(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】二温度電気分解プロセスによるナトリウム金属の製造
(51)【国際特許分類】
C25C 1/02 20060101AFI20241004BHJP
C25C 7/04 20060101ALI20241004BHJP
C25C 7/06 20060101ALI20241004BHJP
C25C 7/08 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C25C1/02
C25C7/04 301
C25C7/06 301A
C25C7/08 A
C25C7/06 303
(21)【出願番号】P 2022552725
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 US2021020945
(87)【国際公開番号】W WO2021178718
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2024-02-29
(32)【優先日】2020-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518230452
【氏名又は名称】エンライテン イノベーションズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ロビンス マシュー リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ババラジュ サイ ヴェンカタ
(72)【発明者】
【氏名】フリンダース ロジャー マーク
(72)【発明者】
【氏名】ヒンクリン トーマス レイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューズ スティーブン ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】マコウスキー ミコラ
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-519712(JP,A)
【文献】特表2019-500501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00- 1/24
C25C 7/00- 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
第1の温度のアノライトを、電気化学フローセルのアノライトコンパートメントに導入する工程であって、
前記アノライトが、硫黄と、温度感受性溶媒に溶解したナトリウム塩の有効量とを含み、
前記アノライトコンパートメントが、アノードを備え、前記アノードが、前記ナトリウム塩を含み、
前記電気化学フローセルが、
カソライトコンパートメントと、
前記アノライトコンパートメントを前記カソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜と
を更に備え、かつ
前記カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムカソードを備える、
導入する工程;
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜を通して前記アノライトコンパートメントから前記カソライトコンパートメントまで、前記ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程;
前記溶融ナトリウムカソードにおいて前記ナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程;及び
硫黄を回収せずに、前記アノライトコンパートメントの外側の前記アノライトを第2の温度まで冷却する工程
を含む、方法であって、
前記第2の温度が、前記第1の温度で生じる速度の20%未満の速度で、前記温度感受性溶媒の分解を引き起こす、
方法。
【請求項2】
前記ナトリウム塩が、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化ナトリウムと1つ以上のポリ硫化ナトリウムとの混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリ硫化
ナトリウムが、式Na
2S
xを有し、式中、xが、1~32の整数である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記アノライト中のナトリウムの量が、約1重量%~約10重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記アノライト中のナトリウムの量が、約3重量%~約7重量%の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
約15℃~80℃の温度で前記アノライトから前記硫黄を回収する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記温度感受性溶媒が、アルキルジオール、アルキルトリオール、シクロアルキルジオール、シクロアルキルトリオール、ラクタム、環状尿素、C
1~6アルキルアミド、カーボネート、エーテル、それらの任意の2つ以上の混合物、若しくは前述のうちのいずれかと水との混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記温度感受性溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロール、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記温度感受性溶媒が、エチレングリコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アノードと電気的に接触しているアノード集電体が、前記電気化学
フローセルの前記アノライトコンパートメント内に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記アノード集電体が、ニッケル、様々な炭素タイプ、鋼、コバール、若しくはコバルトのうちの1つ以上を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アノード集電体が、ニッケルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電気化学フローセルが、カソード集電体を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記カソード集電体が、ニッケルを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、ナトリウムイオン伝導性ガーネット様セラミック、Na伝導性セラミックガラス、NaSiCON、若しくはNa-β’’-アルミナを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、又は前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜及びアノライトコンパートメントが、前記第1の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、又は前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜及びアノライトコンパートメントが、熱エンクロージャによって前記第1の温度に加熱される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記アノライトコンパートメント内にアノライトがある場合に、前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、少なくとも10mScm
-1の伝導率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記アノライトコンパートメント内にアノライトがある場合に、前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、少なくとも50mScm
-1の伝導率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、10mScm
-1~100mScm
-1の伝導率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
以下の工程:
115℃~約150℃の第1の温度のアノライトを、電気化学フローセルのアノライトコンパートメントに導入する工程であって、
前記アノライトが、アルキルジオールを含む温度感受性溶媒に溶解した硫黄含有ナトリウム塩の有効量を含み、
前記アノライトコンパートメントが、アノードを備え、前記アノードが、前記硫黄含有ナトリウム塩を含み、
前記電気化学フローセルが、
カソライトコンパートメントと、
前記アノライトコンパートメントを前記カソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜と
を更に備え、かつ
前記カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムカソードを備える、
導入する工程;
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜を通して前記アノライトコンパートメントから前記カソライトコンパートメントまで、前記ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程;
前記溶融ナトリウムカソードにおいて前記ナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程;及び
硫黄を回収せずに、80℃~115℃未満の第2の温度まで前記アノライトコンパートメントの外側の前記アノライトを冷却する工程
を含む、方法であって、
前記第2の温度が、前記第1の温度で生じる速度の20%未満の速度で、前記温度感受性溶媒の分解を引き起こす、
方法。
【請求項22】
二温度電気化学システムであって、
前記システムが、
アノライトを含むアノライト源と、
前記システム内でアノライトをポンプ圧送するための少なくとも1つのポンプと、
アノライトを第1の温度に加熱するためのヒータと、
前記第1の温度よりも低い第2の温度までアノライトを冷却するためのチラーと、
電解フローセルであって、
ナトリウムイオン伝導性セラミック膜によって隔てられた、アノライトコンパートメント及びカソライトコンパートメント、
