(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】3D印刷シリコーンを準備するための方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20241004BHJP
C08G 75/045 20160101ALI20241004BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20241004BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241004BHJP
【FI】
B29C64/106
C08G75/045
B33Y70/00
B33Y10/00
(21)【出願番号】P 2022580866
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2021069174
(87)【国際公開番号】W WO2022008721
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-27
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521417750
【氏名又は名称】スペクトロプラスト アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】シャッフナー マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファノフ ペタール
(72)【発明者】
【氏名】グルソイ アキン
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/053258(WO,A1)
【文献】特表2020-512217(JP,A)
【文献】特表2018-500192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0123383(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷シリコーンを準備するための方法であって、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含む、ステップと、
c)加熱促進ラジカル硬化を含む後硬化処理を行うステップと、
を含み、
前記積層造形用組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にあり、
前記積層造形用組成物が、熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)
をさらに含む、方法。
【請求項2】
複数のアルケニル基を有する前記少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、複数のチオール基を有する前記架橋剤(B)とは、安定なエマルジョンを形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
複数のチオール基を有する前記少なくとも1つの架橋剤(B)は、式(I):
R
1(R)
2SiO((R
3R)SiO)
xSi(R)
2
R
2 (I)
で表され、
式中、Rは、独立してC(1-12)アルキルであり、
R
1、R
2、R
3は、独立して、C(1-12)アルキルであり、
R
3の各インスタンスは、同じ(すなわち、ホモポリマー)であっても、異なって(すなわち、コポリマー)いてもよく、
xは1以上であり、
ただし、R
1、R
2、R
3の少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
式中、Rは、独立してメチルであり、R
1、R
2、R
3は、独立して、メチル基、又はメルカプト-C(1-12)アルキル基であり、xは1~100であり、R
1、R
2、R
3の少なくとも10~100,000がメルカプト-C(1-12)アルキル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記積層造形用組成物が、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~60重量部の範囲の量で剪断減粘性フィラー
をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)が、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.01~3.0重量部の範囲の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)が、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~2.0重量部の範囲の量で存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記積層造形用組成物が、
複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部の範囲の量で存在する熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)
をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱促進ラジカル硬化ステップが、30℃~200℃の範囲の一定温度で、1秒~24時間の範囲の時間、前記半製品を加熱することからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)が、ジアゾ化合物及び過酸化物から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)が、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン及び2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
3D印刷シリコーンを準備するための方法であって、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含む、ステップと、
c)シラノール縮合硬化を含む後硬化処理を行うステップと、
を含み、
前記積層造形用組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にあり、
前記積層造形用組成物が、
vi)縮合硬化シリコーンブレンド(C1)
をさらに含み、
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)が縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)とシラノール架橋剤(C1b)とのブレンドであり、
前記積層造形用組成物が、
vii)アルケニルシランカップリング剤(C2)であって、式(IVa):
(R’)
mSi(R’’)
nR (IVa)
で表され、
式中、Rは、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニル基であり
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、
R’’は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又は
viii)チオール含有シランカップリング剤(C3)であって、式(Va):
(R
a)
mSi(R
b)
nR (Va)
で表され、
式中、Rは、メルカプト-C(1-12)アルキルであり、
R
aは、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、
R
bは、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、チオール含有シランカップリング剤(C3)
をさらに含む方法。
【請求項13】
前記積層造形用組成物が、
vii)アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又は
viii)チオール含有シランカップリング剤(C3)
をさらに含み、
前記アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又はチオール含有シランカップリング剤(C3)の組み合わせ量は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~60重量部である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シラノール縮合硬化ステップが、前記半製品を20%超の相対湿度に、30分~72時間の範囲の時間にわたって、暴露することからなる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記積層造形用組成物中の前記縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)のシラノール基に対する架橋剤基の比が、0.5:1~50:1の範囲にある、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記積層造形用組成物が、
ix)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して0.1~5.0重量部の量の、シラノール縮合触媒(F)
をさらに含む、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記シラノール縮合触媒(F)が、スズ、チタン、亜鉛、鉄、鉛もしくはコバルトの錯体、又は芳香族有機スルホン酸の群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シラノール縮合触媒(F)が、スズ及びチタンの錯体の群から選択される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
ステップc)が、加熱促進ラジカル硬
化及びシラノール縮合硬
化の両方を含み、前記加熱促進ラジカル硬
化と前記シラノール縮合硬
化が別々に又は同時に実施され、前記加熱促進ラジカル硬
化と前記シラノール縮合硬
化が同時に行われる場合、前記
加熱促進ラジカル硬化及び前記シラノール縮合硬
化は、前記半製品を40℃~200℃の範囲の一定温度で、50%超の相対湿度に、1分~24時間の範囲の時間にわたって加熱することからなる、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
積層造形用組成物であって、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部の範囲の量の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、積層造形用組成物。
【請求項21】
積層造形用組成物であって、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)縮合硬化シリコーンブレンド(C1)と、
iv)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲であり、
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)が縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)とシラノール架橋剤(C1b)とを含み、
前記積層造形用組成物が、
vii)アルケニルシランカップリング剤(C2)であって、式(IVa):
(R’)
mSi(R’’)
nR (IVa)
で表され、
式中、Rは、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニル基であり、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、
R’’は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又は
viii)チオール含有シランカップリング剤(C3)であって、式(Va):
(R
a)
mSi(R
b)
nR (Va)
で表され、
式中、Rは、メルカプト-C(1-12)アルキルであり、
R
aは、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく
R
bは、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、チオール含有シランカップリング剤(C3)
をさらに含む、積層造形用組成物。
【請求項22】
前記積層造形用組成物が、
vi)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~90重量部の範囲の量で存在する縮合硬化シリコーンブレンド(C1)
を含む、請求項21に記載の
積層造形用組成物。
【請求項23】
プロセスにおける熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)の使用であって、前記プロセスが、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲である、ステップと、
c)加熱促進ラジカル硬化ステップを含む後硬化処理するステップと、
を含み、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110~400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するための、使用。
【請求項24】
ステップc)の後硬化処理中に、前記半製品が50℃~150℃の範囲の一定温度で、1~24時間の範囲の時間にわたって加熱される、請求項
23に記載の使用。
【請求項25】
プロセスにおける縮合硬化シリコーンブレンド(C1)の使用であって、前記プロセスが、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲である、ステップと、
前記積層造形用組成物が、
vi)縮合硬化シリコーンブレンド(C1)
をさらに含み、
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)が縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)とシラノール架橋剤(C1b)とのブレンドであり、
前記積層造形用組成物が、
vii)アルケニルシランカップリング剤(C2)であって、式(IVa):
(R’)
mSi(R’’)
nR (IVa)
で表され、
式中、Rは、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニル基であり
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、
R’’は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又は
viii)チオール含有シランカップリング剤(C3)であって、式(Va):
(R
a)
mSi(R
b)
nR (Va)
で表され、
式中、Rは、メルカプト-C(1-12)アルキルであり、
R
aは、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく
R
bは、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、チオール含有シランカップリング剤(C3)
をさらに含み、
c)シラノール縮合硬化ステップを含む後硬化処理するステップと、
を含み、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110~400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するための、使用。
【請求項26】
前記シラノール縮合硬化ステップが、前記半製品を20%超の相対湿度に、30分~72時間の範囲の時間にわたって、暴露することからなる、請求項
25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非光促進後硬化処理ステップを含む3D印刷シリコーンを準備するための方法、3D印刷シリコーンを準備するための積層造形用組成物、この方法を介して準備された3D印刷シリコーン物品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形は、3D印刷としても広く知られており、三次元オブジェクトを作製するために使用されるプロセスを指し、これは、様々な形態(例えば、層、液滴など)の材料を堆積して固化させて、層ごと又は連続的にオブジェクト全体を得ること、又は体積全体を同時に固化して一部品としてオブジェクト全体を得ることによって行われる。
【0003】
現在、金属から合成樹脂に至るまで、多くの材料が積層造形に利用されている。積層造形の一種として、ノズルを備えた装置を用いて、液状の架橋性材料の層を所定のパターンに従って堆積する。このような積層造形の例としては、エラストマ及びハイドロゲルの3D印刷があるが、そのいずれも架橋が必要である。架橋性材料の層(1層として、又は層を形成する複数の液滴として)を蒸着した後、例えば、放射線、温度変化に晒すことによって、又は化学架橋剤との接触することのいずれかによって、架橋性材料を架橋し、自己支持構造を得て、その上に更なる層を堆積して架橋することができる。あるいは、最初のステップで架橋性材料からオブジェクトを一体的に形成し、次のステップで一体的に架橋してもよい。
