(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ゴム樹脂材料及びそれを用いた金属基板
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20241004BHJP
C08L 71/12 20060101ALI20241004BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241004BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241004BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20241004BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20241004BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L71/12
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/38
C08K3/28
C08K9/04
(21)【出願番号】P 2022163798
(22)【出願日】2022-10-12
【審査請求日】2022-10-12
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廖▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】張宏毅
(72)【発明者】
【氏名】劉家霖
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼威儒
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-133414(JP,A)
【文献】特開2022-022090(JP,A)
【文献】特表2022-508173(JP,A)
【文献】特開2022-011017(JP,A)
【文献】特開2018-012772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム樹脂組成物及び表面改質無機フィラーを含むゴム樹脂材料であって、
前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記表面改質無機フィラーの添加量は、20重量部~300重量部であり、
前記ゴム樹脂組成物は、前記ゴム樹脂組成物の総重量を100重量%として、
分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%~60重量%と、
ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、
架橋剤10重量%~40重量%とからなり、
前記液体ゴムを構成するモノマーは、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーからなる群から選択され、
前記液体ゴムの全ての末端基に占めるビニール基の割合は、30モル%~90モル%であり、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるスチレン基の割合は、10モル%~50モル%であり、
前記架橋剤は、アリル基(allyl group)を含み、
前記ポリフェニレンエーテル樹脂は、少なくとも1つの改質基を有し、前記改質基は、水酸基、アミノ基、ビニール基、スチレン基、メタクリレート基及びエポキシ基からなる群から選択され、
前記表面改質無機フィラー
の改質官能基は、アクリル基、及び主鎖または側鎖に窒素を有する官能基からなる、ゴム樹脂材料。
【請求項2】
前記表面改質無機フィラーは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択されると共に、前記改質官能基を含む、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項3】
前記ブタジエンモノマーの総重量を100重量%として、30重量%~90重量%の前記ブタジエンモノマーは、ビニール基を含む側鎖を有するブタジエンモノマーである、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項4】
前記表面改質無機フィラーは、粒子として存在すると共に、前記表面改質無機フィラーの中位径(D50)は、0.3μm~0.6μmである、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項5】
前記表面改質無機フィラーは、アクリル基及び/又はビニール基を有するシロキサンカップリング剤を更に含む、請求項1に記載のゴム樹脂材料。
【請求項6】
前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部である、請求項5に記載のゴム樹脂材料。
【請求項7】
基材層と、前記基材層に設置した金属層とを備える、金属基板であって、
前記基材層の材料は、請求項1に記載のゴム樹脂材料を含むことを特徴とする、金属基板。
【請求項8】
熱伝導率は、1.2W/m・K以上である、請求項7に記載の金属基板。
【請求項9】
前記金属基板の10GHzでの比誘電率は3.2~4.0であり、前記金属基板の10GHzでの誘電正接は0.0030未満である、請求項7に記載の金属基板。
