IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

特許7566083電気盤の壁掛け装置及び電気盤の吊上装置
<>
  • 特許-電気盤の壁掛け装置及び電気盤の吊上装置 図1
  • 特許-電気盤の壁掛け装置及び電気盤の吊上装置 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電気盤の壁掛け装置及び電気盤の吊上装置
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/20 20060101AFI20241004BHJP
   E04G 21/16 20060101ALN20241004BHJP
【FI】
B66C23/20
E04G21/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023101618
(22)【出願日】2023-06-21
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔
(72)【発明者】
【氏名】上野 尚志
(72)【発明者】
【氏名】藤本 康平
(72)【発明者】
【氏名】杉山 陽
(72)【発明者】
【氏名】松田 圭史
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 保夫
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-154800(JP,A)
【文献】特開2002-54125(JP,A)
【文献】特開2013-159444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/20
E04G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁掛け用の電気盤を壁面に据え付けるために用いられる壁掛け装置であって、
前記電気盤を据え付ける壁面に固定され、該壁面に配置された前記電気盤を固定させる支持部材と、
前記支持部材に装着され、前記電気盤を吊り上げ可能に構成された吊上装置と、を備える、
ことを特徴とする電気盤の壁掛け装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記壁面の左右方向に沿って間隔を開けて複数設けられており、
前記吊上装置は、各前記支持部材に装着される、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気盤の壁掛け装置。
【請求項3】
前記吊上装置は、
前記支持部材に装着される支柱部材と、
前記支柱部材に取り付けられ、前記電気盤を吊り上げ可能に構成された巻き上げ装置と、を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気盤の壁掛け装置。
【請求項4】
前記支柱部材は、
前記支持部材に装着される第1支柱部と、
前記第1支柱部に固定され、前記第1支柱部よりも前記壁面から離れた位置にオフセットさせて配置された第2支柱部と、を有し、
前記巻き上げ装置は、前記第2支柱部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気盤の壁掛け装置。
【請求項5】
前記支持部材は、壁面の上下方向に沿って間隔をあけて形成された第1貫通孔と第2貫通孔とを有しており、
前記支柱部材は、前記第1貫通孔に挿入されるピン部材と、前記ピン部材が前記第1貫通孔に挿入された状態で前記第2貫通孔に対応するナット部材と、を有しており、
前記吊上装置は、前記ピン部材が前記第1貫通孔に挿入され、前記ナット部材を前記第2貫通孔に対応させ、前記第2貫通孔に通したボルト部材の軸部をナット部材に締結することで、前記支持部材に装着される、
ことを特徴とする請求項3に記載の電気盤の壁掛け装置。
【請求項6】
前記支持部材は、
前記壁面に固定される主鋼材と、
前記主鋼材に接合され、前記第1貫通孔が形成された第1取合い部と、
前記主鋼材に接合され、前記第2貫通孔が形成された第2取合い部と、を有しており、
前記吊上装置は、
前記支柱部材に接合され、前記ピン部材が設けられた第1金具と、
前記支柱部材に接合され、前記ナット部材が固定された第2金具と、を有しており、
