内に装着され得、それが、次に、例えば接着剤によるボンディング、音波溶接、溶融、協働するコネクタ(図示せず)などの1つ以上によって、内側ハウジング26の遠位端部26b(及び/又は外側ハウジング21の遠位端部24)に結合され得る。例えば、遮蔽体37は、例えば銅又は他の材料から形成された比較的薄い外側遮蔽体(図示せず)によって取り囲まれた、例えばナイロン又は他の高分子材料のカラーによって形成された環状内側絶縁層を含み得、ファラデーシールド(Faraday shield)を提供する。例示的な実施形態では、銅テープの層は、端部が一緒に固定された状態で、内側遮蔽体に巻き付けられ得る。或いは、外側遮蔽体は、遮蔽材のスリーブとし得、そこに内側遮蔽体が挿入され、且つ、例えば接着剤によるボンディング、締まり嵌めなどによって取り付けられ得る。
【0036】
遮蔽体37の長さ(すなわち、軸25に沿った)は、ベース32の厚さ(すなわち、ベース32の遠位面32aから近位端部までの軸25に沿った距離)よりも実質的に長いとし得る。例えば、内側遮蔽体は環状凹部(図示せず)を含み得、そこにベース32が挿入され、且つ例えば締まり嵌め、接着剤によるボンディングなどによって、取り付けられ得る。本明細書の他の箇所で説明するように、ベース32の遠位面32aは、遮蔽体37の遠位端部と実質的に同一平面にあるとし得、遠位面32aが使用中に組織と接触し得るようにする。任意選択的に、マイラー(Mylar)フィルム又は他の比較的薄い材料層(図示せず)が、ベース32の遠位面32a及び/又は遮蔽体37の上側を覆って設けられて、例えば、流体又は他の材料が先端に入るのを防止し、汚染を低減させ、及び/又はそうでなければプローブ20の先端を保護し得る。
【0037】
引き続き
図4A及び
図4Bを参照して説明すると、ベース32の近位面32bは、遮蔽体37内の空気の領域に露出され得る。空気の誘電定数は低い(例えば1に近い)ため、空気は、ベースの材料との誘電性又はインピーダンスの不整合をもたらして、送信アンテナ32Tからの送信を遠位側に、すなわち、ベース32が接触する組織の方へ向かって収束させる。ベース32の材料が組織の誘電定数と実質的に整合するように選択された状態では、組織内へ透過する深さが改善され得る。ベース32の後ろ側の空気が損失エネルギーを最小限にし得、そうでなければ、そのエネルギーは送信アンテナ32Tによって組織から離れるように放出される。遮蔽体37内のベース32の後ろ側の空気はまた、クロストーク、雑音を最小限にし得る及び/又はそうでなければプローブ20の動作を向上させ得る。
【0038】
さらに、近位面32b上でのアンテナ素子32T、32Rの角度の付けられた向きを考慮すると、アンテナ素子32Tによって送信される及び/又はアンテナ素子32Rから受信される信号は、長手方向軸25に沿ってより狭く収束され得、例えば、プローブ20の指向性を向上させる。さらに、アンテナ素子32T、32Rを軸25に対してある角度で延在するように設けることは、所与のサイズのアンテナ素子に関して、例えば、参照することにより本書に援用される刊行物に説明されているもののような、ベースの平坦な近位面に設けられている同じサイズのアンテナ素子(図示せず)と比較すると、ベース32の外形輪郭(それゆえ、プローブ20の遠位端部24の外径又は他の横断面)を小さくし得、これにより、プローブ20のパワー及び/又は感度を低減させずに、プローブ20の外形輪郭を小さくすることができるとし得る。
【0039】
プローブ20及びシステム10は、医療処置中に、例えば乳房生検又は腫瘤摘出処置において、例えば1つ以上のマーカを使用して病変部又は他の標的組織領域の場所の限定を容易にするために、使用され得る。例えば、
図5A及び
図5Bを検討すると、パッシブマーカ又はタグ40の例示的な実施形態が示されており、これは、例えば