【請求項10】
剥離強度は、0.51N・m~0.8N・m(4.5lb/in~7.0lb/in)である、請求項7に記載の金属基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム樹脂材料及びその応用に関し、特に、高い熱伝導性且つ低誘電性を有するゴム樹脂材料及びそれを用いた金属基板(例えば、銅箔基板(Copper Clad Laminate,CCL))に関する。
【背景技術】
【0002】
第5世代移動通信システム(5th generation wireless system,5G)の開発に伴い、5G無線通信規格を満たすために、高周波伝送が現在の開発の主流となっている。したがって、業界は、高周波伝送に適した高周波基板材料(例えば、6?77GHzの周波数範囲)の開発に取り組んでおり、高周波基板を基地局のアンテナ、衛星レーダー、自動車レーダー、無線通信アンテナ、又はパワーアンプに応用できるようにしている。
【0003】
比誘電率(dielectric constant,Dk)及び誘電正接(dielectric dissipation factor,Df)は、送信信号の速度と品質に直接に影響するため、5Gに応用する場合、信号遅延を改善し、且つ信号伝送損失を低減するため、低い比誘電率且つ極めて低い誘電正接を有する材料を用いる必要がある。その上、5Gに応用する場合、熱伝導性、耐熱性も要求される。以下、高周波基板の比誘電率と誘電正接とを合わせて、高周波基板の誘電特性と称す。
【0004】
現在市販のゴム樹脂材料は、特定の比率の液体ゴムを添加し、液体ゴムは、高い溶解性及び反応性官能基を有する、という特徴を有する。このように、ゴム樹脂材料は、高周波基板材料として好適である。しかしながら、液体ゴムの添加量は、高すぎてはいけない。液体ゴムの含有量が高すぎる(25重量%を超える)と、ゴム樹脂材料のガラス転移温度(glass transition temperature,Tg)が比較的に低くなると共に、基板の剥離強度が不良となってしまう。
【0005】
また、市販の高熱伝導性樹脂材料において、樹脂材料の熱伝導性を向上させるために、所定の比率で熱伝導性フィラーを含有する。樹脂100重量部に対して、熱伝導性フィラーの添加量は、45重量部超え60重量部以下であるが、過量の熱伝導性フィラーは、ゴム樹脂材料と熱伝導性フィラーとの界面相容性に悪影響を与え、基板の耐熱性に影響することで、高周波基板材料での応用にとって不利となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、高い熱伝導性且つ低誘電性を有するゴム樹脂材料及びそれを用いた金属基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、高い熱伝導性且つ低誘電性を有するゴム樹脂材料を提供する。前記ゴム樹脂材料は、ゴム樹脂組成物及び表面改質無機フィラーを含む。前記ゴム樹脂組成物は、分子量が2500g/mol~6000g/molでの液体ゴム30重量%~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む。前記表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基、二重結合を含む官能基及びエポキシ基からなる群から選択される。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記表面改質無機フィラーは、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素及びケイ酸アルミニウムからなる群から選択されると共に、前記改質官能基を含む。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記液体ゴムを構成するモノマーは、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーからなる群から選択される。
【0010】
本発明の一つの実施形態において、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるビニール基の割合は、30モル%~90モル%であり、前記液体ゴムの全ての末端基に占めるスチレン基の割合は、10モル%~50モル%である。
【0011】
本発明の一つの実施形態において、前記ブタジエンモノマーの総重量を100重量%として、30重量%~90重量%の前記ブタジエンモノマーは、ビニール基を含む側鎖を有するブタジエンモノマーである。
【0012】
本発明の一つの実施形態において、前記表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基及び主鎖または側鎖に窒素を有する官能基からなる。
【0013】
本発明の一つの実施形態において、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、前記表面改質無機フィラーの添加量は、20重量部~300重量部である。
【0014】
本発明の一つの実施形態において、前記表面改質無機フィラーは、粒子として存在すると共に、前記表面改質無機フィラーの中位径(D50)は、0.3μm~0.6μmである。
【0015】
本発明の一つの実施形態において、前記表面改質無機フィラーは、アクリル基及び/又はビニール基を有するシロキサンカップリング剤を更に含む。
