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特許7566035ステント送達システムおよびステント送達システム用の操作デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ステント送達システムおよびステント送達システム用の操作デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20241004BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022557979
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2021055640
(87)【国際公開番号】W WO2021190902
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】20165753.3
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508240177
【氏名又は名称】ビー.ブラウン メルズンゲン アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B.BRAUN MELSUNGEN AG
【住所又は居所原語表記】Carl-Braun-Str. 1, 34212 Melsungen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン マーフィー
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/093017(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/104143(WO,A1)
【文献】特開2013-154220(JP,A)
【文献】特開2017-064520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61F 2/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジングに回転可能に装着されるサムホイールと、前記サムホイールと一緒に回転する巻取りスプールと、を有する、操作デバイスと、
近位端が前記ハウジング上に固定されている内側シャフトと、前記内側シャフトに対して同軸に配置されている外側シースと、前記内側シャフトと前記外側シースとの間で半径方向に受け入れられる少なくとも1つのステントと、を有する、カテーテル装置と、
一端で前記外側シースの近位端上に係合し、他端で前記巻取りスプール上に巻取り可能に保持される可撓性引張部材と、を備え、
前記少なくとも1つのステントの解放のために、前記巻取りスプールに前記可撓性引張部材を巻き取ることによって、前記外側シースが前記内側シャフトに対して近位方向に変位可能である、ステント送達システムにおいて、
ロック機構が設けられ、前記サムホイールに動作可能に接続されており、前記ロック機構は、前記サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角に達すると、前記サムホイールの回転運動、およびそれによる前記外側シースの近位変位性のロック状態を提供し、
アンロック機構が設けられ、前記ロック機構に動作可能に接続されており、前記アンロック機構を用いることによって、前記ロック状態が解放可能であり、
前記ロック機構は、前記サムホイールによって駆動され、回転可能に装着された駆動ギヤと、前記駆動ギヤによって駆動され、回転可能に装着された受動ギヤと、前記サムホイールの前記少なくとも1つの規定された回転角に達すると、前記受動ギヤが当接することによって前記ロック状態を生み出す、移動可能に装着されたロック部材と、を含み、前記ロック部材は、前記ロック状態を元に戻すために前記アンロック機構によって、前記受動ギヤに対して変位可能である、ステント送達システム。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記少なくとも1つのステントを解放した後に前記ロック状態が提供されるように構成され、前記少なくとも1つの規定された回転角は、前記少なくとも1つのステントを解放した後に前記ロック状態が提供されるようにするために必要な前記外側シースの近位変位の関数として規定される、請求項1に記載のステント送達システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの規定された回転角は、360°である、請求項1または2に記載のステント送達システム。
【請求項4】
複数のステントは、前記内側シャフトと前記外側シースとの間で半径方向に受け入れられ、互いに近位方向に離隔され、前記ロック機構は、前記ステントのそれぞれを解放した後、ロック状態が提供されるように構成され、それぞれの前記ステントを解放するのに必要な前記外側シースの近位変位の関数として規定され、それぞれの規定された回転角に達すると、前記ロック状態が提供される、請求項1から3のいずれか一項に記載のステント送達システム。
【請求項5】
前記規定された回転角のうちの1つは、前記規定された回転角のうちの他の1つに対して整数倍である、請求項4に記載のステント送達システム。
【請求項6】
前記ロック機構は、前記ロック部材にばね力を負荷して、前記アンロック機構による前記ロック部材の変位に対抗する、第1のばね要素を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のステント送達システム。
【請求項7】
前記駆動ギヤは、前記サムホイールと一体的に設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載のステント送達システム。
【請求項8】
前記駆動ギヤおよび前記受動ギヤは、ジェネバ駆動ギヤ機構を形成する、請求項1から7のいずれか一項に記載のステント送達システム。
【請求項9】
前記受動ギヤは、その外周から半径方向上向きに突出する当接部分を有し、前記当接部分は、前記少なくとも1つの規定された回転角に達すると、前記ロック部材の被当接部分に当接する、請求項1から8のいずれか一項に記載のステント送達システム。
【請求項10】
前記ロック部材は、枢動可能なロックレバーである、請求項1から9のいずれか一項に記載のステント送達システム。
【請求項11】
