(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】発光装置および表示装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20241004BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20241004BHJP
G09F 9/33 20060101ALI20241004BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241004BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20241004BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/62
G09F9/33
G09F9/30 349D
H01L33/54
(21)【出願番号】P 2023506953
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008745
(87)【国際公開番号】W WO2022196356
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2021041779
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】西田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】玉置 昌哉
【審査官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第03/077389(WO,A1)
【文献】特開2004-311917(JP,A)
【文献】特開2003-086845(JP,A)
【文献】特開2012-114468(JP,A)
【文献】特開2019-102664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00
H01L 33/48 - 33/64
G09F 9/00
G09F 9/30、9/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する第1基板と、
前記第1面に対向する第2面、および、前記第2面と反対側の第3面を有し、前記第2面から前記第3面にかけて貫通する貫通孔を備える第2基板と、
前記第1面における、前記貫通孔内に露出した部位上に位置し、放射光強度分布における最大放射強度を有する光を前記第3面側に放射する発光素子と、を備え、
前記貫通孔は、内周面において前記最大放射強度を有する光が2回以上反射されるように構成されており、
前記第1面と前記第2面との間に間隔があ
り、
前記最大放射強度を有する光は、前記第1面に垂直な方向に対して傾斜しており、
前記第1面から、前記内周面における前記最大放射強度を有する光の最初の反射部位まで、の高さをh1としたとき、前記間隔はh1未満である、発光装置。
【請求項2】
前記第1面から、前記内周面における前記最大放射強度の1/2の強度を有する光の最初の反射部位まで、の高さをh2としたとき、h2はh1未満であり、かつ前記間隔はh2未満である、請求項
1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記第2面の側の開口よりも前記第3面の側の開口が大きく、深さが80μm以上であり、前記内周面の前記第1面に対する傾斜角度が82.5°以上である、請求項1
または2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記第2面の側の開口よりも前記第3面の側の開口が小さい、請求項1
または2に記載の発光装置。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記発光素子を封止する透光性の封止部材を備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記封止部材は、前記第1面と前記第2面との間に延びる延在部を有する、請求項
5に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1面と前記第2面との間に間隔保持部材を備える、請求項1~
6のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記間隔保持部材は、光反射性を有している、請求項
7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記間隔保持部材は、光吸収性を有している、請求項
7に記載の発光装置。
【請求項10】
前記間隔保持部材は、平面視において前記発光素子を囲んでいる、請求項
7~
9のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記貫通孔の前記内周面は、光反射性を有している、請求項1~
10のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記貫通孔の前記内周面は、前記第2面の側の部位よりも前記第3面の側の部位が、光反射性が高い、請求項
11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記発光素子は、マイクロ発光ダイオード素子を含む、請求項1~
12のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の発光装置から成る表示装置であって、
行列状に配列されている複数の前記貫通孔を備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された発光装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の発光装置は、第1面を有する第1基板と、前記第1面に対向する第2面、および、前記第2面と反対側の第3面を有し、前記第2面から前記第3面にかけて貫通する貫通孔を備える第2基板と、前記第1面における、前記貫通孔内に露出した部位上に位置し、放射光強度分布における最大放射強度を有する光を前記第3面側に放射する発光素子と、を備え、前記貫通孔は、内周面において前記最大放射強度を有する光が2回以上反射されるように構成されており、前記第1面と前記第2面との間に間隔がある。
【0005】
本開示の表示装置は、上記発光装置から成る表示装置であって、行列状に配列されている複数の前記貫通孔を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【
図1】本開示の一実施形態に係る発光装置を示す平面図である。
【
図2】
図1の切断面線A1-A2で切断した断面図である。
【
図3】発光ダイオード素子から放射される光の放射強度の角度分布を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。
