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特許7566008イミダゾピリジノン化合物又はその塩の結晶
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】イミダゾピリジノン化合物又はその塩の結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20241004BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20241004BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C07D471/04 107A
C07D471/04 CSP
A61K31/4188
A61P1/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022507231
(86)(22)【出願日】2021-03-10
(86)【国際出願番号】 JP2021009405
(87)【国際公開番号】W WO2021182490
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020041453
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196807
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100209440
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 皓
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】木島 喜朗
(72)【発明者】
【氏名】森山 彰博
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/054788(WO,A1)
【文献】特表2013-508464(JP,A)
【文献】特表2010-535855(JP,A)
【文献】特表2009-521445(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181813(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(I)で表される化合物の結晶:
【化1】
又は式(I)で表される化合物のメタンスルホン酸、塩化水素、p-トルエンスルホン酸、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選択される一つの酸又は塩基との塩の結晶。
【請求項2】
請求項1に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有するメタンスルホン酸塩の結晶:
(i)10.6±0.2及び14.1±0.2のピーク;
(ii)21.8±0.2及び25.5±0.2のピーク;
(iii)12.8±0.2及び22.6±0.2のピーク;及び
(iv)6.0±0.2及び15.4±0.2のピーク。
【請求項3】
請求項1に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択されるの回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有するメタンスルホン酸塩の結晶:
(i)7.0±0.2及び10.6±0.2のピーク;
(ii)18.4±0.2及び25.5±0.2のピーク;
(iii)17.8±0.2及び22.6±0.2のピーク;及び
(iv)6.0±0.2及び11.0±0.2のピーク。
【請求項4】
請求項1に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する塩酸塩の結晶:
(i)13.1±0.2及び17.4±0.2のピーク;
(ii)6.2±0.2及び8.1±0.2のピーク;
(iii)12.9±0.2及び21.4±0.2のピーク;及び
(iv)10.5±0.2及び11.0±0.2。
【請求項5】
請求項1に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する塩の結晶:
(i)6.1±0.2及び24.7±0.2のピークを有するp-トルエンスルホン酸塩;
(ii)5.8±0.2及び22.7±0.2のピークを有するナトリウム塩;
(iii)5.7±0.2及び22.8±0.2にピークを有するカリウム塩;及び
(iv)7.3±0.2及び16.1±0.2にピークを有するカルシウム塩。
【請求項6】
請求項1に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iii)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する化合物の結晶:
(i)10.1±0.2及び18.0±0.2のピーク;
(ii)12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク;及び
(iii)11.1±0.2及び14.1±0.2のピーク。
【請求項7】
請求項1に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iii)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する化合物の結晶:
(i)7.6±0.2及び18.0±0.2のピーク;
(ii)11.4±0.2及び17.0±0.2のピーク;及び
(iii)10.5±0.2及び11.1±0.2のピーク。
【請求項8】
請求項1に記載の結晶であって、粉末X線回折において、回折角(2θ(°)) 7.6±0.2、9.0±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2、17.1±0.2、18.0±0.2、19.1±0.2、21.1±0.2、21.7±0.2、23.4±0.2、26.2±0.2 及び27.5±0.2 のピークを有する化合物の結晶。
【請求項9】
請求項1から8の何れか一項に記載の結晶、及び医薬品添加物を含む医薬組成物。
【請求項10】
炎症性腸疾患の治療用医薬組成物である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の医薬組成物であって、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である医薬組成物。
【請求項12】
以下の式(I)で表される化合物又はその塩の結晶:
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品として有用なイミダゾピリジノン化合物又はその塩の結晶に関する。
【0002】
さらに詳しく述べれば、本発明は、プロリルヒドロキシラーゼ阻害作用を有し、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患の治療剤として有用なイミダゾピリジノン化合物又はその塩の結晶に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症性腸疾患(IBD)は、免疫の過剰応答により腸管粘膜に炎症や潰瘍が生じる慢性疾患である。IBDには、例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病が含まれる。
【0004】
潰瘍性大腸炎は、原因不明のびまん性非特異性炎症が生じる大腸の疾患である。大腸の粘膜が侵され、粘膜にびらん又は潰瘍を形成することがある。潰瘍性大腸炎は、血便、びらん、潰瘍等が認められる「活動期」と、活動期の所見が消失する「寛解期」に分けることができる。その経過中に再燃と寛解を繰り返すことが多いため、長期間の治療を要する。
【0005】
潰瘍性大腸炎の治療には、まず5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)が標準薬として用いられる。しかしながら、5-ASAの有効性は46~64%ともいわれ、5-ASAの投与により寛解が認められる患者は、29~45%に過ぎないとの報告がある。5-ASAの効果が認められない場合、ステロイド剤が用いられる。それらの薬剤に加えて免疫抑制剤、TNFα抗体等が潰瘍性大腸炎の治療に用いられることがある。しかしながら、いずれの薬剤にも副作用、慎重な投与が求められる等の課題があり、新たな作用メカニズムを有する潰瘍性大腸炎の治療剤が求められている。
【0006】
IBDの病態において、低酸素誘導因子1α(HIF-1α)が消化官上皮のバリア機能に関連した遺伝子の発現を誘導することが知られている。HIF-1αは、低酸素誘導因子α(HIF-α)のサブタイプの1つである。HIF-αは低酸素の環境下(Hypoxia)で安定化され、低酸素に応答した様々な遺伝子の転写を活性化する。一方、酸素が豊富に存在する環境下(Normoxia)では、HIF-αのプロリン残基がプロリル水酸化酵素(PHDs)によって加水分解され、HIF-αはプロテアソーム分解を受ける。
【0007】
PHDsは、PHD1、PHD2及びPHD3の3つのサブタイプが知られている。PHDs阻害剤としてAKB-4924が知られており、AKB-4924がPHD2阻害作用を有し、大腸組織においてHIF-1αを安定化することが報告されている(非特許文献1)。さらに、AKB-4924はTNBS誘発大腸炎モデルにおいて、改善効果が認められている。
【0008】
一方、PHDs阻害剤、例えばRoxadustat及びDaprodustatは、造血作用を有し、貧血治療剤としても開発されている(非特許文献2)。そのため、PHDs阻害剤をIBDの治療剤として用いる場合、造血作用等の全身作用とのきり分けが重要になる。
【0009】
PHDs阻害剤として、例えば、スピロ化合物が特許文献1及び5、並びに非特許文献3及び4に記載されている。また、イミダゾピリジノンを含む化合物が特許文献2から4に記載又は例示されている。しかしながら、上記文献には、本発明のイミダゾピリジノン化合物又はその塩の結晶は、記載も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許出願公開第2011/0152304号明細書
【文献】国際公開第2009/029609号
【文献】国際公開第2003/037890号
【文献】国際公開第2017/066014号
【文献】米国特許出願公開第2010/0137297号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】Ellen Marksら、「Inflamm. Bowel. Dis.」、2015年、第21巻、第2号、p.267-275
【文献】Mun Chiang Chanら、「Molecular Aspects of Medicine」、2016年、第47-48巻、p.54-75