前記ピン部材が前記第1貫通孔に挿入されることで、前記第1金具が前記第1取合い部に取り付けられ、前記第2貫通孔に通したボルト部材の軸部がナット部材に締結されることで、前記第2金具が前記第2取合い部にボルト接合されて、前記支持部材に装着される、
ことを特徴とする請求項5に記載の電気盤の壁掛け装置。
【請求項7】
壁掛け用の電気盤を据え付ける壁面に固定され、該壁面に配置された電気盤を固定させる支持部材に装着される電気盤の吊上装置であって、
前記支持部材に装着される支柱部材と、
前記支柱部材に取り付けられ、前記電気盤を吊り上げ可能に構成された巻き上げ装置と、を有する、
ことを特徴とする電気盤の吊上装置。
【請求項8】
前記支柱部材は、
前記支持部材に装着される第1支柱部と、
前記第1支柱部に固定され、前記第1支柱部よりも前記壁面から離れた位置にオフセットさせて配置された第2支柱部と、を有し、
前記巻き上げ装置は、前記第2支柱部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項7に記載の電気盤の吊上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、壁掛け用の電気盤の壁掛け装置及び電気盤の吊上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面に据え付けられる壁掛け用の電気盤が知られている。電気盤の壁面への据え付けは、例えば電気盤を横倒しの状態で運搬し、据付場所の近くで起立させ、所定の高さまで持ち上げた後、予め壁面に固定されている支持部材に固定することにより行われる。電気盤には、例えば電力プラントにおける電力の供給及び配電をする電気盤のように、重量があり人力で起立させて持ち上げることが困難なものがある。そのため、重量のある電気盤を壁面に据え付ける場合、例えば特許文献1に開示された搬入装置等を用いて、電気盤を起立させ、所定の高さまで持ち上げる方法が採用される。
【0003】
特許文献1に開示された搬入装置は、いわゆる門型リフターである。この搬入装置は、一対の柱状部と、柱状部の上端部を接続する吊り下げ支持部と、で構成した門型の支持フレームを有している。各柱状部の下端部には、壁面に向かって移動する前後方向に張り出したベース部材が設けられている。吊り下げ支持部には、電気盤等の搬入物を吊り上げるためのチェーンブロックが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-172614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された搬入装置は、チェーンブロックを用いて電気盤を起立させ、所定の高さまで持ち上げることができる。しかしながら、この搬入装置のような門型リフターは、機材が大型で重量があり、据付場所への運搬に労力を要する。また、柱状部の下端部に設けられたベース部が、壁面に向かって移動する前後方向に張り出しているため、吊り下げ支持部を壁面に寄せることができず、吊り下げ支持部で吊り上げた電気盤を壁面まで寄せることができない。そのため、電気盤を振り子状に傾けて壁面まで寄せる作業が必要となり、電気盤の据え付け作業が困難である。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、電気盤の据え付け作業を容易に行うことができる電気盤の壁掛け装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示にかかる電気盤の壁掛け装置は、壁掛け用の電気盤を壁面に据え付けるために用いられる壁掛け装置であって、電気盤を据え付ける壁面に固定され、該壁面に配置された電気盤を固定させる支持部材と、支持部材に装着され、電気盤を吊り上げ可能に構成された吊上装置と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる電気盤の壁掛け装置によれば、電気盤の据え付け作業を容易に行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態にかかる電気盤の壁掛け装置を示した斜視図
図2】実施の形態にかかる電気盤の壁掛け装置であって、支持部材に吊上装置の支柱部材を装着させる様子を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態にかかる電気盤の壁掛け装置及び電気盤の吊上装置を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態.
