(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】冷却装置およびアレイモジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 23/427 20060101AFI20241004BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20241004BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L23/46 A
F28D15/02 M
F28D15/02 101D
F28D15/02 101H
F28D15/02 101K
H05K7/20 Q
(21)【出願番号】P 2022030874
(22)【出願日】2022-03-01
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021100795
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 雄基
(72)【発明者】
【氏名】森山 貴司
(72)【発明者】
【氏名】吉瀬 幸司
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 貴夫
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-132661(JP,A)
【文献】特開2021-061293(JP,A)
【文献】米国特許第6948556(US,B1)
【文献】特開2015-055380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/427
F28D 15/02
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの第1発熱体を冷却する冷却装置であって、
冷媒が循環する冷媒回路を備え、
前記冷媒回路は、
前記少なくとも1つの第1発熱体から前記冷媒に熱を伝える第1受熱部と、
前記第1受熱部から流出した前記冷媒から熱を奪う放熱部と、
前記第1受熱部および前記放熱部よりも下方に配置されており、前記第1受熱部および前記放熱部の各々と直列に接続されており、前記第1受熱部から流出した液相の前記冷媒および前記放熱部から流出した液相の前記冷媒が溜まる液溜まり部と、
前記液溜まり部から前記第1受熱部に前記冷媒を送り出すポンプとを含み、
前記第1受熱部は、前記少なくとも1つの第1発熱体が搭載される受熱面と、前記受熱面よりも上方に位置し前記ポンプから送り出された前記冷媒が流入する流入部と、前記受熱面よりも上方に位置し前記冷媒が前記放熱部に流出する第1流出部と、前記受熱面よりも下方に位置し前記冷媒が前記液溜まり部に流出する第2流出部とを有し、
前記冷媒回路は、前記ポンプと前記第1受熱部の前記流入部との間を接続する第1流路をさらに含む、冷却装置。
【請求項2】
前記第1流路は、少なくとも1つの第2発熱体から前記冷媒に熱を伝える第2受熱部を有している、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷媒回路は、
前記第1流出部と前記放熱部との間を接続する第2流路と、
前記放熱部と前記ポンプとの間を接続する第3流路と、
前記第2流路よりも下方に配置されており、前記第2流出部から流出した前記冷媒を前記第3流路に戻すための第4流路とを含み、
前記ポンプの動作停止時に、前記第1流路よりも下流であって前記ポンプよりも上流側に溜まる液相の前記冷媒の体積のうち前記第4流路よりも下方に位置する第1空間に溜まる前記冷媒の体積は、前記第1流路のうち前記冷媒の液面より上方に位置する上方空間の体積よりも大きく、
前記ポンプの動作停止時に、前記第1流路よりも下流であって前記ポンプよりも上流側に溜まる液相の前記冷媒の体積のうち前記第1空間よりも上方に溜まる前記冷媒の体積は、前記上方空間の体積と同等あるいはそれよりも小さい、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記冷媒回路は、
前記第1流出部と前記放熱部との間を接続する第2流路と、
前記放熱部と前記ポンプとの間を接続する第3流路と、
前記第2流路よりも下方に配置されており、前記第2流出部から流出した前記冷媒を前記第3流路に戻すための第4流路と、
前記第2流路と前記第4流路との間を接続する第5流路とをさらに含み、
前記第2流路は、第1配管を有し、
前記第5流路は、前記第1配管から分岐されており、前記第1配管から離れるにつれて下方に向かうように延びている第2配管を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記第1配管の管径は、前記第2配管の管径よりも大きい、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記第2配管は、管状の母材と、前記母材の内周面上に配置された表面層とを含み、
前記表面層と前記冷媒の液滴との接触角は、前記母材と前記冷媒の液滴との接触角よりも大きい、請求項4または5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記第2流路は、前記第1流出部側から前記第2配管側に向かうにつれて下方に向かうように延びている第1傾斜部を有している、請求項4~6のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記第2流路は、前記第1傾斜部よりも下流側に位置し、前記第1傾斜部から離れるにつれて上方に向かうように延びている第2傾斜部を有している、請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記冷媒回路は、前記第2流路のうち前記第1配管よりも前記放熱部側に位置する部分と前記第5流路との間を接続する第6流路をさらに含み、
前記第6流路は、前記第5流路と接続されている部分に向かうにつれて下方に向かうように、傾斜している、請求項4~8のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記第1受熱部の内周面には、複数の溝が形成されている、請求項1~9のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記冷媒回路は、前記第1流路から分岐されており、かつ前記第1受熱部において前記流入部よりも下方に位置する部分に接続されている少なくとも1つの分岐部をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの分岐部は、複数の分岐部であり、
前記複数の分岐部は、第1分岐部と、前記第1分岐部よりも下方に位置する第2分岐部とを有し、
前記第2分岐部の流路断面積は、前記第1分岐部の流路断面積よりも小さい、請求項11に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記冷媒回路は、少なくとも前記第2分岐部内に配置されている流路抵抗体をさらに含む、請求項12に記載の冷却装置。
【請求項14】
アレイモジュールであって、
請求項1~13のいずれか1項に記載の冷却装置と、
前記受熱面に搭載され、かつ少なくとも重力方向に配列された複数の前記第1発熱体とを備え、
前記アレイモジュールの動作時に、前記冷媒の液面が、前記第2流出部よりも下方に配置される、アレイモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却装置およびアレイモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体にて生じた熱量を輸送し冷却するために、冷媒の潜熱を利用した冷却装置が知られている。このような冷却装置は、複数の発熱体が配列されたアレイモジュールの冷却にも利用されている。
【0003】
