(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】強化された迷光抑制を提供するカーボンナノチューブシート光学ベローズ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/00 20060101AFI20241004BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20241004BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20241004BHJP
B32B 25/08 20060101ALI20241004BHJP
B32B 27/06 20060101ALI20241004BHJP
C01B 32/168 20170101ALI20241004BHJP
C01B 32/159 20170101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/00 B
B32B1/08 B
B32B5/02 B
B32B25/08
B32B27/06
C01B32/168
C01B32/159
(21)【出願番号】P 2022524066
(86)(22)【出願日】2020-07-24
(86)【国際出願番号】 US2020043462
(87)【国際公開番号】W WO2021086459
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スターコヴィッチ、ジョン、エー.
(72)【発明者】
【氏名】コステレク、アンドリュー、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シルバーマン、エドワード、エム.
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534122(JP,A)
【文献】特許第6152192(JP,B2)
【文献】国際公開第2019/194914(WO,A1)
【文献】特開2008-62644(JP,A)
【文献】特表2015-502465(JP,A)
【文献】特開2011-107303(JP,A)
【文献】特開昭61-286687(JP,A)
【文献】実開昭59-143900(JP,U)
【文献】特開2004-353715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
G02B 1/10- 1/18
B32B 1/00-43/00
C01B32/159
C01B32/168
F16J 3/00- 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化された迷光抑制を提供する多角形状のカーボンナノチューブ(CNT)シート光学ベローズであって、
自立型の不織布型のCNTシートと、
前記不織布型のCNTシートに接着されたポリマーフィルムと、
前記ポリマーフィルムに接着されて積層フィルムを生成するエラストマーフィルム
であって、前記積層フィルムは前記エラストマーフィルムが設けられる側を外面とする、エラストマーフィルムと、
を備え
、
前記積層フィルムが、垂直方向、水平方向及び斜め方向に延びる折り目を有し、前記斜め方向に延びる折り目により菱形要素が形成されており、
前記積層フィルムが、前記外面を外側に向けてロール状に巻かれ、かつ前記積層フィルムの水平方向の一端部が前記積層フィルムの水平方向の他端部と接着されて形成された円筒状の前記積層フィルムが、前記菱形要素が積層方向に折り畳まれた状態となるように、前記折り目に沿って折り畳まれ、多角形状とされた、
光学ベローズ。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムが、熱硬化性ポリマーフィルム及び熱可塑性ポリマーフィルムのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の光学ベローズ。
【請求項3】
前記ポリマーフィルムが、感圧式の両面接着テープを用いて前記CNTシートに接着される、請求項2に記載の光学ベローズ。
【請求項4】
前記CNTシートが、単層CNT及び多層CNTのうちの1つ又は複数を含む、請求項1に記載の光学ベローズ。
【請求項5】
前記CNTシートの表面が、プラズマ処理される、請求項1に記載の光学ベローズ。
【請求項6】
前記CNTシートが、酸素プラズマでプラズマ処理される、
請求項1に記載の光学ベローズ。
【請求項7】
強化された迷光抑制を提供する多角形状のカーボンナノチューブ(CNT)シート光学ベローズを製造する方法であって、
ポリマーフィルムを不織布型のCNTシートに接着するステップと、
エラストマーフィルムを前記ポリマーフィルムに接着し、
前記エラストマーフィルムが設けられる側を外面とする積層フィルムを生成するステップと、
前記積層フィルムに折り線を付けるステップと、
前記CNTシートが前記折り線に沿って容易に曲がるように前記積層フィルムを折り曲げて、前記積層フィルムに垂直方向、水平方向及び斜め方向に延びる折り目を形成し、前記斜め方向に延びる折り目により菱形要素を形成するステップと、
前記積層フィルムを前記外面を外側に向けてロール状に巻いて、前記積層フィルムの水平方向の一端部に在る接合端部に沿って接着剤を塗布し、前記積層フィルムの水平方向の一端部を前記積層フィルムの水平方向の他端部に接着させることにより、円筒状の積層フィルムを形成するステップと、
