(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】通信効率が改善されたハンドオーバを実行する端末装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/18 20090101AFI20241004BHJP
H04W 36/38 20090101ALI20241004BHJP
H04W 74/0833 20240101ALI20241004BHJP
【FI】
H04W36/18
H04W36/38
H04W74/0833
(21)【出願番号】P 2023019287
(22)【出願日】2023-02-10
【審査請求日】2024-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】李 ヤンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】洪 禎延
(72)【発明者】
【氏名】高久 淑考
(72)【発明者】
【氏名】大関 武雄
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-502883(JP,A)
【文献】国際公開第2009/038074(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置であって、
接続中の基地局装置から、前記端末装置が当該基地局装置からのハンドオーバ先の候補である他の基地局装置についての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を受信し、前記基地局装置から、前記他の基地局装置へのハンドオーバを実行させることなく、前記他の基地局装置へランダムアクセスプリアンブルを送信するように前記端末装置に指示する物理下りリンク制御チャネル(PDCCH) orderを受信する受信手段と、
前記指示に従って、前記他の基地局装置へ前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する送信手段と、
前記基地局装置から、前記他の基地局装置へのハンドオーバを指示するコマンドを受信した場合に、当該他の基地局装置へのハンドオーバを実行する実行手段と、
を有し、
前記受信手段は、前記端末装置が前記ランダムアクセスプリアンブルを生成する際に使用する当該端末装置に固有の系列と、前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する際に使用可能な無線リソースを特定するための情報とを前記基地局装置から受信し、
前記送信手段は、前記端末装置に固有の前記系列を用いて前記ランダムアクセスプリアンブルを生成して前記情報によって特定される無線リソースにおいて送信し、前記ランダムアクセスプリアンブルの再送を要求する信号が前記基地局装置から受信された場合に、前記ランダムアクセスプリアンブルを再送し、当該ランダムアクセスプリアンブルの再送を要求する信号が前記基地局装置又は前記他の基地局装置から受信されない場合には、前記ランダムアクセスプリアンブルを再送しない、
ことを特徴とする端末装置。
【請求項2】
前記受信手段は、1つの前記PDCCHによって、複数の前記他の基地局装置への前記ランダムアクセスプリアンブルの送信の指示を受信する、ことを特徴とする請求項
1に記載の端末装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記基地局装置または前記他の基地局装置から、前記端末装置が送信した前記ランダムアクセスプリアンブルに基づいて前記他の基地局装置において特定されたタイミングアドバンスの値(TA値)を受信する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の端末装置。
【請求項4】
前記TA値を維持する維持手段をさらに有し、
前記送信手段は、前記TA値の有効期限が満了したこと又は更新周期が到来したことに応じて、前記他の基地局装置へ所定の上りリンクの信号を送信する、ことを特徴とする請求項
3に記載の端末装置。
【請求項5】
前記送信手段は、前記TA値の有効期限が満了したこと又は更新周期が到来したことに応じて前記基地局装置から前記ランダムアクセスプリアンブルの送信を指示された場合に、前記所定の上りリンクの信号として、前記ランダムアクセスプリアンブルを前記他の基地局装置へ送信する、ことを特徴とする請求項
4に記載の端末装置。
【請求項6】
前記送信手段は、所定の周期で、又は、前記他の基地局装置からサウンディング参照信号(SRS)の送信を指示されたことに応じて、前記所定の上りリンクの信号として、前記TA値を用いて決定した送信タイミングにおいて、前記SRSを前記他の基地局装置へ送信する、ことを特徴とする請求項
4に記載の端末装置。
【請求項7】
前記維持手段は、前記端末装置と前記他の基地局装置との間の無線品質が所定レベル以下となったことに応じて、前記TA値の維持を終了する、ことを特徴とする請求項
4に記載の端末装置。
【請求項8】
前記送信手段は、前記ランダムアクセスプリアンブルの送信停止指示が前記基地局装置から受信されるまで、所定周期で、前記ランダムアクセスプリアンブルを繰り返し送信し、当該送信停止指示が受信されたことに応じて、前記ランダムアクセスプリアンブルの送信を停止する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の端末装置。
【請求項9】
前記受信手段は、前記他の基地局装置に送信される前記ランダムアクセスプリアンブルの生成の際に使用可能な一群の系列を前記基地局装置から受信し、
前記送信手段は、当該一群の系列の中から選択した1つの系列を用いて前記ランダムアクセスプリアンブルを生成して、前記他の基地局装置へ送信する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の端末装置。
【請求項10】
前記受信手段は、前記ランダムアクセスプリアンブルに対する応答を、前記基地局装置または前記他の基地局装置から受信し、
前記送信手段は、前記応答が受信された場合に、前記端末装置の識別情報を含んだ
第1のメッセージを前記他の基地局装置へ送信し、
前記受信手段は、前記第1のメッセージに対して前記端末装置の識別情報を含んだ第2のメッセージを前記基地局装置又は前記他の基地局装置から受信する、
ことを特徴とする請求項
9に記載の端末装置。
【請求項11】
前記受信手段は、前記端末装置が前記ランダムアクセスプリアンブルに対する前記応答が前記他の基地局装置から送信されるタイミングと、前記第2のメッセージが前記他の基地局装置から送信されるタイミングとの少なくともいずれかの通知を、前記基地局装置から受信する、ことを特徴とする請求項1
0に記載の端末装置。
【請求項12】
前記送信手段は、前記ランダムアクセスプリアンブルの送信の指示に応じて、所定周期で前記ランダムアクセスプリアンブルを繰り返し再送し、
前記受信手段は、前記ランダムアクセスプリアンブルの送信停止指示を前記基地局装置から受信し、
前記送信手段は、当該送信停止指示が受信されたことに応じて、前記ランダムアクセスプリアンブルの送信を停止する、
ことを特徴とする請求項
1に記載の端末装置。
【請求項13】
端末装置によって実行される制御方法であって、
接続中の基地局装置から、前記端末装置が当該基地局装置からのハンドオーバ先の候補である他の基地局装置についての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を受信し、前記基地局装置から、前記他の基地局装置へのハンドオーバを実行させることなく、前記他の基地局装置へランダムアクセスプリアンブルを送信するように前記端末装置に指示する物理下りリンク制御チャネル(PDCCH) orderを受信する受信工程と、
前記指示に従って、前記他の基地局装置へ前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する送信工程と、
前記基地局装置から、前記他の基地局装置へのハンドオーバを指示するコマンドを受信した場合に、当該他の基地局装置へのハンドオーバを実行する実行工程と、
を含み、
前記受信工程において、前記端末装置が前記ランダムアクセスプリアンブルを生成する際に使用する当該端末装置に固有の系列と、前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する際に使用可能な無線リソースを特定するための情報とを前記基地局装置から受信し、
