(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】無停電電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02J9/06 120
(21)【出願番号】P 2023504888
(86)(22)【出願日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 JP2021008979
(87)【国際公開番号】W WO2022190167
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 遼司
(72)【発明者】
【氏名】田中 智大
(72)【発明者】
【氏名】益永 博史
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-46900(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026430(WO,A1)
【文献】特開2009-131122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源の健全時に、前記交流電源から供給される交流電力を受ける電源端子と、
電力貯蔵装置と前記電源端子の間に接続され、前記交流電源の健全時にオフされ、前記交流電源の停電時にオンされる第1のスイッチと、
直流電力を授受するための直流リンク部と、
前記交流電源の健全時には、前記交流電源から前記電源端子に供給される交流電力を直流電力に変換して前記直流リンク部に供給し、前記交流電源の停電時には、前記電力貯蔵装置から前記第1のスイッチを介して前記電源端子に供給される直流電力を前記直流リンク部に供給する順変換器と、
前記直流リンク部からの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する逆変換器と、
前記交流電源の健全時に、前記直流リンク部からの直流電力を前記電力貯蔵装置に蓄えるチョッパ回路とを備え、
前記直流リンク部は、
第1および第2の直流ラインと、
前記第1および第2の直流ライン間に接続された第1のコンデンサとを含み、
前記順変換器は、レグ回路および交流フィルタを含み、
前記レグ回路は、
前記第1の直流ラインと中間端子との間に接続された第1のスイッチング素子と、
前記中間端子と前記第2の直流ラインとの間に接続された第2のスイッチング素子と、
それぞれ前記第1および第2のスイッチング素子に逆並列に接続された第1および第2のダイオードとを含み、
前記交流フィルタは、
前記電源端子と中性点との間に接続された第2のコンデンサと、
前記電源端子と前記中間端子との間に接続されたリアクトルとを含み、
前記交流電源は、互いに位相の異なる第1~第M相の交流電力を供給し、
Mは2以上の整数であり、
前記電源端子、前記レグ回路、および前記交流フィルタは、前記第1~第M相の交流電力の各々に対応して設けられており、
前記第1のコンデンサは、
前記第1の直流ラインと前記中性点との間に接続された第1の副コンデンサと、
前記中性点と前記第2の直流ラインとの間に接続された第2の副コンデンサとを含み、
前記第1のスイッチは、第1~第(M-1)相の交流電力の各々に対応して設けられており、
前記第M相の交流電力に対応する前記電源端子と前記中性点との間に接続され、前記交流電源の健全時にはオフされ、前記交流電源の停電時にはオンされる第2のスイッチをさらに備え、
前記交流電源の停電時には、前記第1および第2の直流ライン間の直流電圧が参照電圧になるように、前記第1~第(M-1)相に対応する各前記レグ回路の前記第2のスイッチング素子がオンおよびオフされ、
前記交流電源の停電時には、前記第1および第2の副コンデンサの端子間電圧が同じになるように、前記第M相に対応する前記レグ回路の前記第1および第2のスイッチング素子が交互にオンされる
、無停電電源装置。
【請求項2】
前記チョッパ回路は、前記第1および第2の直流ラインと、前記電力貯蔵装置の正極および負極との間に接続されており、
前記第1のスイッチは、前記電力貯蔵装置の正極と、対応する前記電源端子との間に接続されており、
前記第2の直流ラインと前記電力貯蔵装置の負極とは短絡されている、
請求項1に記載の無停電電源装置。
【請求項3】
交流電源の健全時に、前記交流電源から供給される交流電力を受ける電源端子と、
電力貯蔵装置と前記電源端子の間に接続され、前記交流電源の健全時にオフされ、前記交流電源の停電時にオンされる第1のスイッチと、
直流電力を授受するための直流リンク部と、
前記交流電源の健全時には、前記交流電源から前記電源端子に供給される交流電力を直流電力に変換して前記直流リンク部に供給し、前記交流電源の停電時には、前記電力貯蔵装置から前記第1のスイッチを介して前記電源端子に供給される直流電力を前記直流リンク部に供給する順変換器と、
前記直流リンク部からの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する逆変換器と、
前記交流電源の健全時に、前記直流リンク部からの直流電力を前記電力貯蔵装置に蓄えるチョッパ回路とを備え、
前記直流リンク部は、
第1および第2の直流ラインと、
前記第1および第2の直流ライン間に接続された第1のコンデンサとを含み、
前記順変換器は、レグ回路および交流フィルタを含み、
前記レグ回路は、
前記第1の直流ラインと中間端子との間に接続された第1のスイッチング素子と、
前記中間端子と前記第2の直流ラインとの間に接続された第2のスイッチング素子と、
それぞれ前記第1および第2のスイッチング素子に逆並列に接続された第1および第2のダイオードとを含み、
前記交流フィルタは、
前記電源端子と中性点との間に接続された第2のコンデンサと、
前記電源端子と前記中間端子との間に接続されたリアクトルとを含み、
前記交流電源は、互いに位相の異なる第1~第M相の交流電力を供給し、
Mは2以上の整数であり、
前記電源端子、前記レグ回路、および前記交流フィルタは、前記第1~第M相の交流電力の各々に対応して設けられており、
前記第1のコンデンサは、
前記第1の直流ラインと前記中性点との間に接続された第1の副コンデンサと、
前記中性点と前記第2の直流ラインとの間に接続された第2の副コンデンサとを含み、
前記チョッパ回路は、前記第1の直流ライン、前記第2の直流ライン、および前記中性点と、前記電力貯蔵装置の正極および負極との間に接続されており、
前記第1のスイッチは、前記電力貯蔵装置の正極と、対応する前記電源端子との間に接続されており、
前記第2の直流ラインと前記電力貯蔵装置の負極との間に接続され、前記交流電源の健全時にはオフされ、前記交流電源の停電時にはオンされる第2のスイッチをさらに備える
、無停電電源装置。
【請求項4】
前記順変換器は、前記交流電源の停電時には、前記電力貯蔵装置から前記第1のスイッチを介して前記電源端子に供給される直流電圧を昇圧して前記直流リンク部に供給し、
前記チョッパ回路は、前記交流電源の健全時に、前記直流リンク部からの直流電圧を降圧して前記電力貯蔵装置に供給する、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【請求項5】
前記チョッパ回路は、前記交流電源の健全時であっても、負荷電流が上限値を超えた場合には、前記電力貯蔵装置の直流電力を前記直流リンク部に供給する、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【請求項6】
前記交流電源と前記電源端子の間に接続され、前記交流電源の健全時にオンされ、前記交流電源の停電時にオフされる
第3のスイッチをさらに備える、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【請求項7】
前記チョッパ回路は、前記交流電源の停電が発生してから予め定められた時間だけ前記電力貯蔵装置の直流電力を前記直流リンク部に供給し、
前記順変換器は、前記第1のスイッチがオンされ、かつ前記
第3のスイッチがオフされた後に、前記電力貯蔵装置から前記第1のスイッチを介して前記電源端子に供給される直流電力を前記直流リンク部に供給する、
請求項6に記載の無停電電源装置。
【請求項8】
前記電力貯蔵装置と前記電源端子の間に直列接続された
第3のスイッチおよび抵抗器をさらに備え、
前記交流電源の停電が発生してから予め定められた時間だけ前記
第3のスイッチがオンされ、
前記
第3のスイッチがオフされた後に前記第1のスイッチがオンされる、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【請求項9】
前記第1のスイッチの一方端子は前記電力貯蔵装置に接続されており、
前記第1のスイッチの他方端子と前記電源端子との間に接続された抵抗器と、
前記抵抗器に並列接続され、前記交流電源の停電が発生してから予め定められた時間が経過した後にオンされる
第3のスイッチをさらに備える、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の無停電電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムのような重要負荷に交流電力を安定的に供給するため、無停電電源装置が広く使用されている。たとえば特開2004-343826号公報(特許文献1)には、順変換器、逆変換器、およびチョッパ回路を備える無停電電源装置が開示されている。交流電源の健全時には、交流電源から供給される交流電力が順変換器によって直流電力に変換され、その直流電力が、逆変換器によって交流電力に変換されて負荷に供給されるとともに、チョッパ回路によって電力貯蔵装置に蓄えられる。交流電源の停電時には、電力貯蔵装置の直流電力がチョッパ回路によって逆変換器に供給され、交流電力に変換されて負荷に供給される。したがって、交流電源の停電時でも、電力貯蔵装置に直流電力が蓄えられている期間は、負荷の運転を継続することができる。
【0003】
また、たとえば国際公開第2010/044164号(特許文献2)には、順変換器、逆変換器、およびチョッパ回路の各々を3レベル化することにより、高調波の低減化を図ることが可能な無停電電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-343826号公報
【文献】国際公開第2010/044164号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、電力変換器のサイズは、その電力容量に応じて増大する。しかるに従来の無停電電源装置では、交流電源の健全時に定格直流電力を逆変換器に供給する順変換器と、交流電源の停電時に定格直流電力を逆変換器に供給するチョッパ回路とが別々に設けられていたので、装置が大型化するという問題があった。
【0006】
それゆえに、本開示の主たる目的は、小型の無停電電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の無停電電源装置は、電源端子、第1のスイッチ、直流リンク部、順変換器、逆変換器、およびチョッパ回路を備えたものである。電源端子は、交流電源の健全時に、交流電源から供給される交流電力を受ける。第1のスイッチは、電力貯蔵装置と電源端子の間に接続され、交流電源の健全時にオフされ、交流電源の停電時にオンされる。直流リンク部は、直流電力を授受するために設けられている。順変換器は、交流電源の健全時には、交流電源から電源端子に供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンク部に供給し、交流電源の停電時には、電力貯蔵装置から第1のスイッチを介して電源端子に供給される直流電力を直流リンク部に供給する。逆変換器は、直流リンク部からの直流電力を交流電力に変換して負荷に供給する。チョッパ回路は、交流電源の健全時に、直流リンク部からの直流電力を電力貯蔵装置に蓄える。
【発明の効果】
【0008】
この無停電電源装置では、交流電源の停電時に定格直流電力を逆変換器に供給する機能を順変換器に持たせたので、当該機能をチョッパ回路が有する必要はない。したがって、チョッパ回路の小型化を図ることができ、ひいては無停電電源装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【
図2】
図1に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す制御ブロックB1の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図2に示す制御ブロックB2の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示す制御部31の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図5に示すPWM部44の構成を示すブロック図である。
【
図7】
図4に示す制御部32の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図5に示すPWM部62の構成を示すブロック図である。
【
図9】
図7に示す3つのPWM部で使用される3つの正極キャリア信号の波形を示すタイムチャートである。
【
図10】
図2に示す制御ブロックB3の構成を示すブロック図である。
【
図11】
図2に示す制御ブロックB4の構成を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2に従う無停電電源装置の過負荷時における動作を示すブロック図である。
【
図13】
図12で説明する無停電電源装置の要部を示すブロック図である。
【
図14】実施の形態3に従う無停電電源装置に含まれる制御ブロックの構成を示すブロック図である。
【
図15】実施の形態
3に従う無停電電源装置に含まれるもう一つの制御ブロックを示すブロック図である。
【
図17】実施の形態4に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【
図18】実施の形態5に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【
図19】実施の形態6に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【
図20】
図19に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図21】
図20に示す制御ブロックB11の構成を示すブロック図である。
【
図22】
図20に示す制御ブロックB12の構成を示すブロック図である。
【
図23】
図22に示す制御部
132の構成を示すブロック図である。
【
図24】
図23に示す制御部
133の構成を示すブロック図である。
【
図25】
図24に示すPWM部147の構成を示すブロック図である。
【
図26】
図24に示すバランスパルス生成部の構成を示すブロック図である。
【
図27】
図26に示すバランスパルス生成部の動作を示すタイムチャートである。
【
図28】実施の形態7に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
図1において、この無停電電源装置は、交流入力端子T1R,T1S,T1T、交流出力端子T2U,T2V,T2W、バッテリ端子T3P,T3N、スイッチS1~S6、順変換器1、直流リンク部2、逆変換器3、チョッパ回路4、電流検出器5~7、および制御装置8を備える。
【0011】
交流入力端子T1R,T1S,T1Tは、それぞれ商用交流電源11から商用周波数の三相交流電圧VR,VS,VTを受ける。三相交流電圧VR,VS,VTの瞬時値は、制御装置8によって検出される。制御装置8は、三相交流電圧VR,VS,VTに基づいて、商用交流電源11の停電が発生したか否かを検出する。また、制御装置8は、三相交流電圧VR,VS,VTに同期して、順変換器1および逆変換器3を制御する。
【0012】