【
図5】本開示の一実施形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る表示装置を示す平面図である。
【
図8】
図7の切断面線B1-B2で切断した断面図である。
【
図9】発光装置の正面における光強度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図10】発光装置の正面における光強度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図11】発光装置の正面における光強度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図12】発光装置の正面における光強度のシミュレーション結果を示すグラフである。
【
図13】本開示の一実施形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。
【
図14】本開示の一実施形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の実施形態に係る発光装置が基礎とする構成について説明する。特許文献1は、基板の一方主面上に、発光素子と該発光素子を取り囲む枠状の反射部材とを配置して成る発光装置を開示している。発光ダイオード素子等の発光素子は、光放射強度の角度分布が、光放射面に垂直な方向において最大とならない配光特性を有することがある。このため、従来の発光装置では、そのような配光特性を有する発光素子を用いた場合、発光装置からの放射光の指向性が低くなることがあった。
【0008】
以下、添付図面を参照して、本開示の発光装置および表示装置の実施形態について説明する。以下で参照する各図は、実施形態に係る発光装置および表示装置の主要な構成部材等を示している。本開示の実施形態に係る発光装置および表示装置は、図示されていない回路基板、配線導体、制御IC,LSI等の周知の構成を備えていてもよい。また、以下で参照する各図は、模式的なものであり、発光装置および表示装置の構成部材の位置、寸法比率等は、必ずしも正確に図示されたものではない。
【0009】
図1は、本開示の一実施形態に係る発光装置を示す平面図であり、
図2は、
図1の切断面線A1-A2で切断した断面図であり、
図3は、発光ダイオード素子から放射される光の放射強度の角度分布を示す図である。
図3は、発光ダイオード素子から放射される光の放射強度(W/sr:Watt/steradian)分布の3つの例を示している。
図4~6は、本開示の一実施形態に係る発光装置の変形例を示す断面図である。
図4~6に示す断面図は、
図2に示す断面図に対応する。
【0010】
本実施形態の発光装置1は、第1基板2と、第2基板3と、発光素子4とを備える。そして、発光装置1は、第1基板2と、第1基板2上に位置し、厚み方向に貫通する貫通孔31を備える第2基板3と、第1基板2における、貫通孔31内に露出した部位2aa上に位置し、放射光強度分布における最大放射強度を有する光(最大強度光ともいう)を上方に傾斜した方向(貫通孔31の開口の側に傾斜した方向)に放射する発光素子4と、を備え、貫通孔31は、内周面31cにおいて最大強度光が2回以上反射されるように構成されており、第1基板2と第2基板3との間に間隔G(
図2に記載)がある構成である。具体的には、発光装置1は、第1面2aを有する第1基板2と、第1面2aに対向する第2面3a、および、第2面3aと反対側の第3面3bを有し、第2面3aから第3面3bにかけて貫通する貫通孔31を備える第2基板3と、第1面2aにおける、貫通孔31内に露出した部位2aa上に位置し、放射光強度分布における最大強度光を第3面3b側に放射する発光素子4と、を備え、貫通孔31は、内周面31cにおいて最大強度光が2回以上反射されるように構成されており、第1面2aと第2面3aとの間に間隔Gがある構成である。
【0011】
発光装置1は、上記の構成により、以下の効果を奏する。第1面2aと第2面3aとの間にある間隔Gが貫通孔31の深さを増大させる深さ増大部として機能し得る。その結果、発光素子4から放射された最大強度光が、貫通孔31の内周面31cにおいて反射する反射回数を、増加させることができ、発光装置1から放射される放射光の指向性を向上させることができる。
【0012】
第1基板2は、第1面(一方主面ともいう)2a、および他方主面2bを有している。第1基板2の外形形状は、平面視において(すなわち、第1面2aに垂直な方向から見たときに)、例えば、三角形、矩形(正方形および長方形)、台形、六角形等の多角形、円形、楕円形等の形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0013】
第1基板2は、例えばガラス材料、セラミック材料、樹脂材料、金属材料、半導体材料等から成る。第1基板2に用いられるガラス材料としては、例えば、ホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス、石英等が挙げられる。第1基板2に用いられるセラミック材料としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、窒化珪素(Si3N4)、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)等が挙げられる。第1基板2に用いられる樹脂材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0014】
第1基板2に用いられる金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)(特に、Mg含有量が99.95質量%以上の高純度マグネシウム)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)等が挙げられる。第1基板2に用いられる合金材料としては、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金であるジュラルミン(Al-Cu合金、Al-Cu-Mg合金、Al-Zn-Mg-Cu合金)、マグネシウムを主成分とするマグネシウム合金(Mg-Al合金、Mg-Zn合金、Mg-Al-Zn合金)、ボロン化チタン、ステンレススチール、Cu-Zn合金等が挙げられる。第1基板2に用いられる半導体材料としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素等が挙げられる。
【0015】
第1基板2は、発光素子4の発光、非発光、および発光強度等を制御する駆動回路を有していてもよい。駆動回路は、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)および配線導体等を含んで構成される。TFTは、例えば、アモルファスシリコン(a-Si)、低温多結晶シリコン(LTPS:Low Temperature Poly Silicon)等から成る半導体膜を有し、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極の3端子を有する構成であってもよい。TFTは、ゲート電極に印加される電圧に応じてソース電極とドレイン電極との間の導通と非導通とを切り替える、スイッチング素子として機能する。