前記菱形要素が積層方向に折り畳まれた状態となるように、前記円筒状の前記積層フィルムを前記折り目に沿って折り畳み、前記多角形状のCNTシート光学ベローズを生成するステップと、
を含む方法。
【請求項8】
前記斜め方向の折り目が、
前記外面上で谷折りとして
形成される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記垂直方向の折り目が、
前記外面上で山折りとして
形成される、
請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記水平方向の折り目が、
前記外面上で山折りとして
形成される、
請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記円筒状の前記積層フィルムを前記折り目に沿って折り畳むステップの後に実行される追加のステップであって、前記CNTシートの表面をプラズマ処理するステップをさらに含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記プラズマ処理するステップは、酸素プラズマでプラズマ処理することを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記プラズマ処理するステップは、無線周波数及びマイクロ波周波数のうちの1つ又は複数を使用することを含む、
請求項11に記載の方法。
【請求項14】
強化された迷光抑制を提供する多角形状のカーボンナノチューブ(CNT)シート光学ベローズを製造する方法であって、
ポリマーフィルムを不織布型のCNTシートに接着するステップと、
エラストマーフィルムを前記ポリマーフィルムに接着し、
前記エラストマーフィルムが設けられる側を外面とする積層フィルムを生成するステップと、
前記積層フィルムに垂直方向の折り線を付けるステップと、
前記積層フィルムに水平方向の折り線を付けるステップと、
前記積層フィルムに斜め方向の折り線を付け
、菱形要素を形成するステップと、
前記CNTシートが前記垂直方向の折り線に沿って容易に曲がるように、前記積層フィルムが前記垂直方向の折り線に沿って折り曲げられ
て、垂直方向の折り目が形成されるステップであって、前記垂直方向の
折り目は、
前記外面上で山折りとして
形成される、ステップと、
前記CNTシートが前記水平方向の折り線に沿って容易に曲がるように、前記積層フィルムが前記水平方向の折り線に沿って折り曲げられ
て、水平方向の折り目が形成されるステップであって、前記水平方向の
折り目は、
前記外面上で山折りとして
形成される、ステップと、
前記CNTシートが前記斜め方向の折り線に沿って容易に曲がるように、前記積層フィルムが前記斜め方向の折り線に沿って折り曲げられ
て、斜め方向の折り目が形成されるステップであって、前記斜め方向の
折り目は、
前記外面上で谷折りとして
形成される、ステップと、
前記積層フィルムを前記外面を外側に向けてロール状に巻いて、前記積層フィルムの水平方向の一端部に在る接合端部に沿って接着剤を塗布し、前記積層フィルムの水平方向の一端部を前記積層フィルムの水平方向の他端部に接着させることにより、円筒状の積層フィルムを形成するステップと、
前記菱形要素が積層方向に折り畳まれた状態となるように、前記円筒状の前記積層フィルムを前記折り目に沿って折り畳み、前記多角形状のCNTシート光学ベローズを生成するステップと、
前記CNTシート光学ベローズの1つ又は複数の端部に、機械的な取り付け目的で使用可能なフランジを接合するステップと、
高周波数及びマイクロ波周波数のうちの1つ又は複数を使用して、酸素プラズマで前記CNTシートの表面をプラズマ処理するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府の権利に関する声明)
アメリカ合衆国政府は、政府契約第11-C-0042号に従い、本発明に関する権利を有する。
【0002】
本発明は、カーボンナノチューブシート光学ベローズ及びその製造方法に関する。
【発明の概要】
【0003】
強化された迷光抑制を提供する多角形状のカーボンナノチューブ(CNT)シート光学ベローズであって、前記多角形状のCNTシート光学ベローズは、自立型の不織布型CNTシートと、前記不織布型CNTシートに接着されたポリマーフィルムと、前記ポリマーフィルムに接着されて積層フィルムを生成するエラストマーフィルムと、を備え、前記積層フィルムの接合端部に沿って接着剤を塗布し、前記積層フィルムの反対側の端部に前記接合端部を接着することによって、外側の菱形要素を備える前記積層フィルムがロール状に巻かれて円筒を形成し、前記円筒の円周の周りに回転させながら前記菱形要素が挟まれ、押圧され、折り曲げられ、かつ折り畳まれて、前記多角形状のCNTシート光学ベローズが生成される。
【0004】
強化された迷光抑制を提供する多角形状のカーボンナノチューブ(CNT)シート光学ベローズを製造する方法は、ポリマーフィルムを不織布型のCNTシートに接着するステップと、エラストマーフィルムを前記ポリマーフィルムに接着し、積層フィルムを生成するステップと、前記積層フィルムに折り線を付けるステップと、前記CNTシートが前記折り線に沿って容易に曲がるように前記積層フィルムを折り曲げるステップと、前記積層フィルムの接合端部に沿って接着剤を塗布し、前記接合端部を前記積層フィルムの反対側の端部に接着させることにより、外側に菱形要素を備える前記積層フィルムをロール状に巻いて円筒を形成するステップと、前記円筒の円周の周りに回転させながら、前記菱形要素を挟むこと、押圧すること、折り曲げること、及び折り畳むことの1つ又は複数を行い、前記多角形状のCNTシート光学ベローズを生成するステップと、を含む。
