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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】複合基板、複合基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20241004BHJP
   H03H 3/08 20060101ALI20241004BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20241004BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H3/08
H01L21/02 B
B23K20/00 310L
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023218694
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 岳士
(72)【発明者】
【氏名】坂井 淳二
(72)【発明者】
【氏名】多井 知義
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-139720(JP,A)
【文献】特開2005-252550(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163722(WO,A1)
【文献】特開2004-343359(JP,A)
【文献】特開2019-217530(JP,A)
【文献】特開2020-102856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145-9/76
H03H 3/08ー 3/10
H01L 21/02
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性材料からなる機能性基板と、
半導体材料からなり、前記機能性基板と接合されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を有し、
前記機能性基板は、前記機能性材料の結晶体からなる第1機能層と、前記第1機能層よりも前記支持基板に近い側に配置され、希ガスを含んだ前記機能性材料の非晶質体からなる第2機能層と、を有し、
前記支持基板は、第1支持層と、前記第1支持層よりも前記機能性基板に近い側に配置され、前記希ガスを含んだ前記半導体材料の非晶質体からなる第2支持層と、前記機能性基板に接しており、前記半導体材料の非晶質体からなる接合層と、を有し、
前記接合層は前記希ガスを含み、
前記接合層における前記希ガスの含有率は、前記第2支持層における前記希ガスの含有率よりも少ない、複合基板。
【請求項2】
機能性材料からなる機能性基板と、
半導体材料からなり、前記機能性基板と接合されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を有し、
前記機能性基板は、絶縁材料からなる絶縁層を介して前記支持基板と接合され、
前記支持基板は、第1支持層と、前記第1支持層よりも前記機能性基板に近い側に配置され、希ガスを含んだ前記半導体材料の非晶質体からなる第2支持層と、前記絶縁層に接しており、前記半導体材料の非晶質体からなる接合層と、を有し、
前記絶縁層は、前記絶縁材料からなる第1絶縁層と、前記絶縁材料の非晶質体で構成されて前記接合層と接する第2絶縁層と、を有し、
前記接合層は前記希ガスを含み、
前記接合層における前記希ガスの含有率は、前記第2支持層における前記希ガスの含有率よりも少ない、複合基板。
【請求項3】
請求項またはに記載の複合基板において、
前記接合層の厚みは0.3nm以上3nm以下である、複合基板。
【請求項4】
請求項またはに記載の複合基板において、
前記接合層は金属元素を含む、複合基板。
【請求項5】
請求項に記載の複合基板において、
前記第1機能層は、前記希ガスを含むか、または前記希ガスを含まず、
前記第1機能層が前記希ガスを含む場合の前記第1機能層における前記希ガスの含有率は、前記第2機能層における前記希ガスの含有率よりも少ない、複合基板。
【請求項6】
請求項に記載の複合基板において、
前記第2機能層における前記希ガスの含有率は、前記第2支持層における前記希ガスの含有率よりも少ない、複合基板。
【請求項7】
請求項に記載の複合基板において、
前記第1絶縁層は、前記希ガスを含むか、または前記希ガスを含まず、
前記第1絶縁層が前記希ガスを含む場合の前記第1絶縁層における前記希ガスの含有率は、前記第2絶縁層における前記希ガスの含有率よりも少ない、複合基板。
【請求項8】
請求項に記載の複合基板において、
前記第2絶縁層における前記希ガスの含有率は、前記第2支持層における前記希ガスの含有率よりも少ない、複合基板。
【請求項9】
請求項またはに記載の複合基板において、
前記第1支持層は、前記希ガスを含むか、または前記希ガスを含まず、
前記第1支持層が前記希ガスを含む場合の前記第1支持層における前記希ガスの含有率は、前記第2支持層における前記希ガスの含有率よりも少ない、複合基板。
【請求項10】
機能性材料からなる機能性基板と、半導体材料から構成されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を含んで構成される複合基板の製造方法であって、
前記機能性基板の表面と、前記半導体材料からなる半導体基板の表面とに、それぞれの照射時間の少なくとも一部が重複するように高速原子ビームをそれぞれ照射する活性化工程と、
前記活性化工程に続いて実施され、前記機能性基板の表面に対する前記高速原子ビームの照射を停止した後、前記半導体基板の表面に対する前記高速原子ビームの照射を継続して、前記機能性基板の表面に前記半導体材料をスパッタリングするスパッタリング工程と、
前記スパッタリング工程により前記半導体材料がスパッタリングされた前記機能性基板と前記半導体基板とを接合して接合体を得る接合工程と、を含む、複合基板の製造方法。
【請求項11】
機能性材料からなる機能性基板と、半導体材料から構成されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を含んで構成される複合基板の製造方法であって、
前記機能性基板の表面に絶縁材料からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、
前記絶縁層の表面と、前記半導体材料からなる半導体基板の表面とに、それぞれの照射時間の少なくとも一部が重複するように高速原子ビームをそれぞれ照射する活性化工程と、
前記活性化工程に続いて実施され、前記絶縁層の表面に対する前記高速原子ビームの照射を停止した後、前記半導体基板の表面に対する前記高速原子ビームの照射を継続して、前記絶縁層の表面に前記半導体材料をスパッタリングするスパッタリング工程と、
前記スパッタリング工程により前記半導体材料がスパッタリングされた前記絶縁層を介して、前記機能性基板と前記半導体基板とを接合して接合体を得る接合工程と、を含む、複合基板の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の複合基板の製造方法において、
前記スパッタリング工程では、前記機能性基板の表面に0.3nm以上3nm以下の厚みで、スパッタリングされた前記半導体材料の非晶質体からなるスパッタ膜を形成する、複合基板の製造方法。
【請求項13】
請求項11に記載の複合基板の製造方法において、
