(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】光反射樹脂フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 5/28 20060101AFI20241004BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20241004BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20241004BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241004BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G02B5/28
B29C48/08
B29C48/21
B32B7/023
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2023166058
(22)【出願日】2023-09-27
(62)【分割の表示】P 2022063042の分割
【原出願日】2022-04-05
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0044712
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0044711
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジャンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、リミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンドゥク
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0087007(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0017382(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0023849(KR,A)
【文献】国際公開第2009/096298(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/198635(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/085286(WO,A1)
【文献】特開2014-081526(JP,A)
【文献】特開2015-148666(JP,A)
【文献】特開2009-012187(JP,A)
【文献】特開2003-075920(JP,A)
【文献】特開2005-289065(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111844992(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
B29C 48/08
B29C 48/21
B32B 7/023
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポリマーを含む第1樹脂層と第2ポリマーを含む第2樹脂層とが交互に繰り返し積層された反射スタックを含み、
前記第2樹脂層は前記第1樹脂層よりも屈折率が小さく、前記第2ポリマーは下記式3を満た
し、
前記第2ポリマーと前記第1ポリマーとのガラス転移温度(Tg)差は15℃以下であり、
前記第2ポリマーの重量平均分子量(Mw)は100,000以上であり、
前記第1ポリマーはポリエチレンテレフタレート(PET)であり、前記第2ポリマーはポリメチルメタクリレート(PMMA)であり、
前記第2ポリマーに対する前記第1ポリマーの重量比は1.7~3である、光反射樹脂フィルム。
【数1】
(式3中、αは-8,800~-8,100の範囲であり、βは260,000であり、MFIの値は測定されたMFIからg/minで表される単位を除去した値であ
り、
Mwは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)およびポリスチレン標準物を用いて測定され、MFIは、ASTM D1238に準拠して230℃の温度および3.80kgの荷重で測定される。)
【請求項2】
前記第2ポリマーのガラス転移温度は、前記第1ポリマーのガラス転移温度よりも大きく、
第2ポリマーのガラス転移温度は80~100℃である、
請求項1に記載の光反射樹脂フィルム。
【請求項3】
前記第1ポリマーの重量平均分子量(Mw)は30,000~100,000の範囲である、請求項1に記載の光反射樹脂フィルム。
【請求項4】
前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は、下記式1によって定義され、0.35~0.65の範囲のF比(F-ratio)を満たす、請求項1に記載の光反射樹脂フィルム。
【数2】
(式1中、n
1及びn
2はそれぞれ前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の屈折率であり、d
1及びd
2はそれぞれ第1樹脂層および第2樹脂層の厚さである。)
【請求項5】
前記反射スタックの上面および底面上にそれぞれ積層された第1保護層および第2保護層をさらに含む、請求項1に記載の光反射樹脂フィルム。
【請求項6】