【0016】
本発明の一つの実施形態において、前記ゴム樹脂組成物100重量部に対して、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部である。
【0017】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、金属基板を提供する。前記金属基板は、基材層と、前記基材層に設置した金属層とを備える。前記基材層の材料は、前記組成を含む高熱伝導性且つ低誘電特性を有するゴム樹脂材料を含む。
【0018】
本発明の一つの実施形態において、前記金属基板の熱伝導率は、1.2W/m・K以上である。
【0019】
一つの実施形態において、前記金属基板の10GHzでの比誘電率は3.2~4.0であり、前記金属基板の10GHzでの誘電正接は0.0030未満である。
【0020】
本発明の一つの実施形態において、前記金属基板の剥離強度は、4.5lb/in~7.0lb/inである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の有利な効果として、本発明に係る高熱伝導性且つ低誘電特性を有するゴム樹脂材料及び金属基板は、「ゴム樹脂組成物は、分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む」、「表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基、二重結合を含む官能基及びエポキシ基からなる群から選択される」といった技術特徴によって、実際に応用する際に所望の物性(例えば、熱伝導性、誘電特性、剥離強度、耐熱性など)を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る金属基板の構造を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る金属基板のもう一つの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0024】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明に係る「ゴム樹脂材料及びそれを用いた金属基板」の実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0025】
[高い熱伝導性且つ低誘電性を有するゴム樹脂材料]
本発明は、高い熱伝導性且つ低誘電性を有するゴム樹脂材料を提供する。前記ゴム樹脂材料は、ゴム樹脂系に表面改質無機フィラーを導入するものである。それによって、ゴム樹脂系の物性は(熱伝導性、誘電特性など)高周波・高速の要求を満たし、従来の材料に比べて、高周波高速基板材料として用いられる。
【0026】
具体的に説明すると、本発明のゴム樹脂材料は、ゴム樹脂組成物及びゴム樹脂組成物に均一に分散する表面改質無機フィラーを含む。後文にゴム樹脂組成物及び表面改質無機フィラーについて詳しく説明する。
【0027】
[ゴム樹脂組成物]
本発明において、ゴム樹脂組成物は主に、液体ゴム30重量%(wt%)~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む。
【0028】
特筆すべきことは、液体ゴムの分子量が2500g/mol~6000g/molである場合、ゴム樹脂組成物の流動性が向上し、低誘電基板材料の充填性を向上する効果を果たせる。液体ゴムの分子量は、3000g/mol~5500g/molであることが好ましく、3000g/mol~5000g/molであることがより好ましい。液体ゴムは、溶解性が高い特性を有するため、各成分の間の相溶性を向上させると共に、液体ゴムは、反応性官能基を有するため、ゴム樹脂材料を硬化した後の架橋度を向上させることができる。
【0029】
また、液体ゴムは、特定の分子量を有し、特定の構造及び構成単位を有するため、より大量にゴム樹脂組成物に添加し、即ち、液体ゴムのゴム樹脂組成物での含有割合を大幅に向上させることができる。具体的に説明すると、ゴム樹脂組成物の総重量を100重量%として、液体ゴムの含有量は40重量%を超えることが可能であり、従来の技術のゴム樹脂組成物での液体ゴムの含有量(25重量%)を明らかに超える。好ましくは、液体ゴムのゴム樹脂組成物での含有量は、30重量%~60重量%である。
【0030】
一つの実施形態において、液体ゴムは、液体ジエン系ゴムを含む。具体的に説明すると、液体ジエン系ゴムは、ポリブタジエン樹脂を含む。ポリブタジエン樹脂とは、ブタジエンモノマーを用いて重合されたポリマーであり、例えばブタジエンホモポリマー、又はブタジエンと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0031】
一つの好ましい実施形態において、液体ジエン系ゴムは、ブタジエン及びスチレンで構成された共重合体である。即ち、液体ゴムを構成するモノマーは、スチレン及びブタジエンを含む。スチレンモノマー及びブタジエンモノマーは、ランダムに配列してランダム共重合体(random copolymer)として形成されることか、若しくは、規則的に配列して交互共重合体(alternating copolymer)又はブロック共重合体(block copolymer)として形成されることができる。
【0032】