前記送信工程において、前記端末装置に固有の前記系列を用いて前記ランダムアクセスプリアンブルを生成して前記情報によって特定される無線リソースにおいて送信し、前記ランダムアクセスプリアンブルの再送を要求する信号が前記基地局装置から受信された場合に、前記ランダムアクセスプリアンブルを再送し、当該ランダムアクセスプリアンブルの再送を要求する信号が前記基地局装置又は前記他の基地局装置から受信されない場合には、前記ランダムアクセスプリアンブルを再送しない、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルラ通信システムにおけるハンドオーバ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムでは、端末装置の移動に伴い、その端末装置の接続先のセル(基地局装置)を切り替えるハンドオーバが行われる。従来、端末装置は、基地局装置からのハンドオーバの指示を受信した後に、接続の切り替え先のセルにおける同期確立や設定処理を実行して接続を確立する処理が行われる。この接続先の切り替えのための処理には一定の時間がかかり、この処理が行われている期間には端末装置がユーザデータの通信を行うことができない。これに対して、非特許文献1に記載の手法では、ハンドオーバ元の基地局装置が、端末装置に対して、ハンドオーバが実際に行われる前に、ハンドオーバ先の他の基地局装置との接続のための無線リソース制御(RRC)レイヤにおいて通信パラメータを提供しておく。そして、ハンドオーバ元の基地局装置は、ハンドオーバが行われるべきタイミングにおいて、そのセルの切り替えを指示するレイヤ1又はレイヤ2のコマンドを端末装置に送信する。端末装置は、そのコマンドを受信したことに応じて、ハンドオーバ先の基地局装置との間でランダムアクセス手順を実行することにより、その後のRRCレイヤでのせて地処理を行うことなく、ハンドオーバを完了することができる。このような技術により、ハンドオーバに関する通信効率の劣化を抑制することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP(登録商標)寄書、R2-2209255
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ハンドオーバに関する通信効率をさらに改善する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による基地局装置は、接続中の端末装置に対して、当該端末装置が前記基地局装置からのハンドオーバ先の候補である他の基地局装置についての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を行う設定手段と、前記端末装置に対して、前記他の基地局装置へのハンドオーバを実行させることなく、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH) orderにより、前記他の基地局装置へランダムアクセスプリアンブルを送信するように指示する指示手段と、前記端末装置が前記他の基地局装置へハンドオーバすべき状態となったことに応じて、前記他の基地局装置へのハンドオーバを指示するコマンドを前記端末装置へ送信する送信手段と、を有する。
【0006】
本発明の一態様による端末装置は、接続中の基地局装置から、前記端末装置が当該基地局装置からのハンドオーバ先の候補である他の基地局装置についての無線リソース制御(RRC)レイヤの設定を受信し、前記基地局装置から、前記他の基地局装置へのハンドオーバを実行させることなく、前記他の基地局装置へランダムアクセスプリアンブルを送信するように前記端末装置に指示する物理下りリンク制御チャネル(PDCCH) orderを受信する受信手段と、前記指示に従って、前記他の基地局装置へ前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する送信手段と、前記基地局装置から、前記他の基地局装置へのハンドオーバを指示するコマンドを受信した場合に、当該他の基地局装置へのハンドオーバを実行する実行手段と、を有し、前記受信手段は、前記端末装置が前記ランダムアクセスプリアンブルを生成する際に使用する当該端末装置に固有の系列と、前記ランダムアクセスプリアンブルを送信する際に使用可能な無線リソースを特定するための情報とを前記基地局装置から受信し、前記送信手段は、前記端末装置に固有の前記系列を用いて前記ランダムアクセスプリアンブルを生成して前記情報によって特定される無線リソースにおいて送信し、前記ランダムアクセスプリアンブルの再送を要求する信号が前記基地局装置から受信された場合に、前記ランダムアクセスプリアンブルを再送し、当該ランダムアクセスプリアンブルの再送を要求する信号が前記基地局装置又は前記他の基地局装置から受信されない場合には、前記ランダムアクセスプリアンブルを再送しない。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハンドオーバに関する通信効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
(システム構成)
図1に、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す。この無線通信システムは、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP(登録商標))の第5世代(5G)やその後継規格などの、セルラ通信規格に従って構成されたセルラ通信システムである。無線通信システムは、基地局装置101及び基地局装置102と、端末装置111とを含んで構成される。なお、
図1は、説明を簡単にするために2つの基地局装置と1つの端末装置のみを示しているが、多数の基地局装置及び端末装置が当然に存在しうる。
【0011】
図1において、端末装置111は、基地局装置101が形成しているセルの範囲内から、基地局装置102が形成しているセルの範囲内へと移動しようとしている。このとき、端末装置111は、接続先の基地局装置を、基地局装置101から基地局装置102へと切り替えるためのハンドオーバを行うこととなる。
【0012】
本実施形態では、端末装置111がハンドオーバによってユーザデータの通信を行うことができなくなる期間を短縮するためのハンドオーバ手順が実行されるものとする。すなわち、ハンドオーバ元の基地局装置101は、端末装置111を実際にハンドオーバさせる前に、無線リソース制御(RRC)レイヤにおける設定(RRCメッセージを用いた設定)を実行する。すなわち、従来のハンドオーバにおいて、端末装置111がハンドオーバ元の基地局装置101からハンドオーバの指示を受信し、ハンドオーバ処理を開始する際に行われる、RRCレイヤにおける設定が、実際にハンドオーバ処理が行われるべきタイミングに先立って端末装置111へ通知される。ここでの設定では、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102との接続及び通信において使用される通信パラメータが端末装置111へ通知される。通信パラメータは、例えば、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102における、ビームの設定や、ランダムアクセス手順を実行する際のパラメータや使用すべき無線リソース(周波数および時間リソース)を含む。また、ハンドオーバ元の基地局装置101は、端末装置111に対して、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102から送信される同期信号(SS)/物理ブロードキャストチャネル(PBCH)ブロック(SSB)の測定指示を送信しうる。
【0013】
端末装置111は、接続中の基地局装置101からの測定指示に従って、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102から送出されたSSBの測定を行う。そして、端末装置111は、その測定結果を、接続中の基地局装置101へ通知する。ここで、基地局装置101は、その測定結果を、測定対象であったハンドオーバ先の候補の基地局装置102へ通知してもよい。これにより、基地局装置102は、端末装置111が実際にハンドオーバしてきた場合に、端末装置111との間の通信で使用すべきビームの大まかな方向を特定することができる。ここで、基地局装置102は、さらに下りリンクにおいて使用すべき詳細なビームを特定するために、チャネル状態情報(CSI)-参照信号(RS)の送信設定を端末装置111へ通知してもよい。なお、この通知は、基地局装置102から基地局装置101へCSI-RSの送信設定が通知され、基地局装置101がその送信設定を接続中の端末装置111へ転送することによって行われる。端末装置111は、その送信設定を受信すると、基地局装置102から送信されるCSI-RSを、その情報に従って測定し、測定結果を接続中の基地局装置101へ通知する。そして、基地局装置101は、その測定結果を基地局装置102へ転送する。このようにして、基地局装置102は、端末装置111におけるCSI-RSの測定結果を取得することができる。この結果、基地局装置102は、端末装置111がハンドオーバしてきた後に下りリンクの通信使用すべき詳細なビームを、実際にそのハンドオーバが行われる前に決定することができる。これによれば、ハンドオーバが行われた後にビームの方向を詳細に決定する処理を省略することが可能となり、端末装置111のユーザデータの通信の効率が低下する期間を短縮することができる。一例として、上述のCSI-RSの送信設定は、端末装置111に通信パラメータとしてハンドオーバ前に事前設定される基地局装置102に関するCSI-RSの無線リソース設定(CSI-RS-Resource)および報告設定(csi-ReportConfig)から構成されるCSI-RS測定設定を用いて、端末装置111へ指示されうる。CSI-RS-ResourceにはCSI-RSが送信される無線リソースブロックの時間位置、周波数位置が含まれる。例えば、特定のCSI-RSの無線リソースを測定することを、媒体アクセス制御・制御エレメント(MAC CE)や下りリンク制御情報(DCI)において、CSI-RS-Resource idを用いてCSI-RS-Resourceを特定することによって、端末装置111に指示しうる。また、csi-ReportConfigにおいて、非周期的(aperiodic)又は周期的(periodic)なCSI reportの報告タイミングが設定される。例えば、CSI-RSの測定結果を特定のタイミングで報告することを、MAC CEやDCIにおいて、csi-ReportConfig idを用いてcsi-ReportConfigを特定することによって、端末装置111に指示しうる。また、基地局装置101は、端末装置111へ上述の測定設定を行う際に、どの基地局装置のCSI-RSの送信設定であるのかを端末装置111が特定するための情報として、例えば、セル識別子などを、MAC CEやDCIに含めて端末装置111へ送信しうる。