前記反射スタックの縦方向の延伸比は3.3倍以上である、請求項1に記載の光反射樹脂フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。より詳しくは、複数の樹脂層を含む光反射樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルムは電子、化学、食品、医学、建築、包装材などの用途に幅広く使用されている。例えば、特定の色を有する装飾用高分子フィルムの場合は、着色剤を利用するか、または特定の波長の光を反射または遮断する方法を利用することができる。
【0003】
例えば、屈折率の異なる樹脂層を交互に繰り返し積層し、赤外線反射フィルム、可視光反射フィルム、偏光反射フィルムなどの特定領域の波長を有する光を選択的に反射できる光反射フィルムを製造することができる。
【0004】
しかし、複数の樹脂層を共に積層すると、各樹脂層間の密着不良が発生することがあり、例えば、共押出、キャスト工程等によって前記樹脂層が接合し、光学的特性の変動によってムラ模様、帯模様などの光学的欠陥が引き起こされることがある。
【0005】
そのため、屈折率差によって所望の波長の光反射特性を維持しながら、光学信頼性を向上させるための光反射樹脂フィルムの組成または工程の開発が必要である。
【0006】
例えば、韓国公開特許第2003-0012874号では、多層構造の赤外線反射フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第2003-0012874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例示的な実施形態による課題は、向上した光学的特性を有し、工程安定性を有する光反射樹脂フィルムおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムは、樹脂層を含む反射スタックを含み、前記樹脂層の溶融抵抗は2,000MΩ以下である。前記溶融抵抗は、溶融フィルム状の前記樹脂層に銅プレートを接触させ、前記銅プレートに50Vの電圧を印加して測定される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記反射スタックは、交互に繰り返し積層された第1樹脂層および第2樹脂層を含み、第1樹脂層の屈折率は第2樹脂層の屈折率よりも大きくてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層のそれぞれの溶融抵抗は2,000MΩ以下であってもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層のそれぞれの溶融抵抗は50~500MΩであってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は下記式1によって定義され、0.35~0.65の範囲のF比(F-ratio)を満たすことができる。
【0014】
【0015】
(式1中、n1及びn2はそれぞれ前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の屈折率であり、d1及びd2はそれぞれ第1樹脂層および第2樹脂層の厚さである。)
【0016】
いくつかの実施形態では、前記第1樹脂層はポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、前記第2樹脂層はポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むことができる。前記第1樹脂層の溶融抵抗は280℃で測定し、前記第2樹脂層の溶融抵抗は240℃で測定することができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層のそれぞれは、アルカリ金属塩またはアルカリ土金属塩を含む抵抗調整剤を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記光反射樹脂フィルムは、前記反射スタックの上面および底面上にそれぞれ積層された第1保護層および第2保護層をさらに含むことができる。
【0019】
例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムは、第1ポリマーを含む第1樹脂層と第2ポリマーを含む第2樹脂層とが交互に繰り返し積層された反射スタックを含み、前記第2樹脂層は前記第1樹脂層よりも屈折率が小さく、前記第2ポリマーは下記式3を満たす。
【0020】
【0021】
(式3中、αは-8,800~-8,100の範囲であり、βは260,000であり、MFIの値は測定されたMFIからg/minで表される単位を除去した値である。)
【0022】
いくつかの実施形態では、前記第2ポリマーと前記第1ポリマーとのガラス転移温度(Tg)差は15℃以下であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記第2ポリマーのガラス転移温度は前記第1ポリマーのガラス転移温度よりも大きく、第2ポリマーのガラス転移温度は80~100℃であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記第2ポリマーの重量平均分子量(Mw)は100,000以上であってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記第1ポリマーの重量平均分子量(Mw)は30,000~100,000の範囲であってもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記第1ポリマーはポリエチレンテレフタレート(PET)を含み、前記第2ポリマーはポリメチルメタクリレート(PMMA)を含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記第1樹脂層および前記第2樹脂層は下記式1によって定義され、0.35~0.65の範囲のF比(F-ratio)を満たすことができる。
