(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】バッテリー状態診断装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/48 20060101AFI20241004BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241004BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20241004BHJP
G01R 31/3835 20190101ALI20241004BHJP
G01R 31/396 20190101ALI20241004BHJP
G01R 31/388 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H02J7/00 Q
G01R31/392
G01R31/3835
G01R31/396
G01R31/388
(21)【出願番号】P 2022571320
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 KR2021013730
(87)【国際公開番号】W WO2022080746
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134587
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】イ-ガン・ソン
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-176963(JP,A)
【文献】特開2020-169943(JP,A)
【文献】特開2020-018089(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2019-0061809(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-1376910(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H02J 7/00
G01R 31/392
G01R 31/3835
G01R 31/396
G01R 31/388
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバッテリーの各々の電圧を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧に関わる電圧情報を受信し、受信した電圧情報に基づいて前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度プロファイルを生成するプロファイル生成部と、
BOL状態の前記複数のバッテリーに対して予め設定された基準プロファイルに基づいて
現在状態の前記複数のバッテリーの前記分布度プロファイルに対する参照電圧を設定し、前記測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧と前記設定された参照電圧を比較して前記複数のバッテリーの各々の状態を診断する制御部と、
を含むことを特徴とする、バッテリー状態診断装置。
【請求項2】
前記プロファイル生成部は、
前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する正規分布を示す前記分布度プロファイルを生成することを特徴とする、請求項1に記載のバッテリー状態診断装置。
【請求項3】
前記基準プロファイルは、
前記複数のバッテリーがBOL状態であるときに測定された各々の電圧に対する分布度を示すプロファイルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載のバッテリー状態診断装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記基準プロファイルに対して設定された
BOL状態の前記複数のバッテリーの異常状態を検出するための基準電圧に対応するように前記分布度プロファイルに対する参照電圧を設定することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のバッテリー状態診断装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記基準プロファイルの全体電圧範囲で前記基準電圧から
前記基準プロファイルにおける電圧値の平均値である前記基準プロファイルの平均電圧までに対応する
確率密度の合計である基準密度を前記分布度プロファイルに適用することで前記参照電圧を設定することを特徴とする、請求項4に記載のバッテリー状態診断装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記分布度プロファイルの平均電圧を基準にして前記分布度プロファイルから前記基準密度に対応する電圧を算出し、算出された電圧を前記参照電圧に設定することを特徴とする、請求項5に記載のバッテリー状態診断装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記複数のバッテリーのうち測定された電圧が前記参照電圧未満であるバッテリーの状態を異常状態に診断することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のバッテリー状態診断装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記複数のバッテリーのうち測定された電圧が前記参照電圧以上であるバッテリーの状態を正常状態に診断することを特徴とする、請求項7に記載のバッテリー状態診断装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のバッテリー状態診断装置を含む、バッテリーパック。