図9に示すように乳房90内など、患者の体内に植込まれ得る。一般的に、マーカ40は、1対のワイヤ又はアンテナ44に結合されたエレクトロニクスパッケージ42を含む。例示的な実施形態では、各ワイヤ44は、約0.5~2ミリメートル(0.5~2mm)の直径又は他の最大横断面、及び約1~10ミリメートル(1.0~10mm)の長さを有する、長尺状部材、例えば中実又は中空構造とし得る。ワイヤ44は、弾性若しくは超弾性材料から及び/又は形状記憶材料、例えば、ステンレス鋼、ニチノール(Nitinol)などから形成され得、ワイヤ44が、組織内に展開されるときに予め決められた形状へバイアスされるようにするが、本明細書の他の箇所で説明するように、例えば送達を容易にするために、弾性変形され得る。或いは、ワイヤ44は実質的に硬質とし得るため、マーカ40は、例えば線形又は湾曲形状に、実質的に固定されたままとなる。本明細書の他の箇所で説明するように、ワイヤ44は、アンテナの機能を果たし得る、及び/又はそうでなければ、エレクトロニクスパッケージ42内の電気構成要素と協働し得る。
【0040】
図5A及び
図5Bに示すように、ワイヤ44は、実質的に線形形態をとるようにバイアスされ得、例えば、ワイヤ44が、マーカ40の長手方向軸48に対して実質的に平行に延在するようにする。任意選択的に、1本のワイヤ又は両ワイヤ44が長手方向軸48からオフセットされ得、それにより、本明細書の他の箇所で説明するように、送達機器(図示せず)内へのマーカ40の詰め込みを向上させ得る。任意選択的に、例えば、参照することにより本書に援用される刊行物に説明されている実施形態と同様に、ワイヤ44は、1つ以上のビーズ又は他の要素(図示せず)を備え得る。
【0041】
図示の通り、各ワイヤ44は、パッケージ42内のプリント回路基板(PCB)又は他の回路50に結合された第1の端部44aと、拡大及び/又は丸い先端部45で終端する第2の自由端部44bとを含み得る。任意選択的に、第1の端部44aは、1つ以上の曲げ部を含み得、例えば、回路50への第1の端部44aの結合を容易にする、及び/又はワイヤ44が、パッケージ42の対向する両側面から接線方向に延在するようにする。或いは、ワイヤ44は、長手方向軸48の周りで曲線のある形態又は他の形態、例えば、らせん、蛇行又は他の湾曲形状をとるように、バイアスされ得る。例えば、ワイヤ44は、形状固定されている弾性又は超弾性材料から形成され得、ワイヤ44は、図示のらせん形態にバイアスされるが、例えば、参照することにより本書に援用される出願に説明されているように、実質的に線形形態に弾性的に真っ直ぐにされて、例えば、送達機器内へのマーカ40の詰め込み及び/又はそうでなければ、患者の体内へのマーカ40の導入を容易にし得る。
【0042】
さらに
図6を参照して説明すると、マーカ40は、エレクトロニクスパッケージ42に入れられるか又は埋め込まれ且つプローブ20からの入射信号を変調するように構成された1つ以上の回路又は他の電気構成要素50を含み得る。例示的な実施形態では、半導体チップ、プリント回路基板(PCB)、及び/又は他の回路50は、パッケージ42内に備えられ、パッケージは、電圧源若しくは電源又は他の電力若しくはエネルギー変換器52、エネルギー変換器52が電気エネルギーを発生させるときに開閉され得るスイッチ54、及び静電気放電(ESD:Electro Static Discharge)保護機器58を含む。
【0043】
