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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/18 20060101AFI20241004BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20241004BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20241004BHJP
   F16C 11/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G06F1/18 C
G06F1/16 312E
G06F1/16 312J
H05K5/02 A
F16C11/04 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023137031
(22)【出願日】2023-08-25
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 旅人
(72)【発明者】
【氏名】潮田 達也
(72)【発明者】
【氏名】柴山 佳幸
(72)【発明者】
【氏名】梅島 一哉
(72)【発明者】
【氏名】田角 和也
【審査官】佐藤 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-205034(JP,A)
【文献】特許第7274634(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16 - 1/18
H05K 5/00 - 5/06
F16C 11/00 -11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジによって第1筐体と第2筐体とが互いの連結縁で相対的に回動可能に連結されている電子機器であって、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられるフラットケーブルと、
前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って前記フラットケーブルと積層されるプロテクションフィルムと、
前記ヒンジと同軸で前記第2筐体と一体的に回動する引出し体と、
前記第1筐体内で前記プロテクションフィルムの端部が固定され、該プロテクションフィルムを巻き取るように付勢するテンションローラと、
前記第1筐体内で前記引出し体と前記テンションローラとの間の前記プロテクションフィルムの経路を伸ばすように中継するアイドルローラと、
を有し、
前記フラットケーブルは前記第2筐体で前記引出し体の周面に当接し、さらにその先の固定部で前記第2筐体に固定されており、
前記プロテクションフィルムは前記第2筐体で前記フラットケーブルを前記引出し体とともに挟持し、さらにその先の前記固定部で前記第2筐体に固定されており、
前記第1筐体内には前記アイドルローラで折り返す前記プロテクションフィルムと前記連結縁との間に余長空間が形成され、
前記第1筐体内で前記フラットケーブルは、前記テンションローラと前記連結縁との隙間から前記余長空間を通り、前記連結縁の一部に形成された開口から前記引出し体へと延出しており、前記余長空間で第1筐体と第2筐体との回動角度に応じた弛みを形成する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記第1筐体は扁平形状であり、
前記開口および前記アイドルローラは前記第1筐体の扁平形状の厚み方向に沿った一端近傍に設けられ、
前記テンションローラは他端近傍に設けられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項2に記載の電子機器において、
前記第1筐体は前記一端の面にキーボードを有し、
前記第2筐体はディスプレイを備える
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器において、
前記アイドルローラは前記テンションローラより小径である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子機器において、