【0028】
【0029】
(式1中、n1及びn2はそれぞれ前記第1樹脂層および前記第2樹脂層の屈折率であり、d1及びd2はそれぞれ第1樹脂層および第2樹脂層の厚さである。)
【0030】
いくつかの実施形態では、前記第2ポリマーに対する前記第1ポリマーの重量比は1.7~3であってもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、前記反射スタックの上面および底面上にそれぞれ積層された第1保護層および第2保護層をさらに含むことができる。
【0032】
いくつかの実施形態では、前記反射スタックの縦方向の延伸比は3.3倍以上であってもよい。
【0033】
例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムの製造方法では、第1ポリマーおよび第1抵抗調整剤を含む第1樹脂原料と、第2ポリマーおよび第2抵抗調整剤を含む第2樹脂原料とを準備する。前記第1樹脂原料および前記第2樹脂原料をそれぞれ押出させ、交互に繰り返し配置される第1溶融フィルムおよび第2溶融フィルムを含む予備溶融積層体を形成する。電圧印加により、前記予備溶融積層体をキャストロールに密着させ、予備反射スタックを形成する。前記予備反射スタックを延伸する。
【0034】
いくつかの実施形態では、前記第1溶融フィルムおよび前記第2溶融フィルムのそれぞれの溶融抵抗は2,000MΩ以下であり、前記溶融抵抗は前記第1溶融フィルムおよび前記第2溶融フィルムのそれぞれに銅プレートを隣接させ、前記銅プレートに50Vの電圧を印加して測定することができる。
【発明の効果】
【0035】
前述の例示的な実施形態によれば、光反射樹脂フィルムに含まれる樹脂層は、所定の範囲の溶融抵抗値を有し、これによって適切な通電特性を有することができる。これにより、例えば樹脂積層体形成のためのキャスト工程における均一な密着特性が確保され、帯模様、ムラ模様などの光学的欠陥の発生を防止することができる。
【0036】
例示的な実施形態によれば、前記樹脂層はベースポリマーと、該ベースポリマーと混合された抵抗調整剤とを含むことができる。前記抵抗調整剤の含有量の調整によって溶融抵抗を制御することができ、黄変現象のような樹脂層の色変化を抑制しつつ、前述の光学的欠陥を防止することができる。
【0037】
他の例示的な実施形態によれば、光反射樹脂フィルムは、第1ポリマーを含む第1樹脂層と、第2ポリマーを含む第2樹脂層とを含むことができる。前記第2ポリマーの重量平均分子量およびメルトフローインデックスは、前記第1樹脂層との整合性を考慮して、所定の関係を満たすように調整することができる。
【0038】
これにより、前記光反射樹脂フィルムの延伸工程の安定性、製品形成の安定性が向上し、層間整合性が向上して、スクラッチ、帯模様などの光学的・機械的不良を抑制または低減することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとのガラス転移温度差は所定の範囲内に維持され、製膜安定性、延伸安定性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムを示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムの製造方法を示す概略図である。
【
図3】
図3は、例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムの製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
例示的な実施形態によれば、光学信頼性が向上した光反射樹脂フィルムおよびその製造方法が提供される。
【0042】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は多様な変更を加えることができ、さまざまな形態を有することができるところ、特定の実施形態を図面に例示して本文に詳細に説明しようとする。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる全ての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。
【0043】
別に定義しない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで用いられる全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同一の意味を有する。一般的に用いられる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上有する意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願で明らかに定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0044】
図1は、例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムを示す概略断面図である。
【0045】
図1を参照すると、光反射樹脂フィルム100は、反射スタック110と、保護層150a,150bとを含むことができる。例示的な実施形態によれば、反射スタック110は、第1樹脂層120と第2樹脂層130とを含むことができる。
【0046】
第1樹脂層120と第2樹脂層130は互いに異なる屈折率を有することができる。第1樹脂層120と第2樹脂層130との屈折率差による界面反射により、反射スタック110から光反射または光遮断性能を実現することができる。
【0047】
