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特許7566041狭いMWDのポリプロピレンを有するガラス繊維強化複合材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】狭いMWDのポリプロピレンを有するガラス繊維強化複合材
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20241004BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20241004BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 8/50 20060101ALI20241004BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20241004BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L23/10
C08K7/14
C08L23/26
C08F10/06
C08F8/50
C08F4/6592
C08J5/04 CES
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022569519
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021062991
(87)【国際公開番号】W WO2021233824
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-11
(31)【優先権主張番号】20176021.2
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジンボ
(72)【発明者】
【氏名】ガーライトナー マルクス
(72)【発明者】
【氏名】バーンライトナー クラウス
(72)【発明者】
【氏名】レスキネン パウリ
(72)【発明者】
【氏名】ブレステンベルガー ゲオルク
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-106263(JP,A)
【文献】特開2008-179784(JP,A)
【文献】特開2009-114435(JP,A)
【文献】特表2018-522102(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02308923(EP,A1)
【文献】国際公開第2019/179959(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/10
C08K 7/14
C08L 23/26
C08F 10/06
C08F 8/50
C08F 4/6592
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化複合材であって、10~100g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)前記繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のポリプロピレンと、
(b)前記繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%の2.0~10.0mmの範囲の平均繊維長を有するガラス繊維と、
(c)前記繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と
を含み、さらに、
前記繊維強化複合材中の前記ポリプロピレン、前記ガラス繊維及び前記相溶化剤の総量は少なくとも95重量%であり、
なおさらに、
前記ポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、前記コモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)
(iv)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)、及び
(V)0.10~0.90%の範囲の、 13 C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥
を有する繊維強化複合材。
【請求項2】
前記ポリプロピレンが、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
前記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される前記ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される前記ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である
請求項1に記載の繊維強化複合材。
【請求項3】
前記ポリプロピレンが、0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率を有する請求項1又は請求項2に記載の繊維強化複合材。
【請求項4】
前記ポリプロピレンが、ビスブレーキングされたポリプロピレンである請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項5】
前記ポリプロピレンが、前記繊維が埋め込まれた連続相を形成する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項6】
15~50g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項7】
前記ポリプロピレンが単相ポリプロピレンである請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項8】
前記単相ポリプロピレンがプロピレンホモポリマーである請求項に記載の繊維強化複合材。
【請求項9】
前記プロピレンホモポリマーが、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)0.15~0.80%の範囲の13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥
を有する請求項に記載の繊維強化複合材。
【請求項10】
前記繊維強化複合材が、
(a)前記繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のポリプロピレンと、
(b)前記繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス繊維と、
(c)前記繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)前記繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
からなる請求項1から請求項のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項11】
前記ポリプロピレンが、式(I)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを重合することにより製造することと
【化1】
前記式(I)中、各Rは、独立に、同じであるか又は異なってもよく、水素又は直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル基であり、フェニル基あたり少なくとも1つのRは水素ではなく、
R’は、C~C10ヒドロカルビル基であり、
Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルコキシ基、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジル基であり、
その後、前記ポリプロピレンビスブレーキングすることと、を含み
スブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、前記ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
前記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の前記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の前記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法
【請求項12】
前記ガラス繊維が、5~20μmの平均直径を有する請求項に記載の繊維強化複合材。
【請求項13】
前記相溶化剤が極性変性ポリプロピレンである請求項1から請求項10及び請求項12のいずれか1項に記載の繊維強化複合材。
【請求項14】
極性変性ポリプロピレンが無水マレイン酸グラフトポリプロピレンであり、
記無水マレイン酸グラフトポリプロピレンが、0.1~5重量%の無水マレイン酸含有量、及び80~250g/10分の範囲のISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する
請求項13に記載の繊維強化複合材。
【請求項15】
請求項1から請求項10及び請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の繊維強化複合材の製造方法であって、
(a)前記ポリプロピレン、
(b)前記ガラス繊維、
(c)前記相溶化剤、及び
(d)任意選択で、添加剤
を押出機に添加する工程と、これらを押し出すことにより、前記繊維強化複合材を得る工程とを含み、
記ポリプロピレンは、式(I)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを重合することにより製造され、
【化2】
前記式(I)中、各Rは、独立に、同じであるか又は異なってもよく、水素又は直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル基であり、フェニル基あたり少なくとも1つのRは水素ではなく、
R’は、C~C10ヒドロカルビル基であり、
Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルコキシ基、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジル基であり、
その後、前記ポリプロピレンはビスブレーキングされ、
スブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、前記ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
前記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の前記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の前記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
方法。
【請求項16】