前記プロテクションフィルムは、前記テンションローラおよび前記アイドルローラに対して平掛けされている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジによって第1筐体と第2筐体とが相対的に回動可能に連結されている電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型PCはヒンジによって本体筐体とディスプレイ筐体とが相対的に回動可能に連結されている。FPCなどのフラットケーブルは柔軟性に優れており折り曲げが可能で配策自由度が高く、しかも薄いためノート型パソコンなどの扁平形状の筐体を有する電子機器に適用されることがある。特許文献1には2つの筐体間をFPCで接続することが開示されている。この文献では両筐体間の回動角度が変化することにともないFPCに必要とされる経路長も変化するために、これを吸収するためのS字状の余長部が一方の筐体内に設けられている。特許文献1に記載の実施例では筐体間の回動角度が0度~130度程度の範囲でフラットケーブルのS字部分が経路長の変化を適切に吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-121092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本体筐体とディスプレイ筐体との連結縁同士にはわずかながら隙間があり、フラットケーブルは該隙間で露呈されてしまうためプロテクションフィルムで覆うことが検討されている。プロテクションフィルムは張力を与えて引っ張っておくと保護効果が高い。
【0005】
ところで、ノート型PCでは機種により0度~180度程度まで回動するものがあり、このような機種では余長吸収のS字形状が大きくなる。これに対して張力が付与されたプロテクションフィルムは空間を直線状に横断するため、大きいS字形状を収納するための空間を確保することができなくなる。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、第1筐体と第2筐体との回動角度範囲が広くすることができ、しかもフラットケーブルを適切に保護することのできる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、ヒンジによって第1筐体と第2筐体とが互いの連結縁で相対的に回動可能に連結されている電子機器であって、前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って設けられるフラットケーブルと、前記第1筐体と前記第2筐体との間に亘って前記フラットケーブルと積層されるプロテクションフィルムと、前記ヒンジと同軸で前記第2筐体と一体的に回動する引出し体と、前記第1筐体内で前記プロテクションフィルムの端部が固定され、該プロテクションフィルムを巻き取るように付勢するテンションローラと、前記第1筐体内で前記引出し体と前記テンションローラとの間の前記プロテクションフィルムの経路を伸ばすように中継するアイドルローラと、を有し、前記フラットケーブルは前記第2筐体で前記引出し体の周面に当接し、さらにその先の固定部で前記第2筐体に固定されており、前記プロテクションフィルムは前記第2筐体で前記フラットケーブルを前記引出し体とともに挟持し、さらにその先の前記固定部で前記第2筐体に固定されており、前記第1筐体内には前記アイドルローラで折り返す前記プロテクションフィルムと前記連結縁との間に余長空間が形成され、前記第1筐体内で前記フラットケーブルは、前記テンションローラと前記連結縁との隙間から前記余長空間を通り、前記連結縁の一部に形成された開口から前記引出し体へと延出しており、前記余長空間で第1筐体と第2筐体との回動角度に応じた弛みを形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の上記態様によれば、第1筐体と第2筐体との回動角度範囲が広くすることができ、しかもフラットケーブルを適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態にかかる電子機器を示す側面模式断面図である。
図2図2は、巻取機構の斜視図である。
図3図3は、テンションローラとその周辺の一部を示す斜視図である。
図4図4は、トーションバネの斜視図である。
図5図5は、筐体間の回動角度が0度の状態の電子機器における本体筐体とディスプレイ筐体との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。
図6図6は、筐体間の回動角度が90度の状態の電子機器における本体筐体とディスプレイ筐体との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。
図7図7は、筐体間の回動角度が180度の状態の電子機器における本体筐体とディスプレイ筐体との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。
