(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】積層部品の整列方法および積層セラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20241004BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
H01G13/00 331D
H01G4/30 311Z
H01G4/30 201D
H01G4/30 516
H01G4/30 517
(21)【出願番号】P 2023503857
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2022008563
(87)【国際公開番号】W WO2022186190
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2021032935
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恒
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-284355(JP,A)
【文献】特開2019-175902(JP,A)
【文献】特開2012-134498(JP,A)
【文献】特開2020-017764(JP,A)
【文献】特開2015-084406(JP,A)
【文献】特開2001-150249(JP,A)
【文献】特開2020-141085(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非磁性体材料を含み、水平方向に平行で平坦な支持面を有する支持部材と、非磁性体材料を含み、前記支持部材の上方であって、前記支持面から所定の距離を隔てた位置に有する上方部材との間隙に複数配置された、セラミックグリーンシートと強磁性体層とが交互に積層された直方体形状の積層部品に、磁束線が前記支持面と交差する磁界を作用させて、積層部品の向きを揃え
、向きが揃った複数の積層部品を前記支持部材と前記上方部材とによって挟持した状態で、磁界の作用を停止する、積層部品の整列方法。
【請求項2】
前記間隙に配置された積層部品に振動を付与する、請求項1記載の積層部品の整列方法。
【請求項3】
前記磁界が、間欠性の磁界である、請求項1または2記載の積層部品の整列方法。
【請求項4】
前記磁界が、磁束線の向きが繰り返し反転する磁界である、請求項1~3のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項5】
前記支持部材の下方に位置する第1磁石と前記上方部材の上方に位置する第2磁石とによって前記磁界を発生させる、請求項1~4のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項6】
前記間隙に配置された積層部品を予め発生している磁界中に移動させる、請求項1~5のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項7】
前記間隙に、積層部品に磁界が作用した状態で、向きが揃った複数の積層部品を集合させて部品集合体を形成する、請求項1~6のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項8】
前記上方部材の、前記支持面に対向する部分が弾性材料を含む、請求項1~
7のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項9】
前記上方部材は、網状部材または縦格子状部材である、請求項1~
8のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項10】
前記強磁性体層は、強磁性金属材料と有機バインダとを含み、有機バインダの含有量が、体積比率で強磁性金属材料の1.5倍以下である、請求項1~
9のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項11】
前記強磁性体層は、積層部品の長手方向において不連続部分を有する、請求項1~
10のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1つに記載の積層部品の整列方法を含み、