上記冷却装置では、発熱体から冷媒に熱を伝えるための受熱部の伝熱面積が大きくなると、受熱部内の冷媒の容積が増大し、受熱部内において冷媒が沸騰を開始するまでに要する時間が長くなり、受熱部の温度が一時的に上昇して高くなる。
【0004】
特開2015-129594号公報(特許文献1)には、受熱部に流入する冷媒を沸騰手前の状態にまで十分に加熱するための予熱部を備えた冷却装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置では、冷媒が受熱部内を下方から上方に流れるように設けられているため、受熱部の下方を流れる冷媒中の液相冷媒の割合は、受熱部の上方を流れる冷媒中の液相冷媒の割合よりも高くなる。言い換えると、受熱部を流れる冷媒の乾き度は、一様ではない。
【0007】
そのため、特許文献1に記載の冷却装置では、受熱部の伝熱面が上下方向に広くなるほど、冷却性能のばらつきが大きくなり、安定して冷却することは困難となる。
【0008】
本開示の第1の目的は、伝熱面積が大きい場合にも、冷却性能のばらつきが抑制されている冷却装置を提供することにある。
【0009】
本開示の第2の目的は、複数の発熱体を備え、複数の発熱体の各々に対する冷却性能のばらつきが抑制されているアレイモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る冷却装置は、少なくとも1つの第1発熱体を冷却する冷却装置である。冷却装置は、冷媒が循環する冷媒回路を備える。冷媒回路は、少なくとも1つの第1発熱体から冷媒に熱を伝える第1受熱部と、第1受熱部から流出した冷媒から熱を奪う放熱部と、第1受熱部および放熱部よりも下方に配置されており、第1受熱部および放熱部の各々と直列に接続されており、第1受熱部から流出した液相の冷媒および放熱部から流出した液相の冷媒が溜まる液溜まり部と、液溜まり部から第1受熱部に冷媒を送り出すポンプとを含む。第1受熱部は、少なくとも1つの第1発熱体が搭載される受熱面と、受熱面よりも上方に位置しポンプから送り出された冷媒が流入する流入部と、受熱面よりも上方に位置し冷媒が放熱部に流出する第1流出部と、受熱面よりも下方に位置し冷媒が液溜まり部に流出する第2流出部とを有する。冷媒回路は、ポンプと第1受熱部の流入部との間を接続する第1流路をさらに含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、伝熱面積が大きい場合にも、冷却性能のばらつきが抑制されている冷却装置を提供できる。また、本開示によれば、複数の発熱体を備え、複数の発熱体の各々に対する冷却性能のばらつきが抑制されているアレイモジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る冷却装置およびアレイモジュールを説明するための図である。
【
図2】
図1中の線分II-IIから視た断面図である。
【
図3】実施の形態1に係る冷却装置およびアレイモジュールの第1変形例を説明するための断面図である。
【
図4】実施の形態1に係る冷却装置およびアレイモジュールの第2変形例を説明するための断面図である。
【
図5】実施の形態2に係る冷却装置およびアレイモジュールが動作を停止している状態を説明するための図である。
【
図6】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールを説明するための図である。
【
図7】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールの第1変形例を説明するための図である。
【
図8】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールの第2変形例を説明するための図である。
【
図9】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールの第3変形例を説明するための図である。
【
図10】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールの第4変形例を説明するための図である。
【
図11】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールの気液分離管の変形例を説明するための図である。
【
図12】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールの第1配管の変形例を説明するための図である。
【
図13】実施の形態3に係る冷却装置およびアレイモジュールの第1配管の変形例を説明するための図である。
【
図14】実施の形態4に係る冷却装置およびアレイモジュールを説明するための図である。
【
図16】
図15中の線分XVI-XVIから視た断面図である。
【
図17】実施の形態4に係る冷却装置の第1変形例を説明するための断面図である。
【
図18】実施の形態4に係る冷却装置の第2変形例を説明するための断面図である。
【
図19】実施の形態4に係る冷却装置の第3変形例を説明するための断面図である。
【
図20】実施の形態5に係る冷却装置およびアレイモジュールを説明するための図である。
【
図21】実施の形態5に係る冷却装置およびアレイモジュールの第1変形例を説明するための図である。
【
図22】実施の形態5に係る冷却装置およびアレイモジュールの第2変形例を説明するための図である。
【
図23】
図22に示される第2変形例の第1受熱部の変形例を説明するための断面図である。
【
図24】実施の形態5に係る冷却装置およびアレイモジュールの第3変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、説明の便宜上、各図には互いに直交するX方向、Y方向、およびZ方向を有する直交座標系が示されている。Z方向は、重力方向とは反対方向である。以下では、比較対象よりも重力方向に沿った方向を下方とよび、その反対を上方とよぶ。
【0014】
実施の形態1.
<冷却装置およびアレイモジュールの構成>
図1に示されるように、実施の形態1に係るアレイモジュール200は、冷却装置100と、冷却装置100によって冷却される複数の発熱体110(第1発熱体)とを備える。複数の発熱体110の各々は、通電により発熱する電子部品である。複数の発熱体110の各々は、少なくともZ方向に配列している。複数の発熱体110の各々は、Z方向およびX方向の各々に配列していてもよい。
【0015】
図1に示されるように、冷却装置100は、冷媒が循環する冷媒回路を備える。冷媒回路には、冷媒が封入されている。冷媒回路に封入された冷媒は、気液間の相変化を伴いながら、冷媒回路を循環する。冷媒回路は、第1受熱部1、放熱部2、液溜まり部3、およびポンプ4を含む。冷媒回路は、さらに、ポンプ4と第1受熱部1との間を接続する第1流路F1、第1受熱部1と放熱部2との間を接続する第2流路F2、放熱部2とポンプ4との間を接続する第3流路F3、および第1受熱部1と第3流路F3との間を接続する第4流路F4を含む。
【0016】
第1受熱部1は、複数の発熱体110から第1受熱部1の内部を流れる冷媒に熱を伝えるように設けられている。第1受熱部1は、複数の発熱体110に生じた熱が第1受熱部1の内部を流れる液相冷媒の潜熱となるように設けられている。
【0017】
第1受熱部1は、筒状部材10を有する。筒状部材10の軸線は、Z方向に沿って延びている。筒状部材10の内周面に囲まれた内部空間は、上記冷媒回路の一部を構成している。筒状部材10は、例えば1つの内部空間のみを有している。なお、筒状部材10は、互いに区画された複数の内部空間を有していてもよい。
【0018】