前記アノライトコンパートメント内に配置された、ナトリウム塩を含むアノード、
前記カソライトコンパートメント内に配置された、溶融ナトリウムカソード、並びに
前記アノード及びカソードに電気的に接続された、電源
を備え、
前記アノライトコンパートメントが、アノライト入口及びアノライト出口を更に備え、かつ
前記カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムが流れることができる開口部を備える、
電解フローセルと
を備え、
前記アノライト源が、前記ポンプ及び前記アノライト入口と流体接続している、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が組み込まれる、2020年3月4日に出願された米国仮出願第62/985,287号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
多くの石油原料を含む液体炭化水素は、多くの場合、有機硫黄化合物の形態の、除去が困難な硫黄、並びに炭化水素の使用を妨げる金属及び他のヘテロ原子含有化合物を含有する。硫黄は、大気汚染を引き起こす可能性があり、石油処理に使用される触媒、又は自動車排気から炭化水素及び窒素酸化物を除去するように設計された触媒に悪影響を与える可能性がある。世界的には、ガソリン、ディーゼル、及びマリンバンカー燃料を含む燃料油などの炭化水素燃料における硫黄の量を制限する傾向がある。炭化水素ストリームに含まれる金属はまた、典型的には硫黄の除去に利用される水素化処理触媒に悪影響を与える可能性があり、それにより、水素が、極端な条件下で反応して、硫黄含有有機硫黄分子を分解する。
【0003】
ナトリウム金属は、石油留分、原油、重油、瀝青、及びシェールオイルを含む高硫黄炭化水素の処理に潜在的に有効と認識されている。ナトリウムは、油及びその汚染物質と反応して、硫化ナトリウム化合物(硫化物、ポリ硫化物、及び水硫化物)並びに他のナトリウム含有副生成物の形成を通じて、油の硫黄、窒素、酸素、及び金属含有量を劇的に低減することができる。そのような脱硫技術を経済的に実行可能にするためには、ナトリウム金属が、硫化/ポリ硫化ナトリウム及び他のナトリウム含有副生成物から再生されなければならない。金属ナトリウムは、そのような硫化物/ポリ硫化物及び副生成物から電気化学的に再生され得るが、これらの方法で使用される電気化学セルの短い寿命が、それらの商業的使用を妨げている。したがって、硫化物/ポリ硫化物からナトリウム金属を製造するための、費用対効果が高く、堅牢な電気化学システム及び方法は、今まで利用できなかった。
【発明の概要】
【0004】
概要
ポリ硫化ナトリウムからナトリウム金属を製造するための新しい電気化学的方法を発見した。この技術は、ナトリウムイオンの高い伝導性、及び電気化学セルの長い寿命を提供する。本発明者らは、硫化ナトリウム/ジオールアノライトが、ポリ硫化ナトリウム塩からナトリウム金属を製造するための電解条件下で化学的に不安定であることを、本発明者らの広範囲にわたる調査によって明らかにした後、本技術を開発した。驚くべきことに、アノライトの分解を引き起こしていた副反応は、これまで認識されていなかった極端な温度依存性を示すことが見出された。本技術は、電気化学セルの高いスループット及び長い寿命を伴う新しい二温度電気分解方法を提供する。
[本発明1001]
以下の工程:
第1の温度のアノライトを、電気化学フローセルのアノライトコンパートメントに導入する工程であって、
前記アノライトが、温度感受性溶媒に溶解したナトリウム塩の有効量を含み、
前記アノライトコンパートメントが、アノードを備え、前記アノードが、前記ナトリウム塩を含み、
前記電気化学フローセルが、
カソライトコンパートメントと、
前記アノライトコンパートメントを前記カソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜と
を更に備え、かつ
前記カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムカソードを備える、
導入する工程;
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜を通して前記アノライトコンパートメントから前記カソライトコンパートメントまで、前記ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程;
前記溶融ナトリウムカソードにおいて前記ナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程;及び
前記アノライトコンパートメントの外側の前記アノライトを第2の温度まで冷却する工程
を含む、方法であって、
前記第2の温度が、前記第1の温度で生じる速度の20%未満の速度で、前記温度感受性溶媒の分解を引き起こす、
方法。
[本発明1002]
以下の工程:
第2の温度のアノライトを、電気化学フローセルのアノライトコンパートメントに導入する工程であって、
前記アノライトが、温度感受性溶媒に溶解したナトリウム塩の有効量を含み、
前記アノライトコンパートメントが、アノードを備え、前記アノードが、前記ナトリウム塩を含み、
前記電気化学フローセルが、
カソライトコンパートメントと、
前記アノライトコンパートメントを前記カソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜と
を更に備え、かつ
前記カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムカソードを備える、
導入する工程;
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜を通して前記アノライトコンパートメントから前記カソライトコンパートメントまで、前記ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程;及び
前記溶融ナトリウムカソードにおいて前記ナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程
を含む、方法であって、
前記第2の温度が、前記第1の温度で生じるであろう速度の20%未満の速度で、前記温度感受性溶媒の分解を引き起こす、
方法。
[本発明1003]
前記ナトリウム塩が、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化ナトリウムと1つ以上のポリ硫化ナトリウムとの混合物を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる、本発明1001又は1002の方法。
[本発明1004]
前記ポリ硫化物が、式Na
2
S
x
を有し、式中、xが、1~32の整数である、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記アノライト中のナトリウムの量が、約1重量%~約10重量%の範囲である、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
前記アノライト中のナトリウムの量が、約3重量%~約7重量%の範囲である、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1007]
前記アノライトが、硫黄を更に含む、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
前記アノライトから前記硫黄を回収する工程を更に含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
前記温度感受性溶媒が、アルキルジオール、アルキルトリオール、シクロアルキルジオール、シクロアルキルトリオール、ラクタム、環状尿素、C
1~6
アルキルアミド、カーボネート、エーテル、それらの任意の2つ以上の混合物、若しくは前述のうちのいずれかと水との混合物を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記温度感受性溶媒が、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、グリセロール、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記温度感受性溶媒が、エチレングリコールを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記アノードと電気的に接触しているアノード集電体が、前記電気化学セルの前記アノライトコンパートメント内に配置されている、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記アノード集電体が、ニッケル、様々な炭素タイプ、鋼、コバール、若しくはコバルトのうちの1つ以上を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記アノード集電体が、ニッケルを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記電気化学フローセルが、カソード集電体を更に備える、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1016]
前記カソード集電体が、ニッケルを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、本発明1015の方法。
[本発明1017]
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、ナトリウムイオン伝導性ガーネット様セラミック、Na伝導性セラミックガラス、NaSiCON、若しくはNa-β’’-アルミナを含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1018]
前記第1の温度が、約115℃~約150℃の範囲である、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1019]
前記第2の温度が、80℃~115℃未満の範囲である、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1020]
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、又は前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜及びアノライトコンパートメントが、前記第1の温度に加熱される、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1021]