向きが揃った積層部品の表面に加工処理を行ったのち、積層部品を焼成する、積層セラミック部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層部品の整列方法および積層セラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の積層部品の整列方法は、非磁性体材料を含み、水平方向に平行で平坦な支持面を有する支持部材と、非磁性体材料を含み、前記支持部材の上方であって、前記支持面から所定の距離を隔てた位置に有する上方部材との間隙に複数配置された、セラミックグリーンシートと強磁性体層とが交互に積層された直方体形状の積層部品に、磁束線が前記支持面と交差する磁界を作用させて、積層部品の向きを揃え、向きが揃った複数の積層部品を前記支持部材と前記上方部材とによって挟持した状態で、磁界の作用を停止する。
【0005】
本開示の積層セラミック部品の製造方法は、上記の積層部品の整列方法を含み、向きが揃った積層部品の表面に加工処理を行ったのち、積層部品を焼成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0007】
【
図1】積層セラミックコンデンサの一例の斜視図である。
【
図4】素体前駆体を模式的に表した拡大断面図である。
【
図5A】支持部材上に置かれた素体部品の状態を示している。
【
図5B】支持部材上に置かれた素体部品の状態を示している。
【
図5C】本実施形態の整列方法を説明する概略図である。
【
図5D】本実施形態の整列方法を説明する概略図である。
【
図6】他の実施形態の整列方法を説明する概略図である。
【
図7】部品集合体を形成する様子を示す概略図である。
【
図8】素体部品を固定する様子を示す概略図である。
【
図13A】積層部品の整列方法を示す概略図である。
【
図13B】積層部品の整列方法を示す概略図である。
【
図13C】積層部品の整列方法を示す概略図である。
【
図13D】積層部品の整列方法を示す概略図である。
【
図17】積層部品の他の製造方法を示す概略図である。
【
図18】積層部品の他の製造方法を示す概略図である。
【
図19】積層部品の他の製造方法を示す概略図である。
【
図20A】積層部品の他の整列方法を示す概略図である。
【
図20B】積層部品の他の整列方法を示す概略図である。
【
図21】積層部品の他の製造方法を示す概略図である。
【
図22】積層部品の他の製造方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
近年、電子機器の小型高機能化に伴い、電子機器に搭載される電子部品の小型化が求められている。そのような電子部品の一例として、積層セラミックコンデンサが挙げられる。積層セラミックコンデンサは、一辺の長さが1mm以下である製品が主流となってきている。
【0009】
積層セラミックコンデンサでは、その製造工程において、素体部品の端面または側面を研磨したり、保護層などを付与したりする加工工程があり、この加工工程の前には、複数の素体部品を回転させて被加工面を揃える工程が必要である。例えば、内部電極の引出し電極が幅方向端部に露出する略直方形のチップ部品を凹状に付形されたパレットのポケットに収容し、磁石をパレットの外側で底面に沿って移動させ、チップ部品をポケットの内部で吸引横転することで、チップ部品の向きを揃えている(特許文献1参照)。
【0010】
素体部品が小型化するほど被加工面を揃えることが困難となる。例えば、特許文献1に記載の整列方法では、チップ部品をポケットに収容する操作が必要であり、素体部品が小型化するほどこの操作も煩雑になるという問題がある。
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本開示の積層部品の整列方法および積層セラミック部品の製造方法の実施形態について説明する。なお、以下では、積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明するが、本開示の対象となる積層セラミック部品は、積層セラミックコンデンサに限られず、積層型圧電素子、積層サーミスタ素子、積層チップコイル、およびセラミック多層基板等の様々な積層セラミック部品にも適用することができる。
【0012】
先ず、積層セラミック電子部品の一例である積層セラミックコンデンサについて説明する。
図1は、積層セラミックコンデンサの一例の斜視図である。
図2は、
図1の積層セラミックコンデンサの素体部品を模式的に示す斜視図である。
図2は、焼成前の素体部品を示す図である。なお、焼成後の素体部品は、焼成によって収縮しているが、焼成前の素体部品と同一構造を有するため、
図2は、焼成後の素体部品を示す図であるともいえる。
図3は、
図2の素体部品の前駆体を示す斜視図である。以下では、素体部品の前駆体を、素体前駆体と呼ぶことがある。