【0016】
駆動回路は、第1基板2の一方主面2a上に形成されていてもよく、一方主面2a上および他方主面2b上に形成されてもよい。駆動回路は、一方主面2a上に配置された、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si3N4)等から成る複数の絶縁層の層間に配置されていてもよい。駆動回路は、化学的気相成長法(Chemical Vapor Deposition:CVD法)等の薄膜形成法によって形成されてもよい。第1基板2がガラス材料から成る場合、駆動回路は、LTPSから成る半導体膜を有するTFTを用いて構成されていてもよい。このとき、駆動回路は、CVD法等の薄膜形成法を用いて、第1基板2に直接に形成することができる。
【0017】
第2基板3は、第2面(一方主面)3a、および第2面3aとは反対側の第3面(他方主面)3bを有している。第2面3aは、第1基板2の第1面2aに対向している。第3面3bは、発光装置1における外部に臨む面であり、発光面、表示面とも称される。第2基板3の外形形状は、平面視において、例えば、三角形、矩形(正方形および長方形)、台形、六角形等の多角形、円形、楕円形等の形状であってもよく、その他の形状であってもよい。
【0018】
第1基板2と第2基板3とは、平面視における外形形状が互いに一致していてもよい。第1基板2および第2基板3は、平面視における外形形状が正三角形、正方形、または正六角形であってもよい。この場合、複数の発光装置1を結合(タイリング)し、複合型の表示装置を構成することが容易になる。
【0019】
第2基板3は、例えば、ガラス材料、セラミック材料、樹脂材料、金属材料、半導体材料等から成る。第2基板3に用いられるガラス材料としては、例えばホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス、石英等が挙げられる。第2基板3に用いられるセラミック材料としては、例えばアルミナ、ジルコニア、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム等が挙げられる。第2基板3に用いられる樹脂材料としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。第2基板3に用いられる金属材料としては、例えばアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)(特に、Mg含有量が99.95質量%以上の高純度マグネシウム)、亜鉛(Zn)、錫(Sn)、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等が挙げられる。第2基板3に用いられる合金材料としては、例えばアルミニウムを主成分とするアルミニウム合金であるジュラルミン(Al-Cu合金、Al-Cu-Mg合金、Al-Zn-Mg-Cu合金)、マグネシウムを主成分とするマグネシウム合金(Mg-Al合金、Mg-Zn合金、Mg-Al-Zn合金)、ボロン化チタン、ステンレススチール、Cu-Zn合金等が挙げられる。第2基板3に用いられる半導体材料としては、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素等が挙げられる。
【0020】
第2基板3は、上記のガラス材料、セラミック材料、樹脂材料、金属材料、または半導体材料から成る単層構造を有していてもよく、上記のガラス材料、セラミック材料、樹脂材料、金属材料、または半導体材料から成る層を複数積層してなる積層構造を有していてもよい。第2基板3が金属材料から成る場合、第1基板2と第2基板3との間に、酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si3N4)等から成る絶縁層、または樹脂材料から成る絶縁部材が配置されていてもよい。
【0021】
第2基板3には、第2面3aから第3面3bにかけて、厚み方向に貫通する貫通孔31が設けられている。貫通孔31は、第2面3aに開口する第1開口31a、および第3面3bに開口する第2開口31bを有している。第2開口31bは、例えば
図1,2に示すように、第1開口31aよりも開口面積が大きくてもよい。また、例えば
図1に示すように、第2開口31bの外縁が、第1開口31aの外縁を取り囲んでいてもよい。貫通孔31は、例えば
図1,2に示すように、第3面3bに平行な断面における開口形状が、第3面3bから第2面3aに向かって徐々に縮小する形状であってもよい。
【0022】
第1開口31aは、平面視において、例えば三角形状、正方形状、矩形状、円形状、楕円形状等の開口形状を有していてもよく、その他の開口形状を有していてもよい。第2開口31bは、平面視において、例えば三角形状、正方形状、矩形状、円形状、楕円形状等の開口形状を有していてもよく、その他の開口形状を有していてもよい。第1開口31aの開口形状と第2開口31bの開口形状とは、相似であってもよく、相似でなくてもよい。
【0023】
第2基板3がガラス材料から成る場合、貫通孔31は、例えばフォトリソグラフィ技術を用いて形成することができる。第2基板3がセラミック材料から成る場合、セラミック材料の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状とし、これを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を形成する。その後、グリーンシートを貫通孔31となる孔を有する所定形状に打ち抜き加工し、得られたグリーンシートを複数枚積層し、これを1600℃程度の温度で同時焼成することによって、貫通孔31が設けられた第2基板3を作製することができる。第2基板3が樹脂材料から成る場合、例えば射出成型法を用いて、貫通孔31が設けられた第2基板3を作製することができる。第2基板3が金属材料から成る場合、例えばパンチング加工法、電気鋳造法(メッキ法)を用いて、貫通孔31が設けられた第2基板3を作製することができる。第2基板3が半導体材料から成る場合、例えばドライエッチング法を用いて、貫通孔31が設けられた第2基板3を作製することができる。
【0024】
本実施形態の発光装置1では、例えば
図2に示すように、第1基板2の第1面2aと第2基板3の第2面3aとの間に間隔Gが設けられている。間隔Gは、発光素子4の寸法、発光素子4の放射光強度分布、貫通孔31の形状等に基づいて決定されてよい。間隔Gは、発光装置1の正面強度を考慮して決定されてもよい。間隔Gは、0μmより大きく、10μm程度以下であってもよく、0μmより大きく、5μm程度以下であってもよい。
【0025】