【文献】Guanghui Dengら、「Bioorganic & Medicinal Chemistry」、2013年、第21巻、p.6349-6358
【文献】Petr Vachalら、「Journal of Medicinal Chemistry」、2012年、第55巻、p.2945-2959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願人は、下記の式(I)で表される化合物(以下、化合物1と称する)を、PHD2阻害作用を有する新規化合物として見出し、その発明について特許出願した(PCT/JP2019/035792)。
【化1】
(化学名:2-{[(3S)-3-{1-[6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル}ピロリジン-1-イル]メチル}-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸)
【0013】
原薬としては、良好な物性を有する結晶が好ましい。しかしながら、いかなる結晶形が原薬として最も優れているかは、化合物ごとに異なる。一般的に、良好な物性を有する原薬の結晶形を予想することは困難であり、各化合物について、種々の検討が求められる。したがって、本発明は、新規化合物である化合物1又はその塩について、原薬として良好な物性を有する結晶を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、PHD2阻害作用を有し、炎症性腸疾患の治療に有用な化合物1又はその塩の結晶に関する。すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔12〕等に関する。
〔1〕以下の式(I)で表される化合物の結晶:
【化2】
又は式(I)で表される化合物のメタンスルホン酸、塩化水素、p-トルエンスルホン酸、ナトリウム、カリウム及びカルシウムからなる群から選択される一つの酸又は塩基との塩の結晶。
〔2〕前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有するメタンスルホン酸塩の結晶:
(i)10.6±0.2及び14.1±0.2のピーク(I形結晶);
(ii)21.8±0.2及び25.5±0.2のピーク(II形結晶);
(iii)12.8±0.2及び22.6±0.2のピーク(III形結晶);及び
(iv)6.0±0.2及び15.4±0.2のピーク(IV形結晶)。
〔3〕前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択されるの回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有するメタンスルホン酸塩の結晶:
(i)7.0±0.2及び10.6±0.2のピーク(I形結晶);
(ii)18.4±0.2及び25.5±0.2のピーク(II形結晶);
(iii)17.8±0.2及び22.6±0.2のピーク(III形結晶);及び
(iv)6.0±0.2及び11.0±0.2のピーク(IV形結晶)。
〔4〕前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する塩酸塩の結晶:
(i)13.1±0.2及び17.4±0.2のピーク(I形結晶);
(ii)6.2±0.2及び8.1±0.2のピーク(II形結晶);
(iii)12.9±0.2及び21.4±0.2のピーク(III形結晶);及び
(iv)10.5±0.2及び11.0±0.2(IV形結晶)。
〔5〕前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する塩の結晶:
(i)6.1±0.2及び24.7±0.2のピークを有するp-トルエンスルホン酸塩;
(ii)5.8±0.2及び22.7±0.2のピークを有するナトリウム塩;
(iii)5.7±0.2及び22.8±0.2にピークを有するカリウム塩;及び
(iv)7.3±0.2及び16.1±0.2にピークを有するカルシウム塩。
〔6〕前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iii)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する化合物の結晶:
(i)10.1±0.2及び18.0±0.2のピーク(I形結晶);
(ii)12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク(II形結晶);及び
(iii)11.1±0.2及び14.1±0.2のピーク(III形結晶)。
〔7〕前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iii)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する化合物の結晶:
(i)7.6±0.2及び18.0±0.2のピーク(I形結晶);
(ii)11.4±0.2及び17.0±0.2のピーク(II形結晶);及び
(iii)10.5±0.2及び11.1±0.2のピーク(III形結晶)。
〔8〕前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、回折角(2θ(°)) 7.6±0.2、9.0±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2、17.1±0.2、18.0±0.2、19.1±0.2、21.1±0.2、21.7±0.2、23.4±0.2、26.2±0.2 及び27.5±0.2 のピークを有する化合物の結晶(I形結晶)。
〔9〕前記〔1〕から〔8〕の何れかに記載の結晶、及び医薬品添加物を含む医薬組成物。
〔10〕炎症性腸疾患の治療用医薬組成物である、前記〔9〕に記載の医薬組成物。
〔11〕前記〔10〕に記載の医薬組成物であって、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である医薬組成物。
〔12〕以下の式(I)で表される化合物又はその塩の結晶:
【化3】
【0015】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔9〕に記載の医薬組成物を患者に必要量を投与することを含む、炎症性腸疾患の治療方法に関する。
【0016】
一つの実施態様として、本発明は、炎症性腸疾患の治療用医薬組成物を製造するための、前記〔1〕~〔8〕の何れかに記載の結晶の使用に関する。
【0017】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有するメタンスルホン酸塩の結晶に関する:
(i)7.0±0.2、10.6±0.2、14.1±0.2及び16.2±0.2のピーク(I形結晶);
(ii)18.4±0.2、18.7±0.2、21.8±0.2及び25.5±0.2のピーク(II形結晶);
(iii)12.8±0.2、17.8±0.2、18.3±0.2及び22.6±0.2のピーク(III形結晶);及び
(iv)6.0±0.2、11.0±0.2、15.4±0.2及び16.3±0.2のピーク(IV形結晶)。
【0018】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iii)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセットを有する化合物の結晶:
(i)7.6±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2及び18.0±0.2のピーク(I形結晶);
(ii)11.4±0.2、12.2±0.2、12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク(II形結晶);及び
(iii)10.5±0.2、11.1±0.2、14.1±0.2及び24.7±0.2のピーク(III形結晶)。
【0019】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iv)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセット及び吸熱を有するメタンスルホン酸塩の結晶に関する:
(i)7.0±0.2、10.6±0.2、14.1±0.2及び16.2±0.2のピーク並びに253 ℃付近に吸熱のピークトップ(I形結晶);
(ii)18.4±0.2、18.7±0.2、21.8±0.2及び25.5±0.2のピーク並びに248 ℃付近に吸熱のピークトップ(II形結晶);
(iii)12.8±0.2、17.8±0.2、18.3±0.2及び22.6±0.2のピーク並びに252 ℃付近に吸熱のピークトップ(III形結晶);及び
(iv)6.0±0.2、11.0±0.2、15.4±0.2及び16.3±0.2のピーク並びに22 ℃~100 ℃付近に幅広い吸熱(IV形結晶)。
【0020】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、以下の(i)から(iii)からなる群から選択される回折角(2θ(°))におけるピークのサブセット及び吸熱を有する化合物の結晶:
(i)7.6±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2及び18.0±0.2のピーク並びに266 ℃付近に吸熱のピークトップ(I形結晶);
(ii)11.4±0.2、12.2±0.2、12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク並びに233 ℃付近に吸熱のピークトップ (II形結晶);及び
(iii)10.5±0.2、11.1±0.2、14.1±0.2及び24.7±0.2のピーク並びに30 ℃~120 ℃付近に幅広い吸熱 (III形結晶)。
【0021】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、回折角(2θ(°)) 7.0±0.2、10.6±0.2、13.7±0.2、14.1±0.2、16.2±0.2、17.6±0.2、18.6±0.2、20.5±0.2、21.6±0.2 及び24.5±0.2のピークを有するメタンスルホン酸塩の結晶に関する。
【0022】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、回折角(2θ(°)) 7.6±0.2、9.0±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2、17.1±0.2、18.0±0.2、19.1±0.2、21.1±0.2、21.7±0.2、23.4±0.2、26.2±0.2 及び27.5±0.2 のピークを有する化合物の結晶に関する。
