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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/16 20060101AFI20241004BHJP
   B65D 90/00 20060101ALI20241004BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B65D1/16
B65D90/00 C
B29C49/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023505289
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007961
(87)【国際公開番号】W WO2022190909
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2021037290
(32)【優先日】2021-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】金井 繁
(72)【発明者】
【氏名】森本 信行
(72)【発明者】
【氏名】松尾 善雄
(72)【発明者】
【氏名】田所 淳人
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-116172(JP,A)
【文献】特開2014-234174(JP,A)
【文献】中国実用新案第206152691(CN,U)
【文献】特表2003-504277(JP,A)
【文献】特開2010-228800(JP,A)
【文献】特開2014-227213(JP,A)
【文献】特開2007-282629(JP,A)
【文献】特開2008-055808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/00- 1/48
B65D 88/00-90/66
B29C 49/04
B29C 49/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板(110)、該底板の外周から立ち上がった円筒状の胴部(120)、及び、該胴部の上端を閉塞する天板(130)が一体成形された樽型の樹脂容器(100)であって、
上記天板は、当該樹脂容器の内外を貫通する口部(140)を少なくとも3つ有し、
上記口部は、最小口径を有する第1口部(141、142)と、最小口径より大きく5倍以下の任意倍数の口径を有する第2口部(144)とを有し、
第2口部の一つは、収納物攪拌用の口部であ
当該樹脂容器(100)の軸方向(190)において、上記口部(141,142、144)は、上記天板の天板外面(130a)から当該樹脂容器の外側向き(190a)へ口部高さ(h)にて突設されており、
上記第2口部における収納物攪拌用の口部高さ(h3)は、上記第1口部の口部高さ(h1、h2)よりも低い、
ことを特徴とする樹脂容器。
【請求項2】
当該樹脂容器は、熱可塑性樹脂材を用いてブロー成形にて製造され、全ての上記口部は、製造にて生じるパーティングライン上に位置する、請求項1に記載の樹脂容器。
【請求項3】
上記底板は、収納物の攪拌効率を向上させる凹部(162)又は凸部(164)を底板内面(110b)に有する、請求項1又は2に記載の樹脂容器。
【請求項4】
上記第2口部(144)における上記収納物攪拌用の口部は、その内面(144a)に雌ねじ(1441)を有し、かつ、その外面(144b)には、雄ねじ又はリブ(1442)を有する、請求項1から3のいずれかに記載の樹脂容器。
【請求項5】
上記天板は、上記天板外面から上記外側向きにおいて所定の高さを有する天面高位部(131:天面A部)を上記口部の周辺に有し、ここで、天面高位部は、上記口部高さを超える高さ(H1)にて延在する高位面(131a)を有する、請求項1から4のいずれかに記載の樹脂容器。
【請求項6】
上記天板は、天板の外周部に沿って配置される天面溝部(133)を有し、該天面溝部は、上記軸方向において上記天板外面よりも低い深さ(d1)を有する、請求項5に記載の樹脂容器。
【請求項7】
上記底板は、底板中央部(100A)に変位底部(111)を有し、該変位底部は、通常、当該樹脂容器の内側へ凸であり、当該樹脂容器内の収納物重量に応じて当該樹脂容器の外側へ凸に変形する部分である、請求項5又は6に記載の樹脂容器。
【請求項8】