【0013】
積層セラミックコンデンサ1は、素体部品2と、外部電極3とを有している。素体部品2は、
図2に示すように、略直方体状の形状を有している。素体部品2は、誘電体セラミックス4からなり、外部電極3に接続される複数の内部電極層5を有している。外部電極3は、素体部品2の一対の端面に配設され、他の隣接する面にまで回り込んでいる。複数の内部電極層5は、素体部品2の一対の端面から内部に延び、互いに接することなく交互に積層されている。内部電極層5は、例えば、強磁性金属材料を含む強磁性体層である。
【0014】
外部電極3は、素体部品2に接続する下地層と、外部配線の外部電極3へのはんだ実装を容易にするめっき外層とを有して構成されている。下地層は、焼成後の素体部品2に塗布焼き付けされてもよい。下地層は、焼成前の素体部品2に配設され、素体部品2と同時に焼成されてもよい。下地層およびめっき外層は求められる機能に合わせて複数層であっても構わない。外部電極3は、めっき外層を有さず、下地層と導電性樹脂層とを有して構成されていてもよい。
【0015】
素体部品2は、
図2,3に示すように、素体前駆体13と、保護層6とを有している。素体前駆体13は、
図3に示すように、略直方体状の形状を有している。素体前駆体13は、互いに対向する面7、互いに対向する端面8、および互いに対向する側面9を有している。素体部品2において、面7の長辺寸法をa、巾寸法をbとし、厚さとなる積層方向の寸法をcとすると、例えば、a>b≧cの関係となっている。
【0016】
素体前駆体13の端面8および側面9には、内部電極層5が露出している。保護層6は、素体前駆体13の側面9に配設されている。保護層6は、第1の端面8Aに露出した内部電極層5と、第2の端面8Bに露出した内部電極層5とが電気的に短絡することを抑制している。また、保護層6は、内部電極層5における、素体前駆体13の側面9に露出した部位を物理的に保護している。保護層6は、素体部品2を作製する上で最後に取り付けられる。保護層6は、素体前駆体13の側面9に露出している内部電極層5を保護している。保護層6は、セラミック材料からなっていてもよい。この場合、保護層6を、絶縁性を有し、かつ機械的強度が高いものとすることができる。保護層6となるセラミック材料は、通常、焼成前の素体前駆体13に配設される。なお、
図2においては、素体前駆体13と保護層6との境界を二点鎖線で示しているが、実際の境界は明瞭に現われるわけではない。
【0017】
上記では、素体部品2に加えて、その前駆体である素体前駆体13についても説明したが、本開示において「積層部品」は、素体部品2および素体前駆体13のどちらも含む。
【0018】
図4は、素体前駆体を模式的に表した拡大断面図である。セラミックグリーンシート10と内部電極層5の層が交互に積層されている。焼成でセラミック粉や金属粉が焼結する前であるので、セラミックグリーンシート10は、有機バインダ中に誘電体セラミック粒子35が分散した状態であり、内部電極層5も同様に、有機バインダ中にニッケル粒子36が分散した状態になっている。
【0019】
以下に説明する本実施形態の積層部品の整列方法では、内部電極層5に磁界を作用させるために、内部電極層5の磁化率を高くする必要がある。内部電極層5のニッケル粒子36は有機バインダに囲まれているため、ほとんどが互いに接していない。内部電極層5の磁化率を高くするためには、有機バインダの含有量が、体積比率で強磁性金属材料であるニッケル粒子の1.5倍以下とすればよい。
【0020】
図5A,5Bは、支持部材上に置かれた素体部品の状態を示している。
図5Aに示すように、素体部品2の向きを、意図して揃えることなく支持部材16上に素体部品2を置いた場合であっても、殆んどの素体部品2は、最も広い面である面7が支持部材16の支持面16aに平行となるような向きになる。
【0021】
図5Bに示すように、
図5Aの状態の素体部品2に、磁束線18が支持面16aと交差する磁界を作用させると、素体部品2の内部電極層5の延展方向(面方向)が磁束線18と平行となるように素体部品2が回転する。言い換えれば、内部電極層5の厚さ方向が磁束線18と直交するように素体部品2が回転する。これによって、素体部品2は、側面9が支持面16aに平行となる状態(第1状態)または端面8が支持面16aに平行となる状態(第2状態)のいずれかの状態となる。ここで、素体部品2に対しては、側面9に対して保護層6を形成するなどの加工処理を施す場合が多く、全ての素体部品2が第1状態となるように向きを揃えることが必要となる。しかしながら、上記のように、素体部品2は2つの状態が混在し、素体部品2の向きを揃えることは難しい。さらに、第1状態となった素体部品2同士が上下方向に重なる場合もある。