第1基板2は、平面視において、第1面2aのうちの部位2aa(搭載部位ともいう)が貫通孔31内に露出している。発光素子4は、第1基板2の搭載部位2aa上に位置している。発光素子4は、光放射面4aが第2開口31bに臨むように、搭載部位2aa上に位置している。発光素子4は、放射光強度分布における最大放射強度を有する光を、第3面3b側に向かって放射する。
【0026】
発光素子4は、例えば発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)素子、有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode:OLED)素子、半導体レーザ(Laser Diode:LD)素子等の自発光素子であってもよい。本実施形態では、発光素子4として、発光ダイオード素子を用いる。発光素子4は、マイクロ発光ダイオード素子であってもよい。発光素子4がマイクロ発光ダイオード素子である場合、発光素子4は、搭載部位2aa上に搭載された状態で、一辺の長さが1μm程度以上100μm程度以下または5μm程度以上20μm程度以下である矩形状の平面視形状を有していてもよい。また、発光素子4は、光放射面4aの搭載部位2aaからの高さが2μm以上10μm以下であってもよい。
【0027】
発光装置1は、第1基板2の搭載部位2aa上に配置されたアノード電極21およびカソード電極22を有している。アノード電極21は、発光素子4のアノード端子に電気的に接続される。カソード電極22は、発光素子4のカソード端子に電気的に接続される。アノード電極21およびカソード電極22は、発光素子4の発光、非発光、発光強度等を制御する駆動回路に電気的に接続されている。
【0028】
発光素子4とアノード電極21およびカソード電極22とは、例えば異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film:ACF)、はんだボール、金属バンプ、導電性接着剤等の導電性接続部材を用いたフリップチップ接続によって、電気的および機械的に接続されていてもよい。発光素子4とアノード電極21およびカソード電極22とは、ボンディングワイヤ等の導電性接続部材を用いて、電気的に接続されていてもよい。第1基板2が金属材料または半導体材料から成る場合、第1基板2の少なくとも第1面2a上に酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si3N4)等から成る絶縁層を配置し、該絶縁層上に発光素子4を配置してもよい。この場合、発光素子4のアノード端子とカソード端子とが電気的に短絡する虞を低減できる。
【0029】
発光素子4が発光ダイオード素子である場合、発光素子4は、例えば
図3に示す放射光強度分布A,B,Cのように、放射強度の指向性が低いことがある。また、発光素子4は、放射光強度分布B,Cのように、放射強度が光放射面4aの前方(
図2における上方)で最大でない放射光強度分布を有することがある。すなわち、放射光強度分布B,Cは、最大放射強度を有する光が第1面2aに垂直な方向に対して傾斜している。本願発明者は、発光素子4が放射光強度分布A,B,C、特に放射光強度分布B,Cを有する場合、発光素子4の放射光の大部分が貫通孔31の内周面31cにおいて0回または1回反射されて外部に放射されると、発光装置1からの放射光の指向性が低下することを見出した。さらに、本願発明者は、発光素子4が放射光強度分布B,Cを有する場合であっても、発光素子4の放射光の大部分(例えば、全放射光量の40~60%程度以上)が内周面31cにおいて2回以上反射された後に外部に放射されると、発光装置1からの放射光の指向性が向上することを見出した。なお、「~」は「乃至」を意味し、以下同様とする。
【0030】
本実施形態の発光装置1は、貫通孔31が、内周面31cにおいて、放射光強度分布における最大放射強度を有する光L1を2回以上反射するように構成されている。このため、発光装置1からの放射光の指向性を向上させることができる。
【0031】
本実施形態の発光装置1では、第1基板2と第2基板3との間に間隔Gが設けられている。発光素子4が発光ダイオード素子である場合、例えば
図3に示すように、発光素子4の光放射面4aの垂線に対する角度が90°付近である放射角度θ方向に放射される光の強度が低い。このため、第1基板2と第2基板3との間に間隔Gを設けた場合であっても、第1基板2と第2基板3との間隙を介して外部に漏れる光量は小さく、貫通孔31の内周面31cにおいて反射される光の光量は、実質的に減少しない。また、第1基板2と第2基板3との間に間隔Gを設けることで、第1面2aと第3面3bとの距離を長くできる。即ち、間隔Gが貫通孔31の深さを深くする深さ増大部として機能し得る。このため、貫通孔31は、放射角度θがθMAX程度である最大強度光だけでなく、放射角度θがθMAXと異なる最大強度光以外の光の少なくとも一部を、内周面31cにおいて2回以上反射させることが可能となる。なお、「θMAX」は、発光素子4の放射光強度分布における最大強度光の放射角度を指す。
【0032】
上記のように、本実施形態の発光装置1によれば、放射角度θがθMAXである最大強度光、および、放射角度θがθMAXと異なる最大強度光以外の光の少なくとも一部を、貫通孔31の内周面31cにおいて2回以上反射させることが可能となるため、発光装置からの放射光の指向性を効果的に向上させることができる。
【0033】
発光装置1では、貫通孔31から外部に放射される光(すなわち、発光装置1から外部に放射される光)の放射光強度分布を、最大強度方向が表示面3bの法線方向と略一致する、指向性の高い縦長の余弦(cosθ)曲面形状に近似した形状とすることができる。貫通孔31から外部に放射される光の放射光強度分布は、ランベルトの余弦則(理想的な拡散放射体で観測される光の放射強度が、放射面(発光装置1における表示面3b)の法線との間の角度θの余弦と正比例するという法則)に従った、指向性の高い縦長の近似的余弦曲面形状となる。ここで、「余弦曲面形状」とは、光の放射光強度分布を縦断面でみたとき、放射光強度分布の形状が余弦曲線となっている形状を指す。
【0034】
発光装置1は、正面強度(発光装置1の正面において測定した光強度)を、第2基板3を有さない発光装置によって達成される正面強度の、2倍程度以上9倍程度以下とすることができる。
【0035】
発光装置1は、貫通孔31から外部に放射される光の放射光強度分布において、全放射光量の50%以上が含まれる角度θ1(主放射角度ともいう)を、所定角度以下にすることができる。所定角度は、発光素子4の放射光強度分布に依存してよい。所定角度は、例えば、30°程度であってもよく、20°程度であってもよく、10°程度であってもよい。なお、角度θ1は、発光素子4の光放射面4a(
図3に示す)に直交する方向を0°とした場合の角度である。
【0036】