上記収納物攪拌用の口部は、上記天板の中央部に配置され、上記天面高位部は、収納物攪拌用の口部を通る直径方向に対する直角方向における両側に配置され、当該樹脂容器の軸方向に2つの樹脂容器を積み重ねた状態において、上記底板における上記変位底部以外の底板外面(110a)と、上記天面高位部の上記高位面とは、接触して互いを支持する、請求項に記載の樹脂容器。
【請求項9】
当該樹脂容器は、ポリエチレン材で複数層にて作製され、収納物に接する最内側層(170)は、高清浄度材層である、請求項1からのいずれかに記載の樹脂容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂容器に関し、詳しくは、例えばケミカル・メカニカル・ポリシング(CMP)スラリー等の、分離あるいは沈殿しやすい物質を含む懸濁液等の溶液を輸送及び保管するための樹脂容器で、攪拌も可能な樹脂容器に関する。
【背景技術】
【0002】
ケミカル・メカニカル・ポリシング(CMP)スラリー等のような研磨剤を含む溶液を静置したとき、研磨剤は、溶液内での分散性が低下し、分離して沈殿することがある。よってこのような状態の溶液を研磨工程で使用する際には、溶液内の研磨剤を撹拌機で均一に分散させて供給が行われる。また攪拌及び供給の際に、大気中の汚染物あるいは外部からの異物が溶液へ混入するのを極力避ける必要がある場合には、クリーン環境下(密閉状態)で溶液を攪拌して供給する必要がる。尚、溶液の供給は、攪拌工程の終了後に行われるのが一般的である。
【0003】
このような溶液の収納には、例えばケミカルドラム等と呼ばれ内側をプラスチック容器で構成した容器、あるいは例えばポリドラム等と呼ばれ全体を樹脂で作製した容器が一般的に使用される。しかしながらこれらの容器には、収納物の充填用及び排出用の口部がそれぞれ一つずつ、計2つしか設けられておらず、さらにこれら口部の口径は比較的小さい。よって、このような容器に収納された溶液を攪拌及び供給する場合には、溶液を他の容器へ移し替えたり、又は、様々な治具を有し密閉状態で攪拌供給するための装置を容器に取り付けたりする必要が生じる。
【0004】
一方、溶液を攪拌する方法としては、例えば、容器自体を横転させて1、2もしくは3次元的に容器を回転させる方法、あるいは、一端に攪拌羽根を設けた回転軸を溶液内で回転させる方法(例えば特許文献1)等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-11060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、容器自体を横転させて攪拌する方法は、容器からの溶液漏れ等を起こす可能性が高く、またそのための装置構成が大型化しコスト高になるという問題がある。
また、上述した従来の容器において攪拌羽根による攪拌を行うことは、口部の数及び大きさの点で難しい。
よって、簡易な装置構成にて、また容器を密閉した状態で、溶液の攪拌及び供給を行うことは、殊の外、困難である。
【0007】
本発明は、樹脂製の容器において、簡易な装置構成にて収納物の攪拌及び供給が可能な、樹脂容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は以下のように構成する。
即ち、本発明の第1態様における樹脂容器は、底板、該底板の外周から立ち上がった円筒状の胴部、及び、該胴部の上端を閉塞する天板が一体成形された樽型の樹脂容器であって、
上記天板は、当該樹脂容器の内外を貫通する口部を少なくとも3つ有し、
上記口部は、最小口径を有する第1口部と、最小口径の1-5倍における任意倍数の口径を有する第2口部とを有し、
第2口部の一つは、収納物攪拌用の口部である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の第1態様によれば、樹脂容器は少なくとも3つの口部を有し、第2口部の一つは収納物攪拌用の口部であることから、この第2口部を介して収納物の攪拌を行うことができる。また、第1口部を介して収納物の充填、排出が可能であることから、当該樹脂容器によれば、簡易な装置構成にて収納物の攪拌及び供給を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】本発明の一実施形態における樹脂容器の概略構成を示す側面図である。
図1B図1Aに示す樹脂容器の上面図である。
図2図1Aに示す樹脂容器における溶液の攪拌及び供給に関する構成を示す図である。