筒状部材10の外周面の少なくとも一部は、複数の発熱体110が搭載される受熱面10Aを構成している。受熱面10Aは、例えばZ方向およびX方向に沿って延びる1つの平面である。受熱面10Aは、筒状部材10の外周面のうちZ方向に沿って延びる少なくとも1つの平面または曲面であればよい。筒状部材10の外周面のうちZ方向に沿って延びる複数の平面が受熱面10Aを構成していてもよい。好ましくは、筒状部材10を構成する材料は、熱伝導率が比較的高い材料であり、例えば銅(Cu)およびアルミニウム(Al)の少なくともいずれかを含む。好ましくは、筒状部材10の受熱面10Aおよび内周面は、単一の部材の表面である。
【0019】
受熱面10Aには、複数の発熱体110の各々を固定するための構造が設けられている。受熱面10Aには、例えば複数の発熱体110の各々を機械的に締結するための複数のネジ穴が形成されている。
【0020】
受熱面10Aの面積は、特に制限されないが、例えば1m2以上である。受熱面10Aの面積は、10m2以上であってもよい。受熱面10AのZ方向の長さは、特に制限されないが、例えば1m以上である。受熱面10AのZ方向の長さは、例えば10m以上であってもよい。受熱面10AのZ方向の長さは、例えば受熱面10AのX方向の長さよりも長い。
【0021】
第1受熱部1は、筒状部材10のZ方向の上方端部に接続されており、液相冷媒が筒状部材10の外部から内部空間に流入するための流入部11をさらに有する。流入部11は、後述する第1流路F1の上方端部に接続されている流入口と、下方を向いて開口しており筒状部材10の上方の開口部と接続されている流出口11Aとを有している。第1流路F1を流れた液相冷媒は、流入部11の流入口および流出口11Aを順に流れて、筒状部材10の内部空間に流入する。流入部11は、流入部11から筒状部材10内に流入した液相冷媒が筒状部材10の内周面に沿って上方から下方に流れるように設けられている。
【0022】
第1受熱部1は、筒状部材10のZ方向の上方端部に接続されており、気相または気液二相の冷媒(以下、ガス冷媒とよぶ)が筒状部材10の内部空間から外部に流出するための第1流出部12をさらに有する。第1流出部12は、後述する第2流路F2に接続されている。第1流出部12は、筒状部材10の内部空間において蒸発したガス冷媒が当該内部空間から流出するように設けられている。第1流出部12は、液相冷媒が流出しにくいように設けられている。第1流出部12は、下方を向いて開口しており筒状部材10の上方の開口部と接続されている流入口12Aと、後述する第2流路F2の上流側に位置する端部に接続されている流出口とを有している。Z方向から視て、第1流出部12の流入口12Aは、例えば流入部11の流出口11Aの一部と重なるように設けられている。Z方向から視て、第1流出部12の流入口12Aは、例えば流入部11の流出口11Aの内周面よりも内側に配置されている。Z方向から視て、第1流出部12の流入口12Aは、例えば流入部11の流出口11Aの中央部と重なるように配置されている。なお、第1流出部12の流入口12Aは、Z方向から視て、発熱体110が搭載されている筒状部材10の受熱面10Aと間隔を空けて配置されていればよい。例えば、Z方向から視て、第1流出部12の流入口12Aは、流入部11の流出口11Aの中央部に対して受熱面10Aとは反対側に配置されていてもよい。
【0023】
第1受熱部1は、筒状部材10のZ方向の下方端部に接続されており、液相冷媒が筒状部材10の内部空間から外部に流出するための第2流出部13をさらに有する。第2流出部13は、後述する第4流路F4に接続されている。第2流出部13は、上方を向いて開口しており筒状部材10の下方の開口部と接続されている流入口と、後述する第4流路F4の上方端部に接続されている流出口とを有している。
【0024】
第1受熱部1は、筒状部材10の内部において、内周面に沿って上方から下方に向かう液相冷媒の流れと、当該液相冷媒の流れよりも内側を下方から上方に向かうガス冷媒の流れとが同時に形成されるように、設けられている。好ましくは、筒状部材10の内周面に、液相冷媒がガス冷媒と衝突することにより飛散することを抑制するために、溝ならびに一端および他端の双方が当該内周面に開口している連通孔の少なくともいずれかが形成されている。筒状部材10の内周面には、例えば多孔体またはメッシュなどの構造体が取り付けられている。
【0025】
放熱部2は、第1受熱部1から流出したガス冷媒から熱を奪うように設けられている。言い換えると、放熱部2は、第1受熱部1にて蒸発したガス冷媒を液相冷媒に凝縮する凝縮器である。放熱部2は、ガス冷媒が放熱部2の外部から内部に流入するための流入口と、流入口よりも下方に配置されており、液相冷媒が放熱部2の内部から外部に流出するための流出口を有する。放熱部2の流入口は、後述する第2流路F2を介して第1受熱部1の第1流出部12と接続されている。放熱部2の流出口は、後述する第3流路F3の上方端部に接続されている。
【0026】
放熱部2は、例えば上記冷媒回路を流れる冷媒が外部を流れる空気と熱交換する熱交換器である。放熱部2は、例えばフィンアンドチューブ型の熱交換器である。このような放熱部2は、内部を冷媒が流れる伝熱管と、伝熱管と接合されたフィンとを備える。フィンの構造は、特に制限されないが、例えばプレートフィン、棒状フィン、またはコルゲートフィンである。伝熱管とフィンとの接合方法は、特に制限されないが、例えば圧入、かしめ、ロウ付け、はんだ、または熱伝導性が良好なグリースもしくは接着剤を用いた接着である。放熱部2は、上記冷媒回路を流れる冷媒が他の回路を流れる熱媒体と熱交換するプレート式熱交換器であってもよい。なお、
図1では、放熱部2内に1つの冷媒流路のみが図示されているが、放熱部2の内部には複数の冷媒流路が形成されていてもよい。
【0027】
液溜まり部3は、第1受熱部1の第2流出部13および放熱部2の流出口よりも下方に配置されている。液溜まり部3は、第1受熱部1の第2流出部13から流出した液相冷媒、および放熱部2の流出口から流出した液相冷媒が溜まるように設けられている。液溜まり部3は、上記冷媒回路において、第1受熱部1および放熱部2よりも下流であってポンプ4よりも上流に配置されている。液溜まり部3は、後述する第3流路F3の一部および第4流路F4の少なくとも一部により構成されている。
【0028】
ポンプ4は、液溜まり部3から第1受熱部1に液相冷媒を送り出すように設けられている。ポンプ4は、液相冷媒を吸い込む吸込口と、吸込口から吸い込んだ液相冷媒を吐き出す吐出口とを有する。上述のように、ポンプ4の吸込口は、後述する第3流路F3と接続されている。ポンプ4の吐出口は、第1流路F1の下方端部に接続されている。ポンプ4は、第1受熱部1の第2流出部13および放熱部2の流出口よりも下方に配置されている。
【0029】
第1流路F1は、ポンプ4から吐出された液相冷媒を第1受熱部1に流入させるための流路である。第1流路F1は、ポンプ4の吐出口と第1受熱部1の流入部11の流入口との間を接続している。第1流路F1は、ポンプ4の吐出口と接続されている下方端部と、第1受熱部1の流入部11の流入口と接続されている上方端部とを有している。第1流路F1は、Z方向に沿って延びている配管5を有している。第1流路F1のZ方向の長さは、第1受熱部1のZ方向の長さよりも長い。
【0030】
第2流路F2は、第1受熱部1にて蒸発したガス冷媒を放熱部2に流入させるための流路である。第2流路F2は、第1受熱部1の第1流出部12と放熱部2の流入口との間を接続している。第2流路F2は、Z方向と交差する方向に沿って延びている配管6を有している。配管6は、例えばY方向に沿って延びている。
【0031】
第3流路F3は、放熱部2にて凝縮された液相冷媒をポンプ4に戻すための流路である。第3流路F3は、放熱部2の流出口とポンプ4の吸込口との間を接続している。第3流路F3は、例えば液相冷媒が貯留されるタンク9を含む。タンク9は、第1受熱部1の第2流出部13および放熱部2の流出口よりも下方に配置されている。
【0032】