【請求項10】
複数のバッテリーの各々の電圧を測定する測定段階と、
前記測定段階で測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度プロファイルを生成するプロファイル生成段階と、
BOL状態の前記複数のバッテリーに対して予め設定された基準プロファイルに基づいて
現在状態の前記複数のバッテリーの前記分布度プロファイルに対する参照電圧を設定する参照電圧設定段階と、
前記測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧と前記設定された参照電圧を比較して前記複数のバッテリーの各々の状態を診断する状態診断段階と、
を含むことを特徴とする、バッテリー状態診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー状態診断装置及び方法に関し、より詳しくは、確率統計的にバッテリーの状態が診断可能なバッテリー状態診断装置及び方法に関する。
【0002】
本出願は、2020年10月16日出願の韓国特許出願第10-2020-0134587号に基づく優先権を主張し、該当出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
最近、ノートブックPC、ビデオカメラ、携帯電話などのような携帯用電子製品の需要が急増し、電気自動車、エネルギー貯蔵用蓄電池、ロボット、衛星などの開発が本格化するにつれ、反復的な充放電の可能な高性能バッテリーについての研究が活発に進行しつつある。
【0004】
現在、商用化したバッテリーとしては、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、リチウムバッテリーなどがあり、このうち、リチウムバッテリーは、ニッケル系のバッテリーに比べてメモリー効果がほとんど起こらず、充放電が自由で、自己放電率が非常に低くてエネルギー密度が高いという長所から脚光を浴びている。
【0005】
このようなバッテリーは、生産工程における偏差及び出荷後の実使用環境における偏差などによって、同じ製品であるとしても電気化学特性に差異が増加し得る。例えば、バッテリー間の差異は、充放電サイクル中の挙動偏差につながり、これによる発熱及び電圧差が非線形的に加速され得る。
【0006】
従来には、固定された臨界値または固定された臨界範囲を設定し、設定された臨界値または臨界範囲を用いて異常状態のバッテリーを診断していた。但し、このような従来の方式は、経時によるバッテリーの退化を反映できないという問題がある。また、バッテリーの退化を反映して臨界値または臨界範囲を設定するための数値決定モデルの複雑度のため、実際に具現しにくいという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、バッテリー状態診断装置及び方法を提供することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的及び長所は、下記の説明によって理解でき、本発明の実施例によってより明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示される手段及びその組合せによって実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一面によるバッテリー診断装置は、複数のバッテリーの各々の電圧を測定するように構成された測定部と、前記測定部によって測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧に関わる電圧情報を受信し、受信した電圧情報に基づいて前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度プロファイルを生成するように構成されたプロファイル生成部と、前記複数のバッテリーに対して予め設定された基準プロファイルに基づいて前記分布度プロファイルに対する参照電圧を設定し、前記測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧と前記設定された参照電圧を比較して前記複数のバッテリーの各々の状態を診断するように構成された制御部と、を含み得る。
【0010】
前記プロファイル生成部は、前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する正規分布を示す前記分布度プロファイルを生成するように構成され得る。
【0011】
前記基準プロファイルは、前記複数のバッテリーがBOL状態であるときに測定された各々の電圧に対する分布度を示すプロファイルであり得る。
【0012】
前記制御部は、前記基準プロファイルに対して設定された基準電圧に対応するように前記分布度プロファイルに対する参照電圧を設定するように構成され得る。
【0013】
前記制御部は、前記基準プロファイルの全体電圧範囲で前記基準電圧から前記基準プロファイルの平均電圧までに対応する基準密度を前記分布度プロファイルに適用することで前記参照電圧を設定するように構成され得る。
【0014】
前記制御部は、前記分布度プロファイルの平均電圧を基準にして前記分布度プロファイルから前記基準密度に対応する電圧を算出し、算出された電圧を前記参照電圧に設定するように構成され得る。
【0015】
前記制御部は、前記複数のバッテリーのうち測定された電圧が前記参照電圧未満であるバッテリーの状態を異常状態に診断するように構成され得る。
【0016】
前記制御部は、前記複数のバッテリーのうち測定された電圧が前記参照電圧以上であるバッテリーの状態を正常状態に診断するように構成され得る。
【0017】