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、又は前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜及びアノライトコンパートメントが、熱エンクロージャによって前記第1の温度に加熱される、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記アノライトコンパートメント内にアノライトがある場合に、前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、少なくとも10mScm
-1
の伝導率を有する、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記アノライトコンパートメント内にアノライトがある場合に、前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、少なくとも50mScm
-1
の伝導率を有する、先行本発明のいずれかの方法。
[本発明1024]
前記セラミック製ナトリウムイオン伝導膜が、10mScm
-1
~100mScm
-1
の伝導率を有する、本発明1001~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
二温度電気分解によってナトリウム金属を製造するためのシステムであって、
前記システムが、
アノライトを含むアノライト源と、
前記システム内でアノライトをポンプ圧送するための少なくとも1つのポンプと、
アノライトを第1の温度に加熱するためのヒータと、
前記第1の温度よりも低い第2の温度までアノライトを冷却するためのチラーと、
電解フローセルであって、以下:
ナトリウムイオン伝導性セラミック膜によって隔てられた、アノライトコンパートメント及びカソライトコンパートメント、
前記アノライトコンパートメント内に配置された、ナトリウム塩を含むアノード、
前記カソライトコンパートメント内に配置された、溶融ナトリウムカソード、並びに
前記アノード及びカソードに電気的に接続された、電源
を備える、電解フローセルと
を備え、
前記アノライトコンパートメントが、アノライト入口及びアノライト出口を更に備え、かつ
前記カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムが流れることができる開口部を備え、
ここで、
前記アノライト源が、前記ポンプ及び前記アノライトコンパートメントの前記アノライト入口と流体接続しており、
前記アノライト源からの前記アノライトが前記アノライトコンパートメントに入る前に又は入るときに、前記アノライトを加熱するように、前記ヒータが適合されており、かつ
前記アノライトが前記アノライトコンパートメントを出るときに、前記アノライトを冷却するように、前記チラーが適合されている、
システム。
【0005】
一態様では、本技術は、ナトリウム塩、例えば、硫化/ポリ硫化ナトリウム又はハロゲン化/ポリハロゲン化ナトリウムからナトリウム金属を調製する方法を提供する。方法は、第1の温度のアノライトを、電気化学フローセル(又はハイブリッドフローセル)のアノライトコンパートメントに導入する工程を含む。アノライトは、温度感受性溶媒に溶解したナトリウム塩(例えば、硫黄含有ナトリウム塩)の有効量を含む。アノライトコンパートメントは、ナトリウム塩を含むアノードを備える。電気化学フローセルは、カソライトコンパートメントと、アノライトコンパートメントをカソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜とを、更に含む。カソライトコンパートメントは、溶融ナトリウムカソードを含む。方法は、セラミック製ナトリウムイオン伝導膜を通してアノライトコンパートメントからカソライトコンパートメントまで、ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程と、溶融ナトリウムカソードにおいてナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程と、アノライトコンパートメントの外側のアノライトを第2の温度まで冷却する工程とを、更に含む。任意の実施形態では、アノライトコンパートメント内にアノライトがある場合に(すなわち、セル動作温度で)、セラミック製ナトリウムイオン伝導膜は、少なくとも10mScm-1又は少なくとも50mScm-1の伝導率を有し得る。第2の温度は、第1の温度で生じる速度の20%未満の速度で、温度感受性溶媒の分解を引き起こす。したがって、アノライトが電気化学セルに入る際にアノライトの一部を短期間加熱し、アノライトがセルを離れる際にアノライトを速やかに冷却するだけで、アノライトの副反応が、最小限に抑えられ、セル寿命が、大幅に延長される。
【0006】
任意の実施形態では、方法は、アノードにおいてナトリウム塩のアニオンを酸化する工程を更に含む。任意の実施形態では、ナトリウム塩としては、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化ナトリウムと1つ以上のポリ硫化ナトリウムとの混合物が挙げられる。いくつかのそのような実施形態では、方法は、アノードにおいて硫化物及び/又はポリ硫化物を、より高いポリ硫化物及び/又は硫黄に酸化する工程を更に含む。本方法の任意の実施形態では、アノライトは硫黄を含み、硫黄は、任意で、アノライトから回収され得る。任意の実施形態では、カソライトコンパートメント内に形成されたナトリウム金属の少なくとも一部分が、取り出されかつ/又は回収され得る。
【0007】
別の態様では、本技術は、本方法を実施するためのシステムを提供する。したがって、アノライトを含むアノライト源と、システム内でアノライトをポンプ圧送するための少なくとも1つのポンプと、アノライトを第1の温度に加熱するためのヒータと、第1の温度よりも低い第2の温度までアノライトを冷却するためのチラーと、電解フローセルとを含む、二温度電気分解によるナトリウム金属の製造のためのシステムが提供される。電解フローセルは、ナトリウムイオン伝導性セラミック膜によって隔てられた、アノライトコンパートメント及びカソライトコンパートメントと、アノライトコンパートメント内に配置された、ナトリウム塩を含むアノードと、カソライトコンパートメント内に配置された溶融ナトリウムカソードと、アノード及びカソードに電気的に接続された電源とを含む。電解フローセル内では、アノライトコンパートメントは、アノライト入口及びアノライト出口を更に備え、カソライトコンパートメントは、溶融ナトリウムが流れることができる開口部を備える。アノライト源は、ポンプ及びアノライトコンパートメントのアノライト入口と流体接続しており、ヒータは、アノライト源からのアノライトがアノライトコンパートメントに入る前に又は入るときに、アノライトを加熱するように適合されており、チラーは、アノライトがアノライトコンパートメントを出るときに、アノライトを冷却するように適合されている。本システムは、以下に限定されないが、アノライト、アノード、カソライト、カソード、集電体、並びに硫黄及び/又はナトリウム金属回収のための機器を含む、例えば、
図8及び添付のテキスト中の他の機器を含む、本明細書に記載の要素のいずれかを任意で使用し得ることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本方法及びシステムにおいて使用され得る電気化学セルの例示的な実施形態の概略図である。
【
図1B】本方法及びシステムにおいて使用され得る電気化学セルの例示的な実施形態の概略図である。
【
図1C】硫化ナトリウムをポリ硫化ナトリウムに、及び最終的に元素硫黄に酸化する一方で、またアノライトからナトリウム金属を取り出すように配列された直列電気化学セルの例示的実施形態を示す。
【
図2】Naの重量%及び温度の関数としてのNa
2S
5アノライトの伝導率を示すグラフである。
【
図3】EG中に溶解され、異なる温度で195時間インキュベートされた7%のナトリウムを有するNa
2S
5のFT-IRスペクトルを示す。
【
図4】2-ヒドロキシエチルアセテートの特徴である1725cm
-1の波数におけるピークについての、ベースラインに対する正規化したFT-IRピーク高さを示す。
【
図5】エチレングリコールからのO-Hストレッチである3250cm
-1の波数におけるピークについての、ベースラインに対する正規化したFT-IRピーク高さを示す。
【
図6】熱インキュベーション中、110℃、125℃、及び150℃における3%及び7%ナトリウムのNa
2S
5アノライトの観察された質量損失を示すグラフである。
【
図7】80℃~150℃の範囲の温度において5重量%のエチレングリコールアノライト中のNa
2S
5を有するアノライトの観察された質量損失を示すグラフである。
【
図8】瞬時二段階アノライト温度電気分解プロセス(instant dual stage anolyte temperature electrolysis process)を実施するためのシステムの例示的実施形態のプロセスフロー図(PFD)を示す。
【
図9】本技術の電気化学セル及び二温度電気分解方法の例示的実施形態を使用して、経時的な、57mA/cm
2を達成するのに必要な印加電圧(右y軸)を示す。
【
図10】実施例1で考察されるように、本技術の例示的実施形態の高温動作(125~150℃)についての経時的な電圧及び電流密度を示す。
【
図11】1580cm
-1の波数におけるピークについての、ベースラインに対する正規化したFT-IRピーク高さを示す。
【
図12】1725cm
-1の波数におけるピークについての、ベースラインに対する正規化したFT-IRピーク高さを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
以下の用語は、以下に定義されるように、全体を通して使用される。
【0010】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、要素を説明する文脈における(とりわけ、添付の特許請求の範囲の文脈における)「1つの(a)」及び「1つの(an)」及び「その(the)」並びに同様の指示対象などの単数冠詞は、本明細書で別様に記載されるか、又は文脈によって明確に否定されない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別段示されない限り、単に、範囲内に含まれる各個別の値を個々に参照する簡略方法として機能することを意図しており、各個別の値は、本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書で別様に記載されるか、又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、単に実施形態をより良く示すことを意図しており、特に明記しない限り、特許請求の範囲に制限を与えるものではない。本明細書中のいかなる言語も、不可欠なものとして、任意の特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0011】