【0023】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔1〕に記載の結晶であって、粉末X線回折において、回折角(2θ(°)) 11.4±0.2、12.2±0.2、12.5±0.2、13.8±0.2、15.0±0.2、15.3±0.2、17.0±0.2、17.6±0.2、23.1±0.2、23.4±0.2、24.4±0.2 及び27.1±0.2のピークを有する化合物の結晶に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の化合物又はその塩の結晶は、原薬として良好な物性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1~15は、各結晶の粉末X線回折図である。縦軸は、回折強度(Counts)をそれぞれ示す。横軸は回折角(2θ(°))をそれぞれ示す。
図16~30は、各結晶の熱重量示差熱分析チャート(TG-DTA測定図)である。縦軸(左)は、熱重量(TG)曲線における質量変化(%)をそれぞれ示す。縦軸(右)は示差熱分析(DTA)曲線における熱流束(μV)をそれぞれ示す。横軸は温度(℃)をそれぞれ示す。
図1】化合物1 I形結晶の粉末X線回折図
図2】化合物1 II形結晶の粉末X線回折図
図3】化合物1 III形結晶の粉末X線回折図
図4】化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶の粉末X線回折図
図5】化合物1のメタンスルホン酸塩 II形結晶の粉末X線回折図
図6】化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶の粉末X線回折図
図7】化合物1のメタンスルホン酸塩 IV形結晶の粉末X線回折図
図8】化合物1の塩酸塩 I形結晶の粉末X線回折図
図9】化合物1の塩酸塩 II形結晶の粉末X線回折図
図10】化合物1の塩酸塩 III形結晶の粉末X線回折図
図11】化合物1の塩酸塩 IV形結晶の粉末X線回折図
図12】化合物1のp-トルエンスルホン酸塩 I形結晶の粉末X線回折図
図13】化合物1のナトリウム塩 I形結晶の粉末X線回折図
図14】化合物1のカリウム塩 I形結晶の粉末X線回折図
図15】化合物1のカルシウム塩 I形結晶の粉末X線回折図
図16】化合物1 I形結晶のTG-DTA測定図
図17】化合物1 II形結晶のTG-DTA測定図
図18】化合物1 III形結晶のTG-DTA測定図
図19】化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶のTG-DTA測定図
図20】化合物1のメタンスルホン酸塩 II形結晶のTG-DTA測定図
図21】化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶のTG-DTA測定図
図22】化合物1のメタンスルホン酸塩 IV形結晶のTG-DTA測定図
図23】化合物1の塩酸塩 I形結晶のTG-DTA測定図
図24】化合物1の塩酸塩 II形結晶のTG-DTA測定図
図25】化合物1の塩酸塩 III形結晶のTG-DTA測定図
図26】化合物1の塩酸塩 IV形結晶のTG-DTA測定図
図27】化合物1のp-トルエンスルホン酸塩 I形結晶のTG-DTA測定図
図28】化合物1のナトリウム塩 I形結晶のTG-DTA測定図
図29】化合物1のカリウム塩 I形結晶のTG-DTA測定図
図30】化合物1のカルシウム I形結晶のTG-DTA測定図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0027】
本発明において、各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0028】
本文中、図中及び表中の以下の略語は、それぞれ以下の意味である。
CDI:カルボニルジイミダゾール
DMF:N、N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
MTBE:メチルtert-ブチルエーテル
NaBH(OAc)3:ナトリウムトリアセトキシボロハイドライド
NMP:1-メチル-2-ピロリジノン
Pd(amphos)Cl2:ビス(ジ-tert-ブチル(4-ジメチルアミノフェニル)ホスフィン)ジクロロパラジウム(II)
THF:テトラヒドロフラン
TNBS:トリニトロベンゼンスルホン酸
アミノシリカゲル:アミノプロピル化シリカゲル
ODSカラムクロマトグラフィー:オクタデシルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー
Ex.No.:実施例番号
Structure:構造式
Physical data:物性値
IC50:50%阻害濃度
FITC:フルオロセインイソチオシアネート
1H-NMR:水素核磁気共鳴スペクトル
DMSO-d6:ジメチルスルホキシド-d6
D2O:重水
MS:質量分析
ESI_APCI:エレクトロスプレーイオン化法-大気圧化学イオン化法のマルチイオン化法
【0029】
本発明において、「原薬としては、良好な物性」とは、例えば、試験例4に示す固体安定性試験において、結晶が物理化学的に安定であるか、又は化学的に安定であることを意味する。
【0030】
本発明の化合物1は、「(S)-2-((3-(1-(6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-イル)メチル)-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸」と表記されることもある。
【0031】
本発明の化合物1の結晶には、水又はエタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。また、本発明の化合物1の塩の結晶には、塩、水又はエタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物、化合物1と適当なCoformerとの共結晶、並びに塩及び適当なCoformerとの塩共結晶(イオン共結晶)も含まれる。
例えば、化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶には、メタンスルホン酸塩の水和物が含まれる。結晶格子内に取り込まれる水分子は、湿度に応じて0から1分子まで変動することもあり、化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶は、何れの水和物も含む。
【0032】
本発明の化合物1において、各原子の一部は、それぞれ対応する同位体で置き換わっていてもよい。本発明は、これら同位体で置き換わった化合物も含む。同位体の例としては、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、125I、13N、15N、15O、17O、18O、32P、及び35Sで表される水素原子、炭素原子、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子の同位体が挙げられる。一つの実施態様として、化合物1の一部の水素原子が2H(D:重水素)で置き換わった化合物が挙げられる。
【0033】
本発明の化合物1において、一部の原子が同位体で置き換わった化合物は、市販の同位体が導入されたビルディングブロックを用いて、後述の製造方法と同様な方法で製造することができる。
【0034】
本発明の化合物1は、優れたPHD2阻害作用を有するので、IBDの治療剤として使用できる(Nature Reviews Drug Discovery、 2014、 13、 p.852-869参照)。本発明において、IBDには、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管型ベーチェット、感染性腸炎、放射線性腸炎、薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸間膜静脈硬化症(静脈硬化性大腸炎)、閉塞性大腸炎、及び膠原病に伴う腸炎が含まれる。好ましくは、本発明の化合物1は、潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療剤として用いることができる(Inflamm. Bowel. Dis.、 2015、 21
(2)、 p.267-275参照)。
【0035】
本発明において、「治療」には「予防」の意味が含まれる。例えば、潰瘍性大腸炎の治療には、例えば、「再燃予防」及び「寛解維持」の意味が含まれる。
【0036】
本発明の化合物1の大腸炎に対する治療効果は、試験例2に記載した方法又は当該技術分野において周知の方法に従い確認することができる。例えば、Biol. Pharm. Bull.、2004、27 (10)、p.1599-1603等に記載の方法又はそれに準じた方法に従い確認することもできる。
【0037】
一つの実施態様として、HIF-αの安定化によるオフターゲット作用を限定するため、本発明の化合物1は、大腸組織に特異的に作用するPHD2阻害剤である。「大腸組織に特異的に作用」とは、例えば、化合物が血中に対して大腸組織で高濃度を示し、全身性の作用(例えば、造血作用)が認められず大腸における治療効果を発揮することを意味する(試験例2及び3参照)。
【0038】
本発明の医薬組成物は、用法に応じ種々の剤型のものが使用される。このような剤型としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、軟膏剤、坐剤、貼付剤、及び注腸剤を挙げることができる。好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与される。
【0039】
本発明の医薬組成物は、化合物1又はその塩の結晶を有効成分として含む。
【0040】
本発明の医薬組成物は、化合物1又はその塩の結晶、及び少なくとも1つの医薬品添加物を用いて調製される。これら医薬組成物は、その剤型に応じ製剤学的に公知の手法により、適切な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の医薬品添加物と適宜混合、希釈又は溶解することにより調製することもできる。
【0041】
本発明の医薬組成物を治療に用いる場合、化合物1又はその塩の投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患及び治療の程度等により適宜決定される。1日投与量を1回、2回、3回又は4回に分けて投与してもよい。
経口投与の場合、成人に対する投与量は、例えば、0.1~1000 mg/日の範囲で定めることができる。一つの実施態様として、経口投与量は、1~500 mg/日の範囲で定めることもでき、好ましくは10~200mg/日の範囲である。
非経口投与の場合、成人に対する投与量は、例えば、0.1~1000 mg/日で定めることができる。一つの実施態様として、非経口投与量は、0.5~200 mg/日の範囲で定めることもでき、好ましくは1~20 mg/日の範囲である。
【0042】