前記スパッタリング工程では、前記絶縁層の表面に0.3nm以上3nm以下の厚みで、スパッタリングされた前記半導体材料の非晶質体からなるスパッタ膜を形成する、複合基板の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の複合基板の製造方法において、
前記機能性基板および前記半導体基板は、第1の高速原子ビームガンおよび第2の高速原子ビームガンが設置された真空チャンバー内に配置され、
前記活性化工程では、前記第1の高速原子ビームガンおよび前記第2の高速原子ビームガンに希ガスをそれぞれ供給して、前記希ガスによる前記高速原子ビームを、前記第1の高速原子ビームガンから前記機能性基板の表面に照射するとともに、前記第2の高速原子ビームガンから前記半導体基板の表面に照射し、
前記スパッタリング工程では、前記第1の高速原子ビームガンへの前記希ガスの供給を継続した状態で、前記第1の高速原子ビームガンから前記機能性基板の表面への前記高速原子ビームの照射を停止する、複合基板の製造方法。
【請求項15】
請求項11に記載の複合基板の製造方法において、
前記機能性基板および前記半導体基板は、第1の高速原子ビームガンおよび第2の高速原子ビームガンが設置された真空チャンバー内に配置され、
前記活性化工程では、前記第1の高速原子ビームガンおよび前記第2の高速原子ビームガンに希ガスをそれぞれ供給して、前記希ガスによる前記高速原子ビームを、前記第1の高速原子ビームガンから前記絶縁層の表面に照射するとともに、前記第2の高速原子ビームガンから前記半導体基板の表面に照射し、
前記スパッタリング工程では、前記第1の高速原子ビームガンへの前記希ガスの供給を継続した状態で、前記第1の高速原子ビームガンから前記絶縁層の表面への前記高速原子ビームの照射を停止する、複合基板の製造方法。
【請求項16】
請求項14に記載の複合基板の製造方法において、
前記活性化工程では、前記第1の高速原子ビームガンから前記機能性基板の表面への前記高速原子ビームの照射と、前記第2の高速原子ビームガンから前記半導体基板の表面への前記高速原子ビームの照射と、を同時に行う、複合基板の製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の複合基板の製造方法において、
前記活性化工程では、前記第1の高速原子ビームガンから前記絶縁層の表面への前記高速原子ビームの照射と、前記第2の高速原子ビームガンから前記半導体基板の表面への前記高速原子ビームの照射と、を同時に行う、複合基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LN(LiNbO:ニオブ酸リチウム)やLT(LiTaO:タンタル酸リチウム)等の圧電材料を用いて構成された機能性基板と、Si等の半導体材料からなる支持基板とを接合することにより形成され、弾性表面波デバイス等の用途に使用される複合基板が知られている。このような複合基板の作製方法として、機能性基板と支持基板の各接合面に対して高速原子ビーム(FAB:Fast Atom Beam)を照射することで活性化処理を行った後、これらの接合面同士を直接接合する方法が知られている。しかしながら、この方法では基板同士の接合強度が低く、接合後の加工工程で剥がれるおそれがあるという課題があった。
【0003】
そこで、上記課題を解決するものとして、特許文献1の技術が知られている。特許文献1には、支持基板に高速原子ビームを照射して支持基板の半導体材料をスパッタリングすることにより、圧電基板に半導体材料を非晶質化させた非晶質半導体材料からなる接合層を形成し、この接合層を介して圧電基板と支持基板とを圧接することで、複合基板を製造する方法が記載されている。この方法により、圧電基板と支持基板の接合強度を向上し、接合後の剥離を防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第7152711号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
圧電基板等の機能性基板と支持基板とが接合された複合基板では、生産性の観点からスパッタリング時間はなるべく短い方が好ましく、スパッタリング時間を短縮すると、結果的に接合層の厚みが薄くなる。その一方で、特許文献1のような従来の接合方法において所望の接合強度を得るためには、接合層にある程度の厚みが必要である。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、機能性基板と支持基板とが接合層を介して接合された複合基板において、接合層の厚みが薄くても十分な接合強度を得ることが可能な複合基板およびその製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様による複合基板は、機能性材料からなる機能性基板と、半導体材料からなり、前記機能性基板と接合されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を有し、前記機能性基板は、前記機能性材料の結晶体からなる第1機能層と、前記第1機能層よりも前記支持基板に近い側に配置され、希ガスを含んだ前記機能性材料の非晶質体からなる第2機能層と、を有し、前記支持基板は、第1支持層と、前記第1支持層よりも前記機能性基板に近い側に配置され、前記希ガスを含んだ前記半導体材料の非晶質体からなる第2支持層と、前記機能性基板に接しており、前記半導体材料の非晶質体からなる接合層と、を有し、前記接合層は前記希ガスを含み、前記接合層における前記希ガスの含有率は、前記第2支持層における前記希ガスの含有率よりも少ない
本発明の第2の態様による複合基板は、機能性材料からなる機能性基板と、半導体材料からなり、前記機能性基板と接合されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を有し、前記機能性基板は、絶縁材料からなる絶縁層を介して前記支持基板と接合され、前記支持基板は、第1支持層と、前記第1支持層よりも前記機能性基板に近い側に配置され、希ガスを含んだ前記半導体材料の非晶質体からなる第2支持層と、前記絶縁層に接しており、前記半導体材料の非晶質体からなる接合層と、を有し、前記絶縁層は、前記絶縁材料からなる第1絶縁層と、前記絶縁材料の非晶質体で構成されて前記接合層と接する第2絶縁層と、を有し、前記接合層は前記希ガスを含み、前記接合層における前記希ガスの含有率は、前記第2支持層における前記希ガスの含有率よりも少ない。
本発明の第3の態様による複合基板の製造方法は、機能性材料からなる機能性基板と、半導体材料から構成されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を含んで構成される複合基板の製造方法であって、前記機能性基板の表面と、前記半導体材料からなる半導体基板の表面とに、それぞれの照射時間の少なくとも一部が重複するように高速原子ビームをそれぞれ照射する活性化工程と、前記活性化工程に続いて実施され、前記機能性基板の表面に対する前記高速原子ビームの照射を停止した後、前記半導体基板の表面に対する前記高速原子ビームの照射を継続して、スパッタリングされた前記半導体材料の非晶質体からなるスパッタ膜を前記機能性基板の表面に形成するスパッタリング工程と、前記スパッタ膜が形成された前記機能性基板と前記半導体基板とを接合して接合体を得る接合工程と、を含む。