図3図1Aに示す樹脂容器の底板の変形例を示す図である。
図4図1Aに示す樹脂容器の変形例を示す断面図である。
図5A図1A及び図1Bに示す樹脂容器の他の実施形態における図であり、当該樹脂容器の上面図である。
図5B図5AにおけるA-A断面図である。
図5C図5AにおけるB-B断面図である。
図6図5Bに示す口部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態である樹脂容器について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。また、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け当業者の理解を容易にするため、既によく知られた事項の詳細説明及び実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。また、以下の説明及び添付図面の内容は、特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。また、各図は、説明を補助するためのイメージ的な概念図であり、実際の形態を正確に示したものではない。
【0012】
第1実施形態
図1A及び図1B(まとめて図1と記す場合もある)を参照して、本発明の一実施形態における樹脂容器100の概略構成について説明を行う。樹脂容器100は、底板110、底板110の外周から立ち上がった円筒状の胴部120、及び、胴部120の上端を閉塞する天板130が一体成形された樽型の樹脂容器である。このような樹脂容器100は、例えばポリエチレン材等の熱可塑性樹脂材を用いてブロー成形にて作製される容器であり、例えばポリドラムあるいはプラスチックドラム等の名称が付された容器に相当する。また、樹脂容器100は、様々なサイズを有することができ、収納量で10リットル(L)から1000L、通常、20Lから200L程度の容器である。尚、本実施形態では、200Lのものを例に採る。また、樹脂容器100の形状は、本実施形態の樽形に限定されず、角形等、用途等に応じて適宜選定することができる。
【0013】
このような樹脂容器100は、鋼製容器に比べて耐薬液性、耐腐食性等に優れるため、例えば半導体分野及びディスプレイ分野(液晶・有機EL)における薬液等を収納する容器として用いることができる。上記薬液の例としては、半導体分野では、例えば上述のCMP(ケミカル・メカニカル・ポリシング)スラリー、フォトレジスト、現像液、エッチング液、洗浄液等であり、ディスプレイ分野(液晶・有機EL)では、フォトレジスト、カラーレジスト、カラーフィルタ材料等である。本実施形態では、CMPスラリーを収納する樹脂容器100を例に採る。尚、樹脂容器100の収納物は、上述等の液体に限定されず、例えば、フォーム状のホイップクリーム、乳濁液状である牛乳、マヨネーズ、ハンドクリーム、血液、塗料、又は、石灰水あるいはセメント等の無機物と液体との混合物、等であってもよい。
【0014】
樹脂容器100の天板130は、樹脂容器100の内側と外側とを貫通する、3つ以上の口部140を有し、本実施形態では、3つの口部141,142,144を有している。これらの口部140は、最小口径を有する第1口部と、該第1口部の1倍から5倍における任意倍数の口径を有する第2口部とを有する。本実施形態では、第1口部に対応する2つの口部141,142と、第2口部に対応する一つの口部144とを設けており、口部144の口径は、口部141,142の口径よりも大きい。また、本実施形態では、図1Bに示すように、天板130の中央に口部144を配置し、天板130の直径方向に沿って口部141,142を配置している。
尚、口径とは、樹脂容器100の内外を貫通する貫通穴の内径に相当する寸法であり、雌ねじが形成されている場合には、その谷径又は山径に相当する。
【0015】
また、第2口部の口径が第1口部の口径の1倍である場合には、全ての口部140が同じ口径を有する。一方、それぞれの口部140が互いに異なる口径を有することもできる。
【0016】
口部140の口径は、φ20mm-φ200mmの範囲にある。よって、上述の、第2口部が第1口部の1倍から5倍範囲の任意倍数の口径を有するという関係を維持した状態で、例えば、第1口部は最小φ20mmの口径を、第2口部は最大φ200mmの口径を、それぞれ採ることができる。
【0017】