交流出力端子T2U,T2V,T2Wは、負荷12に接続される。負荷12は、無停電電源装置から交流出力端子T2U,T2V,T2Wを介して供給される商用周波数の三相交流電圧VU,VV,VWによって駆動される。三相交流電圧VU,VV,VWの瞬時値は、制御装置8によって検出される。
【0013】
バッテリ端子T3P,T3Nは、それぞれバッテリ13の正極および負極に接続される。バッテリ13(電力貯蔵装置)は、直流電力を蓄える。バッテリ13の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。バッテリ端子T3P,T3N間の直流電圧VBは、制御装置8によって検出される。
【0014】
スイッチS1~S3の一方端子はそれぞれ交流入力端子T1R,T1S,T1Tに接続され、それらの他方端子はそれぞれノードN1~N3(電源端子)に接続される。スイッチS1~S3は、制御装置8によって制御される。
【0015】
商用交流電源11から三相交流電圧VR,VS,VTが正常に供給されている場合(商用交流電源11の健全時)には、スイッチS1~S3はオンされる。商用交流電源11から三相交流電圧VR,VS,VTが正常に供給されていない場合(商用交流電源11の停電時)には、スイッチS1~S3はオフされる。
【0016】
スイッチS4~S6の一方端子はともにバッテリ端子T3Pに接続され、それらの他方端子はそれぞれノードN1~N3に接続される。スイッチS4~S6は、制御装置8によって制御される。商用交流電源11の健全時には、スイッチS4~S6はオフされる。商用交流電源11の停電時には、スイッチS4~S6はオンされる。スイッチS4~S6は、電力貯蔵装置と電源端子との間に接続された「第1のスイッチ」の一実施例に相当する。スイッチS1~S3は、交流電源と電源端子との間に接続された「第2のスイッチ」の一実施例に相当する。
【0017】
したがって、商用交流電源11の健全時には、ノードN1~N3は商用交流電源11からスイッチS1~S3を介してそれぞれ三相交流電圧VR,VS,VTを受け、商用交流電源11の停電時には、ノードN1~N3はバッテリ13からスイッチS4~S6を介してともにバッテリ電圧VBを受ける。
【0018】
直流リンク部2は、順変換器1、逆変換器3、およびチョッパ回路4の間で直流電力を授受するために設けられている。直流リンク部2は、直流ラインLP,LNおよびコンデンサCdを含む。コンデンサCdは、直流ラインLP,LN間に接続され、直流ラインLP,LN間の直流電圧VDCを平滑化する。直流ラインLNは、バッテリ端子T3Nに接続されている。直流電圧VDCは、制御装置8によって検出される。
【0019】
順変換器1は、制御装置8によって制御される。順変換器1は、商用交流電源11の健全時には、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンク部2に供給する。また、順変換器1は、商用交流電源11の停電時には、バッテリ13からスイッチS4~S6を介して供給される直流電力を直流リンク部2に供給する。
【0020】
詳しく説明すると、順変換器1は、交流フィルタF1およびレグ回路1a~1cを含む。交流フィルタF1は、コンデンサC1~C3およびリアクトルL1~L3を含む。コンデンサC1~C3の一方電極はそれぞれノードN1~N3に接続され、それらの他方電極はともに中性点NPに接続される。リアクトルL1~L3の一方電極はそれぞれノードN1~N3に接続され、それらの他方電極はそれぞれノードN4~N6(中間端子)に接続される。
【0021】
交流フィルタF1は、低域通過フィルタであり、商用交流電源11からレグ回路1a~1cに商用周波数の交流電流を流し、レグ回路1a~1cから商用交流電源11にスイッチング周波数の電流が流れることを防止する。電流検出器5は、リアクトルL1~L3に流れる電流I1~I3を検出し、それらの検出値を示す信号を制御装置8に与える。
【0022】
レグ回路1a,1b,1cは、それぞれR相、S相、およびT相に対応して設けられている。レグ回路1aは、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)素子Q1R,Q2RおよびダイオードD1R,D2Rを含む。レグ回路1bは、IGBT素子Q1S,Q2SおよびダイオードD1S,D2Sを含む。レグ回路1cは、IGBT素子Q1T,Q2TおよびダイオードD1T,D2Tを含む。
【0023】
IGBT素子Q1R,Q1S,Q1Tのコレクタはともに直流ラインLPに接続され、それらのエミッタはそれぞれノードN4~N6に接続される。IGBT素子Q2R,Q2S,Q2TのコレクタはそれぞれノードN4~N6に接続され、それらのエミッタはともに直流ラインLNに接続される。ダイオードD1R,D1S,D1T,D2R,D2S,D2Tは、それぞれIGBT素子Q1R,Q1S,Q1T,Q2R,Q2S,Q2Tに逆並列に接続される。
【0024】
IGBT素子Q1R,Q1S,Q1Tを代表的に総称してIGBT素子Q1と称する場合がある。IGBT素子Q2R,Q2S,Q2Tを代表的に総称してIGBT素子Q2と称する場合がある。IGBT素子Q1,Q2は、それぞれ第1および第2のスイッチング素子を構成する。
【0025】
なお、スイッチング素子として、IGBT素子の代わりに、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)のような任意の自己消弧型半導体スイッチング素子を用いることができる。
【0026】
ダイオードD1R,D1S,D1Tを代表的に総称してダイオードD1と称する場合がある。ダイオードD2R,D2S,D2Tを代表的に総称してダイオードD2と称する場合がある。ダイオードD1,D2は、それぞれ第1および第2のダイオードを構成する。ダイオードD1,D2の各々は、フリーホイールダイオードとして動作する。
【0027】
商用交流電源11の健全時には、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して順変換器1に三相交流電圧VR,VS,VTが供給される。三相交流電圧VR,VS,VTは、ダイオードD1R,D1S,D1T,D2R,D2S,D2Tによって三相全波整流され、さらにコンデンサCdによって平滑化されて直流電圧VDCに変換される。
【0028】
制御装置8は、三相交流電圧VR,VS,VT、三相交流電流I1~I3、および直流電圧VDCに基づいて、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように、レグ回路1a~1cを制御する。
【0029】
すなわち、制御装置8は、IGBT素子Q1,Q2をスイッチング周波数で交互にオンさせ、かつ一周期内におけるIGBT素子Q1のオン時間(すなわちIGBT素子Q2のオフ時間)を調整する。
【0030】
たとえばレグ回路1aでは、IGBT素子Q1Rがオンすると、直流ラインLPがIGBT素子Q1Rを介してノードN4に接続され、ノードN4に正電圧が供給される。IGBT素子Q2Rがオンすると、ノードN4がIGBT素子Q2Rを介して直流ラインLNに接続され、ノードN4に負電圧が供給される。これにより、直流電圧VDCは、2レベルの交流電圧VRctに変換される。レグ回路1b,1cでもレグ回路1aと同様にして、直流電圧VDCが2レベルの交流電圧VSct,VTctに変換される。
【0031】
また、制御装置8は、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように、三相交流電圧VRct,VSct,VTctの位相を制御する。三相交流電圧VRct,VSct,VTctの位相を商用交流電源11からの三相交流電圧VR,VS,VTの位相よりも進ませると、コンデンサCdから順変換器1を介して商用交流電源11に電力が供給されて直流電圧VDCが低下する。
【0032】
逆に、三相交流電圧VRct,VSct,VTctの位相を商用交流電源11からの三相交流電圧VR,VS,VTの位相よりも遅らせると、商用交流電源11から順変換器1を介してコンデンサCdに電力が供給されて直流電圧VDCが上昇する。したがって、直流電圧VDCは参照電圧VDCrに維持される。
【0033】
また、商用交流電源11の停電時には、バッテリ13からスイッチS4~S6を介してノードN1~N3にバッテリ電圧VBが供給される。制御装置8は、電流I1~I3および直流電圧VDCに基づいて、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように、レグ回路1a~1cを制御する。
【0034】
すなわち、制御装置8は、IGBT素子Q2を一定周波数でオンおよびオフさせる。たとえばレグ回路1aでは、IGBT素子Q2Rがオンすると、バッテリ13の正極からスイッチS4、リアクトルL1、IGBT素子Q2R、直流ラインLNを介してバッテリ13の負極に電流が流れ、リアクトルL1に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0035】
次に、IGBT素子Q2Rがオフすると、バッテリ13の正極からスイッチS4、リアクトルL1、ダイオードD1R、直流ラインLP、コンデンサCd、直流ラインLNを介してバッテリ13の負極に電流が流れ、コンデンサCdが充電される。
【0036】
このとき、リアクトルL1の電磁エネルギーが放出されるので、直流電圧VDCはバッテリ電圧VBよりも高くなる。すなわち、バッテリ電圧VBは昇圧されて直流電圧VDCに変換される。レグ回路1b,1cでもレグ回路1aと同様にして、バッテリ電圧VDCが昇圧されて直流電圧VDCに変換される。
【0037】
また、制御装置8は、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように、IGBT素子Q2をオンおよびオフさせる信号の一周期内におけるIGBT素子Q2のオン時間を調整する。たとえばレグ回路1aでは、IGBT素子Q2Rのオン時間を長くすると、リアクトルL1に蓄えられる電磁エネルギーが増大し、直流電圧VDCが上昇する。
【0038】
逆に、IGBT素子Q2Rのオン時間を短くすると、リアクトルL1に蓄えられる電磁エネルギーが減少し、直流電圧VDCが下降する。レグ回路1b,1cでもレグ回路1aと同様にして、直流電圧VDCのレベルが調整される。したがって、直流電圧VDCは参照電圧VDCrに維持される。
【0039】
さらに、制御装置8は、IGBT素子Q2Rをオンおよびオフさせる信号の位相と、IGBT素子Q2Sをオンおよびオフさせる信号の位相と、IGBT素子Q2Tをオンおよびオフさせる信号の位相とを120度ずつずらせるインターリーブ動作を行なう。
【0040】
これにより、互いに異なるタイミングでダイオードD1R,D1S,D1Tをオンさせることができバッテリ13からダイオードD1R,D1S,D1Tを介して直流リンク部2に直流電力が供給されるタイミングをずらすことができる。したがって、商用交流電源11の停電時に、直流電圧VDCに発生するリプル電圧を低減することができる。
【0041】
また、このときリアクトルL1~L3に流れる電流I1~I3の和はバッテリ13の出力電流に相当する。本実施の形態1では、バッテリ13の出力電流のリプルを小さくすることができる。このため、バッテリ13の出力電流のリプルを小型のリアクトルL1~L3で低減することができ、装置の大型化を抑制することができる。
【0042】
次に、逆変換器3は、制御装置8によって制御される。逆変換器3は、順変換器1から直流リンク部2を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して負荷12に供給する。
【0043】
詳しく説明すると、逆変換器3は、レグ回路3a,3b,3cおよび交流フィルタF2を含む。レグ回路3a,3b,3cは、それぞれU相、V相、およびW相に対応して設けられている。レグ回路3aは、IGBT素子Q3U,Q4UおよびダイオードD3U,D4Uを含む。レグ回路3bは、IGBT素子Q3V,Q4VおよびダイオードD3V,D4Vを含む。レグ回路3cは、IGBT素子Q3W,Q4WおよびダイオードD3W,D4Wを含む。
【0044】
IGBT素子Q3U,Q3V,Q3Wのコレクタはともに直流ラインLPに接続され、それらのエミッタはそれぞれノードN7~N9に接続される。IGBT素子Q4U,Q4V,Q4WのコレクタはそれぞれノードN7~N9に接続され、それらのエミッタはともに直流ラインLNに接続される。ダイオードD3U,D3V,D3W,D4U,D4V,D4Wは、それぞれIGBT素子Q3U,Q3V,Q3W,Q4U,Q4V,Q4Wに逆並列に接続される。
【0045】
IGBT素子Q3U,Q3V,Q3Wを代表的に総称してIGBT素子Q3と称する場合がある。IGBT素子Q4U,Q4V,Q4Wを代表的に総称してIGBT素子Q4と称する場合がある。
【0046】
ダイオードD3U,D3V,D3Wを代表的に総称してダイオードD3と称する場合がある。ダイオードD4U,D4V,D4Wを代表的に総称してダイオードD4と称する場合がある。ダイオードD3,D4の各々は、フリーホイールダイオードとして動作する。
【0047】
制御装置8は、IGBT素子Q3,Q4をスイッチング周波数で交互にオンさせ、かつ一周期内におけるIGBT素子Q3のオン時間(すなわちIGBT素子Q4のオフ時間)を調整する。
【0048】
たとえばレグ回路3aでは、IGBT素子Q3Uがオンすると、直流ラインLPがIGBT素子Q3Uを介してノードN7に接続され、ノードN7に正電圧が供給される。IGBT素子Q4Uがオンすると、ノードN7がIGBT素子Q4Uを介して直流ラインLNに接続され、ノードN7に負電圧が供給される。
【0049】
これにより、直流電圧VDCは、2レベルの交流電圧VUpに変換される。レグ回路3b,3cでもレグ回路3aと同様にして、直流電圧VDCが2レベルの交流電圧VVp,VWpに変換される。三相交流電圧VUp,VVp,VWpは、それぞれ商用交流電源11からの三相交流電圧VR,VS,VTに同期している。
【0050】
また、交流フィルタF2は、リアクトルL4~L6およびコンデンサC4~C6を含む。リアクトルL4~L6の一方電極はそれぞれノードN7~N9に接続され、それらの他方電極はそれぞれ交流出力端子T2U,T2V,T2Wに接続される。コンデンサC4~C6の一方電極はそれぞれ交流出力端子T2U,T2V,T2Wに接続され、それらの他方電極はともに中性点NPに接続される。
【0051】
交流フィルタF2は、低域通過フィルタであり、レグ回路3a~3cから負荷12に商用周波数の交流電流を流し、レグ回路3a~3cから負荷12にスイッチング周波数の電流が流れることを防止する。換言すると、交流フィルタF2は、レグ回路3a~3cによって生成された三相交流電圧VUp,VVp,VWpを商用周波数で正弦波状に変化する三相交流電圧VU,VV,VWに変換する。
【0052】
電流検出器6は、リアクトルL4~L6に流れる電流I4~I6を検出し、それらの検出値を示す信号を制御装置8に与える。制御装置8は、三相交流電圧VU,VV,VWおよび三相交流電流I4~I6に基づいて、三相交流電圧VU,VV,VWが参照交流電圧VUr,VVr,VWrになるようにレグ回路3a~3cを制御する。
【0053】
チョッパ回路4は、制御装置8によって制御され、商用交流電源11の健全時に、順変換器1によって生成された直流電力をバッテリ13に蓄える。電流検出器7は、チョッパ回路4とバッテリ13との間に流れる電流IBを検出し、その検出値を示す信号を制御装置8に与える。制御装置8は、バッテリ電圧VBおよび電流IBに基づいて、バッテリ電圧VBが参照電圧VBrになるようにチョッパ回路4を制御する。
【0054】
具体的には、チョッパ回路4は、ハーフブリッジチョッパであって、IGBT素子Q5,Q6、ダイオードD5,D6、およびリアクトルL7を含む。IGBT素子Q5のコレクタは直流ラインLPに接続され、そのエミッタはノードN10に接続される。IGBT素子Q6のコレクタはノードN10に接続され、そのエミッタは直流ラインLNおよびバッテリ端子T3Nに接続される。リアクトルL7は、ノードN10とバッテリ端子T3Pとの間に接続される。
【0055】