前記アンロック機構は、手動作動のために設けられたアクチュエータ部と、前記ロック機構と協働するコントローラ部と、を有する、移動可能に装着されたアンロック部材を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のステント送達システム。
【請求項12】
前記アンロック機構は、前記アンロック部材にばね力を負荷して、前記アクチュエータ部を作動させることによる前記アンロック部材の変位に対抗する、第2のばね要素を含む、請求項11に記載のステント送達システム。
【請求項13】
前記アンロック部材は、枢動可能なアンロックレバーである、請求項11または12に記載のステント送達システム。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載のステント送達システム用の操作デバイスであって、ハウジングと、前記ハウジング内に回転可能に装着されるサムホイールと、前記サムホイールと一緒に回転する巻取りスプールと、を有し、ロック機構が設けられるとともに前記サムホイールに動作可能に接続されており、前記ロック機構は、前記サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角に達すると、前記サムホイールの回転運動をロック状態にし、アンロック機構が設けられるとともに前記ロック機構に動作可能に接続されており、前記アンロック機構を用いることによって、前記ロック状態を元に戻すことが可能であり、
前記ロック機構は、前記サムホイールによって駆動され、回転可能に装着された駆動ギヤと、前記駆動ギヤによって駆動され、回転可能に装着された受動ギヤと、前記サムホイールの前記少なくとも1つの規定された回転角に達すると、前記受動ギヤが当接することによって前記ロック状態を生み出す、移動可能に装着されたロック部材と、を含み、前記ロック部材は、前記ロック状態を元に戻すために前記アンロック機構によって、前記受動ギヤに対して変位可能である、操作デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステント送達システム、およびステント送達システム用の操作デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮的に送達される血管内人工器官(intravascular endoprostheses)を様々な身体脈管の疾患の治療に用いることはよく知られている。このような血管内人工器官は、一般に「ステント」と呼ばれる。ステントは、可撓性フレームワークを画定する穴またはスロットを有する生体適合性材料の概して縦長の管状デバイスであり、この可撓性フレームワークは、バルーン・カテーテル等によって、あるいは身体脈管内での材料の形状記憶特性による自己拡張によって、ステントの半径方向拡張を可能にする。この可撓性フレームワークは、ステントを小さな外径に圧縮することを可能にするように構成されており、その結果として、ステントをステント送達システムの内側に装着することができる。
【0003】
ステント送達システムは、ステントを身体脈管内部の所望の位置に搬送し、その後、ステントを定位置で解放するために使用される。解放されると、ステントは、より大きな外径に自己拡張することができる。
【0004】
国際公開2019/053508号は、操作デバイスおよびカテーテル装置を有するステント送達システムを開示している。カテーテル装置は、内側シャフト、内側シャフトと同軸に配置された外側シース、および内側シャフトと外側シースとの間で半径方向に受け入れられるステントを備える。カテーテル装置の内側シャフトは、操作デバイスのハウジングに固定された近位端を有する。ステント送達システムは、一端で外側シースの近位端に係合し、他端で操作デバイスの巻取りスプールに保持される、可撓性引張部材をさらに備える。巻取りスプールは、操作デバイスのハウジング内に回転可能に取り付けられたサムホイール(thumbwheel)に動作可能に接続されている。ステントを解放するために、サムホイールを手動で回転させ、それによって巻取りスプールを回転させる。これにより、巻取りスプールに係合している可撓性引張部材が、巻取りスプールに巻き取られて、その結果、外側シースが内側シャフトに対して近位方向に変位する。この外側シースの近位への引込みにより、ステントが解放され、血管内で拡張することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少なくとも1つのステントの解放中における簡略化された安全な操作を可能にする、ステント送達システムを提供することである。本発明のさらなる目的は、そのようなステント送達システムのための操作デバイスを提供することであり、この操作デバイスは、少なくとも1つのステントの解放中における簡略化された安全な操作を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、ステント送達システムであって、ハウジングと、ハウジングに回転可能に装着されるサムホイールと、サムホイールと一緒に回転する巻取りスプールと、を有する操作デバイスと、近位端がハウジング上に固定されている内側シャフトと、内側シャフトに対して同軸に配置されている外側シースと、内側シャフトと外側シースとの間で半径方向に受け入れられる少なくとも1つのステントと、を有するカテーテル装置と、一端で外側シースの近位端上に係合し、他端で巻取りスプール上に巻取り可能に保持される可撓性引張部材と、を備え、少なくとも1つのステントの解放のために、巻取りスプールに可撓性引張部材を巻き取ることによって、外側シースが内側シャフトに対して近位方向に変位可能であるステント送達システムにおいて、ロック機構が設けられ、サムホイールに動作可能に接続されており、ロック機構は、サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角に達すると、サムホイールの回転運動、およびそれによる外側シースの近位変位性のロック状態を提供し、アンロック機構が設けられ、ロック機構に動作可能に接続されており、アンロック機構を用いることによって、ロック状態が解放可能である、ステント送達システムが提供される。本発明による解決策によって、少なくとも1つのステントの解放中における、近位方向への外側シースの意図しない過度の変位が抑制される。その目的のため、ロック機構が設けられる。同時に、本発明による解決策は、外側シースが、ロック状態から始まって、必要に応じて近位方向にさらに変位可能であることを許容保する。