液体ゴムの総重量を100重量%として、スチレンモノマーの含有量は、10重量%~50重量%である。スチレンモノマーの液体ゴムでの含有量が10重量%~50重量%である場合、液体ゴムの構造が液晶分子配列の分子幾何構造に類似することで、耐熱性及びシステム相溶性が向上させることができる。好ましくは、スチレンモノマーの液体ゴムでの含有量は、15重量%~50重量%である。スチレンモノマーの含有量が50重量%を超える場合、ゴム樹脂材料の粘度は、高熱伝導性金属基板の製造にとって不利となる。
【0033】
更に説明すると、ブタジエンそのものは、2つの二重結合を有することから、重合する際に、重合方法の違いによって、異なる構造を得る。即ち、ポリブタジエンは、cis-1,4-ポリブタジエン、trans-1,4-ポリブタジエン、1,2-ポリブタジエンの中の任意1つ又は複数の構造から構成されてもよい。具体的に説明すると、ブタジエンが1,4-付加重合反応を行う場合に、cis-1,4-ポリブタジエン又はtrans-1,4-ポリブタジエンの構造が生成される。cis-1,4-ポリブタジエン又はtrans-1,4-ポリブタジエンの構造において、ポリブタジエンは、不飽和側鎖を有しない。ブタジエンが1,2-付加重合反応を行う場合に、1,2-ポリブタジエンの構造が生成される。1,2-ポリブタジエンの構造において、ポリブタジエンは、不飽和側鎖(ビニール基)を有する。
【0034】
好ましくは、ブタジエンモノマーの総重量を100重量%として、30重量%~90重量%のブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基を含む側鎖を有する。好ましくは、ブタジエンモノマーの総重量を100重量%として、30~80重量%のブタジエンモノマー(重合後)は、ビニール基を含む側鎖を有する。
【0035】
液体ゴムが少なくとも1つのビニール基を含む側鎖(又はビニール基)を有する場合に、架橋した高熱伝導性ゴム樹脂組成物の架橋密度及び耐熱性が向上する。又、本発明において、液体ゴムにおけるビニール基を含む不飽和側鎖(又はビニール基)の測定は、化学分析におけるヨウ素価で定量することができる。液体ゴムのヨウ素価が高いほど、液体ゴムにおけるビニール基を含む不飽和側鎖(又はビニール基)の含有量が高い。ビニール基を含む不飽和側鎖(又はビニール基)は、架橋したゴム樹脂組成物の物理特性を向上させることができる。本発明において、液体ゴムのヨウ素価は、30g/100g~60g/100gである。
【0036】
ヨウ素価の測定方法は、まず0.3mg~1mgの液体ゴムを採取し、クロロホルムを添加して液体ゴムを完全に溶解させ、ウィイス試液(Wijs solution)を添加して30分間暗所に放置する。次に、20mLのヨウ化カリウム(100g/L)及び100mLの水を添加した後に、0.1mol/Lのチオ硫酸ナトリウム溶液を用いて滴定を行い、溶液が薄黄色となった時に、数滴のデンプン溶液(10g/L)を加え、青色が消えるまで滴定を行う。
【0037】
本発明の一つの実施形態において、液体ジエン系ゴムは、ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーで形成された共重合体である。即ち、液体ゴムを構成するモノマーは、スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーを含む。スチレンモノマー、ブタジエンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーは、規則的に配列するか、もしくはランダムに配列されることができる。ブタジエンモノマー、スチレンモノマー、ジビニルベンゼンモノマー及び無水マレイン酸モノマーの総量を100モル%として、ブタジエンモノマーの含有量は、30モル%~90モル%であり、スチレンモノマーの含有量は、10モル%~50モル%であり、ジビニルベンゼンモノマーの含有量は、10モル%~40モル%であり、且つ無水マレイン酸モノマーの含有量は、2モル%~20モル%であってもよい。
【0038】
ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量は、1000g/mol~20000g/molであり、好ましくは、2000g/mol~10000g/molであり、より好ましくは、2000g/mol~2200g/molである。特筆すべきことは、ポリフェニレンエーテル樹脂の分子量が20000g/mol未満である場合に、より優れた溶解性を有するため、ゴム樹脂組成物の製造に有利である。
【0039】
好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂は、少なくとも1つの改質基を有してもよい。改質基は、水酸基、アミノ基、ビニール基、スチレン基、メタクリレート基及びエポキシ基からなる群から選択されてもよい。ポリフェニレンエーテル樹脂での改質基は、不飽和結合を提供して、架橋反応の進行が有利となり、それによって、高ガラス転移温度且つ耐熱性が良好な材料を形成することができる。本実施形態において、ポリフェニレンエーテルの分子構造における2つの末端にはそれぞれ、改質基を有すると共に、前記2つの改質基が同一である。
【0040】
好ましくは、ポリフェニレンエーテル樹脂は、単一の種類であるポリフェニレンエーテルを含んでもよく、複数の種類のポリフェニレンエーテルを同時に含んでもよい。
【0041】
