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  • 特許-複合材料基板およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】複合材料基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20241004BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20241004BHJP
   C08K 5/357 20060101ALI20241004BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20241004BHJP
   C08J 3/11 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K7/18
C08K7/00
C08K5/3415
C08K5/357
C08J5/24 CFC
C08J3/11
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023004188
(22)【出願日】2023-01-16
(65)【公開番号】P2024061574
(43)【公開日】2024-05-07
【審査請求日】2023-01-16
(31)【優先権主張番号】111139768
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
(72)【発明者】
【氏名】黄 威儒
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-518563(JP,A)
【文献】特開2020-158705(JP,A)
【文献】特表2020-528471(JP,A)
【文献】特表2016-529371(JP,A)
【文献】特開2016-196548(JP,A)
【文献】特開2017-165922(JP,A)
【文献】国際公開第2020/161926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K、H01K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料基板であって、
第1の球状無機粒子およびフィラー材料を含む無機フィラーであって、前記第1の球状無機粒子の平均粒子径は300nm~600nmであり、前記フィラー材料は第2の球状無機粒子およびフレーク状無機粒子の少なくとも1つを含み、前記第2の球状無機粒子の平均粒子径は20nm~50nmであり、前記フレーク状無機粒子の平均厚さは0.5μm~2μmである、無機フィラーと、
ビスマレイミド樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂を含む、樹脂組成物であって、前記樹脂組成物中、前記ビスマレイミド樹脂は10重量%~70重量%、前記ナフタレン環含有エポキシ樹脂は10重量%~50重量%、および前記ベンゾオキサジン樹脂は19.9重量%~50重量%である樹脂組成物と、
分散剤であって、前記無機フィラー、前記樹脂組成物および該分散剤が一緒に混合される、分散剤と、
を含む、複合材料基板。
【請求項2】
請求項1に記載の複合材料基板において、さらに、
硬化剤であって、該硬化剤の重量は前記樹脂組成物の合計100重量部に対して、0重量部より大きく30重量部以下である、硬化剤と、
シロキサン結合剤であって、該シロキサン結合剤の重量は前記樹脂組成物の合計100重量部に対して、0.1重量部~4重量部である、シロキサン結合剤と、および、
触媒であって、該触媒の重量は前記樹脂組成物の合計100重量部に対して、0重量部より大きく10重量部以下である、触媒と、
を含み、また、前記無機フィラー、前記樹脂組成物、前記分散剤、前記硬化剤、前記シロキサン結合剤、および前記触媒が一緒に混合される、
複合材料基板。
【請求項3】
請求項1に記載の複合材料基板において、前記フィラー材料は、前記フレーク状無機粒子を含み、該フレーク状無機粒子の平均厚さに対する平均直径の比は10以上である、複合材料基板。
【請求項4】
請求項1に記載の複合材料基板において、前記フィラー材料は、前記第2の球状無機粒子を含み、該第2の球状無機粒子の平均粒子径に対する前記第1の球状無機粒子の平均粒子径の比は3~20である、複合材料基板。
【請求項5】
請求項1に記載の複合材料基板において、前記無機フィラーの重量は、前記樹脂組成物の合計100重量部に対して、100重量部~300重量部である、複合材料基板。
【請求項6】
請求項1に記載の複合材料基板において、前記第1の球状無機粒子の最大許容粒径は5μm以下であり、該第1の球状無機粒子のD10とD90との差は500nm未満であり、また、前記第2の球状無機粒子のD10とD90との差は20nm未満である、複合材料基板。
【請求項7】
複合材料基板の製造方法であって、