【0022】
図5C,5Dは、本実施形態の整列方法を説明する概略図である。
図5Cに示すように、本実施形態では、非磁性体材料からなり、水平方向に平行で平坦な支持面16aを有する支持部材16と、非磁性体材料からなり、支持部材16の上方であって、支持面16aから所定の距離を隔てた位置に設けられた上方部材19との間隙に複数配置された素体部品2に、磁束線18が支持面16aと交差する磁界を作用させて、素体部品2の向きを揃えている。
【0023】
また
図5Dに示すように、本実施形態では、支持部材16と上方部材19との空隙に複数配置された素体前駆体13に、磁束線18が支持面16aと交差する磁界を作用させて、素体前駆体13の向きを揃えている。
【0024】
支持部材16および上方部材19を構成する材料は、非磁性体材料であればよく、例えば、樹脂材料、硬質紙、セラミックス材料などであり、アルミニウムなどの非磁性金属材料であってもよい。支持部材16および上方部材19は、いずれの非磁性材料であっても、撓まない剛性を有する程度の厚さを有する非磁性体材料を用いてもよい。
【0025】
支持部材16と上方部材19との間隔は、素体部品2または素体前駆体13が長手方向、すなわち端面8に直交する方向を軸線方向として回転することが許容される間隔であって、第1状態となった素体部品2(素体前駆体13)同士が上下方向に重なることおよび素体部品2(素体前駆体13)が第2状態となることを阻害する間隔とすればよい。
【0026】
素体部品2の端面8の縦横寸法は、b、cであり、端面8の対角寸法をb1とする。素体部品2の向きを揃える場合は、支持部材16と上方部材19との間隔をsとすると、間隔sは、b1<s<(2×b、またはaのいずれか小さい方)とすればよい。b1<sとすることで、素体部品2の回転が許容される。s<(2×b、またはaのいずれか小さい方)とすることで、第1状態の素体部品2の重なりおよび第2状態となることを阻害できる。
【0027】
内部電極層5の幅をb2とすると、素体前駆体13の端面8の縦横寸法は、b2、cであり、端面8の対角寸法をb3とする。素体前駆体13の向きを揃える場合は、支持部材16と上方部材19との間隔をsとし、端面8の対角寸法をb3とすると、間隔sは、b3<s<(2×b2、またはaのいずれか小さい方)とすればよい。b3<sとすることで、素体前駆体13の回転が許容される。s<(2×b2、またはaのいずれか小さい方)とすることで、第1状態の素体前駆体13の重なりおよび第2状態となることを阻害できる。なお、素体部品2は、内部電極層5の幅b2を0.75b<b2<bとすることで
、保護層6を有していても、磁界の作用によって十分な回転モーメントが得られる。
【0028】
図6は、他の実施形態の整列方法を説明する概略図である。図に示すように、支持部材16と上方部材19との間隙に置かれた素体部品2を、予め発生している磁界中に水平方向に沿って相対的に移動させている。ここで言う相対的とは、磁界の位置を固定して、間隙に置かれた素体部品2を支持部材16と上方部材19とともに移動させてもよく、間隙に置かれた素体部品2を支持部材16と上方部材19の位置を固定して、予め発生させた磁界を移動させてもよいことを意味する。支持部材16上の素体部品2に磁界が作用すると、その内部電極層5の延展方向と磁束線18の方向とが平行になるように、素体部品2が自発的に回転し、素体部品2の向きを揃えることができる。
【0029】
間隙に置かれた素体部品2を、磁界中に水平方向に移動させると、磁界が作用した素体部品2から順に回転し始める。また、磁束線18の向きに応じて素体部品2の回転方向も一定とすることができる。例えば、磁束線18が上向き又は下向きの磁界中に、左側から素体部品2を移動させると、間隙の右端に置かれた素体部品2から順に、いずれも右回転して向きが揃うことになる。このように、素体部品2の回転方向を制御することができる。
【0030】
さらに、支持部材16と上方部材19との間隙に置かれた素体部品2に対して振動を付与してもよい。本実施形態では、例えば、矢印22が示すような上下方向の振動を付与している。また、本実施形態では、支持部材16に振動を付与している。支持部材16と上方部材19との間隙において、素体部品2同士の水平方向の間隔が狭いと、磁界が作用しても、隣接する素体部品2によって回転が阻害されるおそれがある。振動を付与することによって、素体部品2同士の間隔を広げることができ、素体部品2が回転しやすくなる。なお、上方部材19も支持部材16と同様に振動させてもよい。さらに、振動方向は、上下方向に限らず、水平方向であってもよく、これらを組み合わせることもできる。