このため、アンロック機構が設けられる。近位方向への外側シースのそのようなさらなる変位は、様々な理由で、望ましい、ならびに/あるいは、要求される可能性がある。好ましくは、ロック機構は、サムホイールのその回転方向に排他的に作用し、それによって外側シースの近位変位が提供される。ロック機構は、好ましくは、サムホイールに直接作用する。サムホイールの回転運動のロックは、フォーム・フィットおよび/または圧力嵌め方式であってもよい。好ましくは、ロック機構は、完全に操作デバイスのハウジングの内側に配置される。サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角は、ロック機構がロックする角度であり、好ましくは、カテーテル装置の少なくとも1つの幾何学的性質に対応している。カテーテル装置の幾何学的性質は、特に、カテーテル装置の異なる構成要素および/またはセクションの間の軸方向距離、そのような構成要素および/またはセクションの軸方向長さ寸法などであってもよい。例えば、少なくとも1つの規定された回転角は、少なくとも1つのステントの長さに、あるいはカテーテル装置の異なる構成要素および/またはセクションまでの少なくとも1つのステントの距離に対応させることができる。結果として、例えば、外側シースをステントの長さにわたって近位方向に変位させる場合に、サムホイールの回転運動をロックすることができる。その後、アンロック機構を用いてロックを元に戻すことが、換言すれば、ロック解除することができる。アンロック機構は、好ましくは、手動作動のために構成される。このような場合、アンロック機構は、好ましくは、手動作動のために設けられたセクションを除いて、完全にハウジングの内側に配置される。
【0007】
一実施形態では、ロック機構は、少なくとも1つのステントを解放した後にロック状態が提供されるように構成され、少なくとも1つの回転角は、その目的のために必要な外側シースの近位変位の関数として規定される。したがって、サムホイールの回転運動性、およびしたがって外側シースの近位変位性は、少なくとも1つのステントが解放された時点でロックされる。ロックがもたらされるサムホイールの少なくとも1つの回転角は、相応に規定され、すなわち構造的特徴によって決定される。
【0008】
一実施形態では、少なくとも1つの規定された回転角は、360°である。本発明のこの実施形態では、ロックは、サムホイールが完全に1回転した後に提供される。この完全な回転は、サムホイールが変位されない送達状態から始まって、ならびに/あるいはサムホイールのロック状態から始まって行うことができる。ロック機構がさらに、少なくとも1つのステントを解放した後にロックが提供されるように構成された場合、特に、サムホイールの回転運動と外側シースの変位運動との間の伝達比、少なくとも1つのステントの長さ、および/またはカテーテル装置におけるステントの軸方向位置決めは、その目的のためにロック機構の構造において考慮される。
【0009】
一実施形態では、複数のステントは、内側シャフトと外側シースとの間で半径方向に受け入れられ、互いに近位方向に離隔され、ロック機構は、ステントのそれぞれを解放した後、ロック状態が提供されるように構成され、それぞれのステントを解放するのに必要な外側シースの近位変位の関数として規定される、それぞれの規定された回転角に達すると、ロック状態が提供される。本発明のこの実施形態では、ステント送達システムは、いわゆるマルチステント送達システムとして構成される。その点で、カテーテル装置は、互いに軸方向に離隔され、内側シャフトと外側シースとの間で半径方向にそれぞれ配置された、複数のステントを含む。ロック機構は、ロックが繰り返し、すなわちステントのそれぞれが解放された後に提供されるように構成され、それぞれの場合、対応するロック解除は、次のステントを解放する前にアンロック機構を用いて行われる。本発明のこの実施形態により、ステントのうち1つの望ましくない解放が引き起こされる程度の、近位方向への外側シースの意図しない変位が防止される。したがって、ロック機構は、サムホイールの単一の規定された回転角だけでなく、異なる(絶対)回転角でロックする。
【0010】
一実施形態では、規定された回転角は、整数倍である。このため、規定された回転角は、絶対回転角として理解されるべきである。換言すれば、ロック機構は、本発明のこの実施形態では、サムホイールの1回の同じ相対回転後にロックが繰り返しもたらされるように構成される。例えば、これは、サムホイールの4分の1回転、半回転、4分の3回転、および完全な1回転などの後に引き起こされる。好ましくは、ロック機構は、それぞれの場合において、サムホイールの完全な1回転後に、ロックが繰り返しもたらされるように構成される。
【0011】
一実施形態では、ロック機構は、サムホイールによって駆動される、回転可能に装着された駆動ギヤと、駆動ギヤによって駆動される、回転可能に装着された受動ギヤと、サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角に達すると、受動ギヤが当接することによってロック状態を生み出す、移動可能に装着されたロック部材と、を含み、ロック部材は、ロック状態を元に戻すためにアンロック機構によって、受動ギヤに対して変位可能である。これにより、ロック機構の特に単純で堅牢な構造を達成することができる。駆動ギヤは、好ましくはトルク伝達方式で、サムホイールに接続される。好ましくは、駆動ギヤは、サムホイールと同軸に配向され、サムホイールおよび駆動ギヤは、共通の回転軸を中心にして回転可能である。受動ギヤは、駆動ギヤによって、したがって間接的にサムホイールによって駆動される。サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角に達すると、受動ギヤは、特に半径方向、接線方向、および/または軸方向において、ロック部材に当接するようになり、それによってロックが得られる。ロック部材は、ロックを元に戻すため、即ちロックを解除するため、受動ギヤに対して変位可能である。その目的のため、ロック部材は、線形、回転、および/または枢動方式で移動可能であるように装着することができる。
【0012】
一実施形態では、ロック機構は、ロック部材にばね力を負荷して、アンロック機構によるロック部材の変位に対抗する第1のばね要素を含む。これを用いて、単純で特に有効な方式で、意図しないロック解除に対抗することができる。
【0013】