少なくとも90重量%の請求項1から請求項10及び請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の繊維強化複合材を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常に狭い分子量分布(MWD)を有するポリプロピレンとガラス繊維とを含む繊維強化複合材、この繊維強化複合材の製造、及びこの繊維強化複合材を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、多種多様な技術分野で使用される材料であり、強化ポリプロピレンは、以前は専ら非ポリマー材料、特に金属に依拠していた分野において特に関連性を得てきた。強化ポリプロピレンの1つの具体的な例は、ガラス繊維強化ポリプロピレン複合材である。そのような材料は、ポリプロピレンの種類、ガラス繊維の量を選択することによって、また時には使用される相溶化剤の種類を選択することによって、複合材の特性を誂えることが可能である。従って、今日では、ガラス繊維強化ポリプロピレン複合材は、高い剛性、耐熱変形性、及び耐衝撃性を必要とする用途(例えば、エンジンコンパートメント内の耐荷重機能を有する自動車部品、ポリマー本体パネルの支持部品、洗濯機、及び食器洗い機の部品が挙げられる)のためのよく確立された材料である。しかしながら、市販の繊維強化ポリプロピレン複合材の1つの短所は、重合プロセスにおいて副生成物として得られるオリゴマーの量がかなり多いことによって引き起こされる、そのかなり高い放出物である。さらに、かなり高いメルトフローレートMFRを有する繊維強化ポリプロピレン複合材は、通常、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)法で製造されたポリプロピレンのビスブレーキング、すなわち制御された分解によって達成される。このような材料は、分解プロセス及び開始剤の残留物に起因して、さらに高い量の放出物を含有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、剛性であり、かなり高い耐熱変形性を有し、良好に加工可能であり、さらに非常に低い放出量を有するガラス繊維強化ポリプロピレン複合材が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の知見は、繊維強化ポリプロピレン複合材が、非常に狭い分子量分布及びかなり高い融解温度を有するポリプロピレンを含まなければならないということである。好ましくは、ポリプロピレンはビスブレーキングされたものである。
【0005】
従って、本発明は、繊維強化ポリプロピレン複合材であって、10~100g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ、
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のポリプロピレンと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と
を含み、さらに、
当該繊維強化複合材中のポリプロピレン、ガラス繊維及び相溶化剤の総量は少なくとも95重量%であり、
なおさらに、
上記ポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iv)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有する繊維強化ポリプロピレン複合材に関する。
【0006】
とりわけ本発明は、繊維強化ポリプロピレン複合材であって、10~50g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲のISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のプロピレンホモポリマーと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)当該繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
からなり、さらに、
上記プロピレンホモポリマーは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)0.1~0.90%の範囲の13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥
を有し、
任意選択で、上記プロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記プロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記プロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)である繊維強化ポリプロピレン複合材に関する。
【0007】
当該繊維強化複合材の好ましい実施形態は、本発明の従属請求項に規定される。
【0008】
本発明はさらに、本発明において規定される繊維強化複合材を製造するためのプロセスであって、
(a)ポリプロピレン、
(b)ガラス繊維、
(c)相溶化剤、及び
(d)任意選択で、添加剤
を押出機に添加に添加する工程と、これらを押し出すことにより、当該繊維強化複合材を得る工程とを含むプロセスに関する。
【0009】
好ましくは、本発明に係るポリプロピレンは、式(I)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを、より好ましくはプロピレンのみを重合することによって得られ、
【化1】
式(I)中、各Rは、独立に、同じであるか又は異なってもよく、水素又は直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル基であり、フェニル基あたり少なくとも1つのRは水素ではなく、
R’は、C~C10ヒドロカルビル基、好ましくはC~Cヒドロカルビル基、より好ましくはメチル基であり、
Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルコキシ基、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジル基であり、
その後、このポリプロピレンはビスブレーキングされている。
【0010】
上記式(I)において、Xは塩素、ベンジル又はメチル基であることが好ましい。好ましくは、式(I)の両X基は同じである。式(I)のXの最も好ましい選択肢は、2つのクロリド(塩素)、2つのメチル又は2つのベンジル基、とりわけ2つのクロリドである。
【0011】
さらには、本発明は、少なくとも90重量%の本発明に係る繊維強化複合材を含む物品、好ましくは自動車物品に関する。
【0012】
以下において、本発明をより詳細に説明する。
【0013】
繊維強化複合材
本発明は、ポリプロピレンと、ガラス繊維と相溶化剤とを含む繊維強化複合材に関する。当該繊維強化複合材は、当該技術分野で公知であるように理解される。すなわち、ポリプロピレンは、ガラス繊維が埋め込まれた連続相を形成する。ガラス繊維がガラス短繊維である場合、その繊維はポリプロピレン中に分散され、ポリプロピレンは連続相として作用する。相溶化剤は、非極性のポリプロピレンと極性のガラス繊維との間の接着を改善する。
【0014】
従って、本発明は、繊維強化ポリプロピレン複合材であって、10~100g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ、
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のポリプロピレンと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と
を含み、さらに、
当該繊維強化複合材中のポリプロピレン、ガラス繊維及び相溶化剤の総量は少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%である繊維強化ポリプロピレン複合材に関する。
【0015】
これらのポリプロピレン、ガラス繊維及び相溶化剤は、以下により詳細に記載される。
【0016】
3つの成分の他に、例えばポリプロピレンの寿命を延ばすために添加される典型的な添加剤、すなわち酸化防止剤が存在してもよい(以下の添加剤の定義を参照)。
【0017】
従って、好ましい実施形態では、本発明に係る繊維強化複合材は、10~100g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のポリプロピレンと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)当該繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
を含み、さらに、
当該繊維強化複合材中のポリプロピレン、ガラス繊維、相溶化剤及び添加剤の総量は、少なくとも98重量%、好ましくは98~100重量%の範囲、例えば99~100重量%の範囲である。
【0018】
当該繊維強化組成物は、好ましくはエラストマーポリマーを含有しない。エラストマーポリマーは、ポリプロピレン内に連続相を形成しないポリマーとして理解される。言い換えれば、エラストマーポリマーはポリプロピレン中に分散され、すなわちポリプロピレン中に介在物(含有物)を形成する。第2の相として介在物としてのエラストマーポリマーを含有するポリマーは、対照的に異相性と呼ばれ、好ましくは本発明の一部ではない。第2の相又はいわゆる介在物の存在は、例えば、電子顕微鏡法若しくは原子間力顕微鏡法のような高分解能顕微鏡法によって、又は動的機械的熱分析(DMTA)によって可視である。具体的には、DMTAにおいて、多相構造の存在は、少なくとも2つの別個のガラス転移温度の存在によって特定することができる。
【0019】
それゆえ、特定の実施形態では、本発明に係る繊維強化複合材は、10~100g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のポリプロピレンと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)当該繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
からなる。
【0020】
本発明に係る繊維強化複合材は、とりわけ、低放出物を特徴とする。従って、当該繊維強化複合材が、6.0μg/g未満、より好ましくは0.05~6.0μg/g未満の範囲、さらにより好ましくは0.05~3.0μg/gの範囲の、VDA278 2011年10月に従って決定されるVOC(揮発性有機化合物)値を有することが好ましい。
【0021】
前段落の要件に加えて又はその代わりに、当該繊維強化複合材は、40μg/g未満、より好ましくは5~40μg/gの範囲、さらにより好ましくは10~30μg/gの範囲の、VDA278 2011年10月に従って決定されるFOG(低揮発性又は凝縮性有機化合物)値を有する。
【0022】
当該繊維強化複合材が、3600~7000MPaの範囲、より好ましくは3800~6800MPaの範囲、例えば4000~6600MPaの範囲の、射出成形品に対してISO527-1に従って1mm/分で決定される引張弾性率を有することがさらに好ましい。
【0023】
前段落の要件に加えて又はその代わりに、当該繊維強化複合材は、30.0~75.0kJ/mの範囲、より好ましくは35.0~70.0kJ/mの範囲、例えば40.0~65.0kJ/mの範囲の、ISO179-1eUに従って23℃で決定される衝撃シャルピー衝撃強度を有する。
【0024】
非常に具体的な実施形態では、当該繊維強化複合材は、146~160℃の範囲、より好ましくは148~158℃の範囲、例えば150~156℃の範囲の、ISO75Bに従って0.46MPaの荷重で測定される熱たわみ温度HDTを有する。
【0025】
ポリプロピレン
本発明の必須成分はポリプロピレンであり、このポリプロピレンは、所望の特性に達するように注意深く選択される必要がある。従って、本発明に係るポリプロピレンは、特定の融解温度及び非常に狭い分子量分布(MWD)を必要とする。
【0026】
従って、本発明に係るポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iv)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有する。
【0027】
好ましくは、前段落のポリプロピレンは、不等式(I)、より好ましくは不等式(II)を満たし、
Tm/MWD>50 (I)
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(I)及び不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0028】
より好ましくは、本発明に係るポリプロピレンは、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iv)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有する。
【0029】
典型的には、本発明に係るポリプロピレンは、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iv)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有し、
上記ポリプロピレンは、不等式(I)、好ましくは不等式(II)を満たし、
Tm/MWD>50 (I)
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(I)及び不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0030】