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、PHDs阻害剤以外の他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。炎症性腸疾患の治療において組み合わせて使用することができる他の薬剤としては、例えば、5-ASA、ステロイド剤、免疫抑制剤、TNFα抗体、ヤヌスキナーゼ阻害剤、及びα4β7インテグリン抗体が挙げられる。
【0043】
本発明の化合物1又はその塩の結晶と他の薬剤とを組み合わせて使用する場合、これらの有効成分を一緒に含有する製剤、又はこれらの有効成分の個々を別々に製剤化した製剤として投与することができる。別々に製剤化した場合、それらの製剤を別々に、又は同時に投与することができる。また、本発明の化合物1又はその塩の投与量は、組み合わせて使用する他の薬剤の投与量に応じて、適宜減量してもよい。
【0044】
粉末X線回折の測定
結晶を乳鉢粉砕した後、粉末X線回折装置SmartLab(リガク)を用いて反射法にて、以下の条件で測定した。
X線源、波長: CuKα線(CuKα1及びCuKα2)、1.5418 Å
管電圧、管電流、走査速度: 40 kV、50 mA、13°(2θ)/min
データ解析ソフト:SmartLab Studio II(リガク)
データ解析方法(ピーク定義):ピーク位置(ピークトップ位置、CuKα1及びCuKα2照射時の回折角)、ピーク高さ(バックグラウンドを含めない)
【0045】
粉末X線回折パターンにおける各ピークの相対強度(相対的なピークの高さ)が、試料条件や測定条件によって変動しうることは公知である。そのため、相対強度は結晶成長の方向、粒子の大きさ、測定条件等によって僅かに変わり得るものであるから、厳密に解されるべきではない。
また、粉末X線回折における各ピークの2θ値は、試料条件や測定条件によって僅かに変動することも公知である。一般的な2θ値の変動は、約±0.2(°)である。したがって、本発明は、粉末X線回折におけるピークの回折角(2θ(°))が完全に一致する結晶だけでなく、全部又は一部のピークの回折角(2θ(°))が±0.2(°)の範囲で一致する結晶も含む。
【0046】
熱分析の測定(熱重量示差熱分析(TG-DTA))
熱分析は、差動型示差熱天秤(型式TG8120又は型式Thermo plus EVO2、リガク)を用いて窒素雰囲気下にて以下の測定条件で測定した。
昇温速度:10 ℃/min
基準物質:酸化アルミニウム
また、質量減少が始まる温度とそれが収束する温度を測定し、それぞれの温度における質量の差から、質量変化(%)を計算した。
【0047】
TG-DTA測定図において、DTA曲線における「吸熱」はピークの頂点の温度(ピークトップ)又は「外挿開始温度」で示される。「外挿開始温度」とは、DTA曲線の立ち上がり部又は立ち下り部と基線の外挿が交わる交点のことを言い、「補外開始温度」とも言う。「外挿開始温度」は、ピークの開始点の温度であり、外挿により求めた発熱又は吸熱開始温度をいう。TG-DTA測定図におけるピークトップ及び外挿開始温度も測定条件によって多少変動しうる。一般的な温度の変動としては、例えば、±5 ℃の範囲が考えられる。すなわち、上記ピークで特定される結晶は、±5 ℃の範囲で一致するものも含まれる。
本発明において、熱分析で用いる「付近」とは、±5 ℃の範囲を意味する。
【0048】
本発明の化合物1又はその塩の結晶は、それぞれ実施例に記載の粉末X線回折の回折ピークのサブセットにより、結晶形を特定することもできる。本発明において、「ピークのサブセットを有する」とは、結晶が特徴的なピークとしてサブセットのピークを少なくとも含むことを意味する。
さらに、粉末X線回折の回折ピークのサブセット及び、各結晶のTG-DTA測定における吸熱等の物理的特性との組み合わせにより、結晶形を特定することもできる。
【実施例
【0049】
以下に、本発明を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。
【0050】
参考例1
(S)-3-((3-ニトロピリジン-2-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
氷冷下、NMP(100mL)に、2-フルオロ-3-ニトロピリジン(10.00 g)、(S)-3-アミノピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(13.10 g)及び炭酸カリウム(11.67 g)を加えた。その反応混合物を150 ℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に放冷し、酢酸エチル及び水を加えて混合した。その混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムを加えて乾燥し、減圧下濃縮して表題化合物(21.70 g)を得た。
【0051】
参考例2
(S)-3-((3-アミノピリジン-2-イル)アミノ)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例1(21.70 g)及びエタノール(300 mL)の混合物にアルゴン雰囲気下、パラジウム10%-炭素(2.17 g、wet)を加えた。その混合物を水素雰囲気下、室温で6時間撹拌した。反応混合物をセライトろ過し、ろ液を減圧下濃縮して表題化合物(19.74 g)を得た。
【0052】
参考例3
(S)-3-(2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例2(19.59 g)及びTHF(200 mL)の混合物に氷冷撹拌下、CDI(22.82 g)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物に水酸化ナトリウム水溶液(5 mol/L、30 mL)を加えて10分間撹拌した。反応混合物に塩酸(2 mol/L、75 mL)を加えて撹拌し、減圧下濃縮した。得られた混合物に水を加え、その混合物を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル
=50/50~0/100)にて精製し、表題化合物(17.61 g)を得た。MS(ESI_APCI、m/z):303(M-H)-
【0053】
参考例4
(S)-3-(1-(6-クロロピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例3(100 mg)、2-クロロ-5-ヨードピリジン(94 mg)、N,N’-ジメチルエチレンジアミン(0.042 mL)、ヨウ化銅(I)(75 mg)、炭酸カリウム(136 mg)及びアセトニトリル(3 mL)の混合物を、マイクロ波照射下、100 ℃で1時間撹拌した。反応混合物を水及び塩酸(1 mol/L)の混合物にあけた。その混合物を撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=35/65)にて精製し、表題化合物(117 mg)を得た。
【0054】
参考例5
(S)-3-(1-(6-(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ピリジン-3-イル)-2-オキソ-1,2-ジヒドロ-3H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
参考例4(117 mg)、(4-(メトキシカルボニル)フェニル)ボロン酸(61 mg)、Pd(amphos)Cl2(20 mg)、炭酸ナトリウム(72 mg)、DMF(3 mL)及び水(0.3 mL)の混合物を、マイクロ波照射下、150 ℃で1時間撹拌した。反応混合物を水及び酢酸エチルの混合物にあけた。その混合物を撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=80/20~30/70)にて精製し、表題化合物(95 mg)を得た。
【0055】
参考例6
(S)-4-(5-(2-オキソ-3-(ピロリジン-3-イル)-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)安息香酸メチル塩酸塩
参考例5(95 mg)、塩化水素-1,4-ジオキサン溶液(4 mol/L、1 mL)及びメタノール(1 mL)の混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮し、表題化合物(126 mg)を得た。
【0056】
参考例7
(S)-4-(5-(3-(1-((5-ブロモ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)メチル)ピロリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)安息香酸メチル
参考例6(200 mg)、5-ブロモ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルバルデヒド(167 mg)及びジクロロメタン(2 mL)の混合物にNaBH(OAc)3(375 mg)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物にメタノール(2 mL)を加え、30分間撹拌した。反応混合物を減圧下濃縮した。得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=80/20~0/100)にて精製し、表題化合物(214 mg)を得た。MS(ESI_APCI、m/z):588(M+H)+
【0057】
参考例8
(S)-4-(5-(3-(1-((5-シアノ-1-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)メチル)ピロリジン-3-イル)-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-1-イル)ピリジン-2-イル)安息香酸メチル
参考例7(214 mg)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(42 mg)、シアン化亜鉛(86 mg)及びNMP(3 mL)の混合物を、マイクロ波照射下、150℃で1時間撹拌した。反応混合物を酢酸エチル及び水の混合物にあけた。その混合物を撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下濃縮した。得られた残渣をアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:n-ヘキサン/酢酸エチル=80/20~0/100)にて精製し、表題化合物(244 mg)を得た。MS(ESI_APCI、 m/z):535(M+H)+
【0058】
化合物1 (Compound 1)
2-{[(3S)-3-{1-[6-(4-カルボキシフェニル)ピリジン-3-イル]-2-オキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-b]ピリジン-3-イル}ピロリジン-1-イル]メチル}-1-メチル-1H-イミダゾール-5-カルボン酸