図1は、実施の形態にかかる電気盤の壁掛け装置を示した斜視図である。図2は、実施の形態にかかる電気盤の壁掛け装置であって、支持部材に吊上装置の支柱部材を装着させる様子を示した説明図である。なお、図2に示した支持部材1は、第1支柱部30のみを図示し、その他の構成を省略している。本実施の形態においては、壁面300の高さ方向を上下方向Yとし、壁面300の幅方向を左右方向Xとする。左右方向Xは、上下方向Yに垂直な方向である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100は、電気盤200を電気室等の壁面300に据え付けるために用いられるものである。電気盤200は、一例として電力プラントにおける電力の供給及び配電をするものであり、筐体の内部に電気部品が収納されている。壁掛け装置100は、電気盤200を据え付ける壁面300に固定され、該壁面300に配置された電気盤200を固定させる1対の支持部材1と、各支持部材1に装着され、電気盤200を吊り上げ可能に構成された吊上装置2と、を備えている。
【0013】
支持部材1は、電気盤200を壁面300に固定させるため用いられるブラケットである。図2に示すように、支持部材1は、壁面300に固定される主鋼材10と、主鋼材10に接合された第1取合い部11と、主鋼材10に接合された第2取合い部12と、を有している。図1に示すように、1対の支持部材1は、壁面300の左右方向Xに沿って間隔をあけて配置される。1対の支持部材1の間隔は、左右の支持部材1の間に電気盤200を配置できる寸法とする。
【0014】
図1及び図2に示すように、主鋼材10は、一例としてウェブ10aと一対のフランジ10bとを有する溝形鋼で構成されている。図1に示すように、1対の支持部材1は、主鋼材10が壁面300の上下方向Yに沿って延び、且つ主鋼材10のウェブ10aを互いに対向させ、主鋼材10の開口部が外側を向くように配置される。支持部材1は、主鋼材10の一方のフランジ10bの外面が壁面300に当接し、壁面300に溶接又はボルト接合等で固定される。
【0015】
図2に示すように、第1取合い部11は、一例として鋼板で構成されている。第1取合い部11は、主鋼材10の溝内部に嵌め込まれ、外周縁が主鋼材10の内面に溶接で接合されている。第1取合い部11は、第2取合い部12よりも上方に配置されている。第1取合い部11には、上下方向Yに貫通する第1貫通孔11aが2つ並べて形成されている。
【0016】
図2に示すように、第2取合い部12は、一例として鋼板で構成されている。第2取合い部12は、主鋼材10の溝内部に嵌め込まれ、外周縁が主鋼材10の内面に溶接で接合されている。第2取合い部12は、第1取合い部11よりも下方に配置されている。第2取合い部12には、上下方向Yに貫通する第2貫通孔12aが2つ並べて形成されている。
【0017】
なお、支持部材1は、図示した2つに限定されず、1つでもよいし、壁面300の左右方向Xに沿って間隔をあけて3つ以上設けてもよい。また、主鋼材10は、図示した溝形鋼に限定されず、例えばアングル材又はH型鋼でもよいし、その他の形状からなる鋼材でもよい。また、主鋼材10は、鋼板を組み合わせて断面形状を凹状、L字状又はH形状とした構成でもよい。また、第1取合い部11に形成された第1貫通孔11aは、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、第2取合い部12に形成された第2貫通孔12aは、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0018】
図1に示すように、吊上装置2は、支持部材1に装着される支柱部材3と、支柱部材3に取り付けられ、電気盤200を吊り上げ可能に構成された巻き上げ装置4と、を有している。支柱部材3は、支持部材1に装着される第1支柱部30と、第1支柱部30に固定され、第1支柱部30よりも壁面300から離れた位置にオフセットさせて配置された第2支柱部31と、を有している。
【0019】