本発明の他面によるバッテリーパックは、本発明の一面によるバッテリー状態診断装置を含み得る。
【0018】
本発明の他面によるバッテリー状態診断方法は、複数のバッテリーの各々の電圧を測定する測定段階と、前記測定段階で測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度プロファイルを生成するプロファイル生成段階と、前記複数のバッテリーに対して予め設定された基準プロファイルに基づいて前記分布度プロファイルに対する参照電圧を設定する参照電圧設定段階と、前記測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧と前記設定された参照電圧を比較して前記複数のバッテリーの各々の状態を診断する状態診断段階と、を含み得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一面によると、複数のバッテリーのBOL(Beginning of life)状態と現在の退化状態を考慮し、複数のバッテリーの各々の状態が診断可能であるという長所がある。
【0020】
本発明の効果は上述した効果に制限されず、言及されていない本発明の他の効果は請求範囲の記載から当業者により明らかに理解されるだろう。
【0021】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置を概略的に示した図である。
【
図2】本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置によって生成された分布度プロファイルの一示を示した図である。
【
図3】本発明の一実施例による基準プロファイルの一例を示した図である。
【
図4】本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置によって生成された分布度プロファイル及び設定された参照電圧の一例を示した図である。
【
図5】本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置を含むバッテリーパックの例示的な構成を示した図である。
【
図6】本発明のさらに他の実施例によるバッテリー状態診断方法を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を詳しく説明する。これに先立ち、本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0024】
したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施例に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0025】
また、本発明に関連する公知の機能または構成についての具体的な説明が、本発明の要旨をぼやかすと判断される場合、その説明を省略する。
【0026】
第1、第2などのように序数を含む用語は、多様な構成要素のうちいずれか一つを残りと区別する目的として使用され、このような用語によって構成要素が限定されることではない。
【0027】
なお、明細書の全体にかけて、ある部分が、ある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除くことではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0028】
また、明細書に記載の「制御部」のような用語は、少なくとも一つの機能や動作を処理する単位を示し、これはハードウェアやソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの結合せにより具現され得る。
【0029】
さらに、明細書の全体に亘って、ある部分が他の部分と「連結(接続)」されているとするとき、これは、「直接的に連結(接続)」されている場合のみならず、その中間に他の素子を介して「間接的に連結(接続)」されている場合も含む。
【0030】
以下では、添付された図面を参照して本発明の望ましい実施例を説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置100を概略的に示した図である。
【0032】
図1を参照すると、バッテリー状態診断装置100は、測定部110と、プロファイル生成部120と、制御部130と、を含み得る。
【0033】
測定部110は、複数のバッテリーの各々の電圧を測定するように構成され得る。
【0034】
ここで、バッテリーは、負極端子及び正極端子を備え、物理的に分離可能な一つの独立したセルを意味する。一例で、パウチ型リチウムポリマーセル一つが一つのバッテリーとして看做され得る。また、バッテリーは、一つ以上のバッテリーセルが直列及び/または並列に接続されたバッテリーモジュールであり得る。以下では、説明の便宜のために、バッテリーがバッテリーセルであることに説明する。
【0035】
具体的には、測定部110は、複数のバッテリーの各々の電圧を測定し、測定された複数の電圧に対する電圧情報を出力し得る。
【0036】
プロファイル生成部120は、前記測定部110によって測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧に関わる電圧情報を受信するように構成され得る。
【0037】
例えば、測定部110とプロファイル生成部120は、通信可能に接続され得る。これによって、測定部110から出力された電圧情報をプロファイル生成部120が受信し得る。
【0038】
また、プロファイル生成部120は、受信した電圧情報に基づいて前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度プロファイルP1を生成するように構成され得る。
【0039】
