(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】貼付部材
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20240101AFI20241004BHJP
【FI】
A61F13/02 355
A61F13/02 310T
A61F13/02 380
(21)【出願番号】P 2022581087
(86)(22)【出願日】2021-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2021005032
(87)【国際公開番号】W WO2022172370
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004020
【氏名又は名称】ニチバン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 篤
(72)【発明者】
【氏名】金箱 眞
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 勝久
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正弥
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-29859(JP,A)
【文献】特表2019-518562(JP,A)
【文献】国際公開第2013/054420(WO,A1)
【文献】実開平5-54515(JP,U)
【文献】登録実用新案第3182460(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/00-13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と粘着剤とライナーとがこの順序で積層されてなる貼付部材であって、
前記支持体及び前記粘着剤は、凹部を有する大略U字状に形成され、
前記ライナーは、前記凹部を含む前記支持体及び前記粘着剤の外周よりも大きく形成されると共に、前記凹部の開口側を上方向とする平面視で、前記凹部の左右方向中心を基準として前記凹部の左右両端よりも外側且つ前記凹部の近傍を通って前記ライナーを3分割する一対のスリットが設けられて
おり、
前記一対のスリットの各々は、前記平面視における上下方向に関して、非対称形状をなしていることを特徴とする貼付部材。
【請求項2】
前記一対のスリットは、前記平面視で且つ前記凹部の左右方向中心を基準として、前記凹部よりも左右両側において、外側へと突出した円弧状をなすと共に、前記凹部よりも下側において、内側へと突出した円弧状をなすことを特徴とする請求項
1記載の貼付部材。
【請求項3】
前記ライナーは、前記凹部の開口側を上辺及びそれと対向する辺を下辺とする大略矩形に形成されていることを特徴とする請求項1
又は2記載の貼付部材。
【請求項4】
前記一対のスリットの各々は、その両端が前記ライナーの上辺及び下辺と直交する直線状をなすと共に、前記ライナーの上辺と交わる位置と、前記ライナーの下辺と交わる位置とが、前記ライナーの上辺及び下辺の延在方向について一致していることを特徴とする請求項
3記載の貼付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節部への貼り付けに適した貼付部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
膝、肘、手首、足首などの関節部に貼り付けるための貼付部材として、U字型をなす貼付部材が開発されている(例えば特許文献1参照)。このようなU字型の貼付部材は、U字型の凹部によって関節の一部を開放した状態で貼り付けることができるため、好適なサポート感やフィット感を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したU字型の貼付部材は、その形状に起因して、ライナーの剥離方法が煩雑になる傾向にあり、それが貼付部位への貼り付けに影響を及ぼすこともあって、それらの点に改善の余地があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、貼付部材の貼り易さを向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0006】