【0014】
本実施形態では、さらなるハンドオーバにおける通信効率の劣化を抑制するために、端末装置111が、基地局装置102へのハンドオーバを実行することが決定される前に、ランダムアクセス(RA)手順を実行するようにする。すなわち、端末装置111が、実際にハンドオーバが行われる前に、上りリンクの同期確立のための処理を行うようにしうる。端末装置111が接続中の基地局装置101は、端末装置111に対して、ランダムアクセスプリアンブル(RAプリアンブル)を基地局装置102へ送信させるための指示を送信する。そして、端末装置111は、この指示に従って、基地局装置102におけるRA手順のために用意された無線リソースにおいてRAプリアンブルを送信する。なお、この無線リソースや、RAプリアンブルの生成に使用される系列の情報は、例えば、上述のRRCレイヤの設定処理の際に基地局装置101から端末装置111に通知されうる。また、基地局装置101からのRAプリアンブルの送信指示の際に端末装置111に、これらの情報が通知されてもよい。この指示は、例えば、従来の基地局装置101からRAプリアンブルを送信させる手順である、PDCCH orderを流用して行われうる。なお、PDCCHは、物理下りリンク制御チャネルである。なお、従来のPDCCH orderは、端末装置111が接続中の基地局装置101との間の上りリンク同期が外れた際に、端末装置111から基地局装置101へRAプリアンブルを送信させるために使用される。これに対して、本実施形態では、接続していない基地局装置102へRAプリアンブルを送信させるために使用される点で異なる。この手順により、端末装置111から送信されたRAプリアンブルが基地局装置102において受信される。そして、基地局装置102は、端末装置111が基地局装置102へ上りリンクの信号を送信する際に使用すべきタイミングアドバンスの値(TA値)を決定することができる。そして、基地局装置102は、例えば、端末装置111が接続中の基地局装置101へTA値を通知して、基地局装置101がそのTA値を端末装置111へ転送することにより、TA値を端末装置111へ通知する。これにより、端末装置111は、基地局装置102へのハンドオーバが基地局装置101から指示された時点において基地局装置102との上りリンクの同期を確立することができているため、RA手順を改めて実行することなく、基地局装置102へ上りリンクのユーザデータを送信することが可能となる。本実施形態で実行するPDCCH orderによるRA手順の詳細については、後述する。
【0015】
その後、基地局装置101は、例えば、端末装置111における基地局装置101からの無線信号の受信品質が、基地局装置102からの無線信号の受信品質より所定レベルだけ劣化した場合などの所定の契機において、ハンドオーバを実行するように端末装置111へ通知しうる。この通知は、Cell switch commandと呼ばれうるコマンドを用いて行われうる。このコマンドは、媒体アクセス制御・制御エレメント(MAC CE)や下りリンク制御情報(DCI)を用いて送信されうる。なお、このコマンドは、ハンドオーバ先の基地局装置102が形成するセルの識別情報を含む。また、基地局装置102との通信に使用されるRRCレイヤにおける設定が複数設定される場合には、RRCレイヤにおける設定にそれぞれ一意に関連付けられた識別子、たとえば、RRC-TransactionIdentifierがこのコマンドに含められてもよい。また、このときに、上述のようにして、事前にRA手順が実行されることにより基地局装置102において決定されて基地局装置101へ通知されたTA値が、基地局装置101から端末装置111へ通知されてもよい。また、上述のようにして事前にSSBやCSI-RSの測定が行われたことによって基地局装置102において決定されて基地局装置101へ通知されたビームに関する情報が、基地局装置101から端末装置111へ通知されてもよい。また、基地局装置102は、端末装置111に使用させるべき上りリンクの無線リソースを予約しておき、その予約した無線リソースの情報を基地局装置101へ通知してもよい。そして、基地局装置101は、上述のコマンドにおいて、その上りリンクの無線リソースの情報を端末装置111へ通知してもよい。これによれば、端末装置111は、上述のコマンドを受信した直後に、ハンドオーバ後の基地局装置102との間で制御用の通信を行うことなく、ユーザデータの送信を行うことが可能となる。なお、上りリンクのユーザデータ用の無線リソースは、ハンドオーバ後の基地局装置102から端末装置111へ通知されてもよい。この場合も、端末装置111は、上述のようにコマンドの受信に先立ってRA手順が行われることにより、コマンド受信後のRA手順が省略されるため、直ちに指定された無線リソースにおいてユーザデータを送信することができる。なお、ハンドオーバ前の基地局装置101は、例えば、接続中の端末装置111からバッファステータスレポート(BSR)を取得し、その内容を、ハンドオーバ先の基地局装置102へ通知しておくことができる。これによれば、基地局装置102は、端末装置111からBSRを受信することなく、適切な量の無線リソースを端末装置111に割り当てることができる。また、端末装置111は、基地局装置101から上述のコマンドを受信したことに応じて、接続先を基地局装置102に切り替えて、スケジューリング要求(SR)を基地局装置102へ送信するようにしてもよい。
【0016】
なお、端末装置111は、上述のMAC CEによるコマンドを受信した場合に、基地局装置101へ確認応答(Ack)などを送信するようにしてもよい。また、端末装置111は、上述のコマンドを受信した場合に、接続先を基地局装置102に切り替えて、基地局装置102へAckなどを送信するようにしてもよい。この場合、端末装置111は、上述のように割り当てられる上りリンクの無線リソースにおいて、Ackを基地局装置102へ送信しうる。また、基地局装置102は、その確認応答を基地局装置101へ転送しうる。これにより、基地局装置101は、端末装置111が接続先を基地局装置102に切り替えたと判定することができ、例えば端末装置111のコンテキスト情報を破棄することができる。なお、基地局装置101は、端末装置111からのAckを受信しなかった場合、上述のコマンドを再送し、ハンドオーバが確実に行われるようにしてもよい。また、端末装置111は、上述のDCIによるコマンドを受信した場合に、ハンドオーバ先の基地局装置102に対して、SRやBSRなどの所定の信号を送信することにより、そのコマンドが受信されたことを黙示的に通知してもよい。なお、このSRやBSRを送信するための基地局装置102における上りリンクの無線リソースは、基地局装置101を介してコマンドのDCIにおいて端末装置111に通知されうる。なお、例えば、BSRなどの所定の信号は、上述のコマンドに基づくハンドオーバが行われたことを示す専用のMAC CEを用いて送信されてもよいし、従来のBSRと同様に送信されてもよい。また、SRやBSRなどとは別個に、上述のコマンドに基づくハンドオーバが行われたことを示す専用のMAC CEが基地局装置102に通知されてもよい。
【0017】
なお、タイマを用いて、端末装置111のハンドオーバが成功したか否かを判定可能としてもよい。端末装置111は、例えば、上述のコマンドを受信した際に、第1のタイマによる所定期間の計時を開始する。なお、端末装置111は、第1のタイマによる計時の開始後、基地局装置101からのPDCCHを受信しながら、並行して、基地局装置102からのPDCCHを受信するようにしうる。すなわち、基地局装置101から再送された上述のコマンドと、基地局装置102からハンドオーバ成功の際に送信される所定の信号の、両方を端末装置111が受信可能となるようにする。端末装置111は、例えば、基地局装置101の信号の受信と基地局装置102の信号の受信とを時分割で切り替えながら、両方の基地局装置からのPDCCHを継続的に観測しうる。また、端末装置111は、例えば、コマンドの受信後に、上述のAckなどの応答信号を基地局装置102へ送信し、第2のタイマを開始しうる。なお、第2のタイマは、第1のタイマで設定される時間長より短い時間を計時する。また、応答信号は、例えば、Cell switch command responseなどの、Ackと異なる信号であってもよい。一例において、端末装置111は、第2のタイマが満了するまでの間に、基地局装置102から、応答信号の再送指示や、応答信号を受信することができなかったことを示す否定応答(Nack)を受信しなかった場合、ハンドオーバに成功したと判定しうる。端末装置111は、再送指示やNackを受信した場合に、応答信号を再送し、第2のタイマをリセットして再度計時を開始する。なお、端末装置111は、第1のタイマの満了後に再送指示やNackを受信した場合には、ハンドオーバに失敗したと判定しうる。