ポリプロピレンは単相であり、すなわち異相プロピレンコポリマーの場合のように互いに混和性でないポリマー成分を含まないことがとりわけ好ましい。上述のように、単相系とは対照的に、異相系は、エラストマーポリマーのようなさらなる非混和性ポリマーが介在物として分散しているポリプロピレンのような連続ポリマー相を含む。ポリプロピレンマトリクス及び第2のポリマー相としての介在物を含有する上記ポリプロピレン系は、対照的に異相性と呼ばれ、好ましくは本発明の一部ではない。第2のポリマー相又はいわゆる介在物の存在は、例えば、電子顕微鏡法若しくは原子間力顕微鏡法のような高分解能顕微鏡法によって、又は動的機械的熱分析(DMTA)によって可視である。具体的には、DMTAにおいて、多相構造の存在は、少なくとも2つの別個のガラス転移温度の存在によって特定することができる。
【0031】
それゆえ、好ましい実施形態では、本発明に係るポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iv)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有する単相ポリプロピレンであり、
好ましくは、この単相ポリプロピレンは、不等式(I)、より好ましくは不等式(II)を満たし、
Tm/MWD>50 (I)
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(I)及び不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記単相ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記単相ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0032】
より好ましくは、本発明に係るポリプロピレンは、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iv)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有する単相ポリプロピレンであり、
好ましくは、この単相ポリプロピレンは、不等式(I)、より好ましくは不等式(II)を満たし、
Tm/MWD>50 (I)
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(I)及び不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記単相ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記単相ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0033】
単相ポリプロピレンがプロピレンホモポリマーであることがとりわけ好ましい。プロピレンホモポリマーは、プロピレンのポリマー鎖のみを含有するので、定義上、異相性であることはできない。換言すれば、本発明に係るプロピレンホモポリマーは常に単相ポリマーである。
【0034】
従って、本発明に係る単相ポリプロピレンは、好ましくは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iii)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するプロピレンホモポリマーであり、
好ましくは、このプロピレンホモポリマーは、不等式(I)、より好ましくは不等式(II)を満たし、
Tm/MWD>50 (I)
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(I)及び不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記プロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記プロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)である。
【0035】
さらにより好ましくは、上記単相ポリプロピレンは、とりわけ、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(iii)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するプロピレンホモポリマーであり、
好ましくは、このプロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(I)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記プロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記プロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)である。
【0036】
本発明に係るポリプロピレンは、以下により詳細に規定される特定のメタロセン触媒の存在下で製造されている。チーグラー・ナッタ触媒の存在下で製造されたポリプロピレンとは対照的に、メタロセン触媒の存在下で製造されたポリプロピレンは、重合プロセス中のモノマー単位の誤挿入を特徴とする。さらに、そのようなポリプロピレンは、かなり低い冷キシレン可溶部(XCS)含有量を特徴とする。それゆえ、本発明に係るポリプロピレンは、ある量の2,1-位置欠陥及び少量の冷キシレン可溶分を有する。すなわち、本発明に係るポリプロピレンは、0.10~0.90%の範囲、より好ましくは0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、又は0.05~1.00重量%の範囲、より好ましくは0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率を有する。本発明に係るポリプロピレンが、0.10~0.90%の範囲、より好ましくは0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、及び0.05~1.00重量%の範囲、より好ましくは0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率を有することがとりわけ好ましい。
【0037】
それゆえ、本発明は、とりわけ、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iv)0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(v)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(vi)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するポリプロピレン、より好ましくは単相ポリプロピレンに関する。
【0038】
前段落のポリプロピレン、より好ましくは単相ポリプロピレンは、不等式(I)、より好ましくは不等式(II)を満たすことがとりわけ好ましく、
Tm/MWD>50 (I)
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(I)及び不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記(単相)ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記(単相)ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0039】
より好ましくは、本発明に係るポリプロピレン、さらにより好ましくは単相ポリプロピレンは、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iv)0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(v)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(vi)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有する。
【0040】
前段落のポリプロピレン、より好ましくは単相ポリプロピレンは、不等式(II)を満たすことがとりわけ好ましく、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記(単相)ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記(単相)ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0041】
上述のように、上記単相ポリプロピレンがプロピレンホモポリマーであることがとりわけ好ましい。従って、好ましい実施形態では、プロピレンホモポリマーである上記単相ポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有する。
【0042】
前段落のプロピレンホモポリマーが不等式(II)を満たすことがとりわけ好ましく、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記プロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記プロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)である。
【0043】
さらにより好ましくは、上記単相ポリプロピレンは、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するプロピレンホモポリマーである。
【0044】
上記単相ポリプロピレンが、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するプロピレンホモポリマーであり、
上記プロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記プロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記プロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)である
ことがとりわけ好ましい。
【0045】
加えて、上記ポリプロピレンはビスブレーキングされることが好ましい。ビスブレーキング(visbreaking)、又はラジカル誘導プロセスにおける制御された分解は、通常、メルトフローレートを高め、従って分子量及び分子量分布を低下させるために使用される。典型的には、ポリマーのビスブレーキングは、過酸化物の使用によって得られる。このような分解工程は、通常、オリゴマーの量の増加をもたらす望ましくない副反応及び過酸化物分解からの残留物のために、(VOC又はFOGに関して)放出量の値を増加させる。驚くべきことに、メタロセン触媒の存在下で製造されたポリプロピレンの分解は、放出量の値の上昇という望ましくない効果を示さないことが今回見出された。換言すれば、特定の量の2,1位置欠陥を有するポリプロピレンが使用されている、すなわちメタロセン触媒の存在下で製造されている場合、分子量分布(MWD)は、ビスブレーキング(分解)によってさらに減少させることができる。
【0046】
それゆえ、本発明は、とりわけ、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iv)0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(v)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(vi)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有し、
任意選択で、ビスブレーキング比(VR)が2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたポリプロピレンに関する。
【0047】
より好ましくは、前段落のビスブレーキングされたポリプロピレンは、ビスブレーキングされた単相ポリプロピレンである。
【0048】