本明細書で使用される場合、「約」は、当業者によって理解され、それが使用される文脈に応じて、ある程度変化するであろう。当業者に明らかでないこの用語の使用が存在する場合、それが使用される文脈を考慮して、「約」は、特定の用語のプラス又はマイナス10%までを意味するであろう。
【0012】
「セラミック製ナトリウムイオン伝導性セラミック膜」は、溶融ナトリウムカソードがアノード及びアノライトと接触するのを防止するが、ナトリウムイオンが、アノード/アノライトから、膜を通してカソードに選択的に輸送されることを可能にする任意の好適なセラミック膜を指す。
【0013】
「アルキルジオール」又は「アルカンジオール」は、異なる炭素に結合した2つのヒドロキシル基を有する、2~6個の炭素(すなわち、2、3、4、5、若しくは6個の炭素原子)のアルケン、又は4~8個の炭素(すなわち、4、5、6、7、若しくは8個の炭素原子)のアルキレンエーテルを指す。アルカンは飽和直鎖状又は分岐状炭化水素であることが理解されよう。同様に、「アルキルトリオール」又は「アルカントリオール」は、3つの異なる炭素に結合した3つのヒドロキシル基を有する、3~6個の炭素(すなわち、2、3、4、5、若しくは6個の炭素原子)のアルカン、又は4~8個の炭素(すなわち、4、5、6、7、若しくは8個の炭素原子)のアルキレンエーテルを指す。アルカンジオール及びトリオールの例としては、以下に限定されないが、エチレングリコール(すなわち、エタン-1,2-ジオール)、プロピレンジオール(例えば、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール)、グリセロール、ブタンジオール(例えば、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオールなど)、ブタントリオール(例えば、ブタン-1,2,3-トリオール、ブタン-1,2,4-トリオール、2-ヒドロキシメチルプロパン-1,3-ジオールなど)、ペンタンジオール(例えば、ペンタン-1,2-ジオール、ペンタン-1,3-ジオール、ペンタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2-メチルブタン-1,4-ジオールなど)、ペンタントリオール(例えば、ペンタン-1,2,5-トリオール、ペンタン-1,3,5-トリオール、2-ヒドロキシメチルブタン-1,4ジオールなど)、ヘキサンジオール(例えば、ヘキサン、1,2-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘキサン-1,3-ジオール、ヘキサン-2,3-ジオール、ヘキサン-3,4-ジオールなど)、ヘキサントリオール(例えば、ヘキサン-1,2,3-トリオール、ヘキサン-1,2,6-トリオール、ヘキサン-1,3,6-トリオールなど)が挙げられる。アルキレンジオール及びトリオールの例。
【0014】
「シクロアルキルジオール」又は「シクロアルカンジオール」は、異なる炭素に結合した2つのヒドロキシル基を有する3、4、5、又は6個の炭素のシクロアルカンを指す。「シクロアルキルトリオール」又は「シクロアルカントリオール」は、異なる炭素に結合した3つのヒドロキシル基を有する3、4、5、又は6個の炭素のシクロアルカンを指す。例としては、シクロプロパン-1,2-ジオール、シクロブタン-1,3-ジオール、シクロペンタンズ(cyclopentanes)-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオールなどが挙げられる。
【0015】
本明細書で使用される場合、「温度感受性溶媒」は、1つ以上の種(例えば、塩又は中性の非荷電化合物)を溶解又は部分的に溶解するために電気化学セルの電解質内で利用される溶媒であって、温度が上昇するにつれてますます不安定になり、分解、及び/又は電解質の性能に悪影響を及ぼす他の副反応を被る、溶媒、を指す。
【0016】
ポリ硫化ナトリウムなどのナトリウム塩からのナトリウム金属の電解製造における高いスループットを確実にするために、高いナトリウムイオン伝導性が、所望される。硫化ナトリウム及びポリ硫化物塩の特定の組み合わせで所望の伝導性を達成するために、選択されたアノライト、アノード、及びセラミック製イオン伝導膜の間の均衡をとる必要があり、これらは電気化学セルの一部である。本発明者らは、低分子量のジオール及びトリオール(例えば、約62Da~約200Da未満などの、400Da未満の分子量を有する)が、セルの最大ナトリウムイオン伝導性を維持しながら、硫化/ポリ硫化ナトリウムに対する良好な溶解性及び元素硫黄のより低い溶解性を提供することを見出した。しかしながら、そのようなセルの性能は、数日のうちに劣化して、セルを長期の商用利用には不適当なものにすることが見出された。
【0017】
ポリ硫化ナトリウム(Na2Sx)、及び/又はエチレングリコール(EG)などのジオール/トリオールの少なくとも以下の副反応が、特定されている。
1.EGが酸として作用し、Na2Sxが塩基として作用することによる、硫化水素ガスの生成。
2.Na2Sxによるグリコールからの酸素の抽出による、含酸素ナトリウム硫黄(sodium sulfur oxygenate)(チオ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなど)の形成。
3.Na2SxからのSによってEGからメチレン基が抽出されて、硫黄及びメチレン基の加硫又は逆加硫オリゴマーを形成すること。
4.アルカリ性溶媒中でのEGの電気化学的酸化によるカルボン酸ナトリウム(酢酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウムなど)の形成。
5.ジメチルジスルフィド、二硫化炭素、二酸化炭素などのガスの形成。
【0018】
観察結果1、2、及び3は、以下に示される以下の副反応と一致する。
Na2S.Sx+2(CH2OH-CH2OH)----->2H2S+Na2SO4+(CH2)2Sy
【0019】
観察結果4、及び5は、以下に示される以下の副反応と一致する。
Na2S.Sx+2(CH2OH-CH2OH)----->(COONa)2+(CH3)2Sx
【0020】
したがって、驚くべきことに、エチレングリコールの使用は、電解セルの面積比抵抗(ASR)の望ましくない増加をもたらし、数日のうちに電流を低下させることが、見出された。
【0021】
プロセス温度が125℃超からより低い温度に低下するにつれて、アノライト温度の関数としての熱分解及び電気分解試験は、急激な分解反応速度の低下及び左への平衡シフト(上記の分解反応における反応物を有利にする)を示した。実際、アノライト温度が110℃以下の場合、特にアノライト温度が100℃以下の場合、分解速度は、劇的に低下した。例えば、各々が、このスペクトルの高い端、すなわち、優れた伝導性及び電流密度のために好ましい温度における電解質分解を示す
図3~7を参照されたい。
【0022】
上記の反応は、120℃を超える温度、特に125℃を超える温度で、顕著になった。それにもかかわらず、そのような温度は、電気分解中に膜の高いナトリウムイオン伝導性を提供するために望ましいことを考慮すると、本技術は、高いナトリウムイオン伝導性を維持しながら、例えば、125℃~150℃の動作温度でのアノライト分解を最小限に抑える方法及びシステムを提供する。
【0023】
したがって、一態様では、本技術は、以下の工程:
第1の温度のアノライトを、電気化学フローセルのアノライトコンパートメントに導入する工程であって、
アノライトが、温度感受性溶媒に溶解したナトリウム塩の有効量を含み、
アノライトコンパートメントが、ナトリウム塩を含むアノードを備え、
電気化学フローセルが、
カソライトコンパートメントと、
アノライトコンパートメントをカソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜と
を更に備え、かつ
カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムカソードを備える、
導入する工程;
セラミック製ナトリウムイオン伝導膜を通してアノライトコンパートメントからカソライトコンパートメントまで、ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程;
溶融ナトリウムカソードにおいてナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程;及び
アノライトコンパートメントの外側のアノライトを第2の温度まで冷却する工程
を含む、方法であって、
第2の温度が、第1の温度で生じる速度の20%未満の速度で、温度感受性溶媒の分解を引き起こす、
方法を提供する。
【0024】
別の態様では、本技術は、以下の工程:
第2の温度のアノライトを、電気化学フローセルのアノライトコンパートメントに導入する工程であって、
アノライトが、温度感受性溶媒に溶解したナトリウム塩の有効量を含み、
アノライトコンパートメントが、ナトリウム塩を含むアノードを備え、
電気化学フローセルが、
カソライトコンパートメントと、
アノライトコンパートメントをカソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜と
を更に備え、かつ
カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムカソードを備える、
導入する工程;
セラミック製ナトリウムイオン伝導膜を通してアノライトコンパートメントからカソライトコンパートメントまで、ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程;及び
溶融ナトリウムカソードにおいてナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程
を含む、方法であって、
第2の温度が、第1の温度で生じるであろう速度の20%未満の速度で、温度感受性溶媒の分解を引き起こす、
方法を提供する。
【0025】