制御装置8は、商用交流電源11の健全時に、IGBT素子Q5を一定周波数でオンおよびオフさせる。IGBT素子Q5がオンされると、直流ラインLPからIGBT素子Q5、リアクトルL7、およびバッテリ13を介して直流ラインLNに電流が流れ、バッテリ13が充電されるとともに、リアクトルL7に電磁エネルギーが蓄えられる。IGBT素子Q5がオフされると、ノードN10からリアクトルL7、バッテリ13、およびダイオードD6を介してノードN10に電流が流れ、バッテリ13が充電されるとともに、リアクトルL7の電磁エネルギーが放出される。
【0056】
制御装置8は、バッテリ電圧VBが参照電圧VBrになるように、IGBT素子Q5をオンおよびオフさせる信号の一周期内におけるIGBT素子Q5のオン時間を調整する。制御装置8は、参照電圧VBrとバッテリ電圧VBの差ΔVB=VBr-VBが大きいほど、IGBT素子Q5のオン時間を長くし、ΔVBが小さいほど、IGBT素子Q5のオン時間を短くする。ΔVB=0になると、制御装置8は、IGBT素子Q5をオフ状態に維持する。
【0057】
このような制御装置8の機能は、処理装置9を用いて実現できる。ここでいう処理装置9は、専用処理回路のような専用のハードウェアや、プロセッサおよび記憶装置のことをいう。専用のハードウェアを利用する場合、専用処理回路は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。
【0058】
プロセッサおよび記憶装置を利用する場合、上記の各機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組合せにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、記憶装置に記憶される。プロセッサは記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行する。これらのプログラムは、上記の各機能を実現する手順および方法をコンピュータに実行させるものであるとも言える。
【0059】
記憶装置は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory(登録商標))といった半導体メモリが該当する。半導体メモリは、不揮発性メモリでもよいし揮発性メモリでもよい。また、記憶装置は、半導体メモリ以外にも、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスクまたはDVD(Digital Versatile Disc)が該当する。
【0060】
図2は、制御装置8の構成を示すブロック図である。
図2において、制御装置8は、電圧検出器20,22~24、停電検出器21、および制御回路25を備える。電圧検出器20は、商用交流電源11から供給される三相交流電圧VR,VS,VTの瞬時値を検出し、それらの検出値を示す信号Vifを停電検出器21および制御回路25に与える。
【0061】
停電検出器21は、電圧検出器20の出力信号Vifに基づいて、商用交流電源11の停電が発生したか否かを判別し、判別結果を示す信号DT1を制御回路25に与える。たとえば、電圧検出器20の出力信号Vifによって示される三相交流電圧VR,VS,VTのレベルが下限値よりも小さい場合には停電検出信号DT1は活性化レベルの「L」レベルにされ、三相交流電圧VR,VS,VTのレベルが下限値よりも大きい場合には停電検出信号DT1は非活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0062】
電圧検出器22は、直流ラインLP,LN間の直流電圧VDCを検出し、その検出値を示す信号VDCfを制御回路25に与える。電圧検出器23は、逆変換器3によって生成される三相交流電圧VU,VV,VWの瞬時値を検出し、それらの検出値を示す信号Vofを制御回路25に与える。電圧検出器24は、バッテリ13の端子間電圧VBを検出し、その検出値を示す信号VBfを制御回路25に与える。
【0063】
制御回路25は、電圧検出器20,22,23,24の出力信号Vif,VDCf,Vof,VBf、電流検出器5,6,7(
図1)の出力信号Iif,Iof,IBf、および停電検出器21の出力信号DT1に基づいて、スイッチS1~S3、スイッチS4~S6、順変換器1、逆変換器3、およびチョッパ回路4を制御する。
【0064】
制御回路25は、制御ブロックB1~B4を含む。制御ブロックB1は、スイッチS1~S6を制御する。制御ブロックB2は、順変換器1を制御する。制御ブロックB3は、逆変換器3を制御する。制御ブロックB4は、チョッパ回路4を制御する。
【0065】
図3は、制御ブロックB1の構成を示すブロック図である。
図3において、制御
ブロックB1は、制御部26および駆動回路27を含む。制御部26は、停電検出信号DT1に従って、スイッチS1~S3を制御するための信号SAと、スイッチS4~S6を制御するための信号SBとを生成する。
【0066】
停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルである場合には、信号SA,SBはそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルである場合には、信号SA,SBはそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。
【0067】
駆動回路27は、信号SA,SBに従って、制御電圧VSA,VSBを生成する。信号SA,SBがそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルである場合には、制御電圧VSA,VSBはそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルにされる。信号SA,SBがそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルである場合には、制御電圧VSA,VSBはそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルにされる。
【0068】
制御電圧VSAが「H」レベルにされるとスイッチS1~S3がオンし、制御電圧VSAが「L」レベルにされるとスイッチS1~S3がオフする。制御電圧VSBが「H」レベルにされるとスイッチS4~S6がオンし、制御電圧VSBが「L」レベルにされるとスイッチS4~S6がオフする。
【0069】
したがって、商用交流電源11の健全時には、スイッチS1~S3がオンされるとともに、スイッチS4~S6がオフされる。また、商用交流電源11の停電時には、スイッチS1~S3がオフされるとともに、スイッチS4~S6がオンされる。
【0070】
図4は、制御ブロックB2(
図2)の構成を示すブロック図である。
図4において、制御
ブロックB2は、参照電圧発生部30、制御部31,32、切換回路33、およびゲート駆動回路34を含む。
【0071】
参照電圧発生部30は、参照電圧VDCrを生成する。制御部31は、参照電圧VDCr、電圧検出器20,22の出力信号Vif,VDCf、および電流検出器5の出力信号Iifに基づいて、三相交流電圧VR,VS,VTを直流電圧VDCに変換するためのPWM(Pulse Width modulation)信号φ31を生成する。
【0072】
制御部32は、参照電圧VDCr、電圧検出器22の出力信号VDCfおよび電流検出器5の出力信号Iifに基づいて、バッテリ電圧VBを昇圧して直流電圧VDCを生成するためのPWM信号φ32を生成する。
【0073】
切換回路33は、停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルである場合には、制御部31からのPWM信号φ31をゲート駆動回路34に与え、停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部32からのPWM信号φ32をゲート駆動回路34に与える。
【0074】
ゲート駆動回路34は、切換回路33からのPWM信号φ31またはφ32に従って、IGBT素子Q1R,Q1S,Q1T,Q2R,Q2S,Q2Tの各々をオンおよびオフさせるためのゲート信号φ34を生成する。
【0075】
図5は、制御部31(
図4)の構成を示すブロック図である。
図5において、制御部31は、電圧制御部40、電流制御部41~43、およびPWM部44~46を含む。電圧制御部40は、参照電圧VDCrと電圧検出器22の出力信号VDCfによって示される直流電圧VDCとの差ΔVDC=VDCr-VDCに応じた値の電流指令値Ic1を生成する。
【0076】
電流制御部41は、電流指令値Ic1と、電流検出器5の出力信号Iifによって示される交流入力電流I1と、電圧検出器20の出力信号Vifによって示される交流電圧VRとに基づいて、商用周波数で正弦波状に変化する電圧指令値Vc1を生成する。
【0077】
電流制御部42は、電流指令値Ic1と、電流検出器5の出力信号φIifによって示される交流入力電流I2と、電圧検出器20の出力信号Vifによって示される交流電圧VSとに基づいて、商用周波数で正弦波状に変化する電圧指令値Vc2を生成する。
【0078】
電流制御部43は、電流指令値Ic1と、電流検出器5の出力信号Iifによって示される交流入力電流I3と、電圧検出器20の出力信号Vifによって示される交流電圧VTとに基づいて、商用周波数で正弦波状に変化する電圧指令値Vc3を生成する。電圧指令値Vc1,Vc2,Vc3の位相は、120度ずつずれている。
【0079】
PWM部44は、電圧指令値Vc1と、スイッチング周波数で三角波状に変化する両極キャリア信号との高低を比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1R,Q2Rを制御するためのPWM信号P1R,P2Rを生成する。PWM信号P2Rは、PWM信号P1Rを反転させた信号である。
【0080】
PWM部45は、電圧指令値Vc2と、スイッチング周波数で三角波状に変化する両極キャリア信号との高低を比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1S,Q2Sを制御するためのPWM信号P1S,P2Sを生成する。PWM信号P2Sは、PWM信号P1Sを反転させた信号である。
【0081】
PWM部46は、電圧指令値Vc3と、スイッチング周波数で三角波状に変化する両極キャリア信号との高低を比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1T,Q2Tを制御するためのPWM信号P1T,P2Tを生成する。PWM信号P2Tは、PWM信号P1Tを反転させた信号である。PWM信号P1R,P2R,P1S,P2S,P1T,P2Tは、PWM信号φ31(
図4)に含まれている。
【0082】
切換回路33によってPWM信号φ31が選択された場合には、ゲート駆動回路34(
図4)は、PWM信号P1R,P2R,P1S,P2S,P1T,P2Tに従って、IGBT素子Q1R,Q2R,Q1S,Q2S,Q1T,Q2Tを制御するためのゲート信号G1R,G2R,G1S,G2S,G1T,G2Tを生成する。ゲート信号G1R,G2R,G1S,G2S,G1T,G2Tは、ゲート信号φ34(
図4)に含まれている。
【0083】
PWM信号P1R,P1S,P1Tを代表的に総称してPWM信号P1と称する場合がある。ゲート信号G1R,G1S,G1Tを代表的に総称してゲート信号G1と称する場合がある。PWM信号P1が「H」レベルにされると、ゲート信号G1が「H」レベルにされる。PWM信号P1が「L」レベルにされると、ゲート信号G1が「L」レベルにされる。ゲート信号G1は、IGBT素子Q1のゲートおよびエミッタ間に印加される。
【0084】
PWM信号P2R,P2S,P2Tを代表的に総称してPWM信号P2と称する場合がある。ゲート信号G2R,G2S,G2Tを代表的に総称してゲート信号G2と称する場合がある。PWM信号P2が「H」レベルにされると、ゲート信号G2が「H」レベルにされる。PWM信号P2が「L」レベルにされると、ゲート信号G2が「L」レベルにされる。ゲート信号G2は、IGBT素子Q2のゲートおよびエミッタ間に印加される。
【0085】
図6は、PWM部44(
図5)の構成を示す回路ブロック図である。
図6において、PWM部44は、両極キャリア生成部50、比較器51、および反転回路52を含む。両極キャリア生成部50は、両極キャリア信号φ50を生成する。両極キャリア信号φ50は、負電圧(-Va)と正電圧(+Va)の間で、スイッチング周波数で三角波状に変化する。電圧指令値Vc1は、両極キャリア信号φ50よりも小さな振幅で、商用周波数で正弦波状に変化する。
【0086】
電圧指令値Vc1は、比較器51の非反転入力端子(+端子)に与えられる。両極キャリア信号φ50は、比較器51の反転入力端子(-端子)に与えられる。比較器51は、電圧指令値Vc1と両極キャリア信号φ50との高低を比較し、比較結果を示す信号をPWM信号P1Rとして出力する。反転回路52は、PWM信号P1Rを反転させてPWM信号P2Rを出力する。
【0087】
電圧指令値Vc1のレベルが両極キャリア信号φ50のレベルよりも高い場合には、PWM信号P1R,P2Rはそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルとなる。電圧指令値Vc1のレベルが両極キャリア信号φ50のレベルよりも低い場合には、PWM信号P1R,P2Rはそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルとなる。PWM部45,46の各々の構成は、PWM部44の構成と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0088】
なお、実際には、IGBT素子Q1,Q2が同時にオンして直流ラインLP,LNが短絡されることを防止するため、PWM信号にデッドタイムを付与する回路がPWM部44~46の後段に設けられている。
【0089】
図7は、制御部32(
図4)の構成を示すブロック図である。
図7において、制御部32は、電圧制御部60、電流制御部61、およびPWM部62~64を含む。電圧制御部60は、参照電圧VDCrと電圧検出器22の出力信号VDCfによって示される直流電圧VDCとの差ΔVDC=VDCr-VDCに応じた値の電流指令値IcAを生成する。電流制御部61は、電流指令値IcAと、電流検出器5の出力信号Iifによって示される電流I1~I3とに基づいて、直流の電圧指令値VcAを生成する。
【0090】
PWM部62は、電圧指令値VcAと、一定周波数で三角波状に変化する第1正極キャリア信号との高低を比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1R,Q2Rを制御するためのPWM信号P1RA,P2RAを生成する。PWM信号P2RAは、PWM信号P1RAを反転させた信号である。
【0091】
PWM部63は、電圧指令値VcAと、一定周波数で三角波状に変化する第2正極キャリア信号との高低を比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1S,Q2Sを制御するためのPWM信号P1SA,P2SAを生成する。PWM信号P2SAは、PWM信号P1SAを反転させた信号である。
【0092】
PWM部64は、電圧指令値VcAと、一定周波数で三角波状に変化する第3正極キャリア信号との高低を比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1T,Q2Tを制御するためのPWM信号P1TA,P2TAを生成する。PWM信号P2TAは、PWM信号P1TAを反転させた信号である。PWM信号P1RA,P2RA,P1SA,P2SA,P1TA,P2TAは、PWM信号φ32(
図4)に含まれている。
【0093】
切換回路33によってPWM信号φ32が選択された場合には、ゲート駆動回路34(