さらにより好ましくは、上記ポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iv)0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(v)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(vi)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされたポリプロピレンであって、
このビスブレーキングされたポリプロピレンは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされたポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされたポリプロピレンの分子量分布(MWD)であり、
任意選択で、なおさらに、
ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたポリプロピレンである。
【0049】
より好ましくは、前段落のビスブレーキングされたポリプロピレンは、ビスブレーキングされた単相ポリプロピレンである。
【0050】
さらにより好ましくは、本発明に係るポリプロピレンは、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iv)0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(v)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(vi)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされたポリプロピレンであって、
このビスブレーキングされたポリプロピレンは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされたポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされたポリプロピレンの分子量分布(MWD)であり、
任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたポリプロピレンである。
【0051】
より好ましくは、前段落のビスブレーキングされたポリプロピレンは、ビスブレーキングされた単相ポリプロピレンである。
【0052】
上述のように、上記単相ポリプロピレンがプロピレンホモポリマーであることがとりわけ好ましい。
【0053】
従って、上記ポリプロピレンが、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.0~3.0未満の範囲、好ましくは1.5~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーであって、
任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーであることが好ましい。
【0054】
上記ポリプロピレンが、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーであって、
このビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)であり、
任意選択で、さらに、
ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーであることがさらにより好ましい。
【0055】
上記ポリプロピレンは、特定のメタロセン触媒の存在下で製造され、続いてビスブレーキングされることが特に好ましい。従って、本発明の非常に具体的な実施形態では、上記ポリプロピレン、より好ましくは単相ポリプロピレンは、式(I)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを重合することにより製造され、
【化2】
式(I)中、各Rは、独立に、同じであるか又は異なってもよく、水素又は直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル基であり、フェニル基あたり少なくとも1つのRは水素ではなく、
R’は、C~C10ヒドロカルビル基、好ましくはC~Cヒドロカルビル基、より好ましくはメチル基であり、
Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルコキシ基、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジル基であり、
その後、このポリプロピレンはビスブレーキングされ、任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である。
【0056】
従って、上記ポリプロピレンが、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iv)0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(v)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(vi)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされたポリプロピレンであって、
ポリプロピレンは、上記で規定された式(I)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを重合することにより製造され、
その後、このポリプロピレンはビスブレーキングされ、任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたポリプロピレンであることがとりわけ好ましい。
【0057】
好ましくは、前段落のビスブレーキングされたポリプロピレンは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされたポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされたポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0058】
特に好ましい実施形態では、上記ポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.5重量%以下の、13C-NMR分光法により決定されるコモノマー含有量であって、このコモノマーはエチレンであるコモノマー含有量、
(iii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iv)0.05~1.00重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(v)20~500g/10分の範囲のISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(vi)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされた単相ポリプロピレンであって、
単相ポリプロピレンは、上記で規定された式(I)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを重合することにより製造され、
その後、この単相ポリプロピレンはビスブレーキングされ、任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記単相ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記単相ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされた単相ポリプロピレンである。
【0059】
好ましくは、前段落のビスブレーキングされた単相ポリプロピレンは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされた単相ポリプロピレンの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされた単相ポリプロピレンの分子量分布(MWD)である。
【0060】
上述のように、本発明に係るポリプロピレンは、好ましくはプロピレンホモポリマーである。従って、上記ポリプロピレンが、式(I)に係る特定のメタロセン触媒の存在下で製造され、その後ビスブレーキングされるプロピレンホモポリマーであることが特に好ましい。
【0061】
従って、本発明に係るポリプロピレンは、特に、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーであって、
プロピレンホモポリマーが、式(I)を有するメタロセン触媒の存在下で、プロピレンを重合することにより製造され、
【化3】
式(I)中、各Rは、独立に、同じであるか又は異なってもよく、水素又は直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル基であり、フェニル基あたり少なくとも1つのRは水素ではなく、
R’は、C~C10ヒドロカルビル基、好ましくはC~Cヒドロカルビル基、より好ましくはメチル基であり、
Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルコキシ基、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジル基であり、
その後、このプロピレンホモポリマーはビスブレーキングされ、任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーである。
【0062】
より好ましくは、上記ポリプロピレンは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲のISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.5~3.0未満の範囲のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有するビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーであって、
このビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)であり、
なおさらに、
単相プロピレンホモポリマーが、上記で規定された式(I)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレンを重合することにより製造され、
その後、この単相プロピレンホモポリマーはビスブレーキングされ、任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記単相プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記単相プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である
ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーである。
【0063】
以下において、ポリプロピレンの重合について詳しく説明する。
【0064】
本発明に係るポリプロピレンは、1つの反応器において、又は2つ以上の反応器、好ましくは2つの反応器の反応器カスケードにおいて製造することができる。本発明に係るポリプロピレンを製造するのに適した複数の重合プロセスが、先行技術において公知である。それらは少なくとも1つの重合段階を含み、重合は典型的には溶液、スラリー、バルク(塊状)又は気相中で行われる。典型的には、重合プロセスは、追加の重合段階又は反応器を含む。1つの特定の実施形態では、プロセスは、少なくとも1つのバルク反応器ゾーンと、任意選択で少なくとも1つの気相反応器ゾーンとを含み、各ゾーンは少なくとも1つの反応器を含み、すべての反応器はカスケード状に配置される。1つの特に好ましい実施形態では、重合プロセスは、少なくとも1つのバルク反応器と、任意選択でバルク反応器の次に配置された少なくとも1つの気相反応器とを含む。このプロセスは、前反応器及び後反応器をさらに含んでもよい。前反応器は、典型的には前(予備)重合反応器を含む。この種のプロセスでは、ポリマーの特定の特性を達成するために、より高い重合温度の使用が好ましい。これらのプロセスにおける典型的な温度は、70℃以上、好ましくは75℃以上である。上記のより高い重合温度は、反応器カスケードのいくつか又はすべての反応器において適用することができる。
