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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】非接触電力伝送システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/80 20160101AFI20241004BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20241004BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20241004BHJP
   B60L 53/66 20190101ALI20241004BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20241004BHJP
   B60M 7/00 20060101ALN20241004BHJP
   B60L 5/00 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/12
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60L53/66
B60L53/122
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022128360
(22)【出願日】2022-08-10
(65)【公開番号】P2024025149
(43)【公開日】2024-02-26
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 仁
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-228789(JP,A)
【文献】特開2019-037031(JP,A)
【文献】特開2012-157167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/80
H02J 50/12
H02J 7/00
B60L 53/66
B60L 53/122
B60M 7/00
B60L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行路周辺に配置される通信機と通信する車載通信装置と、
送電装置との間にて非接触で伝送される電力を授受する受電装置と、
前記車載通信装置及び前記受電装置を制御する制御装置と
前記送電装置を統合的に制御する送電側制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記車両が前記送電装置の電力伝送区間に到達するより前に前記通信機と前記車載通信装置との通信によって鍵情報を取得し、
前記車両が前記電力伝送区間に存在する場合に前記送電装置と前記受電装置との通信により、少なくとも前記鍵情報を有する情報を前記送電装置に送ることによって、前記送電装置に前記鍵情報の照合に応じた電力伝送を開始させる
ことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記車両が前記電力伝送区間に存在する場合に前記送電装置と前記受電装置との通信により、少なくとも前記電力伝送の希望周波数の情報を有する前記情報を前記送電装置に送ることによって、前記送電装置に前記鍵情報の照合に応じた前記希望周波数での前記電力伝送を開始させる
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項3】
前記送電側制御装置は、
前記通信機と前記車載通信装置との通信によって前記鍵情報を取得することによって、前記送電装置を停止状態から前記情報の受信待機状態へと移行させるとともに、前記鍵情報の照合が完了するまでの期間に亘って前記受信待機状態を維持させる
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項4】
前記受信待機状態は、
前記送電装置の電力伝送用のコイルを短絡させる状態である
ことを特徴とする請求項3に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記送電装置と前記受電装置との前記通信では、
前記受電装置の通電切替動作で前記受電装置のコイルに発生する磁界によって前記送電装置のコイルに誘起される電圧により通信する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の非接触電力伝送システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記送電装置と前記受電装置との前記通信では、
前記受電装置から前記送電装置に非接触で電力を伝送するための搬送波をスイッチングすることで優性及び劣性のデジタル信号の生成又は前記搬送波の振幅変調によって前記情報を送る
ことを特徴とする請求項5に記載の非接触電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触電力伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する車両での充給電に関する研究開発が行われている。
従来、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する非接触電力伝送システムでは、電力伝送の開始前及び終了後の各々タイミングでの送電側と受電側との間の通信のやり取りによって、実際に給電された電力量に応じた料金を確定するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
従来、非接触での電力伝送の送電側と受電側との間の認証の有無によって給電可否を制御するシステムが知られている(例えば、特許文献2参照)。