図8図8は、変形例にかかる電子機器における本体筐体とディスプレイ筐体との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、一実施形態に係る電子機器10を上から見下ろした模式的な平面図である。図1に示すように、電子機器10は本体筐体(第1筐体)12とディスプレイ筐体(第2筐体)14とを一対のヒンジ16で相対的に回動可能に連結したクラムシェル型のノート型PCである。
【0012】
ディスプレイ筐体14は、本体筐体12よりも薄い扁平な箱体である。ディスプレイ筐体14には、ディスプレイ18が搭載されている。ディスプレイ18は、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。ディスプレイ筐体14の上辺部には複数の電子デバイス19が搭載されている。電子デバイス19は、カメラ、マイク、赤外線装置などである。
【0013】
以下、本体筐体12及びこれに搭載された各構成要素について、図1に示すように筐体12,14間を所定角度に開いて、ディスプレイ18を視認する姿勢を基準とし、手前側を前、奥側を後、幅方向を左右、厚み方向を上下、と呼んで説明する。
【0014】
本体筐体12は扁平な箱体である。本体筐体12は、上面12aを形成する上カバー部材20と、底面12b及び四周の側面12cを形成する下カバー部材22とで箱状に構成されている。カバー部材20,22は、厚み方向に重ね合わされて互いに着脱可能に連結される。下側の下カバー部材22は、上面が開口した略バスタブ形状を有する。上側の上カバー部材20は、略平板形状を有し、下カバー部材22の上面開口を閉じる蓋体となる。本体筐体12の上面12aには、キーボード24及びタッチパッド26が設けられている。
【0015】
ヒンジ16は、本体筐体12の後縁部(連結縁)12dと、これと隣接するディスプレイ筐体14の一縁部14aとの間を相対的に回動可能に連結している。筐体12,14を積層してクラムシェルを閉じた状態を0度と呼ぶとすると、本実例におけるヒンジ16による筐体12,14間の回動可能な角度範囲は、0度から180度である。筐体12,14間の回動角度は、180度より小さく、又は大きくてもよい。
【0016】
本体筐体12の内部には、マザーボード28、バッテリ装置30などが搭載されている。マザーボード28は、電子機器10のメインボードである。マザーボード28は、本体筐体12の後方寄りに配置されている。マザーボードにはCPU、GPU、パワーコンポーネント、通信モジュール、メモリ、及び接続端子等の各種電子部品が実装されている。
【0017】
電子機器10は、本体筐体12とディスプレイ筐体14との間に亘って設けられる2本のフラットケーブル32A,32Bを有している。フラットケーブル32A,32Bは略中央部分で並列しているが、左右に離れていてもよい。フラットケーブル32A,32Bを代表的にフラットケーブル32とも呼ぶ。フラットケーブル32は1本、または3本以上でもよい。フラットケーブル32は、一端が本体筐体12のマザーボード28またはその他のサブボードに接続され、他端はディスプレイ筐体14のディスプレイ18や電子デバイス19に対して直接または間接的に接続される。フラットケーブル32はFPC(Flexible printed circuit)である。FPCはポリイミド層、導電層などからなる薄いシート或いはフィルムで形成されており柔軟性、可撓性に優れている。フラットケーブル32はFFC(Flexible Flat Cable)などでもよい。
【0018】
電子機器10は、本体筐体12とディスプレイ筐体14との間に亘ってフラットケーブル32A,32Bと積層されるプロテクションフィルム34A,34Bを有する。プロテクションフィルム34A,34Bはフラットケーブル32A,32Bと同幅かまたはやや広い。プロテクションフィルム34A,34Bは代表的にプロテクションフィルム34とも呼ぶ。プロテクションフィルム34は、寸法安定性、耐摩耗性、耐切創性、電気絶縁性などに優れるシート状部材である。プロテクションフィルム34は柔軟で可撓性を有するが、引張り力に対しては高剛性である。プロテクションフィルム34は薄く、局所的な小さな折れや座屈などに基づく異音を発生することがない。プロテクションフィルム34は、例えば液晶ポリマを糸状にしたベクトラン(登録商標)を編み込んで製作される。電子機器10における本体筐体12内で後縁部12dの近傍にはプロテクションフィルム34を巻き取る巻取機構40が設けられている。
【0019】