一実施形態では、駆動ギヤは、サムホイールと一体的に設けられる。これにより、ロック機構の特に単純な構造が可能になる。つまり、駆動ギヤをサムホイールと1個部品で設計することにより、構成部品の必要数を低減することができる。
【0014】
一実施形態では、駆動ギヤおよび受動ギヤは、ジェネバ駆動ギヤ機構(Geneva drive gear mechanism)を形成する。したがって、駆動ギヤおよび受動ギヤは、ジェネバ駆動ギヤ機構の形態のステッピングギヤまたはインデックスギヤを形成する。そのようなジェネバ駆動ギヤ機構の構造的設計および機能の原理は、いずれの場合も、ドライブエンジニアリング分野の当業者には公知である。簡略化のために、それに関するさらなる詳細については本明細書で論じない。
【0015】
一実施形態では、受動ギヤは、その外周から半径方向上向きに突出する当接部分を有し、その当接部分は、少なくとも1つの規定された回転角に達すると、ロック部材上の被当接(counter-abutment)部分に当接する。本発明のこの実施形態では、したがって、ロックは、当接部分が被当接部分に当接することによって達成される。当接部分は、受動ギヤの外周の突出部である。サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角に達すると、当接部分および被当接部分は、フォーム・フィット方式で相互作用する。それにより、駆動ギヤと協働する受動ギヤの、また最終的にはサムホイールのさらなる回転運動が防止される。
【0016】
一実施形態では、ロック部材は、枢動可能なロックレバーである。それにより、ロック機構のさらに単純な構造を達成することができる。ロックレバーは、アンロック機構を用いて異なる位置の間で枢動可能である。
【0017】
一実施形態では、アンロック機構は、手動作動のために設けられたアクチュエータ部と、ロック機構と協働するコントローラ部と、を有する、移動可能に装着されたアンロック部材を含む。アンロック部材は、線形、回転、および/または枢動方式で移動可能であるように装着することができる。アンロック部材は、好ましくは、その目的のために設けられたハウジングのセクションに装着される。アクチュエータ部を除いて、アンロック部材は、好ましくは、完全にハウジング内に配置される。アクチュエータ部の作動によって、アンロック部材は、ロック機構を異なる位置の間でロックを解除するために移動可能である。本明細書では、コントローラ部は、ロック機構と、好ましくはロック部材と協働する。
【0018】
一実施形態では、アンロック機構は、アンロック部材にばね力を負荷して、アクチュエータ部を作動させることによるアンロック部材の変位に対抗する第2のばね要素を含む。それにより、アンロック部材の意図しない作動、したがって、ロック機構の意図しないロック解除が抑制される。さらに、第2のばね要素は、アンロック部材が、ロック解除作動後にばね力によって支持されるその初期位置に戻るように、アンロック部材の有利な復帰をもたらす。
【0019】
一実施形態では、アンロック部材は、枢動可能なアンロックレバーである。それにより、アンロック機構の特に単純な構造が達成される。アクチュエータ部は、アンロックレバーの一端に配置することができる。コントローラ部は、アンロックレバーの他端に配置することができる。ロック部材が枢動可能なロックレバーとして構成される場合、アンロックレバーは、好ましくは、その反対方向に枢動可能であるように装着される。それにより、ロックレバーとアンロックレバーとの間で、特に有利なてこ比を達成することができる。
【0020】
第2の態様によれば、ステント送達システム用の操作デバイスであって、ハウジングと、ハウジング内に回転可能に装着されるサムホイールと、サムホイールと一緒に回転する巻取りスプールと、を有し、ロック機構が設けられるとともにサムホイールに動作可能に接続されており、ロック機構は、サムホイールの少なくとも1つの規定された回転角に達すると、サムホイールの回転運動をロック状態にし、アンロック機構が設けられるとともにロック機構に動作可能に接続されており、アンロック機構を用いることによって、ロック状態を元に戻すことが可能である、操作デバイスが提供される。繰返しを回避するため、第1の態様およびその実施形態の説明を照会し、明示的に参照する。本開示においてステント送達システムおよび操作デバイスに関して本開示の範囲内で与えられる説明は、第2の態様による操作デバイスに対応して適用される。
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。以下の図面全体を通して、同一の要素には同一の符号が付されている。図面は以下を概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による操作デバイスの一実施形態と、複数のステントを備えたカテーテル装置とを含む、本発明によるステント送達システムの一実施形態のアイソメトリック図であって、カテーテル装置は部分断面図で示されている。
図2】操作デバイスの領域における、図1に示すステント送達システムの別のアイソメトリック図である。
図3図2に対応する視野における、図1および図2に示すステント送達システムの図であって、操作デバイスの個々の構成要素および/またはセクションが図面において隠されている。
図4】操作デバイスの領域における別のアイソメトリック図であって、操作デバイスのハウジングのハウジング半体が図面において隠されており、視線方向はロック機構およびアンロック機構上である。
図5】ロック/アンロック機構の領域におけるアイソメトリック分解図である。
図6】ロック/アンロック機構の領域における別のアイソメトリック分解図である。
図7】ロック/アンロック機構の領域における別のアイソメトリック分解図である。
図8図4の図面において隠れているハウジング半体のアイソメトリック図であって、視線方向はハウジング内部側である。
図9】ハウジング内部側の拡大詳細図である。
図10】軸方向視で見たロック状態のロック機構の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1によれば、ステント送達システム1は、操作デバイス2およびカテーテル装置3を備える。ステント送達システム1は、血管における狭窄症の治療に使用することを意図している。
【0024】