従来、非接触での電力伝送の受電側の負荷に応じて、送電側の電力変換ユニットのスイッチング周波数を制御するシステムが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-79077号公報
【文献】特開2012-75302号公報
【文献】特開2017-163824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行中の車両に対する非接触での電力伝送では、車両が走行路に設置された送電側コイルの通過に要する時間は0.01秒程度の極短時間である。これにより、例えば、送電側と受電側との間の通信が確立する前に車両が送電側コイルを通り過ぎてしまう、送電側と受電側との間の通信が安定せずに電力伝送が成立しない、又は、過剰な給電が行われる等の異常が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、受電側の独立的な電力制御によって適切な電力伝送を行うことができる非接触電力伝送システムを提供することを目的とする。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る非接触電力伝送システム(例えば、実施形態での非接触電力伝送システム10)は、車両の走行路周辺に配置される通信機(例えば、実施形態での路側通信機1a)と通信する車載通信装置(例えば、実施形態での車載通信装置17)と、送電装置(例えば、実施形態での送電装置2)との間にて非接触で伝送される電力を授受する受電装置(例えば、実施形態での受電装置14)と、前記車載通信装置及び前記受電装置を制御する制御装置(例えば、実施形態での制御装置16)とを備え、前記制御装置は、前記車両が前記送電装置の電力伝送区間に到達するより前に前記通信機と前記車載通信装置との通信によって鍵情報を取得し、前記車両が前記電力伝送区間に存在する場合に前記送電装置と前記受電装置との通信により、少なくとも前記鍵情報を有する情報を前記送電装置に送ることによって、前記送電装置に前記鍵情報の照合に応じた電力伝送を開始させる。
【0007】
(2)上記(1)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記車両が前記電力伝送区間に存在する場合に前記送電装置と前記受電装置との通信により、少なくとも前記電力伝送の希望周波数の情報を有する前記情報を前記送電装置に送ることによって、前記送電装置に前記鍵情報の照合に応じた前記希望周波数での前記電力伝送を開始させてもよい。
【0008】
(3)上記(1)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記通信機と前記車載通信装置との通信によって前記鍵情報を取得することによって、前記送電装置を停止状態から前記情報の受信待機状態へと移行させるとともに、前記鍵情報の照合が完了するまでの期間に亘って前記受信待機状態を維持させてもよい。
【0009】
(4)上記(3)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記受信待機状態は、前記送電装置の電力伝送用のコイル(例えば、実施形態での一次側コイル8a)を短絡させる状態であってもよい。
【0010】
(5)上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記送電装置と前記受電装置との前記通信では、前記受電装置の通電切替動作で前記受電装置のコイル(例えば、実施形態での二次側コイル31a)に発生する磁界によって前記送電装置のコイル(例えば、実施形態での一次側コイル8a)に誘起される電圧により通信してもよい。
【0011】
(6)上記(5)に記載の非接触電力伝送システムでは、前記制御装置は、前記送電装置と前記受電装置との前記通信では、前記受電装置から前記送電装置に非接触で電力を伝送するための搬送波をスイッチングすることで優性及び劣性のデジタル信号の生成又は前記搬送波の振幅変調によって前記情報を送ってもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記(1)によれば、電力伝送区間への到達に先立って電力伝送の開始に必要な鍵情報を取得する制御装置を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば受電装置を搭載する車両の速度が高いことで電力伝送区間を通過する時間が短くなる場合であっても、制御装置は、電力伝送区間に到達するより前に電力伝送の実行許可を得ることで、電力伝送区間での電力伝送を迅速に開始させることができる。
【0013】
上記(2)の場合、電力伝送の希望周波数の情報を送電装置に送る制御装置を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば、送電装置のコイルと受電装置のコイルとの距離に関連する車両の最低地上高及び受電装置の搭載レイアウト等に起因して結合係数が低下する場合であっても、相互インダクタンスの変動を相殺するような希望周波数によって、電力及び伝送効率の低下を抑制することができる。
【0014】
上記(3)の場合、電力伝送区間への到達に先立って送電装置を受信待機状態に移行させる制御装置を備えることにより、電力伝送区間での鍵情報の受信及び照合を迅速に実行させることができる。送電装置は制御装置が鍵情報を取得するより前に停止状態であることにより、待機電力の増大を抑制することができる。
【0015】
上記(4)の場合、受電装置から送電装置への電力伝送による情報の通信を送電装置のコイルの電圧及び電流によって検出することができる。
【0016】
上記(5)の場合、受電装置及び送電装置の互いのコイルによる通信を行うことにより、例えば互いに追加的な通信装置を備える場合等に比べて、システムの構成が複雑になることを抑制することができる。
【0017】
上記(6)の場合、電力伝送の搬送波によって情報を送る制御装置を備えることにより、システムの構成及び情報送信の処理が複雑になることを抑制し、各種の情報を容易に送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの構成を示す図。