図2は、巻取機構40の斜視図である。巻取機構40は右側の第1巻取り部42Aと、左側の第2巻き取り部42Bと、これらの間の連結部40aとを有する。巻取機構40の左右両端および連結部40aには取付座40bが設けられており、図示しないネジによって本体筐体12に固定されるようになっている。連結部40aは断面L字形状に屈曲しており強度が担保されている。第1巻取り部42Aと左側の第2巻き取り部42Bとは幅が多少異なる以外は同構造であり、これらを代表的に巻取り部42とも呼ぶ。
【0020】
巻取り部42は左右の側板42aと、両側板42aによって支持されているアイドルローラ44およびテンションローラ46を有する。アイドルローラ44およびテンションローラ46は左右方向に延在しており、それぞれ略同じ長さであり、巻取り対象のプロテクションフィルム34より長くなっている。アイドルローラ44はテンションローラ46よりやや前方上部にある。テンションローラ46の径は、例えば5mm程度である。テンションローラ46はテンションローラ46より小径であり、例えば1/2程度である。
【0021】
一対の側板42aの各先端部は対向する側に向けて屈曲し、さらに円形断面を形成するように丸まった軸支湾曲部42bを形成している。一対の軸支湾曲部42bにはテンションローラ46の両端部が挿通されて回転自在となっている。テンションローラ46の左端にはフランジ44aが形成され他端にはリング44bが挿入されて、それぞれ抜け止めとなっている。
【0022】
図3は、テンションローラ46とその周辺の一部を示す斜視図である。テンションローラ46は、プロテクションフィルム34よりやや左右幅が大きい中央部の巻取り部46aと、その両側にあるバネ挿通部46bと、両端で小さく突出する軸支部46cとを有する。巻取り部46a、バネ挿通部46b、軸支部46cはそれぞれ同軸の円柱形状である。バネ挿通部46bはトーションバネ48が挿通される部分である。バネ挿通部46bは巻取り部46aより小径であり、軸支部46cはバネ挿通部46bより小径である。
【0023】
図4は、トーションバネ48の斜視図である。トーションバネ48は、左右一対のバネ部48aと、両端に突出する係合部48bと、一対のバネ部48aを繋ぐ直線状の接続部48cとを有する。
【0024】
図3に戻り、バネ部48aおよびバネ挿通部46bはほぼ同じ長さであり、係合部48bはバネ挿通部46bよりも側方に突出している。バネ挿通部46bはバネ部48aより適度に小径となっている。側板42aにはバネ部48aを覆う円筒カバー42cと、軸支部46cを支持する環状突起46dと、係合部48bが挿入される係合孔42eとが設けられている。図示を省略するが、巻取り部46aの側面には接続部48cが嵌り込む溝が形成されている。
【0025】
巻取り部46aは、それぞれ半円状の第1半体46aaと第2半体46abとが組み合わさって形成されている。第2半体46abは第1半体46aaの両端にある位置決片46acの間に入るようになっている。第2半体46abには2つのネジ孔46adが形成されている。プロテクションフィルム34の端部にはネジ孔46adに対応する位置に孔34aが形成されている。プロテクションフィルム34は第1半体46aaと第2半体46abとの間に挿入され、ネジ50がネジ孔46adおよび孔34aを通り第1半体46aaに形成されている雌ねじ部に螺合することによって固定される。テンションローラ46はこのような構成によりプロテクションフィルム34を巻き取るように弾性付勢する。テンションローラ46はフラットケーブル32に対しては付勢しないため、該フラットケーブル32はパターン断線などの不具合がない。
【0026】
図5は、筐体12,14の回動角度が0度の状態の電子機器10における本体筐体12とディスプレイ筐体14との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。
【0027】
本体筐体12の後縁部12dにはカバー部材20との間に、フラットケーブル32およびプロテクションフィルム34が通る上下に狭い開口52が形成されている。開口52およびアイドルローラ44は本体筐体12の扁平形状の厚み方向に沿った上端近傍に設けられており、テンションローラ46は下端近傍に設けられている。
【0028】
テンションローラ46は後縁部12dの近傍に設けられている。テンションローラ46と下カバー部材22との間には狭い隙間12eが形成され、後縁部12dとの間には狭い隙間12fが形成されている。アイドルローラ44は、テンションローラ46よりも適度に前方にあり、本実施例では上カバー部材20におけるキーボード24に向けた下がり傾斜部20aに当接しない範囲で可及的前方に配置されている。アイドルローラ44は、本体筐体12内で後述するバー14bとテンションローラ46との間でプロテクションフィルム34の経路を伸ばすように中継する。本体筐体12内にはアイドルローラ44で折り返すプロテクションフィルム34と後縁部12dとの間に余長空間12gが形成されている。