第1の球状無機粒子およびフィラー材料を含む無機フィラーであって、前記第1の球状無機粒子の平均粒子径は300nm~600nmであり、前記フィラー材料は第2の球状無機粒子およびフレーク状無機粒子の少なくとも1つを含み、前記第2の球状無機粒子の平均粒子径は20nm~50nmであり、前記フレーク状無機粒子の平均厚さは0.5μm~2μmである無機フィラー、分散剤、および溶媒を混合して分散液を形成するステップと、
分散液を形成した後、前記分散液に樹脂組成物を溶解してワニスを形成するステップであって、該樹脂組成物はビスマレイミド樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂およびベン
ゾオキサジン樹脂を含み、前記樹脂組成物中、前記ビスマレイミド樹脂は10重量%~70重量%、前記ナフタレン環含有エポキシ樹脂は10重量%~50重量%、および前記ベンゾオキサジン樹脂は19.9重量%~50重量%である、ワニスを形成するステップと、
を含む、製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の製造方法であって、さらに、
前記ワニスにガラス繊維クロスを含浸させるステップと、
前記ワニスおよび前記ガラス繊維クロスを乾燥させてフィルムを形成するステップと、
を含む、製造方法。
【請求項9】
請求項に記載の製造方法であって、さらに、
前記フィルムを2枚の銅箔の間に挟み、銅箔基板を得るステップ、
を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材料基板に関し、特に、無機フィラーおよび樹脂組成物を含む複合材料基板、並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱硬化性樹脂の組成物は、その架橋構造および高い耐熱性または寸法安定性から、電子機器および他の分野で広く使用されている。近年、5G通信の発展に伴い、業界では高周波伝送、高速信号伝送、および低遅延化への要求が高まっている。したがって、現在、関連分野は、電子基板における誘電特性(低誘電率および低散逸率)および耐熱性の要件を満たすために、高いガラス転移温度(Tg)、低い誘電率(Dk)、低い散逸率(Df)、および良好な耐熱性を備えた基板材料の研究開発に専念している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示は、熱膨張係数(CTE)が低く、剛性率(rigidity modulus)が高いという利点を有する複合材料基板を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の少なくとも1つの実施形態は、複合材料基板を提供する。複合材料基板は、無機フィラー、樹脂組成物、および分散剤を含む。無機フィラーは、第1の球状無機粒子、およびフィラー材料を含む。第1の球状無機粒子の平均粒径は、300nm~600nmである。フィラー材料は、第2の球状無機粒子およびフレーク状無機粒子の少なくとも1つを含む。第2の球状無機粒子の平均粒径は20nm~50nmであり、フレーク状無機粒子の平均厚さは0.5μm~2μmである。樹脂組成物は、ビスマレイミド樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂を含む。無機フィラー、樹脂組成物、および分散剤が一緒に混合される。
【0005】
本開示の少なくとも1つの実施形態は、無機フィラー、分散剤、および溶媒を混合して分散液を形成するステップと、分散液に樹脂組成物を溶解してスラリーを形成するステップであって、該樹脂組成物はビスマレイミド樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂およびベンゾオキサジン樹脂を含む、スラリーを形成するステップと、スラリーを硬化するステップと、を含む、複合材料基板の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
上述したことに基づくと、複合材料基板における無機フィラーの充填密度が60%~80%であるため、複合材料基板のCTEを低下させ、また複合材料基板の剛性率を増加させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る複合材料基板の概略断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る複合材料基板の概略断面図である。
図3】本開示の一実施形態に係る複合材料基板の製造方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示の一実施形態に係る複合材料基板10の概略断面図である。図1を参照すると、複合材料基板10は、樹脂組成物110、無機フィラー200、および分散剤(図示せず)を含む。いくつかの実施形態において、複合材料基板10はまた、硬化剤(図示せず)、シロキサン結合(coupling)剤(図示せず)、および触媒(図示せず)も含む。樹脂組成物110、無機フィラー200、分散剤、硬化剤、シロキサン結合剤、および触媒は一緒に混合される。