【0018】
また、別の例では、端末装置111は、第2のタイマを使用せずに、第1のタイマが起動中に基地局装置102から所定の信号を受信した場合に、ハンドオーバに成功したと判定しうる。この場合、端末装置111は、この所定の信号を受信したことに応じて、第1のタイマを停止しうる。ここで、基地局装置102からの所定の信号は、例えば、基地局装置101から送信されたPDCCHの受信の終了を指示する信号でありうる。また、基地局装置102からの所定の信号は、上述の応答信号に対する確認応答(Ack)であってもよい。端末装置111は、この所定の信号を受信したことに応じて、基地局装置101から送信されるPDCCHの受信を終了し、一方で、基地局装置102からのPDCCHの受信を継続する。一方、端末装置111は、第1のタイマが満了する前に、応答信号に関する再送要求やNackを受信した場合、その応答信号を基地局装置102へ再送しうる。また、端末装置111は、第1のタイマの有無によらず、応答信号を送信した際に第3のタイマを起動し、その第3のタイマが満了する前に上述の所定の信号を受信しなかった場合に、基地局装置102が応答信号の受信に成功していないと判定してもよい。この場合、端末装置111は、第1のタイマが満了していない場合には、応答信号を再送して第3のタイマをリセットし、第1のタイマが満了している場合には、ハンドオーバに失敗したと判定しうる。また、端末装置111は、上述の応答信号の再送回数に制限を設けてもよい。この場合、端末装置111は、応答信号の再送回数が所定回数に達したことに応じて、ハンドオーバに失敗したと判定してもよい。
【0019】
なお、端末装置111は、ハンドオーバに失敗したと判定した場合、基地局装置102のPDCCHの受信を終了し、基地局装置101のPDCCHの受信を継続しうる。また、端末装置111は、この場合に、ハンドオーバが失敗したことを基地局装置101へ通知しうる。また、基地局装置102は、端末装置111からの応答信号を受信した場合には、ハンドオーバに成功したと判定して、基地局装置101に対して、ハンドオーバの成功を通知しうる。基地局装置101は、この通知に基づいて、端末装置111のコンテキスト情報を削除しうる。
【0020】
また、端末装置111は、Cell switch commandを受信したことに応じて、基地局装置101からのPDCCHの受信を終了してもよい。この場合、端末装置111は、基地局装置102へのハンドオーバに失敗したと判定した場合には、再接続処理を実行するようにしてもよい。
【0021】
上述のタイマで計測すべき時間長の情報や応答信号の再送回数の上限値は、例えば、上述のRRCレイヤの設定処理の際に端末装置111に通知されうる。なお、ハンドオーバ先の候補のセルが複数存在する場合、その複数のセルのそれぞれに対して個別にタイマ値や再送回数の上限値の情報などが端末装置111に通知されてもよい。また、複数のセルの少なくとも一部をグループ化して、グループごとに共通の設定情報が端末装置111に通知されてもよい。さらに、全てのセルに対して共通の設定情報が端末装置111に通知されてもよい。また、これらの設定情報は、例えば、Cell switch commandによって、端末装置111に通知されてもよい。なお、上述の応答信号を送信するために、上りリンクの無線リソースの割り当てが行われるが、その割り当てを示す上りリンクグラントにおいて、再送回数の上限値の情報が端末装置111に通知されてもよい。
【0022】
以上のようにして、端末装置111が、基地局装置101から基地局装置102へハンドオーバする際の、ユーザデータの通信を行うことができない期間を短縮することができる。これにより、例えば、低遅延や高信頼性が要求される通信サービスの提供が可能となる。また、ユーザデータの通信を行うことができない期間の短縮により、無線通信の効率の低下を抑制することが可能となる。
【0023】
(PDCCH orderに基づくRA手順)
<処理例1>
本実施形態で実行するPDCCH orderによるRA手順についてより詳細に説明する。一例において、RAプリアンブルを生成する際の固有の系列を端末装置111に割り当てる場合の例について説明する。まず、基地局装置101は、基地局装置102に対して、端末装置111にRA手順を開始させることを通知する。これにより、端末装置111が接続中の基地局装置101と、ハンドオーバ先の候補の基地局装置102が、端末装置111によるRA手順が実行されることを共通して認識することが可能となる。そして、基地局装置101は、端末装置111に対して、RA手順を実行すべきことを、上述のようにPDCCHを用いて指示する。このときに、基地局装置101は、例えば、基地局装置102がRAプリアンブルを受信するために基地局装置102によって設定されている、例えば、SS/PBCH index、PRACH Mask indexのような無線リソース(周波数および時間リソース)を特定するための情報と、使用すべきRAプリアンブルの系列を示す情報(Random Access Preamble Index)とを、端末装置111に通知しうる。なお、基地局装置101は、ハンドオーバ先の候補のセルが複数存在する場合、それらの複数のセルについての情報をまとめて、1つのPDCCHによって端末装置111に通知しうる。また、基地局装置101は、複数のセルのうちの少なくとも一部についての情報を、個別のPDCCHによって端末装置111に通知してもよい。なお、上述のように、ここでのRAプリアンブルの系列は、端末装置111に対して個別に割り当てられる。このため、ハンドオーバ先の候補のセルごとに1つの系列を示す情報が端末装置111へ通知される。これによれば、ハンドオーバ先の候補の基地局装置は、対応する系列のRAプリアンブルを受信した場合に、そのRAプリアンブルの送信元が端末装置111であると一意に特定することができる。端末装置111は、基地局装置101から受信した情報に基づいて、ハンドオーバ先の候補のセルについて、そのセルに対応する無線リソースにおいて、指定された系列を用いてRAプリアンブルを送信する。例えば、基地局装置101は、基地局装置102におけるRAプリアンブルの送信が許容される無線リソースと、端末装置111が使用すべき系列とを、端末装置111に通知する。そして、端末装置111は、基地局装置101から通知された無線リソースにおいて、基地局装置101から通知された系列を用いて、基地局装置102へのRAプリアンブルを送信する。ハンドオーバ先の候補の基地局装置102は、RA手順用の無線リソースにおいて、端末装置111のために指定された系列を用いてRAプリアンブルの検出処理を実行し、端末装置111からのRAプリアンブルを受信することができたか否かを判定する。
【0024】
なお、この時点で、端末装置111に対してTA値の通知が行われなくてもよく、また、端末装置111に対して固有のRAプリアンブル用の系列が指定されていることにより競合解決(contention resolution)を行う必要がない。このため、基地局装置102は、端末装置111に対してRAレスポンスを返信しなくてもよい。ただし、基地局装置102は、RAプリアンブルの受信タイミングに基づいて、端末装置111が使用すべきTA値を決定することができる。そして、そのTA値は、例えば、基地局装置102から基地局装置101へ通知される。基地局装置101は、その値の情報を、例えば後述のコマンドと共に端末装置111へ通知しうる。なお、RAレスポンスが送信されない場合、端末装置111は、RAプリアンブルが正常に受信されたかを認識することができない。このため、本処理例では、基地局装置102は、端末装置111からのRAプリアンブルを所定期間内に受信することができなかった場合に、基地局装置101を介して端末装置111にRAプリアンブルを再送させうる。例えば、基地局装置102は、基地局装置101に対して、端末装置111からのRAプリアンブルを受信することができなかったことを示す所定の通知を行う。基地局装置101は、この所定の通知を受信した場合、再度PDCCH orderを端末装置111へ送信し、RAプリアンブルを再送させる。端末装置111は、PDCCH orderを再度受信した場合に、RAプリアンブルを再送する。一方、端末装置111は、PDCCH orderを再度受信しない限りは、RAプリアンブルを再送しないようにしうる。すなわち、本処理例では、端末装置111は、特段の指示がない限りはRAプリアンブルの再送を行わないようにする。
【0025】
なお、上述の例では、基地局装置102がRAレスポンスを送信しない場合の例について説明したが、基地局装置102は、RAレスポンスを送信するようにしてもよい。この場合、端末装置111は、RAレスポンスによってTA値を取得することができる。また、端末装置111は、RAレスポンスを受信しなかったことに応じて、自発的にRAプリアンブルを再送しうる。なお、端末装置111は、RAレスポンスを受信した場合に、RA手順のその後の処理(RA手順におけるメッセージ3以降の処理)を行わないようにする。すなわち、端末装置111は、RAレスポンスによりTA値を取得し、それ以上の処理を行わずにRA手順を終了しうる。また、基地局装置102は、RAレスポンスに、メッセージ3のための無線リソースの割り当てを含めない。すなわち、通常のRA手順では、RAレスポンスにおいてメッセージ3の送信のための上りリンクの無線リソースを指定するが、メッセージ3が送信される必要がないため、そのための無線リソースが指定されなくてもよい。