また、上述のように樹脂容器100は、ブロー成形にて製造されることから、成形に使用する一対の金型同士の直線状の合わせ面に沿って、パーティングライン(PL)が生じる。本実施形態では、樹脂容器100における全ての口部140は、図1Bに示すように、パーティングライン105上に位置し形成されるように構成している。このように構成することで、金型を簡易化でき、口部140を有する樹脂容器100の成形を容易にすることができる。また、このように成形された樹脂容器100は、全ての口部140を含めて、パーティングライン105に対し線対称となることから、成形時における残留応力を低減し易く、成形安定性に優れ、例えば落下強度にも優れる、という利点も得られる。
【0018】
一方、口部140をパーティングライン105から外して配置することもできる。このように構成した場合には、各口部140に設置する装置の配置自由度の向上を図ることができ、以下に説明するように、口部140に例えば攪拌装置及び排出装置を配置した形態では、収納物の撹拌効率の更なる向上可能性が得られる。
【0019】
また、本実施形態の樹脂容器100は、上述した、研磨剤を含むCMPスラリー等の、分離あるいは沈殿しやすい物質を含む懸濁液等の溶液を輸送及び保管するための樹脂容器に適するように構成している。即ち、3つの口部141,142,144のうち、最も大きい口径を有する口部144を収納物攪拌用の口部としている。尚、複数の第2口部を設けた場合には、そのうちの一つを収納物攪拌用の口部とする。
【0020】
ここで、収納物攪拌用の口部とは、例えば、一端に攪拌羽根を設けた回転軸を溶液内で回転させて溶液の攪拌を行う場合に、樹脂容器100の外側から内側へ攪拌羽根がそのままの形状で、つまり攪拌羽根を折り畳む等の処理を行うことなく口部140を通過可能な程度の口径を有する口部、あるいは、溶液の攪拌を行う攪拌装置の取り付けを可能にする取付部を有する口部、等が相当する。尚、樹脂容器100内へ進入する攪拌羽根等の材質は、収納物の溶液との関連性で選択されるが、例えばテフロン(登録商標)等が好ましい。
【0021】
本実施形態では、口部144は、攪拌羽根がそのまま通過可能な程度の口径を有し、また、図2に示すように、攪拌羽根回転用の駆動部を口部144に装着可能な構成を有している。
【0022】
また、樹脂容器100からの溶液の排出方法としては、例えば、溶液の攪拌工程終了後、口部141を閉止し、口部142から容器内へ排出用チューブを挿入し、該排出用チューブを通して収納物の溶液をポンプで吸い上げるポンプアップ方式(口部142にて通気)、あるいは、図2に示すように、口部141を介して容器内に、乾燥空気あるいは不活性ガス(例えば窒素ガス等)を注入して例えば5~200kPa程度の圧力まで容器内を加圧し、口部142に挿通した排出用チューブを通して溶液を押し出す加圧方式(このときポンプによる吸い上げを併用してもよい)を採ることができる。
【0023】
図2に示すような構成を採ることで、本実施形態の樹脂容器100によれば、簡易な装置構成にて、かつ容器を密閉した状態で、収納物の攪拌及び供給を行うことが可能になる。
【0024】
また、樹脂容器100の底板110は、図3に一例を示すように、凹部162及び凸部164の少なくとも一方を有することができる。凹部162及び凸部164は、底板110にランダムに配置してもよいし、例えば、底板110の直径方向に沿って等間隔あるいはランダムに配置し、さらに、そのような配列を周方向へ等間隔あるいはランダムに配置してもよい。また、凹部162及び凸部164をリブ状とし、パーティングライン105に平行に、あるいは垂直に配列してもよい。さらに、そのような配置をランダムに組み合せてもよい。
このような凹部162及び凸部164を設けた場合、樹脂容器100が、分離あるいは沈殿しやすい物質を含む溶液の輸送及び保管に使用されるとき、収納物の溶液を攪拌させた際に溶液に乱流を生じさせることができ、溶液の攪拌効率を向上させることができる。
【0025】
さらにまた、上述したように樹脂容器100は、ブロー成型可能な熱可塑性樹脂であれば、特に限定するものではないが、例えばポリエチレン材等の熱可塑性樹脂材を用いて成形される。このとき、異なる材質の材料を用いて、図4に示すように複数層を有して成形することもできる。
【0026】
さらに、複数層にて樹脂容器100を成形する場合に、収納物に接する最内側層170は、高清浄度材層とすることができる。この高清浄度材層は、樹脂材料成分が収納物へ溶出しない、あるいは一般樹脂材の溶出量よりも低減された、樹脂材層である。その一例としては、高密度ポリエチレン樹脂材の中でも添加剤等の含有量が極力少ないグレードのもの、金属イオン含有量の少ないグレードのもの、又は、低分子量アルカン類などの溶出量の少ないグレードのものが使用可能である。