図2】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの送電部及び受電部の構成を示す図。
図3】本発明の実施形態での送電装置の短絡状態での一次側コイルの両端間の電圧及び一次側コイルに流れる電流を示す図。
図4】本発明の実施形態での受電装置の同期整流動作での二次側コイルの両端間の電圧及び二次側コイルに流れる電流を示す図。
図5】本発明の実施形態での受電装置の短絡動作での二次側コイルの両端間の電圧及び二次側コイルに流れる電流を示す図。
図6】本発明の実施形態での受電装置の二次側コイルのエアギャップと結合係数との対応関係の例を示す図。
図7】本発明の実施形態での送電装置の一次側コイルと受電装置の二次側コイルとの間の相対的な移動量と結合係数との対応関係の例を示す図。
図8】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの受電側処理を示すフローチャート。
図9】本発明の実施形態での非接触電力伝送システムの送電側処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る非接触電力伝送システムについて、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態での非接触電力伝送システム10の構成を示す図である。図2は、実施形態での非接触電力伝送システム10の送電部8及び受電部31の構成を示す図である。
実施形態の非接触電力伝送システム10は、非接触での電力伝送により車両の外部から車両に電力を供給する。
【0020】
(非接触電力伝送システム)
図1に示すように、実施形態の非接触電力伝送システム10は、例えば、車両の走行路等に設置される通信システム1及び送電装置2と、車両に搭載される駆動制御装置3及び電力制御装置4とを備える。
通信システム1は、例えば、少なくとも1つの路側通信機1aと、通信制御装置1bとを備える。通信システム1は、例えば有料道路でのETC(Electronic Toll Collection System)等のような電子的に料金収受を行うシステムの少なくとも一部を構成する。
【0021】
路側通信機1aは、例えば、車両の走行路での送電装置2による所定の電力伝送区間の上流側に所定距離だけ離れて配置されている。路側通信機1aは、無線通信用のアンテナ等を備え、車両に搭載される後述の車載通信装置17と無線で通信を行う。路側通信機1aは、例えば、送電装置2から車両への電力伝送に対する課金及び決済に必要な情報を車載通信装置17から取得すると、電力伝送の開始に必要な鍵情報を車載通信装置17に送信する。課金及び決済に必要な情報は、例えば、料金収受用のICカード又は車載トランスポンダ等の有無及び識別子のように、車両に固有の情報である。鍵情報は、例えば、所定の電力伝送区間を通過する認可済みの車両(つまり、電力伝送の実行が許可された車両)毎に異なるように所定周期で更新されつつ生成される情報である。鍵情報は、送電装置2が車両の後述の受電装置14を認証するために必要な情報である。
【0022】
通信制御装置1bは、予め対応付けられている全ての路側通信機1aの動作を制御する。通信制御装置1bは、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、通信制御装置1bの少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
例えば、通信制御装置1bは、所定周期等での路側通信機1aと周辺の車両の車載通信装置17との通信によって課金及び決済に必要な情報の取得を試みる。通信制御装置1bは、課金及び決済に必要な情報を車載通信装置17から取得して、電子決済が可能であることを確認すると、電子決済が可能であることを示す許可情報及び電力伝送の開始に必要な鍵情報を車載通信装置17に送信する。通信制御装置1bは、路側通信機1aから車載通信装置17に鍵情報を送信した場合には、同一の鍵情報を後述の送電側制御装置9に送信する。
【0023】
送電装置2は、例えば、電源部5と、キャパシタ(コンデンサ)6と、電力変換部7と、送電部8と、送電側制御装置9とを備える。なお、送電装置2は、例えば、車両の走行路での所定の電力伝送区間に複数の少なくとも送電部8を備えてもよい。
電源部5は、例えば、商用電源等の交流電源と、交流電力を直流電力に変換するAC-DCコンバータとを備える。電源部5は、交流電源から供給される交流電力をAC-DCコンバータによって直流電力に変換する。
キャパシタ6は、電源部5に並列に接続されている。キャパシタ6は、電源部5から出力される直流電力を平滑化する。
【0024】
電力変換部7は、例えば、直流電力を交流電力に変換するインバータを備える。電力変換部7のインバータは、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiC(Silicon Carbide)のMOSFET(Metal Oxide Semi-conductor Field Effect Transistor)等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ7a,7bである。ハイサイドアームのトランジスタ7aのコレクタは電源部5の正極に接続されている。ローサイドアームのトランジスタ7bのエミッタは電源部5の負極に接続されている。ハイサイドアームのトランジスタ7aのエミッタとローサイドアームのトランジスタ7bのコレクタとは送電部8に接続されている。整流素子は、例えば、各トランジスタ7a,7bのコレクタ-エミッタ間でエミッタからコレクタに向けて順方向に並列に接続される還流ダイオードである。
送電部8は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導等の磁界結合により、高周波の磁界の変化によって電力を送る。図2に示すように、送電部8は、例えば、直列に接続される一次側コイル8a、一次側抵抗8b及び一次側キャパシタ8cによって形成される共振回路を備える。送電部8は、例えば、共振回路に流れる電流Itを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0025】