本発明の第4の態様による複合基板の製造方法は、機能性材料からなる機能性基板と、半導体材料から構成されて前記機能性基板を支持する支持基板と、を含んで構成される複合基板の製造方法であって、前記機能性基板の表面に絶縁材料からなる絶縁層を形成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層の表面と、前記半導体材料からなる半導体基板の表面とに、それぞれの照射時間の少なくとも一部が重複するように高速原子ビームをそれぞれ照射する活性化工程と、前記活性化工程に続いて実施され、前記絶縁層の表面に対する前記高速原子ビームの照射を停止した後、前記半導体基板の表面に対する前記高速原子ビームの照射を継続して、前記絶縁層の表面に前記半導体材料をスパッタリングするスパッタリング工程と、前記スパッタリング工程により前記半導体材料がスパッタリングされた前記絶縁層を介して、前記機能性基板と前記半導体基板とを接合して接合体を得る接合工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機能性基板と支持基板とが接合層を介して接合された複合基板において、接合層の厚みが薄くても十分な接合強度を得ることが可能な複合基板およびその製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る複合基板の製造工程の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る複合基板の製造工程の一例を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る複合基板の製造工程の一例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る複合基板の製造工程の一例を示す図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。
図9】実施例1と比較例の観察写真を示す図である。
図10】実施例1と実施例3のEDX分析結果を示す表である。
図11】複合基板におけるFAB照射時間、接合層の厚みおよび接合強度の関係を示す表である。
図12】複合基板における機能性基板および半導体基板へのFAB照射時間と接合強度の関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の形態に比べ、各部の幅、厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。本実施形態における複合基板100は、例えば光導波路を構成する光学素子や、表面弾性波(SAW)フィルタを構成する圧電素子、各種半導体素子など、様々な用途に利用されるものであり、圧電材料や半導体材料などの機能性材料からなる機能性基板10が支持基板30に接合された構造を有している。
【0012】
機能性基板10の材料には、例えばLN(LiNbO:ニオブ酸リチウム)やLT(LiTaO:タンタル酸リチウム)、水晶、AlN(窒化アルミニウム)、PZT(Pb(Zr,Ti)O:チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電材料が用いられる。なお、機能性基板10の材料は複合基板100の用途に応じて任意に選択可能であり、例えば圧電材料以外に、SiC、InP、GaN、GaP、ダイヤモンドなどの半導体材料や、ニオブ酸リチウム-タンタル酸リチウム、KTP(チタン酸リン酸カリウム)などの電気光学効果を有する材料、石英やガラスなどを用いて機能性基板10を構成してもよい。これ以外にも、複合基板100の用途に応じて、様々な機能性材料からなる機能性基板10を用いることができる。
【0013】
支持基板30は、機能性基板10を支持する。支持基板30としては、任意の適切な基板が用いられ得る。支持基板30は、単結晶体で構成されてもよく、多結晶体で構成されてもよい。機能性基板10と支持基板30は互いに直接接合されている。
【0014】
支持基板30を構成する材料には、例えばSi、Ge、SiC、InP、GaN、サファイアなどの半導体材料を用いることができる。あるいは、Si(1-x)Ox(ただし0.008≦x≦0.408)やSOI(Silicon on Insulator)などを用いて支持基板30を構成してもよい。支持基板30の厚みとしては、例えば0.2~1mmであるが、これ以外にも任意の適切な厚みが採用され得る。
【0015】
なお図示しないが、複合基板100は、任意の層をさらに有していてもよい。このような層の種類・機能、数、組み合わせ、配置等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0016】
複合基板100は、任意の適切な形状で製造され得る。1つの実施形態においては、いわゆるウェハの形態で複合基板100が製造され得る。また、複合基板100のサイズは、例えばウェハ(基板)の直径が50mm~150mmなど、目的に応じて適切に設定され得る。
【0017】
図2および図3は、本発明の第1の実施形態に係る複合基板の製造工程の一例を示す図である。
【0018】
図2(a)は、複合基板100の製造工程のうち準備工程を示している。この工程では、所定厚みの機能性材料からなる機能性基板10を用意する。
【0019】
図2(b)は、複合基板100の製造工程のうち活性化工程を示している。この工程では、例えば所定厚みの半導体材料からなる半導体基板30Aを用意し、図2(a)の準備工程で用意した機能性基板10の表面と、半導体基板30Aとに対して、それぞれの表面にAr等の希ガスを原子種に用いた高速原子ビーム(以下、FABと称する)を所定時間照射することで活性化処理を行う。このときのFABの照射時間は、例えば15秒~30秒程度が好ましい。
【0020】
図2(c)は、複合基板100の製造工程のうちスパッタリング工程を示している。この工程では、図2(b)の活性化工程で機能性基板10と半導体基板30Aにそれぞれ照射されたFABのうち、機能性基板10側のFAB照射を停止し、半導体基板30A側のFAB照射をさらに所定時間継続する。このときのFABの照射時間は、例えば30秒~600秒程度が好ましい。これにより、半導体基板30Aを構成する半導体材料をスパッタして機能性基板10の表面に付着させ、機能性基板10側に半導体基板30Aと同じ半導体材料からなるスパッタ膜30Bを形成する。なお後述のように、製造後の複合基板100における接合層33(図3(f)参照)の厚みは0.3nm以上3nm以下であることが好ましく、そのためスパッタリング工程では、0.3nm以上3nm以下の厚みでスパッタ膜30Bを形成することが好ましい。
【0021】
図3(d)は、複合基板100の製造工程のうち接合工程を示している。この工程では、図2(c)のスパッタリング工程でスパッタ膜30Bが形成された機能性基板10と半導体基板30Aとを接合する。これにより、半導体基板30Aとスパッタ膜30Bが一体化して支持基板30が形成され、機能性基板10と支持基板30の接合体が得られる。なお図3(d)以降では、図2(a)~図2(c)と比べて、機能性基板10と半導体基板30A(支持基板30)との位置関係を上下逆に図示している。
【0022】
図3(e)は、図3(d)の接合工程後に得られる接合体を示している。図3(d)の接合工程により、上記のように半導体基板30Aとスパッタ膜30Bが一体化することで、これらの接合界面40を内部に有する支持基板30が形成され、図3(e)のような接合体が得られる。
【0023】
図3(e)の接合体において、機能性基板10には、主に機能性材料の結晶体で構成される第1機能層11と、第1機能層11よりも支持基板30側に配置された第2機能層12と、が形成される。第2機能層12は、主に機能性材料の非晶質体で構成され、図2(b)の活性化工程でFABとして照射されたAr等の希ガス原子を含む層である。一方、支持基板30には、接合界面40に接しない第1支持層31と、第1支持層31よりも機能性基板10側に配置されて接合界面40に接する第2支持層32と、第2支持層32よりも機能性基板10側に配置されて接合界面40に接する接合層33と、が形成される。第2支持層32は、主に半導体材料の非晶質体で構成され、図2(b)の活性化工程や図2(c)のスパッタリング工程でFABとして照射されたAr等の希ガス原子を含む層である。接合層33は、接合前のスパッタ膜30Bに相当し、機能性基板10との接合部分を形成する層である。