【0009】
樹脂組成物110は、ビスマレイミド樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、およびベンゾオキサジン樹脂を含む。樹脂組成物110において、ビスマレイミド樹脂は10wt%~70wt%、ナフタレン環含有エポキシ樹脂は10wt%~50wt%、ベンゾオキサジン樹脂は10wt%~50wt%である。
【0010】
いくつかの実施形態において、ビスマレイミド樹脂は、例えば、4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミドのオリゴマー、m-フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3‘-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4‘-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、および1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサンである。しかしながら、本開示はこれらに限定されない。
【0011】
いくつかの実施形態において、ナフタレン環含有エポキシ樹脂は、ナフタレン環構造を含む。ナフタレン環構造は、結合回転能が小さいため、ナフタレン環含有エポキシ樹脂の耐熱性を向上させ得る。また、ナフタレン環含有エポキシ樹脂のエポキシ基は、硬化後の架橋密度が高い。したがって、ナフタレン環構造とエポキシ基とを組み合わせたナフタレン環含有エポキシ樹脂は、剛性率が高く、耐熱性が高いという利点を有し、また樹脂組成物のCTEを低下させ得る。いくつかの実施形態において、ナフタレン環含有エポキシ樹脂は、単量体の多官能性ナフタレン環エポキシ樹脂(構造式1に示されるような)、ノボラック型ナフタレン系エポキシ樹脂(構造式2に示すようなもの)、および/または他のナフタレン環含有エポキシ樹脂を含む。構造式2において、nは、例えば、1~7である。
【化1】
【化2】
【0012】
いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジン樹脂は、フェノール化合物、ホルムアルデヒド、および第一級アミン化合物を反応物として使用する縮重合反応によって調製される。いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジン樹脂は、樹脂組成物110の架橋反応の速度を加速するという利点を有する。いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジン樹脂としては、例えば、ビスフェノールAベンゾオキサジン(構造式3に示されるような)、ビスフェノールFベンゾオキサジン(構造式4に示されるような)、フェノールフタレインベンゾオキサジン(構造式5に示されるような)、チオジフェノールベンゾオキサジン(構造式6に示されるような)、または他の適切なベンゾオキサジン樹脂が挙げられる。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【0013】
無機フィラー200は、複合材料基板10の主成分である。本実施形態において、無機フィラー200は、主に第1の球状無機粒子210から構成され、無機物質の充填密度を高めるために少量のフィラー材料が使用される。本実施形態において、上記フィラー材料は第2の球状無機粒子220aであり、第1の球状無機粒子210および第2の球状無機粒子220aは異なる粒径を含む。他の実施形態において、フィラー材料は、フレーク状または一次元構造の無機フィラーを含み得る。いくつかの実施形態において、無機フィラー200の重量は、例えば、樹脂組成物110の合計100重量部に対して、100重量部~300重量部であり、例えば、100重量部、150重量部、200重量部、250重量部、300重量部である。
【0014】
いくつかの実施形態において、第1の球状無機粒子210の材料は、酸化ケイ素または他の適切な材料を含む。いくつかの実施形態において、第1の球状無機粒子210の平均粒子径S1は、300nm~600nmである。いくつかの実施形態において、第1の球状無機粒子210は、より狭い粒子径範囲、すなわちより小さな最大許容粒子径を有するので、第1の球状無機粒子210をより整然と充填することができる。例えば、第1の球状無機粒子210の最大許容粒子径は5μm以下であり、第1の球状無機粒子210のD10とD90との差は500nm未満である。いくつかの実施形態において、粒子径および形状の異なる無機フィラーを混合することにより、複合材料基板10は、CTEが低く、剛性率が高いという利点を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1の球状無機粒子210および第2の球状無機粒子220aの材料は、酸化ケイ素または他の適切な材料を含む。