例示的な実施形態では、エネルギー変換器52は複数の光電性ダイオードを含み、光電性ダイオードは、それらに当たる入射光(例えば赤外光)を電気エネルギー(例えば、予め決められた最小電圧)へ変えることができる。図示の通り、複数対のダイオード52が直列に接続され得、これらは、パッケージ42内で空間的に互いに直角に配置され得る。例えば、光電性ダイオードが指向性であることを考えると、少なくとも2対のダイオード52が、180度(180°)又はそうでなかろうが互いに対してオフセットされてパッケージ42内に装着され得、例えば、植込み後のプローブ1020に対するマーカ40の向きに関わらず、少なくとも1対のダイオード52が、プローブ1020の光送信器から光を受けるようにし得る。パッケージ42は、少なくとも部分的に透明としてもよいし、又はダイオード52は、パッケージ42の方へ向けられた光がダイオード52によって受光されるように、露出されていてもよい。それに加えて又はその代わりに、例えば、本明細書に参照することにより本書に援用される出願に開示されているように、パッケージ42及び/又はダイオード52は、1つ以上のコーティング及び/又はフィルターを含んでもよい。
【0044】
図6に示す実施形態では、スイッチ54は、電界効果トランジスタ(FET)、例えば、接合型電界効果トランジスタ(JFET)とし得、ダイオード52の一方の端子はゲート(G)に結合され、且つ他方の端子は源(S)に結合されており、ゲート(G)と源(S)との間にはレジスタ56が結合されて、例えば、IR光がないときにダイオード52を放電する。例示的な実施形態では、スイッチ54は、エンハンスモード擬似格子整合型高電子移動度トランジスタ(E-pHEMT:enhancement mode pseudomorphic high electron mobility transistor)、例えばAvago Technologies US Inc.製のVMMK-1225を含み得、及びレジスタ56は、3メガオーム(3MΩ)レジスタとし得る。代替的な実施形態では、スイッチ54は、ダイオード52(又は他の電圧源)に結合されたショットキー(Schottky)ダイオードとし得、例えば、ダイオードの対向する両端子はワイヤ44に結合されている。
【0045】
同様に図示の通り、スイッチ54の源(S)は、ワイヤ44のうちの1本に電気的に結合され、且つドレーン(D)は他方のワイヤ44に結合され得、例えば、ワイヤ44がマーカ40用のアンテナを提供するようにする。例えば、回路50の構成要素はパッケージ52内に装着され得、構成要素が、
図6の概略図において結合されている以外は、互いに電気的に絶縁されるようにする。ワイヤ44は、パッケージ52にボンディング又は他の方法で取り付けられ得、ワイヤ44の複数の端部が、図示の通りスイッチ54に電気的に結合されるようにする。
【0046】
各ダイオード52は、負荷(すなわち、電流ドロー)がほとんど又は全くないときに、スイッチ54を開閉するように光に曝されると、十分な電圧(例えば約0.5ボルト(0.5V))を発生させることができるとし得る。回路50は、プローブ1020からの信号を単に変調させることを意図しているため、電流がほとんど又は全く必要とされず、ダイオード52からの(それゆえ、プローブ1020からの)必要な電力が最小にされ得、それにより、マーカ40及びプローブ1020の電力需要を削減する。
【0047】
さらに
図7A及び
図7Bを参照して説明すると、ダイオード52に断続的に当たる光は、ゲート(G)及び源(S)を通した電圧を発生させて、スイッチ54を開閉し得る制御信号を提供し得る。例えば、
図7Aは、赤外光がないときの開放形態にあるスイッチ54を示す一方で、
図7Bは、赤外光70がダイオード52に当たり、それにより、両ワイヤ44を接続するときの、閉鎖形態にあるスイッチ54を示す。それゆえ、マーカ40はパッシブタグを提供し、これは、マーカ40の中心に高周波スイッチと同じものを含むという結果になる。スイッチ54を閉鎖状態から開放状態へ変更することができることによって、ワイヤ44によってもたらされたアンテナの反射特性は、著しく変更され得る。例えば、スイッチ54は、スイッチ54が開閉されるときに、極性を変更し得るか、又はそうでなければ、マーカ40から反射された信号を変調させ得る。