【0024】
なお、機能性基板10における第2機能層12や、支持基板30における第2支持層32および接合層33は、図2(c)のスパッタリング工程でこれらの層に混入した他の原子種、例えば、半導体基板30Aの固定に用いられる治具や台座部分を構成するFe原子やAl原子などを含有する場合がある。これらの層の詳細については後述する。
【0025】
図3(f)は、複合基板100の製造工程のうち薄板加工工程を示している。この工程では、図3(e)に示した接合体に対して、機能性基板10を所定の厚みまで研磨して薄板化する。例えば、研削加工、CMP(Chemical Mechanical Polish)加工、ガスクラスターイオンビームを用いた表面平坦化加工などを用いて、機能性基板10を研磨して薄板化することができる。
【0026】
以上の各工程により、図1に示した構造の複合基板100が製造される。
【0027】
なお、図3(d)の接合工程と図3(f)の薄板加工工程との間に、接合体を所定温度に加熱するアニーリング工程を実施してもよい。このときの加熱温度は、例えば75~250℃程度が好ましく、より好ましくは100~250℃である。これにより、機能性基板10の接合強度を向上することができる。
【0028】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の第2の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。本実施形態における複合基板110は、第1の実施形態で説明した図1の複合基板100に対して、機能性基板10が絶縁層20を介して支持基板30に接合された構造を有している。
【0029】
絶縁材料からなる絶縁層20は、機能性基板10と支持基板30の間に配置される。絶縁層20を構成する絶縁材料には、例えばSi、Ta、Al、Nb、Hf等の酸化物または窒化物を用いることができ、好ましくは、酸化ケイ素(silicon oxide)である。
【0030】
絶縁層20は、任意の適切な方法により成膜され得る。例えば、スパッタリング、真空蒸着、イオンビームアシスト蒸着(IAD)等の物理蒸着、化学蒸着、原子層堆積(ALD)法により成膜され得る。絶縁層20の成膜は、例えば、室温(25℃)~300℃で行うことができる。
【0031】
なお本実施形態でも前述の第1の実施形態と同様に、複合基板110は、任意の層をさらに有していてもよい。このような層の種類・機能、数、組み合わせ、配置等は、目的に応じて適切に設定され得る。また、複合基板110は、目的に応じて任意の適切な形状で製造され得る。
【0032】
図5および図6は、本発明の第2の実施形態に係る複合基板の製造工程の一例を示す図である。
【0033】
図5(a)は、複合基板110の製造工程のうち準備工程を示している。この工程では、第1の実施形態で説明した図2(a)の工程と同様に、所定厚みの機能性基板10を用意する。
【0034】
図5(b)は、複合基板110の製造工程のうち絶縁層形成工程を示している。この工程では、図5(a)の準備工程で用意した機能性基板10の表面上に、例えば所定厚みで酸化ケイ素の非晶質体を成膜することで、絶縁層20が形成される。
【0035】
図5(c)は、複合基板110の製造工程のうち活性化工程を示している。この工程では、例えば所定厚みの半導体材料からなる半導体基板30Aを用意し、図5(b)の絶縁層形成工程で機能性基板10の上に形成された絶縁層20の表面と、半導体基板30Aとに対して、第1の実施形態で説明した図2(b)の工程と同様に、それぞれの表面にAr等の希ガスを原子種に用いたFABを所定時間照射することで活性化処理を行う。
【0036】
図5(d)は、複合基板110の製造工程のうちスパッタリング工程を示している。この工程では、第1の実施形態で説明した図2(c)の工程と同様に、図5(c)の活性化工程で機能性基板10と半導体基板30Aにそれぞれ照射されたFABのうち、機能性基板10側(絶縁層20側)のFAB照射を停止し、半導体基板30A側のFAB照射をさらに所定時間継続する。これにより、半導体基板30Aを構成する半導体材料をスパッタして機能性基板10の上に形成された絶縁層20の表面に付着させ、機能性基板10側(絶縁層20側)に半導体基板30Aと同じ半導体材料からなるスパッタ膜30Bを形成する。なお第1の実施形態と同様に、製造後の複合基板110における接合層33(図6(g)参照)の厚みは0.3nm以上3nm以下であることが好ましく、そのためスパッタリング工程では、0.3nm以上3nm以下の厚みでスパッタ膜30Bを形成することが好ましい。
【0037】
図6(e)は、複合基板110の製造工程のうち接合工程を示している。この工程では、第1の実施形態で説明した図3(d)の工程と同様に、図5(d)のスパッタリング工程で絶縁層20の上にスパッタ膜30Bが形成された機能性基板10と半導体基板30Aとを接合する。これにより、半導体基板30Aとスパッタ膜30Bが接合されて一体化して支持基板30が形成され、機能性基板10、絶縁層20および支持基板30の接合体が得られる。なお図6(e)以降では、図5(a)~図5(d)と比べて、機能性基板10と半導体基板30A(支持基板30)との位置関係を上下逆に図示している。
【0038】
図6(f)は、図6(e)の接合工程後に得られる接合体を示している。図6(e)の接合工程により、上記のように半導体基板30Aとスパッタ膜30Bが一体化することで、これらの接合界面40を内部に有する支持基板30が形成され、図6(f)のような接合体が得られる。
【0039】
図6(f)の接合体において、絶縁層20には、主に絶縁材料で構成される第1絶縁層21と、第1絶縁層21よりも支持基板30側に配置された第2絶縁層22と、が形成される。第2絶縁層22は、主に絶縁材料の非晶質体で構成され、図5(c)の活性化工程でFABとして照射されたAr等の希ガス原子を含む層である。一方、支持基板30には、第1の実施形態と同様に、接合界面40に接しない第1支持層31と、第1支持層31よりも機能性基板10側に配置されて接合界面40に接する第2支持層32と、第2支持層32よりも機能性基板10側に配置されて接合界面40に接する接合層33と、が形成される。
【0040】
図6(g)は、複合基板110の製造工程のうち薄板加工工程を示している。この工程では、第1の実施形態で説明した図3(f)の工程と同様に、図6(f)に示した接合体に対して、機能性基板10を所定の厚みまで研磨して薄板化する。
【0041】
以上の各工程により、図4に示した構造の複合基板110が製造される。
【0042】
なお、本実施形態でも第1の実施形態と同様に、図6(e)の接合工程と図6(g)の薄板加工工程との間に、接合体を所定温度に加熱するアニーリング工程を実施してもよい。
【0043】
(第3の実施形態)
図7は、本発明の第3の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。本実施形態における複合基板120は、第1の実施形態で説明した図1の複合基板100と同様に、機能性基板10が支持基板30に直接接合された構造を有している。
【0044】