送電制御装置9は、送電装置2を統合的に制御する。送電制御装置9は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、送電制御装置9の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0026】
例えば、送電側制御装置9は、送電装置2の各スイッチング素子をオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するタイミングを示す制御信号を生成するとともに、制御信号に基づいて各スイッチング素子を実際にオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するためのゲート信号を生成する。送電側制御装置9は、送電装置2の各スイッチング素子のスイッチングを制御することによって、送電装置2から車両の受電装置14への電力伝送を行う。
例えば、送電側制御装置9は、通信制御装置1bから鍵情報を受け取ると、同一の鍵情報が路側通信機1aから車載通信装置17に送信されたことを把握して、送電装置2を停止状態から受信待機状態に移行させる。送電装置2の停止状態は、例えば、電力変換部7の各スイッチング素子をオフ(遮断)に維持する等のように、電力変換部7でのスイッチング動作を停止させる状態である。送電装置2の受信待機状態は、車両の受電装置14からの情報送信を検出する状態である。送電装置2の受信待機状態は、例えば、電力変換部7の短絡状態である。
【0027】
図3は、実施形態での送電装置2の短絡状態での一次側コイル8aの両端間の電圧Vt及び一次側コイル8aに流れる電流Itを示す図である。
図3に示すように、送電側制御装置9は、送電装置2の短絡状態では、各相のローサイドアームのトランジスタ7bをオンに設定することで一次側コイル8aを短絡する。これにより、二次側の受電装置14から一次側の送電装置2を見ると、一次側のインピーダンスは非常に大きな値となるが、後述するPING送信時に受電装置14の二次側コイル31aによって磁界が発生すると、送電装置2の一次側コイル8aに誘起される電圧によって受電装置14からの通信が検出される。
【0028】
例えば、送電側制御装置9は、鍵情報及び電力伝送の希望周波数等の情報を受電装置14から受け取ると、通信制御装置1bから受け取った鍵情報と受電装置14から受け取った鍵情報との照合を行う。送電側制御装置9は、鍵情報が一致した場合、送電装置2を短絡状態から電力伝送状態に移行させる。送電装置2の電力伝送状態は、例えば、受電装置14の希望周波数での電力伝送を行う状態である。
【0029】
図1に示すように、車両の駆動制御装置3は、例えば、蓄電装置11と、第1電力変換装置12と、回転電機13とを備える。
車両の電力制御装置4は、例えば、受電装置14と、第2電力変換装置15と、制御装置16と、車載通信装置17を備える。
蓄電装置11は、車両の外部の送電装置2から非接触で伝送される電力によって充電される。蓄電装置11は、第1電力変換装置12を介して回転電機13との間で電力を授受する。
蓄電装置11は、例えば、リチウムイオンバッテリ等のバッテリと、バッテリの電流を検出する電流センサ及びバッテリの電圧を検出する電圧センサとを備える。蓄電装置11は、後述する第1電力変換装置12の一次側の正極端子12a及び負極端子12cに接続されている。
【0030】
第1電力変換装置12は、例えば、昇圧及び降圧の双方向の電圧変換によって蓄電装置11の充電及び放電時に入力電力及び出力電力を変換する電圧制御器と、直流電力と交流電力との変換を行う電力変換器とを備える。
第1電力変換装置12は、例えば、1対のリアクトル21と、第1素子モジュール22と、抵抗23及びスイッチング素子24と、第2素子モジュール25と、第1キャパシタ26及び第2キャパシタ27とを備える。例えば、1対のリアクトル21と第1素子モジュール22と第1キャパシタ26とは電圧制御器を構成し、第2素子モジュール25と第2キャパシタ27とは電力変換器を構成する。
【0031】
1対のリアクトル21は、相互に逆極性に磁気結合されることによって複合型リアクトルを形成する。1対のリアクトル21は、一次側の正極端子12aと第1素子モジュール22とに接続されている。
第1素子モジュール22は、例えば、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ22a,22bである。ハイサイドアームのトランジスタ22aのコレクタは二次側の正極端子12bに接続されている。ローサイドアームのトランジスタ22bのエミッタは一次側と二次側とで共通の負極端子12cに接続されている。ハイサイドアームのトランジスタ22aのエミッタとローサイドアームのトランジスタ22bのコレクタとはリアクトル21に接続されている。整流素子は、例えば、各トランジスタ22a,22bのコレクタ-エミッタ間でエミッタからコレクタに向けて順方向に並列に接続される還流ダイオードである。
第1素子モジュール22は、例えば、一次側の正極端子12aと負極端子12cとの間の電圧を検出する電圧センサ及び1対のリアクトル21に流れる電流を検出する電流センサを備える。
【0032】
1対のリアクトル21及び第1素子モジュール22は、いわゆる2相のインターリーブによって電圧変換を行う。2相のインターリーブでは、1対のリアクトル21に接続される2相のトランジスタ22a,22bのうちで第1の相のトランジスタ22a,22bのスイッチング制御の1周期と、第2の相のトランジスタ22a,22bのスイッチング制御の1周期とは、相互に半周期だけずらされる。
【0033】
抵抗23及びスイッチング素子24は直列に接続されている。スイッチング素子24は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。抵抗23は、二次側の正極端子12bとスイッチング素子24のコレクタとに接続され、スイッチング素子24のエミッタは負極端子12cに接続されている。