【0031】
素体部品2に作用させる磁界は、例えば、支持部材16の下方に位置する磁石(第1磁石)17と上方部材19の上方に位置する磁石(第2磁石)17とによって発生させてよい。発生させる磁界の磁束線18が支持面16aと交差するように、2つの磁石17の対向する側が、互いに逆極性とすればよい。磁石17は、永久磁石を用いてもよく、電磁石を用いてもよい。磁石17の大きさは、例えば、支持部材16の支持面16aに素体部品2が配置される面積より広い面積を有する磁石であればよい。
【0032】
また、磁界は、例えば、素体部品2に連続して作用させてもよく、作用させる期間と作用させない期間とを繰り返す間欠性の磁界を用いてもよい。間欠性の磁界を用いることによって、上記の振動を付与する場合と同様に、素体部品2同士の間隔を広げることができる。間欠性の磁界は、磁石17が永久磁石の場合は、支持部材16および上方部材19に近付けている期間を作用期間とし、支持部材16および上方部材19から遠ざけている期間を非作用期間とすることができる。また、磁石17が電磁石の場合は、電流を供給している期間を作用期間とし、電流の供給を停止している期間を非作用期間とすることができる。
【0033】
磁石17は、例えば、支持部材16の下方に位置する磁石(第1磁石)17のみを用いてもよく、上方部材19の上方に位置する磁石(第2磁石)17のみを用いてもよいが、上下2つの磁石17を用いることで、広い範囲で均一な磁界を発生させることができる。これにより、支持面16aのどの位置であっても、素体部品2を回転させ向きを揃えることができる。
【0034】
さらに、磁界は、磁束線18の向き(磁界の向き)が繰り返し反転する磁界であってもよい。素体部品2の内部電極層5は強磁性体であり、これに磁界を作用させると、内部電極層5が着磁されて残留磁気を帯びることがある。この残留磁気によって、後工程での素体部品2の取扱いが困難になるおそれがある。磁束線18の向きを繰り返し反転させることにより、着磁と消磁を繰り返して内部電極層5の残留磁気を低減させることができる。
【0035】
図7は、部品集合体を形成する様子を示す概略図である。上記のように、支持部材16と上方部材19との間隙において、素体部品2の向きが揃ったのち、磁界が作用した状態で、向きが揃った複数の素体部品2を集合させて部品集合体を形成する。例えば、間隙の左右方向外側から中央に向かって水平に冶具25を移動させる。両側から冶具25に挟まれる素体部品2は中央で集合し集合体となる。部品集合体は、後工程の加工処理において、一体的に取り扱うことで、複数の素体部品2を一括して加工することができる。これにより、素体部品2を個別に加工するよりも早く加工することができる。さらに、複数の素
体部品2に対して同一条件で加工することができる。
【0036】
図8は、素体部品を固定する様子を示す概略図である。上記のように、支持部材16と上方部材19との間隙において、素体部品2の向きが揃ったのち、磁界が作用した状態で、支持部材16と上方部材19との距離を近づけて、向きが揃った複数の素体部品2を支持部材16と上方部材19とによって挟持した状態で、磁界の作用を停止する。支持部材16と上方部材19との間隙を保持した状態で、磁界の作用を停止すると、停止時の磁界の乱れやその後のハンドリングによって、素体部品2が回転してしまい、向きが揃わないおそれがある。支持部材16と上方部材19とによって素体部品2を挟持することで、素
体部品2を固定し、その後に磁界の作用を停止すれば、停止時の素体部品2の回転を防ぐことができる。
【0037】
素体部品2を支持部材16と上方部材19とによって挟持する場合、素体部品2と、支持部材16および上方部材19とが接触する。このとき、素体部品2に衝撃が加わっても、素体部品2が破損しないように、上方部材19の、支持面16aに対向する部分が弾性材料を含む構成を用いてもよい。例えば、上方部材19に弾性シート20を貼り付ければよい。また、支持部材16にも同様に弾性シート20を貼り付けてもよい。弾性シート20の材料は、耐久性および摩耗性に優れたものが好ましく、例えば、シリコンゴムまたはウレタンゴムなどを用いることができる。
【0038】
以下では、
図2の素体部品2および積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。本製造方法は、前述の整列方法を含む。
【0039】
先ず、セラミック誘電体材料であるBaTiO3に添加剤を加えたセラミックの混合粉体をビーズミルで湿式粉砕混合する。この粉砕混合したスラリーに、ポリビニルブチラール系バインダ、可塑剤、および有機溶剤を加えて混合し、セラミックスラリーを作製する。