第4流路F4は、第1受熱部1の流入部11から筒状部材10の内部に流入した液相冷媒のうち第2流出部13に到達した液相冷媒を液溜まり部3に戻すための流路である。第3流路F3は、第1受熱部1の第2流出部13と第3流路F3との間を接続している。第4流路F4は、Z方向と交差する方向に沿って延びている配管7を有している。配管7は、例えばY方向に沿って延びている。配管7は、例えば、後述するアレイモジュール200の動作時において、第2流出部13から流出した液相冷媒が配管7の内部を流れるように設けられている。言い換えると、配管7は、液戻し部8を構成している。なお、配管7は、アレイモジュール200の動作時において、第2流出部13から流出した液相冷媒が配管7の内部の下方部分のみを流れるように設けられていてもよい。
【0033】
図2に示されるように、第1流路F1の配管5、第1受熱部1、および放熱部2は、例えばY方向において同一直線上に配置されている。液溜まり部3は、Z方向から視て第1受熱部1および放熱部2の各々の少なくとも一部と重なるように配置されている。第1受熱部1の筒状部材10の内部の液相冷媒の流れは、例えば筒状部材10の内部のガス冷媒の流れをY方向において挟むように形成される。なお、Z方向から視て、第1流出部12の流入口12Aは、例えば流入部11の流出口11AとY方向に並んで配置されていてもよい。筒状部材10の内部の液相冷媒の流れは、例えば筒状部材10の内部のガス冷媒の流れに対して、Y方向において受熱面10A側にのみ形成されてもよい。
【0034】
<冷却装置およびアレイモジュールの動作>
次に、冷却装置およびアレイモジュールの動作を説明する。
図1中の実線の矢印は、当該矢印に隣り合う流路を流れる液相冷媒の主流の向きを示している。
図1中の破線の矢印は、当該矢印に隣り合う流路を流れる気相または気液二相の冷媒の主流の向きを示している。
【0035】
冷媒回路に封入された冷媒は、ポンプ4によって冷媒回路内を循環する。冷媒回路に封入された冷媒量は、アレイモジュール200の動作時に、第1流路F1よりも下流に形成される冷媒の液面が、最も下方に配置された発熱体110よりも下方に形成されるように設定されている。好ましくは、冷媒回路に封入された冷媒量は、アレイモジュール200の動作時に、第1流路F1よりも下流に形成される冷媒の液面が、第1受熱部1よりも下方であって、第3流路F3内に形成されるように設定されている。異なる観点から言えば、好ましくは、冷媒回路に封入された冷媒量は、アレイモジュール200の動作時において、液相冷媒が第1流路F1の全体、第3流路F3の一部、および液溜まり部3の全体を満たすように、設定されている。
【0036】
ポンプ4は、液溜まり部3から第1受熱部1の流入部11に液相冷媒を送り出す。ポンプ4の吐出口から吐き出された液相冷媒は、第1流路F1を上方に向かって流れた後、第1受熱部1の流入部11に流入する。流入部11から筒状部材10の内部空間に流入した液相冷媒は、筒状部材10の内周面に沿って上方から下方に流れる。受熱面10Aに搭載された発熱体110が発熱していると、発熱体110に生じた熱は、受熱面10Aおよび筒状部材10の内周面を経て液相冷媒に伝わり、液相冷媒を蒸発させるための潜熱に利用される。この結果、発熱体110および筒状部材10は、冷媒に熱を奪われるため、冷却される。
【0037】
上記潜熱を吸収したガス冷媒は、筒状部材10の内部を下方から上方に向かって流れる。つまり、筒状部材10の内部において、冷媒の気液分離が行われる。ガス冷媒は、第1流出部12および第2流路F2を経て放熱部2に流入し、放熱部2において低温の熱輸送媒体と熱交換する。この結果、ガス冷媒は、冷却され凝縮し、液相冷媒に変化する。放熱部2にて凝縮した液相冷媒は放熱部2の流出口から流出(例えば滴下)し、第3流路F3を経てポンプ4に流入する。
【0038】
また、上記潜熱を吸収することなく筒状部材10の下方端部に達した液相冷媒は、第2流出部13および第3流路F3を経て液溜まり部3に流入する。
【0039】
<冷却装置およびアレイモジュールの効果>
冷却装置100は、第1受熱部1に流入した液相冷媒が第1受熱部1内を上方から下方に向かって流れるように設けられているため、液相冷媒が受熱部内を下方から上方に向かって流れる上記特許文献1に記載の冷却装置と比べて、第1受熱部1の下方を流れる冷媒中の液相冷媒の割合と、第1受熱部1の上方を流れる冷媒中の液相冷媒の割合との差が小さくなる。そのため、冷却装置100では、特許文献1に記載の冷却装置と比べて、冷却性能のZ方向のばらつきが抑制されている。
【0040】
特に、冷却装置100では、受熱面10AがZ方向に広く設けられた場合にも、受熱面10Aに対する冷却性能のZ方向のばらつきが抑制され得る。よって、冷却装置100は、複数の発熱体110がZ方向に配列されたアレイモジュール200に好適である。
【0041】
また、上記特許文献1の冷却装置では、液相冷媒が受熱部内を下方から上方に向かって流れるため、動作時において液相冷媒が受熱部の下方部に貯留することになる。この場合、受熱部に流入する液相冷媒を予加熱しなければ、受熱部の下方部に貯留された液相冷媒は蒸発しにくく、いわゆる冷媒の沸騰遅れが生じやすい。また、仮に液相冷媒を予加熱すると、受熱部に貯留された液相冷媒の温度が上昇することにより受熱部の温度も上昇し、発熱体の冷却効率が低下する。
【0042】
これに対し、冷却装置100では、冷媒回路に封入された冷媒量は、アレイモジュール200の動作時において、液相冷媒が第1流路F1の全体、第3流路F3の一部、および液溜まり部3の全体を満たすように、設定されている。言い換えると、冷却装置100は、アレイモジュール200の動作時において、液相冷媒が第1受熱部1の内部に貯留されないように設けられている。そのため、冷却装置100では、特許文献1の冷却装置と比べて、第1受熱部1の下方部においても液相冷媒は蒸発しやすく冷媒の沸騰遅れが抑制され得る。その結果、冷却性能のZ方向のばらつきが抑制されている。さらに、冷却装置100では、沸騰遅れを抑制するために第1受熱部1に流入する液相冷媒を予加熱する必要がないため、特許文献1の冷却装置と比べて、発熱体110をより効率的に冷却できる。
【0043】
<変形例>
図3は、冷却装置100およびアレイモジュール200の第1変形例を示す。
図3に示される第1変形例は、第1流路F1の配管5が第1受熱部1とX方向に並んで配置されている点で、
図2に示される冷却装置100およびアレイモジュール200とは異なる。液溜まり部3は、Z方向から視て、第1受熱部1および放熱部2の各々と重ならない領域に配置されている部分を有している。ポンプ4は、Z方向から視て、第1受熱部1および放熱部2の各々と重ならない領域に配置されている。上述のように、筒状部材10の内部の液相冷媒の流れは、例えば筒状部材10の内部のガス冷媒の流れに対して、Y方向において受熱面10A側にのみ形成されている。
【0044】
図3に示される第1変形例では、
図2に示される冷却装置100およびアレイモジュール200と比べて、Y方向に小型化され得る。
【0045】
図4は、冷却装置100およびアレイモジュール200の第2変形例を示す。
図4に示される第2変形例は、第1流路F1が少なくとも1つの発熱体120(第2発熱体)から液相冷媒に熱を伝える第2受熱部14を有している点で、
図2に示される冷却装置100およびアレイモジュール200とは異なる。第2受熱部14は、複数の発熱体111に生じた熱が第2受熱部14の内部を流れる液相冷媒に顕熱として伝わるように設けられている。第2受熱部14は、例えば複数の発熱体111が搭載される受熱面14Aと、受熱面14Aよりも上方に位置しポンプから送り出された液相冷媒が流入する図示しない流入部と、受熱面14Aよりも上方に位置し液相冷媒が第1受熱部1に流出する図示しない流出部とを有する。
【0046】
図4に示される第2変形例では、第1受熱部1に流入する液相冷媒が第2受熱部14にて予加熱される。そのため、第2変形例では、
図2に示される冷却装置100およびアレイモジュール200と比べて、第1受熱部1に流入した液相冷媒の温度と当該液相冷媒の沸点(飽和温度)との差が小さくなるため、第1受熱部1に流入した液相冷媒が蒸発しやすくなる。その結果、発熱体110が発熱してから冷却されるまでの時間を短縮でき、発熱体110を安定して冷却できる。
【0047】
実施の形態2.