【0065】
好ましい多段階プロセスは、「ループ気相」プロセス、例えば、欧州特許出願公開第0887379号明細書、国際公開第92/12182号パンフレット、国際公開第2004/000899号パンフレット、国際公開第2004/111095号パンフレット、国際公開第99/24478号パンフレット、国際公開第99/24479号パンフレット又は国際公開第00/68315号パンフレット等の特許文献などに記載されている、Borealis(ボレアリス)によって開発されたもの(BORSTAR(登録商標)技術として公知)である。さらなる好適なスラリー-気相プロセスは、Basell(バセル)のSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0066】
上述のように、本発明に係るポリプロピレンは、とりわけ、式(I)を有するメタロセン触媒を使用する重合プロセスで得られ、
【化4】
式(I)中、各Rは、独立に、同じであるか又は異なってもよく、水素又は直鎖状若しくは分枝状のC~Cアルキル基であり、フェニル基あたり少なくとも1つのRは水素ではなく、
R’は、C~C10ヒドロカルビル基、好ましくはC~Cヒドロカルビル基、より好ましくはメチル基であり、
Xは、独立に、水素原子、ハロゲン原子、C~Cアルコキシ基、C~Cアルキル基、フェニル又はベンジル基である。
【0067】
最も好ましくは、Xは、塩素、ベンジル又はメチル基である。好ましくは、両X基は同じである。最も好ましい選択肢は、2つのクロリド、2つのメチル又は2つのベンジル基、とりわけ2つのクロリドである。
【0068】
本発明の特定の好ましいメタロセン触媒としては、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(4’-tert-ブチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド、
rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリド
又はそれらの対応するジルコニウムジメチル類似体が挙げられる。
【0069】
最も好ましい触媒は、rac-anti-ジメチルシランジイル[2-メチル-4,8-ビス-(3’,5’-ジメチルフェニル)-1,5,6,7-テトラヒドロ-s-インダセン-1-イル][2-メチル-4-(3’,5’-ジメチルフェニル)-5-メトキシ-6-tert-ブチルインデン-1-イル]ジルコニウムジクロリドである。
【化5】
【0070】
本発明の錯体、ひいては触媒を形成するために必要な配位子は、任意のプロセスで合成することができ、当業者の有機化学者であれば、必要な配位子材料を製造するための様々な合成プロトコルを考案することができるであろう。例えば、国際公開第2007/116034号パンフレットは、必要な化学反応を開示する。合成プロトコルは一般に、国際公開第2002/02576号パンフレット、国際公開第2011/135004号パンフレット、国際公開第2012/084961号パンフレット、国際公開第2012/001052号パンフレット、国際公開第2011/076780号パンフレット、国際公開第2015/158790号パンフレット及び国際公開第2018/122134号パンフレットにも見出すことができる。とりわけ、本発明の最も好ましい触媒が記載される国際公開第2019/179959号パンフレットが参照される。実施例の項も、当業者に十分な方向性を示している。
【0071】
共触媒
活性な触媒種を形成するためには、通常、当該技術分野でよく知られているように、共触媒を採用することが必要である。
【0072】
本発明によれば、ホウ素含有共触媒及び/又はアルミノキサン共触媒を含む共触媒系が、上記で定義されたメタロセン触媒錯体と組み合わせて使用される。
【0073】
アルミノキサン共触媒は、式(III)のものであることができる。
【化6】
式(III)中、nは通常6~20であり、Rは以下の意味を有する。
【0074】
アルミノキサンは、有機アルミニウム化合物、例えば式AlR、AlRY及びAlの化合物の部分加水分解で形成され、式中、Rは、例えばC~C10-アルキル、好ましくはC~C-アルキル、又はC~C10-シクロアルキル、C~C12-アリールアルキル若しくはC~C12-アルキルアリール、及び/又はフェニル若しくはナフチルであり、Yは、水素、ハロゲン、好ましくは塩素若しくは臭素、又はC~C10-アルコキシ、好ましくはメトキシ若しくはエトキシであることができる。得られる酸素含有アルミノキサンは、一般に純粋な化合物ではなく、式(III)のオリゴマーの混合物である。
【0075】
好ましいアルミノキサンはメチルアルミノキサン(MAO)である。本発明に従って共触媒として使用されるアルミノキサンは、その調製の態様に起因して、純粋な化合物ではないため、以降のアルミノキサン溶液のモル濃度は、そのアルミニウム含有量に基づいている。
【0076】
本発明によれば、アルミノキサン共触媒の代わりにホウ素含有共触媒を使用することもでき、又はアルミノキサン共触媒をホウ素含有共触媒と組み合わせて使用することができる。
【0077】
ホウ素系共触媒が用いられる場合、TIBA等のアルミニウムアルキル化合物との反応によって錯体が事前にアルキル化されることが通常であるということが当業者には理解されよう。この手順は周知であり、任意の適切なアルミニウムアルキル、例えばAl(C~Cアルキル)を使用することができる。好ましいアルミニウムアルキル化合物はトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリイソヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム及びトリイソオクチルアルミニウムである。
【0078】
あるいは、ボレート(ホウ素アート錯体)共触媒が使用される場合、メタロセン触媒錯体は、そのアルキル化バージョンであり、すなわち、例えば、ジメチル又はジベンジルメタロセン触媒錯体を使用することができる。
【0079】
注目するホウ素系共触媒としては、式(IV)のホウ素系共触媒が挙げられる。
BY (IV)
式(IV)中、Yは同じであるか又は異なり、水素原子、1~約20個の炭素原子を有するアルキル基、6~約15個の炭素原子を有するアリール基、アルキルラジカル中に1~10個の炭素原子及びアリールラジカル中に6~20個の炭素原子をそれぞれ有するアルキルアリール、アリールアルキル、ハロアルキル若しくはハロアリール、又はフッ素、塩素、臭素若しくはヨウ素である。Yの好ましい例は、メチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル又はトリフルオロメチル、アリール又はハロアリールのような不飽和基、例えばフェニル、トリル、ベンジル基、p-フルオロフェニル、3,5-ジフルオロフェニル、ペンタクロロフェニル、ペンタフルオロフェニル、3,4,5-トリフルオロフェニル及び3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニルである。好ましい選択肢は、トリフルオロボラン、トリフェニルボラン、トリス(4-フルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,4,6-トリフルオロフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(トリル)ボラン、トリス(3,5-ジメチル-フェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン及び/又はトリス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ボランである。
【0080】
特に好ましいのはトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。
【0081】
しかしながら、ボレート、すなわちボレート3+イオンを含有する化合物を使用することが好ましい。このようなイオン性共触媒は、好ましくは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及びテトラフェニルボレート等の非配位性アニオンを含有する。適切な対イオンは、プロトン化されたアミン又はアニリン誘導体、例えばメチルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、N-メチルアニリニウム、ジフェニルアンモニウム、N,N-ジメチルアニリニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ-n-ブチルアンモニウム、メチルジフェニルアンモニウム、ピリジニウム、p-ブロモ-N,N-ジメチルアニリニウム又はp-ニトロ-N,N-ジメチルアニリニウムである。
【0082】
本発明に従って使用することができる好ましいイオン性化合物としては、以下のものが挙げられる。
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、
トリメチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリプロピルアンモニウムテトラ(ジメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラ(4-フルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート、
N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート)、
トリエチルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
ジフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)。
【0083】
好ましいのは、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N-ジメチルシクロヘキシルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は
N,N-ジメチルベンジルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート
である。
【0084】
驚くべきことに、特定のホウ素共触媒がとりわけ好ましいことが見出された。それゆえ、本発明において使用される好ましいボレートは、トリチルイオンを含む。従って、N,N-ジメチルアンモニウム-テトラキスペンタフルオロフェニルボレート及びPh3CB(PhF5)4並びにその類似体の使用がとりわけ好ましい。
【0085】
本発明によれば、好ましい共触媒は、アルモキサン、より好ましくはメチルアルモキサン、アルモキサンとAlアルキルとの組み合わせ、ホウ素又はボレート共触媒、及びアルモキサンとホウ素系共触媒との組み合わせである。
【0086】
共触媒の適切な量は、当業者にとっては周知である。
ホウ素とメタロセンの金属イオンとのモル比は、0.5:1~10:1モル/モル、好ましくは1:1~10:1、とりわけ1:1~5:1モル/モルの範囲にあってもよい。
アルミノキサン中のAlとメタロセンの金属イオンとのモル比は、1:1~2000:1モル/モル、好ましくは10:1~1000:1、より好ましくは50:1~500:1モル/モルの範囲にあってもよい。
【0087】
触媒は、担持形態又は非担持形態で、好ましくは担持形態で使用することができる。使用される粒子状担体材料は、好ましくは、有機材料又は無機材料、例えばシリカ、アルミナ又はジルコニア、又は混合酸化物、例えばシリカ-アルミナ、特にシリカ、アルミナ又はシリカ-アルミナである。シリカ担体の使用が好ましい。当業者は、メタロセン触媒を担持するために必要な手順を知っている。
【0088】
とりわけ好ましくは、担体は多孔性材料であり、その結果、錯体は、例えば、国際公開第94/14856号パンフレット(Mobil(モービル))、国際公開第95/12622号パンフレット(Borealis)及び国際公開第2006/097497号パンフレットに記載されるものと類似のプロセスを使用して、担体の細孔に装填されてもよい。
【0089】
シリカ担体の平均粒子サイズ(粒径)は、典型的には10~100μmであることができる。しかしながら、担体が15~80μm、好ましくは18~50μmの平均粒子サイズを有する場合、特別な利点が得られることが判明した。