【0026】
なお、上述の処理例では、端末装置111は、基地局装置101又は基地局装置102からのRAプリアンブルの再送指示がない場合にはRAプリアンブルの再送を行わないと説明したが、これに限られない。例えば、端末装置111は、所定周期でRAプリアンブルを再送するものとし、基地局装置101又は基地局装置102からのRAプリアンブルの送信停止指示を受信しない限りは、所定周期でRAプリアンブルを繰り返し送信するようにしてもよい。例えば、基地局装置101又は基地局装置102は、基地局装置102においてRAプリアンブルが正常に検出された場合や所定の期間が経過したことなど、端末装置111がRAプリアンブルの送信を停止すべきと判定した場合に、RAプリアンブルの送信停止指示を端末装置111へ送信しうる。
【0027】
<処理例2>
上述の処理例1では、端末装置111に対して固有のRAプリアンブルの系列を指定するものとしたが、これに限られない。別の処理例では、端末装置111は、ハンドオーバ先の候補のセルにおいてコンテンションベースのRA手順で使用される一群の系列の中から選択した1つの系列を用いてRAプリアンブルを送信する。基地局装置101は、上述のようにして端末装置111からハンドオーバ先の候補のセルのSSBの測定結果を取得し、その測定結果に基づいて、端末装置111にRA手順を実行させるセルを選択する。例えば、基地局装置101は、無線品質が所定レベル以上のセルを、RA手順を実行させるセルとして選択しうる。また、基地局装置101は、無線品質が良好な方から1つ以上の所定数のセルを、RA手順を実行させるセルとして選択してもよい。そして、基地局装置101は、選択したセルに対応するSSB indexを端末装置111に通知する。端末装置111は、そのSSB indexに基づいて、RAプリアンブルを送信するための無線リソース(周波数および時間リソース)を特定することができる。ここで、基地局装置102は、RA手順の通信及び競合解決後の通信のためのCell-Radio Network Temporary Identifier(C-RNTI)を指定し、基地局装置101を介して、そのC-RNTIを端末装置111へ通知しうる。また、C-RNTIに変えて、一時的な識別子(Temporary C-RNTI(TC-RNTI))が端末装置111へ通知されてもよい。
【0028】
その後、端末装置111は、RAプリアンブルを送信する。端末装置111は、例えば、通知されたSSB indexに対応する一群の系列の中から1つの系列を選択してRAプリアンブルを生成し、そのSSB indexに対応する無線リソースにおいてそのRAプリアンブルを送信する。ここでは、端末装置111が、基地局装置102へのアクセスに使用可能な一群の系列の中から系列を1つ選択し、選択した系列を用いて生成したRAプリアンブルを、基地局装置102のRA手順用の無線リソースにおいて送信したものとする。ここでRAプリアンブルの生成のために使用可能な一群の系列は、他の端末装置も使用可能であり、基地局装置102は、RAプリアンブルを検出しただけでは端末装置111からのRAプリアンブルを受信したかを認識することができない。このため、基地局装置102は、その後の競合解決のために、RAプリアンブルを検出した場合、そのRAレスポンスを送信する。端末装置111は、RAプリアンブルの送信後、RAレスポンスの検出のための一定期間を計時するためのタイマ(ra-ResponseWindow)を起動する。端末装置111は、この一定期間の間にRAレスポンスを受信した場合、RAプリアンブルの再送を停止する。また、端末装置111は、この一定期間の間にRAレスポンスを受信しなかった場合には、RAプリアンブルを再送し、タイマをリセットして再起動する。RAプリアンブルの最大再送回数は、例えば、基地局装置101又は基地局装置102から送信された信号によって指定される。なお、上述のように、基地局装置101から、端末装置111の識別情報(C-RNTIや、TC-RNTI)が端末装置111へ通知されうるが、この通知に変えて、基地局装置102が、RAレスポンスにおいて、TC-RNTIを端末装置111へ通知してもよい。なお、UEは、RAレスポンスが送信される物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)の周波数領域および時間領域のリソース割り当てを、Random Access(RA)-RNTIを用いて特定することができる。すなわち、そのリソース割り当ては、基地局装置102が送信するDCI format 1_0 with CRC scrambled by RA-RNTIによって指定され、端末装置111は、その情報をRA-RNTIを用いて取得することができる。なお、RA-RNTIは、RAプリアンブルの送信に用いた無線リソースの配置(シンボルやスロット、フレームで特定される時間位置と周波数位置)に基づいて特定される。そして、端末装置111は、RA-RNTIを用いて取得したリソース割り当てに従って、自装置が送信したRAプリアンブルに対応するRAレスポンスを受信する。
【0029】
端末装置111は、RAレスポンスを受信すると、RAレスポンスで指定された上りリンクの無線リソースを用いて、RACH手順のメッセージ3を基地局装置102へ送信する。ここで、端末装置111は、RAレスポンスにおいて使用すべきTA値を受信し、そのTA値を用いてメッセージ3の送信タイミングを制御する。なお、この時点では、このTA値が端末装置111のためのTA値であるかは確定していない。すなわち、RAプリアンブルを同じサブフレーム及び周波数位置でRAプリアンブルを送信した他の端末装置も、同じRA-RNTIを特定してRAレスポンスを受信しうる。このため、端末装置111が取得したTA値が、端末装置111が送信したRAプリアンブルに基づいて決定された値であるかはこの時点では確定しない。この状況の解決(すなわち競合解決)のためにC-RNTIを用いる場合、端末装置111は、メッセージ3によって、上述のように通知された自装置の識別情報(C-RNTI)を、基地局装置102へ送信する。また、端末装置111は、基地局装置102における競合解決が成功したか否かを判定するための一定期間を測定するためのタイマ(ra-ContentionResolutionTimer)を起動する。端末装置111は、この一定期間が満了する前に自装置の識別情報(C-RNTI)宛てのDCIを受信した場合に、自装置が送信したRAプリアンブルに基づいてTA値が設定されたことを特定することができる。TC-RNTIを用いる場合、端末装置111は、メッセージ3によって、自装置の識別情報(例えば、5G-S-TMSIと乱数から構成されるInitialUE-Identity)を基地局装置102へ送信する。その後、端末装置111は、基地局装置102における競合解決が成功したか否かを判定するための一定期間を測定するためのタイマ(ra-ContentionResolutionTimer)を起動する。端末装置111は、この一定期間が満了する前に自装置の識別情報(TC-RNTI)宛てのDCIで送信が指示されるメッセージ4に、メッセージ3で基地局装置102へ送信した自装置の識別情報(例えば、InitialUE-Identity)が含まれている場合に、自装置が送信したRAプリアンブルに基づいてTA値が設定されたことを特定することができる。なお、ここでは、TA値が確定する(上りリンクの同期確立が行われる)のみであり、端末装置111と基地局装置102との間の接続は確立されない。一方で、端末装置111は、上述の一定期間内に自装置の識別情報(C-RNTI又はTC-RNTI)宛てのDCIを受信しなかった場合には、RAレスポンスにおいて取得したTA値が、自装置が送信したRAプリアンブルに基づくTA値ではなかったため、RAプリアンブルを再送する。
【0030】
なお、上述の基地局装置102から端末装置111へ送信される信号は、基地局装置101を介して端末装置111へ通知されてもよい。この場合、基地局装置102は、例えばメッセージ2(RAレスポンス)やメッセージ4の内容を、基地局間インタフェースを用いて基地局装置101へ送信し、基地局装置101が、それらのメッセージに対応する情報を端末装置111へ通知する。上述のように、基地局装置102から端末装置111へ直接無線信号が送信される場合、端末装置111は、基地局装置101のPDCCHの受信を継続しながら、基地局装置102からのメッセージ2やメッセージ4を受信する処理を行う必要がある。これに対して、基地局装置101を経由してメッセージ2やメッセージ4が端末装置111に通知される場合、端末装置111は、基地局装置102からの無線信号を受信する必要がなくなる。なお、メッセージ2とメッセージ4とのいずれか一方のみが、基地局装置101を経由して端末装置111へ通知されるようにしてもよい。
【0031】