【0040】
次に、ダイコーターを用いて、キャリアフィルム上にセラミックグリーンシート10を成形する。セラミックグリーンシート10の厚みは、例えば、1~10μm程度であってもよい。セラミックグリーンシート10の厚みを薄くするほど、積層セラミックコンデンサの静電容量を高くすることができる。セラミックグリーンシート10の成形は、ダイコーターだけに限られず、例えば、ドクターブレードコーターまたはグラビアコーター等を用いて行ってもよい。
【0041】
次に、
図9に示すように、上記で作成したセラミックグリーンシート10に、スクリーン印刷法を用いて、内部電極層5となる強磁性金属材料であるニッケル(Ni)を含む導電性ペーストを所定のパターンで印刷する。導電性ペーストの印刷は、スクリーン印刷法だけに限られず、例えば、グラビア印刷法等を用いて行ってもよい。導電性ペーストは、例えばNi以外に、Pd、Cu、Ag等の金属、またはそれらの合金を含んでいてもよい。図では、内部電極層5のパターンが複数列の帯状パターンである例を示したが、内部電極層5のパターンは、例えば個別電極パターン等のパターンであってもよい。
【0042】
印刷後、導電性ペーストを乾燥させる。乾燥によって主に溶剤分が揮発するので、乾燥後の内部電極層5は、有機バインダ中にニッケル粒子が分散した状態となる。コンデンサとしての特性が確保できる限りにおいて、内部電極層5の厚みが薄ければ薄いほど、内部応力による内部欠陥を防ぐことができる。高積層数のコンデンサであれば、内部電極層5の厚みは、例えば、2.0μm以下であってもよい。
【0043】
次に、
図10に示すように、所定枚数積層したセラミックグリーンシート10の上に、内部電極層5が印刷されたセラミックグリーンシート10を所定枚数積層し、さらに、セラミックグリーンシート10を所定枚数積層する。内部電極層5が印刷されたセラミックグリーンシート10は、内部電極層5のパターンをずらしながら所定枚数積層する。なお、
図10では省略されているが、セラミックグリーンシート10の積層は支持シート上で行う。支持シートは、弱粘着シートまたは発泡剥離シート等の粘着および剥離が可能な粘着剥離シートであってもよい。
【0044】
次に、セラミックグリーンシート10を複数枚積層されてなる積層体を積層方向にプレスして、
図11に示すような一体化した母積層体11を得る。積層体のプレスは、例えば静水圧プレス装置を用いて行うことができる。母積層体11の内部では、セラミックグリーンシート10を挟んで内部電極層5が層状に埋め込まれている。母積層体11が縦横に切断されると、
図3に示す素体前駆体13になる。母積層体11の面、端面、および側面は、素体前駆体13の面7、端面8、および側面9にそれぞれ相当するため、以下では、同じ参照符号を付す。なお、
図6では省略されているが、母積層体11の下には、セラミックグリーンシート10を積層する際に用いた支持シートが位置している。
【0045】
次に、
図12に示すように、押切切断装置を用いて、母積層体11を所定の寸法で切断し、複数の第一棒状体12を得る。第一棒状体12の切断面は、素体前駆体13の側面9に相当し、第一棒状体12の切断面には、内部電極層5が露出している。なお、母積層体11を切断する方法は、押切切断装置を用いる方法に限定されず、例えばダイシングソウ装置等を用いてもよい。内部電極層5は、第一棒状体12の長手方向においては、どの内部電極層5も複数個所で分断された不連続部分を有する。このような場合、磁界中において、内部電極層5の長手方向の見かけの磁化率は高くならないので、長手方向を軸として第一棒状体12が容易に回転する。内部電極層5の不連続部分は、例えば40μm以上である。
【0046】
第一棒状体12を積層部品として向きを揃える整列方法について説明する。まず、
図13Aに示すように、切断して得られた複数の第一棒状体12を支持部材16の支持面16a上に並べたのち、上方部材19を設置する。第一棒状体12は、各々の長手方向が平行となるように並べ置く。支持部材16と上方部材19との間隔sは、例えば、第一棒状体12の端面8の対角寸法b3の1.1倍の寸法とする。次に、
図13Bに示すように、予め設けた磁石17が、支持部材16の下方となるように、支持部材16と上方部材19とを移動させて磁石17に近付ける。磁石17として電磁石を用いる。なお、N極とS極が対向平面にある永久磁石を用いた場合は、磁石面からの距離で磁力の調整を行う。磁石17による磁界が作用された第一棒状体12は、端面8の中心を通り、長手方向に延びる軸線回りに回転する。全ての第一棒状体12に磁界が作用すると、全ての第一棒状体12は、内部電極層5の延展方向が磁束線18と平行となる向きに揃う。その後、向きが揃った第一棒状体12を、上方部材19と支持部材16とで挟持して固定する。