参考例8(195 mg)及び濃塩酸(1 mL)の混合物を、マイクロ波照射下、110 ℃で1時間撹拌した。反応混合物に水酸化ナトリウム水溶液(5 mol/L)を加えて中和した。その混合物にDMSOを加えて希釈した後、不溶物をセライトを通して除去した。そのろ液をODSカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:水/アセトニトリル=98/2~30/70)にて精製し、表題化合物(60 mg)を得た。
【0059】
【表1】
【0060】
試験例1 PHD2阻害試験
(1)ヒトPHD2184-418の発現・調製
GenBankアクセッションID:CAC42509で表されるタンパク質の184~418番のアミノ酸残基を含むヒトPHD2184-418を以下の方法で発現・調製した。
ヒトPHD2184-418の発現コンストラクトにN-末端ヒスチジンタグを組み込んだものをpET-30a(+)ベクターに導入し、配列を確認した。このベクターをBL21(DE3)株に導入し、抗生物質を含んだLB培地にて37 ℃で培養した。培養後、細胞溶解溶液を細胞に加え、超音波破砕により破砕懸濁した。破砕懸濁液を遠心し、上清をNiカラムを用いて精製し、ヒトPHD2184-418を得た。
(2)試験方法
ヒトHIF-1αの556~574番のアミノ酸残基(部分ペプチド)を含むHIF-1α556-574のN-末端にFITC-Ahxが組み込まれたヒトHIF-1α556-574(FITCラベル化HIF-1α556-574)を基質とした。FITCラベル化HIF-1α556-574を用いて、2-oxoglutarateと試験化合物(PHD阻害剤)との競合阻害をFITCラベル化HIF-1α556-574の蛍光偏光の変化により、以下の方法で評価した。
酵素(ヒトPHD2184-418)及び基質を10 mM HEPES、150 mM NaCl、10μM MnCl2・4H2O、2 μM 2-oxoglutarate及び0.05% Tween-20を含んだアッセイ緩衝液(pH 7.4)で希釈した。試験化合物をDMSOで希釈した。試験化合物、ヒトPHD2184-418を384ウェルプレート(Corning、黒色、不透明底)にあらかじめ添加し、FITCラベル化HIF-1α556-574を添加することにより反応を開始した。37 ℃で60分間インキュベーションした後に、PHERAstar FSX(BMG Labtech)にて蛍光偏光(励起波長470 nm、蛍光波長530 nm)を測定した。各ウェルの蛍光偏光を測定し、試験化合物のヒトPHD2結合阻害活性を試験物質無添加群の値に基づいて計算した。
(3)結果
表1に示したように、本発明の化合物1は、PHD2とHIF-1αとの結合を阻害した。したがって、本発明の化合物1は、PHD2阻害剤として有用であることが明らかとなった。
【0061】
試験例2 大腸炎モデルにおける治療効果
(1)TNBS誘発大腸炎モデルラット
TNBSをラットの大腸内に投与することにより大腸局所的に炎症が惹起され、腸管内のバリア機能が破綻し、腸管膜の透過性が亢進することが知られている。そこで、試験化合物の経口投与による腸管膜の透過性抑制作用を薬効の指標として評価した。
(2)試験方法
8週齢のSLC:SD雄性ラット(日本エスエルシー)を用いた。ペントバルビタール麻酔下にて50%エタノールで調整した28 mg/mL TNBSを大腸内の肛門から8 cmの部位に300 μL投与し、炎症を惹起させた。溶媒処置群には50%エタノールを300 μL投与した。TNBSを投与する前に48時間絶食を行った。翌日から、0.05%メチルセルロース溶液で調製した試験化合物(3 mg/kg)を1日1回経口投与し、計3日間投与した。投与3日後、試験化合物投与4時間後に50 mg/kg FITCを経口投与し、4時間後にイソフルラン麻酔下にて頸静脈から採血を行った。血清を遠心分離し、PHERAstar FSX(BMG Labtech)にて蛍光強度を検出することにより、腸管膜を介して循環血に透過したFITC濃度を測定した。試験化合物の腸管膜の透過性抑制率を試験物質無添加群の値を0、TNBS未処置群の値を100として計算した。
(3)結果
試験化合物の腸管膜の透過性抑制率(%、平均値)(Inhibition)を以下に示す。
【0062】
【表2】
TNBSの投与により亢進したFITCの腸管膜透過性は、本発明の化合物1の投与により抑制された。したがって、本発明の化合物1は、炎症性腸疾患の治療剤として有用であることが明らかとなった。
【0063】
試験例3 大腸組織における化合物濃度
(1)ラットPK試験
0.05%メチルセルロースで調製した試験化合物(3 mg/kg/5 mL)を非絶食下ラット(SD、8週齢、雄性、日本エスエルシー)に経口投与した。投与0.25、0.5、1、2、4、6及び8時間後に頸部静脈より採血し、イソフルラン麻酔下で開腹し、大腸を摘出した。遠位大腸5 cm程度を採取して切り開き、摘出した大腸をディッシュ上で生理食塩水を用いて洗浄した。洗浄後、大腸を小ばさみでミンスし、その150 mg程度をチューブに移した。チューブに100 μL生理食塩水を添加し、混合物をシェイクマスター(1000 rpm x 30分間)にてホモジナイズした。最終ボリュームとして、4倍量の生理食塩水を添加し、検体を調製した。大腸組織中と血漿中の試験化合物濃度を液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を用いた定量分析により測定した。
(2)大腸組織と血漿中における化合物濃度
下記表に示すように、本発明の化合物1は血漿中濃度に比して、大腸組織における濃度が高いことが明らかとなった。したがって、本発明の化合物1は、大腸組織に特異的に作用するPHD2阻害剤である。
【0064】
【表3】
表中の記号は、以下の意味である。
Cmax:試験化合物の経口投与における最高血漿中濃度(ng/mL)
AUC:血漿中試験化合物濃度‐時間曲線下面積(ng*min/mL)
Plasma:8時間後の血漿中試験化合物の濃度(ng/mL)
Colon:8時間後の大腸組織における試験化合物の濃度(ng/g)
C / P:上記ColonとPlasmaの比
【0065】
実施例1-1:化合物1 I形結晶
化合物1(100 mg)をDMSO(1 mL)に加え、60 ℃にて溶解させ、混合物をガラスフィルターに通した。ろ液から遠心エバポレーターにてDMSOを除去した。容器中の残渣にエタノール(2 mL)を加えた。混合物を室温で1時間撹拌し、スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を、水(1 mL)で1回、エタノール(2 mL)で2回の順に洗浄した。得られた固体を50 ℃で1日間減圧乾燥し、化合物1 I形結晶(66 mg)を得た。
【0066】
化合物1 I形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%))を表4に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
化合物1 I形結晶の同定は、例えば、以下の〔1-1-1〕~〔1-1-7〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔1-1-1〕10.1±0.2及び18.0±0.2のピーク;
〔1-1-2〕7.6±0.2及び18.0±0.2のピーク;
〔1-1-3〕10.1±0.2、13.0±0.2及び18.0±0.2のピーク;
〔1-1-4〕7.6±0.2、13.0±0.2及び18.0±0.2のピーク;
〔1-1-5〕7.6±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2及び18.0±0.2のピーク;
〔1-1-6〕7.6±0.2、9.0±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2及び18.0±0.2のピーク;及び
〔1-1-7〕7.6±0.2、9.0±0.2、10.1±0.2、13.0±0.2、17.1±0.2、18.0±0.2、19.1±0.2、21.1±0.2、21.7±0.2、23.4±0.2、26.2±0.2及び27.5±0.2のピーク。
【0069】
化合物1 I形結晶について熱分析を行った。
吸熱:266 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度264 ℃付近)
質量減少:28 ℃~200 ℃付近(0.4%)
【0070】
実施例1-2:化合物1 II形結晶
化合物1(1.00 g)、エタノール(3.8 mL)及び水(12 mL)の混合物に、室温で2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(1.85 mL)を加えた。溶解後、溶液をガラスフィルターに通した。ろ液を64 ℃で40分間撹拌した。同温度にて溶液に2 mol/L塩酸(0.925 mL)を加えた。同温度にて20分間撹拌した後、混合物に2 mol/L塩酸(0.463 mL)を加え、さらに1時間撹拌した後、混合物に2 mol/L塩酸(0.463 mL)を加えた。混合物を室温にて1日間撹拌した後、スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を水(10 mL)で2回、エタノール(10 mL)の順に洗浄した。得られた固体を50 ℃で4日間減圧乾燥し、化合物1 II形結晶(940 mg)を得た。
【0071】
化合物1 II形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%))を表5に示す。
【0072】
【表5】
【0073】
化合物1 II形結晶の同定は、例えば、以下の〔1-2-1〕~〔1-2-7〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔1-2-1〕12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク;
〔1-2-2〕11.4±0.2及び17.0±0.2のピーク;
〔1-2-3〕11.4±0.2、12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク;
〔1-2-4〕12.2±0.2、12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク;
〔1-2-5〕11.4±0.2、12.2±0.2、12.5±0.2及び17.0±0.2のピーク;
〔1-2-6〕11.4±0.2、12.2±0.2、12.5±0.2、17.0±0.2及び17.6±0.2のピーク;及び
〔1-2-7〕11.4±0.2、12.2±0.2、12.5±0.2、13.8±0.2、15.0±0.2、15.3±0.2、17.0±0.2、17.6±0.2、23.1±0.2、23.4±0.2、24.4±0.2及び27.1±0.2のピーク。