図4)は、PWM信号P1RA,P2RA,P1SA,P2SA,P1TA,P2TAに従って、IGBT素子Q1R,Q2R,Q1S,Q2S,Q1T,Q2Tを制御するためのゲート信号G1R,G2R,G1S,G2S,G1T,G2Tを生成する。ゲート信号G1R,G2R,G1S,G2S,G1T,G2Tは、ゲート信号φ34(
図4)に含まれている。
【0094】
PWM信号P1RA,P1SA,P1TAを代表的に総称してPWM信号P1Aと称する場合がある。PWM信号P1Aが「H」レベルにされると、ゲート信号G1が「H」レベルにされる。PWM信号P1Aが「L」レベルにされると、ゲート信号G1が「L」レベルにされる。ゲート信号G1は、IGBT素子Q1のゲートおよびエミッタ間に印加される。
【0095】
PWM信号P2RA,P2SA,P2TAを代表的に総称してPWM信号P2Aと称する場合がある。PWM信号P2Aが「H」レベルにされると、ゲート信号G2が「H」レベルにされる。PWM信号P2Aが「L」レベルにされると、ゲート信号G2が「L」レベルにされる。ゲート信号G2は、IGBT素子Q2のゲートおよびエミッタ間に印加される。
【0096】
図8は、PWM部62の構成を示す回路ブロック図である。
図8において、PWM部62は、正極キャリア生成部70、比較器71、および反転回路72を含む。正極キャリア生成部70は、第1正極キャリア信号φ70Rを生成する。第1正極キャリア信号φ70Rは、基準電圧(0V)と正電圧(+Vb)の間で、一定周波数で三角波状に変化する。電圧指令値VcAは、基準電圧(0)と正電圧(+Vb)の間の直流電圧である。
【0097】
電圧指令値VcAは、比較器71の非反転入力端子(+端子)に与えられる。第1正極キャリア信号φ70Rは、比較器71の反転入力端子(-端子)に与えられる。比較器71は、電圧指令値VcAと第1正極キャリア信号φ70Rとの高低を比較し、比較結果を示す信号をPWM信号P1RAとして出力する。反転回路72は、PWM信号P1RAを反転させてPWM信号P2RAを出力する。
【0098】
電圧指令値VcAのレベルが正極キャリア信号φ70のレベルよりも高い場合には、PWM信号P1RA,P2RAはそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルとなる。電圧指令値VcAのレベルが正極キャリア信号φ70のレベルよりも低い場合には、PWM信号P1RA,P2RAはそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルとなる。
【0099】
PWM部63,64の各々の構成は、PWM部62の構成と同じである。ただし、PWM部63,64の正極キャリア生成部70は、それぞれ第1正極キャリア信号φ70Sおよび第2正極キャリア信号φ70Tを生成する。
【0100】
なお、実際には、IGBT素子Q1,Q2が同時にオンして直流ラインLP,LNが短絡されることを防止するため、PWM信号にデッドタイムを付与する回路がPWM部62~64の後段に設けられている。
【0101】
図9は、
図7に示すPWM部62~
64で生成される正極キャリア信号φ70R,φ70S,φ70Tの波形を示す図である。
図9に示すように、正極キャリア信号φ70R,φ70S,φ70Tの位相は、120度ずつずれている。このため、PWM信号P2RA,P2SA,P2TAの位相も120度ずつずれ、ゲート信号G2R,G2S,G2Tの位相も120度ずつずれる。
【0102】
したがって、順変換器1のIGBT素子Q2R,Q2S,Q2Tがオンおよびオフされるタイミングが一周期の1/3ずつずれ、バッテリ13からダイオードD1R,D1S,D1Tを介してコンデンサCdに電流が流れるタイミングが一周期の1/3ずつずれる。よって、直流電圧VDCに重畳されるリプル電圧の振幅を小さくすることができる。
【0103】
図10は、制御ブロックB3(
図2)の構成を示すブロック図である。
図10において、制御
ブロックB3は、参照電圧発生部75、制御部76、およびゲート駆動回路77を含む。
【0104】
参照電圧発生部75は、三相の参照電圧VUr,VVr,VWrを生成する。参照電圧VUr,VVr,VWrの各々は、商用周波数で正弦波状に変化する。参照電圧VUr,VVr,VWrの位相は、120度ずつずれている。
【0105】
制御部76は、参照電圧VUr,VVr,VWr、電圧検出器23(
図2)の出力信号Vof、および電流検出器6の出力信号Iofに基づいて、直流電圧VDCを三相交流電圧VR,VS,VTに変換するためのPWM信号φ76を生成する。PWM信号φ76は、それぞれIGBT素子Q3U,Q3V,Q3W,Q4U,Q4V,Q4Wに対応する6つのPWM信号P3U,P3V,P3W,P4U,P4V,P4Wを含む。
【0106】
ゲート駆動回路77は、PWM信号φ76に従って、IGBT素子Q3U,Q3V,Q3W,Q4U,Q4V,Q4Wの各々をオンおよびオフさせるためのゲート信号φ77を生成する。ゲート信号φ77は、ゲート信号G3U,G3V,G3W,G4U,G4V,G4Wを含む。ゲート信号G3U,G3V,G3W,G4U,G4V,G4Wは、それぞれIGBT素子Q3U,Q3V,Q3W,Q4U,Q4V,Q4Wのゲートおよびエミッタ間に与えられる。これにより、IGBT素子Q3U,Q3V,Q3W,Q4U,Q4V,Q4Wの各々がオンおよびオフされ、直流電圧VDCが三相交流電圧VU,VV,VWに変換される。
【0107】
図11は、制御ブロックB4(
図2)の構成を示すブロック図である。
図11において、制御
ブロックB4は、参照電圧発生部80、制御部81、およびゲート駆動回路82を含む。
【0108】
参照電圧発生部80は、参照電圧VBrを生成する。制御部81は、参照電圧VBr、電圧検出器24の出力信号VBf、および電流検出器7の出力信号IBfに基づいて、直流電圧VDCをバッテリ電圧VBに変換するためのPWM信号P5,P6を生成する。PWM信号P6は、PWM信号P5の反転信号である。
【0109】
ゲート駆動回路82は、停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルである場合には、PWM信号P5,P6に従って、IGBT素子Q5,Q6の各々をオンおよびオフさせるためのゲート信号G5,G6を生成する。また、ゲート駆動回路82は、停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルである場合には、ゲート信号G5,G6の各々を「L」レベルに維持する。
【0110】
ゲート信号G5,G6は、それぞれIGBT素子Q5,Q6のゲートおよびエミッタ間に与えられる。これにより、商用交流電源11の健全時には、IGBT素子Q5が一定周波数でオンおよびオフされ、直流電圧VDCがバッテリ電圧VBに変換される。なお、IGBT素子Q5がオフされると、リアクトルL7、バッテリ13、およびダイオードD6の経路で電流が流れるので、ゲート信号G6が「H」レベルにされてもIGBT素子Q6はオンしない。また、商用交流電源11の停電時には、IGBT素子Q5,Q6はともにオフされ、チョッパ回路4の運転は停止される。
【0111】
次に、
図1~
図11で示した無停電電源装置の動作について説明する。商用交流電源11の健全時には、停電検出器21(
図2)によって停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルにされ、制御部26および駆動回路27(
図3)によって、スイッチS1~S3がオンされるとともにスイッチS4~S6がオフされる。これにより、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して順変換器1に三相交流電圧VR,VS,VTが供給される。
【0112】
また、切換回路33(
図4)によって制御部31が選択され、参照電圧発生部30、制御部31、およびゲート駆動回路34によって順変換器1(
図1)が運転され、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して供給される三相交流電圧VR,VS,VTが順変換器1によって直流電圧VDCに変換される。
【0113】
また、参照電圧発生部75、制御部76、およびゲート駆動回路77(
図10)によって逆変換器3(
図1)が運転され、直流電圧VDCが三相交流電圧VU,VV,VWに変換されて負荷12に供給される。
【0114】
また、参照電圧発生部80、制御部81、およびゲート駆動回路82(
図11)によってチョッパ回路(
図1)が運転され、直流電圧VDCが降圧されてバッテリ13に供給され、バッテリ13が充電される。
【0115】
商用交流電源11の停電が発生すると、停電検出器21(
図2)によって停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルにされ、制御部26および駆動回路27(
図3)によって、スイッチS1~S3がオフされるとともにスイッチS4~S6がオンされる。これにより、バッテリ13の直流電圧VBがスイッチS4~S6を介して順変換器1に供給される。また、ゲート駆動回路82(
図11)によってチョッパ回路(
図1)の運転が停止される。
【0116】
また、切換回路33(
図4)によって制御部32が選択され、参照電圧発生部30、制御部32、およびゲート駆動回路34によって順変換器1(
図1)が運転され、バッテリ13からスイッチS4~S6を介して供給される直流電圧VBが順変換器1によって昇圧されて直流電圧VDCに変換される。
【0117】
また、参照電圧発生部75、制御部76、およびゲート駆動回路77(
図10)によって逆変換器3(
図1)が運転され、直流電圧VDCが三相交流電圧VU,VV,VWに変換されて負荷12に供給される。したがって、商用交流電源11の停電が発生した場合でも、バッテリ13に直流電力が蓄えられている期間は、負荷12の運転を継続することができる。
【0118】
以上のように、この実施の形態1では、商用交流電源11の停電時に順変換器1が定格直流電力を逆変換器3に供給するので、定格直流電力を逆変換器3に供給する機能をチョッパ回路4が有する必要はない。したがって、チョッパ回路4の小型化を図ることができ、ひいては無停電電源装置の小型化を図ることができる。
【0119】
また、商用交流電源11の停電時に、順変換器1のIGBT素子Q2R,Q2S,Q2Tをオンおよびオフさせるタイミングを一周期の1/3ずつずらすことにより、バッテリ13からダイオードD1R,D1S,D1Tを介してコンデンサCdに電流を流すタイミングを一周期の1/3ずつずらすので、直流電圧VDCに重畳されるリプル電圧の振幅を小さく抑制することができる。また、バッテリ13の出力電流のリプルを小型のリアクトルL1~L3で低減することができ、装置の大型化を抑制することができる。
【0120】
実施の形態2.
図12は、実施の形態2に従う無停電電源装置における過負荷時の動作を示すブロック図である。
図12において、この無停電電源装置では、商用交流電源11の健全時において過負荷時には、負荷12の消費電力Paが順変換器1とチョッパ回路4の両方から供給される。このとき、チョッパ回路4は、一定の直流電力Pbを供給し、順変換器1は、残りの直流電力Pc=Pa-Pbを供給する。一定の直流電力Pbは、たとえば、チョッパ回路4の定格電力以下の値に設定される。
【0121】
具体的には、制御装置8(
図1)は、電流検出器6の出力信号φ6によって示される交流電流I4~I6(負荷電流)が上限値を超えた場合(過負荷時)に、チョッパ回路4から逆変換器3に直流電力Pbが供給されるようにチョッパ回路4を制御するとともに、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように順変換器1を制御する。これにより、順変換器1から逆変換器3に直流電力Pc=Pa-Pbが供給される。順変換器1の制御方法は実施の形態1と同じであるが、チョッパ回路4の制御方法は実施の形態1と異なる。
【0122】
次に、チョッパ回路4の制御方法について詳細に説明する。商用交流電源11の健全時において過負荷時には、制御装置8は、チョッパ回路4のIGBT素子Q6(
図1)を一定周波数でオンおよびオフさせる。IGBT素子Q6がオンすると、バッテリ13の正極からリアクトルL7およびIGBT素子
Q6を介してバッテリ13の負極に電流が流れ、リアクトルL7に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0123】
IGBT素子Q6がオフすると、バッテリ13の正極からリアクトルL7、ダイオードD5、直流ラインLP、コンデンサCd、および直流ラインLNを介してバッテリ13の負極に電流が流れ、コンデンサCdが充電される。このとき、リアクトルL7の電磁エネルギーが放出され、バッテリ電圧VBが昇圧されて直流電圧VDCに変換される。
【0124】
図13は、この無停電電源装置の要部を示すブロック図であって、
図4と対比される図である。
図13を参照して、この無停電電源装置が実施の形態1の無停電電源装置と異なる点は、制御回路25(
図2)において、制御ブロックB4が制御ブロックB5と置換されている点である。制御ブロックB5は、制御ブロックB4に、制御部83、過負荷検出器84、および切換回路85を追加したものである。
【0125】
制御部83は、電圧検出器24の出力信号VBf、および電流検出器7の出力信号IBfに基づいて、過負荷時に一定の直流電力Pbを直流リンク部2に供給するためのPWM信号P5A,P6Aを生成する。PWM信号P6Aは、PWM信号P5Aの反転信号である。
【0126】
過負荷検出器84は、電流検出器6の出力信号Iofに基づいて、負荷電流I4~I6が上限値IHを超えているか否かを判別し、判別結果を示す信号DT2を出力する。負荷電流I4~I6が上限値IHを超えていない場合(すなわち過負荷でない場合)には、過負荷検出信号DT2は非活性化レベルの「L」レベルにされる。負荷電流I4~I6が上限値IHを超えている場合(すなわち過負荷である場合)には、過負荷検出信号DT2は活性化レベルの「H」レベルにされる。
【0127】
切換回路85は、過負荷検出信号DT2が非活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部81からのPWM信号P5,P6をゲート駆動回路82に与え、過負荷検出信号DT2が活性化レベルの「H」レベルである場合には、制御部83からのPWM信号P5A,P6Aをゲート駆動回路82に与える。
【0128】
過負荷検出信号DT2が非活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部81からのPWM信号P5,P6が切換回路85を介してゲート駆動回路82に与えられる。この場合にはチョッパ回路4は、実施の形態1と同様に制御される。
【0129】
過負荷検出信号DT2が活性化レベルの「H」レベルである場合には、制御部83からのPWM信号P5A,P6Aが切換回路85を介してゲート駆動回路82に与えられる。ゲート駆動回路82は、PWM信号P5A,P6Aに従って、IGBT素子Q5,Q6の各々をオンおよびオフさせるためのゲート信号G5,G6を生成する。
【0130】
ゲート信号G5,G6は、それぞれIGBT素子Q5,Q6のゲートおよびエミッタ間に与えられる。これにより、過負荷時には、IGBT素子Q6が一定周波数でオンおよびオフされ、バッテリ電圧VBが直流電圧VDCに変換される。
【0131】
なお、IGBT素子Q6がオフされると、バッテリ13の正極からリアクトルL7、ダイオードD5、およびコンデンサCdを介してバッテリ13の負極に電流が流れるので、ゲート信号G5が「H」レベルにされてもIGBT素子Q5はオンしない。また、商用交流電源11の停電時には、IGBT素子Q5,Q6はともにオフされ、チョッパ回路4の運転は停止される。
【0132】
以上のように、この実施の形態2では、過負荷時には順変換器1およびチョッパ回路4の両方から直流電力を逆変換器3に供給するので、過負荷時を想定した順変換器1の熱設計の条件を緩和することができ、順変換器1の小型化を図ることができる。
【0133】
実施の形態3.