【0027】
本実施形態の樹脂容器100は、上述したように、種々の薬液等を収納する容器として使用可能であり、上述の高清浄度材層を有することで、収納物への影響を低減等することができる。
また、本実施形態の樹脂容器100では、上述したように、特に収納物の攪拌が行われることから、最内側層170を高清浄度材層とすることで、収納物への樹脂材料成分の溶出をより抑制することができるという効果もある。
【0028】
また、一般的に樹脂製の容器は、静電気が発生し帯電し易い。本実施形態の樹脂容器100では、上述のように攪拌装置及び排出装置を取り扱うことから、その際に生じた静電気によって容器外側に付着した、ごみあるいは埃が収納物を汚染する可能性も懸念される。よって、樹脂容器100の最外層に、帯電防止剤などを使用してもよい。この帯電防止剤は、特に限定するものではないが、持続性帯電防止剤が好ましい。
さらにまた、樹脂容器100の劣化防止のために、最外層に耐候(光)剤及び紫外線吸収剤の少なくとも一方を使用してもよく、収納物の紫外線防護のために遮光剤(材)を最外層に使用することもできる。
【0029】
以上の説明において、樹脂容器100の天板130に3つ以上の口部140を有するという基本構成に対して、上述した変形例あるいは追加構成は、単独であるいは適宜組み合わせて樹脂容器100に適用することができる。
【0030】
第2実施形態
上述の第1実施形態では、樹脂容器100は、3つの口部141,142,144を有する構成を示し、また、その天板130及び底板110についても特に形状を特定せず、例えば図1Aに示すように、天板130及び底板110は、平坦な形状も含む構成を示した。
以下では、図1等を参照して説明した樹脂容器100の他の実施形態における構成について、図5A図5C(以下、総称して図5と記す場合もある。)、及び図6を参照して、説明を行う。尚、図5及び図6では、理解の容易化及び説明の省略化のため、類似構成部分には、図1等と同じ符号を記している。
ここで、図5Aは、図1Bに示す樹脂容器100の上面図に対応した図で、樹脂容器100の他の実施形態におけるより詳細な構成の一例を示した図であり、図5Bは、図5Aに示すA-A部における樹脂容器100の断面図であり、図5Cは、図5Aに示すB-B部における樹脂容器100の断面である。
【0031】
図5A及び図6を参照して、樹脂容器100の天板130について説明する。
3つの口部141,142,144を立設している天板130について、樹脂容器100の軸方向190において、樹脂容器100の外側向き190aにおける天板130の上面を天板外面130aとする。この天板外面130aを外側向き190aにおける高さの基準面として、口部141,142、144は、それぞれ、口部高さh1、h2、h3(総称して、「口部高さh」と記す場合もある。)にて突設されている。本実施形態では、口部141,142におけるそれぞれの口部高さh1、h2は、同一である。一方、第2口部に相当し、また、収納物攪拌用の口部に相当する口部144の口部高さh3は、口部141,142の口部高さh1、h2よりも低く設定している。
【0032】
このように、収納物攪拌用の口部144の口部高さh3を他の口部141、142よりも低く設定することで、以下のような効果を奏することができる。
即ち、攪拌羽根回転用駆動部を装着するとき、特に、パーティングライン105に沿って装着する場合に、攪拌羽根回転用駆動部が口部144に直接当接するのを回避できることから、口部144への攪拌羽根回転用駆動部の装着を容易にすることができる。また、攪拌羽根回転用駆動部が人手を介さず自動的に口部144へ装着される形態では、口部141、142をセンサが検知して自動装着を行う構成が考えられる。このような構成において、口部144の口部高さh3を他より低く設定しておくことで、上述の検知及び装着が容易にできるという効果を生じる。
さらにまた、樹脂容器100内への収納物充填の際には、口部141及び口部142の少なくとも一方に充填機を装着する場合がある。このとき、口部144の口部高さh3が口部141、142の口部高さh1、h2よりも大きいと、装着時に充填機が口部144に当接することも想定される。よって、口部高さh1、h2よりも口部高さh3を低く設定することで、充填機の装着を容易にすることができ、収納物の充填においても利点がある。
【0033】