シリカ担体の平均細孔サイズ(細孔径)は、10~100nmの範囲にあることができ、細孔容積は1~3mL/gであることができる。
【0090】
適切な担体材料の例は、例えば、PQ Corporation(ピーキュー・コーポレーション)によって製造及び販売されているES757、Grace(グレース)によって製造及び販売されているSylopol 948、又はAGC Si-Tech Co.(エイジーシー・エスアイテック)によって製造されているSUNSPERA DM-L-303シリカである。担体は、最適なシラノール基含有量を得るために、触媒調製に使用する前に任意選択で焼成することができる。
【0091】
これらの担体の使用は、当該技術分野において常法である。
【0092】
上述のように、ポリプロピレンはビスブレーキングされていることが特に好ましい。
ビスブレーキングのために、典型的には不連続混練機及び連続混練機、特殊な混合セクションを備えた二軸押出機及び単軸押出機及び共混練機(コニーダー)が使用される。
【0093】
ビスブレーキングは、任意の公知の様式で実施されてもよいが、典型的には、本発明は、過酸化物ビスブレーキング剤を使用する化学的ビスブレーキングを想定する。典型的なビスブレーキング剤は、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン(DHBP)(例えば、商品名Luperox 101及びTrigonox 101で販売されている)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン-3(DYBP)(例えば、商品名Luperox 130及びTrigonox 145で販売されている)、ジクミルペルオキシド(DCUP)(例えば、商品名Luperox DC及びPerkadox BCで販売されている)、ジ-tert-ブチル-ペルオキシド(DTBP)(例えば、商品名Trigonox B及びLuperox Diで販売されている)、tert-ブチル-クミル-ペルオキシド(BCUP)(例えば、商品名Trigonox T及びLuperox 801で販売されている)及びビス(tert-ブチルペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン(DIPP)(例えば、商品名Perkadox 14S及びLuperox DCで販売されている)である。
【0094】
本発明に従って用いられる過酸化物の適切な量は、原則として当業者に公知であり、ビスブレーキングに供されるポリプロピレンの量、ビスブレーキングに供されるポリプロピレンのMFR(230℃、2.16kg)値及び最終ポリプロピレンの所望の目標MFR(230℃、2.16kg)に基づいて容易に計算することができる。従って、過酸化物ビスブレーキング剤の典型的な量は、用いられるポリプロピレンの量に基づいて、0.001~0.15重量%、より好ましくは0.002~0.10重量%である。
【0095】
ビスブレーキングの間、出発生成物のより高いモル質量の鎖は、より低いモル質量の分子よりも統計的に頻繁に破壊され、平均分子量の全体的な減少、分子量分布(MWD)の減少及びメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)の増加をもたらす。
【0096】
ガラス繊維
当該繊維強化複合材中の第2の必須組成物はガラス繊維である。ガラス繊維は、ガラス長繊維又はガラス短繊維のような任意のタイプのガラス繊維であることができる。しかしながら、ガラス繊維が、カットガラス繊維又はチョップドガラスストランドとしても知られるガラス短繊維であることがとりわけ好ましい。
【0097】
当該繊維強化複合材に用いられるガラス短繊維は、好ましくは2.0~10.0mmの範囲、より好ましくは2.0~8.0mmの範囲、さらにより好ましくは2.0~5.0mmの範囲の平均繊維長を有する。
【0098】
当該繊維強化複合材に用いられるガラス短繊維が好ましくは5~20μm、より好ましくは8~18μm、さらにより好ましくは8~15μmの平均直径を有することがさらに好ましい。
【0099】
好ましくは、ガラス短繊維は、150~600、好ましくは200~500、より好ましくは250~400の、平均繊維長と平均繊維直径との間の比として定義されるアスペクト比を有する。アスペクト比は、繊維の平均長さと平均直径との間の関係である。
【0100】
相溶化剤
当該繊維強化複合材中に存在するさらなる成分は相溶化剤であり、又はカップリング剤若しくは接着促進剤とも呼ばれるものである。上述のように、相溶化剤は、非極性のポリプロピレンと極性のガラス繊維との間の接着を改善する。
【0101】
本発明に係る相溶化剤は、好ましくは極性変性ポリプロピレンである。極性変性ポリプロピレン、例えば極性変性プロピレンホモポリマー又は極性変性コポリマーは、本発明に係る繊維強化複合材のポリプロピレンと相溶性が高い。
【0102】
構造に関して、極性変性ポリプロピレンは、好ましくはグラフトコポリマー又はブロックコポリマーから選択される。
【0103】
これに関連して、極性化合物、特に酸無水物、カルボン酸、カルボン酸誘導体、第一級及び第二級アミン、ヒドロキシル化合物、オキサゾリン及びエポキシドからなる群から選択される極性化合物、並びにイオン性化合物に由来する基を含有する極性変性ポリプロピレンが好ましい。
【0104】
上記極性化合物の具体例は、不飽和環状無水物及びその脂肪族ジエステル、二塩基酸誘導体である。特に、無水マレイン酸、並びにマレイン酸C~C10直鎖及び分枝状ジアルキル、フマル酸C~C10直鎖及び分枝状ジアルキル、イタコン酸無水物、イタコン酸C~C10直鎖及び分枝状ジアルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの混合物から選択される化合物を使用することができる。
【0105】
本発明の特定の好ましい実施形態では、極性変性ポリプロピレンは、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンであり、このポリプロピレンは、プロピレン-エチレンコポリマー又はプロピレンホモポリマーのいずれかである。極性変性ポリプロピレンが無水マレイン酸グラフトポリプロピレンであることがとりわけ好ましく、このポリプロピレンはプロピレンホモポリマーである。
【0106】
極性変性ポリプロピレン、とりわけ無水マレイン酸グラフトポリプロピレンは、例えば、欧州特許出願公開第0572028号明細書に開示されるように、例えば、フリーラジカル発生剤(有機過酸化物等)の存在下での無水マレイン酸とのポリプロピレンの反応押出によって単純な方法で製造することができる。
【0107】
極性変性ポリプロピレン中の極性化合物に由来する基の量、例えば無水マレイン酸の量は、0.1~5.0重量%、好ましくは0.5~4.0重量%、より好ましくは0.5~3.0重量%である。
【0108】
好ましくは、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンのような極性変性ポリプロピレンは、少なくとも50g/10分、より好ましくは少なくとも80g/10分、さらにより好ましくは50~500g/10分の範囲、なおさらにより好ましくは80~250g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0109】
添加剤
本発明に係る繊維強化複合材は、添加剤をさらに含んでもよい。典型的な添加剤は、酸捕捉剤、酸化防止剤、着色剤、光安定剤、スリップ剤、擦り傷防止剤(スクラッチ防止剤)、分散剤、加工助剤、潤滑剤、顔料等である。
【0110】
このような添加剤は市販されており、例えば、Hans Zweifelの「Plastic Additives Handbook」、第6版、2009年(1141~1190頁)に記載されている。
【0111】
添加剤は、典型的にはマスターバッチの形態で提供される。マスターバッチは、添加剤又は添加剤混合物がかなり多量にポリマー中に分散されている組成物である。従って、本発明に係る用語「添加剤」は、担体材料、特に「活性添加剤」又は「活性添加剤混合物」が分散しているポリマー担体材料も含む。
【0112】
強化繊維複合材の製造プロセス
当該強化繊維複合材は、当該技術分野で周知であるように製造される。従って、当該繊維強化複合材は、
(a)ポリプロピレン、
(b)ガラス繊維、
(c)相溶化剤、及び
(d)任意選択で、添加剤
を押出機に添加に添加する工程と、これらを押し出すことにより、当該繊維強化複合材を得る工程とを含むプロセスによって製造され、
好ましくは、上記ポリプロピレンは、式(I)を有する、好ましくは式(II)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを重合することにより製造され、その後、このポリプロピレンはビスブレーキングされる。
【0113】
当該複合材の個々の成分を押し出す、すなわち溶融ブレンド(溶融混合)するために、従来のコンパウンディング(配合)又はブレンド装置、例えばバンバリーミキサー、2本ロール式ラバーミル、Buss(ブッス)-コニーダー又は二軸押出機が使用されてもよい。押出機/ミキサーから回収される繊維強化複合材は、通常、顆粒の形態にある。次いで、これらの顆粒は、好ましくは、例えば、射出成形によってさらに加工されて、本発明の複合材の物品及び製品が生成される。
【0114】
本発明に係る繊維強化複合材は、押出機、好ましくは二軸押出機において個々の成分を溶融ブレンドすることによって調製されることがとりわけ好ましい。
【0115】
特に、本発明に係る繊維強化複合材が、
(a)ポリプロピレン、相溶化剤、及び任意選択で添加剤を押出機、好ましくは二軸押出機に供給する工程と、
(b)工程(a)で得られた組成物を200~270℃の温度で溶融混練する工程と、
(c)ガラス(短)繊維を、工程(b)で得られた組成物を含有する押出機、好ましくは二軸押出機に供給する工程と、
(d)工程(c)で得られた組成物を200~270℃の温度で溶融混練し、これにより当該繊維強化複合材を得る工程と
を含むプロセスによって得られることが好ましく、
好ましくは、このポリプロピレンは、式(I)を有するメタロセン触媒の存在下で、より好ましくは式(II)を有するメタロセン触媒の存在下でプロピレン及び任意選択でエチレンを重合することにより製造され、その後、このポリプロピレンはビスブレーキングされ、任意選択で、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記ポリプロピレンのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である。
【0116】
物品
本発明はさらに、少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%の本発明に係る繊維強化複合材を含み、さらにより好ましくは本発明に係る繊維強化複合材からなる物品、好ましくは自動車用物品に関する。
【0117】
とりわけ好ましい自動車用物品は、ダッシュボード及びダッシュボード支持体、バンパー支持体、ドア及びテールゲートの耐荷重構成要素、ベンチレータ及びバッテリキャリアのようなボンネット下構成要素、並びに床下保護要素である。
【0118】
とりわけ好ましい実施形態
上記に提供された情報に基づいて、本発明は、とりわけ、以下の実施形態に関する。
【0119】
好ましい実施形態では、本発明に係る繊維強化複合材は、10~100g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のプロピレンホモポリマーと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス短繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)当該繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
を含み、さらに、
当該繊維強化複合材中のプロピレンホモポリマー、ガラス短繊維、相溶化剤及び添加剤の総量は98~100重量%の範囲にあり、
なおさらに、
上記プロピレンホモポリマーは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有し、
好ましくは、上記プロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記プロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記プロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)である。