操作デバイス2は、サムホイール5がハウジング4内に回転可能に装着されたハウジング4と、サムホイール5と一緒に回転する巻取りスプール6と、を有する(図3)。カテーテル装置3は、内側シャフト7と、内側シャフト7と同軸に配置された外側シース9と、を有する。内側シャフト7の近位端8は、一般によく知られている方式でハウジング4上に少なくとも間接的に固定される。さらに、カテーテル装置3は、少なくとも1つのステント10を含み、このステントは、図面にはさらなる詳細は示されていないカテーテル装置の状態において、内側シャフト7と外側シース9との間で半径方向に受け入れられる。さらに、ステント送達システム1は、一端で外側シース9の近位端12上に係合し、他端で巻取りスプール6上に巻取り可能に保持される可撓性引張部材11を含む。図3を参照すると、可撓性引張部材11は、概略的に示されているのみであり、破線で図示されている。少なくとも1つのステント10を解放するために、外側シース9は、巻取りスプール6に可撓性引張部材11を巻き取ることによって、内側シャフト7に対して近位方向に変位可能である。解放は、図面にはさらなる詳細は示されていない、外側シース9の変位位置から開始され、外側シース9の遠位端13は、内側シャフト7の遠位端14と本質的に同一平面である。この状態では、少なくとも1つのステント10は、内側シャフト7の外部シェル表面と外側シース9の内部シェル表面との間で半径方向に圧縮されている。上述の外側シース9の近位方向への引込みに続いて、少なくとも1つのステント10は解放され、それによって半径方向に拡張することができる。図1を参照すると、少なくとも1つのステント10の、対応する解放され拡張された状態が示されている。
【0025】
特に図4を参照して示されるように、ステント送達システム1は、サムホイール5に動作可能に接続しているロック機構15と、ロック機構15に動作可能に接続しているアンロック機構16と、を含む。ロック機構15は、サムホイール5の少なくとも1つの規定された回転角αに達すると、サムホイール5の回転運動、それにより外側シース9の近位変位のロック状態を提供する。アンロック機構16を用いて、上述のロックは元に戻される。
【0026】
ロック機構15によって、サムホイール5を作動させたときの外側シース9の近位方向の意図されないさらなる変位が抑制される。その目的のため、サムホイール5および外側シース9の運動性は、さらに詳細に後述する方式で、ロック機構15を使用してロックされる。アンロック機構16は、ロックを解除することが意図され、それにより、完全なロックの後、サムホイール5のさらなる作動、およびしたがって外側シース9のさらなる変位を行うことができる。
【0027】
操作デバイス2およびカテーテル装置3の具体的な構成を論じる前に、最初に、ロック機構15およびアンロック機構16のさらなる特徴を詳細に説明する。
【0028】
図示された実施形態では、ロック機構15は、少なくとも1つのステント10を解放した後にサムホイール5のロック状態がもたらされるように構成される。したがって、構造によって規定される回転角αは、それぞれロック機構15がアクティブであってサムホイール5がロックされる角度であり、少なくとも1つのステント10を解放するために必要な外側シース9の近位変位に一致する。
【0029】
少なくとも1つのステント10の解放は、外側シース9の変位位置P1から始まって行われ、その位置では、外側シース9の遠位端13は、内側シャフト7の遠位端14と本質的に同一平面である(図1)。この第1の変位位置P1から始まって、外側シース9は、内側シャフト7に対して、近位方向に引き込まれた第2の変位位置P2に移動する。これは、サムホイール5の上述した作動、およびそれに付随する巻取りスプール6への可撓性引張部材11の巻取りによって引き起こされる。第2の変位位置P2では、外側シース9の遠位端13は、ステント10の近位端17をわずかに超えて近位方向に変位される(図1)。この場合、ロック機構15は、そこで規定された回転角αに達するように構成され、したがって、遠位端13が第2の変位位置P2に達すると、ロック状態が提供される。これは、サムホイール5を規定された回転角αを超えて回転するように作動させ得ることを、それにより、第2の変位位置P2を超える近位方向に、外側シース9を遠位端13を超えて変位させ得ることを防止するものである。
【0030】
図示された実施形態では、ロック機構15は、規定された回転角αが360°であるようにさらに構成される。換言すれば、サムホイール5は、完全な1回転に達するとロックされる。そのために必要なロック機構15の構造的設計は、特に、第1の変位位置P1と第2の変位位置P2との間の軸方向距離A1、およびサムホイール5の回転運動と巻取りスプール6の変位運動との間の伝達比を考慮する。
【0031】
図1を参照してさらに明らかなように、図示された実施形態のカテーテル装置3は、複数のステント10、10’、10’’を含む。その文脈において、第1のステント10と呼ばれることもあるステント10に加えて、第2のステント10’および第3のステント10’’が設けられる。第2のステント10’および第3のステント10’’は、第1のステント10に対応する方式で、内側シャフト7と外側シース9との間で半径方向に受け入れられ、外側シース9の近位変位を用いて解放可能であり、図1を参照すると、ステント10’、10’’の解放され拡張された状態が図面に示されている。第2のステント10’は、第1のステント10から近位方向に離間される。第3のステント10’’は、第2のステント10’から近位方向に離間される。
【0032】
図示された実施形態では、ロック機構15はさらに、ステント10、10’、10’’をそれぞれ解放した後、ロック状態がもたらされるように構成され、それぞれの規定された回転角、つまり回転角α、およびさらに回転角β、γ(図3)に達した後に、ロック状態に達する。さらなる回転角β、γは、回転角αに対応するように、それぞれのステント10’、10’’を解放するのに必要な外側シース9の近位変位に対応する。したがって、ロック機構15は、第2の変位位置P2に達したときだけではなく、第3の変位位置P3および第4の変位位置P4(図1)に達したときにも、ロックをもたらすために有効である。第3の変位位置P3では、外側シースの遠位端13は、第2のステント10’の近位端と第3のステント10’’の遠位端との間で軸方向に位置する。第4の変位位置P4では、外側シースの遠位端13は、第3のステント10’’の近位端をわずかに超えて近位方向に変位される。第3の変位位置P3は、さらなる規定された回転角βに対応する。第4の変位位置P4は、さらなる規定された回転角γに対応する。したがって、さらなる回転角β、γは、回転角αに対応するように、特に、さらなる軸方向距離A2、A3の関数として規定される。さらなる軸方向距離A2は、第2の変位位置P2と第3の変位位置P3との間に延びる。さらなる軸方向距離A3は、第3の変位位置P3と第4の変位位置P4との間に延びる。