ここで、分布度プロファイルP1は、複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度を示すプロファイルであり得る。例えば、前記プロファイル生成部120は、前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する正規分布を示す前記分布度プロファイルP1を生成するように構成され得る。
【0040】
図2は、本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置100によって生成された分布度プロファイルP1の一例を示した図である。
【0041】
例えば、
図2を参照すると、プロファイル生成部120によって分布度プロファイルP1が生成され得る。具体的には、平均電圧E1が3.0Vである正規分布を従う分布度プロファイルP1が生成され得る。
【0042】
制御部130は、前記複数のバッテリーに対して予め設定された基準プロファイルP2に基づいて、前記分布度プロファイルP1に対する参照電圧V1を設定するように構成され得る。
【0043】
望ましくは、プロファイル生成部120と制御部130は、通信可能に接続され得る。即ち、プロファイル生成部120は、生成した分布度プロファイルP1を出力し、制御部130がプロファイル生成部120から出力された分布度プロファイルP1を受信し得る。
【0044】
具体的には、前記基準プロファイルP2は、前記複数のバッテリーがBOL(Beginning of life)状態であるときに測定された各々の電圧に対する分布度を示すプロファイルであり得る。例えば、複数のバッテリーは、BOL状態であるときに電圧が測定され、測定された電圧に基づいて基準プロファイルP2が予め生成され得る。
【0045】
即ち、基準プロファイルP2は、BOL状態の複数のバッテリーの電圧に対する正規分布を示すプロファイルであり、分布度プロファイルP1は、現在状態の複数のバッテリーの電圧に対する正規分布を示すプロファイルであり得る。
【0046】
図3は、本発明の一実施例による基準プロファイルP2の一例を示した図である。例えば、
図3を参照すると、基準プロファイルP2は、平均電圧E2が3.4Vである正規分布を従うプロファイルであり得る。
【0047】
具体的には、制御部130は、基準プロファイルP2の基準電圧V2に対応するように分布度プロファイルP1で参照電圧V1を設定し得る。即ち、参照電圧V1は、予め設定された下限電圧値を基準にして設定されることではなく、基準プロファイルP2の基準電圧V2に対応するように設定され得る。したがって、制御部130は、複数のバッテリーのBOL状態を反映する基準プロファイルP2及び基準電圧V1に基づいて、複数のバッテリーの現在状態に対する参照電圧V1を設定し得る。
【0048】
図4は、本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置100によって生成された分布度プロファイルP1及び設定された参照電圧V1の一例を示した図である。
【0049】
例えば、
図4の実施例で、基準プロファイルP2の平均電圧E2は3.4Vであり、基準電圧V2は3.25Vであり得る。また、分布度プロファイルP1の平均電圧は3.0Vであり、参照電圧V1は2.4Vであり得る。
【0050】
また、制御部130は、前記測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧と前記設定された参照電圧V1を比較して前記複数のバッテリーの各々の状態を診断するように構成され得る。
【0051】
例えば、前記制御部130は、前記複数のバッテリーのうち測定された電圧が前記参照電圧V1未満であるバッテリーの状態を異常状態に診断するように構成され得る。また、前記制御部130は、前記複数のバッテリーのうち測定された電圧が前記参照電圧V1以上であるバッテリーの状態を正常状態に診断するように構成され得る。
【0052】
例えば、
図4の実施例で、複数のバッテリーのうち測定部110によって測定された電圧が2.4V未満であれば、制御部130は、当該バッテリーの状態を異常状態に診断するように構成され得る。逆に、複数のバッテリーのうち測定部110によって測定された電圧が2.4V以上であれば、制御部130は、当該バッテリーの状態を正常状態に診断するように構成され得る。
【0053】
即ち、本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置100は、予め設定された電圧値に基づいてバッテリーの状態を画一的に診断せず、BOL状態のバッテリーに対する基準プロファイルP2と現在状態のバッテリーに対する分布度プロファイルP1を共に考慮してバッテリーの現在状態を診断し得る。即ち、バッテリー状態診断装置100は、バッテリーの退化を考慮して複数のバッテリーの各々の状態が診断できるため、複数のバッテリーの各々の状態をより正確に診断可能である。
【0054】
より具体的には、基準プロファイルP2は、複数のバッテリーがBOL状態であるときに測定された電圧に基づいて生成されたものであって、基準電圧V2はBOL状態であるが、異常状態であるバッテリーを検出するために設定された電圧であり得る。このような複数のバッテリーが退化するとしても、複数のバッテリーの退化は、基準プロファイルP2に対応するように正規分布を従い得る。これによって、バッテリー状態診断装置100は、基準プロファイルP2の基準電圧V2を考慮して分布度プロファイルP1の参照電圧V1を設定し、設定された参照電圧V1に基づいてバッテリーの状態を診断することで、複数のバッテリーの退化を考慮して複数のバッテリーの各々の状態を診断できる。
【0055】