例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂として、SABIC社の品番SA90(2つの末端にある改質基が水酸基である)又はSA9000(2つの末端にある改質基がメタクリレート基である)であるポリフェニレンエーテル樹脂、もしくは、三菱ガス化学株式会社(MGC)製のOPE-2St(2つの末端にある改質基がスチレン基である)、OPE-2EA(2つの末端にある改質基がメタクリレート基である)、又はOPE-2Gly(2つの末端にある改質基がエポキシ基である)であるポリフェニレンエーテル樹脂を用いられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0042】
例えば、ポリフェニレンエーテルとして、2つの末端にある改質基が水酸基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がメタクリレート基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がスチレン基であるポリフェニレンエーテル、又は2つの末端にある改質基がエポキシ基であるポリフェニレンエーテルであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0043】
一つの実施形態において、ポリフェニレンエーテル樹脂は、第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルを含んでもよい。第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルのそれぞれの分子末端に少なくとも1つの改質基を有し、改質基は、水酸基、アミノ基、ビニール基、スチレン基、メタクリレート基及びエポキシ基などの基からなる群から選択されると共に、第1のポリフェニレンエーテルの改質基は、第2のポリフェニレンエーテルの改質基と異なっている。具体的に説明すると、第1のポリフェニレンエーテルと第2のポリフェニレンエーテルとの重量比は、0.5~1.5であり、0.75~1.25であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0044】
例えば、第1のポリフェニレンエーテル及び第2のポリフェニレンエーテルは独立に、2つの末端にある改質基が水酸基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がメタクリレート基であるポリフェニレンエーテル、2つの末端にある改質基がスチレン基であるポリフェニレンエーテル、又は2つの末端にある改質基がエポキシ基であるポリフェニレンエーテルであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0045】
例えば、第1のポリフェニレンエーテル樹脂及び第2のポリフェニレンエーテル樹脂は独立に、SABIC社の品番SA90(2つの末端にある改質基が水酸基である)又はSA9000(2つの末端にある改質基がメタクリレート基である)であるポリフェニレンエーテル樹脂、もしくは、三菱ガス化学株式会社(MGC)製のOPE-2St(2つの末端にある改質基がスチレン基である)、OPE-2EA(2つの末端にある改質基がメタクリレート基である)、又はOPE-2Gly(2つの末端にある改質基がエポキシ基である)であるポリフェニレンエーテル樹脂を用いられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0046】
本発明の架橋剤は、ポリフェニレンエーテル樹脂と液体ゴムとの架橋度を向上させることができる。本実施形態において、架橋剤は、アリル基(allyl group)を含んでもよい。例えば、架橋剤は、トリアリルシアヌレート(triallyl cyanurate,TAC)、トリアリルイソシアヌレート(triallyl isocyanurate,TAIC)、フタル酸ジアリル(diallyl phthalate)、ジビニルベンゼン(divinylbenzene)、トリアリルトリメリテート(triallyl trimellitate)又はそれらの組み合わせであってもよい。好ましくは、架橋剤は、トリアリルイソシアヌレートであるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0047】
[表面改質無機フィラー]
表面改質無機フィラーの添加は、ゴム樹脂材料の熱伝導性を向上させることができると共に、実際に応用する際に、ゴム樹脂材料の比誘電率及び誘電正接を低いレベルに維持させることができる。以上の内容は、表面改質無機フィラーの作用を説明するためのものであり、本発明はこれに制限されるものではない。実際に応用する際に、表面改質無機フィラーと銅箔、樹脂とのより優れた結合性及び相溶性を有する。また、表面改質無機フィラーは、他の有利な効果を果たせる。例えば、ゴム樹脂材料の耐熱性を向上すること、ゴム樹脂材料の粘度を低減すること、銅箔基板の剥離強度(peeling strength)を向上することなどが挙げられる。
【0048】
本発明において、表面改質無機フィラーは、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)及びケイ酸アルミニウム(Al2O3・SiO2)からなる群から選択される。表面改質無機フィラーに改質官能基を有し、即ち、表面に十分な量の改質官能基で覆われるが、本発明はこれに制限されるものではない。一つの好ましい実施形態において、表面改質無機フィラーは、表面に改質官能基を有する酸化ケイ素及び表面に改質官能基を有する窒化ホウ素からなる。