【0029】
この実施例のテンションローラ46は円弧矢印で示すように半時計方向に弾性付勢されている。一端がテンションローラ46に固定されたプロテクションフィルム34は、テンションローラ46を時計方向に所定角度巻回して、斜め上方へ向かい、アイドルローラ44で折り返されてほぼ水平向きとなり、開口52から本体筐体12の外に出る。プロテクションフィルム34はテンションローラ46およびアイドルローラ44に対してそれぞれ前方斜め下部に接していわゆる平掛け(またはオープン掛け)になっており、テンションローラ46およびアイドルローラ44は同方向に回転することになる。
【0030】
フラットケーブル32は、本体筐体12内でテンションローラ46と後縁部12dとの隙間から余長空間12gを通り、開口52から引出し体へと延出しており、余長空間12gで本体筐体12とディスプレイ筐体14との回動角度に応じた弛み32aを形成する。フラットケーブル32は、テンションローラ46の周辺から弛み32aを経て開口52に至る経路でS字を形成する。プロテクションフィルム34は開口52からディスプレイ筐体14にわたってフラットケーブル32の上面に積層され、該フラットケーブル32を保護する。プロテクションフィルム34は端部がテンションローラ46によって付勢されているため弛みがない。
【0031】
ディスプレイ筐体14はヒンジ16と同軸状のバー(引出し体)14b、ディスプレイ18の背面を覆う背面カバー14c、およびバー14bと背面カバー14cとを接続する側壁(固定部)14dを有する。バー14bと後縁部12dとは十分近い。バー14bは一対のヒンジ16とほぼ同径であり、これらの間で一体的イメージになるように配置されている(図1参照)。バー14bはディスプレイ筐体14と一体であり、当然に該ディスプレイ筐体14と一体的に回動する。バー14bは基本的に円形断面であるが、側壁14dの内面にかけて滑らかに接続する傾斜部14baを有している。筐体12,14の回動角度が0度の状態で側壁14dは上下に沿った向きとなっている。
【0032】
フラットケーブル32はディスプレイ筐体14でバー14bの周面(この場合傾斜部14ba)に当接し、さらにその先で側壁14dの内面に対して固定具54によってディスプレイ筐体14に固定されている。フラットケーブル32はさらに延在してディスプレイ18などに接続されている。プロテクションフィルム34はディスプレイ筐体14でフラットケーブル32をバー14bとともに挟持し、さらにその先の側壁14dの内面に対して固定具54によってディスプレイ筐体14に固定されている。つまり、フラットケーブル32とプロテクションフィルム34とはともに側壁14dに固定されている。固定具54の種類は問われないが、例えば粘着テープまたは接着剤が適用される。
【0033】
図6は、筐体12,14の回動角度が90度の状態の電子機器10における本体筐体12とディスプレイ筐体14との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。図7は、筐体12,14の回動角度が180度の状態の電子機器10における本体筐体12とディスプレイ筐体14との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。
【0034】
筐体12,14の回動角度が0度(図5参照)の状態から90度に変化すると、プロテクションフィルム34は側壁14dでディスプレイ筐体14に固定されていることから、バー14bの周面に巻かれ、アイドルローラ44を介してテンションローラ46による弾性付勢力に抗して本体筐体12から所定長さが引き出される。このときアイドルローラ44およびテンションローラ46は時計方向に回転する。
【0035】
また、フラットケーブル32も同様に側壁14dでディスプレイ筐体14に固定されていることから、テンションローラ46とともにバー14bの周面に巻かれて本体筐体12から所定長さが引き出される。このとき、引き出し量に応じて余長空間12gの弛み32aは小さくなる。フラットケーブル32はバー14bの傾斜部14baを介して円弧周面に巻かれるため急角度に屈曲することがない。
【0036】
筐体12,14の回動角度が90度の状態から180度に変化すると、プロテクションフィルム34およびフラットケーブル32はバー14bによってさらに巻き取られて本体筐体12から引き出され、弛み32aは小さくなる。
【0037】