任意の実施形態では、ナトリウム塩としては、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化ナトリウムと1つ以上のポリ硫化ナトリウムとの混合物、ハロゲン化ナトリウム、ポリハロゲン化ナトリウム、又はハロゲン化ナトリウムと1つ以上のポリハロゲン化ナトリウムとの混合物が挙げられ得る。任意の実施形態では、ナトリウム塩としては、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化ナトリウムと1つ以上のポリ硫化ナトリウムとの混合物が挙げられ得る。任意の実施形態では、ポリ硫化物は、式Na2Sxを有し得、式中、xは、1~32の整数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲(例えば1~7又は1~5)である。しかしながら、いくつかの実施形態では、測定されたx値は、混合物中の硫黄の量を反映するであろうことが、当業者によって理解されるであろう。また、アノライト中のナトリウム塩は、アニオンを含むこと、及び方法は、アノードにおいてアニオンを酸化する工程も含むことが、理解されるであろう。例えば、アノライトが、硫化ナトリウム及び/又はポリ硫化ナトリウムを含む場合、方法は、硫化物及びポリ硫化物アニオンをより高いポリ硫化物及び/又は硫黄に酸化する工程を含み得、その結果、アノライトは硫黄を含み得る。本方法の任意の実施形態では、硫黄は、例えば、硫黄を固体及び/又は不混和性液体として相分離する工程、及びアノライトから硫黄を除去又はさもなければ回収する工程によって、アノライトから回収され得る。相分離及び回収は、硫黄の冷却及び沈殿若しくは結晶化、又は液体硫黄を冷却及び沈降させることなどの標準的な手段によって達成され得、したがって、硫黄は、アノライトの残りの部分から取り除かれ得る。
【0026】
本明細書の任意の実施形態では、アノライト中のナトリウムの量は、約1重量%~約10重量%の範囲、例えば、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約9重量%、約10重量%、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲であり得る。例えば、アノライト中のナトリウムの量は、約3重量%~約7重量%の範囲であり得る。
【0027】
本明細書の任意の実施形態では、本技術の温度感受性溶媒は、アルキルジオール、アルキルトリオール、シクロアルキルジオール、及び/又はシクロアルキルトリオールを含み得る。例えば、温度感受性溶媒は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、及びグリセロールからなる群から選択され得る。任意の実施形態では、温度感受性溶媒としては、ラクタム(例えば、N-メチル-2-ピロリドン、(NMP))、環状尿素(例えば、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、DMPU)、C1~6アルキルアミド(例えば、ホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド)、カーボネート(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル)、エーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジオキサン)、又は前述のいずれかと水との混合物が挙げられ得る。任意の実施形態では、温度感受性溶媒は、前述の溶媒(又は溶媒のクラス)のうちの2つ以上の混合物を含み得る。したがって、例えば、アノライトは、1:99~99:1、5:95~95:5、又はより典型的には、50:50~95:5、例えば、50:50、55:45、60:40、70:30、80:20、90:10、95:5、又は前述の比のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲の重量比で、2つの溶媒の混合物を含み得る。任意の実施形態では、その、任意の相容性のある温度感受性溶媒対が使用され得るが、例としては、エチレングリコール及びNMP、エチレングリコール及び水、テトラエチレングリコール及びジメチルエーテル、エチレングリコール及びグリセロールが挙げられる。
【0028】
本明細書の任意の実施形態では、アノライトは、任意で、ナトリウムイオン伝導性向上剤として、1つ以上のナトリウム塩を含む。これらのナトリウム塩が、ポリ硫化ナトリウムと共にアノライト中に存在することにより、電解フローセルの伝導性及び電流密度が増加する。本技術のナトリウムイオン伝導性向上剤は、本方法で使用される第1及び第2の温度の両方において、温度感受性溶媒中で使用される濃度で実質的に(好ましくは完全に)可溶性で、イオン化可能で、かつ熱的に安定であるように選択されるナトリウム塩を含む。ナトリウムイオン伝導性向上剤の非限定的な例としては、ハロゲン化ナトリウム(例えば、NaCl、NaBr、及びNaI)、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、含酸素ナトリウム硫黄(Na2SO4、Na2SO3、Na2S2O3)、水硫化ナトリウム(NaSH)、及びこれらの任意の2つ以上の混合物が挙げられる。任意の実施形態では、アノライトとしては、ハロゲン化ナトリウム、水酸化ナトリウム、又はそれらの任意の2つ以上の混合物が挙げられ得る。任意の実施形態では、0.01重量%~20重量%のナトリウム伝導性向上剤が、アノライト中に存在し得る。例えば、アノライトは、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、10重量%、12重量%、15重量%、16重量%、18重量%、及び20重量%のナトリウムイオン伝導性向上剤、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲のナトリウムイオン伝導性向上剤を含み得る。したがって、例えば、アノライトは、任意で、0.1重量%~20重量%、1重量%~18重量%、又は5重量%~15重量%のナトリウムイオン伝導性向上剤を含み得る。そのような向上剤を含むアノライトを用いて少なくとも10%~100%の伝導性の向上が、そのような向上剤が存在しない同じアノライトと比較して、得られ得る。いくつかの実施形態では、向上は、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも40%、少なくとも60%、少なくとも80%、少なくとも100%、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲である。
【0029】
本技術では、溶融ナトリウムカソードは、ナトリウムを含み、任意で、ナトリウム合金である。任意の実施形態では、溶融ナトリウムカソードのナトリウムは、少量の外来不純物を含有し得るが、依然として実質的に純粋(例えば、少なくとも99%のナトリウム、少なくとも99.5%のナトリウム、又は少なくとも99.9%のナトリウム)であり得る。好適なナトリウム合金は、主にナトリウム金属で構成されることが、当業者によって理解されるであろう。任意の実施形態では、ナトリウム合金は、少なくとも80重量%のナトリウム金属、例えば、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも96重量%、少なくとも97重量%、少なくとも98重量%、少なくとも99重量%、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲のナトリウム金属である。例えば、任意の実施形態では、ナトリウム合金は、80重量%~99重量%のナトリウム金属であり得る。アルカリ金属の合金としては、例えば、Si、Ge、Sn、Pb、Hg、Cs、Sb、Bi、Zn、Al、Ti、Co、Ni、Mn、及びCdのうちの1つ又は1つ以上との合金が挙げられ得る。任意の実施形態では、液体アルカリ金属は、Csを含むナトリウム合金であり得る。合金中の非ナトリウム金属の量は、重量で、例えば、全ナトリウム合金の1~20重量%を構成し得る。したがって、非ナトリウム金属は、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、8重量%、10重量%、15重量%、20重量%、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む量であり得る。
【0030】
本明細書の方法及びシステムの任意の実施形態では、アノードと電気的に接触するアノード集電体が、電気化学セルのアノライトコンパートメント内に配置される。任意のそのような実施形態では、アノード集電体は、ニッケル(例えば、フォーム又はメッシュ)、様々な炭素タイプ(例えば、カーボンフォーム、カーボンフェルト)、スチール、コバール、又はコバルトのうちの1つ以上であるか、又はそれらを含み得る。任意の実施形態では、アノード集電体は、ニッケルを含み得る。
【0031】
任意の実施形態では、電気化学フローセルは、カソード集電体を更に含み得る。カソード集電体は、ニッケル又は当該技術分野で既知の他の好適な材料を含み得る。
【0032】
任意の実施形態では、セラミック製ナトリウムイオン伝導膜は、ナトリウム超イオン伝導体、ナトリウムイオン伝導性ガーネット様セラミック、ナトリウムβ’’-アルミナ、又はナトリウム伝導性ガラスセラミックであり得る。例えば、負極活物質がナトリウムを含む場合、アルカリイオン伝導膜は、任意の好適なタイプのNaSICON膜、ナトリウムイオン伝導性ガーネット様セラミック、Na-β’’-アルミナ、又はナトリウムイオン伝導性ガラスセラミック膜を含み得る。NaSICON組成物としては、以下に限定されないが、Na3Zr2Si2PO12、Na1+xSixZr2P3-xO12(式中、x=1.6~2.4)、イットリウムドープNaSICON(例えば、Na1+x+yZr2-yYySixP3-xO12、Na1+xZr2-yYy、SixP3-xO12-y、式中、x=1.6~2.4、y=0~0.25)、Na1+xZr2Xy(PO4)3(式中、xは0~3であり、yは0~1.5であり、Xはドーパント(例えば、Fe、Al、Ti、Hf、Co、Ni、Nb)である)、及びFeドープNaSICON(Na3Zr2/3Fe4/3P3O12)が挙げられる。Na-β’’-アルミナ膜の非限定的な例は、Na(1.53-1.73)Li(0.28-0.32)Al(10.66-10.72)O17である。任意の実施形態では、ナトリウムイオン伝導性セラミック膜は、AxB2C3O12の一般式を有するナトリウムイオン伝導性ガーネット様セラミックであり得、式中、Aは、x=3~9を有するアルカリ金属イオンである(B=Te6+、Ta5+、Nb5+、Zr4+、C=La3+、Y3+、Nd3+)。Na伝導性セラミックガラスの非限定的な例としては、xNa2O.yP2O5などのリン酸ナトリウム、xNa2O.ySiO2などのケイ酸ナトリウム、xNa2O.yB2O3などのホウ酸ナトリウム、xNa2O.yAl2O3などのアルミン酸ナトリウム、及びそれらの任意の2つ以上の混合物が挙げられ、上記のいずれにおいても、x:yのモル比は、1:3~3:1、1:2~3:1、1:2~2:1、1:2~1:1、1:3~2:1、又は1:3~1:1の範囲であり得る。