【0049】
更に説明すると、表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基、二重結合を含む官能基及びエポキシ基からなる群から選択される。好ましくは、表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基、又はそれらの組み合わせである。それによって、表面改質無機フィラーは、液体ゴムと反応することで、ゴム樹脂組成物に良好な相溶性を与えた上で、高熱伝導性金属基板の耐熱性に悪影響を与えることはない。また、表面改質無機フィラーは、ゴム樹脂組成物により大量に添加され、従来の技術のゴム樹脂組成物における無機フィラーの添加上限を向上させることができる。このように、本発明のゴム樹脂材料は、高周波基板材料としてより適切である。
【0050】
一つの実施形態において、表面改質無機フィラーは、下式(1)で示す構造を有する含窒素シラン化合物で改質することで、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基を有する。
【化1】
【0051】
特筆すべきことは、表面改質無機フィラーは、単一の無機物粉末又は複数種の無機物粉末で混合されてもよい。また、表面改質無機フィラーは、全てが表面処理されるか、もしくは、一部が表面処理されてもよい。表面改質無機フィラーが酸化アルミニウム及び窒化ホウ素を含む具体例において、酸化アルミニウムが表面改質によってアクリル基及び/又はビニール基を有し、窒化ホウ素が表面改質されない。以上の内容は可能な実施形態であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0052】
一つの好ましい実施形態において、表面改質無機フィラーは、酸化アルミニウム、酸化ケイ素及び窒化ホウ素を同時に含む。ゴム樹脂組成物100重量部に対して、酸化アルミニウムの添加量は、50重量部~120重量部であり、酸化ケイ素の添加量は、10重量部~100重量部であり、窒化ホウ素の添加量は、30重量部~80重量部である。
【0053】
実際に応用する際に、無機フィラーの表面改質方法は、無機フィラーにアクリル基及び/又はビニール基を与えるために、特定の官能性を有するシランに含浸させる(例えば、ビニール基を有するシラン又はアクリル基を有するシラン)ことであってもよい。
【0054】
表面改質無機フィラーの添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物100重量部に対して、表面改質無機フィラーの含有量は、20重量部~250重量部であってもよく、100重量部~150重量部であることが好ましく、120重量部~130重量部であることがより好ましい。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0055】
表面改質無機フィラーの外観は、粒子状又はシート状であってもよく、好ましくは、シート状である。表面改質無機フィラーの中位径(D50)は、0.3μm~3μmであり、0.3μm~0.6μmであることが好ましい。それによって、表面改質無機フィラーをゴム樹脂組成物に均一に分散することができると共に、前記有利な効果(特に、熱伝導性及び低誘電特性)を顕著に向上させる。説明すべきことは、前記中位径の範囲である場合、無機フィラーが大きい比表面積を有し、表面改質の効果が顕著となると共に、金属基板の穴あけ性を向上する。
【0056】
[シロキサンカップリング剤]
本発明のゴム樹脂材料は、シロキサンカップリング剤を更に含んでもよい。シロキサンカップリング剤の一端は、無機物と結合する可能なシラン端であり、シロキサンカップリング剤の他端は、ゴム/樹脂と結合する可能な官能基を有する。このように、シロキサンカップリング剤の添加は、繊維布、高熱伝導性ゴム樹脂組成物及び無機フィラーの間の反応性及び相容性を向上させ、金属基板の剥離強度及び耐熱性を向上させることができる。
【0057】
一つの好ましい実施形態において、シロキサンカップリング剤は、アクリル基及び/又はビニール基を含む。シロキサンカップリング剤の分子量は、100g/mol~500g/molであり、110g/mol~250g/molであることが好ましく、120g/mol~200g/molであることがより好ましい。
【0058】
ゴム樹脂組成物100重量部に対して、シロキサンカップリング剤の含有量は、0.1重量部~5重量部であり、好ましくは、0.5重量部~3重量部である。
【0059】
[難燃剤]
本発明のゴム樹脂材料は、難燃剤を更に含んでもよい。難燃剤の添加により、高周波基板の難燃性を向上させることができる。例えば、難燃剤は、リン系難燃剤又は臭素系難燃剤であってもよい。好ましくは、難燃剤はハロゲンフリー難燃剤であり、即ち、臭素を含まないものである。
【0060】
臭素系難燃剤として、エチレンビス(テトラブロモフタルイミド)(ethylene bistetrabromophthalimide)、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン(tetradecabromodiphenoxy benzene)、デカブロモジフェノキシオキシド(decabromo diphenoxy oxide)又はそれらの組み合わせであってもよいが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0061】