図5に示されるように、実施の形態2に係る冷却装置101およびアレイモジュール201は、実施の形態1に係る冷却装置100およびアレイモジュール200と基本的に同様の構成を備えるが、冷媒回路および冷媒回路に封入された冷媒量の各々が、アレイモジュール201の動作停止時の冷媒の液面の位置を考慮して設定されている点で、冷却装置100およびアレイモジュール200とは異なる。以下、冷却装置101およびアレイモジュール201が冷却装置100およびアレイモジュール200と異なる点を主に説明する。
【0048】
アレイモジュール201の動作停止時には、ポンプ4も動作を停止している。ポンプ4の動作停止時には、第1流路F1内における冷媒の液面LS、第1受熱部1および第3流路F3のいずれかにおける冷媒の液面LS、ならびに放熱部2および第3流路F3のいずれかにおける冷媒の液面LSの各々のZ方向の高さは、等しくなる。ポンプ4の動作停止時の冷媒の液面LSは、液溜まり部3よりも上方かつ第1受熱部1の流入部11よりも下方に配置される。ポンプ4の動作停止時に、第3流路F3の一部および第4流路F4の全部は、液相冷媒で満たされている。ポンプ4の動作停止時に、液相冷媒は、第1流路F1よりも下流かつポンプ4よりも上流において、第3流路F3のうち第4流路F4よりも下方に位置する第1空間(
図5において冷媒回路のうち領域R1内に位置する空間)、および第1空間よりも上方に位置する第2空間(
図5において冷媒回路のうち領域R2内に位置する空間)に溜まっている。ポンプ4の動作停止時に、冷媒の液面は、第1空間よりも上方に配置される。
【0049】
ポンプ4の動作停止時に、第1空間に溜まる冷媒の体積Vl
1は、第1流路F1のうち冷媒の液面LSより上方に位置する上方空間の体積Vpよりも大きい。ポンプ4の動作停止時に、第1流路F1よりも下流かつポンプ4よりも上流における第2空間に溜まる液相冷媒の体積Vl
2は、第1流路F1のうち冷媒の液面LSより上方に位置する上方空間(
図5において冷媒回路のうち領域R3内に位置する空間)の体積Vpと同等またはそれよりも小さい。
【0050】
図5において、体積Vl
1は、冷媒回路のうち領域R1内に位置する空間の体積である。
図5において、体積Vl
2は、冷媒回路のうち領域R2内に位置する空間の体積である。
図5において、体積Vpは、冷媒回路のうち領域R3内に位置する空間の体積である。
【0051】
このように、冷却装置101では、体積Vl1>体積Vp≧体積Vl2の関係が成立する。
【0052】
第1流路F1の構成、第3流路F3の構成、ならびに液溜まり部3の構成の各々は、上記2つの関係が満たされるかぎりにおいて、任意に変更され得る。
【0053】
第1流路F1の一部分が他の部分よりも拡径されていてもよい。第1流路F1の上方端部と下方端部との間の中央部分が、上方端部および下方端部の各々に対して互いに並列に接続された複数の流路により構成されていてもよい。第3流路F3において第4流路F4と連結された部分とタンク9との間を接続する流路の数、およびタンク9の数は、複数であってもよい。
【0054】
冷却装置101およびアレイモジュール201では、上記関係が成立するため、アレイモジュール201の動作時に冷媒の液面が、確実に発熱体110よりも下方に配置される。そのため、冷却装置101およびアレイモジュール201は、最も下方に配置された発熱体110についても、それよりも上方に配置された発熱体110と同様に、安定して冷却できる。
【0055】
また、冷却装置101およびアレイモジュール201では、上記関係が成立するため、アレイモジュール201の動作時に冷媒の液面が、発熱体110よりも下方に確実に配置される。そのため、冷却装置101およびアレイモジュール201は、最も下方に配置された発熱体110についても、それよりも上方に配置された発熱体110と同様に、安定して冷却できる。
【0056】
また、冷却装置101およびアレイモジュール201では、上記関係が成立するため、アレイモジュール201の動作時に冷媒の液面が液溜まり部3よりも上方であって発熱体110よりも下方に確実に配置され、液戻り部8(
図1参照)が確実に形成される。
【0057】
なお、冷却装置100においても、アレイモジュールが非動作時の液面が配管7内あるいはそれよりも低い位置にあるように冷媒の封入量を設定することで、アレイモジュールの動作時における液面位置が第1受熱部1よりも下方に配置され得る。しかしながら、冷却に必要な冷媒を発熱体110に供給するためには、タンク9およびこれに連結する流路の体積を非動作時に配管5内の液相冷媒の液面よりも上方に位置する空間の体積(Vp)を超えるように大きくする必要があり、その結果、アレイモジュールを大型化する必要がある。
【0058】
これに対し、上記関係が成立する冷却装置101およびアレイモジュール201では、アレイモジュールの動作時に冷媒の液面が第3流路F3において第4冷媒流路F4よりも下方に配置される場合と比べて、第3流路F3の体積を小さくできる。つまり、上記関係が成立する冷却装置101およびアレイモジュール201では、アレイモジュール201の動作時に冷媒の液面が発熱体110よりも下方に確実に配置されながらも、アレイモジュールの動作時に冷媒の液面が第3流路F3において第4冷媒流路F4よりも下方に配置される場合と比べて小型化され得る。
【0059】
なお、実施の形態2に係る冷却装置101およびアレイモジュール201は、冷媒回路および冷媒回路に封入された冷媒量の各々がアレイモジュール201の動作停止時の冷媒の液面の位置を考慮して設定されている点を除き、
図3に示される上記第1変形例および
図4に示される上記第2変形例の少なくともいずれかと同様の構成を有していてもよい。
【0060】
実施の形態3.
図6に示されるように、実施の形態3に係る冷却装置102およびアレイモジュール202は、実施の形態1に係る冷却装置100およびアレイモジュール200と基本的に同様の構成を備えるが、冷媒回路が第2流路F2と第4流路F4との間を接続する第5流路F5をさらに含み、第5流路F5が気液分離管15(第2配管)を有している点で、冷却装置100およびアレイモジュール200とは異なる。以下、冷却装置101およびアレイモジュール201が冷却装置100およびアレイモジュール200と異なる点を主に説明する。
【0061】
気液分離管15は、Z方向に沿って延びている。気液分離管15の上方端部は、第2流路F2の配管6(第1配管)に連結されている。気液分離管15の下方端部は、第3流路F3の配管7に連結されている。つまり、気液分離管15(第2配管)は、第2流路F2の配管6(第1配管)の中間部分から分岐されている。気液分離管15は、配管6から離れるにつれて下方に向かうように延びている。気液分離管15の内周面は、例えば平滑面である。
【0062】
冷却装置102およびアレイモジュール202では、配管6を流れるガス冷媒、および気液分離管15に流入したガス冷媒は、重力の作用のみにより気液分離される。配管6を流れるガス冷媒から気液分離された液相冷媒は、気液分離管15を経て第3流路F3に流れる。さらに気液分離管15に流入したガス冷媒から気液分離された液相冷媒は、気液分離管15から第3流路F3に流れる。そのため、冷却装置102およびアレイモジュール202の放熱部2に流入するガス冷媒の乾き度は、冷却装置100およびアレイモジュール200の放熱部2に流入するガス冷媒の乾き度よりも高くなる。その結果、冷却装置102およびアレイモジュール202の放熱部2は、冷却装置100およびアレイモジュール200の放熱部2と比べて、ガス冷媒を効率的に冷却できる。
【0063】
<変形例>
図7は、冷却装置102およびアレイモジュール202の第1変形例である冷却装置103およびアレイモジュール203を示す。