発光装置1では、第1基板2および第2基板3が、発光素子4を収容するキャビティ(凹部)を構成する。間隔Gを設けた場合、第1面2aと、内周面31cと、内周面31cを第1面2aに向かって仮想的に延長した仮想内周面31dとが、キャビティを規定する。該キャビティは、間隔Gを設けない場合の、第1基板2の第1面2aと、貫通孔31の内周面31cとによって規定されるキャビティよりも、容積が大きい。発光装置1によれば、容積が比較的大きいキャビティに、量子ドット、蛍光体等の波長変換部材、カラーフィルタ等を収容することができる。その結果、発光装置1の放射スペクトルを発光素子4の放射スペクトルと異ならせることができる等、発光装置1の設計自由度を向上させることができる。
【0037】
第1基板2と第2基板3とは、接着剤によって、互いに固定されていてもよい。発光装置1では、第1基板2と第2基板3との間の間隔Gに、第1基板2と第2基板3とを強固に接着する、十分な量の接着剤を配置することが可能となる。このため、発光装置1の信頼性を向上させることができる。第1基板2と第2基板3との接着に用いられる接着剤としては、例えばエポキシ樹脂等の透明樹脂接着材、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂等の接着性を有する透明樹脂が挙げられる。接着剤は光吸収材料を含んでいてもよい。光吸収材料は、例えば、無機顔料であってもよい。無機顔料は、カーボンブラックなどの炭素系顔料、チタンブラックなどの窒化物系顔料、Cr-Fe-Co系、Cu-Co-Mn(マンガン)系、Fe-Co-Mn系、Fe-Co-Ni-Cr系等の金属酸化物系顔料等であってもよい。光吸収材料は、金属酸化物系顔料等の絶縁材料であってもよい。その場合、第1基板2の第1面2a上に形成された配線、電極パッド等の導体部が、光吸収材料を介してショートすることを防ぐことができる。
【0038】
発光装置1は、例えば
図1,2に示すように、第1基板2と第2基板3との間に間隔Gを形成する、間隔保持部材としてのスペーサ6を有していてもよい。この場合、発光装置1は、第1基板2と第2基板3との相対的な位置が安定化され、外力が加わっても間隔Gが変動し難くなる。その結果、発光装置1は、放射光の指向性が高く、長期信頼性に優れた発光装置となる。スペーサ6は、平面視において、搭載部位2aaおよび発光素子4を連続してまたは断続的に取り囲む環状の形状を有していてもよい。スペーサ6は、例えば
図1,2に示すように、互いに離隔して配置された複数のスペーサ6であってもよい。この場合、スペーサ6は円柱、四角柱等の柱状、円錐台、四角錐台等の錐台状の形状であってもよい。第1基板2の第1面2a上に形成された駆動回路、または駆動回路とアノード電極およびカソード電極とを接続する配線導体が、スペーサ6の一部を構成していてもよい。
【0039】
スペーサ6は、光反射性を有していてもよい。この場合、間隔Gに入り込んだ光を貫通孔31の側へ反射させることができ、光の利用効率が向上する。また、間隔Gに入り込んだ光が隣接する貫通孔31の側へ入り込むことを抑えることができる。スペーサ6は、光反射層7(
図5に示す)と同様の金属材料から構成されていてもよい。例えばスペーサ6は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、錫(Sn)等の金属材料から構成されていてもよい。また、スペーサ6は、アノード電極21およびカソード電極22と同様の金属材料から構成されていてもよい。例えばスペーサ6は、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Ti(チタン)、Mo(モリブデン)、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Ag(銀)、Cu(銅)、Ni(ニッケル)等を含む導体層で構成されていてもよい。また、例えばスペーサ6は、Al、Al/Ti、Ti/Al/Ti、Mo、Mo/Al/Mo、Ti/Al/Mo、Mo/Al/Ti、Cu、Cr、Ni、Ag等から構成されていてもよい。ここで、「Al」は、Al層の単層構造を示し、「Ti/Al/Ti」は、Ti層上にAl層が積層され、Al層上にTi層が積層された積層構造を示す。その他についても同様である。
【0040】
スペーサ6は、光吸収性を有していてもよい。この場合、間隔Gに入り込んだ光をスペーサ6によって吸収し、間隔Gに入り込んだ光が隣接する貫通孔31の側へ入り込むことを抑えることができる。スペーサ6は、光吸収材料を含有する光硬化性または熱硬化性の樹脂材料(エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂等)を、第1基板2の第1面2aに塗布し、硬化させることによって形成されてもよい。光吸収材料は、例えば、無機顔料であってもよい。無機顔料は、カーボンブラックなどの炭素系顔料、チタンブラックなどの窒化物系顔料、Cr-Fe-Co系、Cu-Co-Mn(マンガン)系、Fe-Co-Mn系、Fe-Co-Ni-Cr系等の金属酸化物系顔料等であってもよい。またスペーサ6は、表面に入射光を吸収する凹凸構造を有していてもよい。例えば、スペーサ6は、シリコーン樹脂等の母材中にカーボンブラック等の黒色粒子を混入させて形成された黒色層であってもよい。黒色層の表示面には、凹凸構造が形成されていてもよい。凹凸構造は、10μm~50μm程度の算術平均粗さを有していてもよく、20μm~30μm程度の算術平均粗さを有していてもよい。黒色層の表面粗さは、黒色粒子の平均粒径または平均半径に応じた表面粗さであってもよい。
【0041】
例えば
図2に示すように、第1面2aから、貫通孔31の内周面31cにおける最大強度光L1の最初の反射部位までの高さをh1とするとき、間隔Gは高さh1未満であってもよい。例えば
図3に示すように、放射角度θがθMAXよりも僅かに大きい光および僅かに小さい光は、最大強度光と同程度の放射強度を有することがある。即ち、最大強度光の放射角度θMAXが、ある程度の範囲を有している(ΔθMAXである)ことがある。従って、間隔Gが高さh1未満である場合、放射角度θがΔθMAXの範囲内にある最大強度光が、第1基板2と第2基板3との間隔Gを介して外部に漏れることを抑制できる。また、間隔Gが高さh1未満である場合、放射角度θがΔθMAXの範囲内にある最大強度光を、貫通孔31の内周面31cにおいて2回以上反射させることが可能となる。その結果、発光装置1を、放射光の指向性が高い、高輝度の発光装置とすることができる。ΔθMAXは、放射光強度分布Bの場合には27°~37°程度であってもよく、放射光強度分布Cの場合には47°~53°程度であってもよいが、これらの範囲に限らない。
【0042】
例えば
図2に示すように、基板2の第1面2aから、貫通孔31の内周面31cにおける最大放射強度の1/2の強度を有する光L2の最初の反射部位までの高さをh2とするとき、高さh2は、高さh1未満であり、かつ間隔Gは、高さh2未満であってもよい。この場合、発光素子4の全放射光量のうち、第1基板2と第2基板3との間隙を介して外部に漏れる光量の割合を効果的に低減できるため、発光素子4の放射光の大部分(例えば、全放射光量の40~60%程度以上)を、貫通孔31の内周面31cにおいて2回以上反射させることが可能となる。その結果、発光装置1を、放射光の指向性がより高い、より高輝度の発光装置1とすることができる。