【0120】
すなわち、好ましい実施形態では、本発明に係る繊維強化複合材は、10~50g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス短繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)当該繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
を含み、さらに、
当該繊維強化複合材中のビスブレーキングされたプロピレンホモポリマー、ガラス短繊維、相溶化剤及び添加剤の総量は98~100重量%の範囲にあり、
なおさらに、
上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.10~0.80%の範囲の13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有し、
上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)であり、
好ましくは、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である。
【0121】
非常に具体的な実施形態では、本発明に係る繊維強化複合材は、10~100g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲のISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のプロピレンホモポリマーと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス短繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)当該繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
を含み、さらに、
当該繊維強化複合材中のプロピレンホモポリマー、ガラス短繊維、相溶化剤及び添加剤の総量は98~100重量%の範囲にあり、
なおさらに、
上記プロピレンホモポリマーは、
(i)153~159℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.10~0.90%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有し、
上記プロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記プロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記プロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)であり、
なおさらに、
上記ガラス短繊維は、2.0~10.0mmの平均繊維長、及び5~20μmの平均直径を有し、
上記相溶化剤は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンであり、この無水マレイン酸グラフトポリプロピレンは、0.1~5重量%の無水マレイン酸含有量を有する。
【0122】
さらなる非常に具体的な実施形態では、本発明に係る繊維強化複合材は、10~100g/10分の範囲、好ましくは15~50g/10分の範囲のISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、かつ
(a)当該繊維強化複合材に基づいて59~90重量%のビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーと、
(b)当該繊維強化複合材に基づいて9.0~40重量%のガラス短繊維と、
(c)当該繊維強化複合材に基づいて0.05~5.0重量%の相溶化剤と、
(d)当該繊維強化複合材に基づいて0.1~5.0重量%の添加剤と
を含み、さらに、
当該繊維強化複合材中のビスブレーキングされたプロピレンホモポリマー、ガラス短繊維、相溶化剤及び添加剤の総量は98~100重量%の範囲にあり、
なおさらに、
上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーは、
(i)152~160℃の範囲の、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される融解温度Tm、
(ii)0.15~0.80%の範囲の、13C-NMR分光法により決定される2,1位置欠陥、
(iii)0.10~0.90重量%の範囲の、ISO16152(25℃)に従って測定される冷キシレン可溶分(XCS)率、
(iv)20~500g/10分の範囲の、ISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び
(v)1.0~3.0未満の範囲の、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される分子量分布(MWD)
を有し、
上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーは、不等式(II)を満たし、
51<Tm/MWD<80 (II)
上記不等式(II)中、
Tmは、ISO11357-3(加熱及び冷却の速度10℃/分)に従ってDSCにより決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの融解温度[℃]であり、
MWDは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定される上記ビスブレーキングされたプロピレンホモポリマーの分子量分布(MWD)であり、
なおさらに、
上記ガラス短繊維は、2.0~10.0mmの平均繊維長、及び5~20μmの平均直径を有し、
上記相溶化剤は、無水マレイン酸グラフトポリプロピレンであり、この無水マレイン酸グラフトポリプロピレンは、0.1~5重量%の無水マレイン酸含有量を有し、
好ましくは、ビスブレーキング比(VR)は2.5~20.0の範囲にあり、ビスブレーキング比(VR)は下式に従って決定され、
VR=MFR2(最終)/MFR2(開始)
上記式中、
「MFR2(最終)」は、ビスブレーキング後の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)であり、
「MFR2(開始)」は、ビスブレーキング前の上記プロピレンホモポリマーのISO1133に従って測定されるメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)である。
【0123】
以下において、本発明を実施例により説明する。
【実施例
【0124】
1. 決定方法
用語及び決定方法の以下の定義は、別段の定義がない限り、本発明の上記概説及び以下の実施例に適用される。
【0125】
a)メルトフローレート
メルトフローレート(MFR)は、ISO1133に従って決定され、g/10分で示される。ポリプロピレンのMFRは、230℃の温度で、2.16kgの荷重下で決定する。
【0126】
b)熱たわみ温度B(HDT B)
熱たわみ温度B(HDT B)は、EN ISO1873-2に準拠して射出成形した80×10×4mmのテストバー(試験棒)を用いてISO75Bに従って0.45MPaで決定した。
【0127】
c)冷キシレン可溶分率(XCS、重量%)
キシレンに可溶なポリマーの量は、ISO16152;第1版;2005-07-01に従って25.0℃で測定する。
【0128】
d)融解温度T及び結晶化温度T
融解温度Tは、RSC冷却装置及びデータステーションを備えたTA-Instruments(ティーエー・インスツルメンツ) 2920 Dual-Cellを用いて、ISO11357-3に従って示差走査熱量測定(DSC)により決定する。+23~+210℃の間の加熱/冷却/加熱サイクルにおいて、10℃/分の加熱及び冷却速度を適用する。結晶化温度(T)は冷却工程から決定し、融解温度(T)及び融解エンタルピー(H)は第2の加熱工程で決定する。
【0129】
e)引張弾性率
引張弾性率及び破断点伸びは、EN ISO1873-2に記載される射出成形試験片(1Bドッグボーン形状、厚さ4mm)を用いてISO527-2に従って測定する。
【0130】
f)シャルピー衝撃強度
シャルピー衝撃強度は、EN ISO1873-2に従って調製した80×10×4mmの射出成形バー試験片を用いて、+23℃でISO1791eUに従って測定した。
【0131】
g)13C-NMR分光法によるコポリマー微細構造の定量
定量的核磁気共鳴(NMR)分光法を使用して、ポリマーのコモノマー含有量を定量した。定量的13C{H}NMRスペクトルは、H及び13Cについてそれぞれ400.15MHz及び100.62MHzで動作するBruker Advance III 400 NMR分光計を使用して、溶液状態で記録した。すべてのスペクトルを、125℃の13Cに最適化した10mm拡張温度プローブヘッドを使用し、すべての空圧について窒素ガスを使用して記録した。およそ200mgの物質を、溶媒中の緩和剤の65mM溶液(Singh,G.、Kothari,A.、Gupta,V.、Polymer Testing 28 5(2009)、475)を与えるクロム(III)アセチルアセトナート(Cr(acac))と共に3mlの1,2-テトラクロロエタン-d(TCE-d)に溶解した。均一溶液を確保するために、ヒートブロック中での最初の試料調製のあと、そのNMRチューブを回転式オーブンの中で少なくとも1時間さらに加熱した。磁石の中へ挿入したあと、チューブを10Hzで回転させた。正確なエチレン含有量の定量のために必要である高分解能及び定量性を主な理由としてこの設定を選んだ。最適化した先端角(tip angle)、1sの繰り返し時間(recycle delay)及びバイレベルWALTZ16デカップリングスキーム(Zhou,Z.、Kuemmerle,R.、Qiu,X.、Redwine,D.、Cong,R.、Taha,A.、Baugh,D.、Winniford,B.、J.Mag.Reson. 187(2007)225;Busico,V.、Carbonniere,P.、Cipullo,R.、Pellecchia,R.、Severn,J.、Talarico,G.、Macromol.Rapid Commun. 2007、28、1128)を使用して、NOEを伴わない標準的なシングルパルス励起を採用した。1スペクトルあたり全部で6144(6k)の過渡信号を取得した。
定量的13C{H}NMRスペクトルを、独自のコンピュータープログラムを使用して処理し、積分し、関連の定量的特性を積分値から求めた。すべての化学シフトは、溶媒の化学シフトを使用して、30.00ppmのエチレンブロック(EEE)の中央のメチレン基を間接的に基準とした。このアプローチにより、この構造単位が存在しない場合でも比較可能な基準設定が可能になった。エチレンの組み込みに対応する特徴的なシグナルを観察した(Cheng,H.N.、Macromolecules 17(1984)、1950)。
(L.Resconi、L.Cavallo、A.Fait、F.Piemontesi、Chem.Rev.2000、100(4)、1253、Cheng,H.N. Macromolecules 1984、17、1950、及びW-J.Wang及びS.Zhu、Macromolecules 2000、33 1157に記載されているように)2,1エリスロ位置欠陥に対応する特徴的なシグナルが観察された場合、決定された特性に対するその位置欠陥の影響についての補正が必要であった。他の種類の位置欠陥に対応する特徴的なシグナルは認められなかった。
【0132】
コモノマー分率は、13C{H}スペクトルのスペクトル領域全体にわたる複数のシグナルの積分により、Wangら(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000) 1157)の方法を使用して定量した。この方法を、そのロバスト性、及び必要な場合には位置欠陥の存在を考慮できることが理由で選んだ。積分領域は、直面するコモノマー含有量の全範囲にわたる適用性を高めるためにわずかに調整した。
【0133】
PPEPP配列中の孤立したエチレンのみが観察される系については、Wangらの方法を、存在しないことが既知の部位の非ゼロ積分の影響を低減するように改変した。このアプローチはそのような系に対するエチレン含有量の過大評価を低減し、これは、絶対的なエチレン含有量を求めるために使用される部位の数を