図1及び図2に示すように、第1支柱部30は、角形鋼管である。図2に示すように、第1支柱部30は、外面を構成する4面のうち、1つの面に第1金具32と第2金具33とが上下方向Yに間隔をあけて取り付けられている。第1金具32は、第2金具33よりも上方に配置されている。第1金具32は、鋼板をL字状に屈曲させて形成されている。第1金具32は、L字の一片の外面が、第1支柱部30の外面に当接して溶接又はボルト接合等で取り付けられ、L字の他片が第1支柱部30の外面から突き出すように設けられている。第1金具32は、第1支柱部30の外面から突き出したL字の他片に、下方へ突き出すピン部材32aが2つ並べて設けられている。
【0020】
図2に示すように、第2金具33は、鋼板をL字状に屈曲させて形成されている。第2金具33は、L字の一片の外面が第1支柱部30の外面に当接して溶接又はボルト接合等で取り付けられ、L字の他片が第1支柱部30の外面から突き出すように設けられている。第2金具33は、第1支柱部30の外面から突き出したL字の他片に、ボルト部材5の軸部を通す貫通孔(図示省略)が形成され、貫通孔に対応する位置の上面にナット部材33aが溶接で固定されている。なお、ナット部材33aは、図2に示すように、第2金具33の上面に設けてもよいし、図示は省略したが、第2金具33の下面に設けてもよい。
【0021】
第1支柱部30は、ピン部材32aを第1貫通孔11aに挿入し、第1金具32を第1取合い部11の上面に配置することで、第1金具32が第1取合い部11に取り付けられる。また、第1支柱部30は、第1金具32が第1取合い部11の上面に配置されることで、第2金具33が第2取合い部12の上面に配置され、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部をナット部材33aに締結することで、第2金具33と第2取合い部12とがボルト接合される。第1支柱部30が支持部材1に装着されることにより、支柱部材3が支持部材1に装着される。
【0022】
このように、壁掛け装置100では、ピン部材32aを第1貫通孔11aに挿入し、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部をナット部材33aに締結するだけの簡単な作業で、支柱部材3を支持部材1に装着することができる。なお、上記したように、上方に配置した第1金具32にピン部材32aを設け、下方に配置した第2金具33にボルト部材5を通すナット部材33aを設けることが好適である。第1貫通孔11aに挿入したピン部材32aにガタツキが生じても、第2貫通孔12aに通してナット部材33aに締結したボルト部材5によって、ピン部材32aのガタツキを抑制できるからである。また、第1支柱部30を支持部材1に装着する際に、主鋼材10と第1支柱部30の外面とによって第1金具32の周囲が覆われてしまうため、第1金具32と第1取合い部11とをボルト接合することができないからである。但し、例えば、第1金具32と第2金具33との両方にピン部材32aを設けてもよい。また、支持部材1の形状を、例えばアングル材等に変えることで、第1金具32と第1取合い部11とをボルト接合する構成としてもよい。
【0023】
なお、第1金具32及び第2金具33は、鋼板をL字状に屈曲させた構成に限定されず、例えば鋼管、角鋼又は鋼板でもよいし、その他の鋼材でもよい。また、ピン部材32aは、図示した2つに限定されず、第1貫通孔11aの個数に応じた個数とする。また、ナット部材33aは、図示した2つに限定されず、第2貫通孔12aの個数に応じた個数とする。
【0024】
第2支柱部31は、2本の角形鋼管を組み合わせてL字状とした構成である。第2支柱部31は、第1支柱部30に沿って延びる縦材31aと、縦材31aの上部に接合された横材31bと、を有している。縦材31aは、上部が第1支柱部30の上端よりも上方に突き出すように配置されている。また、縦材31aは、外面を構成する4面のうち、1つの面が、第1支柱部30の外面に当接し、第1支柱部30に溶接又はボルト接合等で接合されている。横材31bは、一端面を縦材31aの外面に突き当てて溶接等で接合され、先端部が壁面300とは反対側、すなわち電気盤200を吊り上げる側に突き出すように設けられている。横材31bの先端部には、巻き上げ装置4を取り付ける取付部材(図示省略)が設けられている。取付部材は、一例としてフックである。なお、縦材31aと横材31bとの接合箇所には、鋼材からなる補強部材34が設けられている。
【0025】