第2素子モジュール25は、例えば、3相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ25a,25bである。ハイサイドアームのトランジスタ25aのコレクタは二次側の正極端子12bに接続されている。ローサイドアームのトランジスタ25bのエミッタは負極端子12cに接続されている。ハイサイドアームのトランジスタ25aのエミッタとローサイドアームのトランジスタ25bのコレクタとは交流端子12dを介して回転電機13のステータ巻線に接続されている。整流素子は、例えば、各トランジスタ25a,25bのコレクタ-エミッタ間でエミッタからコレクタに向けて順方向に並列に接続される還流ダイオードである。
第2素子モジュール25は、例えば、各交流端子12dから回転電機13のステータ巻線に流れる電流を検出する電流センサを備える。
【0034】
第1キャパシタ26は、一次側の正極端子12aと負極端子12cとに接続されている。第2キャパシタ27は、第1素子モジュール22及び第2素子モジュール25の間で二次側の正極端子12bと負極端子12cとに接続されている。各キャパシタ26は、各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の切換動作に伴って発生する電圧変動を平滑化する。
【0035】
第2素子モジュール25は、電力の授受によって回転電機13の動作を制御する。第2素子モジュール25は、例えば回転電機13の力行時には、正極端子及び負極端子から入力される直流電力を3相交流電力に変換して、3相交流電力を回転電機13に供給する。第2素子モジュール25は、回転電機13の3相のステータ巻線への通電を順次転流させることによって回転駆動力を発生させる。
第2素子モジュール25は、例えば回転電機13の回生時には、回転電機13の回転に同期がとられた各相のスイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の駆動によって、3相のステータ巻線から入力される3相交流電力を直流電力に変換する。第2素子モジュール25は、3相交流電力から変換された直流電力を、1対のリアクトル21及び第1素子モジュール22を介して蓄電装置11に供給することが可能である。
【0036】
回転電機13は、例えば、3相交流のブラシレスDCモータである。回転電機13は、界磁用の永久磁石を有する回転子と、回転子を回転させる回転磁界を発生させる3相のステータ巻線を有する固定子とを備える。3相のステータ巻線は、第1電力変換装置12の3相の交流端子12dに接続されている。
回転電機13は、第1電力変換装置12から供給される電力により力行動作することによって回転駆動力を発生させる。回転電機13は、例えば、車両の車輪に連結可能である場合、第1電力変換装置12から供給される電力により力行動作することによって走行駆動力を発生させる。回転電機13は、車両の車輪側から入力される回転動力により回生動作することによって発電電力を発生させてもよい。回転電機13は、車両の内燃機関に連結可能である場合、内燃機関の動力によって発電してもよい。
【0037】
受電装置14は、例えば、受電部31と、電力変換部32と、キャパシタ33とを備える。
図2に示すように、受電部31は、例えば、磁界共鳴又は電磁誘導などの磁界結合によって送電部8から伝えられる高周波の磁界の変化によって電力を受け取る。受電部31は、例えば、直列に接続される二次側コイル31a、二次側抵抗31b及び二次側キャパシタ31cによって形成される共振回路を備える。受電部31は、例えば、共振回路に流れる電流Irを検出する電流センサ等のセンサを備える。
【0038】
図1に示すように、電力変換部32は、交流電力を直流電力に変換する、いわゆるフルブリッジレス型(又はブリッジレス及びトーテムポール型)の力率改善(PFC:Power Factor Correction)回路を備える。いわゆるブリッジレスPFCは、ブリッジ接続される複数のダイオードによるブリッジ整流器を備えていないPFCであって、いわゆるトーテムポールPFCは、同方向に直列に接続(トーテムポール接続)される同一導電型の一対のスイッチング素子を備えるPFCである。
【0039】
電力変換部32は、例えば、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ32a,32bである。ハイサイドアームのトランジスタ32aのコレクタは二次側の正極端子14aに接続されている。ローサイドアームのトランジスタ32bのエミッタは二次側の負極端子14bに接続されている。ハイサイドアームのトランジスタ32aのエミッタとローサイドアームのトランジスタ32bのコレクタとは受電部31に接続されている。整流素子は、例えば、各トランジスタ32a,32bのコレクタ-エミッタ間でエミッタからコレクタに向けて順方向に並列に接続される還流ダイオードである。
キャパシタ33は、二次側の正極端子14aと負極端子14bとに接続されている。キャパシタ33は、各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の切換動作に伴って発生する電圧変動を平滑化する。
【0040】
第2電力変換装置15は、受電装置14から出力される直流電力を変換することによって任意の直流電力を出力する。第2電力変換装置15は、例えば、降圧の電圧変換を行う電圧変換器を備える。第2電力変換装置15は、例えば、1対のリアクトル41と、素子モジュール42と、キャパシタ43とを備える。
1対のリアクトル41は、相互に逆極性に磁気結合されることによって複合型リアクトルを形成する。1対のリアクトル41は、二次側の正極端子15aと素子モジュール42とに接続されている。
【0041】