尚、収納物攪拌用の口部144の口部高さh3が最小という関係を有する限り、口部高さh1-h3は、それぞれ異なった高さを有することができる。
【0034】
また、第1口部における口部141,142のそれぞれは、その内面141a,142a、及び外面141b,142bの少なくとも一方に、好ましくは内面141a,142aに、ねじ形状部を有している。これらのねじ形状部には、口部141,142を密閉して樹脂容器100の収納物への異物混入及び汚染防止を図るために、プラグがそれぞれ螺合される。また、樹脂容器100内の収納物を排出する際には、プラグを除去した後、図2に示すように、加圧ガス用チューブ及び排出用チューブを設けた治具が第1口部の口部141,142の少なくとも一方に螺合され、密閉して収納物への異物混入及び汚染防止が図られる。
【0035】
一方、第2口部の口部144は、その内面144aに雌ねじ1441を有し、かつ、その外面144bには、雄ねじ又はリブ1442を有する。尚、リブ1442は、凹状あるいは凸状のいずれの形状であってもよい。ここで、雌ねじ1441は、口部144を密閉して樹脂容器100の収納物への異物混入及び汚染防止を図るために、プラグを螺合させるためのものであり、さらに、攪拌羽根回転用駆動部を装着するために使用することもできる。また、外面144bにおける雄ねじ又はリブ1442は、攪拌羽根回転用駆動部を装着し固定するために使用されるものである。
【0036】
さらに天板130は、樹脂容器100の軸方向190における樹脂容器100の外側向き190aにそれぞれ高さを異ならせて天板外面130aを隆起させて形成した天面高位部131及び天面中位部132を、口部141,142,144の周辺に有する。
ここで、天面高位部131は、図6に示すように、上述の口部高さhを超える高さH1を有して延在する、平坦又はほぼ平坦な高位面131aを有する領域である。また本実施形態では、天面高位部131は、図5Aに示すように、口部141,142,144が配列されている、天板130の直径方向に延在する、パーティングライン105に対して直角方向における両側部分に配置されて、該両側部分における大部分の面積を占めている。また、天面高位部131は、天面高位部131と天面中位部132とを連結する部分で傾斜面にて構成される連結部131b(図5A等)を有する。
さらに、図6に示すように、樹脂容器100の外周部には、胴部120を外側向き190aに延在させた、チャイム部に相当しLリングとも称され得る、外周リブ121が設けられているが、天面高位部131の高さH1は、外周リブ121の高さよりも高く設定している。
【0037】
上述の、天面高位部131の高さH1が口部高さhを超える高さであることは、収納物攪拌用の口部である口部144への攪拌羽根回転用駆動部装着の際に、攪拌羽根回転用駆動部が口部144に直接当接するのを回避でき、口部144を防護することができるという効果を生じる。
また、詳細後述するが、図5B及び図5Cに示すように、軸方向190に沿って樹脂容器100を積み重ねる場合には、下側の樹脂容器100における天面高位部131は、上側の樹脂容器100における底板110と接触して各樹脂容器100の支持部を構成することができる。この点で、上述したように天板130において天面高位部131が大きな面積を占めることは、有利となる。
【0038】
天面中位部132は、図6に示すように、口部高さhよりも低く天板外面130aを超える高さH2を有して延在する、平坦又はほぼ平坦な中位面132aを有する領域であり、図5Aにおいて、編み目を記した領域に相当する。図5Aに示すように、天面中位部132は、口部141,142,144のほぼ周囲に沿って、また、口部141,142と口部144とに間に、それぞれ配置されている。また、天面中位部132は、天面中位部132と天板外面130aとを連結する部分で傾斜面にて構成される連結部を有する。
【0039】
天面高位部131及び天面中位部132が上述のように配置されることで、天板外面130aは、本実施形態では、図5Aに示すように、パーティングライン105に沿って、及び各口部141,142,144の周囲に沿って、延在することになる。また、軸方向190において、天面高位部131の高位面131aが最も高く、次に、天面中位部132の中位面132a、次に、天板外面130aの順となる。
【0040】