一実施形態では、第1樹脂層120と第2樹脂層130との屈折率差は0.01以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であってもよい。
【0048】
第1樹脂層120および第2樹脂層130は、前述の屈折率差を維持する範囲で適切な高分子を含むことができる。
【0049】
第1樹脂層120は、第2樹脂層130よりも高い屈折率を有する第1ポリマーを含むことができる。例えば、ポリエステル系高分子、ポリエステル系共重合体、ポリナフタレンなどを含むことができる。一実施形態では、第1樹脂層120は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを含む。好ましい一実施形態では、第1樹脂層120または前記第1ポリマーは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことができる。例えば、第1樹脂層120は第2樹脂層130よりも高い屈折率を有することができる。
【0050】
例えば、第1樹脂層120の屈折率は1.6~1.7の範囲であり、第1樹脂層120は、PETを含む場合1.64~1.66の範囲の屈折率を有することができる。
【0051】
第1樹脂層120は複屈折特性を有することができる。前述のように、第1樹脂層120はPETを含むことができ、延伸によって屈折率が増加する正の複屈折特性を有することができる。
【0052】
第1樹脂層120の溶融温度は、例えば270℃以上であってもよい。一実施形態では、第1樹脂層120の溶融温度は270~290℃の範囲であってもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、前記第1ポリマーのガラス転移温度は、溶融、押出工程のし易さを考慮して75~85℃の範囲であってもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、前記第1ポリマーの重量平均分子量(Mw)は約30,000~100,000の範囲であってもよい。前記範囲内では、製膜安定性および延伸安定性を向上させることができる。好ましい一実施形態では、前記第1ポリマーの重量平均分子量は約40,000~80,000の範囲であってもよい。
【0055】
第2樹脂層130は、第1樹脂層120の第1ポリマーよりも低い屈折率を有する第2ポリマーを含むことができる。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)のようなアクリル系高分子、ポリスチレン(PS)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリ乳酸(PLA)などを含むことができる。好ましい一実施形態では、第2樹脂層130はPMMAを含むことができる。例えば、第2樹脂層130は第1樹脂層120よりも低い屈折率を有することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、第2樹脂層130は共重合ポリエステル系高分子を含むことができる。例えば、第2樹脂層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)にネオペンチングリコール(NPG)、シクロヘキサンジメタノール(CHDM)及び/又はシンジオタクチックポリスチレン(SPS)が共重合された共重合体(co-PET)を含むことができる。
【0057】
例えば、第2樹脂層130の屈折率は1.4~1.5の範囲であり、第2樹脂層130は、PMMAを含む場合1.485~1.495の範囲の屈折率を有することができる。
【0058】
第2樹脂層130は等方性高分子を含むことができる。前述のように、第2樹脂層130は、延伸による屈折率の変化がないPMMAを含むことができる。この場合には、延伸によって第1樹脂層120の屈折率が増加し、第2樹脂層130との屈折率差が増加し得る。
【0059】
第2樹脂層130の溶融温度は、例えば210℃以上であってもよい。一実施形態では、第2樹脂層130の溶融温度は210~240℃の範囲であってもよい。
【0060】
例示的な実施形態によれば、第2樹脂層130に含まれた前記第2ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、例えば、PETを含む前記第1ポリマーとの共押出のし易さ、流れの安定性を考慮して調整することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、前記第2ポリマーと前記第1ポリマーとのガラス転移温度(Tg)差は15℃以下であってもよい。一実施形態では、前記第2ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、前記のガラス転移温度差の範囲を維持し、80~100℃であってもよい。
【0062】
図1に示すように、反射スタック110は、交互に繰り返し積層された第1樹脂層120および第2樹脂層130を含むことができる。例えば、反射スタック110の積層数は100~200の範囲であってもよい。好ましい一実施形態では、反射スタック110の積層数は140~160の範囲であってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態では、反射スタック110の下記式1で定義されるF比(F-ratio)は0.35~0.65の範囲に調整することができる。
【0064】
【0065】
(式1中、n1及びn2はそれぞれ第1樹脂層120および第2樹脂層130の屈折率であり、d1及びd2はそれぞれ第1樹脂層120および第2樹脂層130の厚さである。)
【0066】
光反射樹脂フィルム100に照射された光は、当該波長(λ)で1次反射波長を形成し、例えばλ/2波長で2次反射波長を形成することができる。前記2次反射波長における反射率が高いと、不所望の帯域の波長で光反射が増加しすぎることがある。