【0043】
なお、例えば、上記h1は44μm程度以上122μm程度以下であり、上記h2は17μm程度以上18μm程度以下であるが、これらの範囲に限らない。
【0044】
第2基板3は、貫通孔31の第2面3aの側の開口よりも第3面3bの側の開口が大きく、搭載部位2aaに対する貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が70°程度以上85°程度以下であってもよい。随意的に、第2基板3は、厚みTが30μm程度以上100μm程度以下であってもよい。この場合、発光素子4から放射され、貫通孔31の内周面31cで反射した光が、再び貫通孔31の内周面31cに向かって進行し易くなるため、貫通孔31の内周面31cにおいて2回以上反射される光の光量が増加する。その結果、発光装置1から主放射角度θ1以下の方向に放射される光の光量を増加させることができ、発光装置1から放射される光の指向性をさらに向上させることができる。ここで、「傾斜角度」は、例えば、発光装置1の縦断面を見たときの、搭載部位2aaと貫通孔31の内周面31cとの間の角度αであってもよい(
図2参照)。また、「縦断面」とは、例えば、発光装置1を、搭載部位2aaの図心を通り、基板2の第1面2aに垂直な切断面で切断した断面であってもよい。角度αが縦断面の取り方によって変化する場合には、縦断面の取り方を変化させたときの角度αの最小値を傾斜角としてもよい。傾斜角度は、搭載部位2aaの法線と内周面31cの法線との間の角度であってもよい。
【0045】
図13に示すように、貫通孔31は、第2面3aの側の開口(第1開口31a)よりも第3面3bの側の開口(第2開口31b)が小さい構成であってもよい。この構成の場合、
図2に示す構成と比較して、第2基板3の厚みT(貫通孔31の深さに相当する)を薄くしても、最大放射強度を有する光L1が、貫通孔31の内周面31cにおいて2回以上反射することができる。また、貫通孔31から外部に放射される光の収束性が向上する。角度αは、95°程度~110°程度であってもよいが、この範囲に限らない。
【0046】
図4に示すように、発光装置1は、貫通孔31に透光性の封止部材5を備えていてもよい。封止部材5は、基板2の第1面2aの搭載部位2aa上から貫通孔31内にかけて位置し、発光素子4を覆っていてもよい。封止部材5は、絶縁性を有していてもよく、この場合、封止部材5は、発光素子4を直接に被覆していてもよい。これにより、発光素子4が位置ずれしたり、発光素子4が搭載部位2aaから剥離したりすることを抑制することができるため、発光装置1の信頼性を向上させることができる。
【0047】
封止部材5は、例えば樹脂材料等から成る。封止部材5に用いられる樹脂材料としては、例えばシリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。封止部材5は、ガラス材料等から成る光散乱性粒子を含んでいてもよい。封止部材5は、貫通孔31内に上記樹脂材料を配置し、紫外線等の光を照射する光硬化法、所定温度で硬化させる加熱硬化法、光加熱硬化法等によって形成されてもよい。封止部材5は、ガラス材料から構成されていてもよく、この場合、貫通孔31に嵌まり込む形状の封止部材5を作製した後、封止部材5を貫通孔31に挿入し、内周面31cに透明接着剤を介して接着させてもよい。
【0048】
封止部材5は、例えば
図4に示すように、第1基板2の第1面2aと第2基板3の第2面3aとの間に延びる延在部5eを有していてもよい。この場合、第1基板2と第2基板3とを固定する固定力が向上し、それらが経時的に位置ずれ、基板間の剥離等を起こすことを抑えることができる。封止部材5は、接着性を有する透明樹脂から成り、第1基板2と第2基板3とを接着していてもよい。
【0049】
封止部材5は、外部に臨む表面5aが、平坦であってもよく、外部に向かって凸型とされた湾曲面であってもよい。封止部材5の表面5aは、例えば
図4に示すように、外部に向かって凹型とされた湾曲面であってもよい。封止部材5の表面5aは、封止部材5を通過する光を集光またはコリメートする光学的機能を有していてもよい。この場合、発光装置1からの放射光の指向性を効果的に向上させることが可能となる。
【0050】
第2基板3は、貫通孔31の内周面31cが光反射性を有していてもよい。例えば、貫通孔31の内周面31cは鏡面から構成されていてもよい。この場合、発光素子4から放射された光のうちの少なくとも一部の光が、貫通孔31の内周面31cにおいて2回以上反射されても、反射光の光量の低下を低減できる。その結果、貫通孔31から外部に放射される光の光量が低下することを抑えることができる。
【0051】
第2基板3が、ガラス材料、セラミック材料、樹脂材料等の光反射性の低い材料から成る場合、例えば
図5に示すように、貫通孔31の内周面31cに光反射層7を配置してもよい。
【0052】
光反射層7は、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、錫(Sn)等の金属材料から成る、可視光の光反射率が高い金属層を有していてもよい。光反射層7は、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金であるジュラルミン(Al-Cu合金、Al-Cu-Mg合金、Al-Zn-Mg-Cu合金)等の合金材料から成る、可視光の光反射率が高い合金層を有していてもよい。上記金属材料および上記合金材料の光反射率は、アルミニウムが90%~95%程度、銀が93%程度、金が60%~70%程度、クロムが60%~70%程度、ニッケルが60%~70%程度、白金が60%~70%程度、錫が60%~70%程度、アルミニウム合金が80%~85%程度である。
【0053】
光反射層7は、貫通孔31の内周面31cに、CVD法、蒸着法、メッキ法等の薄膜形成方法を用いて形成してもよい。光反射層7は、貫通孔31の内周面31cに、上記金属材料または上記合金材料の粒子を含む樹脂ペーストを焼成し固化させる厚膜形成方法等の膜形成法を用いて形成してもよい。光反射層7は、貫通孔31の内周面31cに、上記金属材料または上記合金材料から成るフィルムを接合する接合法を用いて形成してもよい。
【0054】
図14に示すように、貫通孔31の内周面31cは、第2面3aの側の部位(部位31caとする)よりも第3面3bの側の部位(部位31cbとする)が、光反射性が高い構成であってもよい。例えば、部位31cbに位置する光反射層7bの反射率が、部位31caに位置する光反射層7aの反射率よりも高い構成であってもよい。この構成の場合、最大放射強度を有する光L1の2回目以降の反射部で、反射光の強度が低下することを効果的に抑えることができる。
【0055】