【0047】
積層部品である第一棒状体12に作用させる磁界は、用いる磁石の種類、積層部品と磁石との距離などによって制御することができる。例えば、積層方向の厚さcと端面の幅b2とがそれぞれ、0.63mm、1,33mmの400層の内部電極層5を有する積層部品の場合は、50ガウス以上の磁束密度となるように、磁石の種類と磁石からの距離とを設定すればよい。
【0048】
第一棒状体12を上方部材19と支持部材16とで挟持して固定した状態で、第一棒状体12への磁界の作用を停止する。例えば、電磁石である磁石17への電流供給を停止すればよい。また、
図13Cに示すように、第一棒状体12の向きが揃った後に、上方部材19に粘着性の支持シート21を貼り付けるか、予め粘着性の支持シート21を貼り付けた別の上方部材19を準備しておいて上方部材19を交換するかによって、磁界が作用している状態で向きが揃った第一棒状体12に支持シート21付き上方部材19を上方から接触させてもよい。
図13Dに示すように、上方部材19と支持部材16で第一棒状体12を挟持したまま、磁石17から遠ざけることで、第一棒状体12への磁界の作用を停止してもよい。支持シート21に固定された複数の第一棒状体12は、その向きが揃った状態で移動させることができる。
【0049】
図14に示すように、上方部材19の上下を反転させると、各第一棒状体12の側面9が上向きとなり、後工程において、上向きに揃った側面9に対して一括で加工処理を施すことができる。
【0050】
図15は、加工処理が施された第一棒状体の斜視図である。加工処理は、例えば、保護層6を形成する処理である。各第一棒状体12の側面9の向きが揃った状態で、側面9にセラミックスラリーを一括で塗布することができる。乾燥後にさらに、セラミックスラリーが塗布された側面9を別の支持シート21で固定し、元の支持シート21を剥離する。元の支持シート21の剥離によって新たに露出した側面9にもセラミックスラリーを塗布する。このように側面9にセラミックスラリーを塗布することで保護層6を形成することができる。塗布するセラミックスラリーは、母積層体11を構成するセラミックグリーンシート10と同一成分のものを用いることができる。保護層6を形成したのち、
図16に示すように、各第一棒状体12を切断することで、素体部品2を得る。このようにして得られた素体部品2を焼成したのち、外部電極3を形成し、積層セラミックコンデンサ1を製造することができる。焼成温度は、誘電体セラミック材料と内部電極層5となる導電性ペーストに含まれる金属材料等に応じて適宜設定することができる。焼成温度は、例えば、1100~1250℃であってもよい。
【0051】
他の製造方法について説明する。母積層体11を作製する手順は前述の方法と同じであるので、説明は省略する。
図17に示すように、母積層体11を所定の寸法で切断し、複数の第二棒状体12Aを得る。切断する方向が、前述の第一棒状体12の場合と90°異なっており、第二棒状体12Aの切断面は、素体前駆体13の端面8に相当する。
図18に示すように、切断して得られた第二棒状体12A同士の隙間に熱可塑性樹脂15を埋め込むとともに、表面(面)を熱可塑性樹脂15で被覆して平板状ブロック23を得る。平板状ブロック23を、
図19に示すように、さらに切断して第三棒状体24を得る。切断する方向は、第二棒状体12Aの場合と90°異なっており、第一棒状体12の切断方向と同じである。第三棒状体24の切断面は、素体前駆体13の側面9に相当する。第三棒状体24は、素体前駆体13を熱可塑性樹脂15で連結したような構造となっている。内部電極層5は、第三棒状体24の長手方向においては、複数個所で熱可塑性樹脂15によって分断された不連続部分を有する。このような場合、磁界中において、内部電極層5の長手方向の見かけの磁化率は高くならないので、長手方向を軸として第三棒状体24が容易に回転する。内部電極層5の不連続部分は、例えば40μm以上である。
【0052】
第三棒状体24を積層部品として向きを揃える整列方法について説明する。まず、切断して得られた複数の第三棒状体24を支持部材16の支持面16a上に並べたのち、上方部材19を設置する。各々の第一棒状体12は、長手方向が平行となるように並べ置く。支持部材16および上方部材19は、いずれも弾性シート20が貼り付けられたものを用いている。