【0033】
任意の実施形態では、セラミック製ナトリウムイオン伝導膜は、NaSiCON又はNa-β’’-アルミナ膜である。任意の実施形態では、セラミック製ナトリウムイオン伝導膜は、少なくとも10mScm-1又は少なくとも50mScm-1の伝導率、例えば、10mScm-1~100mScm-1の伝導率を有し得る。例えば、セラミック製ナトリウムイオン伝導膜は、10cm-1、20cm-1、30cm-1、40cm-1、50mScm-1、60mScm-1、70mScm-1、80mScm-1、90mScm-1、100mScm-1、又は前述の値のうちのいずれか2つの間の両端値を含む範囲の伝導率を有し得る。
【0034】
本明細書に開示されるように、本技術の二温度方法は、電解質として使用される、例えば、高いスループットを維持し、寿命を延ばすための電解フローセル中のアノライトとして使用される温度感受性溶媒の分解を低減又は回避する。本方法における温度制御は、いくつかの方法で実施され得る。任意の実施形態では、アノライトは、アノライトがアノライトコンパートメントに入る直前か、又は入るときに、第1の温度に加熱され得、かつアノライトコンパートメントを出た直後か、又はそのすぐ後に、第2の温度まで冷却され得る。任意の実施形態では、セラミック製ナトリウムイオン伝導膜は、又はセラミック製ナトリウムイオン伝導膜及びアノライトコンパートメントは、例えば、アノライトコンパートメントを取り囲む熱エンクロージャによってか、又はアノライトコンパートメント内の熱交換要素によって、第1の温度に加熱される。したがって、アノライトは、アノライトコンパートメントによって第1の温度に加熱され得るか、又は加熱されたアノライトコンパートメントに入る前に、全体又は一部が加熱され得る。
【0035】
任意の実施形態では、第1の温度は、約115℃~約150℃の範囲、例えば、約115℃、約120℃、約125℃、130℃、135℃、140℃、145℃、150℃、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲であり得る。したがって、任意の実施形態では、第1の温度は、約120℃~約150℃、又は約125℃~約150℃若しくは約145℃の範囲であり得る。
【0036】
任意の実施形態では、第2の温度は、約80℃~115℃未満の範囲、例えば、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約110℃、115℃未満、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲であり得る。したがって、任意の実施形態では、第2の温度は、約80℃又は約85℃から、約110℃の範囲であり得る。
【0037】
本明細書で提供されるガイダンスに鑑みると、所望の伝導性及びスループットを提供するために第1の温度を選択すること、及びアノライト中の温度感受性溶媒の分解を制限して、所望のスループットでの長い寿命を提供し、さらにアノライトの加熱/冷却のためのエネルギー消費を最小限に抑える第2の温度を選択することは、当業者の範囲内である。したがって、いくつかの実施形態では、第2の温度は、第1の温度で生じる速度の20%未満の速度で、温度感受性溶媒の分解を引き起こすように選択されるであろうが、分解を他の速度に制限するための第2の温度は、当業者によって容易に選択され得る。したがって、いくつかの実施形態では、第2の温度は、第1の温度で生じる分解速度の25%未満、20%未満、15%未満、10%未満、5%未満、4%未満、3%、2%、又は1%をもたらすように選択される。任意の実施形態における、その。
【0038】
したがって、任意の実施形態では、本明細書の方法は、以下の工程:
第1の温度のアノライトを、電気化学フローセルのアノライトコンパートメントに導入する工程であって、
アノライトコンパートメントが、ナトリウム塩を含むアノードを備え、
アノライトが、温度感受性溶媒に溶解したナトリウム塩の有効量を含み、
電気化学フローセルが、
カソライトコンパートメントと、
アノライトコンパートメントをカソライトコンパートメントから隔てるセラミック製ナトリウムイオン伝導膜と
を更に備え、かつ
カソライトコンパートメントが、溶融ナトリウムカソードを備える、
導入する工程;
ナトリウムイオン伝導膜を通してアノライトコンパートメントからカソライトコンパートメントまで、ナトリウム塩からのナトリウムイオンを通過させる工程;
溶融ナトリウムカソードにおいてナトリウムイオンをナトリウム金属に還元する工程;及び
アノライトコンパートメントの外側のアノライトを第2の温度まで冷却する工程
を含み、
セラミック製ナトリウムイオン伝導膜は、少なくとも50mScm-1の伝導率を有し、かつ
第2の温度は、第1の温度で生じる速度の20%未満の速度で、温度感受性溶媒の分解を引き起こし、
ナトリウム塩は、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、硫化ナトリウムと1つ以上のポリ硫化ナトリウムとの組み合わせ、ハロゲン化ナトリウム、ポリハロゲン化ナトリウム、及びハロゲン化ナトリウムと1つ以上のポリハロゲン化ナトリウムとの組み合わせからなる群から選択され、かつ
温度感受性溶媒は、アルキルジオール及び/又はシクロアルキルジオールを含む。
【0039】
いくつかのそのような実施形態では、ナトリウム塩は、硫化ナトリウム、ポリ硫化ナトリウム、又は硫化ナトリウムと1つ以上のポリ硫化ナトリウムとの組み合わせからなる群から選択される。
【0040】
本方法は、様々な電気化学セル構成を使用し得る。1つのそのようなセル構成の例示的実施形態が、
図1Aに概略的に示されている。セル100は、カソライトコンパートメント115内に配置された溶融ナトリウムカソード110(ナトリウム又はナトリウム合金であり得る)を含む。セルはまた、アノライトコンパートメント125内に配置されたアノード120(すなわち、ナトリウム塩)を含む。セラミック製ナトリウムイオン伝導膜130(例えば、NaSICON、Na-β’’-アルミナ、ナトリウムイオン伝導性ガーネット様セラミック、ナトリウム伝導性ガラスセラミックなど)が、カソライトコンパートメント及びアノライトコンパートメント、並びにそれらの内容物を分離する。膜130は、Oリング140A及び140Bでセルハウジングに固定され得る。セルは、それぞれカソード及びアノードと電気的に接触する、カソード及びアノード集電体150A及び150Bを含み得る。セル動作中、アノライトは、循環されてアノライトコンパートメント内に流入、及びアノライトコンパートメントから流出し得る。過剰な溶融ナトリウムがナトリウム金属再生中に流入し得る、カソライトコンパートメントに流体接続された任意の外部チャンバは、示されていない。本技術の電気化学セルは、ナトリウム、元素硫黄、温度感受性溶媒などの構成要素の濃度及び比率、酸化状態、オープンセル電圧などが監視、測定、及び維持されることを可能にするために、センサ、コントローラ、モニタ、レギュレータ、流量計、アクセスポート、及びアラート機構で構成され得ることが理解されよう。
【0041】
代替的に、
図1Bは、本技術の電解セルの別の例示的実施形態の概略断面図を示す。セルは、典型的には電気絶縁体であり、溶媒及び硫化ナトリウムに対して化学的に耐性であるハウジング310で構成される。この場合にはチューブの形態のセラミック製ナトリウムイオン伝導膜312が、カソライトコンパートメント314とアノライトコンパートメント316とを分ける。カソライトコンパートメント内には、カソード(溶融ナトリウム又はナトリウム合金)及びカソード集電体がある。カソード集電体324は、ハウジング310を貫通するように、又はDC電源(図示せず)の負極への接続がなされ得るようにハウジング310を貫通するリード325を有するように、構成され得る。アノライトコンパートメント316内には、アノード集電体326があり、アノード集電体326は、この場合、膜チューブ312を囲む円筒形態の多孔質メッシュ型電極として示されている。リード328は、DC電源の正極への接続がなされ得るように、ハウジングを貫通する。アノライト溶液は、アノライト入口330を通って流れる。アノライトは、本明細書に記載されるとおりであるアノード(すなわち、ナトリウム塩)を含む。アノライトが入口330を通って流入すると、アノライトはまた、出口332から流出する。場合によっては、溶融硫黄の第2の液相も、アノライトと共に出ることができる。アノライトコンパートメントからの任意の第2の出口が、アノライト出口332よりも低い位置に提供されてもよい。第2のより低い出口は、セル底部に沈降及び蓄積した溶融硫黄の除去のためによく使用され得る。カソード324と膜312との間の空間は、一般に、溶融アルカリ金属で満たされる。セルが動作すると、アルカリ金属イオンが、膜312を通過し、カソード324で還元されて、カソードコンパートメント314内にアルカリ金属を形成し、カソード出口334を通るアルカリ金属の流れをもたらす。
【0042】
セルは、複数のアノードと、アノード集電体と、カソードと、カソード集電体と、膜とを有し得る。セル内では、アノード/集電体は全て並列であり、カソード/集電体は全て並列であろう。
【0043】
図1Bを参照すると、電解セルハウジング310は、大半のポリマーなどの電気絶縁性材料であり得る。この材料はまた、好ましくは、溶媒に対して化学的に耐性である。ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、Kynar(登録商標)ポリフッ化ビニリデン、又は高密度ポリエチレン(HDPE)と同様に、特に好適である。セルハウジング310は、ハウジング310の内部がそのような絶縁性及び化学的耐性材料で裏打ちされていることを条件に、非絶縁性材料及び非化学的耐性材料から製造されてもよい。他の好適な材料は、アルミナ、シリカ、アルミノシリケート、及び他の絶縁耐火性又はセラミック材料などの無機材料であろう。
【0044】
セラミック製ナトリウムイオン伝導膜312は、好ましくは、ナトリウムに対してのみ実質的に透過性であり、アニオン、ポリアニオン、及び溶解硫黄に対して実質的に不透過性である。膜312は、アルカリ金属イオン伝導性材料から部分的に製造され得る。セルによって回収される金属がナトリウムである場合、デバイダ(divider)に有用な材料は、比較的高いイオン伝導性を有するNaSICONである。典型的なNaSICON組成物は、本明細書に開示されるようなものであり得る。膜312は、アノライトコンパートメント316及びカソライトコンパートメント314内の液体が、一方のコンパートメントから他方のコンパートメントへと通過することはできないが、実質的にはナトリウムイオンのみが、アノライトコンパートメント316からカソライトコンパートメント314へと通過することができるように、ごくわずかな貫通気孔率を有する厚みの一部分を有し得る。膜はまた、日本のOhara Glassによって製造された材料などのアルカリ金属(すなわち、ナトリウム)イオン伝導性ガラスセラミックによって部分的に構成されてもよい。