【0005】
強化された迷光抑制を提供する多角形状のカーボンナノチューブ(CNT)シート光学ベローズを製造する方法は、ポリマーフィルムを不織布型のCNTシートに接着するステップと、エラストマーフィルムを前記ポリマーフィルムに接着し、積層フィルムを生成するステップと、前記積層フィルムに垂直方向の折り線を付けるステップと、前記積層フィルムに水平方向の折り線を付けるステップと、前記積層フィルムに斜め方向の折り線を付けるステップであって、垂直方向の折り線を付けるステップ、水平方向の折り線を付けるステップ、及び斜め方向の折り線を付けるステップによって、菱形要素を形成するステップと、前記CNTシートが前記垂直方向の折り線に沿って容易に曲がるように、前記積層フィルムが前記垂直方向の折り線に沿って折り曲げられるステップであって、前記垂直方向の折り線は、前記円筒に対して相対的に高くなる山折りとして折り曲げられる、ステップと、前記CNTシートが前記水平方向の折り線に沿って容易に曲がるように、前記積層フィルムが前記水平方向の折り線に沿って折り曲げられるステップであって、前記水平方向の折り線は、前記円筒に対して相対的に高くなる山折りとして折り曲げられる、ステップと、前記CNTシートが前記斜め方向の折り線に沿って容易に曲がるように、前記積層フィルムが前記斜め方向の折り線に沿って折り曲げられるステップであって、前記斜め方向の折り線は、前記円筒に対して相対的に低くなる谷折りとして折り曲げられる、ステップと、前記積層フィルムの接合端部に沿って接着剤を塗布し、前記接合端部を前記積層フィルムの反対側の端部に接着させることにより、外側に菱形要素を備える前記積層フィルムをロール状に巻いて円筒を形成するステップと、前記円筒の円周の周りに回転させながら、前記菱形要素を挟むこと、押圧すること、折り曲げること、及び折り畳むことの1つ又は複数を行い、前記多角形状のCNTシート光学ベローズを生成するステップと、前記ベローズの1つ又は複数の端部に、機械的な取り付け目的で使用可能なフランジを接合するステップと、高周波数及びマイクロ波周波数のうちの1つ又は複数を使用して、酸素プラズマで前記CNTシートの表面をプラズマ処理するステップと、を含む。
【0006】
添付の図面は、様々な代表的な実施形態をより完全に説明するために使用される視覚的表現を提供し、本明細書に開示される代表的な実施形態及びそれらの固有の利点をより良く理解するために当業者によって使用され得る。これらの図面において、同様の参照番号は、対応する要素を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1B】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1C】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1D】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1E】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1F】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1G】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1H】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図1I】CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットの1つである。
【
図2】製造された多角形状のベローズを示す図である。
【
図3】光源、光学レール、CNTシート光学ベローズ、及び照度を測定するための照度計を含む、照度データを収集するために使用される構成の図である。
【
図4】CNTシート光学ベローズの照度対光源がCNTシート光学ベローズの軸から外れている角度のプロットを示すグラフである。
【
図5】迷光抑圧が強化された光学ベローズの製造方法のフローチャートである。
【
図6】迷光抑圧が強化された光学ベローズの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
強化された迷光抑制を提供するカーボンナノチューブシート(CNT)シート光ベローズは、光学機器での使用に適した低反射率特性を提供する。例えば、CNTシート光学ベローズは、自立型(free-standing)の不織布型CNTシート、CNTフィルム、及びCNT紙状材料のうちの1つ又は複数を含む。例えば、CNTシートは、約50~約10,000の高アスペクト比を有するカーボンナノチューブを含む。例えば、CNTシートは、単層CNT及び多層CNTのうちの1つ又は複数を含む。CNTは一般に、シートの平面内でランダムに配向される。CNTシートは、約5~約100nm(ナノメートル)の直径を有する1つ又は複数の単層及び多層のカーボンナノチューブを含み、約12μm(ミクロン)~200μmの範囲の厚さ、約50%~約85%の気孔率、及び約10グラム/平方メートル~約50グラム/平方メートルの面積密度を有する、自立型のマット状材料である。CNTシート材料は、約30MPa(メガパスカル)から約100MPaの極限引張強さと、一般に-3ppm/K~約+1ppm/Kの間である熱膨張係数とを有している。これらの物理的及び機械的特性を有する市販のCNTシート材料の例としては、ニュー・ハンプシャー州 メリマックのNanocomp Technologies, Inc. (www.miralon.com) によって製造される製品である「Miralon(登録商標)」がある。