スイッチS1~S3(
図1)を機械スイッチによって構成した場合、停電検出信号DT1(
図2)が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられてから、スイッチS1~S3がオン状態からオフ状態に変化するまで、ある程度の時間Toffがかかる。また、商用交流電源11の最終段は、三相変圧器である。
【0134】
したがって、停電検出信号DT1の「H」レベルから「L」レベルへの立下りエッジに応答して直ぐに順変換器1の昇圧動作を行なうと、順変換器1のレグ回路1a~1cがスイッチS1~S3を介して三相変圧器によって短絡され、過電流が流れる恐れがある。
【0135】
そこで、この実施の形態3では、停電検出信号DT1が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられてから、ある時間Tdが経過するまで順変換器1の昇圧動作を停止させる。時間Tdは、スイッチS1~S3がオン状態からオフ状態に変化するために必要な時間Toffと同じか、それよりも長い時間である。
【0136】
しかし、商用交流電源11の停電が発生してから時間Tdが経過するまで順変換器1の昇圧動作を停止させると、逆変換器3によってコンデンサCdの直流電力が消費され、直流電圧VDCが下降する。直流電圧VDCが下限値VDCLよりも低下すると、逆変換器3の変調率が過大になり、負荷12に供給される三相交流電圧VU,VV,VWの波形が歪む。このため、直流電圧VDCが下限値VDCLよりも低下すると、逆変換器3の運転が停止され、負荷12の運転が停止される。
【0137】
そこで、本実施の形態3では、商用交流電源11の停電が発生してから時間Tdが経過するまでの期間には、チョッパ回路4から逆変換器3に直流電力を供給させて、直流電圧VDCの低下を抑制する。
【0138】
図14は、実施の形態3に従う無停電電源装置に含まれる制御ブロックB6の構成を示すブロック図であって、
図4と対比される図である。
図14を参照して、実施の形態3に従う無停電電源装置は、制御回路25(
図2)において、制御ブロックB2に代えて制御ブロックB6を備える。制御ブロックB6が
図4の制御ブロックB2と異なる点は、信号発生回路90が追加され、ゲート駆動回路34がゲート駆動回路91で置換されている点である。
【0139】
信号発生回路90は、停電検出信号DT1の「H」レベルから「L」レベルへの立下りエッジに応答して信号φ90を「L」レベルから「H」レベルに立ち上げた後、一定時間Tdの経過後に信号φ90を「H」レベルから「L」レベルに立ち下げる。
【0140】
ゲート駆動回路91は、信号φ90が「L」レベルである期間にはゲート駆動回路34(
図4)と同様に動作し、切換回路33からのPWM信号φ31またはφ32に従って、IGBT素子Q1R,Q1S,Q1T,Q2R,Q2S,Q2Tの各々をオンおよびオフさせるためのゲート信号φ91を生成する。このゲート信号φ91は、ゲート信号G1R,G2R,G1S,G2S,G1T,G2Tを含む。
【0141】
ゲート駆動回路91は、信号φ90が「H」レベルである期間には、ゲート信号G1R,G2R,G1S,G2S,G1T,G2Tをともに「L」レベルにして、IGBT素子Q1R,Q1S,Q1T,Q2R,Q2S,Q2Tをオフ状態に維持する。したがって、商用交流電源11の停電が発生してから時間Tdが経過するまでの期間には、順変換器1の運転は停止される。
【0142】
図15は、この無停電電源装置に含まれる制御ブロックB7の構成を示すブロック図であって、
図11と対比される図である。
図15を参照して、この無停電電源装置は、制御回路25(
図2)において、制御ブロックB4に代えて制御ブロックB7を備える。制御ブロックB7が制御ブロックB4(
図11)と異なる点は、制御部95および切換回路96が追加され、ゲート駆動回路82がゲート駆動回路97で置換されている点である。
【0143】
制御部95は、信号φ90(
図14)が「H」レベルである場合には、電圧検出器22の出力信号VDCfと電流検出器7の出力信号IBfに基づいて、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるようにチョッパ回路4を制御するためのPWM信号P5A,P6Aを生成する。PWM信号P6Aは、PWM信号P5Aの反転信号である。また、制御部95は、信号φ90が「H」レベルである場合には、PWM信号P5A,P6Aをともに「L」レベルに維持する。
【0144】
切換回路96は、停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルである場合には、制御部81からのPWM信号P5,P6をゲート駆動回路97に与え、停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部91からのPWM信号P5A,P6Aをゲート駆動回路97に与える。
【0145】
ゲート駆動回路97は、切換回路96からのPWM信号φP5,P6またはP5A,P6Aに従って、IGBT素子Q5,Q6の各々をオンおよびオフさせるためのゲート信号G5,G6を生成する。
【0146】
停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルである場合には、制御部81からのPWM信号P5,P6が切換回路96を介してゲート駆動回路97に与えられる。この場合にはチョッパ回路4は、実施の形態1と同様に制御される。
【0147】
停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部95からのPWM信号P5A,P6Aが切換回路96を介してゲート駆動回路97に与えられる。ゲート駆動回路97は、PWM信号P5A,P6Aに従って、IGBT素子Q5,Q6の各々をオンおよびオフさせるためのゲート信号G5,G6を生成する。
【0148】
ゲート信号G5,G6は、それぞれIGBT素子Q5,Q6のゲートおよびエミッタ間に与えられる。これにより、停電発生から一定時間Tdが経過するまでの期間には、IGBT素子Q6が一定周波数でオンおよびオフされ、バッテリ電圧VBが直流電圧VDCに変換される。
【0149】
なお、IGBT素子Q6がオフされると、バッテリ13の正極からリアクトルL7、ダイオードD5、およびコンデンサCdを介してバッテリ13の負極に電流が流れるので、ゲート信号G5が「H」レベルにされてもIGBT素子Q5はオンしない。また、停電発生から一定時間Tdが経過すると、IGBT素子Q5,Q6はともにオフされ、チョッパ回路4の運転は停止される。
【0150】
図16は、この無停電電源装置の動作を示すタイムチャートである。
図16において、(A)は停電検出信号DT1の波形を示し、(B)は信号φ90の波形を示し、(C)は順変換器1の動作を示し、(D)はチョッパ回路4の動作を示している。また、(E)の実線は本実施の形態3における直流電圧VDCの時刻変化を示し、(E)の点線は比較例における直流電圧VDCの時刻変化を示している。比較例では、停電時におけるチョッパ回路4の放電動作は行なわれない。
【0151】
図16に示すように、初期状態では、商用交流電源11は健全であり、停電検出器21(
図2)によって停電検出信号DT1が「H」レベルにされ、信号発生回路90(
図14)によって信号φ90が「L」レベルにされているものとする。
【0152】
この場合は、制御ブロックB6(
図14)では、切換回路33によって制御部31が選択され、参照電圧発生部30、制御部31、およびゲート駆動回路91によって順変換器1の整流動作が実行され、直流電圧VDCは参照電圧VDCrに維持される。
【0153】
また、制御ブロックB7(
図15)では、切換回路96によって制御部81が選択され、参照電圧発生部80、制御部81、およびゲート駆動回路97によってチョッパ回路4の充電動作が実行され、バッテリ電圧VBは参照電圧VBrに維持される。
【0154】
時刻t1において商用交流電源11の停電が発生すると、停電検出器21によって停電検出信号DT1が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられるとともに、信号発生回路90によって信号φ90が「L」レベルから「H」レベルに立ち上げられる。
【0155】
停電検出信号DT1が「L」レベルにされ、かつ信号φ90が「H」レベルにされると、制御ブロックB6(
図14)では、切換回路33によって制御部32が選択され、制御部32から切換回路33を介してゲート駆動回路91に昇圧動作用のPWM信号φ32が与えられるが、ゲート駆動回路91によってゲート信号φ91が「L」レベルに維持されて順変換器1の運転が停止される。また、制御ブロックB7(
図15)では、切換回路96によって制御部95が選択され、制御部95およびゲート
駆動回路97(
図15)によってチョッパ回路4の放電動作が実行される。
【0156】
このとき、(E)の実線で示すように、順変換器1の運転が停止されるので、直流電圧VDCが下降するが、チョッパ回路4からコンデンサCdに直流電力が供給されるので、直流電圧VDCの低下は小さく抑制される。
【0157】
商用交流電源11の停電の発生(時刻t1)から一定時間Tdが経過した時刻t2において、信号発生回路90によって信号φ90が「H」レベルから「L」レベルに立ち下げられる。
【0158】
信号φ90が「L」レベルに立ち
下げられると、制御ブロックB6(
図14)では、ゲート駆動回路91が活性化され、参照電圧発生部30、制御部32、およびゲート駆動回路91によって順変換器1の昇圧動作が実行され、直流電圧VDCが上昇して参照電圧VDCrとなる。また、制御ブロックB7(
図15)では、制御部95によって放電動作用のPWM信号P5A,P6Aが「L」レベルにされ、チョッパ回路4の運転が停止される。
【0159】
なお、比較例では、チョッパ回路4の放電動作は実行されないので、(E)の点線で示されるように、商用交流電源11の停電が発生すると直流電圧VDCが急激に低下し、下限値VDCLよりも低下してしまう(時刻t1~t2)。時刻t2において順変換器1の昇圧動作を開始しても、直流電圧VDCが参照電圧VDCrに到達するまでの時間が長くなる。
【0160】
以上のように、この実施の形態3では、商用交流電源11の停電が発生してから、スイッチS1~S3のオフ時間Toff以上の一定時間Td(≧Toff)が経過した後に、順変換器1の昇圧動作を開始する。したがって、スイッチS1~S3を機械スイッチで構成した場合でも、順変換器1の昇圧動作時に、レグ回路1a~1cがスイッチS1~S3を介して商用交流電源11の最終段の三相変圧器によって短絡されて過電流が流れることを防止することができる。
【0161】
また、商用交流電源11の停電が発生してから一定時間Td(≧Toff)が経過するまでの期間に、チョッパ回路4の放電動作を実行する。したがって、順変換器1の運転が停止されている期間内に直流電圧VDCが低下することを抑制し、直流電圧VDCが下限値VDCLよりも低下することを防止することができる。このため、逆変換器3の交流出力電圧VU,VV,VWの波形が歪むことを防止することができ、安定した波形の三相交流電圧VU,VV,VWを負荷12に供給することができる。
【0162】
なお、チョッパ回路4の定格電力は順変換器1および逆変換器3の各々と比較して小さいので、放電動作時にはチョッパ回路4は過負荷となる。しかし、チョッパ回路4に放電動作を行なわせる時間Tdは1秒未満と短いので、チョッパ回路4が過負荷となってもチョッパ回路4が破損することはない。
【0163】
実施の形態4.
実施の形態1の無停電電源装置において、コンデンサCdが全く充電されていない場合にスイッチS1~S3をオンすると、商用交流電源11からスイッチS1~S3、リアクトルL1~L3、およびダイオードD1R,D1S,D1T,D2R,D2S,D2Tを介してコンデンサCdに突入電流が流れ、スイッチS1~S3などが破損される恐れがある。
【0164】
また、コンデンサCdが充電されている場合でも、商用交流電源11の停電が発生した場合に、スイッチS4~S6をオンすると、バッテリ13からスイッチS4~S6を介してコンデンサC1~C3に突入電流が流れ、スイッチS4~S6などが破損する恐れがある。本実施の形態4では、この問題の解決が図られる。
【0165】
図17は、実施の形態4に従う無停電電源装置の要部を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図17を参照して、この無停電電源装置が
図1の無停電電源装置と異なる点は、スイッチS11~S16および抵抗器R1~R3が追加され、制御装置8が制御装置8Aで置換されている点である。
【0166】
スイッチS11~S13の一方端子はそれぞれ交流入力端子T1R,T1S,T1Tに接続される。抵抗器R1~R3の一方端子はそれぞれスイッチS11~S13の他方端子に接続され、抵抗器R1~R3の他方端子はそれぞれノードN1~N3に接続される。スイッチS14~S16の一方端子はともにバッテリ端子T3Pに接続され、それらの他方端子は、それぞれ抵抗器R1~R3の一方端子に接続される。スイッチS1~S6,S11~S16は、制御装置8Aによって制御される。
【0167】
無停電電源装置の運転停止時には、すべてのスイッチS1~S6,S11~S16がオフされ、順変換器1、逆変換器3、およびチョッパ回路4の運転が停止されている。制御装置8Aは、無停電電源装置を起動させる場合、まずスイッチS11~S13をオンさせる。
【0168】
スイッチS11~S13がオンされると、商用交流電源11からスイッチS11~S13、抵抗器R1~R3、リアクトルL1~L3、およびダイオードD1R,D1S,D1T,D2R,D2S,D2Tを介してコンデンサCdに電流が流れ、コンデンサCdの充電が開始される。このとき、抵抗器R1~R3によってコンデンサCdに流入する電流が制限され、コンデンサCdに突入電流が流れることが防止される。
【0169】
直流電圧VDCが十分に上昇するタイミングで、制御装置8Aは、スイッチS1~S3をオンさせた後にスイッチS11~S13をオフさせて、コンデンサCdの初期充電を終了する。次に、制御装置8Aは、順変換器1およびチョッパ回路4を運転してバッテリ13を充電させた後、逆変換器3を運転して負荷12を駆動させる。
【0170】
商用交流電源11の停電が発生した場合、制御装置8Aは、スイッチS1~S3をオフさせるとともに、スイッチS14~S16をオンさせる。スイッチS14~S16がオンすると、バッテリ13からスイッチS14~S16および抵抗器R1~R3を介してコンデンサC1~C3に電流が流れ、コンデンサC1~C3が充電される。このとき、コンデンサC1~C3に流入する電流が抵抗器R1~R3によって制限され、コンデンサC1~C3に突入電流が流れることが防止される。
【0171】
コンデンサC1~C3が充分に充電されるタイミングで、制御装置8Aは、スイッチS4~S6をオンさせるとともにスイッチS14~S16をオフさせる。これにより、バッテリ13からスイッチS4~S6を介して順変換器1にバッテリ電圧VBが供給される。次に、制御装置8Aは、順変換器1に昇圧動作を実行させてバッテリ電圧VBを直流電圧VDCに変換させる。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0172】
以上のように、実施の形態4では、商用交流電源11およびバッテリ13から無停電電源装置に突入電流が流れることを防止することができる。
【0173】
実施の形態5.
この実施の形態5でも、実施の形態4と同じ問題の解決が図られる。
図18は、実施の形態5に従う無停電電源装置の要部を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図18を参照して、この無停電電源装置が
図1の無停電電源装置と異なる点は、スイッチS17~S19および抵抗器R1~R3が追加され、制御装置8が制御装置8Bで置換されている点である。
【0174】
スイッチS17~S19の一方端子はそれぞれスイッチS1~S3の他方電極に接続され、スイッチS17~S19の他方端子はそれぞれノードN1~N3に接続される。抵抗器R1~R3は、それぞれスイッチS17~S19に並列接続される。スイッチS4~S6の一方端子はともにバッテリ端子T3Pに接続され、それらの他方端子は、それぞれスイッチS17~S19の一方端子に接続される。スイッチS1~S6,S17~S19は、制御装置8Bによって制御される。
【0175】
無停電電源装置の運転停止時には、すべてのスイッチS1~S6,S17~S19がオフされ、順変換器1、逆変換器3、およびチョッパ回路4の運転が停止されている。制御装置8Bは、無停電電源装置を起動させる場合、まずスイッチS1~S3をオンさせる。
【0176】
スイッチS1~S3がオンされると、商用交流電源11からスイッチS1~S3、抵抗器R1~R3、リアクトルL1~L3、およびダイオードD1R,D1S,D1T,D2R,D2S,D2Tを介してコンデンサCdに電流が流れ、コンデンサCdの初期充電が開始される。このとき、抵抗器R1~R3によってコンデンサCdに流入する電流が制限され、コンデンサCdに突入電流が流れることが防止される。
【0177】
直流電圧VDCが充分に上昇するタイミングで、制御装置8Bは、スイッチS17~S19をオンさせる。これにより、商用交流電源11からスイッチS1~S3、スイッチS17~S19、リアクトルL1~L3、およびダイオードD1R,D1S,D1T,D2R,D2S,D2Tを介してコンデンサCdに電流が流れ、コンデンサCdの初期充電が終了する。次に、制御装置8Bは、順変換器1およびチョッパ回路4を運転してバッテリ13を充電させた後、逆変換器3を運転して負荷12を駆動させる。
【0178】
商用交流電源11の停電が発生した場合、制御装置8Bは、スイッチS1~S3,S17~S19をオフさせるとともに、スイッチS4~S6をオンさせる。スイッチS4~S6がオンすると、バッテリ13からスイッチS4~S6および抵抗器R1~R3を介してコンデンサC1~C3に電流が流れ、コンデンサC1~C3が充電される。このとき、コンデンサC1~C3に流入する電流が抵抗器R1~R3によって制限され、コンデンサC1~C3に突入電流が流れることが防止される。
【0179】
コンデンサC1~C3が充分に充電されるタイミングで、制御装置8Bは、スイッチS17~S19をオンさせる。これにより、バッテリ13からスイッチS4~S6,S17~S19を介して順変換器1にバッテリ電圧VBが供給される。次に、制御装置8Bは、順変換器1に昇圧動作を実行させてバッテリ電圧VBを直流電圧VDCに変換させる。他の構成および動作は、実施の形態1と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0180】
以上のように、実施の形態5では、実施の形態4と同様に、商用交流電源11およびバッテリ13から無停電電源装置に突入電流が流れることを防止することができる。
【0181】
また、実施の形態4と比べて、スイッチの数を減らすことができ、装置の小型化を図ることができる。ただし、商用交流電源11の健全時においてスイッチS17~S19に常時、電流が流れるので、スイッチS17~S19で損失が発生し、無停電電源装置の効率が低下する恐れがある。
【0182】
実施の形態6.