例えば、光反射層7aおよび光反射層7bを構成するそれぞれの材料が異なっていてもよい。光反射層7aを構成する材料が銀(反射率93%程度)、アルミニウム合金(反射率80%~85%程度)等であり、光反射層7bを構成する材料がアルミニウム(反射率90%~95%程度)であってもよい。また、光反射層7aおよび光反射層7bのそれぞれの表面粗さが異なっていてもよい。光反射層7aの表面の算術平均粗さが、光反射層7bの表面の算術平均粗さよりも大きくてもよい。すなわち、光反射層7aの表面における入射光の吸収性および散乱性を、光反射層7bの表面における入射光の吸収性および散乱性よりも大きくする。光反射層7aの表面の算術平均粗さが100nm~10μm程度であってもよく、光反射層7bの表面の算術平均粗さが1nm~100nm程度であってもよい。人の目が最も感度が高い光波長550nmに対して1/10以下の表面粗さであれば、光学的に鏡面の表面になることから、光反射層7aの表面の算術平均粗さが55nm~10μm程度であってもよく、光反射層7bの表面の算術平均粗さが1nm~55nm程度であってもよい。
【0056】
貫通孔31の内周面31cの面積に占める部位31caの割合は30%~70%程度であり、部位31cbの割合は70%~30%程度であってもよいが、この範囲に限らない。
【0057】
発光装置1は、例えば
図6に示すように、第2基板3の第3面3b上に配置された光吸収層8を備えていてもよい。この場合、外部から到来する外光が、第2基板3の第3面3bにおいて反射され、貫通孔31から外部に放射される光と干渉することを抑制することができるため、外光の影響が低減された発光品位の高い発光装置とすることができる。
【0058】
光吸収層8は、例えば、光吸収材料を含有する光硬化性または熱硬化性の樹脂材料を、第3面3bに塗布し、硬化させることによって形成される。光吸収材料は、例えば、無機顔料であってもよい。無機顔料は、例えば、カーボンブラックなどの炭素系顔料、チタンブラックなどの窒化物系顔料、クロム(Cr)-鉄(Fe)-コバルト(Co)系、銅(Cu)-コバルト-マンガン(Mn)系、鉄-コバルト-マンガン系、鉄-コバルト-ニッケル(Ni)-クロム系などの金属酸化物系顔料等であってもよい。
【0059】
光吸収層8は、表面に入射光を吸収する凹凸構造を有していてもよい。例えば、光吸収層8は、シリコーン樹脂等の母材中にカーボンブラック等の黒色顔料を混入させて形成された黒色膜であってもよい。黒色層の表面には、凹凸構造が形成されていてもよい。凹凸構造は、例えば転写法等によって形成されていてもよい。凹凸構造は、10μm~50μm程度の算術平均粗さを有していてもよく、20μm~30μm程度の算術平均粗さを有していてもよい。この場合、光吸収性が格段に向上する。
【0060】
次に、本開示の一実施形態に係る表示装置について説明する。
図7は、本開示の一実施形態に係る表示装置を示す平面図であり、
図8は、
図7の切断面線B1-B2で切断した断面図である。
【0061】
本開示の表示装置は、発光装置1から成る表示装置10であって、行列状に配列されている複数の貫通孔31を備える構成である。表示装置10は、1枚の第1基板2と1枚の第2基板3を備え、行列状に配列された複数の貫通孔31を備える構成であってもよく、行列状に配列された複数の発光装置1を備える構成であってもよい。
【0062】
本実施形態の表示装置10は、例えば
図7,8に示すように、複数の発光装置1を備える。複数の発光装置1は、1つの平面内において行列状(マトリクス状)に配列されることによって、複合型の表示装置(マルチディスプレイ)を構成する。複数の発光装置1は、複数の表示面3bが、1つの仮想面上に位置するように、配列されていてもよい。複数の発光装置1は、隣り合う2つの発光装置1の側面同士が、無機接着剤または有機接着剤等の接合材を用いて、結合(タイリング)されていてもよい。接合材は、ネジ等の機械的な結合部材であってもよい。複数の発光装置1は、ベース基板上に設置されていてよい。
【0063】
表示装置10は、複数の発光装置1を構成する、第1基板2および第2基板3が、一体的に形成されている構成であってもよい。すなわち、表示装置10は、単一の第1基板2の第1面2aに複数の発光素子4が搭載され、複数の発光素子4は、単一の第2基板3に形成された複数の貫通孔31内にそれぞれ収容されている構成であってもよい。また、表示装置10は、複数の発光装置1の複数のカソード電極22が一体的に形成された共通カソード電極となっていてもよい。
【0064】
表示装置10は、複数の画素部を含んで構成されていてもよい。各画素部は、複数の発光装置1を有していてもよい。各画素部が有する複数の発光装置1は、例えば
図7,8に示すように、赤色光を発光する発光素子4Rを搭載した発光装置1R、緑色光を発光する発光素子4Gを搭載した発光装置1G、および青色光を発光する発光素子4Bを搭載した発光装置1Bであってもよい。これにより、表示装置10は、フルカラーの階調表示を行うことが可能になる。
【0065】
各画素部は、上記の発光装置1R,1G,1Bに加えて、黄色光を発光する発光装置1および白色光を発光する発光装置1のうちの少なくとも一方を有していてもよい。これにより、表示装置10の演色性および色再現性を向上させることが可能になる。各画素部は、赤色光を発光する発光装置1Rの代わりに、橙色光、赤橙色光、赤紫色光または紫色光を発光する発光装置1を有していてもよい。各画素部は、緑色光を発光する発光装置1Gの代わりに、黄緑色光を発光する発光装置1を有していてもよい。
【0066】
表示装置10は、放射光の指向性が向上された発光装置1を複数備えることから、複数の画素部からの高強度の放射光同士が適度に混色する。その結果、表示装置10の輝度、コントラスト、階調および演色性等の表示品位を向上させることができる。
【実施例】
【0067】
実施例として、
図1,2に示した発光装置1について、表示面3bの正面における光強度をシミュレーションによって算出した。本シミュレーションは、第2基板3の厚み(貫通孔31の深さに相当する)、および貫通孔31の内周面31cの第1面2aに対する傾斜角度が互いに異なる複数の発光装置1について行った。本シミュレーションの結果を
図9~
図12のグラフに示す。
図9は貫通孔31の深さが30μm、
図10は貫通孔31の深さが50μm、
図11は貫通孔31の深さが80μm、
図12は貫通孔31の深さが100μmである場合を示す。なお、各発光装置1は、第1基板2および第2基板3がガラス基板であり、貫通孔31の内周面31cに光反射層7がある構成とした。
【0068】
第2基板3は、平面視において、貫通孔31の第1開口31aの縦方向(
図1における上下方向)の長さを24μmとし、横方向(
図1における左右方向)長さを24μmとした。また、貫通孔31の内周面31cの光反射率を96%とした。また、発光素子4については、縦方向の長さを20μmとし、横方向の長さを20μmとした。また、光放射面4aの第1面2aからの高さHを3μmとし、放射光強度分布を
図3に示すBとした。
【0069】
図9~12は、発光装置1の正面における光強度のシミュレーション結果を示す図である。
図9~12は、発光装置1における正面強度Iの、第2基板3を有さない発光装置により達成される正面強度I0に対する強度比I/I0を示している。