なお、第1支柱部30及び第2支柱部31は、図示した四角形状の角形鋼管に限定されない。第1支柱部30及び第2支柱部31は、例えば三角形又は五角形以上の鋼管でもよいし、円鋼管でもよい。また、第1支柱部30及び第2支柱部31は、溝形鋼、アングル材、H型鋼、角鋼又は丸鋼等でもよい。また、第1支柱部30及び第2支柱部31は、鋼板を組み合わせて断面形状が四角形状、凹状、L字状又はH形状とした構成でもよい。また、第1支柱部30及び第2支柱部31は、異なる形状の鋼材で構成してもよい。また、第2支柱部31を構成する縦材31aと横材31bとは、1つの鋼材を折り曲げて一体的に形成してもよい。
【0026】
巻き上げ装置4は、一例としてチェーンブロックである。巻き上げ装置4は、ブロック40が取付部材を介して第2支柱部31の横材31bに取り付けられ、ブロック40に繋がるチェーン41に設けられたフック(図示省略)が電気盤200に取り付けられる。巻き上げ装置4を駆動させることにより、横倒しの状態の電気盤200を起立させて、吊り上げることができる。なお、チェーンブロックは、手動式でもよいし、電動式でもよい。また、チェーンブロックは、懸垂式でもよいし、壁面300に向かって移動可能としたトロリー式でもよい。また、巻き上げ装置4は、チェーンブロックに限定されず、横倒しの状態の電気盤200を起立させて、吊り上げることができる構成であれば、他の構成でもよい。
【0027】
次に、上記構成の壁掛け装置100を使用して、電気盤200を壁面300に据え付ける手順について説明する。先ず、電気盤200が設置される電気室等の壁面300に1対の支持部材1を固定する。1対の支持部材1は、壁面300の左右方向Xに沿って間隔をあけて配置される。1対の支持部材1の間隔は、左右の支持部材1の間に電気盤200を配置できる寸法とする。1対の支持部材1は、主鋼材10が壁面300の上下方向Yに沿って延び、且つ主鋼材10のウェブ10aを互いに対向させ、主鋼材10の開口部が外側を向くように配置される。支持部材1は、主鋼材10の一方のフランジ10bの外面を壁面300に当接させ、壁面300に溶接又はボルト接合等で固定される。
【0028】
次に、壁面300に固定した各支持部材1に吊上装置2の支柱部材3を装着する。先ず、ピン部材32aを第1貫通孔11aに挿入して、第1金具32を第1取合い部11の上面に配置し、第1金具32を第1取合い部11に取り付ける。次に、第1金具32が第1取合い部11の上面に配置されることで、第2金具33が第2取合い部12の上面に配置されるので、第2貫通孔12aにボルト部材5の軸部を通してナット部材33aに締結し、第2金具33と第2取合い部12とをボルト接合する。第1支柱部30が支持部材1に装着されることにより、支柱部材3が支持部材1に装着される。
【0029】
次に、チェーンブロックから成る巻き上げ装置4を支柱部材3に取り付ける。巻き上げ装置4は、第2支柱部31の横材31bの先端部に設けられたフック等の取付部材にブロック40を取り付けることにより、支柱部材3に取り付けることができる。
【0030】
次に、電気盤200を横倒しの状態で壁面300の近くまで運搬する。電気盤200は、例えば台車を用いて運搬される。壁面300の近くまで運搬した電気盤200に、巻き上げ装置4のチェーン41に設けられたフックを取り付ける。フックは、例えば電気盤200に設けられた掛止部201に取り付けるとよい。そして、巻き上げ装置4を駆動させ、横倒しの状態の電気盤200を起立させて吊り上げ、電気盤200を壁面300の所定の位置にまで移動させた後、電気盤200を支持部材1に固定する。
【0031】
電気盤200を支持部材1に固定した後、巻き上げ装置4のフックを電気盤200の掛止部201から取り外し、該巻き上げ装置4のブロック40を第2支柱部31の横材31bから取り外す。そして、ボルト部材5とナット部材33aとの締結状態を解除し、支柱部材3を持ち上げてピン部材32aを第1貫通孔11aから抜き、支柱部材3を各支持部材1から取り外して、吊上装置2を回収する。
【0032】
次に、公知の巻上げ機構、門型リフター、又はリフト機構付きの台車を用いて、電気盤200を壁面300に据え付ける工法について説明する。巻上げ機構、門型リフター、又はリフト機構付きの台車を用いた場合にも、電気盤200を据付場所の近くまで運搬し、所定の高さまで持ち上げた後、予め壁面300に固定されている支持部材に電気盤200を固定する。