【0067】
前述の範囲でF比を調整すると、前記反射波長における過度の光反射を抑制するとともに、1次反射波長と共に選択的に2次反射波長を利用することができる。
【0068】
一実施形態では、F比は0.45~0.55の範囲に調整することができる。この場合、実質的に2次反射波長は除去され、1次反射波長のみを利用することができる。
【0069】
第1樹脂層120および第2樹脂層130のそれぞれの屈折率および厚さは、前述のF比を維持しながら、所望の反射光の波長によって適宜設計することができる。
【0070】
例えば、下記式2により、所望の遮断光の波長(λ)によって第1樹脂層120および第2樹脂層130のそれぞれの屈折率および厚さを決定することができる。
【0071】
【0072】
式2中、n1及びn2はそれぞれ第1樹脂層120および第2樹脂層130の屈折率であり、d1及びd2はそれぞれ第1樹脂層120および第2樹脂層130の厚さである。
【0073】
例示的な実施形態によれば、反射スタック110の溶融抵抗は500MΩ以下であってもよい。例示的な実施形態によれば、第1樹脂層120および第2樹脂層130のそれぞれの溶融抵抗は2,000MΩ以下であってもよい。
【0074】
第1樹脂層120および第2樹脂層130の溶融抵抗が2,000MΩを超えると、
図2で後述するように、キャスト工程における通電特性が十分に実現されないことがある。そのため、キャストロールに対する密着不良が発生し、TD方向または横方向に帯模様又はムラ模様が引き起こされることがある。
【0075】
好ましい一実施形態では、第1樹脂層120および第2樹脂層130の溶融抵抗は50~500MΩの範囲であってもよい。前記範囲では、均一な通電によってキャスト工程の信頼性が向上し、後述する抵抗調整剤の含有量増加による樹脂層の変色、例えば黄変現象を防止することができる。
【0076】
溶融抵抗は、溶融状態のフィルム状である第1樹脂層120および第2樹脂層130のそれぞれに対して、銅(Cu)プレートと所定距離離隔した状態で50Vの電圧を印加して測定された抵抗値である。例えば、銅プレートのサイズは横25mm×縦200mm×厚さ2mmであってもよい。銅プレートと樹脂層との間の離隔距離は30mmであってもよい。
【0077】
第1樹脂層120がPETを含む場合、第1樹脂層120の溶融抵抗は280℃で測定することができる。第2樹脂層130がPMMAを含む場合、第2樹脂層130の溶融抵抗は240℃で測定することができる。
【0078】
例示的な実施形態によれば、第1樹脂層120および第2樹脂層130は、それぞれ抵抗調整剤を含むことができる。いくつかの実施形態では、前記抵抗調整剤の含有量調整により、前述の範囲の溶融抵抗を実現することができる。
【0079】
前記抵抗調整剤はアルカリ金属塩またはアルカリ土金属塩を含むことができる。例えば、前記抵抗調整剤は、カリウムハロゲン化物、マグネシウムハロゲン化物、カリウムヒドロキシド、マグネシウムヒドロキシドなどの無機塩、または、カリウムアセテート、マグネシウムアセテートなどの有機塩を含むことができる。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
いくつかの実施形態によれば、第1樹脂層120において、第1樹脂層120に含まれたPETのような第1ポリマーの全重量に対する前記抵抗調整剤の含有量は10ppm以上であってもよい。好ましい一実施形態では、前記第1ポリマーの全重量に対する前記抵抗調整剤の含有量は50~300ppm、より好ましくは50~200ppmの範囲であってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、第2樹脂層130において、第2樹脂層130に含まれたPMMAのような第2ポリマーの全重量に対する前記抵抗調整剤の含有量は100ppm以上であってもよい。好ましい一実施形態では、前記第2ポリマーの全重量に対する前記抵抗調整剤の含有量は100~300ppm、より好ましくは100~200ppmの範囲であってもよい。
【0082】
他の例示的な実施形態によれば、第2樹脂層130に含まれた前記第2ポリマーの重量平均分子量(Mw)およびメルトフローインデックス(Melt Flow Index:MFI)は、第1樹脂層120との積層整合性、延伸安定性を考慮して決定することができる。
【0083】
例えば、第1樹脂層120および第2樹脂層130の積層整合性が低下すると、反射スタック110内で界面剥離が発生することがあり、延伸工程中に層間の物性差によって破断、割れなどが発生することがある。
【0084】
また、第1樹脂層120および第2樹脂層130の押出工程時の界面における流れ性不整合によって帯模様が発生することがあり、ロール工程においてスクラッチ、汚れなどが生じることがある。
【0085】
例示的な実施形態によれば、前記第2ポリマーは下記式3を満たすことができる。
【0086】
【0087】
(式3中、αは-8,800~-8,100の範囲であり、βは260,000である。式3のMFIの値は測定されたMFIから単位を除去した値を意味する。)
【0088】
式3に含まれるメルトフローインデックス(MFI)は230℃、3.80kgの条件で測定され、g/minの単位で表される。
【0089】
例えば、前記第2ポリマーは、式3において勾配で提供されるαの範囲内で、重量平均分子量(Mw)およびメルトフローインデックス(MFI)の値が実質的に線形関係を有することができる。
【0090】
前記式3で定義された関係を満たすと、前述した層間整合の不足に起因する光学的不良、機械的不良などを効果的に抑制するか、または顕著に低減することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、前記第2ポリマーの重量平均分子量は約100,000以上であり、好ましくは約100,000~200,000の範囲であってもよい。