素子モジュール42は、2相でブリッジ接続される複数のスイッチング素子及び整流素子によって形成されるブリッジ回路を備える。各スイッチング素子は、例えば、SiCのMOSFET等のトランジスタである。複数のスイッチング素子は、各相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ42a,42bである。ハイサイドアームのトランジスタ42aのコレクタは一次側の正極端子15bに接続されている。ローサイドアームのトランジスタ42bのエミッタは一次側と二次側とで共通の負極端子15cに接続されている。ハイサイドアームのトランジスタ42aのエミッタとローサイドアームのトランジスタ42bのコレクタとはリアクトル41に接続されている。整流素子は、例えば、各トランジスタ42a,42bのコレクタ-エミッタ間でエミッタからコレクタに向けて順方向に並列に接続される還流ダイオードである。
【0042】
1対のリアクトル41及び素子モジュール42は、いわゆる2相のインターリーブによって電圧変換を行う。2相のインターリーブでは、1対のリアクトル41に接続される2相のトランジスタ42a,42bのうちで第1の相のトランジスタ42a,42bのスイッチング制御の1周期と、第2の相のトランジスタ42a,42bのスイッチング制御の1周期とは、相互に半周期だけずらされる。
キャパシタ43は、二次側の正極端子15aと負極端子15cとに接続されている。キャパシタ43は、各スイッチング素子のオン(導通)及びオフ(遮断)の切換動作に伴って発生する電圧変動を平滑化する。
【0043】
第2電力変換装置15の一次側の正極端子15bは、受電装置14の二次側の正極端子14aに接続されている。
第2電力変換装置15の二次側の正極端子15aは、第1電力変換装置12の二次側の正極端子12bに接続されている。
第2電力変換装置15の負極端子15cは、受電装置14の二次側の負極端子14b及び第1電力変換装置12の負極端子12cに接続されている。
【0044】
制御装置16は、例えば、車両の駆動制御装置3及び電力制御装置4を統合的に制御する。制御装置16は、例えばCPU(Central Processing Unit)などのプロセッサによって所定のプログラムが実行されることにより機能するソフトウェア機能部である。ソフトウェア機能部は、CPUなどのプロセッサ、プログラムを格納するROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)及びタイマーなどの電子回路を備えるECUである。なお、制御装置16の少なくとも一部は、LSI(Large Scale Integration)などの集積回路であってもよい。
【0045】
制御装置16は、例えば、各スイッチング素子をオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するタイミングを示す制御信号を生成するとともに、制御信号に基づいて各スイッチング素子を実際にオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動するためのゲート信号を生成する。
例えば、制御装置16は、受電装置14の各スイッチング素子のスイッチングを制御することによって、送電装置2から受け取る交流電力を直流電力に整流しつつ、入力電圧及び入力電流の力率改善を行う。
例えば、制御装置16は、受電装置14の複数のスイッチング素子を同期的にオン(導通)及びオフ(遮断)に駆動する同期整流動作と、二次側コイル31aを短絡する短絡動作とによって、目標出力に応じた出力を制御する。
【0046】
図4は、実施形態の受電装置14の同期整流動作での二次側コイル31aの両端間の電圧Vr及び二次側コイル31aに流れる電流Irを示す図である。図5は、実施形態の受電装置14の短絡動作での二次側コイル31aの両端間の電圧Vr及び二次側コイル31aに流れる電流Irを示す図である。なお、以下では、第1の相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ32a,32bを第1スイッチング素子SW1及び第2スイッチング素子SW2とし、第2の相で対を成すハイサイドアーム及びローサイドアームのトランジスタ32a,32bを第3スイッチング素子SW3及び第4スイッチング素子SW4とする。
【0047】
図4に示す同期整流動作では、制御装置16は、例えば、送電部8から送られる電力によって受電部31に発生する電流、つまり二次側コイル31aに流れる電流Irを検出し、電流Irの大きさ及び位相に応じて同期整流動作を制御する。制御装置16は、受電装置14の最大出力等の高出力領域では、各スイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4を、いわゆるゼロ電圧スイッチング(ZVS:Zero Voltage Switching)のソフトスイッチングで制御する。制御装置16は、高周波のスイッチングを行うことによるスイッチング損失を低減するために、一次側コイル8aと二次側コイル31aとの間の距離に関連する車高条件及び車両の電気特性等に応じてデッドタイム補正値を設定することによりソフトスイッチングを行う。ゼロ電圧スイッチング(ZVS)では、各スイッチング素子SW1,SW2,SW3,SW4は、各相のデッドタイム期間のオフ状態での出力容量(寄生容量)の放電によって両端電圧がゼロにされてからターンオン(オフ状態からオン状態への切り換え)が実行される。
【0048】
図5に示す短絡動作では、制御装置16は、例えば、各相のハイサイドアームではゼロ電圧スイッチング(ZVS)での同期整流動作を継続させつつ、各相のローサイドアームのみオンにすることで二次側コイル31aを短絡する。各相のローサイドアームのトランジスタ32bである第2スイッチング素子SW2及び第4スイッチング素子SW4がオンに設定されると、二次側コイル31aと直列の二次側キャパシタ31cに貯まった電流がハイサイドアームの還流ダイオードを通じて平滑用のキャパシタ33へ流出する。これにより、二次側コイル31aの両端間の電圧Vrは低下してゼロとなり、二次側コイル31aは電位差が生じないことによりコイルとして機能しなくなるため、送電部8との磁界発生による電流Irはごくわずかになる。このとき、一次側の送電装置2から二次側の受電装置14を見ると、二次側のインピーダンスは非常に大きな値となり、一次側のインピーダンスも大きくなるため、一次側の電流(送電電流:一次側コイル8aに流れる電流It)が絞られる。つまり、二次側の受電装置14によって一次側の送電装置2での電流が制御される。また、二次側コイル31aに流れる電流Irに応じて同期整流動作を行う各相のハイサイドアームのトランジスタ32aである第1スイッチング素子SW1及び第3スイッチング素子SW3は、スレッショルド電流を超えないため同期整流動作のスイッチングを停止し、二次側キャパシタ31cと切り離された状態となる。