【0048】
乳房組織(又は患者の体内の他の箇所)に植込まれたマーカの検出に伴う課題のいくつかは、そのようなマーカの比較的小さいレーダ断面(RCS)、及び受信された反射信号の混入を含み、これは、例えば、(a)組織の不均質さに起因する散乱;(b)プローブの送信アンテナと受信アンテナとの間のクロストーク;及び(c)近接場効果による信号ひずみ、及び他の因子に起因する。これらの複雑な因子に取り組み、且つプローブが受信した混入信号から反射マーカ信号を区別するために、スイッチ54は、マーカ40の反射特性の周期的変調を行う。
【0049】
具体的には、マーカ40は、2つの形状因子、例えば
図7A及び
図7Bに示す反射体間で、その構造に周期的に変更が行われる。例えば、本明細書の他の箇所でさらに説明するように、超広帯域(UWB)レーダを使用する受信信号のデジタル信号処理は、マーカスイッチイング周波数によって変調された信号の同期検波を使用する。これは、変調周期内に他の混入信号が変化しないままであるため、マーカ信号の信号雑音(SNR)を著しく高める。同期検波器のための機構をもたらすために、マーカスイッチイング処理は、マーカ40によって受信される近赤外(IR)光パルスで乳房組織を照射することによって、プローブ20内で制御される。
【0050】
マーカ反射性形状因子のスイッチイングは、光起電力モードで動作するダイオード52の組によって制御される。ダイオード52がプローブ102からの光(
図7Bに矢印70によって表わされる)を受光すると、ダイオード52は電圧を発生させ、それがスイッチ54のゲート(G)と源(S)との間に印加され、それにより、
図7Bに示すように、ドレーン(D)と源(S)とを閉鎖して接続し、両アンテナワイヤ44を接続する。光がオフのとき、
図7Aに示すように、スイッチ54は開放し、且つドレーン(D)及び源(S)が電気的に切断される。
【0051】
さらに、ESD機器58は、スイッチ54に対して平行に、例えば、ドレーン(D)と源(S)との間に結合され得、静電気放電事象に対する保護をもたらす。例えば、スイッチ54としてのE-pHEMT機器の使用は、ドレーン(D)と源(S)との間の、それゆえ、マーカのアンテナを通る絶対的な最大電圧に対する制限を設定する。VMMK-1225 E-pHEMTの例示的な実施形態では、スイッチ54を通る最大電圧は、約5ボルト(5V)以下とし得る。現代の乳房手術は、電子切断ツール、電気焼灼ツール、及び/又は他のツール(図示せず)の使用を伴うことが多く、これらは、数kVの電気パルスを発生させ得る。そのようなツールがマーカ40に接近する場合、ツールは、アンテナワイヤ44を通る非常に大きい電圧を引き起こし、且つスイッチ54を破壊し得る。
【0052】
そのようなツールの動作中のマーカ40の生存性を高めるために、ESD保護機器58は、電圧が最大値に近づくとき、スイッチ58機器の電圧を切り捨てる(truncates)。一般的に、マーカ40内のESD保護機器58は、プローブ1020からの信号からくる振幅が小さいUWB信号の周波数範囲に対してアンテナ44をシャント(shunt)させない低容量を有する必要がある。例示的な実施形態では、ESD保護機器58は、過渡電圧抑制器、例えばツェナー(Zener)ダイオード、低容量バリスタなどとし得る。
【0053】
図1に示すように、例えばプローブ20及び1つ以上のマーカ40を含むシステム10は、医療処置中に、例えば乳房生検又は腫瘤摘出処置において使用され得、例えば
図9に示すように、例えば、病変部若しくは他の標的組織領域の場所の限定を容易にする、及び/又は切り離し及び/又は乳房90若しくは他の体構造からの検体の除去を容易にする。システム10は、乳房病変部の場所の限定において特に有用であると説明されるが、例えば、参照することにより本書に援用される出願に説明されているように、システム10はまた、体の他の領域における他の対象物の場所の限定にも使用され得ることに留意すべきである。