図19は、実施の形態6に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、
図1と対比される図である。
図19を参照して、この無停電電源装置が
図1の無停電電源装置と異なる点は、スイッチS4~S6がスイッチS21~S23で置換され、順変換器1、直流リンク部2、逆変換器3、および制御装置8がそれぞれ順変換器101、直流リンク部102、逆変換器103、および制御装置104で置換されている点である。
【0183】
スイッチS21,S22(第1のスイッチ)の一方端子はともにバッテリ端子T3Pに接続され、それらの他方端子はそれぞれノードN1,N3に接続される。スイッチS23の一方端子は中性点NPに接続され、その他方端子はノードN2に接続される。スイッチS21~S23は、制御装置104によって制御される。
【0184】
この無停電電源装置では、商用交流電源11の停電時に、昇圧動作およびバランス動作が実行される。昇圧動作およびバランス動作については、後で詳細に説明する。商用交流電源11の停電時には、スイッチS21~S23はオンされる。商用交流電源11の健全時には、スイッチS21~S23はオフされる。スイッチS21,S22は、電力貯蔵装置(バッテリ13)と電源端子(ノードN1,N3)との間に接続された「第1のスイッチ」の一実施例に相当する。スイッチS23は、電源端子(ノードN2)と中性点NPとの間に接続された「第2のスイッチ」の一実施例に相当する。
【0185】
したがって、商用交流電源11の健全時には、ノードN1~N3は商用交流電源11からスイッチS1~S3を介してそれぞれ三相交流電圧VR,VS,VTを受ける。商用交流電源11の停電時には、ノードN1,N3はバッテリ13からスイッチS21,S22を介してともにバッテリ電圧VBを受け、ノードN2はスイッチS23を介して中性点NPに接続される。
【0186】
直流リンク部102は、順変換器101、逆変換器103、およびチョッパ回路4の間で直流電力を授受するために設けられている。直流リンク部102は、直流ラインLP,LNおよびコンデンサCd1,Cd2(第1および第2の副コンデンサ)を含む。コンデンサCd1,Cd2の容量値は等しい。
【0187】
コンデンサCd1,Cd2は、直流ラインLP,LN間に直列接続され、直流ラインLP,LN間の直流電圧VDCを平滑化する。コンデンサCd1,Cd2の間のノードは、中性点NPに接続される。直流ラインLNは、バッテリ端子T3Nに接続されている。コンデンサCd1の端子間電圧EPとコンデンサCd2の端子間電圧ENとは、制御装置104によって検出される。
【0188】
順変換器101は、制御装置104によって制御される。順変換器101は、商用交流電源11の健全時には、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して供給される交流電力を直流電力に変換して直流リンク部102に供給する。
【0189】
また、順変換器101は、商用交流電源11の停電時には、バッテリ13からスイッチS21,S22を介して供給される直流電力を直流リンク部102に供給する。
【0190】
さらに、順変換器101は、商用交流電源11の停電時には、コンデンサCd1の端子間電圧EPとコンデンサCd2の端子間電圧ENとが同じになるように、コンデンサCd1,Cd2間で直流電力を授受する。
【0191】
詳しく説明すると、順変換器101は、交流フィルタF1およびレグ回路101a~101cを含む。交流フィルタF1の構成は、
図1で説明した通りであり、コンデンサC1~C3およびリアクトルL1~L3を含む。
【0192】
レグ回路101a,101b,101cは、それぞれR相、S相、およびT相に対応して設けられている。レグ回路101aは、IGBT素子Q1X~Q4XおよびダイオードD1X~D6Xを含む。レグ回路101bは、IGBT素子Q1Y~Q4YおよびダイオードD1Y~D6Yを含む。レグ回路101cは、IGBT素子Q1Z~Q4ZおよびダイオードD1Z~D6Zを含む。
【0193】
IGBT素子Q1X~Q4Xは、直流ラインLP,LN間に直列接続される。IGBT素子Q2Xのエミッタは、ノードN4に接続される。ダイオードD1X~D4Xは、それぞれIGBT素子Q1X~Q4Xに逆並列に接続される。ダイオードD6Xのアノードは、IGBT素子Q3Xのエミッタに接続され、そのカソードは中性点NPに接続される。ダイオードD5Xのアノードは中性点NPに接続され、そのカソードはIGBT素子Q1Xのエミッタに接続される。
【0194】
IGBT素子Q1Y~Q4Yは、直流ラインLP,LN間に直列接続される。IGBT素子Q2Yのエミッタは、ノードN5に接続される。ダイオードD1Y~D4Yは、それぞれIGBT素子Q1Y~Q4Yに逆並列に接続される。ダイオードD6Yのアノードは、IGBT素子Q3Yのエミッタに接続され、そのカソードは中性点NPに接続される。ダイオードD5Yのアノードは中性点NPに接続され、そのカソードはIGBT素子Q1Yのエミッタに接続される。
【0195】
IGBT素子Q1Z~Q4Zは、直流ラインLP,LN間に直列接続される。IGBT素子Q2Zのエミッタは、ノードN6に接続される。ダイオードD1Z~D4Zは、それぞれIGBT素子Q1Z~Q4Zに逆並列に接続される。ダイオードD6Zのアノードは、IGBT素子Q3Zのエミッタに接続され、そのカソードは中性点NPに接続される。ダイオードD5Zのアノードは中性点NPに接続され、そのカソードはIGBT素子Q1Zのエミッタに接続される。
【0196】
IGBT素子Q1X,Q1Y,Q1Zを代表的に総称してIGBT素子Q1と称する場合がある。IGBT素子Q2X,Q2Y,Q2Zを代表的に総称してIGBT素子Q2と称する場合がある。IGBT素子Q3X,Q3Y,Q3Zを代表的に総称してIGBT素子Q3と称する場合がある。IGBT素子Q4X,Q4Y,Q4Zを代表的に総称してIGBT素子Q4と称する場合がある。IGBT素子Q1,Q2は、第1のスイッチング素子を構成する。IGBT素子Q3,Q4は、第2のスイッチング素子を構成する。
【0197】
また、ダイオードD1X,D1Y,D1Zを代表的に総称してダイオードD1と称する場合がある。ダイオードD2X,D2Y,D2Zを代表的に総称してダイオードD2と称する場合がある。ダイオードD3X,D3Y,D3Zを代表的に総称してダイオードD3と称する場合がある。ダイオードD4X,D4Y,D4Zを代表的に総称してダイオードD4と称する場合がある。ダイオードD5X,D5Y,D5Zを代表的に総称してダイオードD5と称する場合がある。ダイオードD6X,D6Y,D6Zを代表的に総称してダイオードD6と称する場合がある。
【0198】
ダイオードD1,D2は、第1のダイオードを構成する。ダイオードD3,D4は、第2のダイオードを構成する。ダイオードD1~D4の各々は、フリーホイールダイオードとして動作する。ダイオードD5,D6の各々は、クランプダイオードとして動作する。
【0199】
商用交流電源11の健全時には、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して順変換器101に三相交流電圧VR,VS,VTが供給される。三相交流電圧VR,VS,VTは、ダイオードD1X~D4X,D1Y~D4Y,D1Z~D4Zによって三相全波整流され、さらにコンデンサCd1,Cd2によって平滑化されて直流電圧VDCに変換される。
【0200】
制御装置104は、三相交流電圧VR,VS,VT、三相交流電流I1~I3、および直流電圧EP,ENに基づいて、直流電圧VDC=EP+ENが参照電圧VDCrになるように、レグ回路101a~101cを制御する。
【0201】
すなわち、制御装置104は、第1のモード時には、IGBT素子Q2をオンさせるとともに、IGBT素子Q1,Q3をスイッチング周波数で交互にオンさせ、かつ一周期内におけるIGBT素子Q1のオン時間(すなわちIGBT素子Q3のオフ時間)を調整する。
【0202】
たとえばレグ回路101aでは、IGBT素子Q1Xがオンすると、直流ラインLPがIGBT素子Q1X,Q2Xを介してノードN4に接続され、ノードN4に正電圧が供給される。IGBT素子Q3Xがオンすると、ノードN4がIGBT素子Q3XおよびダイオードD6Xを介して中性点NPに接続されるとともに、中性点NPがダイオードD5XおよびIGBT素子Q2Xを介してノードN4に接続され、ノードN4に中間電圧が供給される。
【0203】
また、制御装置104は、第2のモード時には、IGBT素子Q3をオンさせるとともに、IGBT素子Q4,Q2をスイッチング周波数で交互にオンさせ、かつ一周期内におけるIGBT素子Q4のオン時間(すなわちIGBT素子Q2のオフ時間)を調整する。たとえばレグ回路101aでは、IGBT素子Q4Xがオンすると、ノードN4がIGBT素子Q3X,Q4Xを介して直流ラインLNに接続され、ノードN4に負電圧が供給される。IGBT素子Q3Xがオンすると、ノードN4がIGBT素子Q3XおよびダイオードD6Xを介して中性点NPに接続されるとともに、中性点NPがダイオードD5XおよびIGBT素子Q2Xを介してノードN4に接続され、ノードN4に中間電圧が供給される。
【0204】
制御装置104は、第1および第2のモードを交互に実行することにより、直流電圧EP,ENを3レベルの交流電圧VRctに変換する。レグ回路101b,101cでもレグ回路101aと同様にして、直流電圧VDCが3レベルの交流電圧VSct,VTctに変換される。
【0205】
また、制御装置104は、直流電圧VDC=EP+ENが参照電圧VDCrになるように、三相交流電圧VRct,VSct,VTctの位相を制御する。三相交流電圧VRct,VSct,VTctの位相を商用交流電源11からの三相交流電圧VR,VS,VTの位相よりも進ませると、コンデンサCd1,Cd2から順変換器101を介して商用交流電源11に電力が供給されて直流電圧VDCが低下する。
【0206】
逆に、三相交流電圧VRct,VSct,VTctの位相を商用交流電源11からの三相交流電圧VR,VS,VTの位相よりも遅らせると、商用交流電源11から順変換器101を介してコンデンサCd1,Cd2に電力が供給されて直流電圧VDCが上昇する。したがって、直流電圧VDCは参照電圧VDCrに維持される。
【0207】
また、商用交流電源11の停電時には、バッテリ13からスイッチS21,S22を介してノードN1,N3にバッテリ電圧VBが供給される。制御装置104は、電流I1,I3および直流電圧VDCに基づいて、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように、レグ回路101a,101cにおいてIGBT素子Q3,Q4を一定周波数でオンおよびオフする。
【0208】
すなわち、制御装置104は、レグ回路101aでは、IGBT素子Q3X,Q4Xを一定周波数でオンおよびオフさせる。IGBT素子Q3X,Q4Xがオンすると、バッテリ13の正極からスイッチS21、リアクトルL1、IGBT素子Q3X,Q4X、直流ラインLNを介してバッテリ13の負極に電流が流れ、リアクトルL1に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0209】
次に、IGBT素子Q3X,Q4Xがオフすると、バッテリ13の正極からスイッチS21、リアクトルL1、ダイオードD2X,D1X、直流ラインLP、コンデンサCd1,Cd2、直流ラインLNを介してバッテリ13の負極に電流が流れ、コンデンサCd1,Cd2が充電される。
【0210】
このとき、リアクトルL1の電磁エネルギーが放出されるので、直流電圧VDCはバッテリ電圧VBよりも高くなる。すなわち、バッテリ電圧VBは昇圧されて直流電圧VDCに変換される。
【0211】
また、制御装置104は、レグ回路101cでは、IGBT素子Q3Z,Q4Zを一定周波数でオンおよびオフさせる。IGBT素子Q3Z,Q4Zがオンすると、バッテリ13の正極からスイッチS22、リアクトルL3、IGBT素子Q3Z,Q4Z、直流ラインLNを介してバッテリ13の負極に電流が流れ、リアクトルL3に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0212】
次に、IGBT素子Q3Z,Q4Zがオフすると、バッテリ13の正極からスイッチS22、リアクトルL3、ダイオードD2Z,D1Z、直流ラインLP、コンデンサCd1,Cd2、直流ラインLNを介してバッテリ13の負極に電流が流れ、コンデンサCd1,Cd2が充電される。
【0213】
このとき、リアクトルL3の電磁エネルギーが放出されるので、直流電圧VDCはバッテリ電圧VBよりも高くなる。すなわち、バッテリ電圧VBは昇圧されて直流電圧VDCに変換される。
【0214】
また、制御装置104は、直流電圧VDCが参照電圧VDCrになるように、レグ回路101a,101cにおいて、IGBT素子Q3,Q4をオンおよびオフさせる信号の一周期内におけるIGBT素子Q3,Q4のオン時間を調整する。たとえばレグ回路101aでは、IGBT素子Q3X,Q4Xのオン時間を長くすると、リアクトルL1に蓄えられる電磁エネルギーが増大し、直流電圧VDCが上昇する。
【0215】
逆に、IGBT素子Q3X,Q4Xのオン時間を短くすると、リアクトルL1に蓄えられる電磁エネルギーが減少し、直流電圧VDCが下降する。レグ回路101cでもレグ回路101aと同様にして、直流電圧VDCのレベルが調整される。したがって、直流電圧VDCは参照電圧VDCrに維持される。
【0216】
また、制御装置104は、IGBT素子Q3X,Q4Xをオンおよびオフさせる信号の位相と、IGBT素子Q3Z,Q4Zをオンおよびオフさせる信号の位相とを180度ずらせる。これにより、互いに異なるタイミングでダイオードD2X,D1XとダイオードD2Z,D1Zをオンさせることができバッテリ13からダイオードD2X,D1XおよびダイオードD2Z,D1Zを介して直流リンク部102に直流電力が供給されるタイミングをずらすことができる。したがって、商用交流電源11の停電時に、直流電圧VDCに発生するリプル電圧を低減することができる。
【0217】
また、このときリアクトルL1,L3に流れる電流I1,I3の和はバッテリ13の出力電流に相当する。本実施の形態6では、バッテリ13の出力電流のリプルを小さくすることができる。このため、バッテリ13の出力電流のリプルを小型のリアクトルL1,L3で低減することができ、装置の大型化を抑制することができる。
【0218】
また、制御装置104は、商用交流電源11の停電時には、直流電圧EP,ENが等しくなるように、順変換器101にバランス動作を実行させる。バランス動作時には、スイッチS1~S3がオフされ、スイッチS21~S23がオンされている。
【0219】
制御装置104は、バランス動作時には、レグ回路101bにおいて、IGBT素子Q1Y,Q2YとIGBT素子Q3Y,Q4Yとを一定周波数で交互にオンさせる。
【0220】
IGBT素子Q1Y,Q2Yがオンすると、コンデンサCd1の正極から直流ラインLP、IGBT素子Q1Y,Q2Y、ノードN5,リアクトルL2、スイッチS23、および中性点NPを介してコンデンサCd1の負極に電流が流れ、リアクトルL2に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0221】
次に、IGBT素子Q1Y,Q2Yがオフすると、ノードN5からリアクトルL2,スイッチS23,中性点NP、コンデンサCd2、直流ラインLN、ダイオードD4Y,D3Yを介してノードN5に電流が流れ、リアクトルL2の電磁エネルギーが放出されてコンデンサCd2が充電される。
【0222】
また、IGBT素子Q3Y,Q4Yがオンすると、コンデンサCd2の正極から中性点NP、スイッチS23、リアクトルL2、IGBT素子Q3Y,Q4Y、および直流ラインLNを介してコンデンサCd2の負極に電流が流れ、リアクトルL2に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0223】
次に、IGBT素子Q3Y,Q4Yがオフすると、ノードN5からダイオードD2Y,D1Y、直流ラインLP、コンデンサCd1、中性点NP、スイッチS23、およびリアクトルL2を介してノードN5に電流が流れ、リアクトルL2の電磁エネルギーが放出されてコンデンサCd1が充電される。
【0224】
EP>ENである場合には、コンデンサCd1からリアクトルL2を介してコンデンサCd2に直流電力が供給され、直流電圧EPが減少するとともに直流電圧ENが増大する。逆に、EP<ENである場合には、コンデンサCd2からリアクトルL2を介してコンデンサCd1に直流電力が供給され、直流電圧EPが増大するとともに直流電圧ENが減少する。したがって、バランス動作によって直流電圧EP,ENの差ΔE=EP-ENの大きさを減少させることができる。