(1)支持体と粘着剤とライナーとがこの順序で積層されてなる貼付部材であって、前記支持体及び前記粘着剤は、凹部を有する大略U字状に形成され、前記ライナーは、前記凹部を含む前記支持体及び前記粘着剤の外周よりも大きく形成されると共に、前記凹部の開口側を上方向とする平面視で、前記凹部の左右方向中心を基準として前記凹部の左右両端よりも外側且つ前記凹部の近傍を通って前記ライナーを3分割する一対のスリットが設けられている貼付部材。
【0007】
本項に記載の貼付部材は、支持体と粘着剤とライナーとがこの順序で積層されてなるものであり、支持体と粘着剤とは、凹部を有する大略U字状に形成される。これに対し、ライナーは、凹部を含めた支持体及び粘着剤の外周よりも大きく形成される。このため、粘着剤の周囲と凹部の内側とには、ライナーのみが存在することになる。又、ライナーは、一対のスリットが設けられていることで、粘着剤から3分割で剥離可能になっている。これら一対のスリットは、支持体や粘着剤の凹部の開口側を上方向とする平面視で、凹部の左右方向中心を基準として、凹部の左右両端よりも外側且つ凹部の近傍を通っている。すなわち、一方のスリットは、凹部の左端よりも左側であって凹部の近傍、換言すれば、凹部の左側の粘着剤が存在する部分を通り、もう一方のスリットは、凹部の右端よりも右側であって凹部の近傍、換言すれば、凹部の右側の粘着剤が存在する部分を通っている。更に、それら一対のスリットは、互いに交わることなくライナーの端部間を接続するようなルートを通ることで、ライナーを3分割している。
【0008】
上記のような構成により、本項に記載の貼付部材は、3分割されるライナーの中央部分が初めに剥離され、それによって露出する粘着剤の部位から先に貼付部位へ貼り付けられることで、狙った位置へと容易に位置決めされるものとなる。その際に露出する粘着剤の部位のうち、最初に凹部の下部を関節の凸部近くに貼り付け、次に、凹部の左右両側に位置する部位を貼り付けることで、粘着剤の略上端から下端までの部位が貼り付けられるため、狙った位置へと強固に安定して貼り付けられ、更に、粘着剤の凹部の上部が折れ曲がったりすることでシワが発生するなどの、不具合を抑制することができる。又、ライナーの中央部分が剥離された貼付部材は、凹部の左右両端よりも内側にライナーが残らないため、そのようなライナーが揺れ動いて貼り付けの妨げになることが防止される。更に、粘着剤の中央部分が上記のように先に貼り付けられていることで、残りの2枚のライナーが剥がし易くなると共に、それによって露出する粘着剤の残りの部位も貼り易くなるものである。加えて、粘着剤の周囲や凹部の内側に存在するライナーのみの部位は、特にライナーの中央部分が剥離される際の取っ掛かりとして利用されることで、剥がし易さがより向上されることになる。
【0009】
(2)上記(1)項において、前記一対のスリットの各々は、前記平面視における上下方向に関して、非対称形状をなしている貼付部材。
本項に記載の貼付部材は、粘着剤の凹部の開口側を上方向とする平面視での上下方向に関して、ライナーに設けられる一対のスリットの各々が非対称形状をなしているものである。これにより、同方向に関して同じく非対称形状であるU字状の粘着剤に対応して、より剥がし易いライナーが提供されるものとなる。
【0010】
(3)上記(2)項において、前記一対のスリットは、前記平面視で且つ前記凹部の左右方向中心を基準として、前記凹部よりも左右両側において、外側へと突出した円弧状をなすと共に、前記凹部よりも下側において、内側へと突出した円弧状をなす貼付部材。
本項に記載の貼付部材は、粘着剤の凹部の開口側を上方向とする平面視で且つ凹部の左右方向中心を基準として、ライナーに設けられる一対のスリットが、凹部よりも左右両側において外側へと突出した円弧状をなすと共に、凹部よりも下側において内側へと突出した円弧状をなすものである。
【0011】
すなわち、一方のスリットは、凹部よりも左側において左側へと突出した円弧状をなし、凹部よりも下側において右側へと突出した円弧状をなす。又、もう一方のスリットは、凹部よりも右側において右側へと突出した円弧状をなし、凹部よりも下側において左側へと突出した円弧状をなす。このように、凹部の左右両側で一対のスリットが互いに外側へと広がることで、スリットが凹部の近傍を通りながらも、ライナーの中央部分が剥離されたときに凹部の左右両側で露出する粘着剤の部位に、十分な貼り付け面積が確保されるものとなる。更に、凹部よりも下側において一対のスリットが互いに内側へと接近することで、ライナーの中央部分が剥離されたときに凹部の下方で露出する粘着剤の面積が抑えられ、粘着剤同士の自着が抑制されるものである。