【0033】
図示された実施形態では、さらなる回転角β、γは回転角αの整数倍である。したがって、ロック機構15は、それぞれの場合で、サムホイール5の完全な1回転後にロックを提供する。それにより、外側シース9が、第1のステント10を解放した後、意図せずに近位方向に、したがって第2の変位位置P2を超えて変位することが防止される。この移動は、第2のステント10’の意図されない解放につながる場合があるため、代わりに、ロック機構15は、第2の変位位置P2に達するとロックを提供する。外側シース9がさらに変位して、第2のステント10’を解放するためには、最初に、アンロック機構16を用いて、ロック解除ステップを行わなければならない。同じことが、第2のステント10’の解放後に適用される。すなわち、第3の変位位置P3に達すると、ロック機構15は、新たなロック状態を提供する。このロック状態は、アンロック機構16を使用して、第3のステント10’を解放する前に元に戻さなければならない。
【0034】
図示された実施形態において提供されるロック機構15およびアンロック機構16の構成について、特に図5図6図7、および図10を参照して、さらに詳細に以下で説明する。
【0035】
図示された実施形態では、ロック機構15は、回転可能に装着された駆動ギヤ18と、回転可能に装着された受動ギヤ19と、および移動可能に装着されたロック部材20と、を含む。
【0036】
駆動ギヤ18は、サムホイール5によって回転するように駆動される。そのため、図示された実施形態では、駆動ギヤ18は、サムホイール5と一体的に設けられ、したがって、同軸の回転軸Dを中心にして移動可能であるようにハウジング4に装着される。同様に、巻取りスプール6は、サムホイール5と同軸であり、すなわち駆動ギヤ18と同軸に配置され、したがって、回転軸Dを中心にして同様に回転可能である。上述の回転角α、β、γは回転軸Dを参照する(図3)。
【0037】
受動ギヤ19は、駆動ギヤ18によって駆動される。そのために必要な駆動ギヤ18と受動ギヤ19との間の動作可能な接続は、一般に、駆動ギヤ18から受動ギヤ19への回転運動の連続的または間欠的な伝達をもたらすことができ、この場合は、間欠的な伝達がもたらされ、それについてさらに詳細に後述する。受動ギヤ19は、第1の回転軸D1とも呼ぶことができる回転軸D1を中心にして回転可能であるように、ハウジング4上に装着される。この目的のため、ハウジング4、より正確にはハウジング4の左側ハウジング半体4aは、受動ギヤ19の軸受ボア21と協働する、第1の軸受ジャーナルZ1を有する。第1の回転軸D1は、駆動ギヤ18の回転軸Dに対して平行にオフセットされて配向される。さらに、この場合は、右側ハウジング半体4bが設けられる。2つのハウジング半体4a、4bは互いに接合され、それによってハウジング4を形成する。
【0038】
ロック部材20および受動ギヤ19は、回転角α、β、γに達すると、フォーム・フィット方式で協働し、それによって、さらに詳細に後述する形でロック状態を形成する。その点で、ロック部材20は、受動ギヤ19がフォーム・フィット方式でロック部材20と協働するロック状態から始まって、ロック状態を元に戻すために、アンロック機構16を用いて受動ギヤ19に対して変位可能である。この場合、ロック部材20は、第2の回転軸D2とも呼ぶことができる、回転軸D2を中心にして枢動可能であるように、左側ハウジング半体4a上に装着される。したがって、左側ハウジング半体4aは、ロック部材20の軸受ボア22と協働する、第2の軸受ジャーナルZ2(図9)を有する。
【0039】
図示された実施形態では、ロック部材20は、第2の回転軸D2を中心にして枢動可能なロックレバーVである。ロックレバーVは、第2の回転軸D2とは反対に面する、したがって軸受ボア22とは反対に面する、前端領域に位置する被当接部分23を有し、ロック状態にあるそのレバーは、受動ギヤ19の当接部分24と協働する(図10)。当接部分24は、受動ギヤ19の外周Uから半径方向上向きに突出する。このように、当接部分24は、ラグと呼ぶこともできる半径方向突出を提供する。
【0040】
さらに、ロック機構15は、第1のばね要素25を含む。第1のばね要素25は、ばね力をロック部材20に加えて、アンロック機構16による変位を抑制する。換言すれば、ロックレバーVは、図10の平面に対して、第2の回転軸D2を中心にして時計方向に、第1のばね要素25によって予張力が付与される。
【0041】
図示された実施形態では、第1のばね要素25は、ロック部材20と一体的に設けられる。第1のばね要素25は、一種の板ばねとして設計され、支持の目的で設けられた左側ハウジング半体4aの支持部分26(図9)に弾性的に支持される。
【0042】
駆動ギヤ18および受動ギヤ19は、ジェネバ駆動ギヤ機構18、19を形成し、図示された実施形態では、それにより、サムホイール5から受動ギヤ19への回転運動の上述した間欠的な伝達が得られる。ジェネバ駆動ギヤ機構18、19は、ステッピングギヤまたはインデックスギヤと呼ぶこともでき、ドライブエンジニアリング分野の当業者にとっては公知の関数原理を有する。したがって、駆動ギヤ18は、複数の結合ピン181、182、183、184を備える。受動ギヤ19は、複数の結合溝191、192、193、194を含み、それらは、駆動ギヤ18と受動ギヤ19との間で回転運動を伝達するため、結合ピン181~184のそれぞれ1つと係合し、協働して摺動運動し、その後に係合解除する。この場合、4つの結合ピン181~184および4つの結合溝191~194が設けられる。これらの部品は、それぞれの場合において、駆動ギヤ18の回転軸Dおよび受動ギヤ19の第1の回転軸D1をそれぞれ中心にして、互いに対して90°オフセットされて配置される。しかしながら、そのような構成は必須ではない。したがって、より多数もしくは少数の結合ピンおよび/または結合溝を設けることができる。
【0043】