【0045】
アノード集電体326は、アノライトコンパートメント316内に位置する。アノード集電体326は、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、鉄合金、ニッケル合金、及び当該技術分野で既知の他のアノード材料などの導電性材料から製造され得る。アノード326は、直流電源の正端子に接続される。アノード326は、メッシュ、フォーム、モノリシック構造であり得るか、又はアノライト(ナトリウム塩アノードを含む)がアノード構造を通過することを可能にする特徴を有するモノリシックであり得る。アノライト溶液は、入口330を通してアノライトコンパートメント内に供給され、このコンパートメントを通り抜けて、出口332から外に出ていく。電解セル300は、アノライトコンパートメントが供給され、同じ通路を通して部分的に排出される半連続様式でも動作させることができる。
【0046】
電子伝導性カソード集電体324は、ストリップ、バンド、ロッド、又はメッシュの形態であり得る。カソード集電体324は、ニッケル、鋼、鉄、銅、又は黒鉛などの大半の電子導体から構成され得る。カソード集電体の一部分は、カソライトコンパートメント314内に、一部分は、電気的接触のために、カソライトコンパートメント314及びセルハウジング310の外側に、配置され得る。代替的に、リード325が、電気的接触のために、セルハウジング310の外側のカソード集電体から延在し得る。カソライトコンパートメント314内には、溶融ナトリウムの槽がある。
【0047】
電解セル300の動作の非限定的な一例が、以下に記載され、アノライト溶液が、アノライトコンパートメント316に供給される。電極集電体324、326は、アノード集電体326とカソード集電体324との間に、組成物に応じて約1.8Vと約2.5Vとの間の範囲であるNa2Sxの解離電圧よりも大きい電位が存在するように、電圧源に接続される。例えば、解離電圧は、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、若しくは2.5V、又は前述の値のうちの任意の2つの間の両端値を含む範囲であり得る。同時に、ナトリウムイオンが、膜312を通ってカソライトコンパートメント314内に入り、ナトリウムイオンが、カソライトコンパートメント314内で、カソード集電体324を通して供給される電子で金属状態に還元され、硫化物及びポリ硫化物が、アノード集電体326において酸化され、その結果、より低いポリスルフィドアニオンが、より高いポリスルフィドアニオン及び/又は元素硫黄形態になる。硫黄が形成される一方で、硫黄は、アノライト溶媒に全体又は一部が溶解される。硫黄飽和時又は冷却時に、硫黄は、その第2の液相を形成し得、電解セルのアノライトコンパートメント316の底部に沈降する。硫黄は、アノライト溶液と共に除去されて、セルの外側の容器内に沈降し得るか、又は示されるように、任意の硫黄出口338を介して沈降ゾーン336から直接除去され得る。代替的に、セル300は、他の方法でアノードから硫黄を除去する電気化学システムの一部であり得、硫黄出口338は存在しない。
【0048】
本技術のセルは、直列に配列され得る。すなわち、1つの電解セルのアノライトが、第2のセルに流入し得、各連続するセルにおいて、硫化物に対するナトリウムの比が、ポリ硫化物形態がより高次になるにつれて低下する。そのような実施形態が、
図1Cに示されている。
【0049】
本明細書に開示される方法は、様々なタイプの電気化学システムで実施され得る。例示的な実施形態としてのみ
図8に示されるプロセスフロー図(PFD)は、本技術の二温度アノライトプロセスを実施するための1つの可能なシステム200を示す。硫化ナトリウム、ナトリウム重金属塩、及び他のナトリウム含有塩を含む、脱硫プロセスからの固体205が、温度感受性アノライト溶媒、例えば、以下に限定されないが、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどの本明細書に記載のアルキルジオールを収容するアノライトタンク210に添加される。アノライト212は、流体ドライバ215(例えば、ポンプ)を介して、アノライトタンク210からスプリッタ220にポンプ圧送され、次いで、スプリッタ220で一部分225が、アノライトフィルタ230に導かれ、アノライトフィルタ230が、任意の未溶解の固体を濾過する。次いで、濾過されたアノライト232が、熱交換器235に導かれ、熱交換器235で、濾過されたアノライト232が、本明細書に記載されるように、120℃を超える温度、例えば、約125℃~約150℃の温度に加熱される。加熱流体は、適切な温度を維持するために、熱交換器内に(236A)、及び熱交換器から外に(236B)導かれる。加熱されたアノライト234は、電気化学セル又は一連のセル240のアノライトコンパートメント(例えば、
図1A~1Cを参照)に導かれ、アノライトコンパートメントで、ナトリウム金属245が、ナトリウム塩から再生されて、セルから取り出される。電気化学セルを出ると、使用済みアノライト242が、第2の熱交換器250内で、本明細書に記載の110℃未満の温度、例えば、約80~約100℃まで冷却される。いくらかの溶解した元素硫黄を含み得る冷却されたアノライト255は、アノライトタンク210に再循環される。
【0050】
スプリッタ220において、アノライトタンクを出たアノライトの一部260が、結晶化器265に送られ、結晶化器265で、アノライトは、循環して結晶化器内に(266A)、及び結晶化器から外に(266B)流れる冷却流体によって、約15℃~80℃の温度まで冷却される。例えば、15℃~60℃、30℃~80℃、又は40℃~80℃を含む、この範囲の他の好適な温度が、使用されてもよい。硫黄277が、結晶としてなどで、沈殿し、次いで、アノライト270が硫黄フィルタ275を通過するときに、結晶が、濾過される。システム及びプロセスのこの部分の温度が低いと、アノライト中の硫黄の溶解度が低下して、硫黄(S8)の沈殿/結晶化をもたらすだけでなく、Na2Sxを不安定化して、S8の形成及び沈殿/結晶化を促進する。次いで、脱硫されたアノライト280が、再循環されて、アノライトタンク210に戻される。アノライト260から溶解硫黄を除去する他の方法、例えば、重量法(例えば、遠心分離)が用いられ得ることが、当業者によって理解されるであろう。代替的に、元素硫黄が液体として除去され得るように、より低い硫黄溶解度を有する異なるアノライト溶媒システムが、硫黄の融点を上回る温度で使用され得る。アノライトと不混和性の非極性溶媒を用いる抽出などの更に他の硫黄除去技術が、使用され得る。任意の好適な硫黄除去技術を使用するように本システム及びプロセスを修正すること、及び、例えば、追加の流体ドライバ(例えば、ポンプ)、フィルタ、熱交換器などを必要に応じて含むなどの他の軽微な変更を行うこと、並びにそのような構成要素を手元のニーズに応えるように配列することは、当業者の範囲内である。
【実施例】
【0051】
材料
エチレングリコールをUnivarから得た。
【0052】
実施例1- ポリ硫化ナトリウムからナトリウム金属を製造するための、NaSICONセラミック膜を有する電気化学セル
開示された方法で使用するために、ハイブリッド電気化学フローセルを構築した。フローセルは、アノライトコンパートメントと、カソライトコンパートメントと、アノライトコンパートメントとカソライトコンパートメントとを隔てる4.5mm厚のNaSICONセラミック膜とを有する。アノライトコンパートメントは、内部に配置されたニッケルアノード集電体、並びにアノライト入口及びアノライト出口を含む。カソライトコンパートメントは、溶融ナトリウムカソードと、ニッケルカソード集電体とを含む。電源(Ametek Sorensen XHR Series Programmable、7.5V、130A)を各コンパートメント内の集電体に電気的に接続した。セルの動作中、Na
2Sと硫黄とを溶解させたエチレングリコールを含むアノライトが、入口を通してアノライトコンパートメントに流入した。アノライトは、セルに入る直前に(例えば、
図8に示す熱交換器内で)115℃(又は125℃)~150℃の温度に加熱されて、この温度でアノライトコンパートメント内に入った。硫化物/ポリ硫化物は、部分的に又は完全に酸化されて、より高いポリ硫化物及び元素硫黄を形成し、より高いポリ硫化物及び元素硫黄が、少なくとも部分的にアノライトのエチレングリコールに溶解する。酸化された硫化物/ポリ硫化物からのナトリウムイオンが、NaSICON膜を横切って、溶融ナトリウムカソード及びニッケル集電体が配置されているカソライトコンパートメントに輸送される。ナトリウムイオンは、カソードでナトリウム金属に還元され、余分なナトリウムが、カソライトコンパートメントの出口を通って流れる。より高いポリ硫化物及び元素硫黄を含有する「使用済み」アノライトは、アノライト出口を通ってコンパートメントから流出する。アノライトの一部分が、結晶化器に送られ、結晶化器で更に冷却されて、元素硫黄を沈殿/結晶化させ、沈殿/結晶化した元素硫黄が、アノライトから濾過されて、次いで、アノライトが、貯蔵タンクに戻される。使用済みアノライトの一部分は、貯蔵タンクに戻され、そこで追加の硫化/ポリ硫化ナトリウムがアノライトに溶解され、次いでアノライトが、電気化学セルに再び循環されて、より多くのナトリウム、より高いポリ硫化物、及び元素硫黄を生成する。
図9は、低温(110℃)、二温度(100℃及び125℃)、及び125℃で動作させる本技術の二温度システム内のこのセルについて、経時的な、57mA/cm
2を達成するために必要な印加電圧を示す。
図10は、125℃~150℃のセル入口温度に対する印加電圧及び電流密度を示す。高温(>125℃)に350時間超曝露した後、セル性能が、57mA/cm
2及び3.08Vのベースライン条件に戻り、二温度システムが、温度範囲全体にわたってアノライト分解を防止することを実証した。
【0053】
実施例2- 使用済みアノライトのXRD分析