【0074】
化合物1 II形結晶について熱分析を行った。
吸熱:96 ℃付近(50~120 ℃の幅広い吸熱)、233 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度226 ℃付近)
質量減少:30 ℃~150 ℃付近(1.8%)
【0075】
実施例1-3:化合物1 III形結晶
化合物1(150 mg)、2-プロパノール(3 mL)及び水(1.5 mL)の混合物に、室温で2 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.280 mL)を加えた。溶解後、溶液に50 ℃にて2 mol/L塩酸(0.280 mL)、2-プロパノール(0.200 mL)及び水(0.200 mL)の混合液をゆっくり滴下した。混合物を同温度にて2時間撹拌し、室温にて2時間撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を室温にて15時間減圧乾燥し、化合物1 III形結晶(135 mg)を得た。
【0076】
化合物1 III形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%))を表6に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
化合物1 III形結晶の同定は、例えば、以下の〔1-3-1〕~〔1-3-7〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔1-3-1〕11.1±0.2及び14.1±0.2のピーク;
〔1-3-2〕10.5±0.2及び11.1±0.2のピーク;
〔1-3-3〕10.5±0.2、11.1±0.2及び14.1±0.2のピーク;
〔1-3-4〕11.1±0.2、14.1±0.2及び24.7±0.2のピーク;
〔1-3-5〕10.5±0.2、11.1±0.2、14.1±0.2及び24.7±0.2のピーク;
〔1-3-6〕10.5±0.2、11.1±0.2、13.5±0.2、14.1±0.2及び24.7±0.2のピーク;及び
〔1-3-7〕10.5±0.2、11.1±0.2、11.6±0.2、13.5±0.2、13.9±0.2、14.1±0.2、15.4±0.2、20.9.±0.2、21.1±0.2、23.8±0.2及び24.7±0.2のピーク。
【0079】
化合物1 III形結晶について熱分析を行った。
吸熱:57 ℃付近及び78 ℃付近(ピークトップ、30~120 ℃の幅広い吸熱)、191 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度183 ℃付近)、206 ℃付近(外挿開始温度)
質量減少:30 ℃~120 ℃付近(9.7%)
【0080】
実施例2-1:化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶
化合物1(2.063 g)をアセトン/水(1/1)(6.2 mL)に懸濁した。別途メタンスルホン酸(0.370 g)をアセトン/水(1/1)(4.1 mL)で溶解し、その溶液を化合物1の懸濁液に加えた。混合物を61 ℃で15分間撹拌した。溶解後、溶液を室温に冷却後、フィルターを用いて吸引ろ過し、容器及びフィルターをアセトン/水(1/1)(1 mL)で2回洗った。得られたろ液を64 ℃に撹拌下、アセトン(10.31 mL)を添加し、この溶液を5分間撹拌した。この溶液に、さらにアセトン(10.31 mL)を添加し、5分間撹拌した。水浴の加熱を停止した。40℃でアセトン(10.31 mL)を溶液に添加し、80分間撹拌した。40 ℃でアセトン(20.62 mL)を混合物に撹拌しながら添加し、60℃で45分間撹拌した。混合物を室温で16時間撹拌した。混合物を吸引ろ過し、5%含水アセトン(4 mL)で2回洗った。得られた固体を40 ℃で2時間減圧乾燥し、白色粉末の化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶(2.183 g)を得た。
【0081】
化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%))を表7に示す。
【0082】
【表7】
【0083】
化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶の同定は、例えば、以下の〔2-1-1〕~〔2-1-7〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔2-1-1〕10.6±0.2及び14.1±0.2のピーク;
〔2-1-2〕7.0±0.2及び10.6±0.2のピーク;
〔2-1-3〕7.0±0.2、10.6±0.2及び14.1±0.2のピーク;
〔2-1-4〕10.6±0.2、14.1±0.2及び16.2±0.2のピーク;
〔2-1-5〕7.0±0.2、10.6±0.2、14.1±0.2及び16.2±0.2のピーク;
〔2-1-6〕7.0±0.2、10.6±0.2、14.1±0.2、16.2±0.2及び17.6±0.2のピーク;及び
〔2-1-7〕7.0±0.2、10.6±0.2、13.7±0.2、14.1±0.2、16.2±0.2、17.6±0.2、18.6±0.2、20.5±0.2、21.6±0.2及び24.5±0.2のピーク。
【0084】
化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶について熱分析を行った。
吸熱:253 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度250 ℃付近)
質量減少:27 ℃~100 ℃付近(2.8%)
【0085】
実施例2-2:化合物1のメタンスルホン酸塩 II形結晶
化合物1のメタンスルホン酸塩(200 mg)を1,4-ジオキサン/水(1/1)(6.0 mL)に懸濁し、60 ℃で溶解した。ドライアイス‐アセトンバスで溶液を凍結させ、固体を一晩凍結乾燥した。凍結乾燥後の固体を40 ℃で約7時間減圧乾燥した。固体にMTBE(4.0 mL)添加した。懸濁液を53 ℃にて、2時間撹拌した。室温にて、懸濁液を一晩撹拌した。室温でMTBE(2.0 mL)を添加し、さらに懸濁液を6時間撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を40 ℃で2時間減圧乾燥し、白色粉末の化合物1のメタンスルホン酸塩 II形結晶(189 mg)を得た。
【0086】
化合物1のメタンスルホン酸塩 II形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表8に示す。
【0087】
【表8】
【0088】
化合物1のメタンスルホン酸塩 II形結晶の同定は、例えば以下の〔2-2-1〕~〔2-2-6〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔2-2-1〕21.8±0.2及び25.5±0.2のピーク;
〔2-2-2〕18.4±0.2及び25.5±0.2のピーク;
〔2-2-2〕18.4±0.2、21.8±0.2及び25.5±0.2のピーク;
〔2-2-3〕18.4±0.2、18.7±0.2、21.8±0.2及び25.5±0.2のピーク;
〔2-2-4〕6.3±0.2、12.7±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、21.8±0.2、24.9±0.2及び25.5±0.2のピーク;
〔2-2-5〕6.3±0.2、10.6±0.2、12.7±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、21.8±0.2、24.9±0.2及び25.5±0.2のピーク;及び
〔2-2-6〕6.3±0.2、10.6±0.2、12.7±0.2、17.7±0.2、18.4±0.2、18.7±0.2、21.8±0.2、24.9±0.2及び25.5±0.2のピーク。
【0089】
化合物1のメタンスルホン酸塩 II形結晶について熱分析を行った。
発熱:172 ℃付近(ピークトップ)
吸熱:248 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度243 ℃付近)
質量減少:27 ℃~100 ℃付近(2.1%)
【0090】
実施例2-3:化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶
化合物1のメタンスルホン酸塩(300 mg)を1,4-ジオキサン/水(1/1)(6.0 mL)に懸濁し、懸濁液を60℃で溶解した。ドライアイス‐アセトンバスで溶液を凍結させ、固体を一晩凍結乾燥した。
凍結乾燥して得られた固体(10 mg)に酢酸プロピル(0.2 mL)を加え、混合物を60 ℃にて5日間撹拌した。スラリーをろ取し、化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶を得た。この結晶を種結晶とし、凍結乾燥した固体を用いて以下のスケールアップを行った。
上記の凍結乾燥して得られた固体(100 mg)に酢酸プロピル(5 mL)及び種結晶(1 mg)を加え、混合物を60 ℃で5日間撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を酢酸プロピル(1 mL)にて洗い込み、40 ℃で5時間減圧乾燥し、化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶(98 mg)を得た。
【0091】
化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表9に示す。
【0092】
【表9】
【0093】
化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶の同定は、例えば以下の〔2-3-1〕~〔2-3-7〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔2-3-1〕12.8±0.2及び22.6±0.2のピーク;
〔2-3-2〕17.8±0.2及び22.6±0.2のピーク;
〔2-3-3〕12.8±0.2、17.8±0.2及び22.6±0.2のピーク;
〔2-3-4〕17.8±0.2、18.3±0.2及び22.6±0.2のピーク;
〔2-3-5〕12.8±0.2、17.8±0.2、18.3±0.2及び22.6±0.2のピーク;
〔2-3-6〕6.4±0.2、12.8±0.2、17.8±0.2、18.3±0.2、19.3±0.2、22.6±0.2及び24.3±0.2のピーク;及び
〔2-3-7〕6.4±0.2、12.8±0.2、16.8±0.2、17.8±0.2、18.3±0.2、19.3±0.2、22.6±0.2及び24.3±0.2のピーク。
【0094】
化合物1のメタンスルホン酸塩 III形結晶について熱分析を行った。