【0004】
ポリシロキサンを含むシリコーンは、このクラスの化学化合物に固有のいくつかの問題のために、これまでのところ、積層造形の分野で広く使用されていない。一方では、ポリシロキサンは粘度が高いため、正確な投与が難しく、他方では、ポリシロキサンは縮合反応又は付加反応によって架橋されるが、そのいずれも積層造形に不可欠な空間的な制御が不可能である。
【0005】
特許文献1は、UV硬化性シリコーン樹脂-有機メルカプタン組成物を開示しており、ポリシロキサンは、2つ以上のメルカプト基を有するメルカプタンと反応することができる少なくとも2つの脂肪族不飽和ラジカルの他に、フリーラジカル光開始剤及びフリーラジカル抑制剤で官能化されている。組成物は、この組成物の成分を混合して透明な相溶性混合物にすることによって形成され、その後、異なる基材に鋳造され、コーティングを形成する。
【0006】
特許文献2は、不飽和結合基を有するポリシロキサンと、前述のポリシロキサンとは異なるポリシロキサンと、メルカプト化合物と、光開始剤と、前述の化合物の溶解のための有機溶媒とを含むマイクロレンズの製造のための架橋性組成物を開示している。この組成物は、フィルムコーティングとして基材に塗布され、放射及び熱を使用して架橋される。
【0007】
特許文献3は、2つ以上のチオール基を有する架橋剤/鎖延長剤、フリーラジカル開始剤、及びヒュームドシリカなどの強化剤として作用することができる乾燥シリコーンゲルを形成する組成物を開示している。この組成物は、UV放射又は熱で架橋することができる。
【0008】
特許文献4は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)マイクロビーズと、マイクロビーズに結合してペースト状材料を形成するPDMS前駆体液体と、水相とを含む三次元印刷可能なインク組成物を開示している。
【0009】
特許文献5は、オレフィンモノマーが3D印刷ポリオレフィン組成物を形成するインクジェットプロセスで重合される二液硬化型インク組成物を開示している。
【0010】
特許文献6は、複数のアルケニル基を有するポリシロキサンと、複数のチオール基を有する架橋剤とを含む、積層造形インクを開示し、複数のアルケニル基を有するポリシロキサン及び複数のチオール基を有する架橋剤が有益な剪断減粘特性を有するエマルジョンを形成している。
【0011】
特許文献7は、アルケニル誘導体化ポリシロキサンと、メルカプト誘導体化ポリシロキサン系架橋剤である架橋剤とを含む、同様の積層造形インクを開示している。
【0012】
先の2つの発明のいずれにおいても、積層造形のプロセスは、UV-VIS制御された積層造形を介して半製品を生成する第一のステップと、それに続き、生成した半製品のUV処理を含む後硬化処理とを含む。UV光による後硬化は、積層造形後に残存する全てのモノマーを確実に反応させ、最終的な硬化物を形成させる効果がある
【0013】
光による後硬化は、透明な材料には効果的なプロセスであるが、多くの欠点が残っている。まず、光は、部分的に硬化した半製品を通しての透過性が限られており、着色されたオブジェクトではなおさらである。大きな3D印刷シリコーン構造体、例えば、1cm3以上の大きさのものでは、したがって、半製品の中心部は光の作用の影響を受けない。これは、最終的な3D印刷シリコーン製品の特性に影響を与えるだけでなく、未硬化モノマーが構造体から漏れた場合、その製品の寿命にも影響を与える可能性がある。さらに、光硬化は高速プロセスであり、硬化ステップで形成される分子ネットワークに既存の張力を凍結させるため、材料を弱める可能性がある。
【0014】
したがって、改善された硬化後処理の結果として等方性の機械的特性を有する3D印刷シリコーン製品を準備するための方法に対するニーズがある。さらに、大きな半製品、例えば、1cm3以上の半製品の完全な硬化を達成することができる後硬化処理に対するニーズがある。
【0015】
上記の問題は本出願において対処され、それによって、加熱促進フリーラジカル硬化ステップ及び/又はシラノール縮合硬化ステップの使用が、改善された機械的特性を有する3D印刷シリコーン製品を得るために使用され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】欧州特許出願公開第0437247号
【文献】特開2010-0185991号公報
【文献】国際公開第2013/160252号
【文献】国際公開第2018/013779号
【文献】欧州特許出願公開第1942159号
【文献】国際公開第2019/053258号
【文献】未公開スイス特許出願第3612019号
【発明の概要】
【0017】
本発明は、積層造形プロセスを介してシリコーン製品を製造する場合、光硬化以外の後硬化ステップ、例えば、加熱促進ラジカル硬化又はシラノール縮合硬化のいずれかが、特に1cm3以上の大きな製品について、3D印刷シリコーン製品の全体にわたって均一な硬化をもたらし、したがって、等方性の機械的特性をもたらすという知見に基づいている。
【0018】
本発明は、3D印刷シリコーンを準備するための方法に向けられ、前記方法は、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含む、ステップと、
c)光促進硬化以外の少なくとも1つの更なる硬化ステップ、好ましくは加熱促進ラジカル硬化又はシラノール縮合硬化のいずれかを含む後硬化処理を行うステップと、
を含み、
前記積層造形用組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0019】
別の態様において、本発明は、積層造形用組成物に向けられ、前記積層造形用組成物は、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部、好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0020】
更なる態様において、本発明は、積層造形用組成物に向けられ、前記積層造形用組成物は、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは1~90重量部の範囲の量の縮合硬化シリコーンブレンド(C1)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の方法によって得ることができる3D印刷シリコーンに向けられ、そのサイズは少なくとも1×1×1mm、好ましくは少なくとも3×3×3mm、最も好ましくは少なくとも5×5×5mmであり、硬化組成物の表面と硬化組成物の中心から採取したサンプル間でISO7619-1に従って測定したショアA硬度の数値の変動は、10%未満、好ましくは5%未満であり、最も好ましくは数値が同一である。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は、プロセスにおける熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)の使用に向けられ、前記プロセスは、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、ステップと、
c)加熱促進ラジカル硬化ステップを含む後硬化処理するステップであって、前記半製品が好ましくは50℃~150℃の範囲の一定温度で、1~24時間の範囲の時間にわたって加熱される、ステップと、
を含み、
前記熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)は、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110~400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度で、その数値が、フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するために、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部、好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量で、ステップb)の前記積層造形用組成物中に存在する。
【0023】
最後の態様において、本発明は、プロセスにおける縮合硬化シリコーンブレンド(C1)の使用に向けられ、前記プロセスは、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、ステップと、
c)シラノール縮合硬化ステップを含む後硬化処理するステップであって、好ましくは半製品を20%超、好ましくは50%超の相対湿度で、30分~72時間、好ましくは6~36時間の範囲の時間にわたって、暴露することからなる、ステップと、
を含み、
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)は、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110~400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度で、その数値が、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するために、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~90重量部の範囲の量で、ステップb)の前記積層造形用組成物中に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】UV/Vis硬化と比較した熱硬化の効果を示す。
【
図2】UV硬化サンプルと熱硬化サンプルの硬化深さの比較を示す。
【
図3】組成物3を用いて製造した3D印刷耳型人工器官を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(定義)
本明細書で使用される「積層造形」という用語は、ステレオリソグラフィー、例えばレーザーベースのステレオリソグラフィー(SLA)及びデジタルライトプロセッシング(DLP)、材料噴射、ドロップオンデマンド、ボリューメトリック3D印刷、すなわち、ホログラフィックレーザー3D印刷、材料押出、例えばロボキャスティングなどの方法を指す。
【0026】
典型的なステレオリソグラフィー法では、ビルドプラットフォームが、本発明の積層造形用組成物を含むバット又はタンク内に、液体の表面からの1層の高さの距離で、位置づけられ、光源が、積層造形用組成物を選択的に重合及び凝固して、次の層を生成する。SLAプリンタが、一部の層の所定の領域にわたって移動するレーザー源を使用する一方で、DLPプリンタは、各層の単一の画像を一度にフラッシュするデジタルライトプロジェクタを使用し、これは投影よりも大きいビルドボリュームに対するより大きな領域をラスターする(raster)こともできる。当該プロセスステップは、3Dオブジェクトが完成するまで繰り返される。さらに、UV/Vis光下での更なる後処理により、オブジェクトが完全に架橋された状態になる(これは高い機械的及び熱的な特性が望ましい場合に特に必要とされる)ことを確かなものとする。
【0027】
「トップダウン」配向とは、光源がタンクの上に配置され、ビルドプラットフォームが、タンクの最上部で始まり、層ごとの後に下方に移動する、プリンタを指す。典型的に、3Dオブジェクトの3D印刷層に垂直な方向は、z方向(又は軸)と呼ばれ、3Dオブジェクトの3D印刷層に平行な方向(及び、したがってz軸に対して直角の方向)は、xy平面と呼ばれる。トップダウンプリンタにおけるオブジェクトは、上向きに構築される。
【0028】
「ボトムアップ」配向は、光源が通過することを可能にするために適切で透明な底を有するタンクの下に光源が配置されているプリンタを指す。層ごとの後に、ビルドプラットフォームが上方に移動するにつれて、硬化積層造形用組成物はタンクの底から切り離される。ボトムアッププリンタにおけるオブジェクトは、逆さまに構築される。
【0029】
典型的な材料噴射法では、印刷ヘッドが、積層造形用組成物の液滴をビルドプラットフォーム上の所望の位置に堆積させる。印刷ヘッドに取り付けられた放射線源が積層造形用組成物を硬化及び凝固して、第一層を生成し、ビルドプラットフォームは下方に移動されて、3Dオブジェクトが完成するまでプロセスステップを繰り返すことが可能になる。液滴の堆積は、液滴の連続的な流れを壊すことによって液滴が生成される連続的な方法で、又は液滴が必要なときに生成されるドロップオンデマンドによって行うことができる。
【0030】
典型的なボリューメトリックな(すなわちホログラフィック)印刷法では、3Dオブジェクトは、ホログラムのようなパターンの光源を、積層造形用組成物を含む透明なタンクに投影することによって、1つの部分として同時に生成され、積層造形用組成物を1つの部分として硬化させることが可能になる。3Dオブジェクトが完成した後、余分な積層造形用組成物を排出して、完成した3Dオブジェクトを明らかにすることができる。
【0031】
典型的な材料押出印刷法では、積層造形用組成物が、ノズルを通ってビルドプラットフォーム又は基板上に押し出され、それによって、ノズルは、所定の経路をたどって、3Dオブジェクトを層ごとに構築する。
【0032】
積層造形用組成物は、任意の典型的な3Dプリンタで使用することができる。一実施形態では、積層造形用組成物は、SLA又はDLPプリンタ、好ましくはトップダウンSLA又はDLPプリンタで使用することができ、ここでは、ビルドプラットフォームが液体フォトポリマー樹脂を充填たされたタンクの最上部に位置づけられ、タンクの上に配置された光源が、(層ごとの後にプラットフォームを下方に移動させることによって)積層造形用組成物を層ごとに選択的に硬化及び凝固させて、所望の3D製品を作製する(上向き)。別の実施形態では、積層造形用組成物は、ボリューメトリック又はホログラフィック3D印刷で使用することができ、ここでは、レーザー生成されたホログラムのような3D画像が、タンクに含まれる積層造形用組成物にフラッシュされて、所望の3D製品を1つの部分で作製する。
【0033】
本発明に関連して使用される「エマルジョン」という用語は、(少なくとも)1つの成分(分散相)が微細な液滴の形態で(少なくとも1つの)他の成分(連続相)中に分散される、2つ以上の非混和性(例えば、ポリシロキサン)液体成分の安定な混合物を指す。また、「非混和性」という用語が、主に又は実質的に非混和性の相を含み、それにより、分散相が連続相で有限の溶解度を有することが理解される。混合物は、乳化剤又は界面活性剤などの添加剤の存在によってさらに安定化されることもある。
【0034】
本明細書で使用される「透明」という用語は、可視入射光の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を(拡散させずに)透過させる特性を指す。「半透明」という用語は、透過が60%未満、より好ましくは50%未満など、光の通過が減少している特性を指す。
【0035】
本明細書で使用される「シリコーン構築ブロック」という用語は、より拡張したネットワークを合成するために一般的に使用される重合性シリコーン構築ブロックを指し、これは、これらの重合性シリコーン構築ブロック内の個々のモノマーとは対照的である。シリコーン構築ブロックは、重合/硬化から生じる固体シリコーンネットワークとは対照的に、典型的には液体から粘性形態である。シリコーン構築ブロックは、典型的にはポリシロキサンであるが、シルセスキオキサンであっても、あるいはポリシロキサンとシルセスキオキサンとの両方を含むブレンドであってもよい。
【0036】
「ポリシロキサン」という用語は、一般式(R)3Si-(O-Si(R)2)nO-Si(R)3を特徴とする線状、分枝状及び環状のポリオルガノシロキサンを指し、式中、RはH又は有機基であり、nは整数、典型的に1~109である。ポリオルガノシロキサンでは、有機部分は同じであること(ポリジメチルシロキサン又はPDMSにおけるメチル基など)も、あるいは単一分子内で(例えば、ポリジメチルジフェニルシロキサン又はジフェニルジメチコンにおいて)異なることもある。
【0037】
「シルセスキオキサン」という用語は、化学式[RSiO1.5]nを有する有機シリコーン化合物を指し、ここでは、R=H、アルキル、アリール又はアルコキシルである。これらの化合物では、ポリシロキサンの2つの酸素原子とは対照的に、ケイ素は、典型的には3つの酸素原子(R=アルコキシルの場合は4つ)に結合している。シルセスキオキサンは、カゴ状構造又はポリマー構造を示すことがある。カゴ構造がより一般的である一方、これらは転位反応を経て、ポリ(フェニルシルセスキオキサン)のように高度に架橋した梯子状のポリマー構造を形成することができる。
【0038】
以下の説明において、多くの量は、「異なる成分(又は成分の組み合わせ)の総重量に対する、重量部」として与えられる。それぞれの場合において、これは、基準となる成分(又は成分の組み合わせ)の総重量を100重量部とし、一方、問題の成分は所与の範囲の相対重量を有することを意味する。
【0039】
(3D印刷シリコーンを準備するための方法)
本発明の方法は、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含む、ステップと、
c)光促進硬化以外の少なくとも1つの更なる硬化ステップ、好ましくは加熱促進ラジカル硬化又はシラノール縮合硬化のいずれかを含む後硬化処理を行うステップと、
を含み、
前記積層造形用組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0040】