【0033】
巻上げ機構を用いた工法は、巻上げ機構を固定するためのサポート材を壁面300に仮設し、サポート材に固定した巻上げ機構で電気盤200を起立させて、所定の高さまで持ち上げる構成である。サポート材を壁面300に仮設するには、壁面に仮設アンカーを打設する必要がある。そのため、巻上げ機構を用いた工法では、電気盤200の据え付け前に仮設アンカーを打設する作業に労力と時間を要する。さらに、電気盤200の据え付け完了後に、仮設アンカーを取り除く作業に労力と時間を要する。また、仮設アンカーを取り除いた後、壁面300に仮設アンカーの跡が残り見栄えが悪くなる。
【0034】
門型リフターを用いた工法は、門型を構成する柱部分に設けられたシリンダーを伸縮させて電気盤200を起立させ、所定の高さまで持ち上げる構成である。また、門型リフターを用いた工法は、門型を構成する梁部分に巻上げ装置を装着し、該巻上げ装置を用いて電気盤200を起立させ、所定の高さまで持ち上げる工法もある。しかしながら、門型リフターを用いた工法では、機材が大型で重く、据付場所への運搬に労力を要する。また、据付場所が狭いと機材を運搬できない場合がある。
【0035】
また、門型リフターを用いた工法は、柱部分の基礎部分が壁面300に向かって移動する前後方向に張り出しているため、梁部分を壁面300に寄せることができず、吊り上げた電気盤200を壁面300まで寄せることができない。そのため、電気盤200を振り子状に傾けて壁面300まで寄せる作業が必要となり、電気盤200の据え付け作業が困難である。また、電気盤200の設置場所の上方に既設物又は天井の一部が出っ張った下がり天井がある場合には、既設物又は下がり天井が梁部分と干渉し、電気盤200を振り子状に傾けて壁面300に寄せることが難しい場合がある。
【0036】
リフト機構付きの台車を用いた工法は、台車に電気盤200を起立させた状態で積載し、リフト機構で電気盤200を所定の高さまで持ち上げる構成である。しかしながら、リフト機構付きの台車を用いた工法では、機材が大型で重く、据付場所への持ち込みに労力を要する。また、据付場所が狭いと機材を運搬できない場合がある。また、横倒しの状態の電気盤200を起立させる機能が無く、人力で電気盤200を起立させて台車へ載せる作業が必要となり、作業に労力を要する。さらに、電気盤200の揺れを抑える機構を有さない場合には、起立させた状態で電気盤200を台車に載せると、揺れで電気盤200が転倒するおそれもある。
【0037】
以上のように、公知の巻上げ機構、門型リフター、又はリフト機構付きの台車を用いて、電気盤200を壁面300に据え付けるには、それぞれ課題を有していた。
【0038】
一方、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100では、電気盤200を据え付ける壁面300に固定され、該壁面300に配置された電気盤200を固定させる支持部材1と、支持部材1に装着され、電気盤200を吊り上げ可能に構成された吊上装置2と、を備えている。すなわち、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100では、予め壁面300に固定される支持部材1を除き、吊上装置2のみを据付場所に運搬すればよいので、運搬が容易である。また、壁面300に固定された支持部材1に吊上装置2を装着させるので、吊上装置2を壁面300に寄せて設置することができ、吊上装置2に吊り上げられた電気盤200を壁面300に寄せることができる。よって、電気盤200の据え付け作業を容易に行うことができる。また、上記した巻上げ機構を用いた工法のように、仮設アンカー等を打設する必要もない。また、吊上装置2で横倒しの状態の電気盤200を起立させることができるので、リフト機構付きの台車を用いた工法のような人力による労力の負担が軽減される。
【0039】
また、支持部材1は、壁面300の左右方向Xに沿って間隔を開けて複数設けられている。吊上装置2は、各支持部材1に装着される。吊上装置2は、支持部材1に装着される支柱部材3と、支柱部材3に取り付けられ、電気盤200を吊り上げ可能に構成された巻き上げ装置4と、を有する。すなわち、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100では、支持部材1に装着される吊上装置2ごとに運搬でき、さらに支柱部材3と巻き上げ装置4とを分けて運搬することができるので、運搬が容易であり、また据付場所が狭くても容易に運搬することができる。