E=0.5(Sββ+Sβγ+Sβδ+0.5(Sαβ+Sαγ))
に減じることにより成し遂げられた。
この部位の組の使用により、対応する積分方程式は、Wangらの論文(Wang,W-J.、Zhu,S.、Macromolecules 33(2000)、1157)で使用されたのと同じ表記法を使用して、
E=0.5(I+I+0.5(I+I))
となる。絶対的プロピレン含有量のために使用した方程式は改変しなかった。
モルパーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した。
E[モル%]=100×fE
重量パーセントでのコモノマー組み込みはモル分率から算出した。
E[重量%]=100×(fE×28.06)/((fE×28.06)+((1-fE)×42.08))
【0134】
h)数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
数平均分子量(M)、重量平均分子量(M)及び分子量分布(M/M)は、ISO16014-4:2003及びASTM D6474-99に従ってゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により決定した。赤外(IR)検出器を備えたPolymerChar GPC機器を、Polymer Laboratories(ポリマー・ラボラトリーズ)製の3本のOlexisカラム及びl本のOlexis Guardカラム、並びに溶媒としての1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB、250mg/Lの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチル-フェノールで安定化)と共に、160℃で、1mL/分の一定流量で使用した。1回の分析あたり200μLの試料溶液を注入した。上記のカラムセットを、0.5kg/モル(mol)~11500kg/モルの範囲の少なくとも15個の狭いMWDのポリスチレン(PS)標準を用いたユニバーサルキャリブレーション(ISO16014-2:2003に準拠)を使用して較正した。使用したPS、PE及びPPに対するMark Houwink定数は、ASTM D6474-99に記載されているとおりである。すべての試料を、上記GPC機器のオートサンプラーの中で連続的にゆっくり振とうしながら、最高160℃でPPについては2.5時間又はPEについては3時間、5.0~9.0mgのポリマーを(160℃の)8mLの安定化TCB(移動相と同じ)に溶解することにより調製した。
【0135】
i)VOC及びFOG
VOC値及びFOG値は、EN ISO19069-2:2016に従って射出成形板を試料調製した後、VDA278(2011年10月;Thermal Desorption Analysis of Organic Emissions for the Characterization of Non-Metallic Materials for Automobiles(自動車用非金属材料の特性評価のための有機放出物の昇温脱離分析)、VDA Verband der Automobilindustrie(ドイツ自動車工業会))に従って測定した。これらの板を製造直後にアルミニウム複合箔に詰め、箔を密封した。
VDA278 2011年10月によれば、VOC値は、「容易に揮発性から中程度の揮発性の物質の合計」として定義される。これはトルエン当量として計算される。この推奨に記載されている方法は、n-ペンタコサン(C25)までの沸騰/溶出範囲の物質を決定及び分析することを可能にする。
FOG値は、「n-テトラデカン(これを含む)の保持時間から溶出する揮発性の低い物質の合計」として定義される。これはヘキサデカン当量として計算される。n-アルカン「C14」~「C32」の沸点範囲の物質が決定され、分析される。
【0136】
j)曇り
曇りは、DIN75201:2011-11、方法B(重量測定法)に従って、射出成形したプレートから切り出した圧縮成形試験片(直径80mm±1mm、厚さ<1cm)に対して測定した。この方法では、アルミニウム箔上の曇り凝縮物のmg単位の質量を、曇り試験前後の箔の秤量により決定する。用語「曇り」は、例えば車両のフロントガラス等のガラス部品上に凝縮された揮発性物質の画分を指す。
【0137】
k)平均繊維直径
平均繊維直径は、ISO1888:2006(E)、方法B、顕微鏡倍率1000に従って決定する。
【0138】
2. ポリプロピレンの調製
a)シングルサイト触媒系1の調製
触媒錯体
以下のメタロセン錯体を、国際公開第2019/179959号パンフレットに記載されるように使用した。
【化7】
【0139】
MAO-シリカ担体の調製
メカニカルスターラー及びフィルターネットを備えた鋼製反応器に窒素を流し、反応器温度を20℃に設定した。次に、600℃で予備焼成したAGC Si-Tech Co製のシリカグレードDM-L-303(5.0kg)を供給ドラムから添加し、続いて手動弁を用いて窒素で慎重に加圧及び減圧した。次いで、トルエン(22kg)を添加した。混合物を15分間撹拌した。次に、Lanxess(ランクセス)製のトルエン中のMAOの30重量%溶液(9.0kg)を、反応器の上部の供給ラインを介して70分以内に添加した。次いで、反応混合物を90℃まで加熱し、90℃でさらに2時間撹拌した。スラリーを沈降させ、母液を濾別した。触媒を90℃でトルエン(22kg)で2回洗浄し、続いて沈降させ、濾過した。反応器を60℃に冷却し、固体をヘプタン(22.2kg)で洗浄した。最後に、MAO処理したSiOを、撹拌しながら、窒素流下、60℃で2時間、次いで真空下(-0.5barg)で5時間乾燥させた。MAO処理した担体を自由流動性の白色粉末として収集した。この担体は12.2重量%のAlを含有するということが分かった。
【0140】
シングルサイト触媒系1の調製
トルエン中の30重量%MAO(0.7kg)を、20℃でビュレットを介して鋼製の窒素置換した反応器に添加した。次いで、トルエン(5.4kg)を撹拌しながら添加した。上記の2a)に記載のメタロセン錯体(93g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンでフラッシュした(洗い流した)。この混合物を20℃で60分間撹拌した。次いで、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(91g)を金属シリンダーから添加し、続いて1kgのトルエンでフラッシュした。この混合物を室温で1時間撹拌した。得られた溶液を、上記のように調製したMAO-シリカ担体の撹拌したケーキに1時間かけて添加した。ケーキを12時間静置した後、撹拌しながら、N流下、60℃で2時間、真空下(-0.5barg)でさらに5時間乾燥させた。
乾燥した触媒を、13.9%のAl及び0.11%のZrを含有するピンク色の自由流動性粉末の形態でサンプリングした。
【0141】
b)チーグラー・ナッタ触媒系2の調製
チーグラー・ナッタ触媒系が使用されている。
使用した化学物質:
Chemtura(ケムチュラ)により提供されるブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et)、BEM)の20%トルエン溶液
Amphochem(アムフォケム)により提供される2-エチルヘキサノール、
Dow(ダウ)により提供される3-ブトキシ-2-プロパノール-(DOWANOL(商標)PnB)、
SynphaBase(シンファベース)により提供されるシトラコン酸ビス(2-エチルヘキシル)
Millenium Chemicals(ミレニアム・ケミカルズ)により提供されるTiCl
Aspokem(アスポケム)により提供されるトルエン、
Evonik(エボニック)により提供されるViscoplex(登録商標)1-254、
Chevron(シェブロン)によって提供されるヘプタン。
【0142】
Mgアルコキシ化合物の調製
Mgアルコキシド溶液は、20Lのステンレス鋼反応器中で、ブチルエチルマグネシウム(Mg(Bu)(Et))の20重量%トルエン溶液11kgに、4.7kgの2-エチルヘキサノールと1.2kgのブトキシプロパノールとの混合物を撹拌(70rpm)しながら添加することによって調製した。添加中、反応器の内容物を45℃未満に維持した。添加が完了した後、反応混合物の混合(70rpm)を60℃で30分間続けた。室温に冷却した後、温度を25℃未満に維持しながら、2.3kgの供与体シトラコン酸ビス(2-エチルヘキシル)を上記Mg-アルコキシド溶液に添加した。撹拌(70rpm)しながら15分間混合を続けた。
【0143】
固体触媒成分の調製
20.3kgのTiCl及び1.1kgのトルエンを20Lのステンレス鋼反応器に加えた。350rpmで混合し、温度を0℃に保ちながら、調製したMgアルコキシ化合物14.5kgを1.5時間かけて添加した。1.7LのViscoplex(登録商標)1-254及び7.5kgのヘプタンを添加し、0℃で1時間混合した後、形成されたエマルションの温度を1時間以内に90℃に上昇させた。30分後、混合を停止し、触媒液滴を固化させ、形成された触媒粒子を沈降させた。沈降(1時間)後、上清液をサイホンで吸い上げた。次いで触媒粒子をトルエン45kgで90℃で20分間洗浄し、続いてヘプタンで2回洗浄した(30kg、15分)。1回目のヘプタン洗浄中、温度を50℃まで低下させ、2回目の洗浄中、室温まで低下させた。
このようにして得られた触媒を、共触媒としてトリエチルアルミニウム(TEAL)及び供与体としてジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)と共に使用した。使用した比は以下の通りであった。
TEAL/Ti:250モル/モル
TEAL/ドナー:10モル/モル
【0144】
【表1】
【0145】
c)プロピレンホモポリマーHPP1のHPP2へのビスブレーキング
第2の工程において、200~230℃で同方向回転二軸押出機を使用し、(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン(Akzo Nobel(アクゾノーベル)、オランダ、によって販売されているTrigonox 101)を表2に示す目標MFRを達成するのに適切な量で使用することによって、HPP1をビスブレーキングすることにより、プロピレンホモポリマーHPP2を製造する。
【0146】
上記プロピレンホモポリマーの特性を表2にまとめる。
【0147】
【表2】
【0148】
発明例IE1並びに比較例CE1及びCE2は、L/D比が43の同方向回転二軸押出機(Coperion(コペリオン)製ZSK40)上で配合(コンパウンディング)することによって調製した。以下のプロセスパラメータを使用した。
・100kg/hのスループット、
・100~150rpmのスクリュー回転数
・供給ゾーンから上昇し、ダイプレートに向かって再び下降する220~250℃のバレル温度、
・直径4mmの穴及び3本のストランドを有するダイプレート
【0149】
ポリプロピレン及びガラス短繊維とは異なる添加剤を押出機に供給し、第2バレル内で溶融混練した。ポリプロピレンと添加剤とを混合するための第1の混練ゾーンは、第3のバレルと第5のバレルとの間に位置する。ガラス短繊維を、サイドフィーダーを用いて第6バレルで添加した。ガラス繊維分散のための第2の混練ゾーンは、第7のバレルと第12のバレルとの間に位置する。
複合材及びそれらの特性を表3に要約する。
【0150】
【表3】
【0151】
ガラス繊維としては、平均繊維長3.0mm、平均直径10μmの日本電気硝子の市販品ECS03T-480Hを用いた。
以下の添加剤の組み合わせを配合に使用した:0.2重量%のトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト(CAS番号31570-04-4、BASF AF(ビーエーエスエフ)、ドイツ、からIrgafos 168として市販されている)、0.1重量%のペンタエリスリチル-テトラキス(3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(CAS番号6683-19-8、BASF AF、ドイツからIrganox 1010として市販されている)及び0.2重量%の、Cabot Corporation(キャボット・コーポレーション)、ドイツ、のカーボンブラックマスターバッチ「Plasblak PPP6331」。
相溶化剤は、1.4重量%の無水マレイン酸含量及び80g/10分超のMFRを有するBYK(ビーワイケー)の市販の無水マレイン酸グラフトポリプロピレン「Sconia TPPP 8112 GA」である。