アンロック機構16は、移動可能に装着されたアンロック部材27を含む。図示された実施形態では、アンロック部材27は、左側ハウジング半体4a上の第3の回転軸D3を中心にして枢動可能であるように装着された、枢動可能なアンロックレバーEである。左側ハウジング半体4aは、その目的のため、アンロックレバーEの軸受ボア22’と協働する、第3の軸受ジャーナルZ3を有する。第3の回転軸D3は、第2の回転軸D2、第1の回転軸D1、およびサムホイール5の回転軸Dに対して平行に配向される。アンロックレバーEは、手動作動のために設けられたアクチュエータ部28を含み、ハウジング4の使用可能状態(図1)では、さらに詳細には記載しない、ハウジング4の凹部から横方向に突出している。アクチュエータ部28は、人間工学的操作のためのゴム要素29を備え、このゴム要素は中間片30に取り付けられる。中間片30は、アンロックレバーEのコネクタ部分31とフォーム・フィット方式で固定される。しかしながら、そのような構成は必須ではない。したがって、図示されない一実施形態では、ゴム要素29も中間片30も設けられない。
【0044】
さらに、アンロックレバーEは、その目的でロック機構15をロック解除するために設けられたロックレバーVのセクションと協働する、コントローラ部32を含む。コントローラ部32は、第3の回転軸D3から反対に面するアンロックレバーEの前端領域に配置され、ロック解除のためにロックレバーVの上面Oと協働する。
【0045】
さらに、アンロック機構16は、アンロックレバーEにばね力を加えて、アクチュエータ部分28を作動させることによるアンロックレバーEの変位を抑制する、第2のばね要素33を含む。第2のばね要素33は、図示された実施形態では、アンロックレバーEと一体的に設けられ、一種の板ばねとして設計されている。使用可能な状態では、第2のばね要素33は、その目的で設けられる左側ハウジング半体4aの支持部分34(図9)上で支持される。
【0046】
ロック機構15およびアンロック機構16の機能のさらなるモードは、特に図10を参照して以下に説明する。図示されているのは、回転軸Dを中心にしたサムホイール5の回転運動、したがって外側シース9の近位変位がロックされている、ロック状態である。ロック状態は、この場合、(最初に)第1の変位位置P1(図1)にあると仮定される。上記ロック状態では、受動ギヤ19の当接部分24およびロックレバーVの被当接部分23は、フォーム・フィット方式で協働し、それによってロック状態を形成する。上記フォーム・フィットの特徴の結果として、第1の回転軸D1を中心にした受動ギヤ19の、図10の平面に対していずれの場合も反時計方向である、さらなる回転が阻止される。したがって、駆動ギヤ18のさらなる時計回転も、また回転軸Dを中心にしたサムホイール5のさらなる時計回転も阻止される。これは、ロックレバーVによってもたらされる当接の結果として、結合ピン183と結合溝191との間のそれ以上の相対運動が不可能であるという事実によるものである。したがって、サムホイール5のさらなる回転作動の前に、アンロック機構16を用いて最初にロック解除を行う必要がある。
【0047】
その目的のため、アンロックレバーEのアクチュエータ部28は、手動で作動する。図1の製図面を参照すると、したがって、アクチュエータ部28は、斜め上方から近位方向に押される。それによって、第3の回転軸D3を中心にしたアンロックレバーEの枢動移動が提供される。この枢動移動は、図10の平面に対して時計方向に向けられる。そのようにして、アンロックレバーEのコントローラ部32が、ロックレバーVの上面O上に当接するようになる。後者はそれにより、第2の回転軸D2を中心にして反時計方向に変位され、それによって被当接部分23が、当接部分24に対して半径方向に変位され、そこから係合解除される。アクチュエータ部28の作動は維持され、サムホイール5は、図10の製図面に対して、回転軸Dを中心にして時計方向に変位される。当接部分24がそれによって、被当接部分23を超えて移動すると、アクチュエータ部28の作動が解放され得る。結果として、アンロックレバーEおよびロックレバーVの両方が、ばね力によってそれらの初期位置に復帰する。
【0048】
サムホイール5のさらなる回転作動の間、第3の結合ピン183は、摺動運動で第1の結合溝191と協働し、回転軸Dに対して同心で配向された円経路上を移動する。受動ギヤ19は、それによって、第1の回転軸D1を中心にして反時計方向に駆動される。第3の結合ピン183が第1の結合溝191から係合解除され、サムホイール5が回転軸Dを中心にしてさらに変位されると、第2の結合ピン182が、結合溝191~194のさらなる1つの上に係合する。それにより、受動ギヤ19が変位され、第1の回転軸D1を中心にして90°ごとに係合される。サムホイール5が完全に1回転した後、またしたがって規定された回転角αに達すると、当接部分24は、被当接部分23に再び当接するようになり、それによって新たなロック状態に達する。この場合、外側シース9の第2の変位位置P2に達すると、上記ロック状態に達する。その後、新たなロック解除を行うことができる。第2のステント10を解放するため、新たなロックが行われるまで、回転軸Dを中心にしたさらなる完全な1回転分、サムホイール5を変位させることができる。これは、第3の変位位置P3に達すると、したがって規定された回転角βに達すると引き起こされる。その後、第3のステント10’’を解放するために、第4の変位位置P4に達するまで、したがって規定された回転角γに達すると、新たなロック解除およびさらなる完全な1回転分のサムホイール5の新たな回転作動を行うことができる。
【0049】
さらに、図示された実施形態では、操作デバイス2は、サムホイール5の回転作動を反時計方向で対抗するラチェット機構を含む。ラチェット機構は、ラチェット面Rを含み、ラチェット面は、いわゆるステータホイールS上に設けられ、詳細には記載しない、サムホイール5上に配置された複数のラチェット要素と協働する。ラチェット機構もステータホイールSも本発明の観点では必須ではないため、簡略化のために、それに対するさらなる説明は省略する。
【0050】
さらに、図示された実施形態では、操作デバイスは、サムホイール5と内側シャフト7の近位端8との間でカテーテル装置3の軸方向に配置された、方向転換/張力デバイスTを含む。方向転換/張力デバイスTは、可撓性引張部材11(図3)を方向転換すること、および張力付与することを目的としている。しかしながら、方向転換/張力デバイスTは必須ではない。したがって、簡略化のために、そのさらに詳細な説明は省略する。
本明細書に開示の技術の特徴を列挙する。
(項目1)
ハウジング(4)と、前記ハウジング(4)に回転可能に装着されるサムホイール(5)と、前記サムホイール(5)と一緒に回転する巻取りスプール(6)と、を有する、操作デバイス(2)と、