吸熱:252 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度248 ℃付近)
質量減少:30 ℃~230 ℃付近(0.9%)
【0095】
実施例2-4:化合物1のメタンスルホン酸塩 IV形結晶
化合物1のメタンスルホン酸塩(161 mg)を1,4-ジオキサン/水(1/1)(0.485 mL)に50 ℃で溶解し、溶液をフィルターろ過した。ろ液を凍結乾燥した。得られた固体に、THF/水(1/1)(0.322 mL)を添加し、混合物を50 ℃で溶解した。次いで溶液を室温で撹拌した。析出した結晶により撹拌が止まったとき、混合物にTHF(0.966 mL)を添加し、懸濁液を撹拌した。さらにTHF(0.966 mL)を添加し、懸濁液を撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を40 ℃で1時間減圧乾燥し、白色粉末の化合物1のメタンスルホン酸塩 IV形結晶(138 mg)を得た。
【0096】
化合物1のメタンスルホン酸塩 IV形結晶の粉末X線回折を測定した 。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表10に示す。
【0097】
【表10】
【0098】
化合物1のメタンスルホン酸塩 IV形結晶の同定は、例えば以下の〔2-4-1〕~〔2-4-6〕からなる群から選択される回折ピークのサブセット を使用することができる:
〔2-4-1〕6.0±0.2及び15.4±0.2のピーク;
〔2-4-2〕6.0±0.2及び11.0±0.2のピーク;
〔2-4-3〕6.0±0.2、11.0±0.2及び15.4±0.2のピーク;
〔2-4-4〕6.0±0.2、9.9±0.2、11.0±0.2及び15.4±0.2のピーク;
〔2-4-5〕6.0±0.2、11.0±0.2、15.4±0.2及び16.3±0.2のピーク;
〔2-4-6〕6.0±0.2、9.9±0.2、11.0±0.2、15.4±0.2、16.3±0.2、18.2±0.2及び24.9±0.2のピーク;及び
〔2-4-7〕6.0±0.2、9.9±0.2、11.0±0.2、12.0±0.2、13.5±0.2、15.4±0.2、16.3±0.2、18.2±0.2、19.9±0.2及び24.9±0.2のピーク。
【0099】
化合物1のメタンスルホン酸塩 IV形結晶について熱分析を行った。
吸熱:64 ℃付近(ピークトップ、22~100 ℃の幅広い吸熱)、155 ℃付近(外挿開始温度)
質量減少:22 ℃~100 ℃付近(8.1%)
【0100】
実施例3-1:化合物1の塩酸塩 I形結晶
化合物1(300 mg)を1,4-ジオキサン/水(1/1)(7.5 mL)に懸濁し、懸濁液に1 mol/L塩酸(0.56 mL)を加えた。溶解後、溶液を凍結乾燥した。得られた固体に、2-プロパノール(6.0 mL)を加え、混合物を室温で30分撹拌した。次いで混合物を53 ℃で2時間撹拌し、室温で4日間撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を43℃で2時間減圧乾燥し、化合物1の塩酸塩 I形結晶(310 mg)を得た。
【0101】
化合物1の塩酸塩 I形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表11に示す。
【0102】
【表11】
【0103】
化合物1の塩酸塩 I形結晶の同定は、例えば以下の〔3-1-1〕~〔3-1-5〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔3-1-1〕13.1±0.2及び17.4±0.2のピーク;
〔3-1-2〕13.1±0.2、17.4±0.2及び23.9±0.2のピーク;
〔3-1-3〕13.1±0.2、13.4±0.2、17.4±0.2及び23.9±0.2のピーク;
〔3-1-4〕13.1±0.2、13.4±0.2、17.4±0.2、23.9±0.2及び26.9±0.2のピーク;及び
〔3-1-5〕13.1±0.2、13.4±0.2、13.7±0.2、14.0±0.2、17.4±0.2、19.2±0.2、23.2±0.2、23.9±0.2、24.6±0.2及び26.9±0.2のピーク。
【0104】
化合物1の塩酸塩 I形結晶について熱分析を行った。
吸熱:235 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度217 ℃付近)
質量減少:24 ℃~200 ℃付近(3.0%)
【0105】
実施例3-2:化合物1の塩酸塩 II形結晶
化合物1(103 mg)に1mol/L 塩酸(0.20 mL)を室温で加え、さらに混合物に水(0.20 mL)及びアセトン(0.40 mL)を加えた。混合物を61 ℃で20分間撹拌した。溶解後、溶液を室温で1時間撹拌した。溶液にアセトン(1.24 mL)を添加し、1時間撹拌した。混合物にアセトン/水(20/1)(0.62 mL)を添加し、30分間撹拌した。スラリー中の固体をろ取し,固体を43 ℃で1時間減圧乾燥し、化合物1の塩酸塩 II形結晶(97 mg)を得た。
【0106】
化合物1の塩酸塩 II形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表12に示す。
【0107】
【表12】
【0108】
化合物1の塩酸塩 II形結晶の同定は、例えば以下の〔3-2-1〕~〔3-2-6〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔3-2-1〕6.2±0.2及び8.1±0.2のピーク;
〔3-2-2〕6.2±0.2、8.1±0.2及び10.2±0.2のピーク;
〔3-2-3〕6.2±0.2、8.1±0.2、10.2±0.2及び12.1±0.2のピーク;
〔3-2-4〕6.2±0.2、8.1±0.2、10.2±0.2、12.1±0.2及び13.0±0.2のピーク;
〔3-2-5〕6.2±0.2、8.1±0.2、10.2±0.2、12.1±0.2、13.0±0.2及び26.4±0.2のピーク;及び
〔3-2-6〕6.2±0.2、8.1±0.2、8.4±0.2、10.2±0.2、12.1±0.2、13.0±0.2、16.4±0.2、25.2±0.2、26.4±0.2及び27.1±0.2のピーク。
【0109】
化合物1の塩酸塩 II形結晶について熱分析を行った。
吸熱:63 ℃付近(ピークトップ、28 ℃~100 ℃の幅広い吸熱)、189 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度180 ℃付近)
質量減少:28 ℃~100 ℃付近(9.7%)
【0110】
実施例3-3:化合物1の塩酸塩 III形結晶
実施例3-2の方法で得た化合物1の塩酸塩 II形結晶(334 mg)にアセトン(1.8 mL)、水(0.8 mL)及び1 mol/L塩酸(0.58 mL)を加え、懸濁液を45 ℃で3時間撹拌した。室温に戻し、懸濁液にアセトン(3.3 mL)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を40 ℃で2時間減圧乾燥し、化合物1の塩酸塩 III形結晶(242 mg)を得た。
【0111】
化合物1の塩酸塩 III形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表13に示す。
【0112】
【表13】
【0113】
化合物1の塩酸塩 III形結晶の同定は、例えば以下の〔3-3-1〕~〔3-3-3〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔3-3-1〕12.9±0.2及び21.4±0.2のピーク;
〔3-3-2〕12.9±0.2、13.6±0.2及び21.4±0.2のピーク;及び
〔3-3-3〕12.9±0.2、13.6±0.2、20.5±0.2、21.4±0.2、22.8±0.2、24.0±0.2、26.3±0.2、27.3±0.2及び30.6±0.2のピーク。
【0114】
化合物1の塩酸塩 III形結晶について熱分析を行った。
吸熱:68 ℃付近(ピークトップ、24 ℃~90 ℃の幅広い吸熱)、191 ℃付近(ピークトップ、150 ℃~208 ℃の幅広い吸熱)、226 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度208 ℃
付近)
質量減少:28 ℃~100 ℃付近(2.6%)、100 ℃~208 ℃付近(6.5%)
【0115】
実施例3-4:化合物1の塩酸塩 IV形結晶
実施例2-1の方法で得た化合物1のメタンスルホン酸塩 I形結晶(352 mg)を日本薬局方溶出試験第1液(25 mL)に懸濁し、懸濁液を37 ℃で24時間振盪した。室温で2時間静置し、懸濁液を吸引ろ過した。得られた固体を室温で3時間減圧乾燥して、白色粉末の化合物1の塩酸塩 IV形結晶(300 mg)を得た。
【0116】
化合物1の塩酸塩 IV形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%))を表14に示す。
【0117】
【表14】
【0118】
化合物1の塩酸塩 IV形結晶の同定は、例えば以下の〔3-4-1〕~〔3-4-4〕からなる群から選択される回折ピークのサブセット を使用することができる:
〔3-4-1〕10.5±0.2及び11.0±0.2のピーク;
〔3-4-2〕10.5±0.2、11.0±0.2及び16.2±0.2のピーク;
〔3-4-3〕5.2±0.2、10.5±0.2、11.0±0.2及び16.2±0.2のピーク;
〔3-4-4〕5.2±0.2、10.5±0.2、11.0±0.2、12.5±0.2及び16.2±0.2のピーク;及び
〔3-4-5〕5.2±0.2、10.5±0.2、11.0±0.2、12.5±0.2、16.2±0.2及び24.1±0.2のピーク。
【0119】
化合物1の塩酸塩 IV形結晶について熱分析を行った。
吸熱:67 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度49 ℃付近)、179 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度174 ℃付近)、216 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度197 ℃付近)
質量減少:25 ℃~100 ℃付近(12.9%)
【0120】
実施例4:化合物1のp-トルエンスルホン酸塩 I形結晶
化合物1(260 mg)を1,4-ジオキサン/水(1/1)(6.5 mL)に懸濁し、懸濁液にp-トルエンスルホン酸1水和物(92 mg)を加えた。溶解後、溶液をドライアイスアセトンバスで凍結し、固体を凍結乾燥した。凍結乾燥して得られた固体に、室温で2-プロパノール(5 mL)加え、混合物を撹拌した。次いで、混合物を45 ℃で3時間撹拌し、室温で3日間撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を40 ℃で2時間減圧乾燥し、白色粉末の化合物1のp-トルエンスルホン酸塩 I形結晶(340 mg)を得た。