本実施形態の複合基板120では、機能性基板10の一部を光導波路として使用するために、機能性基板10にリッジ部50が設けられている。リッジ部50とは、機能性基板10の一部に段差を設けることで、他の部分よりも厚みが大きくなるよう形成された部分である。このリッジ部50は、例えば第1の実施形態で説明した図3(f)の薄板加工工程の後に、機能性基板10の一部に段差を形成する加工(リッジ加工)を実施することによって設けられる。例えば、レーザー光を用いた加工やRIE(Reactive Ion Etching)等のドライエッチングにより、機能性基板10のリッジ加工を実現できる。なお、その後さらに他の工程を実施してもよい。これにより、本実施形態においても支持基板30の内部に接合界面40が含まれることとなる。
【0045】
(第4の実施形態)
図8は、本発明の第4の実施形態に係る複合基板の概略構成を示す模式的な断面図である。本実施形態における複合基板130は、第2の実施形態で説明した図4の複合基板110と同様に、機能性基板10が絶縁層20を介して支持基板30に接合された構造を有している。
【0046】
なお、機能性基板10の材料や形状は、第3の実施形態で説明したものと同様である。すなわち、本実施形態の複合基板130においても、機能性基板10の一部を光導波路として使用するために、機能性基板10にリッジ部50が設けられている。このリッジ部50は、例えば第2の実施形態で説明した図6(g)の薄板加工工程の後に、機能性基板10の一部に段差を形成する加工(リッジ加工)を実施することによって設けられる。これにより、本実施形態においても支持基板30の内部に接合界面40が含まれることとなる。
【実施例
【0047】
以下、本発明による複合基板の構造を検証するための実施例を具体的に説明する。なお、特に明記しない限り、下記の手順は室温にて行った。
【0048】
(実施例1)
図2および図3を参照しつつ説明した製造工程に従って、接合体を作製した。具体的には、直径が4インチで厚みが500μmのLT基板とシリコン基板を用意し、LT基板を機能性基板10、シリコン基板を半導体基板30Aとしてそれぞれ使用した。
【0049】
そして、機能性基板10と半導体基板30Aの表面をそれぞれ洗浄した後、上下に向けてFABガンがそれぞれ設置された真空チャンバー内において、これらの基板が各FABガンの照射範囲内にそれぞれ位置し、かつ、両基板の表面同士が互いに対向する向きとなるように、機能性基板10および半導体基板30Aを配置した。この状態で真空チャンバー内を10-6Pa台まで真空引きし、各FABガンから機能性基板10と半導体基板30Aの表面に向けて、Arガスを用いたFAB(加速電圧1kV、Ar流量27sccm)を同時に15秒間照射した。
【0050】
その後、機能性基板10側のFAB照射を停止する一方、半導体基板30A側のFAB照射をさらに90秒間(合計で105秒間)継続した。なお、このとき機能性基板10側のFAB照射の停止前後で真空チャンバーの内圧が変化しないようにするため、機能性基板10側のFABガンへのArガスの供給を継続した状態で、当該FABガンから機能性基板10の表面へのFAB照射を停止するようにした。その結果、機能性基板10の表面にスパッタ膜30Bが形成された。
【0051】
次いで、スパッタ膜30Bが形成された機能性基板10と半導体基板30Aとを直接接合した。具体的には、両基板のビーム照射面を重ね合わせ、常温において10000Nで2分間加圧して両基板を接合し、接合体を得た。これにより、図1に示した構造の複合基板100を得た。
【0052】
こうして得られた複合基板100に対して、クラックオープニング法で接合強度を評価したところ、1.45J/mであり、十分な接合強度を有していた。
【0053】
(実施例2)
実施例1と同様の機能性基板10および半導体基板30Aを真空チャンバー内にそれぞれ配置し、真空チャンバー内を10-6Pa台まで真空引きした状態で、各FABガンから機能性基板10と半導体基板30Aの表面に向けて、実施例1と同様の条件にて、Arガスを用いたFABを同時に30秒間照射した。
【0054】
その後、機能性基板10側のFAB照射を停止する一方、半導体基板30A側のFAB照射をさらに90秒間(合計で120秒間)継続した。なお、このとき実施例1と同様に、機能性基板10側のFAB照射の停止前後で真空チャンバーの内圧が変化しないようにするため、機能性基板10側のFABガンへのArガスの供給を継続した状態で、当該FABガンから機能性基板10の表面へのFAB照射を停止するようにした。その結果、機能性基板10の表面にスパッタ膜30Bが形成された。
【0055】
次いで、実施例1と同様に、スパッタ膜30Bが形成された機能性基板10と半導体基板30Aとを直接接合することで、図1に示した構造の複合基板100を得た。
【0056】
こうして得られた複合基板100に対して、クラックオープニング法で接合強度を評価したところ、1.63J/mであり、実施例1よりも接合強度が向上していた。
【0057】
(実施例3)
図5および図6を参照しつつ説明した製造工程に従って、接合体を作製した。具体的には、直径が4インチで厚みが500μmのLT基板とシリコン基板を用意し、LT基板を機能性基板10、シリコン基板を半導体基板30Aとしてそれぞれ使用した。そして、機能性基板10の表面に酸化ケイ素をスパッタリングし、酸化ケイ素膜からなる絶縁層20を形成した。
【0058】
その後は実施例1と同様に、絶縁層20が形成された機能性基板10と半導体基板30Aの表面をそれぞれ洗浄した後、上下に向けてFABガンがそれぞれ設置された真空チャンバー内において、これらの基板が各FABガンの照射範囲内にそれぞれ位置し、かつ、機能性基板10の酸化ケイ素面(絶縁層20側の表面)と半導体基板30Aの表面とが互いに対向する向きとなるように、機能性基板10および半導体基板30Aを配置した。この状態で真空チャンバー内を10-6Pa台まで真空引きし、各FABガンから機能性基板10と半導体基板30Aの表面に向けて、実施例1と同様の条件にて、Arガスを用いたFABを同時に15秒間照射した。
【0059】
その後、機能性基板10側のFAB照射を停止する一方、半導体基板30A側のFAB照射をさらに285秒間(合計で300秒間)継続した。なお、このとき実施例1,2と同様に、機能性基板10側のFAB照射の停止前後で真空チャンバーの内圧が変化しないようにするため、機能性基板10側のFABガンへのArガスの供給を継続した状態で、当該FABガンから機能性基板10の表面へのFAB照射を停止するようにした。その結果、機能性基板10において絶縁層20の表面にスパッタ膜30Bが形成された。
【0060】
次いで、実施例1,2と同様に、絶縁層20の表面にスパッタ膜30Bが形成された機能性基板10と半導体基板30Aとを直接接合することで、図4に示した構造の複合基板110を得た。
【0061】
こうして得られた複合基板110に対して、クラックオープニング法で接合強度を評価したところ、2.01J/mであり、実施例1,2よりもさらに接合強度が向上していた。
【0062】
なお、上記実施例1~3では、FABガンから機能性基板10および半導体基板30AへのFAB照射を所定時間行った後、機能性基板10側のFAB照射を先に止めることとした。これにより、スパッタ膜30Bの形成に要する時間を、機能性基板10を冷却する時間に充てることが可能となるため、接合後の複合基板100,110における反りの影響を小さくすることができる。特に、機能性基板10が半導体基板30Aよりも大きな熱膨張係数を有する場合には、機能性基板10側のFAB照射を先に止めることで、接合後の反りの軽減に関してより高い効果を発揮することが可能となる。
【0063】
(比較例)