【0054】
処置前に、標的組織領域、例えば腫瘍又は他の病変部は、従来の方法を使用して特定され得る。例えば、乳房90内の病変部(図示せず)は、例えばマンモグラフィ及び/又は他の画像化を使用して特定され得、且つ病変部を除去するための決定が行われ得る。マーカ40は、例えば針又は他の送達機器、例えば
図8A及び
図8Bに示す送達機器60を使用して、標的病変部内又はそれに隣接して、乳房90内に植込まれ得る。
【0055】
図8A及び
図8Bに示す実施形態では、送達機器60は、組織を通って標的組織領域(図示せず)内へ導入するようなサイズにされ且つ1つ又は複数のマーカ40を備える、近位端部62a及び遠位端部62bを含むシャフト62を含み得る。送達機器60は、近位端部62aと遠位端部62bとの間で、シャフト62の少なくとも一部分に延在するルーメン64と、1つ以上のマーカ40を連続的に又はそうでなければルーメン64から独立して選択的に送達する、シャフト62内で摺動自在なプッシャー部材66とを含み得る。
【0056】
図示の通り、シャフト62の遠位端部62bは、面取りされ得る、尖らされ得る、及び/又は他の方法で鋭くされ得、シャフト62が、組織を通って直接導入され得るようにする。或いは、例えば、参照することにより本書に援用される出願に説明されているように、送達機器60は、以前に組織を通して配置されたカニューレ、シース、又は他のチューブ状部材(図示せず)を通って導入され得る。任意選択的に、遠位端部62bは、例えば、放射線不透過性材料、エコー発生性(echogenic)材料、又は他の材料から形成されたバンド又は他の特徴を含み得、これにより、例えば、X線透視検査、超音波、電磁信号などを使用して、導入中の遠位端部62bの監視を容易にし得る。
【0057】
図示の通り、プッシャー部材66は、ルーメン64内に、1つ又は複数のマーカ40に隣接して配置されたピストン又は他の要素(図示せず)と、1つ又は複数のマーカ40をルーメン64から押すための、ピストンに結合されたプランジャー又は他のアクチュエータ68とを含む。例えば、
図8Aに示すように、シャフト62の遠位端部62a(そこにマーカ40を備える)は、乳房90(又は他の組織)に挿入され、且つ前進又は他の方法で位置決めされ得、マーカ40を、例えば癌病変部(図示せず)内の標的箇所に配置する。任意選択的に、外部画像化は、病変部に対するマーカ40の位置を確認するために使用され得る。ひとたび標的箇所になったら、
図8Bに示すように、シャフト62は、プッシャー部材66に対して引っ込められ得、それにより、マーカ40を展開する。任意選択的に、送達機器60は、複数のマーカ(図示せず)を備えてもよく、及びシャフト62は、追加的なマーカを展開するために、1回以上再位置決めされ得る。
【0058】
或いは、所望の場合には、プッシャー部材66は、シャフト62を引っ込めるのではなく、ルーメン64から1つ又は複数のマーカ40を連続的に展開するために、前進させられ得る。別の代替形態では、トリガ機器又は他の自動アクチュエータ(図示せず)が、シャフト62の近位端部62aに設けられ得、これは、例えば、参照することにより本書に援用される出願に説明されているように、起動するたびにシャフト62を十分に引き込むことが可能で、例えば、個々のマーカ40を遠位端部62bから送達する。
【0059】
ひとたび1つ又は複数のマーカ40が植込まれたら、