【0049】
例えば、制御装置16は、電力伝送区間にて送電装置2による電力伝送の開始に先立って、路側通信機1aから取得した鍵情報、電力伝送の希望周波数、フェイルセーフのための目標出力(消費電力)及び各種異常に関する情報等の情報を送電装置2に送信する。電力伝送の希望周波数は、例えば、一次側コイル8aと二次側コイル31aとの間の距離に関連する車両の最低地上高及び車両での受電装置14の搭載レイアウト等に基づいて、電力伝送の効率及び出力(電力)の低下を抑制するように設定される。
図6は、実施形態での受電装置14の二次側コイル31aのエアギャップと結合係数kとの対応関係の例を示す図である。図7は、実施形態でのcの一次側コイル8aと受電装置14の二次側コイル31aとの間の相対的な移動量と結合係数kとの対応関係の例を示す図である。
【0050】
図6に示すように、一次側コイル8aと二次側コイル31aとの結合係数kは、車両の上下方向での一次側コイル8aと二次側コイル31aとの距離(エアギャップ)が増大することに伴い、低下傾向に変化する。また、図7に示すように、結合係数kは、車両の上下方向に直交する方向での一次側コイル8aと二次側コイル31aとの距離(相対的な移動量)が所定値以上になると急激に低下する。
下記数式(1)に示すように、結合係数kは一次側コイル8aと二次側コイル31aとの自己インダクタンスLt,Lr及び相互インダクタンスLmによって記述される。
【0051】
【数1】
【0052】
また、一次側コイル8aと二次側コイル31aとの間の電力伝送の効率η及び出力Pは、下記数式(2)及び下記数式(3)に示すように、送電部8及び受電部31の各抵抗Rt,Rrと、負荷抵抗値Rと、電力伝送の周波数ωと、相互インダクタンスLmと、一次側コイル8aの電圧Vtとによって記述される。相互インダクタンスLmは一次側コイル8aと二次側コイル31aとの距離に応じて変化するので、下記数式(2)及び下記数式(3)によれば、電力伝送の周波数ωを変化させることによって、所望の効率η及び出力Pを確保することができる。
【0053】
【数2】
【0054】
【数3】
【0055】
例えば、制御装置16は、予め既知である車両の最低地上高及び車両での受電装置14の搭載レイアウト等に基づいて、電力伝送の希望周波数を設定する。さらに、制御装置16は、送電装置2と受電装置14との間の電力伝送の状態に応じて希望周波数を設定してもよい。
例えば、制御装置16は、路側通信機1aと車載通信装置17との通信によって鍵情報を受け取ると、いわゆるピング(PING)信号の送信として、受信待機状態の送電装置2に対して受電装置14から電力伝送を行うことによって情報を送信する。受電装置14は、電力変換部32でのスイッチングによる通電切替動作で二次側コイル31aに発生する磁界によって、送電装置2の一次側コイル8aに誘起される電圧により通信する。制御装置16は、例えば、受電装置14から送電装置2に非接触で電力を伝送するための搬送波を所定のデューティー比でスイッチングすることで、いわゆるドミナント(優性)及びレセッシブ(劣性)の2レベルのデジタル信号を生成することによってPING送信を実行する。所定のデューティー比は、例えば、所定の最小から50%程度である。なお、制御装置16は、例えば、スイッチングのデューティー比を変更することによる搬送波の振幅変調によって情報を送信してもよい。制御装置16は、例えば数十μsから数ms程度等の所定周期でPING送信を行い、送電装置2からPING送信に対する応答信号を受信すると、送電装置2からの電力伝送に対する受電制御を開始する。
【0056】
以下、非接触電力伝送システム10の動作として、送電側制御装置9及び制御装置16が実行する処理について説明する。
図8は、実施形態での非接触電力伝送システム10の制御装置16が実行する受電側処理を示すフローチャートである。図9は、実施形態での非接触電力伝送システム10の送電側制御装置9が実行する送電側処理を示すフローチャートである。
先ず、図8に示すステップS01にて制御装置16は、路側通信機1aと車載通信装置17との無線通信による情報の送受信(課金通信)によって、送電装置2から車両への電力伝送に対する電子決済が可能であるか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、制御装置16はステップS01の処理を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、制御装置16は処理をステップS02に進める。
【0057】
そして、ステップS02にて制御装置16は、路側通信機1aから電力伝送の開始に必要な鍵情報を取得する。
次に、ステップS03にて制御装置16は、受電装置14から送電装置2への電力伝送によるPING送信のための信号を生成する。
次に、ステップS04にて制御装置16は、所定周期でPING送信を実行する。
次に、ステップS05にて制御装置16は、PING送信に対する送電装置2からの応答信号を受信したか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、制御装置16はステップS05の処理を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、制御装置16は処理をステップS06に進める。
そして、ステップS06にて制御装置16は、送電装置2からの電力伝送に対する受電制御を開始する。そして、制御装置16は、処理をエンドに進める。
【0058】