図9~12は、強度比I/I0の間隔G依存性を示している。
図9~12は、第2基板3の厚みT(貫通孔31の深さに相当する)を30μm、50μm、80μm、および100μmに設定した場合の強度比I/I0のシミュレーション結果にそれぞれ対応する。
【0070】
図9~12に示すシミュレーション結果において、間隔Gが0μmより大きいときの強度比I/I0が、間隔Gが0μmであるときの強度比I/I0よりも大きくなっている場合、間隔Gを設けたことにより発光装置1の指向性が向上したと判断することができる。
図9~12に示すように、貫通孔31の内周面31cの第1面2aに対する傾斜角度が72.5°または82.5°である場合、間隔Gを0μmよりも大きくすることで、強度比I/I0を向上させることができた。貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が比較的大きい場合、間隔Gを0μmよりも大きくすることで、間隔Gの側へ漏れる漏れ光が若干あったとしても、発光素子4から放射される光のうち、内周面31cにおいて2回以上反射される放射光の割合を増加させることができる。即ち、間隔Gが貫通孔31の深さ増大部(反射回数を補助的に増加させる部位ともいえる)として機能する。その結果、発光装置1から放射される光の指向性を高めることができたと考えられる。
【0071】
図9は、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が72.5°であり、間隔Gが5μm程度よりも大きい場合に、強度比I/I0が低下することを示している。この低下は、第1基板2と第2基板3との間隔Gを介して外部に漏れる光の光強度が、貫通孔31の内周面31cにおいて2回以上反射されて発光装置1の正面の方向に放射される光の強度を上回ったためと考えられる。貫通孔31の内周面31cの第1面2aに対する傾斜角度が52.5°または62.5°である場合、間隔Gを0μmよりも大きくすることで、強度比I/I0が低下した。この低下は、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が比較的小さい場合、発光素子4から放射される光は、貫通孔31の内周面31cにおいて1回反射すると、再反射せずに外部に向かって進行し易く、内周面31cにおいて2回以上反射し難いためと考えられる。
【0072】
以上のように、間隔Gを0μmよりも大きくすることで、発光装置1から放射される光の指向性を高めることが可能となり、その結果、輝度、コントラスト、階調および演色性等の表示品位が向上した表示装置を提供することが可能となる。
【0073】
また、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が82.5°と大きければ、貫通孔31の深さを深くするほど、間隔Gが小さくても強度比I/I0が大きい。そして、間隔Gが大きくなるに伴って、強度比I/I0がさらに大きくなる。例えば、
図11(貫通孔31の深さが80μmである構成)に示すように、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が82.5°である場合、間隔Gが0μm~3μm程度では傾斜角度が62.5°である場合よりも、強度比I/I0が若干低い。しかし、間隔Gが3μm程度以上では、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が82.5°である場合の方が、傾斜角度が62.5°である場合よりも、強度比I/I0が大きい。そして、間隔Gが大きくなるに伴って、強度比I/I0がさらに大きくなる。また
図12(貫通孔31の深さが100μmである構成)に示すように、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が82.5°である場合、間隔Gが0μm程度では、傾斜角度が62.5°である場合よりも強度比I/I0で僅かに低い。しかし、間隔Gが1μm程度以上では、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度が82.5°である場合の方が、傾斜角度が62.5°である場合よりも、強度比I/I0が大きい。そして、間隔Gが大きくなるに伴って、強度比I/I0がさらに大きくなる。
【0074】
従って、
図11、
図12に示すように、貫通孔31の第2面3aの側の開口よりも第3面3bの側の開口が大きく、貫通孔31の深さは80μm以上であってよく、貫通孔31の内周面31cの傾斜角度は82.5°以上であってよく、間隔Gは3μm以上であってよい。
【0075】
本開示の発光装置によれば、第1面と第2面との間にある間隔が貫通孔の深さを増大させる深さ増大部として機能し得る。その結果、発光素子から放射された最大放射強度を有する光が、貫通孔の内周面において反射する反射回数を、増加させることができ、発光装置から放射される放射光の指向性を向上させることができる。また、本開示の表示装置によれば、輝度、コントラスト、階調および演色性等の表示品位を向上させることができる。
【0076】
以上、本開示の各実施形態について詳細に説明したが、また、本開示は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本開示の発光装置および表示装置は、各種の電子機器に適用できる。その電子機器としては、照明装置、自動車経路誘導システム(カーナビゲーションシステム)、船舶経路誘導システム、航空機経路誘導システム、自動車等の乗り物の計器用インジケータ、インスツルメントパネル、スマートフォン端末、携帯電話、タブレット端末、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、電子手帳、電子書籍、電子辞書、パーソナルコンピュータ、複写機、ゲーム機器の端末装置、テレビジョン、商品表示タグ、価格表示タグ、産業用のプログラマブル表示装置、カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー、ファクシミリ、プリンタ、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、医療用表示装置、デジタル表示式腕時計、スマートウォッチ、駅および空港等に設置される案内表示装置、広告宣伝用のサイネージ(デジタルサイネージ)等がある。
【符号の説明】
【0078】
1,1R,1G,1B 発光装置
2 第1基板
2a 第1面(一方主面)
2aa 部位(搭載部位)
2b 他方主面
21 アノード電極
22 カソード電極
3 第2基板
3a 第2面
3b 第3面(表示面)
31 貫通孔
31a 第1開口
31b 第2開口
31c 内周面
31ca,31cb 部位
31d 仮想内周面
4,4R,4G,4B 発光素子
4a 光放射面
5 封止部材
5a 表面
5e 延在部
6 間隔保持部材(スペーサ)
7,7a,7b 光反射層
8 光吸収層
10 表示装置