半製品が、後硬化処理c)前に、ステップb)によって直接得られた製品であることが理解される。典型的に、半製品の3Dモデルは、CAD(コンピューター支援設計)ファイル又は3Dスキャンとして準備される。結果として得られたCADデータは、その後、積層造形装置に適した、又はそれによって読み取り可能な形式に変換することができる。半製品の3Dモデルは、通常、ステップb)での実際の半製品の積層造形のために必要な全ての関連情報を含む。例えば、3Dモデルは、半製品の寸法、構造、サイズ、色などに関する情報を含み得る。さらに、3Dモデルは、半製品の配向に関する情報を含み得る。特に、半製品の3Dモデルは、積層造形装置又は積層造形装置の特定の構成要素に対する実際の半製品の配向に関する情報を含み得る。
【0041】
積層造形装置は、積層造形用組成物の少なくとも一部分を照射するための放射線源を備えることが好ましい。
【0042】
より好ましくは、放射線源は、LEDランプであり得る。特に、LEDランプの強度は、1~1000mW/cm2、好ましくは50~50mW/cm2である。
【0043】
また、ステップb)の積層造形は光重合によって実行され、積層造形は、VAT光重合、ボリューメトリック3D印刷、ホログラフィックレーザー3D印刷、又は任意の他の適切な方法によって実行されることが好ましい。より好ましくは、積層造形は、DLP又はSLA VAT光重合によって実行される。特に好ましい実施形態では、光重合はトップダウン配向で実行される。
【0044】
積層造形装置は、積層造形用組成物を含むチャンバと、ステップb)の間にz方向に移動させられるチャンバ内のプラットフォームとを備えることが好ましい。このような積層造形装置は、トップダウン配向又はボトムアップ配向での使用に適している。
【0045】
さらに、ステップa)の3Dモデルは、半製品の安定性が最大化されるように準備されることが好ましい。このような安定化、このような機械的安定化や位置安定化、特に横方向の安定化は、3D印刷シリコーンにとって重要であり、これは、一般的な3D印刷された硬質材料とは対照的に、シリコーンの弾性及び柔軟特性により、積層造形中に出現する半製品の不安定性が大きくなるためである。
【0046】
例えば、いくつかの実施形態では、実際の半製品の質量中心は、ステップa)で判定される。半製品の3Dモデルは、半製品の判定された質量中心とプラットフォームとの間の距離が最小化されるように準備される。したがって、これらの実施形態では、半製品の3Dモデルは、プラットフォームに対する半製品の配向に関するデータを含む。この距離を最小化すると、半製品の安定性が大幅に向上する。特に、横方向の安定性が向上し、これは典型的に、リコータの使用による影響が大きい。その結果、大きな支持構造を印刷する必要性が減少する。
【0047】
ステップa)の半製品の3Dモデルは、プラットフォームと接触している実際の半製品の表面積及び/又は半製品からビルドプラットフォームまでの投影表面積が最大化され、それによって半製品の安定性が増大するように準備されることがさらに好ましい。
【0048】
代替又は追加として、半製品の安定性は、支持構造を提供することによって増大され得、これは、剛直の3D印刷されたポリマーに一般的に使用される支持構造よりも大きいことがある。典型的に、これらの支持構造は、半製品の3Dモデルに既に含まれ得る。このような支持構造は、一般に、積層造形が完了した後に半製品から除去される。したがって、支持構造を有する実施形態は、ステップc)の前又は後に、支持構造の除去を含み得る。除去は、切断、スライス、リッピングなどの任意の適切な方法によって達成され得る。
【0049】
積層造形装置は、リコータ又はワイパ、例えば、ブレードを備えることが好ましい。
【0050】
リコータの使用は、高粘度を有する積層造形用組成物に対して特に有益である。リコータは、積層造形用組成物の剪断減粘を促進し、通常の積層造形プロセスでは採用できないほど高粘度の組成物の使用を可能にするからである。
【0051】
さらに、本発明による方法のステップb)は、以下のステップを含み得る。
i)プラットフォームを予め定義された高さで積層造形用組成物に浸漬させて、積層造形用組成物の層をプラットフォーム又は出現する半製品の表面に塗布するステップ、
ii)積層造形用組成物の少なくとも塗布された層が積層造形用組成物の上方になるようにプラットフォームを移動させるステップ、
iii)積層造形用組成物の塗布された層をリコータで拭き取ることによって、予め定義された厚さの積層造形用組成物のフィルムを提供するステップ、
iv)積層造形用組成物の塗布されたフィルムに放射線源を照射するステップ、
v)任意に、プラットフォームをz方向に移動させるステップ、
vi)任意に、ステップii)、iii)、iv)、及び/又はv)を繰り返すステップ。
【0052】
いくつかの実施形態では、当該方法は、ステップi)~vi)からなる。
【0053】
ステップi)では、予め定義された高さは、典型的に、プラットフォームが積層造形層の高さよりも積層造形用組成物に浸漬するように選択される。積層造形層の高さは、ステップiv)の間に形成される層の高さであり、好ましくは5~1,000μmの範囲であり得る。好ましくは、予め判定された高さは、積層造形用組成物がプラットフォームの表面全体又は出現する半製品の表面全体を覆うように選択される。これにより、予め判定された高さは、プラットフォームの浸漬速度、材料流動挙動、及び表面張力による影響を受ける。代替又は追加として、予め定義された高さは、プラットフォームとチャンバ内の積層造形用組成物の表面との間の距離が少なくとも1,000から50,000μmの間であるように選択され得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、塗布されたフィルムのセルフレベリングは、ステップii)後及びステップiii)前に、積層造形用組成物の効率的なセルフレベリングに十分であるセルフレベリング時間、好ましくは100~10,000msを提供することによって、実行される。
【0055】
拭き取りは、円形軌道又は線形運動での機械的拭き取りによって行われ得ることが好ましい。概して、拭き取りは、余分な材料を取り除き、出現するオブジェクトの上に原材料の積層造形層の厚さを残すだけである。
【0056】
出現する製品の表面が最近製造された層を指し、これが、ステップii)からiv)を繰り返すことで追加の層で覆われることは当業者に容易に理解される。
【0057】
ステップiv)では、z方向は印刷方向を指す。したがって、z方向は半製品の製造された層を横切る方向である。例えば、積層造形がトップダウン配向で実行される場合、プラットフォームは、下方に、すなわちチャンバの底の方向に移動させられる。
【0058】
z方向への移動は、少なくとも単層の厚さで、好ましくは5~1000μmで実行される。
【0059】
プラットフォームから放射線源までの距離は、ステップii)後及び塗布されたフィルムを照射する前に、調整されることが好ましい。
【0060】
また、放射線源は、ステップiv)の前に、予め定義された焦点距離に移動させられることが好ましい。例えば、予め定義された焦点距離は、10~100cm、好ましくは15~30cmであり得る。
【0061】
さらに、ステップiv)での塗布されたフィルムの照射は、50ms超、特に150ms超の間実行されることが好ましい。好ましくは、塗布されたフィルムは、100~5,000ms、より好ましくは150~4,000msの間照射される。
【0062】
好ましくは、リコータは、0.1~100mm/秒の速度で操作される。この値は、高速の印刷速度を可能にするだけでなく、出現する半製品の横方向の安定性への重大な影響がないことが分かっている。
【0063】
積層造形装置は、密封可能なハウジングを備えることが好ましい。好ましくは、ハウジングは、気密封止可能である。典型的に、ハウジングは、酸素を含まない。好ましくは、密封されたハウジングは、本質的に、窒素又はアルゴンなどの不活性ガスのみで充填されるか又は加圧される。酸素が存在すると、チオール-エン反応中に形成されたラジカル種のいずれかと反応及び/又はクエンチする可能性があるため、不活性雰囲気又は真空を利用すると、重合反応の収率が増加する。
【0064】
追加として、積層造形用組成物は、本発明による方法のステップb)の間、所定の温度に維持され、それにより、積層造形用組成物の粘度を調整する。粘度が典型的に50Pa・sを超えるべきでないことが分かっている。粘度が高ければ高いほど、照射が行われ得る前に滑らかな表面を提供するためのセルフレベリングが遅くなる。したがって、積層造形用組成物の粘度が高すぎる場合、その温度は上昇することがある。いくつかの実施形態では、予め定義された温度は、0~250℃の範囲であり得る。
【0065】
また、剪断減粘特性の調整により、積層造形用組成物の粘度を適切に制御してもよい。
【0066】
典型的に放射線源によって照射される積層造形用組成物及び/又は塗布されたフィルムの表面で測定される照射強度は、その元の値の0~99%、好ましくは50~90%低減される。本明細書に記載される積層造形用組成物の使用は、重合反応におけるその反応性が高いという利点を有する。それゆえ、放射線源の強度を低減することができ、これにより、散乱による露光過度が大幅に低減され、したがって、印刷解像度が向上する。
【0067】
例えば、照射の強度は、プロジェクタのグレースケールをデジタル的に変更することによって、及び/又は放射線源と積層造形用組成物との間に物理的光フィルタを提供することによって低減されることが好ましい。
【0068】
さらに、ステップc)において、後硬化処理は半製品を前洗浄することをさらに含むことが好ましい。前洗浄は、典型的に、積層造形用組成物の残留物を除去するために、溶媒、例えばシクロヘキサン、n-ヘキサン、ペンタンなどのアルカンで半製品を前洗浄することによって実施され得る。追加又は代替として、半製品は、その後、好ましくは同じ溶媒中で又は代替的に別の溶媒中で、半製品をすすぐことによって、又は半製品をこの別の溶媒中に浸漬することによって膨潤させられる。好ましいアルカン溶媒の代替として、i-プロパノール、n-プロパノール又はエタノールなどのアルコールが、半製品を膨潤させるために使用されてもよい。好ましい実施形態では、製品の膨潤を向上させるために、かき混ぜ、攪拌、振動、超音波処理、及び/又は加熱を使用することができる。追加又は代替として、半製品は、光照射下で、好ましくは10秒から30分間、後硬化される。後硬化は、積層造形用組成物の成分の完全な重合を確かなものとする。
【0069】
当業者であれば、上記のような光照射下での後硬化は、半製品の表面に近い未反応モノマーの硬化をもたらすが、加熱促進ラジカル硬化ステップ及び/又はシラノール縮合硬化ステップは、未反応モノマーのはるかに深い硬化をもたらすことを認識するであろう。光照射下での任意の後硬化は、本発明のプロセスで必要とされる加熱促進ラジカル硬化ステップ及び/又はシラノール縮合硬化ステップとは別個であるか、あるいは別個でない。
【0070】
ステップc)が光照射による後硬化ステップと加熱促進ラジカル硬化ステップとの両方を含む場合、光による後硬化は、半製品の形態安定性を与えるために、好ましくは、加熱促進ラジカル硬化ステップの前に行われる。
【0071】
ステップc)が光照射による後硬化ステップとシラノール縮合硬化ステップとの両方を含む場合、光による後硬化をシラノール縮合ステップの前に行うことができ、あるいは、両方のステップを同時に行うことができ、好ましくは、両方のステップを同時に行うが、光照射による後硬化が完了した後も、シラノール縮合硬化ステップを継続することができる。
【0072】
(3D印刷シリコーンを準備するための方法の積層造形用組成物)
本発明の方法の積層造形用組成物は、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記積層造形用組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0073】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)に加えて、特定の状況では、本発明の積層造形用組成物がアルケニル基を有する1つ以上のsシリコーン構築ブロックを含むことが有益であり得る。
【0074】
アルケニル基を有する1つ以上の更なるシリコーン構築ブロックは、複数のアルケニル基を有する第一のシリコーン構築ブロック(A)とは異なるものである。
【0075】
単一のアルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックは、可塑剤として使用されてもよく、一方、複数のアルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックは、3D印刷シリコーン製品の最終特性を調整するために使用されてもよい。
【0076】
1つ以上の更なるシリコーン構築ブロックが複数のアルケニル基を有する場合、それは典型的には、複数のアルケニル基を有する第一のシリコーン構築ブロック(A)よりも低いアルケニル基密度及び/又はより長い鎖長を有する。
【0077】
更なるシリコーン構築ブロックは、さらに、粘度、官能基の価数、分子質量、分子量、シルセスキオキサン樹脂濃度及び/又はアルケニル誘導体の性質(すなわち、アルケニル基がポリシロキサン/シルセスキオキサン鎖の末端にあるか、ポリシロキサン/シルセスキオキサン鎖内のコモノマーユニットに存在するか)といった特性の1つ以上で、複数のアルケニル基を有する第一のシリコーン構築ブロック(A)と異なることがある。
【0078】
本発明の積層造形用組成物中にアルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックが存在する場合、複数のアルケニル基を有する第一のシリコーン(A)とアルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックの重量比は、99:1~10:90の範囲にあることが好ましい。
【0079】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)におけるアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニルから選択されること好ましく、最も好ましくはビニルである。
【0080】
また、アルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックにおけるアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニルから選択されること好ましく、最も好ましくはビニルである。
【0081】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)及びアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックの両方におけるアルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニルから選択されることが、さらに好ましく、最も好ましくはビニルである。
【0082】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)が、アルケニル誘導体化ポリ(アルキルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(アリールシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(アルキルアリールシロキサン)、及びアルケニル誘導体化ポリ(アルキル(アリール)シロキサン)から選択されることがさらに好ましく、アルキル基は好ましくはC(1-6)アルキルから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル又はブチルから選択され、このリスト中の各選択肢はポリシロキサンの形態で存在しても、シルセスキオキサンとブレンドされてもよい。より好ましくは、複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)は、アルケニル誘導体化ポリ(ジメチルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(ジフェニルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(メチルフェニルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(ジメチルジフェニルシロキサン)から選択され、このリスト中の各選択肢はポリシロキサンの形態で存在しても、シルセスキオキサンとブレンドされてもよい。
【0083】
また、複数のアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックが、アルケニル誘導体化ポリ(アルキルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(アリールシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(アルキルアリールシロキサン)、及びアルケニル誘導体化ポリ(アルキル(アリール)シロキサン)から選択されることが好ましく、アルキル基は好ましくはC(1-6)アルキルから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル又はブチルから選択される。より好ましくは、複数のアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックは、アルケニル誘導体化ポリ(ジメチルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(ジフェニルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(メチルフェニルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(ジメチルジフェニルシロキサン)から選択される。