図7に示される第1変形例は、配管6の管径が気液分離管15の管径よりも大きい点で、
図6に示される冷却装置102およびアレイモジュール202とは異なる。
【0064】
このようにすれば、配管6の管径が気液分離管15の管径と同等またはそれよりも小さい場合と比べて、配管6内においてガス冷媒に対する気液分離が促進される。その結果、
図7に示される第1変形例の放熱部2は、冷却装置102およびアレイモジュール202の放熱部2と比べて、ガス冷媒をより効率的に冷却できる。
【0065】
図8は、冷却装置102およびアレイモジュール202の第2変形例である冷却装置104およびアレイモジュール204を示す。
図9は、冷却装置102およびアレイモジュール202の第3変形例である冷却装置105およびアレイモジュール205を示す。
図8に示される第2変形例および
図9に示される第3変形例の各々は、第2流路F2のうち第1流出部12側と気液分離管15との間に接続されている部分が、第1流出部12側から気液分離管15側に向かうにつれて下方に向かうように延びている点で、
図6に示される冷却装置102およびアレイモジュール202とは異なる。
【0066】
言い換えると、
図8に示される第2変形例および
図9に示される第3変形例は、配管6が第1流出部12側から気液分離管15側に向かうにつれて下方に向かうように延びている第1傾斜部6Aを有している点で、
図7に示される冷却装置102およびアレイモジュール202とは異なる。
【0067】
図8に示される第2変形例において、第2流路F2は、第1傾斜部6Aと、第1傾斜部6Aよりも下流側に位置し、第1傾斜部6Aから離れるにつれて上方に向かうように延びている第2傾斜部6Bとを有している。気液分離管15の上方端部は、例えば第1傾斜部6Aと第2傾斜部6Bとの接続部に連結されている。言い換えると、気液分離管15の上方端部は、第1傾斜部6Aの下方端部および第2傾斜部6Bの下方端部の各々と連結されている。第1傾斜部6Aおよび第2傾斜部6Bの各々は、直線状に延びている。第2流路F2は、X方向から視てV字状に設けられている。第2流路F2および第5流路F5は、X方向から視てY字状に設けられている。
【0068】
なお、第1傾斜部6Aおよび第2傾斜部6Bの各々は、曲線状に延びていてもよい。配管6は、X方向から視てU字状に設けられていてもよい。第2流路F2は、第1傾斜部6Aの下方端部と第2傾斜部6Bの下方端部との間を接続し、かつY方向に沿って延びる水平部をさらに有していてもよい。
【0069】
図9に示される第3変形例において、第2流路F2は、
図8に示される第2傾斜部6Bを有していない。第2流路F2は、第1傾斜部6Aと、第1傾斜部6Aよりも下流側に位置し、Y方向に沿って延びる水平部6Cとを有している。気液分離管15の上方端部は、例えば第1傾斜部6Aと水平部6Cとの接続部に連結されている。言い換えると、気液分離管15の上方端部は、第1傾斜部6Aの下方端部および水平部6Cの上流側に位置する端部の各々と連結されている。
【0070】
図8に示される第2変形例および
図9に示される第3変形例では、冷却装置102およびアレイモジュール202と比べて、第2流路F2内においてガス冷媒に対する気液分離が促進されるため、放熱部2においてガス冷媒がより効率的に冷却され得る。
【0071】
図10は、冷却装置102およびアレイモジュール202の第4変形例である冷却装置106およびアレイモジュール206を示す。
図10に示される第4変形例は、冷媒回路が第2流路F2のうち第5流路F5と接続されている部分(配管6)よりも放熱部2側に位置する部分と第5流路F5との間を接続する第6流路F6をさらに含み、第6流路F6が第5流路F5と接続されている部分に向かうにつれて下方に向かうように傾斜している点で、
図6に示される冷却装置102およびアレイモジュール202とは異なる。
【0072】
第2流路F2は、例えば配管6よりも下流に位置し、かつZ方向に沿って延びる配管16を有している。第6流路F6の上方端部は、配管16に連結されている。第6流路F6の下方端部は、気液分離管15に連結されている。
【0073】
図10に示される第4変形例では、第2流路F2のうち配管6よりも放熱部2側に位置する部分においても、ガス冷媒に対する気液分離が促進される。そのため、
図10に示される第4変形例では、
図6に示される冷却装置102およびアレイモジュール202と比べて、放熱部2においてガス冷媒がより効率的に冷却され得る。
【0074】
図6~
図10に示される冷却装置102~106およびアレイモジュール202~206の気液分離管15は、
図11に示される断面構造を有していてもよい。
図11に示される気液分離管15は、管状の母材15Aと、母材15Aの内周面の全面上に配置された表面層15Bとを含んでいる。表面層15Bの内周面が、気液分離管15の内周面を構成している。表面層15Bは、表面層15Bと冷媒の液滴との接触角が母材15Aと冷媒の液滴との接触角よりも大きくなるように設けられている。表面層15Bと冷媒の液滴との接触角は、例えば90度以上である。母材15Aと冷媒の液滴との接触角は、例えば90度未満である。表面層15Bは、母材15Aに対する疎水化処理により形成された膜である。接触角の測定方法は、市販の接触角計を用いて測定できる。
【0075】
このようにすれば、気液分離管15の内周面と冷媒の液滴との接触角が90度未満である場合と比べて、気液分離管15にてガス冷媒から分離された液相冷媒が第3流路F3に流入しやすくなり、冷媒回路内において液相冷媒の循環が促進される。その結果、
図11に示される気液分離管15を備える冷却装置102~106およびアレイモジュール202~206は、発熱体110をより効率的に冷却できる。
【0076】
図6~
図10に示される冷却装置102~106およびアレイモジュール202~206の配管6は、
図12または
図13に示される断面構造を有していてもよい。
【0077】
図12に示される配管6は、管状の母材17と、母材17の内周面の全面上に配置された表面層18とを含んでいる。表面層18の内周面が、配管6の内周面を構成している。表面層18は、表面層18と冷媒の液滴との接触角が母材17と冷媒の液滴との接触角よりも小さくなるように設けられている。表面層18と冷媒の液滴との接触角は、例えば90度未満である。表面層18は、母材17に対する親水化処理により形成された膜である。
【0078】
図13に示される配管6では、表面層18が、母材17の内周面のうち下方部分上にのみ配置されている。
【0079】
また、
図6~
図10に示される冷却装置102~106およびアレイモジュール202~206の配管6は、配管6の内周面の表面積を増大させる構造を有していてもよい。配管6の内周面には、溝ならびに一端および他端の双方が当該内周面に開口している連通孔の少なくともいずれかが形成されていてもよい。また、配管6の内周面には、例えば多孔体またはメッシュなどの構造体が取り付けられていてもよい。
【0080】
このようにすれば、配管6においてガス冷媒から分離された液相冷媒は配管6にとどまりやすくなり、放熱部2に流入するガス冷媒の乾き度が高められる。その結果、放熱部2においてガス冷媒がより効率的に冷却され得る。
【0081】
なお、
図6~
図10に示される冷却装置102~106およびアレイモジュール202~206は、第5流路F5が気液分離管15(第2配管)を有している点を除き、
図3に示される上記第1変形例、
図4に示される上記第2変形例、ならびに実施の形態2に係る冷却装置101およびアレイモジュール201の少なくともいずれかと同様の構成を有していてもよい。
【0082】
実施の形態4.