いくつかの実施形態において、第2の球状無機粒子220aの平均粒子径S2は、20nm~50nmである。いくつかの実施形態において、第1の球状無機粒子210および第2の球状無機粒子220aは、それぞれより狭い粒子径範囲を有するため、第1の球状無機粒子210および第2の球状無機粒子220aは全体としてより密な充填効果を有する。例えば、第2の球状無機粒子220aのD10とD90との差は、20nm未満である。いくつかの実施形態において、第1の球状無機粒子210の平均粒子径S1と第2の球状無機粒子220aの平均粒子径S2との比は、3~20である。したがって、第2の球状無機粒子220aは好ましくは、第1の球状無機粒子210の間に充填され得る。いくつかの実施形態において、樹脂組成物の重量は100重量部であり、第1の球状無機粒子210は100~300重量部、第2の球状無機粒子220aは20~50重量部である。いくつかの実施形態において、複合材料基板10は、無機フィラー200の密充填度を増加させることにより、低CTEおよび高剛性率の利点を有する。
【0016】
分散剤は、無機フィラーをより均一に分散させるのに役立ち、それによって無機フィラーの充填密度を増加させる。いくつかの実施形態において、分散剤は、例えば、イオン分散剤、ポリマー分散剤、または他の適切な分散剤である。いくつかの実施形態において、分散剤の重量は、樹脂組成物110の合計100重量部に対して、0重量部より大きく3重量部以下である。
【0017】
硬化剤は、樹脂組成物110を硬化させるのに役立つ。いくつかの実施形態において、硬化剤の重量は、樹脂組成物110の合計100重量部に対して、0重量部より大きく30重量部以下である。
【0018】
シロキサン結合剤としては、シロキサンが挙げられるが、これに限定されない。また、官能基の種類によって、アミノシラン化合物、エポキシドシラン化合物、ビニルシラン化合物、エステルシラン化合物、ヒドロキシシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、メチルシランアクリロイルオキシシラン化合物、およびアクリロキシシラン化合物に分けられ得る。いくつかの実施形態において、シロキサン結合剤の重量は、樹脂組成物110の合計100重量部に対して、0.1~4重量部である。
【0019】
触媒としては、例えば、触媒および過酸化物が挙げられる。例えば、触媒としては、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール(2PZCN;CAS:23996-12-5)、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール(1B2PZ;CAS:37734-89-7)、チアベンダゾール(TBZ;CAS:148-79-8)、または上記の組み合わせが挙げられ、また、最良のリフティング効果を有するイミダゾール化合物は、例えば、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールであるが、本開示はこれに限定されず、実際の設計要件に従って触媒効果のために他の適切な触媒を選択することができる。いくつかの実施形態において、樹脂組成物110の合計100重量部に対して、触媒の重量は、0重量部より大きく10重量部以下である。
【0020】
図2の複合材料基板20は、複合材料基板20の無機フィラー200中のフィラー材料がさらに複数のフレーク状無機粒子220bを含むことを除いて、図1の複合材料基板10と同様である。
【0021】
いくつかの実施形態において、フレーク状無機粒子220bの材料は、酸化ケイ素または他の適切な材料を含む。いくつかの実施形態において、フレーク状無機粒子220bの平均厚さTは、0.5μm~2μmである。いくつかの実施形態において、フレーク状無機粒子210の平均直径Wは、5μm~10μmである。いくつかの実施形態において、フレーク状無機粒子220bの平均厚さTに対する平均直径Wの比率は、10以上である。本実施形態では、粒子径および形状の異なる無機フィラーを混合することにより、無機フィラーの充填密度を高め、複合材料基板20に低CTEおよび高剛性率という利点を持たせることができる。
【0022】
本実施形態において、複合材料基板20はさらに、樹脂組成物110、分散剤(図示せず)、硬化剤(図示せず)、シロキサン結合剤(図示せず)、および触媒(図示せず)を含む。樹脂組成物110、分散剤、硬化剤、シロキサン結合剤、および触媒の説明については、図1の実施形態を参照されたく、詳細はここでは繰り返さない。
【0023】
図3は、本開示の一実施形態による複合材料基板(例えば、前述の実施形態のいずれかにおける複合材料基板)の製造方法のフロー図である。
【0024】