【0012】
(4)上記(2)又は(3)項において、前記ライナーは、前記凹部の開口側を上辺及びそれと対向する辺を下辺とする大略矩形に形成されている貼付部材。
本項に記載の貼付部材は、ライナーが、粘着剤の凹部の開口側を上辺及びそれと対向する辺を下辺とする、大略矩形に形成されていることで、矩形の貼付部材を取り扱うように設計されている既存の設備が利用されて、問題なく搬送や集積が行われるものとなる。
【0013】
(5)上記(4)項において、前記一対のスリットの各々は、その両端が前記ライナーの上辺及び下辺と直交する直線状をなすと共に、前記ライナーの上辺と交わる位置と、前記ライナーの下辺と交わる位置とが、前記ライナーの上辺及び下辺の延在方向について一致している貼付部材。
本項に記載の貼付部材は、一対のスリットの各々の両端が、上記(4)項に記載したような矩形をなすライナーの上辺及び下辺と直交する直線状をなしているものである。これにより、粘着剤から剥離された後の3枚のライナーに、鋭角部分が存在しなくなるため、そのような鋭角部分による意図しない創傷が防止されるものである。
【0014】
更に、一対のスリットの各々は、ライナーの上辺と交わる位置と、ライナーの下辺と交わる位置とが、ライナーの上辺及び下辺の延在方向について一致している。すなわち、一方のスリットがライナーの上辺及び下辺と交わる位置同士が、上辺及び下辺の延在方向について一致しており、もう一方のスリットがライナーの上辺及び下辺と交わる位置同士も、上辺及び下辺の延在方向について一致している。これにより、隣接する貼付部材のライナーの上辺と下辺とが接する位置関係で、複数の貼付部材が並べられて製造される場合、隣接する2枚の貼付部材のうち、一方の貼付部材においてライナーの下辺と交わるスリットの位置と、他方の貼付部材においてライナーの上辺と交わるスリットの位置とが、実質的に一致することになる。従って、隣接する貼付部材のライナーに対して連続してスリットが設けられるものとなり、しかも、各スリットがライナーの上辺及び下辺と交わる位置では直線状になっているため、複数の貼付部材へのスリットの形成が容易になるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上記のような構成であるため、貼付部材の貼り易さを向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る貼付部材の一例を示す平面図及び断面図である。
【
図2】
図1の貼付部材のライナーの寸法を説明するための平面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る貼付部材の、スリットの
図1と異なる形状例を示す平面図である。
【
図4】
図1の貼付部材の支持体及び粘着剤の寸法を説明するための平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る貼付部材の、支持体及び粘着剤の
図1と異なる形状例を示す平面図である。
【
図6】比較例1、2の貼付部材を概略的に示す平面図である。
【
図7】比較例3、4の貼付部材を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面に基づき説明する。なお、図面の全体にわたって、同一部分又は対応する部分は、同一符号で示している。
図1は、本発明の実施の形態に係る貼付部材10の構成の一例を示している。図示のように、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、支持体12、粘着剤14、及びライナー30がこの順序で積層された三層構造のものであり、
図1(a)には、ライナー30側から視た平面図が示されている。なお、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線における断面図であるが、
図1(a)と異なる縮尺で断面を示している。
【0018】
支持体12及び粘着剤14は、凹部16を有する横長の大略U字状に形成され、全ての角部が丸みを帯びている。
図1の実施形態では、凹部16の底部22がV字状に形成されており、この底部22に対向する位置にある
図1(a)における下側の部位に窪み24が、
図1(a)における左下側の部位に窪み26が、
図1(a)における右下側の部位に窪み28が、夫々形成されている。支持体12及び粘着剤14のその他の詳細な構成については後述する。
【0019】