本発明の効果を確認するために、比較例として、実施例1と同様の機能性基板10および半導体基板30Aを真空チャンバー内にそれぞれ配置し、真空チャンバー内を10-6Pa台まで真空引きした状態で、機能性基板10側のFAB照射を行わずに、半導体基板30A側のFAB照射のみを90秒間実施した。このときの半導体基板30A側のFAB照射条件は、実施例1と同様とした。その結果、機能性基板10において絶縁層20の表面にスパッタ膜30Bが形成された。
【0064】
次いで、実施例1~3と同様に、スパッタ膜30Bが形成された機能性基板10と半導体基板30Aとを直接接合することで、図1に示した構造の複合基板100を得た。
【0065】
こうして得られた複合基板100に対して、クラックオープニング法で接合強度を評価したところ、0.74J/mであり、十分な接合強度が得られなかった。
【0066】
(積層構造の確認)
実施例1と比較例でそれぞれ作製した複合基板100の接合界面40を含む断面に対して、透過電子顕微鏡(TEM)観察を行うことにより、複合基板100の積層構造を確認した。図9(a)は実施例1の観察写真を示しており、図9(b)は比較例の観察写真を示している。
【0067】
図9(a)に示す実施例1の観察写真から、機能性基板10の内部には2つの層が形成されていることが分かる。これらの層を支持基板30に遠い側から順に、第1機能層11、第2機能層12とする。また、支持基板30の内部には3つの層が形成されていることが分かる。これらの層を機能性基板10に遠い側から順に、第1支持層31、第2支持層32、接合層33とする。第2機能層12と接合層33は互いに接しており、第2支持層32と接合層33の間には、前述の接合工程で形成された接合界面40が存在している。すなわち、接合工程において、接合前の半導体基板30Aにおける第2機能層12の表面と、接合前の機能性基板10に形成されたスパッタ膜30Bの表面とが互いに接合されることで、スパッタ膜30Bが接合層33となり、接合界面40を支持基板30の内部に有する機能性基板10と支持基板30の接合体が形成される。
【0068】
図9(a)の観察写真から、LTの結晶体からなる第1機能層11に対して、第2機能層12は結晶構造を有しておらず、LTの非晶質体により構成されていることが分かる。すなわち実施例1では、接合前の機能性基板10において活性化工程でFABが照射された表面から所定深さまでの部分に相当する第2機能層12は、機能性基板10の材料であるLTが非晶質化した層として形成されていることが分かる。
【0069】
同様に、図9(a)の観察写真から、Siの結晶体からなる第1支持層31に対して、第2支持層32や接合層33では結晶構造を有しておらず、Siの非晶質体により構成されていることが分かる。すなわち実施例1では、接合前の半導体基板30Aにおいて活性化工程およびスパッタリング工程でFABが照射された表面から所定深さまでの部分に相当する第2支持層32と、スパッタリング工程で機能性基板10の表面に形成されたスパッタ膜30Bに相当する接合層33とは、支持基板30の材料であるシリコンが非晶質化した層としてそれぞれ形成されていることが分かる。
【0070】
一方、図9(b)に示す比較例の観察写真では、機能性基板10が結晶構造を有する第1機能層11のみで構成されており、実施例1のような第2機能層12が機能性基板10に形成されていない。すなわち比較例では、接合前の機能性基板10には活性化工程においてFABが照射されないため、LTの非晶質膜からなる第2機能層12が形成されておらず、これによって実施例1よりも接合強度が低くなることが分かる。
【0071】
なお、前述のように実施例3では、接合前の機能性基板10の表面に酸化ケイ素膜からなる絶縁層20を形成し、この絶縁層20の表面を活性化した後にスパッタ膜30Bを形成して、機能性基板10と半導体基板30Aとを接合するようにした。そのため、実施例3の複合基板110では、図9(a)の第1機能層11および第2機能層12にそれぞれ相当する2つの層が、機能性基板10ではなく絶縁層20に形成されることになる。すなわち実施例3では、絶縁層20において、支持基板30に遠い側に位置する第1絶縁層21と、接合前の活性化工程でFABが照射された表面から所定深さまでの部分に相当する第2絶縁層22とが形成される。
【0072】
(構造解析)
実施例1で作製した複合基板100の接合界面40を含む断面において、前述の第1機能層11、第2機能層12、第1支持層31、第2支持層32および接合層33の各層に対してEDX分析を行うことにより、複合基板100の構造分析を実施した。また同様に、実施例3で作製した複合基板110の接合界面40を含む断面において、前述の第1絶縁層21、第2絶縁層22、第1支持層31、第2支持層32および接合層33の各層に対してEDX分析を行うことにより、複合基板110の構造分析を実施した。
【0073】
図10(a)の表は、実施例1における第1機能層11、第2機能層12、第1支持層31、第2支持層32および接合層33のそれぞれに対するEDX分析結果から得られた元素成分の割合を表している。また、第2機能層12、第2支持層32および接合層33については、各層の厚みの測定結果を併記している。
【0074】
図10(a)の表から、FAB照射に用いられた希ガスであるArは、第1機能層11や第1支持層31に比べて、第2機能層12や第2支持層32により多く含まれている。またその含有率は、第2機能層12よりも第2支持層32の方が高い。これらの結果から、第2機能層12と第2支持層32には活性化工程やスパッタリング工程でそれぞれ照射されたFABに起因するArが含まれており、第2機能層12よりも第2支持層32の方がFABの照射時間が長いため、第2機能層12により多くのArが含まれていることが分かる。なお図10(a)の表では、第1機能層11や第1支持層31が少量のArを含んでいるが、含まない場合もあり得る。
【0075】
一方、図10(a)の表において、接合層33に含まれるArの含有率は、第2機能層12や第2支持層32よりも低い。これにより、スパッタリング工程でFABとして照射されたArは、スパッタ膜30Bに相当する接合層33にはあまり含まれていないことが分かる。
【0076】
また図10(a)の表から、接合層33ではAlが他の層よりも多く含まれていることが分かる。これは、スパッタリング工程においてFABが半導体基板30Aだけではなく、半導体基板30Aを固定する治具や台座部分にも一部照射され、これらの構成成分が接合層33に混入したためと考えられる。
【0077】
図10(b)の表は、実施例3における第1絶縁層21、第2絶縁層22、第1支持層31、第2支持層32および接合層33のそれぞれに対するEDX分析結果から得られた元素成分の割合を表している。また、第2支持層32および接合層33については、各層の厚みの測定結果を併記している。
【0078】
なお、実施例3の絶縁層20では、実施例1の機能性基板10とは異なり、第1絶縁層21と第2絶縁層22はいずれも酸化ケイ素の非晶質体で構成されているため、TEMの観察写真を見ても第1絶縁層21と第2絶縁層22の境界が判別しづらい。したがって、図10(b)の表には第2絶縁層22の厚みが記載されていない。しかしながら、実施例3の絶縁層20でも実施例1の機能性基板10と同様に、接合層33の近傍(例えば接合層33との境界面から数nm程度の範囲)において、第2機能層12と同じようにArを多く含む非晶質体からなる第2絶縁層22が存在していると考えられる。したがって図10(b)の表では、接合層33との境界面付近での絶縁層20に対するEDX分析結果を、第2絶縁層22のEDX分析結果として示している。
【0079】