【0092】
図1に戻ると、反射スタック110の上面および底面上には、それぞれ第1保護層150aおよび第2保護層150bを積層することができる。例えば、第1保護層150aおよび第2保護層150bは、PETフィルムを含むことができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、反射スタック110の厚さは、光反射樹脂フィルム100の全厚さの約50~70%、好ましくは約50~60%であってもよい。前記範囲では保護層150a,150bによるフィルム保護および光反射樹脂フィルム100の光透過度を過度に阻害することなく、所望の波長帯域の反射・遮断を効果的に実現できる。
【0094】
図2及び
図3は、例示的な実施形態による光反射樹脂フィルムの製造方法を示す概略図である。
【0095】
図2を参照すると、樹脂原料50は押出機60によって溶融及び押出することができる。樹脂原料50は、前述の第1ポリマーを含む第1樹脂原料と、前述の第2ポリマーを含む第2樹脂原料とをそれぞれ別々に含むことができる。
【0096】
例示的な実施形態では、第1樹脂原料および第2樹脂原料はそれぞれ抵抗調整剤をさらに含むことができる。
【0097】
前記第1樹脂原料および前記第2樹脂原料は、それぞれペレット(pellet)またはチップ(chip)状に製造し、押出機60の内部に供給することができる。例示的な実施形態によれば、前記第2樹脂原料に対する前記第1樹脂原料の重量比または押出量比は1.7~3であってもよい。前記範囲内では、前記第1ポリマーと前記第2ポリマーとの粘度差に起因する界面流れによって波模様、フィルムの変形が生じることを防止することができる。
【0098】
好ましい一実施形態では、前記重量比または押出量比は2~2.7の範囲であってもよい。
【0099】
樹脂原料50は押出機60によって溶融及び押出され、搬送ライン70を介して移動することができる。その後、樹脂原料50は押出ダイ80を介して溶融フィルムの形態で排出され得る。
【0100】
図3を参照すると、前記第1樹脂原料および前記第2樹脂原料は、それぞれ第1搬送ライン72および第2搬送ライン74を介して移動・供給することができる。その後、第1搬送ライン72および第2搬送ライン74とそれぞれ連結される第1押出ダイ82および第2押出ダイ84から、前記第1樹脂原料から生成された第1溶融フィルム及び第2樹脂原料から生成された第2溶融フィルムを排出することができる。
【0101】
第1押出ダイ82と第2押出ダイ84は、交互に繰り返し配置できる。これにより、前記第1溶融フィルムと前記第2溶融フィルムを交互に繰り返し排出し、予備溶融積層体を得ることができる。
【0102】
図2に戻ると、押出ダイ80から排出された前記予備溶融積層体は、キャストロール90に供給することができる。
【0103】
例示的な実施形態によれば、キャストロール90に隣接して静電印加部85を配置できる。例えば、静電印加部85は、前記予備溶融積層体を挟んでキャストロール90と対向するように配置できる。静電印加部85は電源に接続された銅導線または銅プレートのような金属導線または金属プレートを含むことができる。
【0104】
前記電源を介して静電印加部85に電圧が印加されると、キャストローラ90には負電荷が誘導され、前記第1溶融フィルムおよび前記第2溶融フィルムに含有された抵抗調整剤により、前記予備溶融積層体はキャストローラ90に密着することができる。
【0105】
前述のように、前記第1溶融フィルムおよび前記第2溶融フィルムのそれぞれは2,000MΩ以下、好ましくは50~500MΩの範囲の溶融抵抗を有することができる。これにより、前記通電または静電印加を行う際に、キャストローラ90への電気的引力によって密着を高めることができ、通電不足による光学的欠陥を防止することができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、キャストローラ90の温度は常温以下の温度に維持することができる。これにより、前記予備溶融積層体が前述の通電によってキャストローラ90に密着して固化し、予備反射スタックを形成することができる。
【0107】
前記予備反射スタックは、テンショナ(tensioner)95によって引っ張られて移動され得る。
【0108】
その後、前記予備反射スタックは、延伸ローラによって延伸工程等が行われた後、反射スタック110を得ることができる。
図1に示すように、反射スタック110の上面および底面上にそれぞれ第1保護層150aおよび第2保護層150bを積層し、光反射樹脂フィルム100を製造することができる。一実施形態では、第1保護層150aおよび第2保護層150bを積層した後、延伸工程を行うことができる。
【0109】
前記延伸工程は、MD方向の延伸(例えば、縦方向の延伸)およびTD方向の延伸(例えば、横方向の延伸)を含むことができる。例えば、縦方向の延伸比は3.3倍以上であってもよい。この場合も、縦方向の延伸後の横方向の延伸においてフィルムの破れ、破断が抑制され、安定した引張強度を維持することができる。
【0110】
前述の例示的な実施形態によれば、前記第1樹脂原料は例えばPETを含み、前記第2樹脂原料は前述のように重量平均分子量およびメルトフローインデックスが調整され、前記第1樹脂原料とのガラス転移温度差が所定の温度以下に調整された第2ポリマーから得ることができる。
【0111】
これにより、前記予備溶融積層体の形成時、流れの不均一による不所望の模様の発生を抑制することができる。また、キャストロール90上での密着安定性がより向上し、キャストロール90、テンショナ95などから引き起こされるスクラッチ、ロール跡等を防止することができる。
【0112】