近位端(8)が前記ハウジング(4)上に固定されている内側シャフト(7)と、前記内側シャフト(7)に対して同軸に配置されている外側シース(9)と、前記内側シャフト(7)と前記外側シース(9)との間で半径方向に受け入れられる少なくとも1つのステント(10)と、を有する、カテーテル装置(3)と、
一端で前記外側シース(9)の近位端(12)上に係合し、他端で前記巻取りスプール(6)上に巻取り可能に保持される可撓性引張部材(11)と、を備え、
前記少なくとも1つのステント(10)の解放のために、前記巻取りスプール(6)に前記可撓性引張部材(11)を巻き取ることによって、前記外側シース(9)が前記内側シャフト(7)に対して近位方向に変位可能である、ステント送達システム(1)において、
ロック機構(15)が設けられ、前記サムホイール(5)に動作可能に接続されており、前記ロック機構(15)は、前記サムホイール(5)の少なくとも1つの規定された回転角(α)に達すると、前記サムホイール(5)の回転運動、およびそれによる前記外側シース(9)の近位変位性のロック状態を提供し、
アンロック機構(16)が設けられ、前記ロック機構(15)に動作可能に接続されており、前記アンロック機構(16)を用いることによって、前記ロック状態が
をが解放可能であり、
前記ロック機構(15)は、前記サムホイール(5)によって駆動され、回転可能に装着された駆動ギヤ(18)と、前記駆動ギヤ(18)によって駆動され、回転可能に装着された受動ギヤ(19)と、前記サムホイール(5)の前記少なくとも1つの規定された回転角(α)に達すると、前記受動ギヤ(19)が当接することによって前記ロック状態を生み出す、移動可能に装着されたロック部材(20)と、を含み、前記ロック部材(20)は、前記ロック状態を元に戻すために前記アンロック機構(16)によって、前記受動ギヤ(19)に対して変位可能である、ステント送達システム(1)。
(項目2)
前記ロック機構(15)は、前記少なくとも1つのステント(10)を解放した後に前記ロック状態が提供されるように構成され、前記少なくとも1つの回転角(α)は、その目的のために必要な前記外側シース(9)の近位変位の関数として規定される、項目1に記載のステント送達システム(1)。
(項目3)
前記少なくとも1つの規定された回転角(α)は、360°である、項目1または2に記載のステント送達システム(1)。
(項目4)
複数のステント(10、10’、10’’)は、前記内側シャフト(7)と前記外側シース(9)との間で半径方向に受け入れられ、互いに近位方向に離隔され、前記ロック機構(15)は、前記ステント(10、10’、10’’)のそれぞれを解放した後、ロック状態が提供されるように構成され、それぞれの前記ステント(10、10’、10’’)を解放するのに必要な前記外側シース(9)の近位変位の関数として規定され、それぞれの規定された回転角(α、β、γ)に達すると、前記ロック状態が提供される、項目1から3のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)。
(項目5)
前記規定された回転角(α、β、γ)は、整数倍である、項目4に記載のステント送達システム(1)。
(項目6)
前記ロック機構(15)は、前記ロック部材(20)にばね力を負荷して、前記アンロック機構(16)による前記ロック部材(20)の変位に対抗する、第1のばね要素(25)を含む、項目1から5のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)。
(項目7)
前記駆動ギヤ(18)は、前記サムホイール(5)と一体的に設けられる、項目1から6のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)。
(項目8)
前記駆動ギヤ(18)および前記受動ギヤ(19)は、ジェネバ駆動ギヤ機構を形成する、項目1から7のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)。
(項目9)
前記受動ギヤ(19)は、その外周(U)から半径方向上向きに突出する当接部分(24)を有し、前記当接部分(24)は、前記少なくとも1つの規定された回転角(α)に達すると、前記ロック部材(20)の被当接部分(23)に当接する、項目1から8のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)。
(項目10)
前記ロック部材(20)は、枢動可能なロックレバー(V)である、項目1から9のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)。
(項目11)
前記アンロック機構(16)は、手動作動のために設けられたアクチュエータ部(28)と、前記ロック機構(15)と協働するコントローラ部(32)と、を有する、移動可能に装着されたアンロック部材(27)を含む、項目1から10のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)。
(項目12)
前記アンロック機構(16)は、前記アンロック部材(27)にばね力を負荷して、前記アクチュエータ部分(28)を作動させることによる前記アンロック部材(27)の変位に対抗する、第2のばね要素(33)を含む、項目11に記載のステント送達システム(1)。
(項目13)
前記アンロック部材(27)は、枢動可能なアンロックレバー(E)である、項目11または12に記載のステント送達システム(1)。
(項目14)
項目1から13のいずれか一項に記載のステント送達システム(1)用の操作デバイス(2)であって、ハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に回転可能に装着されるサムホイール(5)と、前記サムホイール(5)と一緒に回転する巻取りスプール(6)と、を有し、ロック機構(15)が設けられるとともに前記サムホイール(5)に動作可能に接続されており、前記ロック機構(15)は、前記サムホイール(5)の少なくとも1つの規定された回転角(α)に達すると、前記サムホイール(5)の回転運動をロック状態にし、アンロック機構(16)が設けられるとともに前記ロック機構(15)に動作可能に接続されており、前記アンロック機構(16)を用いることによって、前記ロック状態を元に戻すことが可能である、操作デバイス(2)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10