【0084】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、複数のアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックとの両方が、アルケニル誘導体化ポリ(アルキルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(アリールシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(アルキルアリールシロキサン)、及びアルケニル誘導体化ポリ(アルキル(アリール)シロキサン)から選択されることがさらに好ましく、アルキル基は好ましくはC(1-6)アルキルから、より好ましくはメチル、エチル、プロピル又はブチルから選択され、このリスト中の各選択肢はポリシロキサンの形態で存在しても、シルセスキオキサンとブレンドされてもよい。より好ましくは、複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、複数のアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックとの両方が、アルケニル誘導体化ポリ(ジメチルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(ジフェニルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(メチルフェニルシロキサン)、アルケニル誘導体化ポリ(ジメチルジフェニルシロキサン)から選択される。
【0085】
このようなポリマーは、多数の特許及び刊行物に記載されるように準備することができるか、あるいは液体シリコーンゴム(LSR)、高温加硫(HTV)シリコーン又は室温加硫(RTV)シリコーンとして市販されている。
【0086】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)としての使用に適したシリコーン構築ブロックを含むか、又はそれらからなる、例示的なシリコーン樹脂には、Ecoflex(登録商標)00-15(Smooth-On、米国)、Ecoflex(登録商標)00-20(Smooth-On、米国)、Dragon Skin(商標)30(Smooth-On、米国)、Sorta-Clear(登録商標)40(KauPo、ドイツ)、PlatSil(登録商標)73-15(Mouldlife、英国)、Sylgard(登録商標)184(Sigma-Aldrich、スイス)、Zhermack 00、Zhermack 08、Zhermack 13(Zhermack、ドイツ)、LS-8941(NuSil、米国)、KE-2061(信越化学工業株式会社、日本)、VQM-146(Gelest Inc.、ドイツ)、VQM973(Evonik、ドイツ)、Ecoflex 00-50 Part A(Smooth-On、米国)、Silopren(商標)U Base Compound P1300(Momentive、米国)、Silopren(商標)U Base Compound P300 (Momentive、米国)、及びHANSA MBA(商標)37130(CHT、ドイツ)が含まれる。
【0087】
可塑剤として塗布するための、単一のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックとして使用され得る適切なシリコーン樹脂には、Polymer VS 10000(Evonik、ドイツ)、Polymer MV 2000(Evonik、ドイツ)、及びSilopren(商標)U 10 Base Polymer(Momentive、米国)が含まれる。
【0088】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)及びアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックの両方において、アルケニル基は、末端基及び/又は側鎖のいずれかとして存在することができる。
【0089】
複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)、及びアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックは、ポリシロキサン、シルセスキオキサン、又はそれらの混合物であってもよい。
【0090】
本発明において有用な複数のアルケニル基を有するポリシロキサンには、ホモポリマー、又はランダムもしくはブロックコポリマー、好ましくはホモポリマーの形態で、少なくとも1つ、典型的には1~109、好ましくは100~10,000,000のシロキサン繰り返し単位を有するポリマー、プレポリマー、オリゴマー又はマクロモノマーが含まれる。任意に、複数のアルケニル基を有するポリシロキサンは、例えば、末端基としての、又はシロキサン骨格の側鎖に配置された追加の官能基を運び得る。
【0091】
本発明で使用され得る複数のアルケニル基を有するポリシロキサンの重量平均分子量の範囲は、好ましくは100~109g/mol、より好ましくは1,000~10,000,000である。複数のアルケニル基を有する前記ポリシロキサンは、標準的な定常状態のレオロジー測定に従って1/sの剪断速度で測定したときに、0.1~104Pa・s、好ましくは1~102Pa・sの間の粘度を有し得る。
【0092】
本発明による複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)は、好ましくは式(I):
R1(R)2SiO((R3R)SiO)xSi(R)2R2 (I)
で表され、
式中、Rは、独立してC(1-12)アルキルであり、好ましくはメチルであり、
R1、R2、R3は、独立して、C(1-12)アルキルであり、好ましくはメチル、又はメルカプト-C(1-12)アルキルであり、
R3の各インスタンスは、同じ(すなわち、ホモポリマー)であっても、異なって(すなわち、コポリマー)いてもよく、
xは1以上、好ましくは1~100であり、
ただし、R1、R2、R3の少なくとも1つ、好ましくは10~100,000がメルカプト-C(1-12)アルキルである。
【0093】
C(1-12)アルキルは、好ましくはC(1-8)アルキル、より好ましくはC(1-6)アルキル、より好ましくはメチル、エチル、ブチル、プロピルである。したがって、メルカプトアルキル基は、好ましくは1~8個のC原子、好ましくは1~6個のC原子を有し、より好ましくはメルカプトメチル、メルカプトエチル、メルカプトブチル、メルカプトプロピル、最も好ましくはメルカプトプロピルである。
【0094】
いくつかの実施形態では、xは、40~60の範囲である。
【0095】
好ましい実施形態では、本発明において有用な複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)は、式(I)を有し、式中、R、R1、R2は、独立して、C(1-12)アルキル、好ましくはメチルであり、R3は、独立して、メルカプト-C(1-12)アルキル、より好ましくはメルカプト-C(1-6)アルキル、又はC(1-12)アルキル、最も好ましくはメチルであり、xは、1以上、より好ましくは2~100,000、最も好ましくは5~1,000である。
【0096】
x>1の場合、R3の各インスタンスは、同じであり得(例えばホモポリマー)、好ましくは、R3はメルカプト-C(1-12)アルキルであり、より好ましくは、上記で定義されたメルカプト-C(1-6)アルキルである。代替的に、R3の各インスタンスは、異なリ得(例えば、交互又はブロックコポリマー)、好ましくはR3は、―(メルカプト-C(1-6)アルキル)n-(C(1-12)アルキル)m-又は-(C(1-12))アルキル)m-(メルカプト-C(1-6)アルキル)n-であり、ここで、―(メルカプト-C(1-6)アルキル)n-(C(1-12)アルキル)m-は上記で定義された通りであり、n及びmは、独立して、1~100,000であり、好ましくは、nは1~10,000であり、mは1~10,000である。
【0097】
本発明の複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)は、式(I)を有することがさらに好ましく、式中、R、R1、R2は、独立して、C(1-12)アルキル、より好ましくはメチルであり、R3は、独立して、メルカプトメチル、メルカプトブチル、メルカプトエチル、メルカプトプロピルであり、xは、1以上、より好ましくは2~100,000で、最も好ましくは2~10,000である。
【0098】
本発明での使用に適していると考えられる、式(I)による複数のチオール基を有する例示的な架橋剤(B)には、SMS-022、SMS-042、SMS-992(Gelest Inc.、ドイツ)、KF-2001、KF-2004(信越化学工業、日本)、SIPELL(登録商標)RE 61 F(Wacker Chemie AG、ドイツ)が含まれる。
【0099】
積層造形用組成物は、複数のチオール基を有する架橋剤(B)を、又は複数のチオール基を有する2つ以上の架橋剤(B)のブレンドを含み得、好ましくは、複数のチオール基を有する1つの架橋剤(B)を含み得る。
【0100】
本発明による積層造形用組成物の更なる実施形態では、複数のチオール基を有する架橋剤(B)は、100,000g/mol未満、好ましくは90,000g/mol未満、より好ましくは80,000g/mol未満の分子量を有する。
【0101】
本発明による積層造形用組成物では、チオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。存在するアルケニル基は、複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)中に存在してもよく、又はアルケニル基を有する任意の更なるシリコーン構築ブロックが存在する場合には、その中に存在してもよい。存在するチオール基は、複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)中に存在してもよい。
【0102】
好ましくは、複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、複数のチオール基を有する架橋剤(B)とは、安定なエマルジョンを形成する。
【0103】
本発明の文脈において、安定なエマルジョンとは、少なくとも24時間にわたって、温度などの周囲条件の変化の後に分離(相分離、凝集、クリーミング又は沈降)しないエマルジョンであると定義される。
【0104】
さらに、安定なエマルジョンは、6時間以内、より好ましくは12時間以内に、いかなるオストワルド熟成(すなわち、小滴の大滴への凝集)も示さないことが好ましい。オストワルド熟成の有無は、当業者によく知られた手段によって、例えば、顕微鏡検査又は動的光散乱(DLS)によって決定することができる。
【0105】
また、安定なエマルジョンは、1ヶ月の最小貯蔵寿命を有し、これは、反応性がこの期間中に10%を超えて減少しないことを意味する。本発明の文脈では、反応性は、以下の式1に記載されるように、固体層を形成するのに必要な最小臨界エネルギー量(Ec)として定義される。
Cd=Dp×ln(t×Irr)+Ec (1)
式中,Cdは、[mm]で与えられる硬化深さであり、
Dpは、[mm]で与えられる浸透深さであり、
t=時間(すなわち照射時間)は、単位が[s]で与えられ、
Irr=照度(すなわち光源のパワー)、単位が[W/mm2]で与えられ、
Ecは、固体層を形成するために必要なエネルギーの最小量であり、単位が[J/mm2]で与えられる。
【0106】
前記安定なエマルジョンは、アルケニル基(A)を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロックと、複数のチオール基を有する架橋剤との非混和性の結果として形成される。
【0107】
アルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックが存在しない実施形態では、複数のアルケニル基を有する少なくとも第一のシリコーン構築ブロック(A)と複数のチオール基を有する架橋剤(B)との間にエマルジョンが形成される。前記エマルジョンにおいて、アルケニル基(A)を有する第一のシリコーン構築ブロックは、典型的には連続相を形成し、一方、複数のチオール基を有する架橋剤(B)は、分散(不連続)相を形成する。
【0108】
アルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックが存在する実施形態では、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロック(A)と、アルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックとの間で、複数のチオール基を有する架橋剤(B)を用いてエマルジョンが形成される。前記エマルジョンにおいて、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロック(A)とアルケニル基を有する更なるシリコーン構築ブロックとの混合物は、典型的には連続相を形成し、複数のチオール基を有する架橋剤(B)は、分散(不連続)相を形成する。
【0109】
好ましくは、エマルジョンは、100rpm以上、より好ましくは500~5,000rpmで、数分間、例えば、2000rpmで少なくとも2分間、より好ましくは5~15分間、混合又は剪断(例えば、適切な高剪断ミキサでの効果的な混合)する手段によって得られる。
【0110】
あるいは、ミキサのチップスピードで混合を説明する。したがって、エマルジョンは、好ましくは、1m/s以上、より好ましくは2~10m/sのチップ速度で、数分間、例えば、5m/sで、少なくとも2分間、より好ましくは5~15分間、混合又は剪断(例えば、適切な高剪断ミキサでの効果的な混合)手段によって得られる。
【0111】
エマルジョンは、界面活性剤及び分散剤などの乳化安定剤で安定化されていてもよいし、ヒュームドシリカ及びナノクレーなどのレオロジー改質剤で安定化されていてもよい。
【0112】
上記エマルジョン内では、不連続相は、主に、100μm以下、好ましくは10μm未満、好ましくは0.1~10μmの直径を有する液滴として存在し、これにより、エマルジョンは、十分に安定して、液滴の合体及び粗大化を防ぐことができ、それゆえ、良好な貯蔵寿命を示すことができる。段階成長重合は、架橋剤が完全に使い果たされるまで、エマルジョン界面の近く又はエマルジョン界面で選択的に生じることが期待される。重合プロセスでの分散相(液滴)の消費により、液滴サイズ及び可視光の散乱が減少し、透明な3Dオブジェクトの製造が可能になる。したがって、具体的な実施形態では、本発明により得られた3Dシリコーンオブジェクトは、透明である。
【0113】
また、本発明のエマルジョンによって、重合した3Dオブジェクトは(z方向にも対する)一方向特性を示すことによって、それら自体を区別し、それゆえ、(xy平面及びz方向での)光散乱による特定の光浸透深さが達成され、これにより、限られた侵入深さが要因で高解像度(例えば30μmなど)での印刷が可能になる。したがって、具体的な実施形態では、本発明に従って得られた3Dシリコーンオブジェクトは、高解像度のものである。
【0114】
代替の実施形態では、複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、複数のチオール基を有する架橋剤(B)とは、連続相を形成する。それゆえ、相分離はない。
【0115】
そのような実施形態では、相分離が観察されないので、安定性の問題は生じない。エマルジョン又は均質な混合物のいずれにおいても、回避すべき重要な特徴は、2つ以上の連続相を有する多相系の形成である。
【0116】
本発明による積層造形用組成物は、好ましくは、1~2,000Pa・sの範囲、より好ましくは30~700Pa・sの範囲、最も好ましくは50~300Pa・sの範囲の粘度を有する。
【0117】
積層造形用組成物は、少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤をさらに含み、これは、放射線への曝露、すなわち、UV A、UV B、UV C、及び全可視域、好ましくはUVA及び可視域、より好ましくは355~420nmの可視域への曝露で活性化させることができる。
【0118】
本発明による積層造形用組成物に適した例示的なフリーラジカル光開始剤には、以下が含まれる。
(i)2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどの、アシルホスフィンオキシド及びビスアシルホスフィンオキシド;
(ii)アニソイン;
(iii)ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテルなどの、ベンゾイン及びベンゾインアルキルエーテル;
(iv)ベンジルジメチルケタールなどの、ベンジル及びベンジルジアルキルケタール、
(v)アセトフェノン;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンなどの、ヒドロキシアセトフェノン;2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4’-エトキシアセトフェノンなどの、(ジ)アルコキシアセトフェノン;2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)-フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノンなどの、アミノアセトフェノン;4’-フェノキシアセトフェノンなどのアリールオキシアセトフェノン;