また、反射スタック110の積層安定性が向上し、安定的に延伸工程を行うことができる。これにより、延伸比をさらに増加させることができる。
【0113】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではない。これらの実施例に対し、本発明の範疇および技術思想の範囲内で種々の変更および修正を加えることが可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0114】
実験例1
(1)実施例1~8及び比較例1~4
表1に示す組成及び含有量を有するペレット状の第1樹脂原料(第1ポリマー及び第1抵抗調整剤を含む。)および第2樹脂原料(第2ポリマー及び第2抵抗調整剤を含む。)をそれぞれ押出機により溶融及び押出し、押出ダイを含むフィードブロックダイを介して第1溶融フィルムと第2融融フィルムを交互に繰り返し供給し、合計143層の予備溶融積層体を形成した。
【0115】
前記第1樹脂原料の溶融及び押出温度は280℃に維持され、前記第2樹脂原料の溶融及び押出温度は240℃に維持された。前記第1樹脂原料と前記第2樹脂原料との重量比は2:1に維持された。
【0116】
その後、
図2で説明したように、20℃に調整されたキャストローラと銅導線との間に前記予備溶融積層体を供給し、前記銅導線に電圧を印加してキャスト工程を行った。
【0117】
次に、キャストローラによって密着及び固化した前記予備溶融積層体を、テンションローラを用いて引張り、交互に繰り返し積層された第1樹脂層および第2樹脂層を含む反射スタックを形成した。前記第1樹脂層は厚さ140nm、前記第2樹脂層は厚さ155nmに形成された。
【0118】
前記反射スタックの上面および底面上にPET樹脂を塗布して保護層を形成し、縦方向に3.5倍、横方向に4.5倍の延伸を行い、光反射樹脂フィルムを製造した。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
(2)評価例
1) 溶融抵抗の測定
前記第1樹脂原料および前記第2樹脂原料のそれぞれから形成された第1溶融フィルムおよび第2溶融フィルムを銅プレートに位置させ、銅プレートに50Vの電圧を印加した。その後、前記第1溶融フィルムおよび前記第2溶融フィルム内の抵抗値を測定した。前述のように、前記第1溶融フィルムの抵抗測定温度は280℃、前記第2溶融フィルムの抵抗測定温度は240℃であった。
【0123】
2)TD方向の模様の発生の評価
実施例及び比較例により製造された光反射樹脂フィルムを目視及び偏光装置(型番:LSM-401、LUCEO社製)でそれぞれ観察し、TD方向のムラ模様の発生有無を評価した。
【0124】
評価基準は以下の通りである。
○: 肉眼及び偏光装置のいずれによっても模様が視認されない。
△:肉眼によっては模様が視認されないが、偏光装置によっては模様が視認される。
×:肉眼及び偏光装置の両方によって模様が視認される。
【0125】
評価結果を下記の表4及び表5に示す。
【0126】
【0127】
【0128】
表4及び表5を参照すると、第1樹脂層または第2樹脂層の溶融抵抗が2,000MΩを超えている比較例の場合は、TD方向の模様が目視で観察された。
【0129】
これに対して、第1樹脂層及び第2樹脂層のいずれも溶融抵抗が500MΩ以下である実施例1~5の場合は、目視及び偏光装置のいずれによってもTD方向の模様が観察されなかった。
【0130】
ただし、第2樹脂層の溶融抵抗が減少しすぎた実施例5の場合は、抵抗調整剤の含有量の過剰な増加により、第2樹脂層の変色現象が観察された。
【0131】
実験例2
(1)実施例9~14及び比較例5~6
1)実施例9
i)第1ポリマー(PET)の製造
窒素雰囲気下、274.5℃、常圧の条件で維持された反応器内に、単位時間当たり358質量部の高純度テレフタル酸と単位時間当たり190質量部のエチレングリコールとを混合して調製したスラリーを連続して供給した。エステル化反応で発生する水とエチレングリコールを反応器外に留去しながら、反応器内の理論滞留時間4時間でエステル化反応を完了した。
【0132】
前記エステル化反応で形成されたエチレンテレフタレートオリゴマー450質量部を順次に重縮合反応槽に移した。前記重縮合反応槽内の反応温度を276.5℃、反応圧力を60Paに維持し、重縮合反応で発生する水及びエチレングリコールを重縮合反応槽外に除去しながら、溶融状態で滞留時間180分間重縮合反応を行い、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂を得た。
【0133】
ii)第2ポリマー(PMMA)の製造
単量体混合物100重量部に対して、メチルメタクリレート96重量部、メチルアクリレート4重量部、開始剤としての2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-バレロニトリル)[(2,2'-Azobis(2,4-dimethyl-valeronitrile))]0.1重量部、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート(1,1,3,3-tetramethylbutyl peroxy 2-ethyl hexanoate) 0.03重量部、水133重量部、懸濁剤としてのメチルメタクリレート-メタクリル酸の共重合体がNaOHでケン化した水溶液0.82重量部、緩衝塩としてのナトリウムジヒドロゲンホスフェート0.098重量部、ジナトリウムヒドロゲンホスフェート0.053重量部、および連鎖移動剤としてのノルマル-オクチルメルカプタン(normal-octylmercatpan)0.33重量部を、初期反応温度を60℃として120分間重合した。
【0134】
その後、50分間105℃まで昇温し、さらに40分間重合して、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を得た。