なお、基地局装置101は、端末装置111がハンドオーバ先の候補のセルの信号を受信する必要がある場合、その候補のセルの基地局装置からの下りリンクの信号(例えばPDCCH)を受信すべきタイミングを端末装置111に通知してもよい。例えば、上述のメッセージ2やメッセージ4が、基地局装置102から端末装置111へ直接送信される場合に、端末装置111は、基地局装置102からのPDCCHなどの信号を受信する必要がある。この場合、基地局装置101は、基地局装置102においてPDCCHなどの信号が送信されるタイミングの情報を端末装置111へ通知しうる。なお、基地局装置101は、候補のセルが複数存在し、それらのセルのPDCCHのタイミングが重複しないように、受信タイミングの変更をその候補のセルの基地局装置へ通知しうる。なお、端末装置111は、候補のセルが複数存在し、それらのセルのPDCCHのタイミングが重複する場合に、受信タイミングの重複が発生しているセルの情報を基地局装置101へ通知してもよい。端末装置111は、RAプリアンブルの送信後、例えばra-ResponseWindowの起動を契機として、そのRAプリアンブルの送信先の候補のセルについての、PDCCHの受信を開始する。なお、このとき、端末装置111は、接続中の基地局装置101のPDCCHの受信も継続しており、複数の基地局装置からのPDCCHを並行して受信する状態となりうる。その後、端末装置111は、例えば、ra-ResponseWindowの満了を契機として、候補のセルのPDCCHの受信を終了しうる。また、端末装置111は、例えば、候補のセルの基地局装置(例えば基地局装置102)又は基地局装置101からの指示により、PDCCHの受信を終了してもよい。なお、候補のセルの基地局装置からの指示は、その基地局装置から端末装置111へ直接送信されてもよいし、基地局装置101経由で送信されてもよい。
【0032】
なお、上述の処理例では、端末装置111は、RAレスポンスを受信しないままタイマが満了したことに伴ってRAプリアンブルの送信を停止する例を示したが、これに限られない。端末装置111は、例えば、RAプリアンブルを所定周期で繰り返し送信し、基地局装置101又は基地局装置102からのRAプリアンブルの送信停止指示を受信した場合にそのRAプリアンブルの送信を停止するようにしてもよい。なお、この送信停止指示は、RAレスポンスと異なる信号でありうる。例えば、基地局装置101又は基地局装置102は、所定の期間が経過したことなど、端末装置111がRAプリアンブルの送信を停止すべきと判定した場合に、RAプリアンブルの送信停止指示を端末装置111へ送信しうる。これによれば、RAプリアンブルの送信停止をネットワーク側の制御によって指示することが可能となる。
【0033】
(取得されたTA値の扱い)
なお、上述の処理によって端末装置111と基地局装置102との少なくともいずれかにおいて、端末装置111が基地局装置102へ信号を送信する際に使用されるべきTA値が保持されるが、一定の時間が経過すると、そのTA値が現実の環境に適しなくなることが想定される。このため、本処理例では、TA値を適正な値で維持するため又はTA値の維持の終了を行うための手法など、取得されたTA値の扱いについて説明する。
【0034】
第1の例では、タイマを用いてTA値の有効期限や更新周期が管理される。例えば、端末装置111は、基地局装置101又はハンドオーバ先の候補の基地局装置102のいずれかから、候補セルのTA値を取得したことに応じて所定のタイマを開始する。そして、端末装置111は、その所定のタイマが満了したことに応じて、RAプリアンブルを再度送信して、更新後のTA値を取得するように、上述の手順を再度実行するようにしうる。また、端末装置111が接続中の基地局装置101又はハンドオーバ先の候補の基地局装置102のいずれかが、基地局装置102においてTA値が決定されたことに応じて所定のタイマを開始する。そして、その所定のタイマが満了したことに応じて、そのタイマを管理している基地局装置が、端末装置111に対して、上述のRA手順を実行すべきことを指示しうる。例えば、基地局装置101がタイマを管理する場合、基地局装置101は、上述の処理を再度実行させるために、PDCCH orderを再度送信しうる。また、基地局装置102がタイマを管理する場合、基地局装置102は、基地局装置101に対して、PDCCH orderを端末装置111へ送信することを要求するメッセージを送信しうる。また、基地局装置102は、端末装置111が基地局装置102からの信号の受信を継続している場合には、端末装置111に直接、RA手順を実行するように指示してもよい。
【0035】
なお、端末装置111は、RA手順を再度実行するのではなく、サウンディング参照信号(SRS)などの所定の信号を送信するようにしてもよい。すなわち、所定の上りリンクの無線信号が基地局装置102において受信されることにより、基地局装置102は、適正なTA値を更新することができる。このため、端末装置111、例えば、自装置内で管理している所定のタイマが満了した場合などの所定のタイミングにおいて、所定の上りリンクの信号を、基地局装置102に関して設定されたTA値を用いて送信しうる。なお、端末装置111は、例えばSRを送信して、基地局装置102に対して所定の信号を送信するための無線リソースの割り当てを受けてもよい。また、端末装置111は、基地局装置101又は基地局装置102からのTA値の更新のための上りリンクの信号の送信指示を受信したことに応じて、その所定の上りリンクの信号を送信してもよい。例えば、基地局装置102からの送信開始指示に応じて、端末装置111は、非周期的な(aperiodic)又は周期的な(periodic)のSRSなどの所定の信号を送信しうる。なお、SRSなどの所定の信号は、更新される前のTA値に基づくタイミングで送信されうる。また、端末装置111は、所定の信号の周期的な送信中に、基地局装置102からの所定の信号の送信停止指示を受信したことに応じて、その所定の信号の周期的な送信を停止しうる。また、別の例において、端末装置111は、基地局装置102からの明示的な指示なく、基地局装置102からのRAレスポンスを受信したことなどの契機に応じて、SRSなどの所定の信号を定期的に送信するようにしてもよい。なお、端末装置111は、基地局装置102からの指示を受け付ける必要がある場合、上述のRA手順の実行及びTA値の取得後に、基地局装置102からのPDCCHなどの信号の受信を継続しうる。また、所定の信号の送信または停止指示や、所定の信号の送信契機は、基地局装置101によって与えられてもよい。
【0036】
なお、端末装置111は、例えば、ハンドオーバ先の候補のセルの無線品質の測定を継続し、その無線品質が所定レベル以下となるまで劣化した場合に、そのセルに関するTA値の維持を終了しうる。なお、このTA値の維持の終了は、端末装置111が独自に決定してもよいし、例えば、無線品質の報告を受信した基地局装置101が決定し、端末装置111に指示してもよい。また、基地局装置102が、端末装置111からの上述のような所定の信号の無線品質を測定し、その結果に応じてTA値の維持を終了すると決定してもよい。この場合、基地局装置102は、端末装置111がTA値を維持している場合には、そのTA値を破棄するように端末装置111に指示してもよい。端末装置111又は基地局装置101もしくは基地局装置102は、TA値の維持が終了される場合で、上述のTA値を維持するためのタイマを起動中の場合には、そのタイマを停止する。また、端末装置111又は基地局装置101もしくは基地局装置102は、上述のTA値を維持するためのタイマが満了した後に、同様のタイマを再起動しないようにしうる。また、端末装置111は、TA値の維持のために基地局装置102からのPDCCHなどの信号の受信を継続している場合に、その信号の受信を終了しうる。なお、基地局装置102からの信号の受信の終了は、基地局装置101又は基地局装置102から端末装置111へ指示されてもよい。
【0037】
なお、端末装置111は、上述のように、Cell switch commandを基地局装置101から受信したことに応じて、ハンドオーバを実行して、基地局装置102に接続しうる。この場合、端末装置111と基地局装置101との間の接続は切断されるが、この切断の後に、基地局装置101は、端末装置111のハンドオーバ先の候補の基地局装置とされてもよい。端末装置111は、例えば、基地局装置102との接続中に、基地局装置101のTA値を維持するようにしてもよい。また、端末装置111は、基地局装置102の接続中に、基地局装置101のTA値を維持するために、基地局装置101からの所定の信号(PDCCHなど)の受信を継続してもよい。これによれば、端末装置が複数の基地局装置間で繰り返しハンドオーバする場合などに、不必要にRA手順が実行されることなどを防ぎ、さらに効率的に通信を行うことが可能となる。
【0038】
(装置構成)
続いて、装置構成について説明する。
図2は、本実施形態の基地局装置および端末装置のハードウェア構成例を示している。基地局装置および端末装置は、一例において、プロセッサ201、ROM202、RAM203、記憶装置204、及び通信回路205を含んで構成される。プロセッサ201は、汎用のCPU(中央演算装置)や、ASIC(特定用途向け集積回路)等の、1つ以上の処理回路を含んで構成されるコンピュータであり、ROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、装置の全体の処理や、上述の各処理を実行する。ROM202は、基地局装置および端末装置が実行する処理に関するプログラムや各種パラメータ等の情報を記憶する読み出し専用メモリである。RAM203は、プロセッサ201がプログラムを実行する際のワークスペースとして機能し、また、一時的な情報を記憶するランダムアクセスメモリである。記憶装置204は、例えば着脱可能な外部記憶装置等によって構成される。通信回路205は、例えば、5Gやその後継規格の無線通信用の回路によって構成される。なお、