図9は、実施形態での非接触電力伝送システム10の送電側制御装置9が実行する送電側処理を示すフローチャートである。
先ず、図9に示すステップS11にて送電側制御装置9は、路側通信機1aから受電装置14に鍵情報が送信されたか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS12に進める。一方、この判定結果が「YES」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS13に進める。
そして、ステップS12にて送電側制御装置9は、送電装置2の停止状態を維持し、処理をステップS11に戻す。
そして、ステップS13にて送電側制御装置9は、送電装置2を停止状態から受信待機状態に移行させる。
【0059】
次に、ステップS14にて送電側制御装置9は、受電装置14から送電装置2への電力伝送によるPING信号を受信したか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、送電側制御装置9はステップS14の処理を繰り返す。一方、この判定結果が「YES」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS15に進める。
次に、ステップS15にて送電側制御装置9は、通信制御装置1bから受け取った鍵情報と受電装置14から受け取った鍵情報との照合を行う。
【0060】
次に、ステップS16にて送電側制御装置9は、通信制御装置1bから受け取った鍵情報と受電装置14から受け取った鍵情報とが一致したか否かを判定する。この判定結果が「NO」の場合、送電側制御装置9は処理をエンドに進める。一方、この判定結果が「YES」の場合、送電側制御装置9は処理をステップS17に進める。
次に、ステップS17にて送電側制御装置9は、送電装置2から受電装置14への電力伝送によってPING送信に対する応答信号を受電装置14に送信する。
次に、ステップS18にて送電側制御装置9は、受電装置14から受け取った希望周波数での受電装置14への電力伝送に対する送電制御を開始する。そして、制御装置16は、処理をエンドに進める。
【0061】
上述したように、実施形態の非接触電力伝送システム10によれば、電力伝送区間への到達に先立って電力伝送の開始に必要な鍵情報を取得する制御装置16を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば受電装置14を搭載する車両の速度が高いことで電力伝送区間を通過する時間が短くなる場合であっても、制御装置16は、電力伝送区間に到達するより前に電力伝送の実行許可を得ることで、電力伝送区間での電力伝送を迅速に開始させることができる。
【0062】
電力伝送の希望周波数の情報を送電装置2に送る制御装置16を備えることにより、所望の電力及び伝送効率を確保することができる。例えば、送電装置2の一次側コイル8aと受電装置14の二次側コイル31aとの距離に関連する車両の最低地上高及び受電装置14の搭載レイアウト等に起因して結合係数kが低下する場合であっても、相互インダクタンスLmの変動を相殺するような希望周波数によって、伝送電力及び伝送効率の低下を抑制することができる。
【0063】
電力伝送区間への到達に先立って送電装置2を受信待機状態に移行させる送信側制御装置9を備えることにより、電力伝送区間での鍵情報の受信及び照合を迅速に実行させることができる。送電装置2は制御装置16が鍵情報を取得するより前に停止状態であることにより、待機電力の増大を抑制することができる。
【0064】
送電装置2の受信待機状態は、電力変換部7のローサイドアームのトランジスタ7bをオンにして一次側コイル8aを短絡させる状態であることにより、受電装置14から送電装置2への磁界を介した情報の通信を一次側コイル8aに誘起される電圧によって容易に検出することができる。
電力伝送の搬送波によって情報を送る制御装置16を備えることにより、非接触電力伝送システム10の構成及び送電装置2と受電装置14との間の情報送信の処理が複雑になることを抑制し、各種の情報を容易に送信することができる。
【0065】
(変形例)
以下、実施形態の変形例について説明する。なお、上述した実施形態と同一部分については、同一符号を付して説明を省略又は簡略化する。
上述した実施形態では、通信システム1は、電子的な料金収受システムを構成するとしたが、これに限定されない。例えば、通信システム1は、単に、所定の電力伝送区間での送電装置2による電力伝送に先立って、車載通信装置17と通信を行うシステムであってもよい。
【0066】
上述した実施形態では、送電装置2と受電装置14との間の電力伝送によって鍵情報及び希望周波数等の情報の送受信を行うとしたが、これに限定されない。例えば、送電装置2及び受電装置14の各々は相互に無線通信を行う通信機を備え、相互の通信機を介して鍵情報及び希望周波数等の情報の送受信を行ってもよい。
【0067】
上述した実施形態では、第1電力変換装置12は、蓄電装置11の入出力電力を変換する電圧制御器を備えるとしたが、これに限定されず、電圧制御器は省略されてもよい。
例えば、バッテリ及び内燃機関を動力源として駆動するハイブリッド車両等の場合、第1電力変換装置12は電圧制御器を備え、バッテリを動力源として駆動する電気自動車等の場合、第1電力変換装置12は電圧制御器を備えていなくてもよい。
【0068】
本発明の実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0069】
1…通信システム、1a…路側通信機(通信機)、1b…通信制御装置、2…送電装置、3…駆動制御装置、4…電力制御装置、8…送電部、8a…一次側コイル(コイル)、9…送電制御装置、10…非接触電力伝送システム、11…蓄電装置、12…第1電力変換装置、13…回転電機、14…受電装置、15…第2電力変換装置、16…制御装置、31…受電部、31a…二次側コイル(コイル)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9