【0121】
化合物1のp-トルエンスルホン酸塩 I形結晶の粉末X線回折を測定した 。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表15に示す。
【0122】
【表15】
【0123】
化合物1のp-トルエンスルホン酸塩 I形結晶の同定は、例えば以下の〔4-1〕~〔4-6〕からなる群から選択される回折ピークのサブセット を使用することができる:
〔4-1〕6.1±0.2及び24.7±0.2のピーク;
〔4-2〕6.1±0.2及び12.2±0.2のピーク;
〔4-3〕6.1±0.2、12.2±0.2及び24.7±0.2のピーク;
〔4-4〕6.1±0.2、12.2±0.2、14.0±0.2、16.7±0.2及び24.7±0.2のピーク;
〔4-5〕6.1±0.2、12.2±0.2、14.0±0.2、16.7±0.2、24.7±0.2及び25.4±0.2のピーク;及び
〔4-6〕6.1±0.2、12.2±0.2、12.9±0.2、13.8±0.2、14.0±0.2、15.3±0.2、16.4±0.2、16.7±0.2、20.6±0.2、21.2±0.2、24.7±0.2及び25.4±0.2のピーク。
【0124】
化合物1のp-トルエンスルホン酸塩 I形結晶について熱分析を行った。
吸熱:100 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度87 ℃付近)、236 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度225 ℃付近)
質量減少:29 ℃~120 ℃付近(1.9%)
【0125】
実施例5:化合物1のナトリウム塩 I形結晶
化合物1(50 mg)を2-プロパノール/水(1/1)(0.5 mL)に懸濁し、懸濁液に1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(0.185 mL)を加えた。溶解後、溶液に1 mol/L塩酸(0.093 mL)を加え、室温で3日間撹拌した。混合物を40 ℃で5時間撹拌し、室温でさらに一晩撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を40 ℃に3時間減圧乾燥し、白色粉末の化合物1のナトリウム塩 I形結晶(34 mg)を得た。
【0126】
化合物1のナトリウム塩 I形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表16に示す。
【0127】
【表16】
【0128】
化合物1のナトリウム塩 I形結晶の同定は、例えば以下の〔5-1〕~〔5-7〕からなる群から選択される回折ピークのサブセット を使用することができる:
〔5-1〕5.8±0.2及び22.7±0.2のピーク;
〔5-2〕15.9±0.2及び22.7±0.2のピーク;
〔5-3〕5.8±0.2、15.9±0.2及び22.7±0.2のピーク;
〔5-4〕5.8±0.2、12.1±0.2、15.9±0.2及び22.7±0.2のピーク;
〔5-5〕5.8±0.2、12.1±0.2、15.9±0.2、17.4±0.2及び22.7±0.2のピーク;
〔5-6〕5.8±0.2、12.1±0.2、15.9±0.2、17.4±0.2、22.7±0.2及び23.8±0.2のピーク;及び
〔5-7〕5.8±0.2、12.1±0.2、13.0±0.2、15.9±0.2、16.2±0.2、17.4±0.2、22.7±0.2、23.8±0.2、25.1±0.2及び26.2±0.2のピーク。
【0129】
化合物1のナトリウム塩 I形結晶について熱分析を行った。
吸熱:75 ℃付近(ピークトップ、50 ℃~120 ℃の幅広い吸熱)、197 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度194 ℃付近)
質量減少:29 ℃~150 ℃付近(13.9%)
【0130】
実施例6:化合物1のカリウム塩 I形結晶
化合物1(100 mg)を2-プロパノール/水(1/1)(1.0 mL)に懸濁し、懸濁液に1 mol/L水酸化カリウム水溶液(0.370 mL)を加えた。溶解後、溶液に室温で1 mol/L塩酸(0.185 mL)を添加し、10分間撹拌した。混合物に室温で2-プロパノール(1.25 mL)を添加し、2時間撹拌した。混合物に室温で2-プロパノール(0.25 mL)を添加し、1時間撹拌した。さらに混合物に室温で2-プロパノール(0.5 mL)を添加し、6時間撹拌した。スラリーをろ過した。2-プロパノール/水(4/1)(1.0 mL)で2回洗った。得られた固体を室温で1時間、40 ℃で1時間減圧乾燥し、白色粉末の化合物1のカリウム塩 I形結晶(70 mg)を得た。
【0131】
化合物1のカリウム塩 I形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表17に示す。
【0132】
【表17】
【0133】
化合物1のカリウム塩 I形結晶の同定は、例えば以下の〔6-1〕~〔6-6〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔6-1〕5.7±0.2及び22.8±0.2のピーク;
〔6-2〕5.7±0.2、12.0±0.2及び22.8±0.2のピーク;
〔6-3〕5.7±0.2、11.6±0.2、12.0±0.2及び22.8±0.2のピーク;
〔6-4〕5.7±0.2、11.6±0.2、12.0±0.2、15.8±0.2、17.4±0.2及び22.8±0.2のピーク;
〔6-5〕5.7±0.2、11.6±0.2、12.0±0.2、15.8±0.2、17.4±0.2、22.5±0.2及び22.8±0.2のピーク;及び
〔6-6〕5.7±0.2、11.6±0.2、12.0±0.2、15.8±0.2、17.4±0.2、22.5±0.2、22.8±0.2及び29.4±0.2のピーク。
【0134】
化合物1のカリウム塩 I形結晶について熱分析を行った。
吸熱:70 ℃付近(ピークトップ、23 ℃~100 ℃の幅広い吸熱)、187 ℃付近(ピークトップ、外挿開始温度182 ℃付近)
質量減少:23 ℃~100 ℃付近(12.9%)
【0135】
実施例7:化合物1のカルシウム塩 I形結晶
化合物1(300 mg)をメタノール/水(1/1)(3.0 mL)に懸濁し、懸濁液に1 mol/L水酸化ナトリウム水溶液(1.12 mL)を加え、室温で撹拌した。溶解後、溶液に室温で塩化カルシウム(62 mg)を加え、1時間撹拌した。混合物を45 ℃で3時間撹拌し、さらに室温で一晩撹拌した。スラリーを吸引ろ過した。得られた固体を43 ℃で減圧乾燥(3時間)し、白色粉末の化合物1のカルシウム塩のI形結晶(310 mg)を得た。
【0136】
化合物1のカルシウム塩 I形結晶の粉末X線回折を測定した。その主な回折ピークの回折角(2θ(°))及び回折ピークの相対強度(Rel. Den. (%)) を表18に示す。
【0137】
【表18】
【0138】
化合物1のカルシウム塩 I形結晶の同定は、例えば以下の〔7-1〕~〔7-5〕からなる群から選択される回折ピークのサブセットを使用することができる:
〔7-1〕7.3±0.2及び16.1±0.2のピーク;
〔7-2〕7.3±0.2、16.1±0.2及び20.1±0.2のピーク;
〔7-3〕7.3±0.2、16.1±0.2、17.7±0.2及び20.1±0.2のピーク;
〔7-4〕7.3±0.2、16.1±0.2、17.0±0.2、17.7±0.2及び20.1±0.2のピーク;及び
〔7-5〕7.3±0.2、16.1±0.2、16.5±0.2、17.0±0.2、17.3±0.2、17.7±0.2、20.1±0.2及び25.4のピーク。
【0139】
化合物1のカルシウム塩 I形結晶について熱分析を行った。
吸熱:79 ℃付近(ピークトップ、25 ℃~150 ℃の幅広い吸熱)
質量減少:25 ℃~200 ℃付近(13.4%)
【0140】
実施例2-1から実施例7の塩の1H-NMRスペクトルにおける化学シフト値を以下の表に示す。
【表19】
【0141】
【表20】
【0142】
【表21】
【0143】
試験例4:固体安定性試験
化合物1の結晶(I~III形結晶)、化合物1のメタンスルホン酸塩の結晶(I、II及びIV形結晶)、塩酸塩の結晶(I及びIII形結晶)、p-トルエンスルホン酸塩 I形結晶、ナトリウム塩 I形結晶及びカルシウム塩 I形結晶の物理化学的安定性及び化学的安定性を調べた。
(1)方法
物理化学的安定性:各結晶を40 ℃開放下で保存した。開始時及び1箇月後の試料の粉末X線回折を測定し、結晶形の変化を確認した。また同時に性状の変化も観察した。
化学的安定性:各結晶を40 ℃開放下で保存した。開始時及び1箇月後の試料中の化合物1の量を下記のHPLC測定条件を用いて確認した。
〔HPLC条件〕
検出器:紫外可視吸光光度計/波長:225 nm
カラム:L-column2 ODS、3 μm、4.6×150 mm(化学物質評価研究機構)
カラム温度:40 ℃付近一定温度
流量:1.0 mL/min
移動相A:リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウムをそれぞれ10 mmol/Lとなるように水に溶解した液
移動相B:アセトニトリル
移動相比率:
0~30分:移動相A/移動相B=88/12
30~50分:移動相A/移動相B=88/12~25/75
50~55分:移動相A/移動相B=25/75
55~55.01分:移動相A/移動相B=25/75~88/12
55.01~75分:移動相A/移動相B=88/12
注入量:5 μL
サンプルクーラー:4 ℃
溶解溶媒:混合溶液(移動相A/アセトニトリル=75/25)
試料溶液:試料を溶解溶媒に溶解し、約1 mg/mLに調製した液
ブランクに由来するピークを除き、化合物1及び類縁物質の各ピーク面積を自動積分法により測定し、面積百分率法により化合物1の量を求めた。更に保存前後の化合物1の変化量を求めた。
(2)結果
40 ℃開放下での保存において、化合物1の各結晶及び化合物1の各塩の結晶は、結晶形の変化及び性状の変化がほとんど認められず、物理化学的に安定であった。また、化合物1の各結晶及び化合物1の各塩の結晶は、化合物1の量の減少がほとんど認められず、化学的にも安定であった(表22)。
したがって、本発明の化合物1又はその塩の結晶は、原薬として良好な物性を有することが明らかとなった。
【0144】
【表22】
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の化合物1又はその塩の結晶は、原薬として良好な物性を有し、炎症性腸疾患の治療剤として有用である。
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