【0225】
次に、逆変換器103は、制御装置104によって制御される。逆変換器103は、順変換器101から直流リンク部102を介して供給される直流電力を商用周波数の交流電力に変換して負荷12に供給する。
【0226】
逆変換器103は、順変換器101と同様の構成であり、直流電圧EP,ENを3レベルの三相交流電圧VU,VV,VWに変換して負荷12に供給する。ただし、逆変換器103は、逆変換器3(
図1)と同様に、直流電圧VDC=EP+ENを2レベルの三相交流電圧VU,VV,VWに変換する回路であっても構わない。
【0227】
また、チョッパ回路4は、制御装置104によって制御され、商用交流電源11の健全時に、順変換器101によって生成された直流電力をバッテリ13に蓄える。チョッパ回路4の構成は、
図1を用いて説明した通りである。
【0228】
図20は、制御装置104の構成を示すブロック図であって、
図2と対比される図である。
図20を参照して、制御装置104が制御装置8と異なる点は、電圧検出器22が電圧検出器111,112で置換され、制御回路25が制御回路113で置換されている点である。
【0229】
電圧検出器111は、コンデンサCd1の端子間電圧EPを検出し、その検出値を示す信号EPfを制御回路113に与える。電圧検出器112は、コンデンサCd2の端子間電圧ENを検出し、その検出値を示す信号ENfを制御回路113に与える。
【0230】
制御回路113は、電圧検出器20,23,24,111,112の出力信号Vif,Vof,VBf,EPf,ENf、電流検出器5,6,7の出力信号Iif,Iof,IBf、および停電検出器21の出力信号DT1に基づいて、スイッチS1~S3,S21~S23、順変換器101、逆変換器103、およびチョッパ回路4を制御する。
【0231】
制御回路113は、制御ブロックB11~B14を含む。制御ブロックB11は、スイッチS1~S3,S21~S23を制御する。制御ブロックB12は、順変換器101を制御する。制御ブロックB13は、逆変換器103を制御する。制御ブロックB14は、制御ブロックB4と同じ構成であり、チョッパ回路4を制御する。
【0232】
図21は、制御ブロックB11(
図20)の構成を示すブロック図である。
図21において、制御ブロックB11は、制御部121および駆動回路122を含む。
【0233】
制御部121は、停電検出信号DT1に基づいて、スイッチS1~S3を制御するための信号SAと、スイッチS21~S23を制御するための信号SBとを生成する。
【0234】
停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルである場合には、信号SAが「H」レベルにされるとともに、信号SBが「L」レベルにされる。停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルである場合には、信号SAは「L」レベルにされるとともに、信号SBが「H」レベルにされる。
【0235】
駆動回路122は、信号SA,SBに従って、制御電圧VSA,VSBを生成する。信号SA,SBが「H」レベルにされると、制御電圧VSA,VSBは「H」レベルにされる。信号SA,SBが「L」レベルにされると、制御電圧VSA,VSBは「L」レベルにされる。
【0236】
制御電圧VSAが「H」レベルにされるとスイッチS1~S3がオンし、制御電圧VSAが「L」レベルにされるとスイッチS1~S3がオフする。制御電圧VSBが「H」レベルにされるとスイッチS21~S23がオンし、制御電圧VSBが「L」レベルにされるとスイッチS21~S23がオフする。
【0237】
したがって、商用交流電源11の健全時には、スイッチS1~S3がオンされるとともに、スイッチS21~S23がオフされる。商用交流電源11の停電時には、スイッチS1~S3がオフされるとともに、スイッチS21~S23がオンされる。
【0238】
図22は、制御ブロックB12(
図20)の構成を示すブロック図である。
図22において、制御ブロックB12は、参照電圧発生部131、制御部132,133、切換回路134、およびゲート駆動回路135を含む。
【0239】
参照電圧発生部131は、参照電圧VDCrを生成する。
制御部132は、参照電圧VDCr、電圧検出器20,111,112の出力信号Vif,EPf,ENf、および電流検出器5の出力信号Iifに基づいて、三相交流電圧VR,VS,VTを直流電圧VDCに変換するためのPWM信号φ132を生成する。PWM信号φ132は、それぞれIGBT素子Q1X~Q4X,Q1Y~Q4Y,Q1Z~Q4Zを制御するためのPWM信号P1X~P4X,P1Y~P4Y,P1Z~P4Zを含む。
【0240】
制御部133は、参照電圧VDCr、電圧検出器111,112の出力信号EPf,ENf、および電流検出器5の出力信号Iifに基づいて、バッテリ電圧VBを昇圧して直流電圧VDCを生成するためのPWM信号φ133を生成する。PWM信号φ133は、それぞれIGBT素子Q1X~Q4X,Q1Y~Q4Y,Q1Z~Q4Zを制御するためのPWM信号P1XA~P4XA,P1YA~P4YA,P1ZA~P4ZAを含む。
【0241】
切換回路134は、停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルである場合には、制御部132からのPWM信号φ132をゲート駆動回路135に与え、停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルである場合には、制御部133からのPWM信号φ133をゲート駆動回路135に与える。
【0242】
ゲート駆動回路135は、切換回路134からのPWM信号φ132またはφ133に従ってゲート信号φ135を生成する。ゲート信号φ135は、それぞれIGBT素子Q1X~Q4X,Q1Y~Q4Y,Q1Z~Q4Zをオンおよびオフさせるためのゲート信号G1X~G4X,G1Y~G4Y,G1Z~G4Zを含む。
【0243】
図23は、制御部132(
図22)の構成を示すブロック図であって、
図5と対比される図である。
図23を参照して、制御部131は、制御部31の電圧制御部40およびPWM部44~46をそれぞれ電圧制御部140およびPWM部141~143で置換したものである。
【0244】
電圧制御部140は、電圧検出器111,112の出力信号EPf,ENfによって示される直流電圧EP,ENを加算して直流電圧VDC=EP+ENを求め、参照電圧VDCrと直流電圧VDCとの差ΔVDC=VDCr-VDCに応じた値の電流指令値Ic1を生成する。
【0245】
PWM部141は、電圧指令値Vc1と、正極キャリア信号および負極キャリア信号とを比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1X~Q4Xを制御するためのPWM信号P1X~P4Xを生成する。
【0246】
正極キャリア信号は、基準電圧(0V)と正電圧(+Va)の間で、スイッチング周波数で三角波状に変化する。負極キャリア信号は、負電圧(-Va)と基準電圧(0V)の間で、スイッチング周波数で三角波状に変化する。電圧指令値Vc1は、正電圧(+Va)と負電圧(-Va)の間の範囲内で、商用周波数で正弦波状に変化する。
【0247】
PWM部142は、電圧指令値Vc2と、正極キャリア信号および負極キャリア信号とを比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1Y~Q4Yを制御するためのPWM信号P1Y~P4Yを生成する。
【0248】
PWM部143は、電圧指令値Vc3と、正極キャリア信号および負極キャリア信号とを比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1Z~Q4Zを制御するためのPWM信号P1Z~P4Zを生成する。
【0249】
切換回路134(
図22)によってPWM信号φ
132が選択された場合には、ゲート駆動回路
135は、PWM信号P1X~P4X,P1Y~P4Y,P1Z~P4Zに従って、ゲート信号G1X~G4X,G1Y~G4Y,G1Z~G4Zを生成する。ゲート信号G1~G4は、それぞれIGBT素子Q1~Q4のゲートおよびエミッタ間に与えられる。ゲート信号G1~G4が「H」レベルにされるとIGBT素子Q1~Q4がオンし、ゲート信号G1~G4が「L」レベルにされるとIGBT素子Q1~Q4がオフする。
【0250】
図24は、制御部133(
図22)の構成を示すブロック図である。
図24において、制御部133は、電圧制御部145、電流制御部146、PWM部147,148、およびバランスパルス生成部149を含む。
【0251】
電圧制御部145は、電圧検出器111,112の出力信号EPf,ENfによって示される直流電圧EP,ENを加算して直流電圧VDC=EP+ENを求め、参照電圧VDCrと直流電圧VDCとの差ΔVDC=VDCr-VDCに応じた値の電流指令値IcAを生成する。電流制御部146は、電流指令値IcAと、電流検出器5の出力信号Iifによって示される電流I1,I3とに基づいて、直流の電圧指令値VcAを生成する。
【0252】
PWM部147は、電圧指令値VcAと、スイッチング周波数で三角波状に変化する第1正極キャリア信号とを比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1X~Q4Xを制御するためのPWM信号P1XA~P4XAを生成する。バランス検出信号DT3が「H」レベルである場合には、PWM信号P1XA~P4XAは「L」レベルに維持され、IGBT素子Q1X~Q4Xはオフ状態に維持される。
【0253】
PWM部148は、電圧指令値VcAと、スイッチング周波数で三角波状に変化する第2正極キャリア信号とを比較し、比較結果に基づいて、それぞれIGBT素子Q1Z~Q4Zを制御するためのPWM信号P1ZA~P4ZAを生成する。バランス検出信号DT3が「H」レベルである場合には、PWM信号P1ZA~P4ZAは「L」レベルに維持され、IGBT素子Q1Z~Q4Zはオフ状態に維持される。
【0254】
バランスパルス生成部149は、IGBT素子Q1Y~Q4Yをそれぞれ制御するためのPWM信号P1YA~P4YAを生成する。
【0255】
切換回路134(
図22)によってPWM信号φ133が選択された場合には、ゲート駆動回路135は、PWM信号P1XA~P4XA,P1YA~P4YA,P1ZA~P4ZAに従って、ゲート信号G1X~G4X,G1Y~G4Y,G1Z~G4Zを生成する。
【0256】
図25は、PWM部147の構成を示す回路ブロック図である。
図25において、PWM部147は、正極キャリア生成部150、補正部151、比較器152,153、反転回路154,155、および信号発生回路156を含む。
【0257】
正極キャリア生成部150は、正極キャリア信号φ150Xを生成する。正極キャリア信号φ150Xは、基準電圧(0V)と正電圧(+Vb)の間で、一定周波数で三角波状に変化する。補正部151は、電圧指令値VcAを補正して電圧指令値VcA1を生成する。電圧指令値VcAは、基準電圧(0)と正電圧(+Vb)の間の直流電圧である。電圧指令値VcA1は、電圧指令値VcAよりも大きな値に設定される。
【0258】
電圧指令値VcA,VcA1は、それぞれ比較器152,153の非反転入力端子(+端子)に与えられる。正極キャリア信号φ150Xは、比較器152,153の反転入力端子(-端子)に与えられる。
【0259】
比較器152は、電圧指令値VcAと正極キャリア信号φ150Xとの高低を比較し、比較結果を示す信号をPWM信号P2XAとして出力する。反転回路154は、PWM信号P2XAを反転させてPWM信号P3XAを出力する。
【0260】
電圧指令値VcAのレベルが正極キャリア信号φ150Xのレベルよりも高い場合には、PWM信号P2XA,P3XAはそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルとなる。電圧指令値VcAのレベルが正極キャリア信号φ150Xのレベルよりも低い場合には、PWM信号P2XA,P3XAはそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルとなる。
【0261】
比較器153は、電圧指令値VcA1と正極キャリア信号φ150Xとの高低を比較し、比較結果を示す信号φ153を出力する。反転回路155は、信号φ153を反転させてPWM信号P4XAを出力する。
【0262】
電圧指令値VcA1のレベルが正極キャリア信号φ150Xのレベルよりも高い場合には、PWM信号P4XAは「L」レベルとなる。電圧指令値VcA1のレベルが正極キャリア信号φ150Xのレベルよりも低い場合には、PWM信号P4XAは「H」レベルとなる。信号発生回路156は、「L」レベルのPWM信号P1XAを出力する。
【0263】
PWM信号P3XA,P4XAとPWM信号P2XAとが交互に「H」レベルにされ、停電検出信号DT1が「L」レベルである場合には、IGBT素子Q3X,Q4Xが一定周期でオンおよびオフされ、昇圧動作が実行される。
【0264】
なお、IGBT素子Q3X,Q4Xがオフされると、ダイオードD2X,D1Xがオンするので、PWM信号P2XAが「H」レベルにされてもIGBT素子Q2Xはオンしない。
【0265】
ここで、補正部151の効果について説明する。補正部151がない場合には、PWM信号P3XAの波形とPWM信号P4XAの波形とは同一になり、理想的にはIGBT素子Q3X,Q4Xは同時にスイッチングする。
【0266】
しかし、実際には、IGBT素子の特性ばらつき等に起因して、PWM信号P3XA,P4XAの波形が同一であっても、IGBT素子Q3X,Q4Xが異なるタイミングでスイッチングする場合がある。
【0267】
たとえば、IGBT素子Q4XがIGBT素子Q3Xよりも早くオンするか、遅くオフすると、直流電圧VDCがIGBT素子Q3Xに印加され、IGBT素子Q3Xが過電圧等によって破損する恐れがある。
【0268】
そこで、補正部151によって電圧指令値Vc1よりも高い電圧指令値Vc1Aを生成することにより、IGBT素子の特性ばらつきがあったとしても、IGBT素子Q4XをIGBT素子Q3Xよりも遅くオンさせ、かつ早くオフさせている。これにより、クランプダイオードD6X,D5Xがオンするモードが確保され、IGBT素子Q3Xが過電圧によって破損することを防止することが可能となっている。
【0269】
PWM部148の構成および動作は、PWM部147と同様であるので、その説明は繰り返さない。ただし、PWM部147内で生成される正極キャリア信号φ150Xの位相と、PWM部148内で生成される正極キャリア信号φ150Zの位相とは、180度ずれている。
【0270】
このため、PWM信号P1XA~P4XAの位相とPWM信号P1ZA~P4ZAの位相とは180度ずれるので、昇圧動作時にダイオードD2X,D1XとダイオードD2Z,D1Zとが異なるタイミングでオンすることとなり、直流電圧VDCに発生するリプル電圧が小さく抑制される。
【0271】
図26は、バランスパルス生成部149(
図24)の構成を示す回路ブロック図である。
図26において、バランスパルス生成部149は、参照電圧発生部160、正極キャリア生成部161,162、比較器163,164、および反転回路165,166を含む。参照電圧発生部160は、基準電圧(0V)と正電圧(+Vb)の中間の参照電圧VcR=Vb/2を発生する。
【0272】
正極キャリア生成部161は、正極キャリア信号φ161を生成する。正極キャリア信号φ161は、基準電圧(0V)と正電圧(+Vb)の間で、一定周波数で三角波状に変化する。正極キャリア生成部162は、正極キャリア信号φ162を生成する。正極キャリア信号φ162は、基準電圧(0V)と正電圧(+Vb)の間で、一定周波数で三角波状に変化する。正極キャリア信号φ161の位相は、正極キャリア信号φ162の位相よりも一定時間Tcだけ進んでいる。
【0273】
参照電圧VcRは、比較器163,164の非反転入力端子(+端子)に与えられる。正極キャリア信号φ161,φ162は、それぞれ比較器163,164の反転入力端子(-端子)に与えられる。
【0274】
比較器163は、参照電圧VcRと正極キャリア信号φ161との高低を比較し、比較結果を示す信号をPWM信号P1YAとして出力する。反転回路165は、PWM信号P1YAを反転させてPWM信号P4YAを出力する。
【0275】
参照電圧VcRのレベルが正極キャリア信号φ161のレベルよりも高い場合には、PWM信号P1YA,P4YAはそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルとなる。参照電圧VcRのレベルが正極キャリア信号φ161のレベルよりも低い場合には、PWM信号P1YA,P4YAはそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルとなる。