筐体12,14の回動角度が180度の状態から90度および0度に変化すると、プロテクションフィルム34はテンションローラ46によって巻き取られ本体筐体12内に引き込まれる。このとき、フラットケーブル32はプロテクションフィルム34との摩擦力、およびバー14bから受ける押し込み力によりプロテクションフィルム34とともに本体筐体12内に引き込まれ、弛み32aが大きくなる。
【0038】
このように構成される電子機器10では、テンションローラ46がフラットケーブル32のガイドとなってS字形状が適切に維持されるため、本体筐体12とディスプレイ筐体14との回動角度範囲が広い場合であっても回動角度の変化にともなう経路長変化を適切に吸収することができる。
【0039】
また、プロテクションフィルム34はアイドルローラ44で折り返すようになっており、連結縁14aとの間に適度な余長空間12gが形成され、フラットケーブル32の弛み32aの形成が阻害されない。フラットケーブル32は本体筐体12からディスプレイ筐体14に亘る間でプロテクションフィルム34によって覆われるため、ペン先などの当接から保護される。
【0040】
開口52およびアイドルローラ44は本体筐体12の上端近傍に設けられており、プロテクションフィルム34がバー14bへ向けてほぼ水平に維持される。これに対してテンションローラ46は下端近傍に設けられており、余長空間12gを広く確保することができる。テンションローラ46はプロテクションフィルム34を所定量巻き取ることができるように比較的大径であるのに対し、アイドルローラ44はプロテクションフィルム34が折り返すことができれば足り且つ余長空間12gに対する占有面積を低減させるため比較的小径となっている。プロテクションフィルム34は、テンションローラ46およびアイドルローラ44に対して平掛けされていることから、余長空間12gを一層広く確保することができる。
【0041】
このように本実施例の電子機器10では、余長空間12gを広く確保することができるため、フラットケーブル32が形成する比較的大きいS字形状部が収納可能であり、筐体間の回動角度を大きく設定することができる。また、プロテクションフィルム34はテンションローラ46によって常に張力を受けていてフラットケーブル32を適切に保護することができる。さらに、プロテクションフィルム34によりフラットケーブル32はユーザから視認されななくなる。フラットケーブル32およびプロテックションフィルム34は大きい圧力を受けながら摺動する箇所がなく摩耗しない。
【0042】
図8は、変形例にかかる電子機器における本体筐体12とディスプレイ筐体14との互いの連結部をその近傍を示す模式断面側面図である。この変形例では、プロテクションフィルム34はテンションローラ46の後方斜め上部からアイドルローラ44の前方斜め下部に掛かるようにいわゆる十字掛け(またはクロス掛け)になっており、テンションローラ46およびアイドルローラ44は逆方向に回転することになる。テンションローラ46は円弧矢印で示すように時計方向に弾性付勢される。この変形例では、余長空間12gは若干狭くなるが、下カバー部材22の内面に何らかの部品70を配置するスペースが確保される。
【0043】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
10 電子機器
12 本体筐体(第1筐体)
12e,12f 隙間
12g 余長空間
14 ディスプレイ筐体(第2筐体)
14b バー
14d 側壁(固定部)
16 ヒンジ
32,32A,32B フラットケーブル
34,34A,34B プロテクションフィルム
40 巻取機構
44 アイドルローラ
46 テンションローラ
48 トーションバネ
52 開口
54 固定具
【要約】
【課題】第1筐体と第2筐体との回動角度範囲が広くすることができ、しかもフラットケーブルを適切に保護することのできる電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器10では、本体筐体12とディスプレイ筐体14との間に亘ってフラットケーブル32およびプロテクションフィルム34が積層して設けられる。本体筐体12には、プロテクションフィルム34を巻き取るように付勢するテンションローラ46、およびバー14bとテンションローラ46との間でプロテクションフィルム34の経路を伸ばすように中継するアイドルローラ44が設けられる。フラットケーブル32およびプロテクションフィルム34はバー14bの周面に当接し、側壁14dで固定されている。フラットケーブル32は、隙間12e,12fから余長空間12gを通り、開口52からバー14bへと延出しており、余長空間12gで筐体間の角度に応じた弛み32aを形成する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8