図10(b)の表でも図10(a)の表と同様に、FAB照射に用いられた希ガスであるArは、第1絶縁層21や第1支持層31に比べて、第2絶縁層22や第2支持層32により多く含まれている。またその含有率は、第2絶縁層22よりも第2支持層32の方が高い。これらの結果から、実施例1と同様に実施例3でも、第2絶縁層22と第2支持層32には活性化工程やスパッタリング工程でそれぞれ照射されたFABに起因するArが含まれており、第2絶縁層22よりも第2支持層32の方がFABの照射時間が長いため、第2絶縁層22により多くのArが含まれていることが分かる。なお、図10(b)の表では、第1絶縁層21や第1支持層31が少量のArを含んでいるが、含まない場合もあり得る。
【0080】
一方、図10(b)の表において、接合層33に含まれるArの含有率は、第2絶縁層22や第2支持層32よりも低い。これにより、実施例1と同様に実施例3でも、スパッタリング工程でFABとして照射されたArは、スパッタ膜30Bに相当する接合層33にはあまり含まれていないことが分かる。
【0081】
また図10(b)の表でも図10(a)の表と同様に、前述のような理由から、接合層33ではAlが他の層よりも多く含まれていることが分かる。
【0082】
(接合層の厚みと接合強度の関係)
実施例3で説明した製造時のパラメータのうち、スパッタリング工程での半導体基板30AへのFAB照射時間を変化させ、それ以外のパラメータを実施例3と共通にしてそれぞれ作製した複数の複合基板110を用いて、支持基板30における接合層33の厚みと接合強度との関係を測定した。
【0083】
図11は、複合基板110におけるFAB照射時間、接合層33の厚みおよび接合強度の関係を示す表である。図11の表では、活性化工程での機能性基板10および半導体基板30AへのFAB照射時間を15秒に固定し、スパッタリング工程での半導体基板30AへのFAB照射時間を50秒、90秒、195秒、285秒、585秒と変化させた場合における、活性化工程およびスパッタリング工程を合わせた半導体基板30AへのFAB照射時間と、製作された各複合基板110の接合層33の厚みおよび接合強度とを示している。なお、スパッタリング工程でのFAB照射時間を285秒とした場合は、前述の実施例3に相当する。
【0084】
図11の表から、接合層33の厚みが0.3nm以上であれば接合強度が1J/m以上となり、十分な接合強度が得られることが分かる。すなわち、前述の特許文献1に記載された複合基板では、1J/m以上の接合強度を得るためには、接合層に少なくとも2nm程度の厚みが必要であったのに対して、本発明を適用した複合基板110では、接合層33の厚みが0.3nm以上であれば、特許文献1に記載の複合基板と同等以上の接合強度を得られることが分かる。この点は、他の複合基板100,120,130についても同様である。
【0085】
なお、スパッタリング工程での製造時間の短縮化や製品の小型化等の観点から、製造後の複合基板100~130において十分な接合強度が得られる限り、接合層33の厚みはできるだけ薄くすることが好ましい。例えば、接合層33の最大厚みを3nmとすれば、上記の結果により、複合基板100~130における接合層33の厚みを0.3nm以上3nm以下とすることができる。
【0086】
(活性化工程でのFAB照射時間と接合強度の関係)
実施例1,2で説明した製造時のパラメータのうち、活性化工程での機能性基板10へのFAB照射時間を変化させ、それ以外のパラメータを実施例1,2と共通にしてそれぞれ作製した複数の複合基板100を用いて、支持基板30における接合層33の厚みと接合強度との関係を測定した。
【0087】
図12は、複合基板100における機能性基板10および半導体基板30AへのFAB照射時間と接合強度の関係を示す表である。図12の表では、活性化工程での機能性基板10および半導体基板30AへのFAB照射時間を15秒、30秒、300秒、510秒と変化させ、スパッタリング工程での半導体基板30AへのFAB照射時間を90秒に固定した場合における、活性化工程およびスパッタリング工程を合わせた半導体基板30AへのFAB照射時間と、製作された各複合基板100の接合強度とを示している。なお、スパッタリング工程でのFAB照射時間を15秒、30秒とした場合は、前述の実施例1、実施例2にそれぞれ相当する。
【0088】
図12の表から、活性化工程でのFAB照射時間が300秒以下であれば、接合強度が1J/m以上となり十分な接合強度が得られる一方、活性化工程でのFAB照射時間が300秒を超えると接合強度が低下することが分かる。これは、活性化工程において機能性基板10へのFAB照射時間が長くなるほど、機能性基板10の表面粗さが増大し、この表面粗さがある一定の水準を超えると接合強度の低下につながることが原因と考えられる。
【0089】
なお、図11,12の表でそれぞれ示したFAB照射時間、接合層33の厚みおよび接合強度の値はあくまで一例である。これらの値は、機能性基板10や半導体基板30Aで用いられる機能性材料や半導体材料の種類、FABの電圧や電流、希ガス流量などに応じて変化し得る。そのため、例えばFAB照射時間を調節する代わりに、FABの電圧や電流、希ガス流量などを調節することにより、所望の厚みで接合層33を形成することも可能である。
【0090】
以上説明した本発明の実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0091】
(1)複合基板100~130は、機能性材料からなる機能性基板10と、半導体材料からなり、機能性基板10と接合されて機能性基板10を支持する支持基板30と、を有する。機能性基板10は、第1の層(第1機能層11または第1絶縁層21)と、第1の層よりも支持基板30に近い側に配置され、希ガスを含んだ非晶質体からなる第2の層(第2機能層12または第2絶縁層22)と、を有する。支持基板30は、第1支持層31と、第1支持層31よりも機能性基板10に近い側に配置され、希ガスを含んだ半導体材料の非晶質体からなる第2支持層32と、機能性基板10に接しており、半導体材料の非晶質体からなる接合層33と、を有する。このようにしたので、機能性基板10と支持基板30とが接合層33を介して接合された複合基板100~130において、接合層33の厚みが薄くても十分な接合強度を得ることが可能な複合基板100~130を実現することができる。
【0092】
(2)複合基板100,120において、機能性基板10は、機能性材料の結晶体からなる第1機能層11と、機能性材料の非晶質体で構成されて接合層33と接する第2機能層12と、を有する。この構成において、第1の層は第1機能層11であり、第2の層は第2機能層12である。このようにしたので、機能性基板10と支持基板30を絶縁層20を介さずに直接接合した場合でも、十分な接合強度を得ることが可能な複合基板100,120を実現することができる。
【0093】
(3)複合基板110,130において、機能性基板10は、絶縁材料からなる絶縁層20を介して支持基板30と接合され、絶縁層20は、絶縁材料からなる第1絶縁層21と、絶縁材料の非晶質体で構成されて接合層33と接する第2絶縁層22と、を有する。この構成において、第1の層は第1絶縁層21であり、第2の層は第2絶縁層22である。このようにしたので、機能性基板10と支持基板30を絶縁層20を介して接合した場合でも、十分な接合強度を得ることが可能な複合基板110,130を実現することができる。
【0094】
(4)複合基板100~130における接合層33の厚みは、0.3nm以上3nm以下であることが好ましい。このようにすれば、十分な接合強度を保持しつつ、製造時間の短縮化や製品の小型化を図ることができる。
【0095】