図14に示されるように、実施の形態4に係る冷却装置107およびアレイモジュール207は、実施の形態1に係る冷却装置100およびアレイモジュール200と基本的に同様の構成を備えるが、第1受熱部1の筒状部材10の内周面に少なくとも1つの溝20が形成されている点で、冷却装置100およびアレイモジュール200とは異なる。以下、冷却装置107およびアレイモジュール207が冷却装置100およびアレイモジュール200と異なる点を主に説明する。
【0083】
図15に示される第1受熱部1には、複数の溝20が形成されている。複数の溝20は、例えば筒状部材10の内周面10Bのうち、受熱面10Aとは反対側に位置する内周面10B1、及び内周面10B1と対向する内周面10B2の各々に形成されている。筒状部材10のZ方向に直交する断面形状が長手方向と短手方向とを有する長方形状または楕円形状である場合、内周面10B1及び内周面10B2は、長手方向に沿って延びる内周面であるのが好ましい。
【0084】
図16に示されるように、複数の溝20は、例えば、Z方向に沿って延びる複数の第1溝20a、及び複数の第1溝20aの各々と交わり連なっている複数の第2溝20bとを含む。複数の第1溝20aは、例えばZ方向に直線状に延びている。複数の第1溝20aは、X方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第2溝20bの各々は、例えばX方向に沿って直線状に延びている。複数の第2溝20bは、Z方向に互いに間隔を空けて配置されている。複数の第1溝20aの各々は、複数の第2溝20bの各々と交わり連なっている。
【0085】
複数の第2溝20bの各々は、例えば、X方向に隣り合う2つの第1溝20a間に渡されている第1部分20b1と、X方向において1つの第1溝20aから第1部分20b1とは反対側に延びており他の第1溝20aと連なっていない第2部分20b2とを有している。第1部分20b1と第2部分20b2とは、X方向において同一直線状に配置されている。複数の第2溝20bの各々は、例えば、複数の第1部分20b1と複数の第2部分20b2とを有している。
【0086】
複数の第1溝20aの各々は、Y方向から視て発熱体110の少なくとも一部と重なるように配置されている。複数の第2溝20bの各々は、Y方向から視て発熱体110の少なくとも一部と重なるように配置されている。
【0087】
なお、冷却装置107の第1受熱部1には、少なくとも1つの溝20が形成されていればよい。少なくとも1つの溝20は、筒状部材10のうち、少なくとも発熱体110が搭載される受熱面10Aとは反対側に位置する内周面10B1に、Y方向から視て発熱体110の少なくとも一部と重なるように配置されていればよい。
【0088】
図16に示されるように、複数の発熱体110の各々は、例えばY方向から視て1つの第1溝20a及び複数の第2溝20bと重なるように配置されている。なお、複数の発熱体110の各々は、Y方向から視て複数の第1溝20a及び複数の第2溝20bと重なるように配置されていてもよい。
【0089】
図16に示されるように、第1溝20aのX方向の幅は、例えば第2溝20bのZ方向の幅よりも広い。なお、第1溝20aのX方向の幅は、第2溝20bのZ方向の幅と同等であってもよい。
【0090】
複数の溝20は、その内部を液相冷媒が流れるように、設けられている。つまり、複数の溝20の各々は、流路溝として構成されている。複数の溝20の各々の延在方向に直交する断面形状は、液相冷媒の流れを阻害せず、かつZ方向に直交する断面において筒状部材10の中央部を上方へ移動する気相冷媒による液相冷媒の飛散を防止する形状であるのが好ましく、例えば、正方形、矩形、台形、楕円、半円、である。また複数の溝20の内部には、多孔体又はやメッシュが配置されてもよい。
【0091】
冷却装置107およびアレイモジュール207では、第1受熱部1の上方より流入する液相冷媒は複数の第1溝20aの各々の内部を下方に流れ、そのうちの一部は複数の第2溝20bとの交差部で分岐して各第2溝20bの内部を水平方向に流れる。これにより、Y方向から視て複数の発熱体110のうち水平方向に配置された発熱体110と重なる領域へ、液相冷媒が供給される。第1溝20aのX方向の幅が第2溝20bのZ方向の幅と同等あるいはそれよりも広ければ、各第1溝20aを流れる液相冷媒の流量が各第2溝20bを流れる液相冷媒の流量と同等あるいはそれよりも多くなる。そのため、Y方向から視て複数の発熱体110のうち下方に配置された発熱体110と重なる領域にも、液相冷媒が不足なく供給され、受熱面10Aの全域が冷媒により冷却され得る。その結果、冷却装置107は、全ての発熱体110を安定して冷却できる。
【0092】
さらに、冷却装置107では、液相冷媒は筒状部材10の内周面に形成された複数の溝20の内部を主に流れるため、気相冷媒の移動による液相冷媒の飛散が抑制され、筒状部材10の内周面が平滑の場合に比べて最大熱輸送量が向上され得る。
【0093】
<変形例>
図17~
図19は、冷却装置107およびアレイモジュール207の第1~第3変形例の各々を
図16と同等に断面視したときの断面図である。
【0094】
図17~
図19に示される冷却装置107およびアレイモジュール207の第1~第3変形例の各々は、複数の第2溝20bがX方向に対して傾斜している点で、
図16に示される冷却装置107およびアレイモジュール207とは異なる。
【0095】
図17に示される第1変形例では、複数の第2溝20bの各々が、X方向における筒状部材10の中央に位置する1つの第1溝20aから、X方向における筒状部材10の外側に向かって曲線状に延びている。Y方向から視て、複数の第2溝20bの各々は、X方向における筒状部材10の外側に向かうに従ってX方向に対する傾斜角が緩くなるように、形成されている。複数の第2溝20bのうち、X方向における筒状部材10の中央に位置する1つの第1溝20aと、当該第1溝20aとX方向に隣り合う他の第1溝20aとの間に渡されている第1部分20b1の曲率は、当該第1部分20b1と第1溝20aを介して連なる第2部分20b2の曲率よりも大きい。
【0096】
図18に示される第2変形例では、複数の第2溝20bの各々が、複数の第1溝20aの各々から、X方向における筒状部材10の外側に向かって曲線状に延びている。1つの第2溝20bの第1部分20b1は、他の第2溝20bの第1部分20b1又は第2部分20b2と交わり連なっている。この場合、X方向において筒状部材10の内周面10B1の中央領域において単位面積あたりに複数の溝20が占有する面積の比率(以下、占有面積率)は、X方向において筒状部材10の内周面10B1の外側領域における複数の溝の占有面積率よりも高い。
【0097】
図19に示される第3変形例では、複数の第2溝20bの各々が、X方向に対して傾斜する方向に直線状に延びている。
【0098】
また、実施の形態4に係る冷却装置107およびアレイモジュール207において、Z方向に直交する筒状部材10の断面形状が楕円であり、少なくとも1つの溝20がスパイラル状に配置されていてもよい。このような冷却装置107では、
図16に示される冷却装置107と比べて、液相冷媒のX方向への輸送に重力を利用できるため、液相冷媒がX方向に効率的に供給され、発熱体110が安定して冷却され得る。
【0099】
実施の形態5.