【0009】
本発明のさらなる実施形態によれば、以下に説明するように、CNTシートの表面はプラズマ処理される。例えば、CNTシートの露出した表面は、プラズマ処理される。例えば、CNTシートは、酸素プラズマで処理される。例えば、CNTシートは、高周波数及びマイクロ波周波数のうちの1つ又は複数を使用してプラズマ処理される。例えば、プラズマ処理は、CNTを官能化する(部分的に酸化する)こと、及び表面領域においてシート状材料のCNTを開裂すること(unzipping)のうちの1つ又は複数を行うことによって、本発明の実施形態の光吸収性能を向上させる。
【0010】
このクラスの代表的な機器であり、本発明の実施形態によるプラズマ処理にうまく使用される機器は、カリフォルニア州 コロナのPVA-TePLA America Corporation(www.pvateplaamerica.com)によって製造される「IoN40」機器である。この機器は、0.16~2.7ミリバール(mbar)(120~2,000 mTorr)の範囲の処理圧力、及び最大800ワットの動作電力レベルで、酸素プラズマ表面処理を行うことが可能である。
【0011】
接着剤を使用して、フレキシブルな多層積層フィルムを作製する。例えば、接着剤は、アクリル接着剤及び他のフィルム接着剤のうちの1つ又は複数を含む。接着剤は、最初に不織布型CNTシートをポリイミドフィルムに接着し、続いてフィルムの組み合わせをアルミニウム処理された(aluminized)エラストマーフィルムに接着するためにも使用される。例えば、接着剤は、感圧式の両面接着テープを含む。例えば、接着剤は、ペースト状の接着剤を含む。接着剤は、約120℃までのプラズマプロセス温度に対し短時間(数分)耐え得るように構成される。宇宙用途では、接着剤は、アウトガスが少なく、機能性を保持しながら約-40℃~+80℃の温度範囲に耐え得るように構成される。次いで、得られた三層CNT積層体は、折り線を付けられ(scored)、ロール状に巻かれ(rolled)、折り畳まれて(folded)、多角形状のベローズとされる。例えば、多角形状のベローズは、六角形状のベローズを含む。
【0012】
次に、折り線が入った多層積層体を滑らかに曲げ、又はロール状に巻いて、接着ストリップが積層体の反対側端部の全長に整合して重なり合う、円筒を形成する。この円筒は、光吸収体として機能するCNTを、円筒の内面に備える。アクリルフィルム接着剤が、積層体の端部の接着ストリップに塗布され、円筒の端部同士を接合して、自立型のチューブを形成する。円筒の頂部を起点として、円筒の折り線が入れられた菱形要素は、円筒の周りに回転するように挟まれ(pinched)、押圧され(pressed)、折り曲げられ(folded)、折り畳まれて(collapsed)、折り畳み可能な多角形状の蛇腹構造を形成する。例えば、多角形状の蛇腹構造は、六角形状の蛇腹構造を含む。ベローズの1つ又は複数の端部にフランジを接合して、機械的な取り付けの目的で使用することができる。例えば、フランジは、アルミニウム及び炭素繊維複合材料の1つ又は複数を含む。例えば、六角形のアルミニウム製フランジを、ベローズの1つ又は複数の端部に接合して、機械的な取り付けの目的で使用可能である。
【0013】
CNTシート材料と折り紙の折り畳み技術とを利用して、拡張可能な多角形状のCNTシート光学ベローズを作製する。
【0014】
CNTシート光学ベローズの構成に使用される材料は、約300ppm~約-3ppmの範囲の熱膨張係数(CTE)を有する。-40℃~約+80℃の略全範囲で行われた熱サイクルテストは、CNTシート光ベローズがこの温度範囲全体にわたってその物理的完全性を維持していることを示している。使用される材料は、宇宙用途及び地上用途の1つ又は複数に対して、熱真空曝露及びサイクルに関する軍用規格(Mil. Std.)1540Cの要件を満足する。必ずしも必要ではないが、好ましくは、光学ベローズは宇宙用途と地上用途の両方の要件を満たす材料を含む。CNT光学ベローズの構成に使用される材料は、アメリカ材料試験協会(ASTM)のE595規格を満たすアウトガス試験にも合格している。
【0015】
図1A~
図1Iは、CNTシート光学ベローズを製造する際の9つのステップを示す9つの図面のセットである。
【0016】
図1Aでは、不織布型CNTシート材料105は、適切な接着剤(図示せず)を使用してポリイミドフィルム110に接着されている。CNTシート材料の各層は、約20ミクロン~約200ミクロンの厚さを有する。CNTシート材料は、約1層~約20層のCNTシートを含む。ポリイミドフィルム110は、熱硬化性ポリマーフィルム及び熱可塑性ポリマーフィルムのうちの1つ又は複数を含む。
【0017】