図20Aに示すように、予め2つの磁石17を配置しておき、支持部材16と上方部材19との間隙に置かれた素体部品2を、2つの磁石17の間に位置するように、予め発生している磁界中に水平方向に沿って第一棒状体12の長手方向に対して90°の方向を進行方向にして移動させる。内部電極層5の延展方向と磁束線18の方向とが平行になるように、第三棒状体24が自発的に回転し、第三棒状体24の向きを揃えることができる。
【0053】
図20Bに示すように、第三棒状体24の向きが揃ったのち、磁界が作用した状態で、向きが揃った複数の第三棒状体24を集合させて部品集合体27を形成する。例えば、間隙の左右方向外側から中央に向かって水平に冶具25を移動させる。
図21の斜視図に示すように、冶具25はL字状の型枠であり、2つの冶具25によって、複数の第三棒状体24は、長手方向および長手方向に直交する方向にそれぞれ位置決めされて、板状の部品集合体27となる。
【0054】
部品集合体27を形成したのち、上方部材19に設けた支持シート21で部品集合体27と冶具25とを固定する。部品集合体27の支持シート21で固定された側の反対は、素体前駆体13の側面9が露出した状態となっている。
【0055】
図22は、部品集合体に加工処理を施す様子を示す模式図である。加工処理は、例えば、側面9を研磨する処理である。研磨盤28を用いて、支持シート21で固定された部品集合体27の露出した側面9を研磨処理することができる。研磨は、複数の砥石と研磨粉を用いて、粗い番手から細かい番手に進んで行う。最終研磨では、平均粒径が1μm以下の砥粒を用いてもよく、平均粒径が0.5μm以下の砥粒を用いてもよい。砥粒材料は、研磨性に優れ、かつ焼成中に誘電体材料および電極材料と反応し難いダイヤモンド砥粒であってもよい。
【0056】
部品集合体27の露出した側面9に研磨処理を施したのち、研磨された側面9を別の支持シート21で固定し、元の支持シート21を剥離する。元の支持シート21の剥離によって新たに露出した部品集合体27の側面9も研磨処理を施すことができる。
【0057】
図23は、上方部材の他の例を示す斜視図である。上記では、上方部材19として、支持部材16と同様の板状の部材を用いている。前述のように、上方部材19は、複数の積層部品が、縦向きになったり、2つの部品が重なったりすることがないように規定することができればよいので、例えば、網状部材または縦格子状部材であってもよい。図に示した例の上方部材19Aは、縦格子状部材である。縦格子状部材である場合、上方部材19Aは、縦格子が、積層部品の長手方向と非平行となるように配置すればよい。
【0058】
本開示は次の実施の形態が可能である。
【0059】
本開示の積層部品の整列方法は、非磁性体材料からなり、水平方向に平行で平坦な支持面を有する支持部材と、非磁性体材料からなり、前記支持部材の上方であって、前記支持面から所定の距離を隔てた位置に設けられた上方部材とによって規定された空間内に複数配置された、セラミックグリーンシートと強磁性体電極層とが交互に積層された直方体形状の積層部品に、磁束線が前記支持面と交差する磁界を作用させて、積層部品の向きを揃える。
【0060】
本開示の積層セラミック部品の製造方法は、上記の積層部品の整列方法を含み、向きが揃った積層部品の表面に加工処理を行ったのち、積層部品を焼成する。
【0061】
本開示の積層部品の整列方法によれば、平坦な支持面に複数の積層部品を置くだけで、容易かつ速やかに積層部品の向きを揃えることができる。
【0062】
本開示の積層セラミック部品の製造方法によれば、容易かつ速やかに積層セラミック部品を製造することができる。
【0063】
各実施形態において使用されている方法、装置、材料等は、その実施形態だけに限定されるものではなく、組み合わせて使用してもよい。また、例えば、保護層となるセラミックグリーンシートまたはセラミックスラリーが付与された平板状集合体を焼成前に切断したり、平板状集合体を研磨した後に洗浄したりしてもよい。そのように、各実施形態の加工条件を変えたり、各実施形態に新たな工程を追加したりすることは、本開示の主旨になんら影響を与えるものではない。
【符号の説明】
【0064】
1 積層セラミックコンデンサ
2 素体部品
3 外部電極
4 誘電体セラミックス
5 内部電極層
6 保護層
7 面
8 端面
8A 第1の端面
8B 第2の端面
9 側面
10 セラミックグリーンシート
11 母積層体
12 第一棒状体
12A 第二棒状体
13 素体前駆体
15 熱可塑性樹脂
16 支持部材
16a 支持面
17 磁石
18 磁束線
19、19A 上方部材
20 弾性シート
21 支持シート
22 矢印
23 平板状ブロック
24 第三棒状体
25 冶具
27 部品集合体
28 研磨盤
35 誘電体セラミック粒子
36 ニッケル粒子