ライナー30は、粘着剤14の支持体12側と反対側に、粘着剤14から剥離可能に設けられており、剥離前の状態で粘着剤14を保護している。ライナー30は、凹部16を含めた支持体12及び粘着剤14の外周よりも大きく形成され、これに限定されるものではないが、本実施形態では、支持体12及び粘着剤14の外周よりも一回り大きい大略矩形に形成されている。
図1(a)においてライナー30がなす矩形は、上側の辺を上辺46、下側の辺を下辺48として、四隅の角部が丸みを帯びている。ライナー30には、剥離紙や剥離フィルム等が用いられ、例えば、シリコーン離型処理した上質紙やグラシン紙等の紙基材、ポリエステルフィルム等を用いることができる。なお、
図1(a)及び後述する
図3では、これに限定されるものではないが、ライナー30が透明な材料で形成されるものとして、粘着剤14を実線で図示している。
【0020】
又、ライナー30は、
図1(a)における上下方向に縦断する一対のスリット32(32A、32B)が設けられていることで、粘着剤14から3分割(分割片30a、30b、30c)で剥離可能になっている。これら一対のスリット32の各々は、直線部34、外側円弧状部36、内側円弧状部38、及び直線部40で構成されている。より詳しくは、一方のスリット32Aは、ライナー30の上辺46と直交する直線状の直線部34と、凹部16の左端18の近傍であって左端18よりも左側において外側(左側)へと膨らんだ円弧状をなす外側円弧状部36と、凹部16よりも下側において内側(右側)へと凹んだ円弧状をなす内側円弧状部38と、ライナー30の下辺48と直交する直線状の直線部40と、を有し、これらが接続されてライナー30を縦断している。スリット32Aの直線部34がライナー30の上辺46に対して交わる位置と、スリット32Aの直線部40がライナー30の下辺48に対して交わる位置とは、ライナー30の上辺46及び下辺48の延在方向(
図1(a)における左右方向)について一致している。
【0021】
これに対し、他方のスリット32Bは、ライナー30の上辺46と直交する直線状の直線部34と、凹部16の右端20の近傍であって右端20よりも右側において外側(右側)へと膨らんだ円弧状をなす外側円弧状部36と、凹部16よりも下側において内側(左側)へと凹んだ円弧状をなす内側円弧状部38と、ライナー30の下辺48と直交する直線状の直線部40と、を有し、これらが接続されてライナー30を縦断している。そして、スリット32Bの直線部34がライナー30の上辺46に対して交わる位置と、スリット32Bの直線部40がライナー30の下辺48に対して交わる位置とは、ライナー30の上辺46及び下辺48の延在方向(
図1(a)における左右方向)について一致している。このような構成のため、一対のスリット32A、32B同士は、
図1(a)の左右方向に関して対称形状をなしているが、各スリット32A、32Bの単体では、
図1(a)の上下方向に関して非対称形状をなしている。なお、上述した内側及び外側の概念は、凹部16の左右方向中心Cを基準とした左右方向に関するものである。
【0022】
図2を参照して、ライナー30及び一対のスリット32は、例えば以下のような大きさに形成される。しかしながら、ライナー30や一対のスリット32の大きさは、以下の例に限定されるものではなく、支持体12及び粘着剤14の大きさや形状などに応じた、適切な大きさが含まれるものである。
ライナー30の縦の長さT1:100mm
ライナー30の横の長さT2:140mm
直線部34の長さT3:10±4mm
直線部40の長さT4:10±4mm
外側円弧状部36と内側円弧状部38との間の膨らみ幅T5:8±4mm
直線部40間(直線部34間も同じ)の距離T6:48±10mm
外側円弧状部36の曲率半径R1:50±20mm
内側円弧状部38の曲率半径R2:50±20mm
直線部34と外側円弧状部36との間の曲率半径R3:10±5mm
直線部40と内側円弧状部38との間の曲率半径R4:10±5mm
なお、ライナー30の厚みは、これに限定されるものではないが、20μm以上、好ましくは、40μm以上であり、その上限値は500μm程度である。
【0023】
ここで、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、ライナー30に設けられる一対のスリット32が、凹部16の開口側を上方向とする
図1(a)のような平面視で、凹部16の左右方向中心Cを基準として凹部16の左端18及び右端20よりも外側且つ凹部16の近傍を通っていれば、スリット32の形状や位置は任意である。又、スリット32については、ミシン目の様に一部が切れていなくてもよく、剥離時に切断される機構となっていてもよい。例えば、