例えば、ポリイミドフィルム110は、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社 (www.dow.com)によって製造されたカプトン(Kapton)ポリイミドフィルムを含む。次に、ポリイミドフィルム110は、適当な接着剤(図示せず)を用いてエラストマーフィルム115に接着され、これにより3層型のCNT積層体116が形成される。例えば、エラストマーフィルム115は、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社 (www.dow.com)によって製造されているハイパロン(Hypalon)エラストマーフィルムとして販売されている、アルミニウム処理されたクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)コーティングポリエステルを含む。この積層体116は、積層体116の左側に沿った積層体左側117Aと、積層体116の右側に沿った積層体右側117Bと、積層体116の上側に沿った積層体上側117Cと、積層体116の下側に沿った積層体下側117Dとを有している。
【0018】
図1Bでは、3層型のCNT積層体116は、エラストマーフィルム115を上向きにして作業面(図示せず)に配置される。例えば、作業面は、清浄、乾燥、及び硬質のうちの1つ又は複数である。必ずしも必要ではないが、作業面は清潔で、乾燥しており、かつ硬いことが好ましい。例えば、作業面は、スコアリングボードを含む。
【0019】
図1Cでは、エラストマーフィルム115は、垂直方向に折り線を付けられ、第1の垂直方向の折り線125Aを生成する。例えば、エラストマーフィルム115は、さらに垂直方向に折り線を付けられ、第2の垂直方向の折り線125Bを生成する。例えば、エラストマーフィルム115は、尖った工具を用いて垂直方向に折り線が付けられる。必ずしも必要ではないが、第1の垂直方向の折り線125A及び第2の垂直方向の折り線125B並びに他の垂直方向の折り線は、一定の間隔を空けて配置されることが好ましい。積層体116は、製造されるベローズのサイズに応じて、一定の間隔で水平方向に折り線を付けられ得る。図示されているように、好ましいが必須ではない実施形態によれば、第1の水平方向の距離130Aは、ラミネート左側117Aと第1の垂直方向の折り線125Aとを離間させる。図示されるように、第2の水平方向の距離130Bは、第1の垂直方向の折り線125Aを第2の垂直方向の折り線125Bから離間させる。図示されるように、第3の水平方向の距離130Cは、第2の垂直方向の折り線125Bとエラストマーフィルム右側117Bとを離間させる。図示されているように、必ずしも必要ではないが、第1水平方向の距離130A、第2水平方向の距離130B、及び第3水平方向の距離130Cはすべて略等しいことが好ましい。
【0020】
図1Dでは、エラストマーフィルム115は、水平方向に折り線が付けられ、水平方向の折り線135A~135Oが生成される。例えば、エラストマーフィルム115は、尖った工具を用いて水平方向に折り線が付けられる。必ずしも必要ではないが、水平方向の折り線135A~135Oは、一定の間隔を空けて配置されることが好ましい。図示されるように、好ましいが必須ではない実施形態によれば、第1の垂直方向の距離140Aは、エラストマーフィルム上側117Cと第1の水平方向の折り線135Aとを離間させる。図示されるように、第2の垂直方向の距離130Bは、第1の水平方向の折り線135Aと第2の水平方向の折り線135Bとを離間させる。図示されるように、また、必ずしも必要ではないが、第1の垂直方向の距離140A、第2の垂直方向の距離140B、及び第3以降の垂直方向の距離140C、140Dなどは、すべて略等しいことが好ましい。
【0021】
次に、CNT積層体116は、CNT積層体116が垂直方向の折り線125A及び125Bに沿って容易に曲がるように、垂直方向の折り線125A及び125Bに沿って折り曲げられ、折り目が付けられる(folded and creased)。同様に、CNT積層体116は、次に、CNT積層体116が水平方向の折り線135A~135Oに沿って容易に曲がるように、水平方向の折り線135A~135Oに沿って折り曲げられ、折り目が付けられる。
【0022】
次のステップでは、
図1Eに示されるように、
図1Dで行ったのと同様のプロセスを行うが、ここでは斜め方向の折り線145A~145Tが生成され、次いで、CNT積層体116は、斜め方向の折り線145A~145Tに沿って折り曲げられ、折り目が付けられる。
【0023】
より具体的には、エラストマーフィルム115は、斜め方向に折り線が付けられ、斜め方向の折り線145A~145Tが生成される。例えば、エラストマーフィルム115は、尖った工具を用いて斜め方向に折り線が付けられる。必ずしも必要ではないが、斜め方向の折り線145A~145Tは、一定の間隔を空けて配置されることが好ましい。図示されるように、好ましいが必須ではない実施形態によれば、第1の斜め方向の距離150Aは、第1の斜め方向の折り線145Aと第2の斜め方向の折り線145Bとを離間させる。図示されるように、第2の垂直方向の距離150Bは、第3の斜め方向の折り線145Cと第4の斜め方向の折り線145Dとを離間させる。図示されるように、また、必ずしも必要ではないが、第1の斜め方向の距離150A、第2の斜め方向の距離150B、及び第3以降の斜め方向の距離150C、150Dなどは、すべて略等しいことが好ましい。第1~第4の斜め方向の折り線145A~145Dは、折り線付きの菱形要素155Aを形成する。斜め方向の折り線145A~145Tは、多数の折り線付きの菱形要素155A~155Tを形成する。
【0024】
次に、CNT積層体116は、CNT積層体116が斜め方向の折り線145A~145Tに沿って容易に曲がるように、斜め方向の折り線145A~145Tに沿って折り曲げられ、折り目が付けられる。
【0025】