(vi)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾイルビフェニル、4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノンなどの(ジ)ヒドロキシベンゾフェノン;及び4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノンなどの(ジ)アルキルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどの(ジ)アミノベンゾフェノン、及び2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン;
(vii)2-エチルアントラキノンなどの、アントラキノン及びアルキルアントラキノン;
(viii)チオキサントン;i-プロピルチオキサントンなどのアルキルチオキサントン;及び2-クロロチオキサンテン-9-オンなどのチオキサンテン-9-オン;
(ix)ジベンゾスベレノン;
(x)カンファーキノン、9,10-フェナントレンキノン、1-フェニル-プロパン-1,2-ジオン、4,4’-ジクロロベンジル、メチルベンゾイルホルメートなどの、a-ジケトン又はそれらの誘導体;
(xi)ベンゾイルトリメチルゲルマニウム、ジベンゾイルジエチルゲルマニウム、ビス-(4-メトキシベンゾイル)-ジエチルゲルマニウムなどの、モノアシルゲルマニウム化合物及びジアシルゲルマニウム化合物;
(xii)ビス-(エタ5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス-[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]-チタンなどの、チタノセン。
【0119】
特定の例は、アセトフェノン、アニソイン、アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファーキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、4’-エトキシアセトフェノン、2-エチルアントラキノン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、及びチオキサンテン-9-オンである。
【0120】
具体的な実施形態では、積層造形用組成物は、フリーラジカル光開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(98%、Alfa Aesar、米国)及び/又は2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンを含む。
【0121】
典型的には、少なくとも1つの光開始剤(D)は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.01~3.0重量部の量で、好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量で存在する。
【0122】
一実施形態では、積層造形用組成物は、単一のフリーラジカル光開始剤を含む。
【0123】
代替の実施形態では、積層造形用組成物は、第一のフリーラジカル光開始剤及び第二のフリーラジカル光開始剤を含み、例えば、第一のフリーラジカル光開始剤及び第二のフリーラジカル光開始剤は、吸収挙動が同じであるか、重複するか、あるいは異なる。一実施形態では、積層造形用組成物は、吸収挙動が重複する第一のフリーラジカル光開始剤及び第二のフリーラジカル光開始剤を含む。別の実施形態では、積層造形用組成物は、吸収挙動が異なる第一のフリーラジカル光開始剤及び第二のフリーラジカル光開始剤を含む。
【0124】
第一の光重合開始剤及び第二の光重合開始剤の吸収スペクトルが、いくらか重複し得ることが理解される。例えば、第一の光重合開始剤及び第二の光重合開始剤の最長波長吸収極大間の差は、少なくとも5nm、好ましくは少なくとも10nm、より好ましくは少なくとも15nmであり得る。
【0125】
具体的な実施形態では、第一の光重合開始剤の最長波長吸収極大は、400nm未満、例えば、300~400nm未満、好ましくは330~400nm未満、より好ましくは340~380nmの波長である。第二の光重合開始剤の最長波長吸収極大は、少なくとも380nm、例えば、380~600nm、好ましくは400~500nm、より好ましくは400~480nmの波長である。
【0126】
好ましい実施形態は、ゲルマニウム化合物とヒドロキシアセトフェノンとの組み合わせ、好ましくは、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウムと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとの組み合わせを含む。ゲルマニウム化合物、好ましくは、ビス(4-メトキシベンゾイル)ジエチルゲルマニウムと、ヒドロキシアセトフェノンとは、好ましくは1:1~3:1の範囲の比率で、より好ましくは1:1~2:5の範囲の比率で、最も好ましくは2:1の比率で存在する。
【0127】
また、積層造形用組成物は、光触媒反応が直接曝露の領域に限定され、時期尚早に開始されず、適切な貯蔵寿命を確保できるように、少なくとも1つの光ブロッカを含むことが好ましい。適切な光ブロッカには、例えば、光重合に使用される光源のビーム波長の範囲で吸収極大を有する光ブロッカ、又は光を吸収し、再送達しない(無機又は有機)着色顔料(例えば、カーボンブラック、ブルー、レッド)、有機染料などの、着色剤が含まれる。他の適切なブロッカ(特に透明な組成物用)は、蛍光剤/蛍光増白剤、フォトクロミック染料及びサーモクロミック染料、ロイコ染料、又は光を吸収して異なる周波数で光を発する吸収剤が含まれる。
【0128】
積層造形用組成物での使用に適した市販の光ブロッカには、アボベンゾン、クマリン、1-(4-tert-ブチルフェニル)-3-(4-メトキシフェニル)-1,3-プロパンジオン(TCI、ドイツ)、5-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンズアルデヒド(Sigma-Aldrich、スイス)、2,2’-(2,5-チオフェネジイル)ビス(5-tert-ブチルベンゾオキサゾール(Sigma-Aldrich、スイス)、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸(Alfa Aesar、米国)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(Mayzo、米国)又は2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(Alfa Aesar、米国)が含まれる。
【0129】
光ブロッカは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの全重量に対して、0.01~0.50重量部、好ましくは0.10~0.30重量部の量で存在することが好ましい。
【0130】
光開始剤及び光ブロッカの吸収極大の波長及びモル吸光係数の判定は、通常、好ましくは1mMの濃度でのアセトニトリルなどの適切な溶媒中の溶液を使用して室温で、慣習的なダブルビームUV-VIS分光計などのUV-VIS分光法によって実行される。例えば、慣習的なダブルビームUV-VIS分光計を測定に使用することができる。
【0131】
積層造形用組成物が、光触媒反応が制御された方法で進行し、直接曝露の領域を超えてラジカル連鎖反応の伝播が回避されるように、少なくとも1つのラジカル阻害剤を含むことがさらに好ましい。さらに、ラジカル阻害剤は、積層造形用組成物の早期硬化を防止し、したがって、その貯蔵寿命、及び本発明の積層造形プロセスにおける操作可能性の窓を増加させる。適切なラジカル阻害剤には、TEMPO、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ヒドロキノン、フェノチアジン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、tert-ブチルヒドロキノン、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノンが含まれる。存在する場合、少なくとも1つのラジカル阻害剤は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.001~1重量部、好ましくは0.01~0.5重量部の量で存在することが好ましい。
【0132】
3D印刷シリコーン製品の用途に応じて、積層造形用組成物中に更なる成分が存在することが重要である場合がある。
【0133】
そのような更なる成分の1つは、着色された3D印刷シリコーン部品の製造を達成するための、顔料であってもよい。存在する場合、顔料は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.01~5重量部、好ましくは0.01~1重量部の量で存在することが好ましい。
【0134】
別のそのような更なる成分は、剪断減粘性フィラーであってもよく、それは、好ましくは、焼成シリカ及びシリコーン粉末から選択される。存在する場合、剪断減粘性フィラーは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~60重量部、好ましくは1~50重量部の量で存在することが好ましい。
【0135】
剪断減粘性フィラーは、積層造形用組成物の剪断減粘特性が重要である場合に必須の成分となり、それ自体は、積層造形の正確な方法に依存する。
【0136】
このような剪断減粘性フィラーは、上述したように、エマルジョンを安定化させるためにも有益である。
【0137】
さらに別のそのような更なる成分は、シリコーンゴムパウダー、ショア硬度及び引裂強度を高めるための補強フィラーであるであってもよい。存在する場合、シリコーンゴムパウダーは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~30重量部の量で存在することが好ましい。
【0138】
特に、積層造形用組成物中に存在する唯一のポリマーがシリコーンであることが好ましい。また、本発明の方法によって得られる3D印刷シリコーン部品に存在する唯一のポリマーがシリコーンであることが好ましい。
【0139】
(加熱促進ラジカル硬化ステップ)
一実施形態において、本発明のステップc)の少なくとも1つの更なる硬化ステップは、加熱促進ラジカル硬化ステップである。
【0140】
本発明の文脈では、加熱促進ラジカル硬化ステップという用語は、持続的な時間の間、半製品の加熱によってラジカル反応が促進される任意のステップを指し、ここで、ラジカル反応は、熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)によって促進される。
【0141】
このように、ステップc)の少なくとも1つの更なる硬化ステップが加熱促進ラジカル硬化ステップである場合、ステップb)の積層造形用組成物は、熱活性化可能なフリーラジカル開始剤を含まなければならない。
【0142】
熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.1~5.0重量部、より好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量で存在する。
【0143】
本発明による熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)は、好ましくはジアゾ化合物及び過酸化物から選択され、より好ましくは2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン及び2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)から選択される。
【0144】
加熱促進ラジカル硬化ステップは、好ましくは、30~200℃、好ましくは40℃~200℃の範囲の一定温度で、1秒~24時間、好ましくは1分~24時間の範囲の時間にわたって、半製品を加熱することからなる。
【0145】
一実施形態では、加熱は、比較的低い温度で比較的長い時間にわたって、好ましくは30~90℃の範囲、より好ましくは40~80℃の範囲、最も好ましくは50~70℃の範囲の一定温度で、12~24時間、より好ましくは14~21時間、最も好ましくは15~18時間の範囲の時間にわたって、行われ得る。
【0146】
代替の実施形態では、加熱は、比較的高い温度で比較的短い時間にわたって、好ましくは90~200℃の範囲、より好ましくは100~150℃の範囲、最も好ましくは110~130℃の範囲の一定温度で、1分~6.0時間の範囲、より好ましくは0.5~4.5時間の範囲、最も好ましくは1.0時間~3.0時間の範囲の時間にわたって、行われ得る。
【0147】
したがって、本発明は、さらに積層造形用組成物に向けられ、その積層造形用組成物は、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部、好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)と、
を含み、
組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0148】
上記及び下記の節で与えられた積層造形用組成物の好ましい全ての実施形態及び特徴は、本態様の積層造形用組成物にも同様に適用可能である。
【0149】
好ましくは、本態様の積層造形用組成物は、本発明の3D印刷シリコーンの準備方法に好適である。
【0150】
(シラノール縮合硬化ステップ)
更なる実施形態において、本発明のステップc)の少なくとも1つの更なる硬化ステップは、シラノール縮合硬化ステップである。
【0151】
本発明の文脈では、シラノール縮合硬化ステップという用語は、シラノール縮合反応を通じて、互いに反応するポリシロキサンモノマー(C1a)、及びシラノール架橋剤(C1b)から拡張ポリシロキサンを形成する、任意のステップを指す。本発明の文脈では、拡張ポリシロキサンを形成するためにシラノール縮合反応を受けるのに適したポリシロキサンモノマー、及びシラノール架橋剤のブレンドは、縮合硬化シリコーンブレンドと称される。
【0152】
このように、ステップc)の少なくとも1つの更なる硬化ステップがシラノール縮合硬化ステップである場合、ステップb)の積層造形用組成物は、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)を含まなければならない。
【0153】
縮合硬化シリコーンブレンド(C1)は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは1~90重量部の範囲、より好ましくは5~75重量部の範囲、最も好ましくは10~60重量部の範囲の量で存在する。本発明者らは、上記の範囲が最終製品の最適な機械的性能を提供することを見出した。特に、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)の量が多いと、機械的に不安定な半製品が生成される傾向がある。
【0154】
縮合硬化シリコーンブレンド(C1)が採用される場合、2つの織り込まれたネットワークが形成され、第一は成分(A)及び(B)に由来し、第二は縮合硬化シリコーンブレンド(C1)に由来するものである。好ましくは、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)は、(A)+(B)+(C1)の総重量に対して、すなわち、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量、複数のチオール基を有する架橋剤の総重量、及び縮合硬化シリコーンブレンドの総重量の合計重量に対して、1.0~50.0重量%の範囲、より好ましくは10.0~45.0重量%の範囲、さらに好ましくは20.0~40.0重量%の範囲、最も好ましくは20.0~39.0重量%の範囲の量で存在する。重量部で表される範囲と同様に、重量%で表される範囲も、最終製品の機械的性能を向上させるために重要である。さらに、中間部硬化半製品の機械的特性は、顕著に改善された機械的特性と安定性を有しており、これは、高い解像度を必要とする特に複雑な3D形状を製造できることを意味する。
【0155】
縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)は、好ましくは、シラノール(Si-OH)末端ポリシロキサンから選択される。
【0156】
縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)は、好ましくは、1,000Pa・s未満、好ましくは100Pa・s未満、より好ましくは50Pa・s未満の粘度を有する。
【0157】
縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)は、好ましくは、100~500,000の範囲、より好ましくは2,000~50,000の範囲の重量平均分子量(Mw)を有する。
【0158】
例示的な縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)は、Evonikから市販されているPolymer OHポートフォリオ、又はGelestから市販されているDMS-S27から選択することができる。
【0159】
