(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/06 20060101AFI20241004BHJP
B29C 49/22 20060101ALI20241004BHJP
B29C 49/12 20060101ALI20241004BHJP
B29C 45/16 20060101ALI20241004BHJP
B29C 33/42 20060101ALI20241004BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B29C49/06
B29C49/22
B29C49/12
B29C45/16
B29C33/42
B29C49/48
(21)【出願番号】P 2023507117
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 JP2022011443
(87)【国際公開番号】W WO2022196658
(87)【国際公開日】2022-09-22
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021041526
(32)【優先日】2021-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】大池 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】石坂 和也
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/251035(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/012067(WO,A1)
【文献】特開平05-169521(JP,A)
【文献】特開昭56-166027(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/06
B29C 49/22
B29C 49/12
B29C 45/16
B29C 33/42
B29C 49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1射出金型を用いて有底筒状の樹脂製の中間成形体を射出成形する第1射出成形工程と、
前記第1射出金型と異なる第2射出金型を用いて前記中間成形体に樹脂材料を射出成形し、
胴部よりも底部が厚い形状であって、樹脂層の積層により前記中間成形体よりも厚い底部を有する多層プリフォームを製造する第2射出成形工程と、
射出成形時の保有熱を有する状態で前記多層プリフォームをブロー成形し、樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を含み
、
前記ブロー成形工程では、前記多層プリフォームの前記底部の少なくとも一面を金型で押圧し、前記金型に対応する立体模様を前記樹脂製容器の厚肉底部に転写する
とともに前記金型に設けられた立体模様の突出部で前記厚肉底部の壁面内の冷却を促進する
樹脂製容器の製造方法。
【請求項2】
前記金型は、延伸ロッドの先端に取り付けられ、
前記立体模様は、前記厚肉底部の容器内面側に転写される
請求項1に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項3】
前記金型の外径は、前記多層プリフォームの内径の2/3以上である
請求項2に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項4】
前記金型は、前記多層プリフォームの底面外周に臨む底型であって、
前記立体模様は、前記厚肉底部の容器外面側に転写される
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂製容器の底部の厚さは10mm以上である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の樹脂製容器の製造方法。
【請求項6】
第1射出金型を用いて有底筒状の樹脂製の中間成形体を射出成形する第1射出成形部と、
前記第1射出金型と異なる第2射出金型を用いて前記中間成形体に樹脂材料を射出成形し、
胴部よりも底部が厚い形状であって、樹脂層の積層により前記中間成形体よりも厚い底部を有する多層プリフォームを製造する第2射出成形部と、
射出成形時の保有熱を有する状態で前記多層プリフォームをブロー成形し、樹脂製容器を製造するブロー成形部と、を備え
、
前記ブロー成形部は、前記多層プリフォームの前記底部の少なくとも一面を金型で押圧し、前記金型に対応する立体模様を前記樹脂製容器の厚肉底部に転写する
とともに前記金型に設けられた立体模様の突出部で前記厚肉底部の壁面内の冷却を促進する
樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品や乳液等を収容する容器には、消費者の購買意欲を高めるため、容器自体に美的鑑賞に堪える外観が要求される。この種の化粧品等を収容する容器には、重厚感や高級感があり、繰返し使用しても美麗な状態を保つことが可能なガラス製のびんが好んで用いられている。しかし、ガラス製のびんは重くて割れやすく、輸送や製造にかかるコストも高い。そのため、化粧品等を収容する容器においてもガラス製のびんを樹脂製容器に代替することが検討されている。
【0003】
ここで、樹脂製容器の製造方法の一つとして、ホットパリソン式のブロー成形方法が従来から知られている。ホットパリソン式のブロー成形方法は、プリフォームの射出成形時の保有熱を利用して樹脂製容器がブロー成形される。ホットパリソン式のブロー成形方法では、射出成形されたプリフォームは機械から離脱せずにブロー成形されるため、容器の外観に擦り傷が形成されにくく、容器形状に合わせたプリフォームの形状の設計や調整を行うことも容易である。そのため、コールドパリソン式と比較して多様かつ美的外観に優れた樹脂製容器を製造できる点で有利である。
【0004】
また、化粧品等を収容する樹脂製容器では、容器の美観の向上や内容物の回り止めなどを目的として底部内面に立体形状のパターンを形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平5-169521号公報