【0040】
また、支柱部材3は、支持部材1に装着される第1支柱部30と、第1支柱部30に固定され、第1支柱部30よりも壁面300から離れた位置にオフセットさせて配置された第2支柱部31と、を有している。巻き上げ装置4は、第2支柱部31に取り付けられている。すなわち、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100では、壁面300から離れた位置にオフセットさせて配置された第2支柱部31に巻き上げ装置4が取り付けられているので、電気盤200の据付場所の上方に既設物又は天井の一部が出っ張った下がり天井があっても、既設物又は下がり天井を避けて吊上装置2を設置することができる。
【0041】
また、支持部材1は、壁面300の上下方向Yに沿って間隔をあけて形成された第1貫通孔11aと第2貫通孔12aとを有している。支柱部材3は、第1貫通孔11aに挿入されるピン部材32aと、ピン部材32aが第1貫通孔11aに挿入された状態で第2貫通孔12aに対応するナット部材33aと、を有している。吊上装置2は、ピン部材32aが第1貫通孔11aに挿入され、ナット部材33aを第2貫通孔12aに対応させ、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部をナット部材33aに締結することで、支持部材1に装着される。よって、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100は、ピン部材32aが第1貫通孔11aに挿入され、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部をナット部材33aに締結するだけの簡易な作業で、吊上装置2を支持部材1に装着することができるので、電気盤200の据え付け作業を容易に行うことができる。また、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100は、ピン部材32aを第1貫通孔11aに挿入するだけで取り付けることができる作業性の良さと、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部をナット部材33aに締結することによる接合強度の高さと、を兼ね備えている。
【0042】
支持部材1は、壁面300に固定される主鋼材10と、主鋼材10に接合され、第1貫通孔11aが形成された第1取合い部11と、主鋼材10に接合され、第2貫通孔12aが形成された第2取合い部12と、を有している。吊上装置2は、支柱部材3に接合され、ピン部材32aが設けられた第1金具32と、支柱部材3に接合され、ナット部材33aが固定された第2金具33と、を有している。ピン部材32aが第1貫通孔11aに挿入されることで、第1金具32が第1取合い部11に取り付けられ、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部がナット部材33aに締結されることで、第2金具33が第2取合い部12にボルト接合されて、支持部材1に装着される。よって、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100は、ピン部材32aが第1貫通孔11aに挿入され、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部をナット部材33aに締結するだけの簡易な作業で、吊上装置2を支持部材1に装着することができるので、電気盤200の据え付け作業を容易に行うことができる。また、本実施の形態にかかる電気盤200の壁掛け装置100は、ピン部材32aを第1貫通孔11aに挿入するだけで取り付けることができる作業性の良さと、第2貫通孔12aに通したボルト部材5の軸部をナット部材33aに締結することによる接合強度の高さと、を兼ね備えている。
【0043】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【0044】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0045】