広義には、本発明のシラノール架橋剤(C1b)は、縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)を架橋することができる任意の分子であると理解されるであろう。縮合硬化シリコーン構築ブロックがシラノール官能性を含む場合、シラノール架橋剤(C1b)は架橋を達成するために適切な脱離基を含むだけでよく、一方、縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)が脱離基からなる場合、シラノール架橋剤(C1b)はシラノール官能性を含むだろうことは当業者に良く理解されよう。「シラノール架橋剤」という用語は、架橋剤がシラノール官能性を含むことを必ずしも必要とせず、むしろ、架橋剤がシラノール架橋を形成するのに適した官能性を有することを必要とする。好適な官能性は、当業者にはよく理解されるであろう。
【0160】
本発明によるシラノール架橋剤(C1b)は、好ましくは、低分子シラノール架橋剤及びポリマー/オリゴマーシラノール架橋剤から選択される。
【0161】
低分子シラノール架橋剤は、好ましくは、以下の式(II):
(R’)mSi(R)n (II)
に従う化合物から選択され、
式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから選択され、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルコキシ基で、特にC(1-6)アルコキシ基であり、最も好ましくはエトキシであり、
R及びR’の各インスタンスは、同一であっても異なっていてもよく、
mは3又は4のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=4である。
【0162】
代替の実施形態において、低分子シラノール架橋剤は、好ましくは、式(IIa):
(R’)mSi(R)n (IIa)
に従う化合物から選択され、
式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから選択され、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルケノキシ基であり、最も好ましくはイソプロペノキシであり、
R及びR’の各インスタンスは、同一であっても異なっていてもよく、
mは3又は4のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=4である。
【0163】
ポリマー/オリゴマーシラノール架橋剤は、典型的には、式(III):
R1O((R3O)R4SiO)xR2 (III)
に従うポリアルキルシリケートポリマー/オリゴマーであり、
式中、R1、R2、及びR3は、独立してC(1-6)アルキルであり、好ましくはR1、R2、及びR3は、同一であり、最も好ましくはエチルであり、
R4は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニル、好ましくはメチル、エチル、ビニル、及びイソプロペニルから選択され、
xは、好ましくは2~100である。
【0164】
市販のポリアルキルシリケートは、典型的には、モノマー、ダイマー、トリマー及び環状ポリシロキサンの混合物として供給される。これらの混合物は、式(II)及び(III)に従う化合物の組み合わせに相当する。
【0165】
積層造形用組成物中の縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)のシラノール(Si-OH)基に対する架橋剤基(すなわち、低分子シラノール架橋剤についてはR’、高分子/オリゴマーシラノール架橋剤についてはOR1、OR2及びOR3)の比は、好ましくは、0.5:1~50:1の範囲にある。
【0166】
シラノール縮合硬化ステップは、好ましくは、半製品を20%超、好ましくは50%超の相対湿度に、30分~72時間、好ましくは6~36時間の範囲の時間にわたって、暴露することからなる。
【0167】
特に好ましいのは、12~36時間、より好ましくは18~30時間、最も好ましくは22~26時間の範囲の時間にわたって、相対湿度が50%超である条件である。
【0168】
シラノール縮合反応は、水分のみの存在下で起こり得るが、ステップb)の積層造形用組成物がシラノール縮合触媒をさらに含むことは、ときどき、有益である。本発明の文脈では、シラノール縮合触媒は、シラノール縮合反応を触媒することができる任意の種である。
【0169】
本発明のシラノール縮合触媒は、好ましくは、スズ、チタン、亜鉛、鉄、鉛又はコバルトの錯体、又は芳香族有機スルホン酸の群から選択される。
【0170】
シラノール縮合触媒は、スズ及びチタンの錯体から選択されることが最も好ましい。
本発明に適した例示的なシラノール縮合触媒には、ジメチルヒドロキシ(オレイン酸)スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ及びジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタンが含まれる。
【0171】
本発明のシラノール縮合触媒は、好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部の量で存在する。
【0172】
本実施形態の3D印刷シリコーン製品は、ステップb)でチオール-エン反応を介して硬化したシリコーンと、シラノール縮合硬化ステップc)で形成された拡張ポリシロキサンとが織り込まれたネットワークとして最もよく可視化される。これら2つの織り込まれたシリコーンネットワークは、互いに補完し合い、3D印刷シリコーン製品の機械的特性の向上に寄与するが、この2つのネットワークは互いに化学的に結合していない。
【0173】
特定の状況では、2つの織り込まれたシリコーンネットワークの間に化学結合を導入することによって、機械的特性をさらに改善することが有利になる場合がある。
【0174】
この架橋を実現する1つの戦略は、チオール(-SH)官能性を有する縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)を使用することである。
【0175】
もう一つの方法は、シラノール架橋機能(シラノール架橋剤(C1b)に類似)とアルケニル又はチオール機能の両方を有する低分子シランカップリング剤を組み込むことである。
【0176】
これらの低分子は、チオール-エン反応により、ステップb)で形成されたマトリックスに取り込まれる。シラノール縮合硬化ステップの間に、マトリックスはこのように縮合硬化シリコーンブレンド(C1)と反応できる反応性官能基を含み、2つの織り込まれたシリコーンネットワークが互いに架橋された架橋構造をもたらす。
【0177】
適切な低分子シラノールカップリング剤は、アルケニルシランカップリング剤(C2)及びチオール含有シランカップリング剤(C3)から選択される。
【0178】
本発明のアルケニルシランカップリング剤(C2)は、好ましくは式(IV):
(R’)mSi(R’’)nR (IV)
で表され、
式中、Rは、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニル基であり、好ましくはビニル基であり、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルコキシ基、特にC(1-6)アルコキシ基、であり、最も好ましくはエトキシであり、
R’’は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である。
【0179】
代替の実施形態において、本発明のアルケニルシランカップリング剤(C2)は、以下の式(IVa):
(R’)mSi(R’’)nR (IVa)
で表され、
式中、Rは、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニル基であり、好ましくはビニル基であり、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルケノキシ基、特にC(1-6)アルケノキシ基であり、最も好ましくはイソプロペノキシであり、
R’’は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である。
【0180】
本発明のチオール含有シランカップリング剤(C3)は、好ましくは式(V):
(Ra)mSi(Rb)nR (V)
で表され、
式中、Rは、メルカプト-C(1-12)アルキル、好ましくはメルカプト-C(1-6)アルキル、最も好ましくはメルカプトプロピルであり、
Raは、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルコキシ基、特にC(1-6)アルコキシ基であり、最も好ましくはエトキシ基であり、
Rbは、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である。
【0181】
代替の実施形態において、本発明のチオール含有シランカップリング剤(C3)は、好ましくは、以下の式(Va):
(Ra)mSi(Rb)nR (Va)
で表され、
式中、Rは、メルカプト-C(1-12)アルキル、好ましくはメルカプト-C(1-6)アルキル、最も好ましくはメルカプトプロピルであり、
Raは、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルケノキシ基、特にC(1-6)アルケノキシ基であり、最も好ましくはイソプロペノキシであり、
Rbは、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である。
【0182】
一実施形態では、R’((C2)用)又はRa((C3)用)のいずれかをエトキシとして選択することが好ましい。別の実施形態では、R’((C2)用)又はRa((C3)用)のいずれかをイソプロペノキシとして選択することが好ましい。これらの特定の脱離基は、シラノール部分が、ステップc)の間にシラノール縮合反応を効率的に受けるのに十分に反応性を有するが、ステップb)又は積層造形用組成物の準備のいずれかにおいてシラノール縮合反応が起こるほど反応性でないことを可能にするので、好ましい。
【0183】
本発明の積層造形用組成物は、アルケニルシランカップリング剤(C2)又はチオール含有シランカップリング剤(C3)のいずれか一方、あるいはそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0184】
積層造形用組成物中のアルケニルシランカップリング剤(C2)とチオール含有シランカップリング剤(C3)の合計量は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの合計重量に対して、1~60重量部、より好ましくは1~30重量部の範囲、最も好ましくは1~20重量部の範囲にあることが好ましい。
【0185】
あるいは、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)、アルケニルシランカップリング剤(C2)及びチオール含有シランカップリング剤(C3)の組み合わせ量が、(A)+(B)+(C1)+(C2)+(C3)の合計重量に対して、すなわち、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量、複数のチオール基を有する架橋剤の総重量及び任意のアルケニル及び/又はチオール含有シランカップリング剤を含む縮合硬化シリコーンブレンドの総重量の合計重量に対して([(C1)+(C2)+(C3)]/[(A)+(B)+(C1)+(C2)+(C3)])、1.0~50.0重量%の範囲、より好ましくは10.0~45.0重量%、なおより好ましくは20.0~40.0重量%の範囲、最も好ましくは20.0~39.0重量%の範囲にあることが好ましい。
【0186】
本発明の積層造形用組成物におけるアルケニルシランカップリング剤(C2)とチオール含有シランカップリング剤(C3)の比率は、積層造形用組成物中のチオール基とアルケニル基との全体の比率が0.5:1~5:1の範囲にあり、シラノール架橋剤(C1b)、アルケニルシランカップリング剤(C2)及びチオール含有シランカップリング剤(C3)に存在する架橋剤基と縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)のシラノール(Si-OH)基の比率が0.5:1~50:1の範囲であれば、重要ではない。
【0187】
したがって、本発明は、さらに積層造形用組成物に向けられ、その積層造形用組成物は、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは1~90重量部の範囲の量の縮合硬化シリコーンブレンド(C1)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0188】
上記及び下記の節で与えられた積層造形用組成物の好ましい全ての実施形態及び特徴は、本態様の積層造形用組成物にも同様に適用可能である。
【0189】
好ましくは、本態様の積層造形用組成物は、本発明の3D印刷シリコーンの準備方法に好適である。
【0190】
(加熱促進ラジカル硬化ステップとシラノール縮合硬化ステップとの組合せ)
特に好ましい実施形態では、3D印刷シリコーンを準備するための方法のステップc)は、加熱促進ラジカル硬化ステップとシラノール縮合硬化ステップとの両方を含む。
【0191】
加熱促進ラジカル硬化ステップ及びシラノール縮合硬化ステップは、順次実施されてもよいが、この2つのステップは同時に行われることが好ましい。このような2つのステップを同時に組み合わせるための条件は、50~150℃の範囲の一定の温度で、1~24時間の範囲の時間にわたって、50%超の相対湿度で半製品を加熱することを含む。
【0192】
一実施形態では、加熱は、比較的低い温度で比較的長い時間にわたって、好ましくは50~80℃の範囲、より好ましくは53~70℃の範囲、最も好ましくは55~65℃の範囲の一定温度で、12~24時間、より好ましくは14~21時間、最も好ましくは15~18時間の範囲の時間にわたって、50%超の相対湿度で行われ得る。
【0193】
代替の実施形態では、加熱は、比較的高い温度で比較的短い時間にわたって、好ましくは90~150℃の範囲、より好ましくは100~140℃の範囲、最も好ましくは110~130℃の範囲の一定温度で、1~6.0時間の範囲、より好ましくは1.5~4.5時間の範囲、最も好ましくは1.5時間~3.0時間の範囲の時間にわたって、50%超の相対湿度で行われ得る。
【0194】
本発明による3D印刷シリコーンを準備するための方法のステップc)が、加熱促進ラジカル硬化ステップ及びシラノール縮合硬化ステップの両方を含む場合、ステップb)の積層造形用組成物は、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは1~90重量部の範囲の量の縮合硬化シリコーンブレンド(C1)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
v)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部、好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)と、
を含み、
組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある。
【0195】
前節までに述べた積層造形用組成物の好ましい全ての実施形態は、本態様の積層造形用組成物にも同様に適用される。
【0196】
(物品及び使用)
本発明は、さらに本発明の方法によって得られる3D印刷シリコーン製品に向けられる。
【0197】
UV/可視光硬化のみを使用する方法に対する本発明の主要な利点の1つは、硬化の深さであり、その結果、比較的大量の半製品であっても、等方性の材料特性を有する均質な硬化が得られることである。
【0198】
このように、本発明は、本発明の方法によって得られる3D印刷シリコーンに向けられ、そのサイズは少なくとも1×1×1mm、好ましくは少なくとも3×3×3mm、最も好ましくは少なくとも5×5×5mmであり、硬化組成物の表面と硬化組成物の中心から採取したサンプル間でISO7619-1に従って測定したショアA硬度の数値の変動は、10%未満であり、好ましくは5%未満であり、最も好ましくは数値が同一である。
【0199】
本発明は、さらに、熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)の使用に向けられ、そのプロセスは、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲である、ステップと、
c)加熱促進ラジカル硬化ステップを含む後硬化処理するステップであって、半製品が好ましくは50℃~150℃の範囲の一定温度で、1~24時間の範囲の時間にわたって加熱される、ステップと、
を含み、
熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)は、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110~400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度で、その数値が、フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するために、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部、好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量で、ステップb)の積層造形用組成物中に存在する。
【0200】
最後の態様において、本発明は、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)の使用に向けられ、そのプロセスは、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲である、ステップと、
