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特許7566038ロードホイールアクチュエータのパワー制限のハンドリングを有するステアバイワイヤーステアリングシステム
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  • 特許-ロードホイールアクチュエータのパワー制限のハンドリングを有するステアバイワイヤーステアリングシステム 図1
  • 特許-ロードホイールアクチュエータのパワー制限のハンドリングを有するステアバイワイヤーステアリングシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ロードホイールアクチュエータのパワー制限のハンドリングを有するステアバイワイヤーステアリングシステム
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B62D6/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022563370
(86)(22)【出願日】2020-04-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 EP2020061023
(87)【国際公開番号】W WO2021213621
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-10-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500024274
【氏名又は名称】ティッセンクルップ・プレスタ・アクチエンゲゼルシヤフト
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 芳信
(72)【発明者】
【氏名】判治 宗嗣
(72)【発明者】
【氏名】宮川 隼人
(72)【発明者】
【氏名】パーストル, レヴェンテ
(72)【発明者】
【氏名】カカス, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】デメテル, クリスティアーン
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-230471(JP,A)
【文献】特開2016-060220(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0084614(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018101181(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 - 6/10
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路車両のためのステアバイワイヤーステアリングシステム(1)であって、ステアリング手段(3)、ロードホイール(4)を作動するためのロードホイールアクチュエータ(5)、及び実際の位置又は想定される位置及び位置要求に基づいてロードホイールアクチュエータ(5)のためのモータートルク要求を計算する制御ユニット(10)を含み、位置要求が、ステアリング手段(3)の位置に基づいているステアバイワイヤーステアリングシステム(1)を制御するための方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
- ロードホイールアクチュエータ(5)のパワー制限状況を検出するために、ロードホイールアクチュエータ(5)が一定の許容度を持って位置要求に従っているかどうかが、監視され、ロードホイールアクチュエータ(5)が一定の許容度を持って位置要求に従うことができない場合に、ロードホイールアクチュエータ(5)のパワー制限状況を検出すること;
- パワー制限内でロードホイールアクチュエータ(5)が位置要求に従うことができるように位置要求を修正すること;及び
- 修正された位置要求を使用して、ロードホイールアクチュエータ(5)のためのモータートルク要求を計算すること。
【請求項2】
ロードホイールアクチュエータのパワー制限状況を検出するために、ロードホイールアクチュエータの電気モーターの実際のパワー状態が、予め規定されたパワー特性と比較されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
予め規定されたパワー特性が、上方のパワー制限又はトルク制限カーブであることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
位置要求の修正が、レートリミッターでのロードホイール角度変化のスピードの制限に基づくことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