実施例1の電気化学セルを、約130℃のアノライト温度で動作させた。使用済みアノライトを回収し、エチレングリコールを真空蒸留し、残りの固形物を乾燥させて、X線粉末回折(XRD)によって調べた。含酸素ナトリウム硫黄(チオ硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムなど)は、Na2Sxによるグリコール中の酸素の抽出によるものと同定した。更に、カルボン酸ナトリウム(酢酸ナトリウム、グリコール酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウムなど)は、アルカリ性溶媒中のEGの電気化学的酸化によるものであることが同定された。
【0054】
実施例3- Na
2S
5を含有するアノライトに対する温度の影響
モデルアノライト溶媒エチレングリコール中にモデルポリ硫化物Na
2S
5を含むアノライトに対する温度の影響を、Bruker Tensor 37を使用してFT-IRによって調べた。Na
2S
5は、Na
2SとS
8との1:4モル比の混合物をEG中に、混合物が溶解してNa
2S
5を公称上提供するまで混合することによって、調製された。
図3は、EG中に溶解され、110℃、125℃、及び150℃で195時間インキュベートされた7重量%ナトリウムでのNa
2S
5のFT-IRスペクトルを、ベースライン(すなわち、熱インキュベーションなしで調製された)と比較して示す。データは、110℃のデータではピーク高さのわずかなシフトを示すが、125℃及び150℃では、新しい化合物の形成を示す新しいピークの出現を含む大きなシフトを示す。
【0055】
図4及び
図5には、1725cm
-1及び3250cm
-1の波数でのFT-IRスペクトルにおける、ベースラインに対するピーク高さの(すなわち、正規化した)変化が、プロットされている。約1725cm
-1における吸収バンドは、副生成物である2-ヒドロキシエチルアセテートに関連付けられ、3250cm
-1における吸収バンドは、EGに関連付けられる。データは、インキュベーションの最初の65時間の間、アノライトが、110℃、125℃、及び150℃の3つの試験温度で同様に影響を受けることを示す。しかしながら、更なるインキュベーションは、110℃では更なる劣化を示さなかったが、更なる劣化が、125℃及び150℃で観察された。具体的には、温度の上昇に伴う1725cm
-1での吸収の増加は、2-ヒドロキシエチルアセテートを生成する副反応の増加を示す。温度上昇に伴う3250cm
-1での吸収の減少は、EGが、おそらく2-ヒドロキシエチルアセテートなどの副生成物に変換されるため、温度上昇に伴うEGの消失を示す。
図6は、3重量%及び7重量%のナトリウム含有量を有する2つのグループのアノライトについて、3つの温度における195時間後のベースライン量に対するパーセンテージとしての質量損失を示す。データは、125℃及び150℃と比較した、110℃における最小質量損失を示す。
【0056】
別の試験では、5重量%ナトリウムで、EG中のNa
2S
5アノライトが調製され、80℃~150℃の様々な温度でインキュベートされた。結果が、質量損失%対インキュベーション時間のプロットとして、
図7に示されている。データは、7%及び3%Naのサンプルと同様の傾向を示し、110℃以下のサンプルは、ごくわずかな重量損失を示す。
【0057】
低温(110℃)、二温度(100℃及び125℃)、及び125℃(
図9に示されるように)で動作させた(実施例1の)セルからのアノライトが、FT-IRによって分析された。3つのサンプルの結果が、それぞれ1580cm
-1及び1725cm
-1における正規化したピーク高さとして
図11及び
図12に示されており、アノライト中の分解生成物の存在を実証している。データは、125℃の一定温度(温度スイング試験なし)において、110℃及び二温度試験と比較して、はるかにより大きな劣化を示したことを示す。
【0058】
実施例4- ポリ硫化ナトリウムからナトリウム金属を製造するための、β’’-アルミナセラミック膜を有する電気化学セル
アノライトコンパートメントとカソライトコンパートメントとを隔てるために、NaSICONセラミック膜と同じ厚さのβ’’-アルミナセラミック膜を使用して、実施例1のようなハイブリッド電気化学フローセルを構築する。β’’-アルミナ膜のより低い伝導性のために、セルは、実施例1のNaSICONを使用する対応するセルの電流密度の約3分の1で動作する。
【0059】
代替的に、アノライトコンパートメントとカソライトコンパートメントとを隔てるために、NaSICONセラミック膜の約4分の1~2分の1の厚さを有するβ’’-アルミナ膜を使用して、実施例1のようなハイブリッド電気化学フローセルを構築する。この電気化学フローセルの電流密度は、実施例1のNaSICONを使用する対応するセルの電流密度と同程度であると予想される。
【0060】
実施例5-ポリ硫化ナトリウムからナトリウム金属を製造するための、NaSICONセラミック膜と温度感受性溶媒の混合物とを有する電気化学セル
アノライト中、異なる温度感受性溶媒を使用して、実施例1のようにハイブリッド電気化学フローセルを構築する。このセルでは、エチレングリコール及びNMPの80:20w/w混合物が、温度感受性溶媒として使用される。セルは、実施例1と同様の条件下で動作させる。エチレングリコールにNMPを添加することにより、アノライトのナトリウムイオン伝導性が高まることが予想される。
【0061】
均等物
特定の実施形態が例示され記載されているが、当業者は、前述の明細書を読んだ後、本明細書に記載されるような本方法、電解セル、電解質、電極、システム、動作条件に対して変更、均等物の置換、及び他の種類の変更を実施することができる。上述の各態様及び実施形態は、他の態様及び実施形態のいずれか又は全てに関して開示されるような変形又は態様を含むか、又はそれに組み込むこともできる。
【0062】
また、本技術は、本明細書に記載される特定の態様に関して限定されるべきではなく、これらは、本技術の個々の態様の単一の例示として意図される。本技術の多くの修正及び変形は、当業者には明らかであるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書に列挙されるものに加えて、本技術の範囲内の機能的に等価な方法が、前述の説明から当業者に明らかであろう。そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内であることが意図される。本技術は、特定の方法、溶媒、電解質試薬、化合物、組成物、セル、及び条件に限定されず、これらは勿論、変動し得ることを理解されたい。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書において別段示されない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施され得る。本明細書で使用される用語は、単に特定の態様を記載する目的のためであり、限定することを意図するものでないことも理解されたい。したがって、本明細書は、例示的なものとしてのみ考慮され、本技術の幅、範囲、及び精神は、添付の特許請求の範囲、その中の定義、及びそれらの任意の均等物によってのみ示されることが意図される。本明細書中のいかなる言語も、不可欠なものとして、任意の特許請求されていない要素を示すものと解釈されるべきではない。
【0063】
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つ又は複数の要素、1つ又は複数の制限の不存在下で、好適に実施され得る。したがって、例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing)」などは、拡張的にかつ制限なく読まれるものとする。更に、本明細書で使用される用語及び表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用においては、示され説明される特徴又はその一部分の任意の均等物を除外する意図はないが、特許請求される技術の範囲内で様々な修正が可能であることが認識される。更に、「から本質的になる」という語句は、具体的に列挙された要素、及び特許請求される技術の基本的かつ新規の特性(例えば、特許請求される実施形態の伝導性又は電流密度)に実質的に影響を与えない追加の要素を含むと理解されるであろう。「からなる」という語句は、指定されていない任意の要素を除外する。更に、特定の要素又は実施形態に関する説明における前述の用語のいずれかの使用は、他の用語のいずれかの使用も企図する。例えば、1つの要素又は実施形態に関して「含む」の使用はまた、同じ要素又は実施形態に関して「から本質的になる」又は「からなる」の使用を開示し、逆の場合も同様であることが理解されるであろう。
【0064】
更に、本開示の特徴又は態様がマーカッシュグループに関して記載される場合、当業者は、本開示が、それによりマーカッシュグループの任意の個々のメンバー、又はメンバーのサブグループに関しても記載されていることを認識するであろう。包括的開示に属するより狭い種及び亜属集団の各々もまた、本技術の一部を形成する。これには、除かれた材料が本明細書で具体的に列挙されているか否かにかかわらず、属から任意の主題事項を除去するただし書き又は否定的な限定を伴う本技術の包括的な記述が含まれる。
【0065】
当業者によって理解されるように、任意の及び全ての目的のために、特に、書面による説明を提供する観点から、本明細書に開示される全ての範囲は、任意の及び全ての可能なそのサブ範囲、並びにサブ範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分解されることを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、真ん中3分の1、及び上3分の1などに容易に分解され得る。また、当業者によって理解され得るように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」などの全ての言語は、列挙された数を含み、かつ上述のように、サブ範囲に分解され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含み、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0066】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、発行された特許、及び他の文書(例えば、雑誌、論文、及び/又は教科書)は、各個々の刊行物、特許出願、発行された特許、又は他の文書が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。参照により組み込まれるテキストに含まれる定義は、それらが本開示の定義と矛盾する範囲で除外される。
【0067】
他の実施形態は、添付の特許請求の範囲において、そのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に、規定される。