図20に示されるように、実施の形態5に係る冷却装置108およびアレイモジュール208は、実施の形態1に係る冷却装置100およびアレイモジュール200と基本的に同様の構成を備えるが、第1流路F1から分岐されておりかつ第1受熱部1の筒状部材10に接続されている少なくとも1つの分岐部21を有している点で,冷却装置100およびアレイモジュール200とは異なる。以下、冷却装置108およびアレイモジュール208が冷却装置100およびアレイモジュール200と異なる点を主に説明する。
【0100】
図20に示される冷却装置108の冷媒回路は、複数の分岐部21を備えている。複数の分岐部21の各々は、冷媒が内部を流通可能な中空構造を有している。
図20に示されるように、複数の分岐部21の各々は、複数の発熱体110のうち最も下方に位置する発熱体110よりも上方に位置する筒状部材10の各部分と、と第1流路F1との間を接続している。複数の分岐部21の各々は、Y方向に沿って延びている。複数の分岐部21の各々は、Y方向に対して傾斜していてもよい。
【0101】
複数の分岐部21は、第1分岐部21aと、第1分岐部21aよりも下方に配置されている第2分岐部21bとを有している。第1分岐部21aの流路断面積は、例えば第2分岐部21bの流路断面積と同等である。
【0102】
複数の分岐部21の各々の外周面は、受熱面10Aのうち発熱体110が搭載されていない領域と接続されている。複数の分岐部21の各々の内周面は、少なくとも発熱体110が搭載される受熱面10Aとは反対側に位置する筒状部材10の内周面10B1と接続されている。第2分岐部21bの内周面は、筒状部材10の内周面10b1のうち、第1分岐部21aの内周面が接続されている領域よりも下方の領域に接続されている。各分岐部21の内周面は、例えば平滑面である。
【0103】
複数の分岐部21の各々を構成する材料は、例えば銅(Cu)又はステンレス鋼(SUS)である。好ましくは、分岐部21を構成する材料は、冷媒回路に封入される冷媒に対して耐食性を有する材料である。
【0104】
分岐部21を備えていない冷却装置100およびアレイモジュール200では、液相冷媒が第1流路F1のみから筒状部材10に供給されるため、筒状部材10がZ方向に長い場合には、冷却装置100の起動時又は発熱体110の発熱量が増加した後の過渡時において、液相冷媒が筒状部材10の下方まで到達するまでに要する時間が長くなる。この場合、筒状部材10の下方部分では、一時的に液相冷媒が不足し、発熱体110の温度は上昇する。
【0105】
これに対し、冷却装置108およびアレイモジュール208では、液相冷媒が、第1流路F1、第1分岐部21a、及び第2分岐部21bの各々を経由して筒状部材10の内周面10B1に供給される。言い換えると、内周面10B1の下方の中央領域又は下方領域には、第1流路F1を経由して内周面10B1の上方領域を流れた液相冷媒のみならず、第1分岐部21a及び第2分岐部21bの各々を経由した液相冷媒が、供給される。そのため、冷却装置108およびアレイモジュール208では、筒状部材10の下方部分における液相冷媒の一時的な不足を抑制でき、全ての発熱体110が安定して冷却され得る。
【0106】
また、冷却装置108の動作時には、各分岐部21の内部は液相冷媒で満たされる。そのため、第1受熱部1で発生した気相冷媒は、各分岐部21に流入せず、第1流出部12から放熱部2に流れ、筒状部材10の内周面10B1への液相冷媒の供給を阻害しない。
【0107】
なお、冷却装置108は、少なくとも1つの分岐部21を備えていればよい。冷却装置108の冷媒回路は、第1受熱部1で発生した気相冷媒が第1流路F1及び第1分岐部21aの少なくともいずれかに流入することを抑制するために、逆止弁をさらに含んでいてもよい。
【0108】
<変形例>
図21は、実施の形態5に係る冷却装置108およびアレイモジュール208の第1変形例を説明するための断面図である。
図21に示されるように、第1変形例の第1受熱部1は、
図15に示される実施の形態4に係る冷却装置107の第1受熱部1と同様の構成を有している。筒状部材10の内周面10B1には、少なくとも1つの溝20が形成されている。少なくとも1つの分岐部21は、例えば溝20の底面に設けられた貫通孔と連なっている。このようにすれば、液相冷媒が分岐部21から溝20の内部に効率良く供給され得る。
【0109】
図22は、実施の形態5に係る冷却装置108およびアレイモジュール208の第2変形例を説明するための断面図である。
図22に示されるように、第2変形例の冷媒回路は、複数の分岐部21の各々の内部に配置されている流路抵抗体22をさらに含んでいる点で、
図20に示される冷却装置108およびアレイモジュール208と異なる。
【0110】
複数の分岐部21のうち下方の第2分岐部21bの内部に配置されている流路抵抗体22は、上方の第1分岐部21aの内部に配置されている流路抵抗体22と比べて、分岐部21の流路抵抗をより大きくするように設けられている。
【0111】
流路抵抗体22は、分岐部21の内部空間の一部を塞ぐように設けられている。異なる観点から言えば、流路抵抗体22は、分岐部21の流路断面積を小さくするように設けられている。第2分岐部21b内において流路抵抗体22が配置されている部分の流路断面積は、第1分岐部21a内において流路抵抗体22が配置されている部分の流路断面積よりも小さい。
【0112】
流路抵抗体22は、剛性のある固体により構成されている。流路抵抗体22には、例えば多孔体のように複数の微細な穴が形成されている。流路抵抗体22は、分岐部21から第1受熱部1に流入する液相冷媒の流量を調整する。流路抵抗体22は、分岐部21の内部において、第1受熱部1側に配置されている。
【0113】
なお、第2変形例の冷媒回路が複数の分岐部21を含む場合、流路抵抗体22は、少なくとも相対的に下方に位置する第2分岐部21bの内部に配置されていればよい。
【0114】
第2変形例は、分岐部21から筒状部材10の下方部分に液相冷媒を供給するための分岐部21を備えていても、筒状部材10の下方部分が液相冷媒で満たされにくいため、筒状部材10内の上方部分と下方部分との間での冷媒の乾き度の違いに基づく冷却性能のばらつきの発生を抑制できる。
【0115】
図23に示されるように、上記第2変形例の筒状部材10の内周面10B1には、少なくとも1つの溝20が形成されていてもよい。流路抵抗体22は、例えば溝20の底面に設けられた貫通孔に面している。なお、この場合には、流路抵抗体22は、溝20の底面に設けられた貫通孔内に配置されていてもよい。
【0116】
図24~
図26は、実施の形態5に係る冷却装置108およびアレイモジュール208の第3変形例を説明するための断面図である。
図25は、
図24中の第1分岐部21aの延在方向に直交する断面図である。
図26は、
図24中の第2分岐部21bの延在方向に直交する断面図である。
【0117】
図24~
図26に示される第3変形例は、第2分岐部21bの流路断面積が第1分岐部21aの流路断面積よりも小さい点で、
図20に示される冷却装置108及びアレイモジュール208と異なる。第3変形例は、流路抵抗体22によらず、第2分岐部21bの流路断面積が第1分岐部21aの流路断面積よりも小さくされている点で、
図22及び
図23に示される第2変形例と異なる。
【0118】
図24~
図26に示されるように、第3変形例では、第2分岐部21bの内周長が、第1分岐部21aの内周長よりも短い。第2分岐部21bの外周長は、例えば第1分岐部21aの外周長よりも短い。なお、第2分岐部21bの外周長は、第1分岐部21aの外周長と等しくてもよい。
【0119】
第3変形例は、分岐部21から筒状部材10の下方部分に液相冷媒を供給するための分岐部21を備えていても、筒状部材10の下方部分が液相冷媒で満たされにくいため、筒状部材10内の上方部分と下方部分との間での冷媒の乾き度の違いに基づく冷却性能のばらつきの発生を抑制できる。
【0120】
実施の形態1~5に係るアレイモジュール200~208は、少なくとも1つの発熱体110(および少なくとも1つの発熱体111)を備えていればよい。実施の形態1~5に係るアレイモジュール200~208における発熱体110の数は1つでもよい。実施の形態1~5に係る冷却装置100~108は、例えばZ方向の幅がX方向の幅よりも広い1つの発熱体110を効率的に冷却できる。
【0121】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の範囲は、上記した説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【符号の説明】
【0122】
1 第1受熱部、2 放熱部、3 液溜まり部、4 ポンプ、5,6,7,16 配管、6A 第1傾斜部、6B 第2傾斜部、6C 水平部、8 液戻り部、9 タンク、10 筒状部材、10A,14A 受熱面、11 流入部、11A 流出口、12 第1流出部、12A 流入口、13 第2流出部、14 第2受熱部、15 気液分離管、15A,17 母材、15B,18 表面層、20 溝、20a 第1溝、20b 第2溝、20b1 第1部分、20b2 第2部分、21 分岐部、21a 第1分岐部、21b 第2分岐部、22 抵抗体、100,101,102,103,104,105,106,107,108 冷却装置、110,111,120 発熱体、200,201,202,203,204,205,206,207,208 アレイモジュール。