(5)図10(a),(b)に示すように、接合層33はAr等の希ガスを含み、接合層33における希ガスの含有率は、第2支持層32における希ガスの含有率よりも少ない。また、接合層33はAl等の金属元素を含み得る。このようにしたので、半導体基板30Aの表面にFAB照射を行うことで機能性基板10の表面に形成されたスパッタ膜30Bを接合層33として、機能性基板10と半導体基板30Aとを接合し、半導体基板30Aを支持基板30として複合基板100~130を作製することができる。
【0096】
(6)図10(a)に示すように、第1機能層11は、Ar等の希ガスを含むか、または希ガスを含まず、第1機能層11が希ガスを含む場合の第1機能層11における希ガスの含有率は、第2機能層12における希ガスの含有率よりも少ない。また、第2機能層12における希ガスの含有率は、第2支持層32における希ガスの含有率よりも少ない。このようにしたので、接合前の機能性基板10の表面にFAB照射を行うことで機能性基板10の表面を活性化した後、機能性基板10と半導体基板30Aとを接合し、複合基板100,120を作製することができる。
【0097】
(7)図10(b)に示すように、第1絶縁層21は、Ar等の希ガスを含むか、または希ガスを含まず、第1絶縁層21が希ガスを含む場合の第1絶縁層21における希ガスの含有率は、第2絶縁層22における希ガスの含有率よりも少ない。また、第2絶縁層22における希ガスの含有率は、第2支持層32における希ガスの含有率よりも少ない。このようにしたので、絶縁層20が形成された接合前の機能性基板10の表面にFAB照射を行うことで絶縁層20の表面を活性化した後、絶縁層20と半導体基板30Aとを接合し、複合基板110,130を作製することができる。
【0098】
(8)図10(a),(b)に示すように、第1支持層31は、Ar等の希ガスを含むか、または希ガスを含まず、第1支持層31が希ガスを含む場合の第1支持層31における希ガスの含有率は、第2支持層32における希ガスの含有率よりも少ない。このようにしたので、半導体基板30Aの表面にFAB照射を行った後に機能性基板10と半導体基板30Aとを接合し、半導体基板30Aを支持基板30として複合基板100~130を作製することができる。
【0099】
(9)機能性材料からなる機能性基板10と、半導体材料から構成されて機能性基板10を支持する支持基板30と、を含んで構成される複合基板100,120の製造方法は、機能性基板10の表面と、半導体材料からなる半導体基板30Aの表面とに、それぞれの照射時間の少なくとも一部が重複するようにFABをそれぞれ照射する活性化工程(図2(b))と、活性化工程に続いて実施され、機能性基板10の表面に対するFABの照射を停止した後、半導体基板30Aの表面に対するFABの照射を継続して、機能性基板10の表面に半導体材料をスパッタリングするスパッタリング工程(図2(c))と、スパッタリング工程により半導体材料がスパッタリングされた機能性基板10と半導体基板30Aとを接合して接合体を得る接合工程(図3(d))と、を含む。このようにすれば、半導体基板30Aとスパッタ膜30Bとを一体化することで支持基板30を形成し、複合基板100,120を作製することができる。
【0100】
(10)機能性材料からなる機能性基板10と、半導体材料から構成されて機能性基板10を支持する支持基板30と、を含んで構成される複合基板110,130の製造方法は、機能性基板10の表面に絶縁材料からなる絶縁層20を形成する絶縁層形成工程(図5(b))と、絶縁層20の表面と、半導体材料からなる半導体基板30Aの表面とに、それぞれの照射時間の少なくとも一部が重複するようにFABをそれぞれ照射する活性化工程(図5(c))と、活性化工程に続いて実施され、絶縁層20の表面に対するFABの照射を停止した後、半導体基板30Aの表面に対するFABの照射を継続して、絶縁層20の表面に半導体材料をスパッタリングするスパッタリング工程(図5(d))と、スパッタリング工程により半導体材料がスパッタリングされた絶縁層20を介して、機能性基板10と半導体基板30Aとを接合して接合体を得る接合工程(図6(e))と、を含む。このようにすれば、機能性基板10と支持基板30を絶縁層20を介して接合し、複合基板110,130を作製することができる。
【0101】
(11)図2(c)、図5(d)のスパッタリング工程では、0.3nm以上3nm以下の厚みでスパッタ膜30Bを形成することが好ましい。このようにすれば、十分な接合強度を保持しつつ、製造時間の短縮化や製品の小型化が可能な複合基板100~130を作製することができる。
【0102】
(12)機能性基板10および半導体基板30Aは、第1のFABガンおよび第2のFABガンが設置された真空チャンバー内に配置され得る。図2(b)、図5(c)の活性化工程では、第1のFABガンおよび第2のFABガンにAr等の希ガスをそれぞれ供給して、希ガスによるFABを、第1のFABガンから機能性基板10または絶縁層20の表面に照射するとともに、第2のFABガンから半導体基板30Aの表面に照射し得る。また、図2(c)、図5(d)のスパッタリング工程では、第1のFABガンへの希ガスの供給を継続した状態で、第1のFABガンから機能性基板10または絶縁層20の表面へのFABの照射を停止し得る。このようにすれば、機能性基板10および半導体基板30Aに対して活性化工程を適切に実施するとともに、半導体基板30Aに対してスパッタリング工程を適切に実施することができ、その結果、複合基板100~130の作製が可能となる。
【0103】
なお、以上説明した本発明の各実施形態では、第1のFABガンから機能性基板10または絶縁層20の表面へのFABの照射と、第2のFABガンから半導体基板30Aの表面へのFABの照射と、を同時に行っている。これにより、半導体基板30Aの表面に形成されている酸化膜などの不純物が、機能性基板10または絶縁層20の表面に付着してしまうことを抑制できる。しかしながら、本発明はこれに限らない。例えば、先に第1のFABガンから機能性基板10側へのFAB照射を開始し、それより所定時間だけ遅らせて第2のFABガンから半導体基板30A側へのFAB照射を開始して、その後に機能性基板10側のFAB照射を先に止めるという方法を採用してもよい。このようにしても、前述と同様な効果が得られる。
【0104】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。
【0105】
上記の実施形態や変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0106】
10:機能性基板
11:第1機能層
12:第2機能層
20:絶縁層
21:第1絶縁層
22:第2絶縁層
30:支持基板
30A:半導体基板
30B:スパッタ膜
31:第1支持層
32:第2支持層
33:接合層
40:接合界面
50:リッジ部
100,110,120,130:複合基板
【要約】
【課題】機能性基板と支持基板とが接合層を介して接合された複合基板において、接合層の厚みが薄くても十分な接合強度を得ることが可能な複合基板およびその製造方法を実現する。
【解決手段】複合基板100は、機能性材料からなる機能性基板10と、半導体材料からなり、機能性基板10と接合されて機能性基板10を支持する支持基板30と、を有する。機能性基板10は、第1の層と、第1の層よりも支持基板30に近い側に配置され、希ガスを含んだ非晶質体からなる第2の層と、を有する。支持基板30は、第1支持層と、第1支持層よりも機能性基板10に近い側に配置され、希ガスを含んだ半導体材料の非晶質体からなる第2支持層と、機能性基板10に接しており、半導体材料の非晶質体からなる接合層と、を有する。
【選択図】図1
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