(付記1)
壁掛け用の電気盤を壁面に据え付けるために用いられる壁掛け装置であって、
前記電気盤を据え付ける壁面に固定され、該壁面に配置された前記電気盤を固定させる支持部材と、
前記支持部材に装着され、前記電気盤を吊り上げ可能に構成された吊上装置と、を備える、
ことを特徴とする電気盤の壁掛け装置。
(付記2)
前記支持部材は、前記壁面の左右方向に沿って間隔を開けて複数設けられており、
前記吊上装置は、各前記支持部材に装着される、
ことを特徴とする付記1に記載の電気盤の壁掛け装置。
(付記3)
前記吊上装置は、
前記支持部材に装着される支柱部材と、
前記支柱部材に取り付けられ、前記電気盤を吊り上げ可能に構成された巻き上げ装置と、を有する、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の電気盤の壁掛け装置。
(付記4)
前記支柱部材は、
前記支持部材に装着される第1支柱部と、
前記第1支柱部に固定され、前記第1支柱部よりも前記壁面から離れた位置にオフセットさせて配置された第2支柱部と、を有し、
前記巻き上げ装置は、前記第2支柱部に取り付けられている、
ことを特徴とする付記3に記載の電気盤の壁掛け装置。
(付記5)
前記支持部材は、壁面の上下方向に沿って間隔をあけて形成された第1貫通孔と第2貫通孔とを有しており、
前記支柱部材は、前記第1貫通孔に挿入されるピン部材と、前記ピン部材が前記第1貫通孔に挿入された状態で前記第2貫通孔に対応するナット部材と、を有しており、
前記吊上装置は、前記ピン部材が前記第1貫通孔に挿入され、前記ナット部材を前記第2貫通孔に対応させ、前記第2貫通孔に通したボルト部材の軸部をナット部材に締結することで、前記支持部材に装着される、
ことを特徴とする付記3又は4に記載の電気盤の壁掛け装置。
(付記6)
前記支持部材は、
前記壁面に固定される主鋼材と、
前記主鋼材に接合され、前記第1貫通孔が形成された第1取合い部と、
前記主鋼材に接合され、前記第2貫通孔が形成された第2取合い部と、を有しており、
前記吊上装置は、
前記支柱部材に接合され、前記ピン部材が設けられた第1金具と、
前記支柱部材に接合され、前記ナット部材が固定された第2金具と、を有しており、
前記ピン部材が前記第1貫通孔に挿入されることで、前記第1金具が前記第1取合い部に取り付けられ、前記第2貫通孔に通したボルト部材の軸部がナット部材に締結されることで、前記第2金具が前記第2取合い部にボルト接合されて、前記支持部材に装着される、
ことを特徴とする付記5に記載の電気盤の壁掛け装置。
(付記7)
壁掛け用の電気盤を据え付ける壁面に固定され、該壁面に配置された電気盤を固定させる支持部材に装着される電気盤の吊上装置であって、
前記支持部材に装着される支柱部材と、
前記支柱部材に取り付けられ、前記電気盤を吊り上げ可能に構成された巻き上げ装置と、を有する、
ことを特徴とする電気盤の吊上装置。
(付記8)
前記支柱部材は、
前記支持部材に装着される第1支柱部と、
前記第1支柱部に固定され、前記第1支柱部よりも前記壁面から離れた位置にオフセットさせて配置された第2支柱部と、を有し、
前記巻き上げ装置は、前記第2支柱部に取り付けられている、
ことを特徴とする付記7に記載の電気盤の吊上装置。
【符号の説明】
【0046】
1 支持部材、2 吊上装置、3 支柱部材、4 巻き上げ装置、5 ボルト部材、10 主鋼材、10a ウェブ、10b フランジ、11 第1取合い部、11a 第1貫通孔、12 第2取合い部、12a 第2貫通孔、30 第1支柱部、31 第2支柱部、31a 縦材、31b 横材、32 第1金具、32a ピン部材、33 第2金具、33a ナット部材、34 補強部材、40 ブロック、41 チェーン、100 壁掛け装置、200 電気盤、300 壁面。
【要約】
【課題】電気盤の据え付け作業を容易に行うことができる電気盤の壁掛け装置を得ること。
【解決手段】電気盤200の壁掛け装置100は、電気盤200を据え付ける壁面300に固定され、壁面300に配置された電気盤200を固定させる支持部材1と、支持部材1に装着され、電気盤200を吊り上げ可能に構成された吊上装置2と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2