図3(a)の例では、一対のスリット32A、32Bが、凹部16の左右両側において外側へと突出した円弧状をなすと共に、凹部16よりも下側において内側へと突出した円弧状をなしている。
図3(b)の例では、一対のスリット32A、32Bが、内側及び外側へと複数回波打ちながら、凹部16の左右両側を通って、ライナー30の上辺46から下辺48まで縦断している。
【0024】
図3(c)の例では、一対のスリット32A、32Bの両端が、ライナー30の上辺46及び下辺48に対して直交する直線状をなし、それらの直線部間が内側へと突出した円弧状をなしている。更に、
図3(a)~(c)の例では、一対のスリット32A、32Bの各々について、ライナー30の上辺46と交わる位置と、ライナー30の下辺48と交わる位置とが、左右方向について一致している。一方、
図3(d)の例では、一対のスリット32A、32Bの上側の端部が、ライナー30の上辺46に対して直交する直線状をなし、そのまま凹部16の左右両側においても直線状をなしている。そして、凹部16の底部22近傍において外側へと折れ曲がり、ライナー30の左下角近傍及び右下角近傍へ向かって直線状に延びている。
【0025】
図1に戻り、支持体12は、貼付部位を圧迫及び支持すること、貼り付け時に手で取り扱われること、関節の曲げ伸ばしに追従することなどを目的として、縦横2方向に伸縮性を有する適切な材料で形成される。例えば、支持体12の素材には、布、好適には編布が用いられる。そして、支持体12の材質には、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、及びレーヨンなどが用いられ、その中でポリエステルが好ましい。このため、最も好ましい材料は、ポリエステル糸の編布であり、目付が70~210g/m
2程度であるのがよい。
【0026】
他方、粘着剤14には、水を含む含水系粘着剤、及びアクリル系、ゴム系、シリコーン系等の一般的な非水系粘着剤を用いることができ、中でも含水系粘着剤が好ましい。好ましい含水系粘着剤には、例えば、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、ポリアクリル酸ナトリウム、N-ビニルアセトアミド・アクリル酸ナトリウム共重合樹脂等の親水性のアクリル系粘着剤が挙げられる。
【0027】
更に、粘着剤14には、鎮痛消炎剤の薬効成分を1種又は2種以上含有させてもよい。薬効成分の例としては、サリチル酸、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、アセチルサリチル酸、L-メントール、カンフル(D体、L体、DL体)、ハッカ油、チモール、ニコチン酸ベンジルエステル、トウガラシエキス、カプサイシン、ノニル酸ワニリルアミド、フェルビナク、フルフェナム酸ブチル、ピロキシカム、インドメタシン、ケトプロフェン、プラノプロフェン、フェプラゾン、フルルビプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム、アンフェナクナトリウム、オキサプロジン、エモルファゾン、チアプロフェン、フェンブフェン、フェンチアザック、ジクロフェナクナトリウム、ジフルニサール、イブプロフェンピコノール、ベンダザック、スプロフェン、塩酸ブプレノルフィン、ペンタゾシン、酒石酸ブトルファノール等が挙げられる。
【0028】
次に、
図4を参照して、支持体12及び粘着剤14は、例えば以下のような大きさに形成される。しかしながら、支持体12及び粘着剤14の大きさは以下の例に限定されるものではなく、各関節などの貼り付け部位や使用者の身体の大きさ等に応じた、適切な大きさが含まれるものである。
凹部16の幅T7:40±20mm
凹部16の深さT8:0.7×T7~1.5×T7mm
左側端部から凹部16の左端18までの長さ(右側端部から凹部16の右端20までの長さ)T9:25~2×T7mm
縦の長さT10:T8+25~1.3×(T7+2×T9)mm
なお、支持体12と粘着剤14との積層体の総厚は、例えば0.5~1.5mmの範囲であり、その積層体としての物性は、少なくとも貼り付け時に関節部の屈曲方向となる支持体方向において、(1)10%引張荷重が1.0N/25mm以下の範囲、(2)50%引張荷重が15N/25mm以下の範囲が好ましい。特に、縦横両方向ともに上記の範囲の物性であることが好ましい。
【0029】