他の実施例で、制御部130は、外部からターゲット電圧を受信し得る。ここで、ターゲット電圧は、BOL状態の複数のバッテリーに対する状態診断のために設定された電圧値であり得る。例えば、バッテリーは、自動車、エネルギー貯蔵装置(Energy storage system,ESS)及び家電製品などの多様な製品に用いられ得る。バッテリーの使用用途に応じて、バッテリーの状態を診断するための基準値として考慮される基準電圧V2を適切に変更するために、制御部130は、外部からターゲット電圧を受信した場合、前記ターゲット電圧を基準電圧V2に設定し得る。そして、制御部130は、ターゲット電圧から設定された基準電圧V2に基づいて、分布度プロファイルP1から参照電圧V1を設定し、設定された参照電圧V1に基づいてバッテリーの状態を診断し得る。即ち、バッテリーの使用環境に応じて基準電圧V2を適切に設定可能であるため、バッテリーの使用環境に基づいてバッテリーの状態を適応的に診断可能であるという長所がある。
【0056】
一方、バッテリー状態診断装置100に備えられた制御部130は、本発明で行われる多様な制御ロジッグを実行するために当業界に知られたプロセッサー、ASIC(application-specific integrated circuit)、他のチップセット、論理回路、レジスター、通信モデム、データ処理装置などを選択的に含み得る。また、前記制御ロジッグがソフトウェアに具現されるとき、前記制御部130は、プログラムモジュールの集合として具現され得る。この際、プログラムモジュールは、メモリーに保存され、制御部130によって実行され得る。前記メモリーは、制御部130の内部または外部に存在し、公知の多様な手段で制御部130と接続され得る。
【0057】
また、バッテリー状態診断装置100は、保存部140をさらに含み得る。 保存部140は、バッテリー状態診断装置100の各構成要素が動作及び機能を行うのに必要なデータやプログラムまたは動作及び機能が行われる過程で生成されるデータなどを保存し得る。保存部140は、データを記録、消去、更新及び読出可能な公知の情報保存手段であれば、その種類は特に制限されない。一例として、情報保存手段には、RAM、フラッシュメモリー(登録商標)、ROM、EEPROM、レジスターなどが挙げられる。また、保存部140は、制御部130によって実行可能なプロセスが定義されたプログラムコードを保存し得る。
【0058】
例えば、保存部140には、複数のバッテリーに対する基準プロファイルP2及び基準電圧V2に対する情報、基準割合に対する情報及び分布度プロファイルP1が保存され得る。そして、制御部130は、保存部140にアクセスして複数のバッテリーに対する基準プロファイルP2及び基準電圧V2に関わる情報、基準割合に関わる情報を獲得し得る。
【0059】
一方、プロファイル生成部120は、所定の診断周期または診断命令が入力された場合、分布度プロファイルP1を生成し得る。そして、制御部130は、プロファイル生成部120から分布度プロファイルP1を受信する度に、基準プロファイルP2と受信した分布度プロファイルP1を用いて複数のバッテリーの現在状態を診断し得る。即ち、現在時点で生成された分布度プロファイルP1に基づいて複数のバッテリーの現在状態が診断され得る。
【0060】
前記制御部130は、前記基準プロファイルP2に対して設定された基準電圧V2に対応するように前記分布度プロファイルP1に対する参照電圧V1を設定するように構成され得る。そして、制御部130は、算出された電圧を前記参照電圧V1に設定するように構成され得る。
【0061】
具体的には、前記制御部130は、前記基準プロファイルP2の全体電圧範囲で前記基準電圧V2から前記基準プロファイルP2の平均電圧E2までに対応する基準密度Dを前記分布度プロファイルP1に適用することで前記参照電圧V1を設定するように構成され得る。
【0062】
図4の実施例において、基準プロファイルP2の全体電圧範囲で基準電圧V2から平均電圧E2までに対応する基準密度はDであり得る。制御部130は、基準密度Dを分布度プロファイルP1に適用し得る。
【0063】
具体的には、前記制御部130は、前記分布度プロファイルP1の平均電圧E1を基準にして前記分布度プロファイルP1から前記基準密度Dに対応する電圧を算出し得る。ここで、算出された電圧が参照電圧V1であり得る。
【0064】
例えば、
図4の実施例において、分布度プロファイルP1に基準プロファイルP2の基準密度Dを適用した場合、分布度プロファイルP1の平均電圧E1を基準にして基準密度Dに対応する電圧として2.4Vが算出され得る。即ち、基準プロファイルP2において基準密度Dに対応する基準電圧V2は3.25Vであるが、分布度プロファイルP1において基準密度Dに対応する電圧は2.4Vであり得る。そして、制御部130は、算出された電圧2.4Vを参照電圧V1に設定し得る。その後、制御部130は、測定された電圧が2.4V未満であるバッテリーの状態を異常状態に診断し、測定された電圧が2.4V以上であるバッテリーの状態を正常状態に診断し得る。
【0065】
例えば、複数のバッテリーは使用するほど退化し、複数のバッテリーの退化程度は、各々相違し得る。これによって、
図4の実施例において、基準プロファイルP2と分布度プロファイルP1に同じ基準密度Dを適用するとしても、基準プロファイルP2の平均電圧E2と基準電圧V2との電圧差(0.15V)と、分布度プロファイルP1の平均電圧E1と参照電圧V1との電圧差(0.6V)は、相違し得る。
【0066】
即ち、本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置100は、基準プロファイルP2に対する基準密度Dを分布度プロファイルP1に適用して参照電圧V1を算出することで、複数のバッテリーの退化を考慮して参照電圧V1を設定できる。これによって、バッテリー状態診断装置100は、BOL状態のバッテリーの正規分布とバッテリーの退化を総合的に考慮して、バッテリーの現在状態が診断可能であるという長所がある。