位置が、ラックの位置又はロードホイール角度であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステアリング手段(3)、ロードホイール(4)を作動するためのロードホイールアクチュエータ(5)、及び実際の位置又は想定される位置及び位置要求に基づいてロードホイールアクチュエータ(5)のためのモータートルク要求を計算する制御ユニット(10)を含む道路車両のためのステアバイワイヤーステアリングシステム(1)であって、位置要求が、ステアリング手段(3)の位置に基づいており、制御ユニット(10)が、請求項1~のいずれかに記載の方法を実施するように設計されていることを特徴とするステアバイワイヤーステアリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提文に記載の道路車両のステアバイワイヤーステアリングシステムを制御する方法、及び請求項8の前提文に記載の道路車両のためのステアバイワイヤーステアリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ステアバイワイヤーステアリングシステムでは、ハンドルとステアリングラックと操舵可能なホイールの間に機械的接続が全くなく、ステアリングの動きは、位置制御されたロードホイールアクチュエータによって達成され、その基準位置は、ハンドル角度に基づく。
【0003】
位置コントローラは、常に、ロードホイールアクチュエータが基準位置信号に従うようにモータートルクに作用する。ロードホイールアクチュエータモーターの物理的制限(例えばあるモータースピードでの最大利用可能なモータートルク)、及び位置コントローラ(帯域)の制限のため、基準ロードホイール角度は、過渡応答を示す。
【0004】
高度に動的な操作の場合には、過渡応答は、後ステアリング効果を起こしうる。例えば、極めて速いステップステア操作がハンドルで実施される場合、ロードホイールは、ハンドル側の操作が既に終わっていても一瞬の間、回転するだろう。これは、運転者によって感じられ、かつ聞かされ、極めて不安である。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の目的は、後ステアリング効果を減少する、道路車両のステアバイワイヤーステアリングシステムを制御する方法、及びステアバイワイヤーステアリングシステム自体を提供することである。
【0006】
この目的は、請求項1の特徴を有する自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムを制御する方法、及び請求項8の特徴を有する自動車のためのステアバイワイヤーステアリングシステムによって達成される。
【0007】
従って、本発明によれば、道路車両のためのステアバイワイヤーステアリングシステムを制御する方法であって、ステアバイワイヤーステアリングシステムが、ステアリング手段(好ましくはハンドル)、ロードホイールを作動するためのロードホイールアクチュエータ、及び実際の位置又は想定される位置及び位置要求に基づいてロードホイールアクチュエータのためのモータートルク要求を計算する制御ユニットを含み、位置要求が、ステアリング手段(3)の位置に基づいている、方法において、以下の工程を含むことを特徴とする方法が提供される:
- ロードホイールアクチュエータのパワー制限状況を検出すること;
- パワー制限内でロードホイールアクチュエータが位置要求に従うことができるように位置要求を修正すること;及び
- 修正された位置要求を使用して、ロードホイールアクチュエータのためのモータートルク要求を計算すること。
【0008】
位置要求がロードホイールアクチュエータのパワー制限内にあるように位置要求を修正することにより、後ステアリング効果を防止する。
好ましくは、ロードホイールアクチュエータのパワー制限状況を検出するために、ロードホイールアクチュエータの電気モーターの実際のパワー状態が、予め規定されたパワー特性と比較される。予め規定されたパワー特性は、上方のパワー制限又はトルク制限カーブであることができる。
【0009】
別の実施形態では、ロードホイールアクチュエータのパワー制限状況を検出するために、システムの位置トラッキング挙動が、監視される。ロードホイールアクチュエータが一定の許容度を持って位置要求に従うことができない場合に、パワー制限状況が検出される。
【0010】
位置要求の修正は、レートリミッター(rate limiter)でのロードホイール角度変化のスピードの制限に基づくことが好ましい。
【0011】
位置要求の修正はまた、実際の位置又は想定される位置と修正された位置要求との間の位置偏差に基づくことができる。位置要求の修正は、車両スピードに依存して調節されることができる。その目的は、各車両スピードについて車両特性を最適化することである。
【0012】
位置は、ラックの位置(ラックギヤ又はラックアンドピニオンステアリングギヤが存在する場合)又はロードホイール角度であることができる。
【0013】
さらに、本発明によれば、ステアリング手段、ロードホイールを作動するためのロードホイールアクチュエータ、及び実際の位置又は想定される位置及び位置要求に基づいてロードホイールアクチュエータのためのモータートルク要求を計算する制御ユニットを含む道路車両のためのステアバイワイヤーステアリングシステムであって、位置要求が、ステアリング手段の位置に基づくものであり、制御ユニットが、上で説明した方法を実施するように設計されているものが提供される。ロードホイールは、例えばラックギヤ又はラックアンドピニオンステアリングギヤによって作動されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、図面を参照して記載されるだろう。