リン系難燃剤として、リン酸エステル系(sulphosuccinic acid ester)、ホスファゼン系(phosphazene)、ポリリン酸アンモニウム系、ポリリン酸メラミン系(melamine polyphosphate)又はシアヌル酸メラミン(melamine cyanurate)であってもよい。リン酸エステル系難燃剤としては、リン酸トリフェニル(triphenyl phosphate,TPP)、テトラフェニルレゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(tetraphenyl resorcinol bis(diphenylphosphate),RDP)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)(bisphenol A bis(diphenyl phosphate),BPAPP)、ビスフェノールAビス(ジメチル)ホスファート(BBC)、レゾルシノール二リン酸(例えば、大八化学工業社製、CR-733S)、レゾルシノールビス(2,6-ジメチルフェニルホスフェート)(例えば、大八化学工業社製、PX-200)が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0062】
難燃剤の添加量は、製品の規格に応じて調整することができる。一つの実施形態において、ゴム樹脂組成物100重量部に対して、難燃剤の添加量は、0.1~5重量部である。
【0063】
[金属基板]
図1及び
図2に示すように、本発明は、基材層1と、基材層1に設置した少なくとも1つの金属層2と、を備える金属基板Zを更に提供する。基材層1の材料は、前記組成の配合比を有し、高い熱伝導性且つ低誘電性を有するゴム樹脂材料を含む。具体的に説明すると、金属基板Zは、銅箔基板(Copper Clad Laminate,CCL)であってもよい。金属層2(銅箔層)は、基材層1の片面(例えば、上面)に形成されてもよい(金属層2の数は1つのみである)。もしくは、金属層2は、基材層1の両表面(例えば、上面、下面)にそれぞれ形成されてもよい(金属層2の数は2つである)。
【0064】
具体的に説明すると、金属基板Zの比誘電率(10GHz)は、3.2~4であり、3.3~3.9であることが好ましく、3.4~3.8であることがより好ましい。金属基板Zの誘電正接(10GHz)は、0.0030未満であり、0.0025未満であることが好ましく、0.0020未満であることがより好ましい。金属基板Zの熱伝導率は、1.2W/m・K以上であり、1.3W/m・K以上であることが好ましく、1.4W/m・K以上であることがより好ましい。金属基板Zの剥離強度は、4.5lb/in~7.0lb/inであることが好ましく、5lb/in~7.0lb/inであることがより好ましい。
【0065】
金属基板Zの特性を評価する方法として、以下に示す通りである。
(1)比誘電率(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、10GHzの周波数での比誘電率を測定する。
(2)誘電正接(10GHz):誘電分析装置(Dielectric Analyzer)(品番:HP Agilent E5071C)を用いて、10GHzの周波数での誘電正接を測定する。
(3)剥離強度:試験方法IPC-TM-650-2.4.8に基づいて、銅箔基板の剥離強度を測定する。
(4)熱伝導率:測定方法ASTM D5470に基づいて、銅箔基板の熱伝導率を測定する。
【0066】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る高熱伝導性且つ低誘電特性を有するゴム樹脂材料及び金属基板は、「ゴム樹脂組成物は、分子量が2500g/mol~6000g/molの液体ゴム30重量%~60重量%と、ポリフェニレンエーテル樹脂10重量%~40重量%と、架橋剤10重量%~40重量%とを含む」、「表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基、二重結合を含む官能基及びエポキシ基からなる群から選択される」といった技術特徴によって、実際に応用する際に所望の物性(例えば、熱伝導性、誘電特性、剥離強度、耐熱性など)を達成できる。
【0067】
更に説明すると、表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基、二重結合を含む官能基及びエポキシ基からなる群から選択される。好ましくは、表面改質無機フィラーの改質官能基は、アクリル基、主鎖または側鎖に窒素を有する官能基、又はそれらの組み合わせである。このように、表面改質無機フィラーの添加は、ゴム樹脂材料の熱伝導性を向上させることができると共に、実際に応用する際に、ゴム樹脂材料の比誘電率及び誘電正接を低いレベルに維持させることができる。また、表面改質無機フィラーと銅箔、樹脂とのより優れた結合性及び相溶性を有する。また、表面改質無機フィラーは、他の有利な効果を果たせる。例えば、ゴム樹脂材料の耐熱性を向上すること、ゴム樹脂材料の粘度を低減すること、銅箔基板の剥離強度(peeling strength)を向上することなどが挙げられる。
【0068】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
Z…金属基板
1…基材層
2…金属層