【0276】
比較器164は、参照電圧VcRと正極キャリア信号φ162との高低を比較し、比較結果を示す信号をPWM信号P2YAとして出力する。反転回路166は、PWM信号P2YAを反転させてPWM信号P3YAを出力する。
【0277】
参照電圧VcRのレベルが正極キャリア信号φ162のレベルよりも高い場合には、PWM信号P2YA,P3YAはそれぞれ「H」レベルおよび「L」レベルとなる。参照電圧VcRのレベルが正極キャリア信号φ162のレベルよりも低い場合には、PWM信号P2YA,P3YAはそれぞれ「L」レベルおよび「H」レベルとなる。
【0278】
PWM信号P1YA,P2YAとPWM信号P3YA,P4YAとが交互に「H」レベルにされ、停電検出信号DT1が「L」レベルである場合には、IGBT素子Q1Y,Q2YとIGBT素子Q3Y,Q4Yとが一定周波数で交互にオンされ、コンデンサCd1,Cd2の端子間電圧EP,ENの差ΔE=EP-ENの大きさを減少させるバランス動作が実行される。
【0279】
ここで、正極キャリア信号φ161の位相と正極キャリア信号φ162の位相とをずらせている理由について説明する。理想的には、一対のIGBT素子Q1Y,Q2Yを同時にスイッチングさせ、一対のIGBT素子Q3Y,Q4Yを同時にスイッチングさせることが好ましい。
【0280】
しかし、実際には、一対のIGBT素子のゲートおよびエミッタ間に同一のゲート信号を印加しても、IGBT素子の特性ばらつきにより、一対のIGBT素子のうちの一方のIGBT素子が他方のIGBT素子よりも先にオンしたり、先にオフする。この場合、直流電圧VDCが1つのIGBT素子に印加され、そのIGBT素子が過電圧によって破損する恐れがある。
【0281】
そこで、本実施の形態6では、IGBT素子Q1Y~Q4Yの各々がオンおよびオフするタイミングで、確実にクランプダイオードD5Y,D6Yがオンするように、正極キャリア信号φ161,φ162の位相をずらすことにより、IGBT素子Q1Y,Q2Yがスイッチングするタイミングをずらすとともに、IGBT素子Q3Y,Q4Yがスイッチングするタイミングをずらしている。
【0282】
図27は、バランスパルス生成部149の動作を示すタイムチャートである。
図27において、(A)は正極キャリア信号φ161,φ162の波形を示し、(B)はPWM信号P1YAの波形を示し、(C)はPWM信号P2YAの波形を示している。
【0283】
図27において、正極キャリア信号φ161の位相は正極キャリア信号φ162の位相よりも一定時間Tcだけ進んでいる。正極キャリア信号φ161のレベルが参照電圧VcRよりも高い場合には、PWM信号P1YAが「H」レベルとなり、正極キャリア信号φ161のレベルが参照電圧VcRよりも低い場合には、PWM信号P1YAが「L」レベルとなる。
【0284】
また、正極キャリア信号φ162のレベルが参照電圧VcRよりも高い場合には、PWM信号P2YAが「H」レベルとなり、正極キャリア信号φ162のレベルが参照電圧VcRよりも低い場合には、PWM信号P2YAが「L」レベルとなる。
【0285】
PWM信号P1YAの位相は、PWM信号P2YAの位相よりも一定時間Tcだけ進んでいる。このため、IGBT素子Q1YはIGBT素子Q2Yよりも先にオンし、先にオフする。したがって、たとえば、IGBT素子Q2YがIGBT素子Q1Yよりも先にオンして、IGBT素子Q1Yが破損することを防止することができる。
【0286】
PWM信号P4YA,P3YAは、それぞれPWM信号P1YA,P2YAの反転信号である。したがって、PWM信号P4YAの位相は、PWM信号P3YAの位相よりも一定時間Tcだけ進んでいる。このため、IGBT素子Q4YはIGBT素子Q3Yよりも先にオンし、先にオフする。したがって、たとえば、IGBT素子Q3YがIGBT素子Q4Yよりも先にオンして、IGBT素子Q4Yが破損することを防止することができる。
【0287】
次に、
図19~
図27で示した無停電電源装置の動作について説明する。商用交流電源11の健全時には、停電検出器21(
図20)によって停電検出信号DT1が非活性化レベルの「H」レベルにされ、制御部121
および駆動回路122(
図21)によって、スイッチS1~S3がオンされるとともにスイッチS21~S23がオフされる。これにより、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して順変換器101に三相交流電圧VR,VS,VTが供給される。
【0288】
また、切換回路134(
図22)によって制御部132が選択され、参照電圧発生部131、制御部132、およびゲート駆動回路135によって順変換器101(
図19)が運転され、商用交流電源11からスイッチS1~S3を介して供給される三相交流電圧VR,VS,VTが順変換器101によって直流電圧VDC=EP+ENに変換される。
【0289】
また、制御装置104(
図19)によって逆変換器103が運転され、直流電圧EP,ENが三相交流電圧VU,VV,VWに変換されて負荷12に供給される。また、制御装置104によってチョッパ回路4が運転され、直流電圧VDC=EP+ENが降圧されてバッテリ13に供給され、バッテリ13が充電される。
【0290】
商用交流電源11の停電が発生すると、停電検出器21(
図20)によって停電検出信号DT1が活性化レベルの「L」レベルにされ、制御部121および駆動回路122(
図21)によって、スイッチS1~S3がオフされるとともにスイッチS21~S23がオンされる。これにより、バッテリ13の直流電圧VBがスイッチS21,S22を介して順変換器101のレグ回路101a,101cに供給される。また、制御装置104によってチョッパ回路4の運転が停止される。
【0291】
また、切換回路134(
図22)によって制御部133が選択され、参照電圧発生部
131、制御部133、およびゲート駆動回路135によって順変換器101のレグ回路101a,101cが運転され、バッテリ13からスイッチS21,S22を介して供給される直流電圧VBが順変換器101のレグ回路101a,101cによって昇圧されて直流電圧VDC=EP+ENに変換される。
【0292】
また、バランスパルス生成部149(
図24)によってレグ回路101bが運転され、直流電圧EP,ENの差ΔE=EP-ENの大きさが減少される。
【0293】
また、制御装置104(
図19)によって逆変換器103が運転され、直流電圧EP,ENが三相交流電圧VU,VV,VWに変換されて負荷12に供給される。したがって、商用交流電源11の停電が発生した場合でも、バッテリ13に直流電力が蓄えられている期間は、負荷12の運転を継続することができる。
【0294】
以上のように、この実施の形態6では、商用交流電源11の停電時にバッテリ13の直流電力を逆変換器103に供給する昇圧動作を順変換器101に行なわせ、商用交流電源11の健全時に順変換器101からの直流電力をバッテリ13に蓄える充電動作をチョッパ回路4に行なわせる。したがって、昇圧動作と充電動作の両方をチョッパ回路に行なわせていた従来と比べ、チョッパ回路4の小型化を図ることができ、ひいては無停電電源装置の小型化を図ることができる。
【0295】
また、商用交流電源11の停電時に、IGBT素子Q3X,Q4XをオンおよびオフさせるタイミングとIGBT素子Q3Z,Q4Zをオンおよびオフさせるタイミングとを一周期の1/2ずらすことにより、バッテリ13からレグ回路101a,101cを介してコンデンサCd1,Cd2に電流を流すタイミングを一周期の1/2だけずらすので、直流電圧VDCに重畳されるリプル電圧の振幅を小さく抑制することができる。
【0296】
また、商用交流電源11の停電時に、IGBT素子Q1Y,Q2YとIGBT素子Q3Y,Q4Yとを交互にオンさせることにより、コンデンサCd1,Cd2の端子間電圧EP,ENの差ΔE=EP-ENを減少させることができる。
【0297】
なお、商用交流電源から第1~第M相の交流電力が供給される場合に、第1~第(M-1)相に対応する(M-1)個のレグ回路を昇圧動作時に駆動させ、第M相に対応するレグ回路をバランス動作時に駆動させれば、本実施の形態6と同じ効果が得られる。Mは、2以上の整数である。本実施の形態6では、M=3であり、R相およびT相はそれぞれ第1および第2相であり、S相は第3相である。
【0298】
なお、本実施の形態6では、商用交流電源11の停電時には常時、スイッチS23をオンさせてレグ回路101bにバランス動作を行なわせたが、これに限るものではなく、コンデンサCd1,Cd2の端子間電圧EP,ENの差ΔE=EP-ENの大きさが上限値ΔEHを超えたときにだけ、スイッチS23をオンさせてレグ回路101bにバランス動作を行なわせても構わない。さらに、ΔEの大きさが上限値ΔEHを超えたときには、スイッチS21,S22をオフさせてレグ回路101a,101cの昇圧動作を停止させても構わない。
【0299】
実施の形態7.
図28は、実施の形態7に従う無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図であって、
図19と対比される図である。
図28を参照して、この無停電電源装置が
図19の無停電電源装置と異なる点は、スイッチS24が追加され、チョッパ回路4および制御装置104がそれぞれチョッパ回路170および制御装置171で置換されている点である。
【0300】
スイッチS24は、直流ラインLNとバッテリ端子T3Nとの間に接続され、制御装置171によって制御される。商用交流電源11の健全時には、スイッチS24はオフされる。商用交流電源11の停電時には、スイッチS24はオンされる。スイッチS24は、第2の直流ラインLNと電力貯蔵装置(バッテリ13)の負極との間に接続された「第2のスイッチ」の一実施例に相当する。
【0301】
また、チョッパ回路170は、制御装置171によって制御され、商用交流電源11の健全時に、順変換器1によって生成された直流電力をバッテリ13に蓄える。電流検出器7は、チョッパ回路170とバッテリ13との間に流れる電流IBを検出し、その検出値を示す信号IBfを制御装置171に与える。制御装置171は、バッテリ電圧VBおよび電流IBに基づいて、バッテリ電圧VBが参照電圧VBrになるようにチョッパ回路170を制御する。
【0302】
具体的には、チョッパ回路170は、IGBT素子Q11~Q14、ダイオードD11~D14、およびリアクトルL11,L12を含む。IGBT素子Q11~Q14は、直流ラインLP,LN間に直列接続される。ダイオードD11~D14は、それぞれIGBT素子Q11~Q14に逆並列に接続される。
【0303】
リアクトルL11の一方端子はIGBT素子Q11のエミッタに接続され、その他方端子はバッテリ端子T3Pに接続される。リアクトルL12の一方端子はバッテリ端子T3Nに接続され、その他方端子はIGBT素子Q13のエミッタに接続される。IGBT素子Q12のエミッタは中性点NPに接続される。
【0304】
制御装置171は、商用交流電源11の健全時に、IGBT素子Q11,Q14を一定周波数で交互にオンさせる。IGBT素子Q11がオンされると、コンデンサCd1の正極から直流ラインLP、IGBT素子Q11、リアクトルL7、バッテリ13、リアクトルL12、ダイオードD13、および中性点NPを介してコンデンサCd1の負極に電流が流れ、バッテリ13が充電されるとともに、リアクトルL11,L12に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0305】
IGBT素子Q14がオンされると、コンデンサCd2の正極から中性点NP、ダイオードD12、リアクトルL11、バッテリ13、リアクトルL12、IGBT素子Q14、および直流ラインLNを介してコンデンサCd2の負極に電流が流れ、バッテリ13が充電されるとともに、リアクトルL11,L12に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0306】
IGBT素子Q11またはQ14がオフされると、リアクトルL11、バッテリ13、リアクトルL12、ダイオードD13,D14の経路に電流が流れ、リアクトルL11,L12の電磁エネルギーが放出されるともに、バッテリ13が充電される。制御装置171は、バッテリ電圧VBが参照電圧VBrに到達すると、IGBT素子Q11,Q14をオフ状態に維持する。
【0307】
商用交流電源11の停電が発生した場合には、制御装置171は、スイッチS1~S3をオフさせるとともに、スイッチS21~S24をオンさせ、バッテリ13と順変換器101とを結合させる。また、制御装置171は、実施の形態6と同様にして、順変換器101のレグ回路101a,101cに昇圧動作を実行させる。
【0308】
また、制御装置171は、実施の形態6と同様にして、順変換器101のレグ回路101bにバランス動作を実行させる。他の構成および動作は、実施の形態6と同じであるので、その説明は繰り返さない。
【0309】
この実施の形態7では、実施の形態6と同じ効果が得られる他、チョッパ回路170のリアクトルL11,L12の小型化を図ることができる。
【0310】
なお、実施の形態2,3で示したように、バッテリ13の直流電力をコンデンサCd1,Cd2に供給することも可能である。この場合、制御装置171は、IGBT素子Q12,Q13を一定周波数で交互にオンさせる。
【0311】
IGBT素子Q12がオンされると、バッテリ13の正極からリアクトルL11、IGBT素子Q12,中性点NP、コンデンサCd2、直流ラインLN、およびダイオードD14を介してバッテリ13の負極に電流が流れ、コンデンサCd2が充電されるとともに、リアクトルL11,L12に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0312】
IGBT素子Q13がオンされると、バッテリ13の正極からリアクトルL11、ダイオードD11、直流ラインLP、コンデンサCd1、中性点NP、IGBT素子Q13、およびリアクトルL12を介してバッテリ13の負極に電流が流れ、コンデンサCd1が充電されるとともに、リアクトルL11,L12に電磁エネルギーが蓄えられる。
【0313】
IGBT素子Q12またはQ13がオフされると、バッテリ13の正極、リアクトルL11,ダイオードD11、直流ラインLP、コンデンサCd1,Cd2、直流ラインLN、ダイオードD14、およびバッテリ13の負極の経路に電流が流れ、コンデンサCd1,Cd2が充電されるとともに、リアクトルL11,L12の電磁エネルギーが放出される。制御装置171は、直流電圧VDCが参照電圧VDCrに到達すると、IGBT素子Q12,Q13をオフ状態に維持する。
【0314】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示により示される技術的範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0315】
T1R,T1S,T1T 交流入力端子、T2U,T2V,T2W 交流出力端子、T3P,T3N バッテリ端子、S1~S6,S11~S19,S21~S24 スイッチ、1,101 順変換器、1a~1c,3a~3c,101a~101c レグ回路、2,102 直流リンク部、3,103 逆変換器、4,170 チョッパ回路、5~7 電流検出器、8,8A,8B,104,171 制御装置、9 処理装置、11 商用交流電源、12 負荷、13 バッテリ、F1,F2 交流フィルタ、C1~C6,Cd,Cd1,Cd2 コンデンサ、L1~L7,L11,L12 リアクトル、Q1~Q6,Q11~Q14 IGBT素子、D1~D6,D11~D14 ダイオード、20,22~24,111,112 電圧検出器、25,113 制御回路、B1~B7,B11~B14 制御ブロック、26,31,32,76,81,83,95,121,132,133 制御部、27,122 駆動回路、30,75,80,131,160 参照電圧発生部、33,85,96,134 切換回路、34,77,82,91,97,135 ゲート駆動回路、40,60,140,145 電圧制御部、41~43,61,146 電流制御部、44~46,62~64,141~143,147,148 PWM部、50 両極キャリア生成部、51,71,152,153,163,164 比較器、52,72,154,155,165,166 反転回路、70,150,161,162 正極キャリア生成部、84 過負荷検出器、90,156 信号発生回路、R1~R3 抵抗器、149 バランスパルス生成部、151 補正部。