【0135】
iii)光反射樹脂フィルムの製造
ペレット状の前記第1ポリマーを含む第1樹脂原料および前記第2ポリマーを含む第2樹脂原料をそれぞれ押出機によって溶融及び押出し、押出ダイを含むフィードブロックダイによって第1溶融フィルムおよび第2融解フィルムを交互に繰り返し供給し、合計143層の予備溶融積層体を形成した。
【0136】
前記第1樹脂原料の溶融及び押出温度は280℃に維持され、前記第2樹脂原料の溶融及び押出温度は240℃に維持された。前記第1樹脂原料と前記第2樹脂原料との重量比は2:1に維持された。
【0137】
その後、
図2で説明したように、20℃に調整されたキャストローラと銅導線との間に前記予備溶融積層体を供給し、前記銅導線に電圧を印加してキャスト工程を行った。
【0138】
次に、キャストローラによって密着及び固化した前記予備溶融積層体を、テンションローラを用いて引張り、交互に繰り返し積層された第1樹脂層および第2樹脂層を含む反射スタックを形成した。前記第1樹脂層は厚さ140nm、前記第2樹脂層は厚さ155nmに形成された。
【0139】
2)実施例10
第2ポリマー(PMMA)の製造工程における連鎖移動剤の含有量を0.25重量部に調整した以外は実施例9と同様の方法で光反射樹脂フィルムを製造した。
【0140】
3)実施例11
第2ポリマー(PMMA)の製造工程における追加重合時間を30分に調整した以外は実施例9と同様の方法で光反射樹脂フィルムを製造した。
【0141】
4)実施例12
第2ポリマー(PMMA)の製造工程における追加重合時間を30分に調整し、追加重合温度を95℃に調整した以外は実施例9と同様の方法で光反射樹脂フィルムを製造した。
【0142】
5)実施例13
第1ポリマー(PET)の製造工程における重縮合時間を300分に増加させた以外は実施例12と同様の方法で光反射樹脂フィルムを製造した。
【0143】
6)実施例14
第1ポリマー(PET)の製造工程における重縮合時間を150分に減少させた以外は実施例12と同様の方法で光反射樹脂フィルムを製造した。
【0144】
7)比較例5
第2ポリマー(PMMA)の製造工程における連鎖移動剤の含有量を0.25重量部に調整し、追加重合時間を30分に調整した以外は実施例9と同様の方法で光反射樹脂フィルムを製造した。
【0145】
8)比較例6
第2ポリマー(PMMA)の製造工程における追加重合時間を20分に調整した以外は実施例9と同様の方法で光反射樹脂フィルムを製造した。
【0146】
実施例及び比較例の第1ポリマー(PET)および第2ポリマー(PMMA)の物性を下記の表6及び表7に示す。
【0147】
具体的には、ガラス転移温度は、TAインスツルメント社製のDSC Q-2000を用いて測定し、重量平均分子量(Mw)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)(PL-GPC220、Agilent社製)およびポリスチレン標準物を用いて測定した。メルトフローインデックス(MFI)は、ASTM D1238に準拠して測定した(測定温度:230℃、荷重:3.80kg)。
【0148】
また、前記式3より第2ポリマーのα値をそれぞれ計算した。
【0149】
【0150】
【0151】
(2)評価例
1)破断性の評価
前記の実施例及び比較例により製造された反射スタックの上面および底面上にPET樹脂を塗布して保護層を形成し、縦方向に3.5倍、横方向に5.5倍の延伸を行い、光反射樹脂フィルムを製造した。前記二軸延伸工程中の破断の発生有無を観察し、以下のように評価した。
【0152】
<破断性の評価基準>
○:破断が発生しない。
×:少なくとも1つの層で破断が発生する。
【0153】
2)フィルムの引張強度の測定
前記の実施例及び比較例により製造された反射スタックの引張強度を、JIS B 7721引張試験機を用いて測定した。
【0154】
3)MD延伸性能の評価
前記の実施例及び比較例により製造された反射スタックをMD方向に延伸し、初期MD長さに対する破断点まで延伸したMD長さの比を測定した。
【0155】
<MD延伸性能の評価基準>
○:初期長さに対して3.3倍超過の延伸が可能
△:初期長さに対して3.1倍~3.3倍の延伸が可能
×:初期長さに対して3.1倍未満の延伸が可能
【0156】
4)後加工性の評価
前記の実施例及び比較例により製造された反射スタックを、直径0.254mm以上の糸(Yarn)状にマイクロスリッティング装置を用いて製織(後加工)し、以下の基準に加工性を評価した。
【0157】
<後加工性の評価基準>
○:製織時の糸/フィルムの破れおよび破断現象が観測されない。
×:製織時の糸/フィルムの破れまたは破断現象が観測される。
【0158】
5)模様の発生
前記の実施例及び比較例により製造された反射スタックを目視で観察し、帯模様または波模様が観察されるか否かを判断した(模様が観察されない:○、模様が観察される:×)。
評価結果を下記表8に示す。
【0159】
【0160】
表6~8を参照すると、ΔTgが15℃を超え、PMMAのMwが100,000未満であり、式1で定義されたαの範囲から外れている比較例5、6と比較して、実施例9~14で製造された反射スタックまたは光反射樹脂フィルムは、改善された破断性、高いフィルム引張強度、優れたMD延伸性能および後加工性を示した。
【0161】
また、比較例の場合は、第1樹脂層と第2樹脂層との間の界面流れ性が低下し、帯模様または波模様が目視で観察された。
【符号の説明】
【0162】
50:樹脂原料
60:押出機
70:搬送ライン
80:押出ダイ
85:静電印加部
90:キャストロール
100:光反射樹脂フィルム
110:反射スタック
120:第1樹脂層
130:第2樹脂層
150a:第1保護層
150b:第2保護層