図9に示すように、プローブ20は、患者の皮膚に接して、例えば乳房90に接して配置され得る。プローブ20の1つ又は複数のアンテナ32Tからの信号は、光源からのパルス光と一緒に送られ得、マーカ40が信号を受信してプローブ20へ戻るように反射するときにスイッチ54を開閉させる。例えば、プローブアンテナ、マーカ40の近くにある患者の体内の組織又は他の構造などに起因して、かなりのクラッター、クロストーク、又はプローブ20によって受信される他の雑音がある場合、2つの状態(スイッチ54の開放及び閉鎖)からの反射信号は、互いに差し引かれ、他の雑音を実質的になくされ、且つプローブ20がマーカ40を特定及び/又は位置決定できるようにし得る。それゆえ、プローブ20は、信号の信号雑音比を高くするために、変調され反射された信号を使用し得る。
【0060】
ディスプレイ38aは、ユーザに情報を表示して、乳房90内でのマーカ40の位置決定を容易にし得る。例えば、ディスプレイ38aは、単に、予め決められた基準に基づいて、例えば、マーカ40からプローブ20までの相対距離に基づいて、距離、角度、向き、及び/又は他のデータを提供する読み出しとし得る。距離情報は、インチ(in.)又はセンチメートル(cm)などの長さの単位で距離を表す数値として表示され得る。それに加えて又はその代わりに、表示装置38にあるスピーカ38bが、距離の可聴表示、例えば、プローブ20がマーカ40に近づくと速度が速くなる離間したパルスを生じてもよい。別の代替形態では、ディスプレイ38aは、マーカ40、プローブ20、プローブ20からマーカ40までの距離、及び/又はマーカを含む体の一部(例えば乳房)の生理学的な図を示すグラフィックイメージ(例えば、2次元又は3次元イメージ)を提示し得る。
【0061】
例えば、
図9に示すように、プローブ20の遠位端部24は、患者の皮膚に隣接して又はそれと接触して、例えば、一般的に病変部の上方に、及び/又はそうでなければ、全体的に病変部及びマーカ40に向けて配置されて、起動され得る。プローブ20の送信アンテナ(図示せず)は電磁信号34Tを発し、これは、組織を通って移動し、且つマーカ40で反射される。戻り信号34Rは、プローブ20内の受信アンテナ(図示せず)へ戻るように反射され、これは、そのため、マーカ40とプローブ20の遠位端部24との間の空間関係、例えば、距離及び/又は向きの角度を決定し、外科医が、切り離しの適切な方向を決定するのを容易にし得る。
【0062】
さらに、実質的に同時に、プローブ20は、光パルス38aを送信し得、これは、マーカ40のダイオード52によって受信され得る(図示せず、例えば、
図7A及び
図7B参照)。その代わりに、ダイオード52は電圧を発生させ、スイッチ54を開閉させ得る。これにより、マーカ40が、プローブ20へ戻るように反射された信号の位相を変更するようにし、それにより、信号を、例えば差し引くことによって、処理して、マーカ40、それゆえ標的病変部を特定する及び/又は位置決定する。
【0063】
その後、組織が、例えば患者の皮膚に切開部を生じ、且つ間の組織を、例えば、病変部の周りの標的マージンに対応する所望の深さに到達するまで切り離すことによって、切り離され得る。組織検体が、従来の腫瘤摘出処置を使用して、切除され得るか又は他の方法で除去され得、例えば、マーカ40は、除去された検体1046内に留まっている。
【0064】
本明細書の任意の実施形態の図示の要素又は構成要素は、具体的な実施形態の例示であり、且つ本明細書で開示されている他の実施形態で又はそれらと組み合わせて使用され得ることが認識される。
【0065】
本開示は、様々な修正例、及び代替的な形態の影響を受けやすいが、その具体例は図面に示されており、且つ本明細書で詳細に説明されている。しかしながら、本発明は、開示された特定の形態又は方法に限定されず、それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲に入る全ての修正例、等価物及び代替例を網羅するものとすることが理解されるべきである。