さらにまた、天板130は、その外周部に沿って位置する天面溝部133(図6)を有し、天面溝部133は、図6に示すように、軸方向190において天板外面130aよりも低い深さd1を有する。よって、本実施形態では、例えば、樹脂容器100の収納物が流体である場合で、収納物の充填、攪拌、排出において口部141,142,144を利用した際に、天板外面130aへ流出した流体は、天板外面130aを流れて、天面溝部133へ流れ込むことになる。
【0041】
次に、底板110について、図5B及び図5Cを参照して、詳しく説明を行う。
底板110は、底板110の直径方向における底板中央部100Aに変位底部111を有する。該変位底部111は、平面視において例えば円形であり、図示するように通常、樹脂容器100の内側へ凸となり、樹脂容器110内における収納物の重量に応じて、軸方向190において樹脂容器110の外側へ凸に変形する部分である。ここで変位底部111は、外側へ最も変位したときでも、底板110における変位底部111以外の底板外面110a(図5B)を超えて凸とならないように、その厚み等のサイズが設計されている。
このような変位底部111を有することで、口部144に攪拌羽根回転用駆動部を装着して収納物の攪拌が行われる際には、変位底部111は、収納物に乱流を生じさせ、攪拌効率を向上させることができる。
【0042】
上述したように、収納物攪拌用としての口部144は、図5Aに示すように、天板130の直径方向における中央部に配置され、天面高位部131は、口部144を通るパーティングライン105に直角方向における両側に配置されている。このように構成された天板130を有する樹脂容器100について、各口部141,142,144をプラグで閉栓した状態で樹脂容器100を軸方向190に沿って積み重ねた状態では、図5Bに示すように、底板110における変位底部111以外の底板外面110aと、天面高位部131の高位面131aとが接触し、重なり合う樹脂容器100同士を互いに支持する。
このように重なり合った状態において、底板110の変位底部111が樹脂容器110の外側へ凸に変形している場合であっても、変位底部111に対応して位置する口部144は、既に説明したように、天面高位部131よりも低い高さを有することから、変位底部111と接触することはない。
【0043】
以上説明した各実施の形態を組み合わせた構成を採ることも可能であり、また、異なる実施の形態に示される構成部分同士を組み合わせることも可能である。また、各実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0044】
また、上述の説明では、樹脂容器100は、少なくとも3つの口部141,142,144を有する構成を示した。しかしながらこれに限定されず、樹脂容器100は、第1口部に相当する口部141,142のうちの一つと、第2口部に相当する一つの口部144との、合計2つの口部を有することもできる。
また、上述の説明では、第1口部及び第2口部は共に、平面視で円形形状であるが、円形形状に限定されない。円形以外の形状の場合、「口径」は、例えば、その一辺の長さ、あるいは対角線長さ、等の寸法に読み替えることができる。
【0045】
また、上述の説明では、収納物攪拌用の口部144には、攪拌羽根回転用駆動部を装着する旨を例示した。勿論、これに限定されることなく、収納物攪拌用の口部144には、樹脂容器100内の収納物を攪拌可能とする手段が適用可能である。このような手段の一例として、攪拌羽根を用いずに攪拌を行う構成、例えばガス吹込みによる、あるいは収納物の吸い込み及び噴出による等、の構成を挙げることができる。
【0046】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
又、2021年3月9日に出願された、日本国特許出願No.特願2021-037290号の明細書、図面、特許請求の範囲、及び要約書の開示内容の全ては、参考として本明細書中に編入されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、例えば懸濁液等の収納に用いる樹脂容器に適用可能である。
【符号の説明】
【0048】
100…樹脂容器、110…底板、111…変位底部、
130…天板、130a…天板外面、131…天面高位部、131a…高位面、
132…天面中位部、132a…中位面、133…天面溝部、
140…口部、141、142…第1口部、144…第2口部、
162…凹部、164…凸部、
170…最内側層、190…軸方向。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6