ここで、本発明の実施の形態に係る貼付部材10の支持体12及び粘着剤14は、凹部16を有する大略U字状に形成されていれば、上記の例にその形状が限定されるものではない。例えば、
図5(a)の例では、支持体12及び粘着剤14に、窪み24、26、28が形成されておらず、又、凹部16の底部22がV字状ではなく平坦に形成されている。
図5(b)の例では、
図4で示したような範囲でT7~T10の各大きさが調整されることで、支持体12及び粘着剤14が
図4の例よりも縦方向に長いU字状をなしており、特に凹部16よりも下側の部位が長くなっている。
【実施例】
【0030】
次に、本発明の実施の形態に係る貼付部材10について、実施例を挙げて説明するが、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、実施例の内容に限定されるものではない。
本発明の実施の形態に係る貼付部材10の実施例と比較例1~4との比較評価試験を行った。評価方法は、モニター12~30名によるアンケート方式であり、実際に各試料を指定の貼付方法に従って膝へ貼り付けてもらい、その際の貼り易さ及び貼り付け後の状態を評価項目として、以下の基準に従って評価し、平均値を評価結果とした。
●貼り易さ
100:非常に良い
80:かなり良い
60:やや良い
50:どちらでもない
40:やや悪い
20:かなり悪い
0:非常に悪い
●貼り付け後の状態
100:シワなくきれいに貼れた
75:少しシワが入ったが問題ない
25:シワが入り問題である
0:貼り付けに失敗した
実施例及び比較例1~4として、以下のような試料を用いた。
【0031】
〔実施例〕
支持体12及び粘着剤14の形状及び大きさ:
図1の例のように、凹部16の底部22がV字状であり、窪み24、26、28が形成されているものを使用した。
図4に示した各部位の大きさは、T7が38mm、T8が50mm、T9が49mm、T10が95mmである。
ライナー30の形状及び大きさ:
図1の例のような形状のものを使用した。
図2に示した各部位の大きさは、T1が100mm、T2が140mm、T3及びT4が10mm、T5が8mm、T6が48mm、R1及びR2が50mm、R3及びR4が10mmである。
貼付方法:
図1を参照して、まずライナー30の中央の分割片30bを剥がし、軽く曲げた状態の膝に対して、粘着剤14の凹部16の下方に位置する部位を、膝蓋骨の下方に貼り付ける。そして、ライナー30の残りの分割片30a、30cの何れか一方を剥がしながら、露出した粘着剤14の部位を膝蓋骨の一側方に貼り付け、同様に分割片30a、30cの残りの一方を剥がしながら、露出した粘着剤14の部位を膝蓋骨の他側方に貼り付ける。これにより、膝蓋骨が凹部16に位置して粘着剤14により囲われるように貼り付けられる。
【0032】
〔比較例1〕
形状及び大きさ:
図6(a)に示すように、支持体12及び粘着剤14の形状及び大きさは実施例と同様であり、ライナー54が縦100mm×横140mmの矩形をなし、ライナー54には図示のような波状の2本のスリット56が設けられているが、それらは凹部16の左右両端よりも内側を通っている。
貼付方法:まず、2本のスリット56の間に位置する中央のライナー部分を剥がし、軽く曲げた状態の膝に対して、粘着剤14の凹部16の下方に位置する部位を、膝蓋骨の下方に貼り付ける。そして、膝の左右方向に残っているライナー部分の何れか一方を剥がしながら、露出した粘着剤14の部位を膝蓋骨の一側方に貼り付け、同様に残りの一方のライナー部分を剥がしながら、露出した粘着剤14の部位を膝蓋骨の他側方に貼り付ける。これにより、膝蓋骨が凹部16に位置して粘着剤14により囲われるように貼り付けられる。
【0033】
〔比較例2〕
形状及び大きさ:
図6(b)に示すように、支持体12及び粘着剤14の形状及び大きさは実施例と同様であり、ライナー54が縦100mm×横140mmの矩形をなし、ライナー54には図示のような直線状の1本のスリット56が中央に設けられている。
貼付方法:まず、左右何れかのライナー54を剥がし、露出した粘着剤14の部位のうち、凹部16の下方に位置する部位を、軽く曲げた状態の膝の膝蓋骨の下方に貼り付け、残りの部位を膝蓋骨の一側方に貼り付ける。そして、残りの一方のライナー54を剥がしながら、露出した粘着剤14の部位を、膝蓋骨の下方及び他側方に貼り付ける。これにより、膝蓋骨が凹部16に位置して粘着剤14により囲われるように貼り付けられる。
【0034】
〔比較例3〕
形状及び大きさ:
図7(a)に示すような市販の貼付部材60Aであり、ライナーや粘着剤を含む全体形状が縦100mm×横140mmの矩形をなし、ライナーには図示のような波状の2本のスリット62が設けられている。
貼付方法:まず、2本のスリット62の間に位置する中央のライナー部分を剥がし、露出した粘着剤の部位を、軽く曲げた状態の膝の膝蓋骨近傍に、
図7(a)の左右方向が膝の上下方向となる向きで貼り付ける。そして、膝の上方向に残っているライナー部分を剥がしながら、露出した粘着剤の部位を膝の上側に貼り付け、続けて膝の下方向に残っているライナー部分を剥がしながら、露出した粘着剤の部位を膝の下側に貼り付ける。
【0035】
〔比較例4〕
形状及び大きさ:
図7(b)に示すような市販の貼付部材60Bであり、ライナーや粘着剤を含む全体形状が縦100mm×横140mmの矩形をなし、ライナーには図示のような直線状の1本のスリット62が中央に設けられている。
貼付方法:まず、貼付部材60Bを左右に引張ってスリット62からライナーを左右に分割させ、その際に露出した粘着剤の部位を、伸ばした状態の膝の膝蓋骨近傍に、
図7(b)の左右方向が膝の上下方向となる向きで貼り付ける。そして、分割されたライナーを剥がしながら、露出した粘着剤の部位を膝の上側及び下側に貼り付ける。
【0036】
【0037】
貼り易さの評価結果を確認すると、比較例については、比較例1~4の何れもが70点以下であった。これに対し、実施例については、77.5点と良好な貼り易さであった。貼り付け後の状態の評価結果を確認すると、比較例1及び2は比較的良好な結果を示しているが、実施例は全ての被験者がシワなく貼り付けできており、より良好な結果となっている。
【0038】
さて、上記構成をなす本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、
図1に示されているように、支持体12と粘着剤14とライナー30とがこの順序で積層されてなるものであり、支持体12と粘着剤14とは、凹部16を有する大略U字状に形成される。これに対し、ライナー30は、凹部16を含めた支持体12及び粘着剤14の外周よりも大きく形成される。このため、粘着剤14の周囲と凹部16の内側とには、ライナー30のみが存在することになる。又、ライナー30は、一対のスリット32(32A、32B)が設けられていることで、粘着剤14から3分割で剥離可能になっている。
【0039】
これら一対のスリット32は、
図1(a)のような支持体12や粘着剤14の凹部16の開口側を上方向とする平面視で、凹部16の左右方向中心Cを基準として、凹部16の左右両端18、20よりも外側且つ凹部16の近傍を通っている。すなわち、一方のスリット32Aは、凹部16の左端18よりも左側であって凹部16の近傍、換言すれば、凹部16の左側の粘着剤14が存在する部分を通り、もう一方のスリット32Bは、凹部16の右端20よりも右側であって凹部16の近傍、換言すれば、凹部16の右側の粘着剤14が存在する部分を通っている。更に、それら一対のスリット32は、互いに交わることなくライナー30の端部間を接続するようなルートを通ることで、
図1(a)ではライナー30の上辺46から下辺48まで縦断していることで、ライナー30を3分割している。
【0040】
上記のような構成により、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、3分割されるライナー30の中央の分割片30bが初めに剥離され、それによって露出する粘着剤14の部位から先に貼付部位へ貼り付けられることで、狙った位置へと容易に位置決めすることができる。しかも、その際に露出する粘着剤14の部位に、凹部16の左右両側に位置する部位が含まれることで、粘着剤14の略上端から下端までの部位が露出するため、狙った位置へと強固に安定して貼り付けることが可能となる。又、ライナー30の中央の分割片30bが剥離された貼付部材10は、凹部16の左右両端18、20よりも内側にライナー30が残らないため、そのようなライナー30が揺れ動いて貼り付けの妨げになることを防止することができる。
【0041】
更に、粘着剤14の中央部分が上記のように先に貼り付けられていることで、残りの2枚のライナー30の分割片30a、30bを剥がし易くすることができると共に、それによって露出する粘着剤14の残りの部位も貼り易くすることができる。加えて、粘着剤14の周囲や凹部16の内側に存在するライナー30のみの部位は、特にライナー30の中央の分割片30bが剥離される際の取っ掛かりとして利用されることで、剥がし易さをより向上させることが可能となる。本発明の実施の形態に係る貼付部材10のライナー30の貼り易さは、表1に示す評価結果からも明らかである。