図1Fでは、接着剤がCNT積層体116の接合端部160に沿って塗布され、接着ストリップ160を形成する。必ずしも必要ではないが、アクリルフィルム接着剤が適用されることが好ましい。例えば、図示されるように、エラストマーフィルム右側117Bは、接合端部160を含む。この接合端部160は、後述するように、また以下の
図1Hに示すように、その後、CNT積層体116をチューブ又は円筒に形成することを可能にする。垂直方向の折り線125A~125B、水平方向の折り線135A~135O、及び斜め方向の折り線145A~145Tが、再び示されている。
【0026】
円筒の頂部から始めて、円筒の折り線付きの菱形要素は、円筒の円周の周りを回転するように、注意深く、挟まれ、押圧され、折り曲げられ、折り畳まれて、折り畳み可能な六角形のベローズを形成する。
【0027】
図1Gでは、次に、折り線付きの多層積層体116を滑らかに曲げるか、又はロール状に巻いて、接着ストリップ160をエラストマーフィルム左側端部117Aに取り付け、接着ストリップ160(上述のように、エラストマーフィルム右側端部117Bを含む)をエラストマーフィルム左側端部117Aに接合することによって、円筒(この図には示されていないが、
図1HのCNT積層円筒165)を形成する。垂直方向の折り線125A~125B、水平方向の折り線135A~135O、及び斜め方向の折り線145A~145Tが、再び示されている。
【0028】
図1Hでは、自立型のCNT積層円筒165が形成されている。垂直方向の折り線125A~125B、水平方向の折り線135A~135O、及び斜め方向の折り線145A~145Tが、再び示されている。斜め方向の折り線145A~145Tは、CNT積層円筒165に対して相対的に低くなる谷折りとして折り曲げられる。垂直方向の折り線125A~125Bは、CNT積層円筒165に対して相対的に高くなる山折りとして折り曲げられる。同様に、水平方向の折り線135A~135Oは、CNT積層円筒165に対して相対的に高くなる山折りとして折り曲げられる。次いで、折り線付きの菱形要素155A~155Tは、CNT積層円筒165の円周の周りに回転する方法で慎重に挟まれ、折り曲げられ、折り畳まれる。
【0029】
図1Iでは、このプロセスは、部分的に拡張されたCNTシート光学ベローズ170をもたらす。このCNTシート光学ベローズ170は、機械的な端部取り付けフランジ(図示せず)の取り付け、及びCNTシート光学ベローズと展開機構(図示せず)との一体化の1つ又は複数に対する準備ができている。例えば、フランジは、ベローズ端部に取り付けられ、機械的な取り付けの目的で使用される。
【0030】
図2は、製造された六角形のベローズ200を示す。ベローズ200は、アルミニウム処理されたポリマーフィルム220に接着された不織布型CNTシート内部210を含む、折り紙のように折り曲げられた積層体を含む。例えば、CNTシート内部210は、多層CNT(MWCNT)を含む。ベローズの設計は拡張可能であり、すべての空間で利用可能な材料で作られている。例えば、ベローズ200は、約2.5インチから約2フィートの間で測定される直径230を有する。例えば、ベローズ200は、圧縮状態のベローズ200の長さに対する拡張長さの比率として定義される拡張比を、約2~約50の間で有する。
【0031】
図3は、以下の
図4に図示された照度データを収集するために使用される構成の構成
図300であり、回動式光源310と、光学レール320と、CNTシート光学ベローズ330と、照度測定に使用される照度計340とを備えている。必ずしも必要ではないが、光源310が、発光ダイオード(LED)光源310を含むことが好ましい。光学レール320は、光源310、CNTシート光学ベローズ330、及び照度計340のうちの1つ又は複数を保持する。必ずしも必要ではないが、光学レール320は、光源310、CNTシート光学ベローズ330、及び照度計340の1つ又は複数を保持することが好ましい。必ずしも必要ではないが、光学レール320は、光源310、CNTシート光学ベローズ330、及び照度計340を、共通の軸350上に保持することが好ましい。共通軸350は、光学ベローズ330のベローズ軸380に平行な垂直線370を有する角度360を形成する。角度360は、
図4のx軸に沿ってプロットされた角度420である。本発明の実施形態による照度を6分の1に低減できることは、以下の
図4で明らかである。
【0032】
図4は、光源がCNTシート光学ベローズの軸からずれている角度420(度)に対する、CNTシート光学ベローズの照度(毎平方メートル[m
2]当たりのルーメン、ルクスとしても知られている)410のプロットを示すグラフ400である。プラズマ処理前のデータ点430と、プラズマ処理前の近似曲線440とが図示されており、約6ルーメン/平方メートルでピークに達する照度を示している。プラズマ処理後のデータ点ト450及びプラズマ処理後の近似曲線460が示されており、1平方メートル当たり約1ルーメンでピークに達し、照度を6分の1に低減できることを示している。
【0033】
図5は、強化された迷光抑制を提供するカーボンナノチューブ(CNT)シート光ベローズを製造する方法500のフローチャートである。
【0034】
方法500におけるステップの順序は、
図5に示された順序及び以下の説明で説明される順序には限定されない。いくつかのステップは、最終結果に影響を及ぼすことなく、異なる順序で行うことができる。
【0035】
ステップ510では、ポリマーフィルムが不織布型CNTシートに接着される。次に、ブロック510は、制御をブロック515に移す。
【0036】