図2では、1つの通信回路205が図示されているが、基地局装置および端末装置は、複数の通信回路を有しうる。例えば、基地局装置および端末装置は、5G用、およびその後継規格用のそれぞれのための無線通信回路と、それらの回路に共通のアンテナを有しうる。なお、基地局装置および端末装置は、各規格に適したアンテナを別個に有してもよい。また、基地局装置は、さらに、他の基地局装置やコアネットワークのノードと通信する際に使用される有線通信回路を有しうる。また、端末装置は、さらに、無線ローカルエリアネットワーク(LAN)やBluetooth(登録商標)などのセルラ通信規格以外の無線通信規格に準拠した通信回路などを有してもよい。なお、基地局装置および端末装置は、使用可能な複数の周波数帯域のそれぞれについて別個の通信回路205を有してもよいし、それらの周波数帯域の少なくとも一部に対して共通の通信回路205を有してもよい。
【0039】
図3は、基地局装置の機能構成例を示す。基地局装置は、例えば、RRC設定部301、RACH指示部302、基地局間通信部303、ハンドオーバ指示部304、及びTA維持管理部305を有する。なお、
図3では、主として端末装置111が接続中の基地局装置101の機能を示している。ハンドオーバ先の候補の基地局装置102は、RA手順の一部の信号の送信を行わない点や一部の信号を基地局装置101へ送信することがある点を除いて、従来の基地局装置と同様であるため、ここでは図示を省略している。また、
図3は、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、基地局装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、基地局装置は、5Gやその後継規格などに準拠した基地局装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図3の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図3の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0040】
RRC設定部301は、例えば、接続中の端末装置に対してRRCレイヤの設定を行う。例えば、RRC設定部301は、隣接セルを提供しているハンドオーバ先の候補の他の基地局装置に対してハンドオーバ要求を送信して、その他の基地局装置から通信設定情報を取得し、その通信設定情報をRRCレイヤのメッセージによって、端末装置へ通知する。RRCレイヤのメッセージは、RRC Reconfigurationメッセージである。そして、RRC設定部301は、端末装置からRRC Reconfiguration Completeメッセージを受信することによって、端末装置と他の基地局装置との間の接続処理設定を行う。RACH指示部302は、RRCレイヤの設定が完了した端末装置に対して、ハンドオーバ先の候補の他の基地局装置へのRAプリアンブルの送信を指示する。ここで、RAプリアンブルの送信指示には、端末装置に固有のRAプリアンブル生成用の系列や他の基地局装置に接続しようとする他の端末装置も使用可能な一群の系列が含まれ、また、RAプリアンブルの送信に使用される無線リソースの情報をも含みうる。RACH指示部302は、例えば、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH) orderによって、接続中の端末装置に、ハンドオーバ先の候補の基地局装置へのRAプリアンブルの送信を指示しうる。また、RACH指示部302は、必要に応じて、端末装置に対してRAプリアンブルの再送を指示し、又は、RAプリアンブルが繰り返し送信されるように構成されている場合には、そのRAプリアンブルの送信停止指示を端末装置に送信しうる。
【0041】
基地局間通信部303は、ハンドオーバ先の候補の基地局装置との間で通信を行う。基地局間通信部303は、例えば、接続中の端末装置にRAプリアンブルを送信させることを、そのRAプリアンブルの送信先の他の基地局装置へ通知しうる。また、基地局間通信部303は、例えば、ハンドオーバ先の候補の基地局装置におけるRA手順のための情報を受信するのに使用される。また、基地局間通信部303は、例えば、RA手順における、ハンドオーバ先の候補の基地局装置から端末装置へ送信されるべきメッセージ(メッセージ2やメッセージ4)を受信しうる。また、ハンドオーバ先の候補の基地局装置において算出されたTA値が、基地局間通信部303を介して取得されうる。なお、基地局間通信部303において受信された信号は、例えばRACH指示部などを介して端末装置へ転送されうる。
【0042】
ハンドオーバ指示部304は、例えば端末装置におけるハンドオーバ先の他の基地局装置からの無線信号の受信品質が、自装置と端末装置との間の無線品質より所定レベル以上高くなった場合など、端末装置がハンドオーバを実行すべき状態となったことに応じて、端末装置に対して、ハンドオーバを実行させるための指示を行う。ハンドオーバ指示部304は、例えば、ハンドオーバ先の基地局装置を特定可能なセル識別子等を含んだCell switch commandを、端末装置へ送信する。なお、端末装置によるRAプリアンブルの送信などにより上りリンクの通信に使用するTA値が決定されている場合、端末装置へ送信されるコマンドにそのTA値が含められうる。これによれば、端末装置は、ハンドオーバの直後からそのTA値を用いて上りリンクのユーザデータ信号を送信することが可能となる。また、本実施形態では、ハンドオーバ指示部304は、RA手順を端末装置に実行させてから上述のコマンドを送信する場合の例について説明したが、例えば、端末装置における上りリンクの通信遅延の要求などに応じて、場合によってはRA手順が実行される前に上述のコマンドが送信されてもよい。すなわち、RA手順がハンドオーバのコマンドの送受信より前に行われてもよいし、そのコマンドの送受信より後に行われてもよい。
【0043】
TA維持管理部305は、端末装置がハンドオーバ先の候補の基地局装置に対して上りリンクの信号を送信する場合に使用すべきTA値を管理する。TA維持管理部305は、例えば、TA値の有効期限や更新周期を設定し、その有効期限が満了した際や更新周期が到来した際にTA値が更新されるように、例えば端末装置に対してRAプリアンブルの再送を指示しうる。また、TA維持管理部305は、ハンドオーバ先の基地局装置におけるSRS設定を端末装置へ通知し、端末装置にそのSRS設定を用いてSRSを送信させることにより、TA値を更新させてもよい。なお、ハンドオーバ先の基地局装置がTA維持管理部305を有してもよく、その基地局装置が、RAプリアンブルの送信指示や、SRSの送信指示を端末装置へ送信してもよい。
【0044】
図4は、端末装置の機能構成例を示す。端末装置は、例えば、RRC設定部401、RACH指示受信部402、RACH処理部403、ハンドオーバ処理部404、及び、TA維持管理部405を有する。なお、
図4では、本実施形態に特に関係する機能のみを示しており、端末装置が有しうる他の各種機能については図示を省略している。例えば、端末装置は、5Gやその後続規格などに準拠した端末装置が一般的に有する他の機能を当然に有する。また、
図4の機能ブロックは概略的に示したものであり、それぞれの機能ブロックが一体化されて実現されてもよいし、さらに細分化されてもよい。また、
図4の各機能は、例えば、プロセッサ201がROM202や記憶装置204に記憶されているプログラムを実行することにより実現されてもよいし、例えば通信回路205の内部に存在するプロセッサが所定のソフトウェアを実行することによって実現されてもよい。なお、各機能部が実行する処理の詳細について、上述の詳細についてはここでは説明せず、その大まかな機能のみを概説する。
【0045】
RRC設定部401は、接続先の基地局装置からのRRCレイヤのメッセージを受信することにより、ハンドオーバ先の候補の基地局装置との接続設定処理を行う。なお、RRC設定部401は、接続中の基地局装置の設定と、ハンドオーバ先の候補の基地局装置の設定とを並行して保持することとなる。RACH指示受信部402は、RAプリアンブルの送信指示を、接続中の基地局装置から受信する。RAプリアンブルの送信指示は、PDCCH orderによって行われうる。なお、RACH指示受信部402は、例えば、RAプリアンブルの再送指示や、RAプリアンブルの送信停止指示などをも受信しうる。RACH処理部403は、RACH指示受信部402によって指示を受信したことに応じて、ハンドオーバ先の候補の基地局装置に対して、RAプリアンブルを送信する。ここで、RAプリアンブルの生成のための系列や、ハンドオーバ先の候補の基地局装置におけるRAプリアンブルの受信用の無線リソースの情報は、RACH指示受信部402を介して、接続中の基地局装置から受信しうる。なお、その系列や無線リソースの情報は、ハンドオーバ先の候補の基地局装置が送出しているシステム情報から取得されてもよい。ハンドオーバ処理部404は、接続中の基地局装置からのハンドオーバのコマンド(Cell switch command)を受信したことに応じて、接続先の基地局装置を変更する。なお、端末装置は、RRC設定部401による設定処理と、RACH処理部403によるRACH処理によって、ハンドオーバ先の候補の基地局装置との間で特段の設定処理を行う必要がない。このため、端末装置は、例えば、受信したコマンドにおいて、ハンドオーバ先の候補の基地局装置における上りリンクの無線リソースの割り当てが通知されている場合、その無線リソースを使用して直ちに上りリンクの信号を送信することができる。