【0042】
又、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、
図1(a)のような粘着剤14の凹部16の開口側を上方向とする平面視での上下方向に関して、ライナー30に設けられる一対のスリット32の各々が非対称形状をなしているものである。これにより、同方向に関して同じく非対称形状であるU字状の粘着剤14に対応して、より剥がし易いライナー30を提供することができる。
【0043】
更に、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、粘着剤14の凹部16の開口側を上方向とする
図1(a)のような平面視で、且つ凹部16の左右方向中心Cを基準として、ライナー30に設けられる一対のスリット32が、凹部16よりも左右両側において外側へと突出した円弧状をなすと共に、凹部16よりも下側において内側へと突出した円弧状をなすものである。すなわち、一方のスリット32Aは、凹部16よりも左側で左側へと突出した円弧状をなす外側円弧状部36と、凹部16よりも下側で右側へと突出した円弧状をなす内側円弧状部38とを有する。又、もう一方のスリット32Bは、凹部16よりも右側で右側へと突出した円弧状をなす外側円弧状部36と、凹部16よりも下側で左側へと突出した円弧状をなす内側円弧状部38とを有する。
【0044】
このように、凹部16の左右両側で一対のスリット32A、32Bが互いに外側へと広がることで、スリット32が凹部16の近傍を通りながらも、ライナー30の中央の分割片30bを剥離したときに凹部16の左右両側で露出する粘着剤14の部位に、十分な貼り付け面積を確保することができる。更に、凹部16よりも下側において一対のスリット32A、32Bが互いに内側へと接近することで、ライナー30の中央の分割片30bを剥離したときに凹部16の下方で露出する粘着剤14の面積を抑えることができ、粘着剤14同士の自着を抑制することが可能となる。
【0045】
又、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、ライナー30が、粘着剤14の凹部16の開口側を上辺46及びそれと対向する辺を下辺48とする、大略矩形に形成されていることで、矩形の貼付部材を取り扱うように設計されている既存の設備を利用して、問題なく搬送や集積を行うことが可能となる。
【0046】
加えて、本発明の実施の形態に係る貼付部材10は、一対のスリット32A、32Bの各々の両端が、矩形をなすライナー30の上辺46及び下辺48と直交する直線部34、40をなしているものである。これにより、粘着剤14から剥離した後の3枚のライナー30の分割片30a、30b、30cに、鋭角部分が存在しなくなるため、そのような鋭角部分による意図しない創傷を防止することができる。更に、一対のスリット32A、32Bの各々は、ライナー30の上辺46と交わる位置と、ライナー30の下辺48と交わる位置とが、ライナー30の上辺46及び下辺48の延在方向(
図1(a)における左右方向)について一致している。すなわち、一方のスリット32Aがライナー30の上辺46及び下辺48と交わる位置同士が、上辺46及び下辺48の延在方向について一致しており、もう一方のスリット32Bがライナー30の上辺46及び下辺48と交わる位置同士も、上辺46及び下辺48の延在方向について一致している。
【0047】
これにより、隣接する貼付部材10のライナー30の上辺46と下辺48とが接する位置関係で、複数の貼付部材10を並べて製造する場合、隣接する2枚の貼付部材10のうち、一方の貼付部材10においてライナー30の下辺48と交わるスリット32の位置と、他方の貼付部材10においてライナー30の上辺46と交わるスリット32の位置とを、実質的に一致させることができる。従って、隣接する貼付部材10のライナー30に対して連続してスリット32を設けることができ、しかも、各スリット32がライナー30の上辺46及び下辺48と交わる位置では直線状になっているため、複数の貼付部材10へのスリット32の形成を容易に実行することができる。
【符号の説明】
【0048】
10:貼付部材、12:支持体、14:粘着剤、16:凹部、18:凹部の左端、20:凹部の右端、30:ライナー、32(32A、32B):スリット、34、40:直線部、36:外側円弧状部、38:内側円弧状部、46:ライナーの上辺、48:ライナーの下辺、C:凹部の左右方向中心