ステップ515では、エラストマーフィルムがポリマーフィルムに接着され、積層フィルムが生成される。次に、ブロック515は、制御をブロック520に移す。
【0037】
ステップ520では、積層フィルムに折り線が付けられる。次に、ブロック520は、制御をブロック530に移す。
【0038】
ステップ530では、CNTシートを折り線に沿って容易に曲がるように、積層フィルムが折り曲げられる。次に、ブロック530は、制御をブロック540に移す。
【0039】
ステップ540では、積層フィルムの接合端部に沿って接着剤を塗布して、接合端部を積層フィルムの反対側の端部に接着することによって、積層フィルムがロール状に巻かれ、積層フィルムの外側に菱形要素を備える円筒を形成する。次に、ブロック540は、制御をブロック550に移す。
【0040】
ステップ550では、円筒の円周の周りを回転させながら、菱形要素を挟むこと、押圧すること、折り曲げること、折り畳むことの1つ又は複数を行い、多角形状のCNTシート光学ベローズを生成する。このステップは、任意選択で、ベローズの1つ又は複数の端部にフランジを接合するサブステップを含み、フランジは、機械的な取り付け目的に使用可能である。次に、ブロック550は、プロセスを終了する。
【0041】
図6は、強化された迷光抑制を提供するカーボンナノチューブ(CNT)シート光ベローズを製造する方法600のフローチャートである。
【0042】
方法600におけるステップの順序は、
図6に示された順序及び以下の説明で説明される順序には限定されない。いくつかのステップは、最終結果に影響を及ぼすことなく、異なる順序で行うことができる。
【0043】
ステップ610では、ポリマーフィルムが不織布型CNTシートに接着される。次に、ブロック610は、制御をブロック620に移す。
【0044】
ステップ615では、エラストマーフィルムがポリマーフィルムに接着され、積層フィルムが生成される。次に、ブロック615は、制御をブロック620に移す。
【0045】
ステップ620では、積層フィルムに垂直方向の折り線が付けられる。次に、ブロック620は、制御をブロック630に移す。
【0046】
ステップ630では、積層フィルムに水平方向の折り線が付けられる。次に、ブロック630は、制御をブロック635に移す。
【0047】
ステップ635では、積層フィルムに斜め方向の折り線が付けられ、垂直方向の折り線を付けるステップ、水平方向の折り線を付けるステップ、及び斜め方向の折り線を付けるステップにより、菱形要素が形成される。次に、ブロック635は、制御をブロック640に移す。
【0048】
ステップ640では、積層フィルムはCNTシートが垂直方向の折り線に沿って容易に曲がるように、垂直方向の折り線に沿って折り曲げられ、垂直方向の折り線は、円筒に対して相対的に高くなる山折りとして折り曲げられる。次に、ブロック640は、制御をブロック650に移す。
【0049】
ステップ650では、積層フィルムはCNTシートが水平方向の折り線に沿って容易に曲がるように、水平方向の折り線に沿って折り曲げられ、水平方向の折り線は、円筒に対して相対的に高くなる山折りとして折り曲げられる。次に、ブロック650は、制御をブロック660に移す。
【0050】
ステップ660では、CNTシートが斜め方向の折り線に沿って容易に曲がるように、積層フィルムが斜め方向の折り線に沿って折り曲げられる。この斜め方向の折り線は、円筒に対して相対的に低くなる谷折りとして折り曲げられる。次に、ブロック660は、制御をブロック670に移す。
【0051】
ステップ670では、積層フィルムの接合端部に沿って接着剤を塗布して、接合端部を積層フィルムの反対側の端部に接着することによって、外側に菱形要素を備える積層フィルムがロール状に巻かれて円筒を形成する。次に、ブロック670は、制御をブロック680に移す。
【0052】
ステップ680では、円筒の円周の周りを回転させながら、菱形要素を挟むこと、押圧すること、折り曲げること、及び折り畳むことの1つ又は複数を行い、多角形状のCNTシート光学ベローズを生成する。次に、ブロック680は、制御をブロック690に移す。
【0053】
ステップ690では、ベローズの1つ又は複数の端部にフランジが接合され、フランジは機械的な取り付け目的に使用可能である。次に、ブロック690は、制御をブロック685に移す。
【0054】
ステップ695では、CNTシートの表面は、高周波数及びマイクロ波周波数のうちの1つ又は複数を使用して、酸素プラズマでプラズマ処理される。例えば、CNTシートの露出した表面は、高周波数及びマイクロ波周波数のうちの1つ又は複数を使用して酸素プラズマでプラズマ処理される。ブロック695は、プロセスを終了させる。
【0055】
本発明の実施形態のさらなる利点は、それらが、一連の黒色コーティングされたメカニカルストップ(mechanical stops)と薄いエッジのベーン(vanes)とを採用する、望遠鏡や他の機器における現在の迷光抑制システムのいくつかの制限を克服していることである。(i)限定された吸収特性(95~97%の可視波長)、(ii)及び広帯域(紫外~近赤外)吸収体ではない、(iii)シャープで小さい半径(0.1mm)のベーン端部に適用された場合、熱サイクルの間、十分に接着せず、接着されたままではない、(iv)最もシャープにコーティングされたベーン端部でさえも、「厚さゼロ」ではなく、機器内の迷光反射源を表す。
【0056】
本発明の実施形態のさらなる利点は、本発明の実施形態が、内部の高吸収折り畳み壁、低光散乱の折り畳み端部、及びマイクロメートル範囲の有効端部半径のうちの1つ又は複数を有することである。