c)シラノール縮合硬化ステップを含む後硬化処理するステップであって、好ましくは半製品を20%超、好ましくは50%超の相対湿度で、30分~72時間、好ましくは6~36時間の範囲の時間にわたって、暴露することからなる、ステップと、
を含み、
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)は、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110から400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度で、その数値が、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するために、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~90重量部の範囲の量で、ステップb)の前記積層造形用組成物中に存在する。
【0201】
上記の節で与えられた方法及び積層造形用組成物の両方の全ての好ましい実施形態及び特徴は、本節で議論される物品及び使用の両方に等しく適用可能である。
【0202】
また、本発明は、以下の項目によっても説明することができる。
(項目1)
3D印刷シリコーンを準備するための方法であって、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する少なくとも1つの架橋剤(B)と、
iii)少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含む、ステップと、
c)光促進硬化以外の少なくとも1つの更なる硬化ステップ、好ましくは加熱促進ラジカル硬化又はシラノール縮合硬化のいずれかを含む後硬化処理を行うステップと、
を含み、
前記積層造形用組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、方法。
(項目2)
複数のアルケニル基を有する前記少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、複数のチオール基を有する前記架橋剤(B)とは、安定なエマルジョンを形成する、項目1に記載の方法。
(項目3)
複数のアルケニル基を有する前記少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、前記複数のチオール基を有する架橋剤(B)とは、連続相を形成する、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記積層造形用組成物は、好ましくは、1~2,000Pa・sの範囲、より好ましくは30~700Pa・sの範囲、最も好ましくは50~300Pa・sの範囲の粘度を有する、項目1~3のいずれか一項目に記載の方法。
(項目5)
複数のアルケニル基を有する前記少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)における前記アルケニル基は、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニルから選択される、項目1~4のいずれか一項目に記載の方法。
(項目6)
複数のアルケニル基を有する前記少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)における前記アルケニル基は、ビニルである、項目1~4のいずれか一項目に記載の方法。
(項目7)
複数のチオール基を有する前記少なくとも1つの架橋剤(B)は、式(I):
R1(R)2SiO((R3R)SiO)xSi(R)2R2 (I)
で表され、
式中、Rは、独立してC(1-12)アルキルであり、好ましくはメチルであり、
R1、R2、R3は、独立して、C(1-12)アルキルであり、好ましくはメチル、又はメルカプト-C(1-12)アルキルであり、
R3の各インスタンスは、同じ(すなわち、ホモポリマー)であっても、異なって(すなわち、コポリマー)いてもよく、
xは1以上、好ましくは1~100であり、
ただし、R1、R2、R3の少なくとも1つ、好ましくは10~100,000がメルカプト-C(1-12)アルキルである、項目1~6のいずれか一項目に記載の方法。
(項目8)
前記積層造形用組成物が、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~60重量部の範囲の量で、好ましくは焼成シリカ及びシリコーン粉末から選択される、剪断減粘性フィラー
をさらに含む、項目1~7のいずれか一項目に記載の方法。
(項目9)
前記少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)が、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.01~3.0重量部、好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量で存在する、項目1~8のいずれか一項目に記載の方法。
(項目10)
前記積層造形用組成物が、
v)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.1~5.0重量部、より好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量で存在する熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)
をさらに含み、
ステップc)の前記少なくとも1つの更なる硬化ステップが、加熱促進ラジカル硬化ステップである、項目1~9のいずれか一項目に記載の方法。
(項目11)
前記加熱促進ラジカル硬化ステップが、30℃~200℃の範囲の一定温度で、1秒~24時間の範囲の時間、前記半製品を加熱することからなる、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)が、ジアゾ化合物及び過酸化物から選択され、より好ましくは2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン及び2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)から選択される、項目10又は11に記載の方法。
(項目13)
前記積層造形用組成物が、
vi)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは1~90重量部の範囲の量で存在する縮合硬化シリコーンブレンド(C1)
をさらに含み、
ステップc)の前記少なくとも1つの更なる硬化ステップが、シラノール縮合硬化ステップであり、
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)が好ましくはシラノール末端ポリシロキサンから選択される縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)と、好ましくは低分子シラノール架橋剤及びポリマー/オリゴマーシラノール架橋剤から選択されるシラノール架橋剤(C1b)とのブレンドである、項目1~12のいずれか一項目に記載の方法。
(項目14)
前記シラノール架橋剤(C1b)は、式(II):
(R’)mSi(R)n (II)
に従う化合物から選択される低分子シラノール架橋剤であり、
式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから選択され、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルコキシ基で、特にC(1-6)アルコキシ基であり、最も好ましくはエトキシであり、
R及びR’の各インスタンスは、同一であっても異なっていてもよく、
mは3又は4のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=4である、項目13に記載の方法。
(項目15)
前記シラノール架橋剤(C1b)は、式(IIa):
(R’)mSi(R)n (IIa)
に従う化合物から選択される低分子シラノール架橋剤であり、
式中、Rは、H、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール及びヘテロアリールから選択され、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルケノキシ基であり、最も好ましくはイソプロペノキシであり、
R及びR’の各インスタンスは、同一であっても異なっていてもよく、
mは3又は4のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=4である、項目12に記載の方法。
(項目16)
前記シラノール縮合硬化ステップが、前記半製品を20%超、好ましくは50%超の相対湿度に、30分~72時間、好ましくは6~36時間の範囲の時間にわたって、暴露することからなる、項目12~15のいずれか一項目に記載の方法。
(項目17)
前記積層造形用組成物中の前記縮合硬化シリコーン構築ブロック(C1a)のシラノール基に対する架橋剤基の比が、0.5:1~50:1の範囲にある、項目12~16のいずれか一項目に記載の方法。
(項目18)
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~90重量部の範囲、より好ましくは5~75重量部の範囲、最も好ましくは10~60重量部の範囲の量で存在する、項目12~17のいずれか一項目に記載の方法。
(項目19)
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)は、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量、複数のチオール基を有する架橋剤の総重量及び前記縮合硬化シリコーンブレンドの総重量の合計に対して、1.0~50.0重量%の範囲、より好ましくは10.0~45.0重量%、なおより好ましくは20.0~40.0重量%の範囲、最も好ましくは20.0~39.0重量%の範囲の量で存在する、項目12~17のいずれか一項目に記載の方法。
(項目20)
前記積層造形用組成物が、
vii)アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又は
viii)チオール含有シランカップリング剤(C3)
をさらに含み、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~60重量部の組み合わせ量である、項目12~19のいずれか一項目に記載の方法。
(項目21)
前記積層造形用組成物が、
vii)アルケニルシランカップリング剤(C2)であって、式(IV):
(R’)mSi(R’’)nR (IV)
で表され、
式中、Rは、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニル基であり、好ましくはビニル基であり、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルコキシ基で、特にC(1-6)アルコキシ基であり、最も好ましくはエトキシであり、
R’’は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又は
viii)チオール含有シランカップリング剤(C3)であって、式(V):
(Ra)mSi(Rb)nR (V)
で表され、
式中、Rは、メルカプト-C(1-12)アルキル、好ましくはメルカプト-C(1-6)アルキル、最も好ましくはメルカプトプロピルであり、
Raは、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルコキシ基で、特にC(1-6)アルコキシ基であり、最も好ましくはエトキシであり、
Rbは、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、チオール含有シランカップリング剤(C3)
をさらに含み、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~60重量部の組み合わせ量である、項目12~19のいずれか一項目に記載の方法。
(項目22)
前記積層造形用組成物が、
vii)アルケニルシランカップリング剤(C2)であって、式(IVa):
(R’)mSi(R’’)nR (IVa)
で表され、
式中、Rは、ビニル、アリル、ブテニル又はペンテニル基であり、好ましくはビニル基であり、
R’は、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルケノキシ基、特にC(1-6)アルケノキシ基であり、最も好ましくはイソプロペノキシであり、
R’’は、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、アルケニルシランカップリング剤(C2)、及び/又は
viii)チオール含有シランカップリング剤(C3)であって、式(Va):
(Ra)mSi(Rb)nR (Va)
で表され、
式中、Rは、メルカプト-C(1-12)アルキル、好ましくはメルカプト-C(1-6)アルキル、最も好ましくはメルカプトプロピルであり、
Raは、シラノール縮合反応において脱離基としての挙動ができる任意の基であってもよく、より好ましくはカルボキシレート基、アルケニルオキシ基、オキシム基、アルコキシ基及びジアルキルアミノ基から選択され、さらにより好ましくはアルケノキシ基、特にC(1-6)アルケノキシ基であり、最も好ましくはイソプロペノキシであり、
Rbは、C(1-6)アルキル、及びC(1-6)アルケニルから選択され、好ましくはメチル、エチル、ビニル及びイソプロペニルから選択され、最も好ましくはメチルであり、
mは2又は3のいずれかであり、nは0又は1のいずれかであり、m+n=3である、チオール含有シランカップリング剤(C3)
をさらに含み、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~60重量部の組み合わせ量である、項目12~19のいずれか一項目に記載の方法。
(項目23)
縮合硬化シリコーンブレンド(C1)、アルケニルシランカップリング剤(C2)及びチオール含有シランカップリング剤(C3)の組み合わせ量が、(A)+(B)+(C1)+(C2)+(C3)の合計重量に対して、すなわち、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量、複数のチオール基を有する架橋剤の総重量及び任意のアルケニル及び/又はチオール含有シランカップリング剤を含む縮合硬化シリコーンブレンドの総重量の合計重量に対して([(C1)+(C2)+(C3)]/[(A)+(B)+(C1)+(C2)+(C3)])、1.0~50.0重量%の範囲、より好ましくは10.0~45.0重量%、なおより好ましくは20.0~40.0重量%の範囲、最も好ましくは20.0~39.0重量%の範囲にある、項目20~22のいずれか一項目に記載の方法。
(項目24)
前記積層造形用組成物が、
ix)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.1~5.0重量部の量の、シラノール縮合触媒(F)
をさらに含み、
前記シラノール縮合触媒(F)が、好ましくはスズ、チタン、亜鉛、鉄、鉛もしくはコバルトの錯体、又は芳香族有機スルホン酸の群から選択され、最も好ましくはスズ及びチタンの錯体の群から選択される、項目12~23のいずれか一項目に記載の方法。
(項目25)
ステップc)が、加熱促進ラジカル硬化ステップ及びシラノール縮合硬化ステップの両方を含み、前記加熱促進ラジカル硬化ステップと前記シラノール縮合硬化ステップが別々に又は同時に実施され、前記加熱促進ラジカル硬化ステップと前記シラノール縮合硬化ステップが同時に行われる場合、前記加熱/シラノール縮合硬化ステップの組み合わせは、前記半製品を40℃~200℃の範囲の一定温度で、50%超の相対湿度で1分~24時間の範囲の時間にわたって加熱することからなる、項目1~24のいずれか一項目に記載の方法。
(項目26)
前記積層造形装置が、リコータを備える、項目1~25のいずれか一項目に記載の方法。
(項目27)
ステップb)の積層造形が、
i)プラットフォームを予め定義された高さで前記積層造形用組成物に浸漬させて、前記積層造形用組成物の層をプラットフォーム又は出現する半製品の表面に塗布するステップと、
ii)前記積層造形用組成物の少なくとも塗布された層が積層造形用組成物の上方になるように前記プラットフォームを移動させるステップと、
iii)前記積層造形用組成物の塗布された前記層を前記リコータで拭き取ることによって、予め定義された厚さの前記積層造形用組成物のフィルムを提供するステップと、
iv)前記積層造形用組成物の塗布されたフィルムに放射線源を照射するステップと、
v)任意に、前記プラットフォームをz方向に移動させるステップと、
vi)任意に、ステップii)、iii)、iv)、及び/又はv)を繰り返すステップと、
を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
積層造形用組成物であって、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部、より好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量の熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、積層造形用組成物。
(項目29)