図1図1は、自動車のステアバイワイヤーステアリングシステムの概略図である。
図2図2は、修正された位置要求を有するステップステア操作のダイヤグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、ステアリング手段3に接続されたステアリング軸2を有するステアバイワイヤーステアリングシステムの概略図である。ステアリング手段3とロードホイール4の間に機械的接続は全くない。ロードホイールアクチュエータ5は、ラックアンドピニオンギヤ7によってギヤラック6を作動させ、ギヤラック6は、フロントホイールアクスル8の一部分である。フロントホイールアクスル8は、ロードホイール4のために二つのタイロッド9を有し、そのうち一つだけのロードホイール4が描かれている。
【0016】
運転者がステアリング手段3を操作するとき、ステアリング軸2が回転され、それは、軸センサー(図には示されず)によって検出される。車両がスイッチオンされるとき、制御ユニット10は、軸センサーによって検出された信号からロードホイールアクチュエータ5のための作動信号を計算する。作動信号でギヤラック6を作動させることによって、フロントホイールアクスル8は、側方に動かされ、ロードホイール4は、回転される。同時に、ロードホイール4からホイールアクスル8に導入された力は、別のセンサー(図には示されず)によって認識され、フィードバック信号が計算され、それは、フィードバックアクチュエータ11によってステアリング軸2に付与され、従って運転者は、ステアリング手段3においてフィードバックを認識することができる。
【0017】
制御ユニット10は、位置コントローラを含み、それは、ラック6の実際の位置又は想定される位置及び要求されるラック位置に基づいてモータートルク要求を計算する。ロードホイールアクチュエータ5は、かくして基準位置に従う。要求されるラック位置は、ハンドル角度αに依存する。ロードホイールアクチュエータは、パワー制限を有する。それらは、出力トルクを抑制し、従って電気モーターの損傷を防止する。後ステアリングを避けるために、以下の方法工程が実施される。まずパワー制限状況が検出される。次いで、その結果として、パワー制限内でロードホイールアクチュエータが基準位置に従うことができるように基準位置が人工的に修正される。ロードホイールアクチュエータは、パワー制限で作動することができる。ハンドルの動きが遅くなるときまで、修正は、修正された実際の要求ロードホイール角度位置と未修正のハンドル角度に基づくロードホイール角度要求の間の偏差に導く。しかし、後ステアリングは、有意に短くなるだろう。なぜならロードホイールアクチュエータは、過渡応答で基準位置に従うことができるからである。もしロードホイールアクチュエータがパワー制限以下で作動するなら、トルクは、要求されないことが好ましい。なぜならそれは、システムの低下に導くからであり、それは、ラックができる限り速く動かせないことを意味する。
【0018】
図2は、0~1のステップステア操作のダイヤグラムを示す。正規化された位置は、時間に対してプロットされる。得られる位置、修正された実際の位置要求、及び未修正のハンドル角度に基づく位置要求が示される。未修正のハンドル角度に基づく位置要求は、極めて高い勾配で時間とともに0から1に増加する。1の値に達する直前にカーブは、迅速だが一定の勾配の減少を示す。このステアリング操作は、ロードホイールアクチュエータの上方のパワー制限を越えるモータートルク要求に導く。従って、要求は、修正された実際の要求に調整され、それに基づいてモータートルクが計算され、モータートルクは、ロードホイールアクチュエータの制限内でロードホイールアクチュエータの電気モーターによって与えられることができる。この修正された実際の要求は、ステアリング操作の始めの未修正のハンドル角度ベースの位置要求にほとんど等しいが、ステアリング操作の終わりを0.8付近の一定値に平らにする点で異なる。得られる位置のカーブからわかるように、この修正された実際の要求にロードホイールアクチュエータは従うことができ、それは、過渡応答によってのみ制限される。後ステアリングは、起こらない。
【0019】
パワー制限状況を検出するために、システムの予め規定されたパワー特性、例えばいかなる与えられたモータースピードでもロードホイールアクチュエータの電気モーターによって生成されうるトルクの最大量に対応するトルク制限カーブ又は上方のパワー制限を使用することができる。パワー制限状況を検出するために、電気モーターの実際のパワー状態が、予め規定されたパワー特性と比較される。パワー制限状況は、制限を越えるなら検出される。
【0020】
別の実施形態では、システムの位置トラッキング挙動は、パワー制限状況を検出するために監視される。もしアクチュエータが一定の許容度を持って基準位置に従うことができないなら、システムは、パワー制限状況を検出する。
【0021】
要求の修正は、レートリミッターでのロードホイール角度変化のスピードの制限に基づくことができ、それは、システムのパワー制限以下に要求をもたらす。別の実施形態では、修正は、トラッキング挙動に基づくことができる。換言すれば、ロードホイール角度変化のスピードは、一定のレートで遅くなり、レートは、実際の位置と修正された実際の要求の間の位置偏差に基づく。
図1
図2