【0057】
本発明の実施形態のさらなる利点は、真空プラズマ処理が、光学ベローズ内面などの複雑な形状の物体を処理する従来技術の方法に関連する困難性を回避して、光吸収性能を向上させることである。従来技術の方法に関連する困難性には、山や谷のトポロジーに円筒形や直線状のノズルを貫通させる困難性が含まれ、このようなノズルは加工面から数ミリ以内に配置する必要があるため、接触及び光学的表面損傷なしにプラズマ処理を完了することが困難である。本発明の実施形態の利点は、プラズマ真空チャンバ機器の使用に関する本発明の実施形態の教示が、損傷を引き起こすことなく表面付近にノズルを位置決めするという従来技術の困難性を回避することである。
【0058】
本発明の実施形態のさらなる利点は、約250ナノメートル(nm)~約2,500nmの間の波長について、本発明の実施形態は、約3.2%である従来技術の反射率と比較して、約0.80%の平均材料反射率か、又は少なくとも4倍の改善を提供することである。低反射率特性は、可視及び赤外波長センサハウジング、スタートラッカ、展開可能なベローズ、及び望遠鏡バッフルとバレルのような宇宙光学機器にとって有利である。さらなる利点は、本発明の実施形態が、約100ミクロンである従来技術の最小曲げ半径と比較して、約10ミクロン未満の最小曲げ半径を提供することである。
【0059】
本発明の実施形態のさらなる利点は、迷放射及び迷光のうちの1つ又は複数の抑制を強化することであり、したがって、1E-22から1E-37ワット/平方メートルの範囲の感度を有し、スペクトルのX線から遠赤外線部分に及ぶ動作を伴うボロメトリックセンサ及び画像センサのうちの1つ又は複数を採用する、次世代空中センサ及び宇宙機器のうちの1つ又は複数に適している。
【0060】
本発明の実施形態の別の利点は、これらの次世代センサ及び機器のための信号対雑音比を改善することである。
【0061】
本発明の実施形態の別の利点は、現行の最先端の黒色コーティングと比較して、可視光反射率が著しく低い特性、及び近赤外線反射率が著しく低い特性のうちの1つ又は複数を提供することである。
【0062】
本発明の実施形態の別の利点は、顕著な迷光性能の利点を提供することである。
【0063】
本発明の実施形態のさらなる利点は、CNTの極めて高い歪み及び曲げ強度特性によって、シート材料を折り曲げたり、折り紙のように折り畳んだりして、小さな曲げ半径を有する複雑な構造にすることが可能になることである。それらは、光学吸収体材料から直接、折り畳み可能で展開可能な光学ベローズを構築することを可能にする。
【0064】
本発明の実施形態の別の利点は、上述したように、CNTの層表面は、従来のAeroglaze Z307でコーティングされた表面と比較して、大きな波長帯域にわたって約4分の1の反射であるということである。本発明の実施形態のさらに他の利点は、CNTシートを折り畳むことで、機械加工された金属ベーンの端部の実質的に10分の1の曲げ半径を有するベーンの端部を達成できることである。また、従来技術のZ307でコーティングされた高曲率のベーンとは異なり、本発明の一体型吸収体は、熱サイクル中に剥離しない。本発明のCNTシートが有するナノ多孔性と組み合わせると、吸収体材料は、エッジ表面からの光散乱を10分の1に低減することができる。
【0065】
本発明の実施形態のバリエーションの数は実質的に無限であることが、当業者によってさらに理解されるのであろう。例えば、本願では、垂直方向の折り線、水平方向の折り線、及び斜め方向の折り線が挙げられているが、本発明の実施形態の一般的な概要が使用される限り、任意のパターンの折り線を使用することができる。折り線は、互いに平行であるもの及び互いに直交するもののうちの1つ又は複数である必要はない。折り線は、互いに任意の数の円弧度(degrees of arc)によって離間され得る。また、本発明の実施形態では、ベローズ全体にわたって直線として延在しないが、その代わりに、曲げ、湾曲、折り返し(double back on themselves)などのうちの1つ又は複数を行うことができる折り線を採用することができる。
【0066】
本開示では、多角形状のベローズに言及し、六角形状のベローズの具体例を挙げているが、本発明の実施形態によれば、ベローズは任意の形状で作成される。例えば、ベローズの形状は多角形である。例えば、ベローズの形状は、正方形、五角形、七角形、八角形等の正多角形である。また、例えば、ベローズの形状は、不規則な多角形である。例えば、ベローズは、一方の端部でより大きな直径を有し、他方の端部でより小さな直径を有するテーパ状であってもよい。
【0067】
上記の代表的な実施形態は、例示的な構成における特定の構成要素を用いて説明されてきたが、他の代表的な実施形態が異なる構成及び/又は異なる構成要素を用いて実装され得ることが、当業者であれば理解されよう。例えば、本発明の機能を実質的に損なうことなく、特定のステップ及び特定の構成要素の順序を変更できることは、当業者には理解されよう。
【0068】
本明細書で詳細に説明された代表的な実施形態及び開示された主題は、例示及び説明のために提示されたものであり、限定として提示されたものではない。当業者であれば、説明された実施形態の形態及び詳細に様々な変更を加えることができ、その結果、本発明の範囲内にある同等の実施形態が得られることを理解するであろう。したがって、上記の説明における主題は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことが意図される。