【0067】
本発明によるバッテリー状態診断装置100は、BMS(Battery Management System)に適用可能である。即ち、本発明による BMSは、上述したバッテリー状態診断装置100を含み得る。このような構成において、バッテリー状態診断装置100の各構成要素の少なくとも一部は、従来のBMSに含まれた構成の機能を補完または追加することで具現され得る。例えば、バッテリー状態診断装置100の測定部110、プロファイル生成部120、制御部130及び保存部140は、BMSの構成要素として具現され得る。
【0068】
また、本発明によるバッテリー状態診断装置100は、バッテリーパック1に備えられ得る。即ち、本発明によるバッテリーパック1は、上述したバッテリー状態診断装置100及びバッテリーBを含み得る。また、バッテリーパック1は、電装品(リレー、ヒューズなど)及びケースなどをさらに含み得る。
【0069】
図5は、本発明の一実施例によるバッテリー状態診断装置100を含むバッテリーパック1の例示的構成を示した図である。
【0070】
図5の実施例において、バッテリーBは複数個が備えられ得る。測定部110は、複数のバッテリーBの各々の電圧を測定し、プロファイル生成部120は、測定部110によって測定された複数のバッテリーBの電圧に基づいて分布度プロファイルP1を生成し得る。制御部130は、プロファイル生成部120によって生成された分布度プロファイルP1とバッテリーBに対して予め設定された基準プロファイルP2に基づいて、バッテリーBの各々の状態を診断し得る。
【0071】
一方、測定部110は、バッテリーBの充放電経路に備えられた電流測定ユニットAと接続され、バッテリーBの電流を測定することも可能である。
【0072】
図6は、本発明のさらに他の実施例によるバッテリー状態診断方法を概略的に示した図である。
【0073】
ここで、バッテリー状態診断方法の各段階は、バッテリー状態診断装置100によって行われ得る。以下では、説明の便宜のために、前述した内容と重複する内容は省略するか、または簡略に説明する。
【0074】
図6を参照すると、バッテリー状態診断方法は、測定段階S100、プロファイル生成段階S200、参照電圧設定段階S300及び状態診断段階S400を含み得る。
【0075】
測定段階S100は、複数のバッテリーの各々の電圧を測定する段階であって、測定部110によって行われ得る。
【0076】
プロファイル生成段階S200は、前記測定段階S100で測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度プロファイルP1を生成する段階であって、プロファイル生成部120によって行われ得る。
【0077】
具体的には、プロファイル生成部120は、前記測定部110によって測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する電圧情報を受信し得る。そして、プロファイル生成部120は、受信した電圧情報に基づいて前記複数のバッテリーの各々の電圧に対する分布度プロファイルP1を生成し得る。
【0078】
例えば、
図2の実施例において、プロファイル生成部120は、平均電圧E1が3.0Vである正規分布を従う分布度プロファイルP1を生成し得る。
【0079】
参照電圧設定段階S300は、前記複数のバッテリーに対して予め設定された基準プロファイルP2に基づいて前記分布度プロファイルP1に対する参照電圧V1を設定する段階であって、制御部130によって行われ得る。
【0080】
例えば、
図4の実施例において、制御部130は、基準プロファイルP2の基準密度Dを分布度プロファイルP1に適用することで、分布度プロファイルP1において基準密度Dに対応する電圧として2.4Vを算出し得る。そして、制御部130は、算出した2.4Vを参照電圧V1に設定し得る。
【0081】
状態診断段階S400は、前記測定された前記複数のバッテリーの各々の電圧と前記設定された参照電圧V1を比較して前記複数のバッテリーの各々の状態を診断する段階であって、制御部130によって行われ得る。
【0082】
例えば、測定された電圧が参照電圧V1未満であれば、制御部130は、当該バッテリーの状態を異常状態に診断し得る。逆に、測定された電圧が参照電圧V1以上であれば、制御部130は、当該バッテリーの状態を正常状態に診断し得る。
【0083】
このように、バッテリー状態診断方法は、予め設定された臨界値を用いて複数のバッテリーの状態を画一的に判断せず、複数のバッテリーのBOL状態を反映する基準プロファイルP2及び現在状態を反映する分布度プロファイルP1に基づいて複数のバッテリーの各々の現在状態が診断可能であるという長所がある。
【0084】
以上で説明した本発明の実施例は、必ずしも装置及び方法を通じて具現されることではなく、本発明の実施例の構成に対応する機能を実現するプログラムまたはそのプログラムが記録された記録媒体を通じて具現され得、このような具現は、本発明が属する技術分野における専門家であれば、前述した実施例の記載から容易に具現できるはずである。
【0085】
以上、本発明を限定された実施例と図面によって説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【0086】
また、上述の本発明は、本発明が属する技術分野における通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想から脱しない範囲内で多様な置換、変形及び変更が可能であるため、上述の実施例及び添付された図面によって限定されず、多様な変形が行われるように各実施例の全部または一部を選択的に組み合わせて構成可能である。
【符号の説明】
【0087】
1 バッテリーパック100 バッテリー状態診断装置
110 測定部
120 プロファイル生成部
130 制御部
140 保存部