図3を参照すると、ステップST1では、無機フィラー、分散剤、および溶媒を混合して分散液を形成する。いくつかの実施形態において、溶媒としては、例えば、水、有機溶媒、またはそれらの組み合わせが挙げられる。無機フィラーは、例えば、フレーク状無機粒子または球状無機粒子であり、無機フィラーは分散液中に均一に分散される。
【0025】
ステップST2では、ビスマレイミド樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂およびベンゾオキサジン樹脂を含む樹脂組成物を分散液に溶解してワニスを形成する。いくつかの実施形態において、スラリーの固形分は40重量%~70重量%である。いくつかの実施形態において、硬化剤、シロキサン結合剤、および触媒も分散液に添加される。
【0026】
ステップST3では、上記ワニスを含浸機にて室温でガラス繊維クロス(Nanya Plastics Co., Ltd.製、クロスタイプ1078)に含浸させた後、含浸機にて110℃で数分間乾燥させ、76重量%の樹脂含有量を有するフィルム(プリプレグ)を得る。
【0027】
最後に、ステップST4では、複数枚(例えば4枚)のフィルムを厚さ35μmの2枚の銅箔の間に重ね合わせ、圧力25kg/cm、温度85℃で20分間恒温保持し、昇温速度3℃/分で185℃まで昇温後、再度120分間恒温保持し、次いで、130℃まで徐冷し、厚さ0.8mmの銅箔基板(COPPER CLAD LAMINATES、CCL)を得た。
【0028】
表1は、いくつかの実施例および比較例の複合材料基板の配合を提供する。表1において、各成分の含有量は重量パーセントで表されている。
【表1】
【0029】
表1において、分散液に分散された球状無機粒子は、図1または図2の実施形態における第1の球状無機粒子210に相当し、分散液中に分散する球状無機粒子の最大許容粒径はより小さく(5μm)、D10とD90との差は500nm未満である。表1において、乾燥粉末の状態での球状無機粒子の最大許容粒径はより大きく(45μm)、D10とD90との間の差は800nmより大きい。表1において、フレーク状無機粒子およびナノ球状無機粒子は、図2の実施形態におけるフレーク状無機粒子220bおよび第2の球状無機粒子220aにそれぞれ対応する。
【0030】
表1の実施例1および実施例3では、球状無機粒子、フレーク状無機粒子、およびナノ球状無機粒子を分散液に分散させた後、樹脂組成物を添加してワニスを形成した。表1の実施例2では、球状無機粒子およびナノ球状無機粒子を分散液に分散させた後、樹脂組成物を添加してワニスを形成した。表1の比較例1では、球状無機粒子およびナノ球状無機粒子を乾燥粉末の状態で混合した後、樹脂組成物を添加してワニスを形成した。表1の比較例2では、球状無機粒子およびフレーク状無機粒子を乾燥粉末の状態で混合した後、樹脂組成物を添加してワニスを形成した。表1の比較例3では、球状無機粒子、フレーク状無機粒子、およびナノ球状無機粒子を乾燥粉末の状態で混合した後、樹脂組成物を添加してワニスを形成した。表1の比較例4では、分散液に分散した球状無機粒子を樹脂組成物に直接添加してワニスを形成し、ナノ球状無機粒子およびフレーク状無機粒子は分散液に添加しなかった。
【0031】
表1の各種実施例および比較例で得られた無機フィラーの充填密度を比較すると、乾燥粉末の状態で単独で使用された球状無機粒子、乾燥粉末の状態で単独で使用された球状無機粒子に加えてナノ無機粒子、または、乾燥粉末の状態で単独で使用された球状無機粒子に加えてフレーク状無機粒子は、それらの最大許容粒径が大きいため、密充填効果が得られない場合があることが知られている。
【0032】
また、表1を見ると、分散液に分散されたシングルサイズの球状無機粒子のみを用いた場合、最大許容粒径は小さくなるにもかかわらず、充填密度が高いという利点は得られない可能性があることがわかる。分散液中に分散された粒径のより大きい球状無機粒子と、分散液中に分散されたフレーク状無機粒子および/またはナノ無機粒子とを組み合わせた場合にのみ、CTEを大幅に低下させる効果が得られる。
【0033】
表2は、表1のいくつかの実施例および比較例の複合材料基板の特性の比較を提供する。
【表2】
【0034】
表1および表2の内容から、無機フィラーを分散液に分散させることにより、複合材料基板の平面方向のCTEを低下させることができることがわかる。加えて、表2から、CTEを低下させつつも、本開示の実施例1~3は依然として優れた誘電損失、誘電率、および剥離強度を有し、また、288℃でのはんだ耐熱性試験において優れた性能を発揮することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
5G通信の発展に伴い、本開示の複合材料基板は、電子機器および他の分野に適用される可能性がある。
【符号の説明】
【0036】
10,20:複合材料基板
110:樹脂組成物
200:無機フィラー
210:第1の球状無機粒子
220a:第2の球状無機粒子
220b:フレーク状無機粒子
S1,S2:平均粒子径
ST1,ST2,ST3:ステップ
T:平均厚さ
W:平均直径

図1
図2
図3