積層造形用組成物であって、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは1~90重量部の範囲の量の縮合硬化シリコーンブレンド(C1)と、
iv)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、積層造形用組成物。
(項目30)
項目1~27のいずれか一項目に記載の方法によって得られる硬化組成物であって、サイズが少なくとも1×1×1mm、好ましくは少なくとも3×3×3mm、最も好ましくは少なくとも5×5×5mmであり、前記硬化組成物の表面と前記硬化組成物の中心から採取したサンプル間でISO7619-1に従って測定したショアA硬度の数値の変動が、10%未満であり、好ましくは5%未満であり、最も好ましくは前記数値が同一である、硬化組成物。
(項目31)
プロセスにおける熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)の使用であって、前記プロセスが、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、ステップと、
c)加熱促進ラジカル硬化ステップを含む後硬化処理するステップであって、前記半製品が好ましくは50℃~150℃の範囲の一定温度で、1~24時間の範囲の時間にわたって加熱される、ステップと、
を含み、
前記熱活性化可能なフリーラジカル開始剤(E)は、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110~400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するために、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、0.1~5.0重量部、好ましくは0.2~3.0重量部の範囲の量で、ステップb)の前記積層造形用組成物中に存在する、使用。
(項目32)
積層造形用組成物のステップを含むプロセスにおける縮合硬化シリコーンブレンド(C1)の使用であって、前記プロセスが、
a)半製品の3Dモデルを準備するステップと、
b)積層造形装置及び積層造形用組成物を用いて、前記半製品の前記3Dモデルに従って前記半製品を積層造形するステップであって、前記積層造形用組成物が、
i)複数のアルケニル基を有する少なくとも1つのシリコーン構築ブロック(A)と、
ii)複数のチオール基を有する架橋剤(B)と、
iii)複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、好ましくは0.01~3.0重量部、より好ましくは0.1~2.0重量部の範囲の量の少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤(D)と、
を含み、
前記組成物中のチオール基とアルケニル基の比は、0.5:1~5:1の範囲にある、ステップと、
c)シラノール縮合硬化ステップを含む後硬化処理するステップであって、好ましくは前記半製品を20%超、好ましくは50%超の相対湿度に、30分~72時間、好ましくは6~36時間の範囲の時間にわたって、暴露することからなる、ステップと、
を含み、
前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)は、
a)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定したヤング率が、縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのヤング率の110~10,000%の範囲内であることと、
b)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定された破断伸度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの破断伸度の110~1,000%の範囲であることと、
c)ISO37に従ってタイプ4の引張試験片で測定した引張強度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引張強度の110~500%の範囲であることと、
d)ASTM D624に従って試験片タイプCのサンプルで測定した引裂強度が、前記フリーラジカル開始剤(E)又は加熱促進ラジカル硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンの引裂強度の110~400%の範囲であることと、
e)ISO7619-1に従って測定されるショアA硬度が、前記縮合硬化シリコーンブレンド(C1)又はシラノール縮合硬化ステップの非存在下で同じ前記積層造形用組成物から製造された3D印刷シリコーンのショアA硬度の数値の110~2,500%の範囲であることと、
のうちの特性の1つ以上を有する3D印刷シリコーンを製造するために、
好ましくは、複数のアルケニル基を有するシリコーン構築ブロックの総重量に対して、1~90重量部の範囲の量で、ステップb)の前記積層造形用組成物中に存在する、使用。
【実施例】
【0203】
1.測定方法
(ヤング率)
ヤング率は、ISO37に従って、タイプ4の引張試験片を用いて測定した。この試験片は、以下のようにして得られた。
a)本発明による物品を印刷する。
b)物品が1mmよりも厚い場合、その物品を1mm厚のシートにスライスする。
c)この1mmのシートからタイプ4の引張試験片を打ち抜く。
このようにして、物品内の異なる点におけるヤング率を測定することができる。
測定は100Nのロードセルを備えたUTMで行い、10~50%の伸びの間でヤング率を算出した。
【0204】
(引張強度)
引張強度は、ISO37に従って、タイプ4の引張試験片を用いて測定した。この試験片は、以下のようにして得られた。
a)本発明による物品を印刷する。
b)物品が1mmよりも厚い場合、その物品を1mm厚のシートにスライスする。
c)この1mmのシートからタイプ4の引張試験片を打ち抜く。
このようにして、物品内の異なる点における引張強度を測定することができる。
測定は、100Nのロードセルを備えたUTMで行った。
【0205】
(破断伸度)
破断伸度は、ISO37に従って、タイプ4の引張試験片を用いて測定した。この試験片は、以下のようにして得られた。
a)本発明による物品を印刷する。
b)物品が1mmよりも厚い場合、その物品を1mm厚のシートにスライスする。
c)この1mmのシートからタイプ4の引張試験片を打ち抜く。
このようにして、物品内の異なる点における破断伸度を測定することができる。
測定は、100Nのロードセルを備えたUTMで行った。
【0206】
(引裂強度)
引裂強度は、ASTM D624に従って、タイプCの試験片を用いて測定した。この試験片は、以下のようにして得られた。
a)本発明による物品を印刷する。
b)物品が2mmよりも厚い場合、その物品を2mm厚のシートにスライスする。
c)この2mmのシートからタイプCの試験片を打ち抜く。
このようにして、物品内の異なる点における引裂伸度を測定することができる。
測定は、100Nのロードセルを備えたUTMで行った。
【0207】
(ショアA硬度)
ショアA硬度は、ISO7619-1に従って測定した。全ての試験は、タイプAデュロメータによって行われた。測定は、あらゆる大きさの印刷されたサンプルに対して直接行われた。物品の内部領域のショアA硬度値を得るために、物品を所定の高さでスライスし、切断面の中央と切断面の端でショアA硬度を測定した。
【0208】
2.実験結果:
a)加熱促進ラジカル硬化ステップを含む3D印刷シリコーンの準備
【表1】
A:Momentiveから市販されているSilopren* U Base Compound P300と、Evonikから市販されているPolymer VS200との100:35の割合での配合
B:GPC Siliconesから商品名GP-800で市販されている(メルカプトプロピル)メチルシロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー(CAS:101810-99-5)
D:Merck Sigma Aldrichから市販されている2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(CAS:24650-42-8)
UVブロッカ:Merck Sigma Aldrichから市販されているアボベンゾン(CAS:70356-09-1)
E:Alfa Aesarから市販されている1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(CAS:947-19-3)
【0209】
予備配合:成分Aの焼成シリカとのブレンドに、成分Bを加え、のこぎり歯プロペラで、2000rpmで10分間混合した。次に、成分DとUVブロッカを5.0mLのジクロロメタン(DCM)に溶解し、シリコーン混合物に添加した。次に、成分Eを混合物に添加し、さらに10分間混合した。
【0210】
配合:混合されたインクを、それぞれ30μmと5μmのスリット幅で、600rpmで作動する3ロールミルに通過させる。得られた3D印刷用インクを、3mbarの真空中で15分間、脱ガスする。得られた3D印刷用インクは、85Pa・sの測定粘度を有する。
【0211】
3D印刷:次に、この積層造形用組成物を使用して、DLP光源(385nm、1~10mW/cm2)を使用するプリンタを用いて、3Dシリコーン物品を印刷した。各層は、5秒間露光される(5~50mW/cm2の照度)。
【0212】
後硬化:後硬化は、最終的な機械的特性を得るために必要であり、印刷されたオブジェクトがあらゆる角度から均質に光を浴びることを保証するライトチャンバ(385nm、20mW/cm2、4分間)内で行われる。UV硬化の後、120℃のオーブンで2時間、第二のステップを行う。
【0213】
図1は、UV/Vis硬化と比較した熱硬化の効果を示す。直径10mm、高さ12mmの単一の円筒形の半製品を上記の手順で印刷した。熱硬化ステップの前に、この物品を直径10mm、高さ6mmの2つの円筒形の物品にスライスした。これらの物品のうちの一方は、切断面のショアA硬度について試験され、他方の物品は、切断面のショアA硬度について試験される前に、120℃のオーブンで2時間の熱硬化に供した。
【0214】
各物品の切断面において、外壁から1mm離れた位置で2ヵ所、円形の切断面の中心で1ヵ所、計3ヵ所でショアA硬度測定を行った。
【0215】
図1から分かるように、UV硬化のみを行った第一の物品のショアA硬度は不均一であり、外壁に近いほど高い値を示し、切断面の中心(これは、スライス前の硬化前製品の中心に相当する)では低い値を示した。
【0216】
対照的に、加熱硬化された物品のショアA硬度値は、第一の物品よりもはるかに高く、また完全に等方的であり、中心部でも外壁でもA61の値が観測された。
【0217】
b)UV硬化と加熱促進ラジカル硬化との浸透深さの比較
UV硬化と加熱促進ラジカル硬化との効率を比較するために、積層造形用組成物のチューブをUV硬化と加熱促進ラジカル硬化、又はUV硬化のみのいずれかに供した。
【0218】
【表2】
A:Evonikから商品名VQM 973で市販されているポリシロキサンとシルセスキオキサンのブレンド
B:GPC Siliconesから商品名GP-800で市販されている(メルカプトプロピル)メチルシロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー(CAS:101810-99-5)
D:Merck Sigma Aldrichから市販されている2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(CAS:24650-42-8)
UVブロッカ:Merck Sigma Aldrichから市販されているアボベンゾン(CAS:70356-09-1)
E:Alfa Aesarから市販されている1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(CAS: 947-19-3)
顔料:Smooth-Onから市販されているSilc Pig(商標)の青
【0219】
予備配合:成分Aに、成分Bを加え、のこぎり歯プロペラで、2000rpmで10分間混合した。次に、成分DとUBブロッカを1.5mLのジクロロメタン(DCM)に溶解し、シリコーン混合物に添加した。次に、3gの2,5-ビス(tert-ブチルペロキシ)-2,5-ジメチルヘキサンと1gのSilc Pig(商標)青色顔料(Smooth-On)をこの混合物に加え、さらに10分間混合した。
【0220】
配合:次に、シリコーン混合物を、それぞれ30μmと5μmのスリット幅で、600rpmで作動する3ロールミルに通過させる。得られた3D印刷用インクを、3mbarの真空中で15分間、脱ガスする。得られた3D印刷用インクは、250Pa・sの測定粘度を有する。
【0221】
成型:次に、3D印刷用インクを50mLのFlaconチューブに流し込んで円筒形に成型した。成型により形成された気泡を除去するため、Flaconチューブ内でインクを2000rpm(650cfm)で1分間遠心分離した。比較するために、2つのシリンダを成形した。
【0222】
UV硬化:両インクを、窒素雰囲気下で、UVチャンバ(385nm、20mW/cm2)内にて回転ステージ上で20分間、UV硬化させた。
【0223】
熱硬化:UV硬化後、1つのサンプルを通常雰囲気下で、180℃で20分間、さらに硬化させた。
【0224】
試験:硬化の深さを観察するために、UV硬化及び熱硬化したサンプルを切断し、その断面を得た。
【0225】
図2から分かるように、熱硬化したサンプルは全体が固体であるのに対し、UV硬化のみを行ったチューブはコアが液体で、外側の数mmのみが硬化している。
【0226】
本発明に従って準備された組成物の場合、コア領域は、完全に液体ではない。しかしながら、3D印刷物品の内部領域が硬化していなければ、この領域の機械的特性が低下し、物品全体の機械的性能が低下する(例えば、
図1参照)。
【0227】
c)シラノール縮合ステップを含む3D印刷シリコーンの準備
【表3】
A:Momentiveから市販されているSilopren* U Base Compound P1300と、Evonikから市販されているPolymer RV100との83:17の割合での配合
B:GPC Siliconesから商品名GP-800で市販されている(メルカプトプロピル)メチルシロキサン・ジメチルシロキサンコポリマー(CAS:101810-99-5)
C1a:700mPa・sの粘度を有するシラノール末端ポリシロキサン(Gelest Inc.から商品名DMS-S27で市販されている)
C1b:Merck Sigma Aldrichから市販されているオルトケイ酸テトラエチル(CAS:78-10-4)
C2:Merck Sigma Aldrichから市販されているビニルトリメトキシシラン(CAS:2768-02-7)
D:Merck Sigma Aldrichから市販されている2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(CAS:24650-42-8)
F:Gelest Inc.から市販されているジメチルヒドロキシ(オレイン酸)スズ(CAS:43136-18-1)
UVブロッカ:Merck Sigma Aldrichから市販されているアボベンゾン(CAS:70356-09-1)
シリカ:焼成シリカ(Aerosil R8200、Evonik)
【0228】
予備配合:成分Aに、成分Bを加え、のこぎり歯プロペラで、2000rpmで10分間混合した。次に、成分D、成分F、及びUVブロッカを5.0mLのジクロロメタン(DCM)に溶解し、シリコーン混合物に添加し、成分ブレンド1を形成し、これを5分間攪拌した。
【0229】
別のステップで、成分C1a、C1b、C2及びシリカを、先端速度10m/秒で回転する分散機ヘッドを備えた遊星ミキサで混合し、スライド幅30μm及び5μm、速度600rpmで動作する3ロールミルを通過させて、粘度が250Pa・sの3D印刷シリコーンインクを得、成分ブレンド2を形成し、これを5分間攪拌した。混合及び保存は、乾燥した不活性な条件下で行った。
【0230】
成分ブレンド1と成分ブレンド2とを、配合する前に、分散機ヘッドを先端速度10m/sで回転させる遊星ミキサで混合した。
【0231】
配合:次に、混合されたインクを、それぞれ30μmと5μmのスリット幅で、600rpmで作動する3ロールミルに通過させる。得られた3D印刷用インクを、3mbarの真空中で15分間、脱ガスする。得られた3D印刷用インクは、250Pa・sの測定粘度を有した。
【0232】
3D印刷:次に、この積層造形用組成物を使用して、DLP光源(385nm、1~10mW/cm2)を使用するプリンタを用いて、3Dシリコーン物品を印刷した。各層は、5秒間露光される(5~50mW/cm2の照度)。
【0233】
後硬化:後硬化は、最終的な機械的特性を得るために必要であり、印刷されたオブジェクトがあらゆる角度から均質に光を浴びることを保証するライトチャンバ(385nm、20mW/cm2、4分間)内で行われる。UV硬化の後、相対湿度50%に制御された60℃のオーブンで24時間、第二のステップを行う。
【0234】
図3は、積層造形用組成物3を用いて製造された耳型人工器官を示す。図から分かるように、本発明方法では、極めて高い解像度の高精細な形状を達成することができる。
【0235】
より多量の成分ブレンド2/より少量の成分ブレンド1を有する類似の積層造形用組成物と比較して、機械的特性は著しく改善される。同様に、成分C2を省略した類似の積層造形用組成物と比較すると、2つのネットワーク間のリンクによって、機械的特性及び安定性が向上する。特に、引裂強度、引張強度及び引張弾性率の向上が見られる。