【0046】
TA維持管理部405は、ハンドオーバ先の候補の基地局装置についてのTA値を取得した場合に、そのTA値の維持及び管理を行う。TA維持管理部405は、例えば、TA値の有効期限が満了したことに応じて、接続中の基地局装置やハンドオーバ先の候補の基地局装置による指示を受信することなく、RAプリアンブルの再送を行い、TA値を更新しうる。また、TA維持管理部405は、例えば接続中の基地局装置やハンドオーバ先の候補の基地局装置による指示により、ハンドオーバ先の候補の基地局装置のためのRAプリアンブルやSRSなどの所定の信号を送信して、TA値を更新してもよい。また、TA維持管理部405は、接続中の基地局装置から、TA値の維持を終了すべきことを示す情報を受信した場合に、そのTA値の維持を終了する。ここで、TA維持管理部405は、維持を終了したTA値を直ちに破棄してもよいし、有効期限内は維持していてもよい。また、TA維持管理部405は、ハンドオーバが実行された後に、ハンドオーバ元の基地局装置についてのTA値を維持及び管理してもよい。すなわち、TA維持管理部405は、接続中の基地局装置のTA値を、その基地局装置から他の基地局装置へのハンドオーバが行われた後に、ハンドオーバ先の候補の基地局装置のTA値として維持してもよい。
【0047】
(処理の流れ)
図5に、本実施形態の無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す。なお、
図5に示す例は一例であり、各手順において上で説明したような変形を行うことができる。例えば、
図5では、ハンドオーバ先の候補の基地局装置へ送信すべきRAプリアンブルの生成のための系列として、端末装置に固有の系列が、端末装置に通知される例を示しているが、複数の端末装置によって利用可能な一群の系列が通知される上述の手順に置き換えられてもよい。なお、
図5の例では、ハンドオーバ元の第1の基地局装置と端末装置との間で接続が確立されているものとする。
【0048】
第1の基地局装置は、まず、端末装置のハンドオーバ先の候補となる、隣接セルを形成している第2の基地局装置に対して、HANDOVER REQUESTメッセージを送信する(S501)。第2の基地局装置は、このメッセージを受信すると、端末装置が接続する場合に使用すべき通信パラメータの情報などを含んだHANDOVER REQUEST ACKメッセージを第1の基地局装置へ返送する(S502)。そして、第1の基地局装置は、第2の基地局装置から通知された通信パラメータなどを含んだRRC Reconfigurationメッセージを端末装置へ通知する(S503)。端末装置は、このメッセージを受信すると、RRC Reconfiguration Completeメッセージを第1の基地局装置に送信して、RRCレイヤのメッセージを用いた設定処理を完了する。この処理により、端末装置は、第2の基地局装置へのハンドオーバを第1の基地局装置から指示された後に、RRCレイヤの設定処理を行う必要がなくなる。なお、
図5では、ハンドオーバ先の候補の基地局装置が1つのみである例を示しているが、複数の候補の基地局装置について、同様の設定処理が実行されうる。
【0049】
その後、端末装置は、ハンドオーバ先の候補の第2の基地局装置から送信された無線信号(例えばSSB)を測定し(S505)、その測定結果を第1の基地局装置へ通知する(S506)。ここで、第1の基地局装置は、この測定結果を第2の基地局装置へ通知してもよい。この場合、第2の基地局装置は、端末装置との通信に使用すべき大まかなビームを特定することができる。第2の基地局装置は、さらなる精細なビームの形成のために、CSI-RSを送信し、端末装置に測定させてもよい。この場合、第2の基地局装置は、第1の基地局装置に対して、CSI-RSの設定情報を送信し、端末装置にその設定情報を転送させうる。端末装置は、その設定情報に基づいてCSI-RSを測定し、その測定結果を接続中の第1の基地局装置へ報告する。そして、第1の基地局装置は、その測定結果を第2の基地局装置へ転送する。これにより、第2の基地局装置は、端末装置が自装置へハンドオーバした直後から、精細なビームを用いて下りリンクの信号を送信することが可能となる。
【0050】
続いて、第1の基地局装置は、第2の基地局装置に対してRAプリアンブルを送信するように端末装置に指示する(S507)。ここで、この指示には、端末装置がRAプリアンブルの生成に使用すべき系列と、そのRAプリアンブルが送信されるべき無線リソースを指定する情報が含まれうる。なお、RAプリアンブルが送信されるべき無線リソースは、例えば第2の基地局装置から送信されて端末装置によって測定される第2の基地局装置におけるシステム情報に基づいて特定されてもよい。すなわち、この情報は、接続中の基地局装置から取得されなくてもよい。また、RAプリアンブルを生成する際に使用されるべき系列は事前に特定されていてもよい。一例において、S503において、この系列の情報が端末装置に通知されていてもよい。端末装置は、指示に従って、第2の基地局装置へRAプリアンブルを送信する(S508)。このとき、第1の基地局装置は、第2の基地局装置に対して、端末装置がRAプリアンブルを送信する予定であることを通知してもよい。このとき、第1の基地局装置は、第2の基地局装置に対して、端末装置がRAプリアンブルの生成に使用する系列の情報を通知しうる。これにより、第2の基地局装置は、端末装置が送信するRAプリアンブルを検出することが可能となる。なお、これは一例であり、例えばS501のHANDOVER REQUESTによって、黙示的に端末装置がRAプリアンブルを送信する予定であることが通知されてもよい。また、この場合に、S502のHANDOVER REQUEST ACKにおいて、端末装置がRAプリアンブルの生成に使用すべき系列が、第2の基地局装置によって指定されてもよい。なお、これらは一例であり、他のメッセージによって、第1の基地局装置と第2の基地局装置との間で、端末装置がRAプリアンブルの生成に使用すべき系列の情報などが共有されてもよい。第2の基地局装置は、端末装置から送信されたRAプリアンブルに基づいて、TA値を算出する(S509)。第2の基地局装置は、算出したTA値を、第1の基地局装置へ通知しうる(S510)。なお、このTA値は、第1の基地局装置と第2の基地局装置との両方で管理されてもよいし、一方で管理されてもよい。また、このTA値は、例えば第1の基地局装置が、端末装置のハンドオーバの実行を決定したことに応じて、第2の基地局装置から第1の基地局装置へ通知されてもよい。例えば、第1の基地局装置は、ハンドオーバの実行を第2の基地局装置へ通知し、その通知への応答として、TA値が、第2の基地局装置から第1の基地局装置へ通知されうる。
【0051】
この時点で、端末装置は、まだ第2の基地局装置へハンドオーバしていない。その状態において、端末装置は、第2の基地局装置からの無線信号の測定を継続的に実行し(S511)、測定結果を接続中の第1の基地局装置へ通知する(S512)。第1の基地局装置は、この測定結果に応じてハンドオーバを行うべきことを決定しうる(S513)。例えば、第2の基地局装置からの信号の無線品質が、第1の基地局装置からの信号の無線品質より所定レベル以上高くなった場合などの所定の条件を満たした場合に、第1の基地局装置は、端末装置を第2の基地局装置へハンドオーバさせることを決定しうる。第1の基地局装置は、この決定により、端末装置に対してハンドオーバを実行すべきことを指示するコマンドを送信する(S514)。このコマンドには、例えば、S510で取得したTA値や、ハンドオーバの直後の信号送信のための上りリンクのリソースの情報が含まれうる。なお、TA値は、S510において第1の基地局装置に通知された直後に、端末装置に転送されてもよく、その場合には、このコマンドにTA値が含まれる必要はない。また、第1の基地局装置は、事前に第2の基地局装置に問い合わせることにより、上りリンクのリソースの情報を特定しうる。また、第1の基地局装置は、問い合わせを行うことなく、第2の基地局装置において使用可能な、予約されている所定の無線リソースを使用するように端末装置へ指示してもよい。端末装置は、このコマンドを受信すると、接続先の基地局装置を第2の基地局装置に変更し、受信したコマンドで指定されたリソースにおいて、そのコマンドへの応答信号を、第2の基地局装置へ送信しうる(S515)。これにより、第2の基地局装置は、端末装置が自装置にハンドオーバしてきたことを確認することができ、その後、端末装置と第2の基地局装置との間でユーザデータの通信が行われうる(S516)。なお、端末装置は、S515の応答信号に加えて又はそれに代えて、ユーザデータを第2の基地局装置へ送信してもよい。
【0052】
このようにして、本実施形態によれば、ハンドオーバ元の基地局装置が、端末装置を実際に他の基地局装置へハンドオーバさせると決定してから、その端末装置がハンドオーバ後の基地局装置との間でユーザデータの通信を開始するまでの時間を大きく短縮することができる。よって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0053】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。