【文献】特許第5035676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化粧品等を収容する容器として樹脂製容器を採用する場合、高級感や重量感を強調するために、底部を厚肉にするとともに胴部を薄く均肉化させた形状に樹脂製容器を成形することが望ましい。ところが、厚肉の容器底部に立体模様を形成する場合、底部が厚肉で底部での保有熱の大きいプリフォームをブロー成形することになるため、変形のしやすい底部に所定の厚さを確保しつつ立体模様を精度よく形成することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である樹脂製容器の製造方法は、第1射出金型を用いて有底筒状の樹脂製の中間成形体を射出成形する第1射出成形工程と、第1射出金型と異なる第2射出金型を用いて中間成形体に樹脂材料を射出成形し、胴部よりも底部が厚い形状であって、樹脂層の積層により中間成形体よりも厚い底部を有する多層プリフォームを製造する第2射出成形工程と、射出成形時の保有熱を有する状態で多層プリフォームをブロー成形し、樹脂製容器を製造するブロー成形工程と、を含む。ブロー成形工程では、多層プリフォームの底部の少なくとも一面を金型で押圧し、金型に対応する立体模様を樹脂製容器の厚肉底部に転写するとともに金型に設けられた立体模様の突出部で厚肉底部の壁面内の冷却を促進する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、樹脂製容器の厚肉底部に立体模様を精度よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】(a)は第1実施形態の容器の正面図であり、(b)は
図2(a)の容器の縦断面図である。
【
図3】第1実施形態のプリフォームの縦断面図である。
【
図4】第1実施形態のブロー成形装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】第1実施形態のプリフォームの製造工程例を示す図である。
【
図6】第1実施形態のブロー成形工程を示す図である。
【
図7】容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図9】(a)は第2実施形態の容器の正面図であり、(b)は
図9(a)の容器の縦断面図である。
【
図10】第2実施形態のブロー成形工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0011】
<第1実施形態>
(樹脂製容器の構成例)
まず、
図1、
図2を参照して、第1実施形態に係る樹脂製容器(以下、単に容器とも称する)10の構成例を説明する。
図1(a)、(b)は第1実施形態の容器10の斜視図である。
図2(a)は、第1実施形態の容器10の正面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の容器10の縦断面図である。
【0012】
図1、
図2に示す容器10は、全体形状が短円筒形状であって、上面側に開口を有する。容器10は、例えば、PET等の樹脂材料で形成され、化粧水や乳液等が収容される。容器10は、上端に口部11を有する首部12と、首部12から連続する短筒状の胴部13と、胴部13から連続する底部14とを有している。
【0013】
図2(b)に示すように、容器10の底部14の肉厚t2は、胴部13の肉厚t1よりも厚く形成されている。すなわち、胴部13の肉厚t1は底部14に対してかなり薄く形成されており、また胴部13は均肉化されている。特に限定するものではないが、容器10の底部14の肉厚t2は6mm以上(6mm~15mm)、好ましくは、例えば10mm以上(10mmから15mm)に設定される。
【0014】
容器10を上記の肉厚分布を有する形状とすることで高級感や重量感が強調され、容器10を消費者の持つ化粧品容器のイメージに近づけることができる。すなわち、容器10の美観を高めることができるため、容器10を見栄えが重要な化粧品容器等として使用することができる。
【0015】
また、
図2(b)に示すように、容器10の胴部13および底部14は、容器内面に臨む第1層15と容器外面に臨む第2層16とが積層された構造を有している。この構造は、後述するプリフォーム20をブロー成形することで形成される。
【0016】
また、第1実施形態では、
図1(b)、
図2(b)に示すように、容器10の底部14の内面側には、立体模様17が付されている。立体模様17は、底部14の容器内表面から底部14の内側に向けて下に凹となるくぼみであり、例えば、ダイヤモンドシェイプ状(多面体群状)や花冠状等に形成されている。容器10の底部14に立体模様17を形成することで、容器10の美観をさらに向上させて商品への購買意欲を一層高めることができる。
【0017】
また、
図1、
図2に示すダイヤモンドシェイプ状や花冠状等の立体模様17は、容器10(さらには容器10の内容物)が透光性を有する場合、立体模様17の部位で入射光の散乱を生じさせる演出により容器10の高級感を高める機能も担う。なお、立体模様17の形状は、
図1、
図2の例に限定されず、適宜変更することが可能である。
【0018】
(プリフォームの構成例)
図3は、第1実施形態の容器10の製造に適用されるプリフォーム(多層プリフォーム、二層プリフォーム)20の縦断面図である。
プリフォーム20の全体形状は、一端側の口部21で開口され、他端側が閉塞された有底円筒形状である。プリフォーム20は、円筒状に形成された胴部23と、胴部23の他端側を閉塞する底部24と、胴部23の一端側に形成されて口部21を有する首部22とを備える。なお、
図3のプリフォーム20は、短円筒形状の容器10に対応するように、胴部23の軸方向長さが短尺に設定されている。
【0019】
プリフォーム20は、内周側に位置する第1層15と、外周側に位置する第2層16とが積層された構造を有している。首部22は第1層15の材料で構成されるが、胴部23および底部24においては、第1層15の外周に第2層16が積層されて構成されている。
【0020】
図3のプリフォーム20は、以下のようにして形成される。まず、首部22、胴部23および底部24を有する中間成形体20Aを第1層15の材料で射出成形する。その後、中間成形体20Aの胴部23および底部24の外周に第2層16の材料をさらに射出成形することで、プリフォーム20が形成される。
【0021】
ここで、第1層15および第2層16の材料の組成は、同じでも異なっていてもよい。例えば、第1層15と第2層16で同じ樹脂材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。また、例えば、第1層15、第2層16の各材料で、着色材の分量(色の濃淡)や着色材の種類(色の種類)などを変化させてもよい。なお、第1層15および第2層16の少なくとも一方(好ましくは第1層15と第2層16の両方)は、光を透過させる性質(透光性または透明性)を有していてもよい。
【0022】
図3の例では、厚底の容器10を賦形するために、底部24の肉厚t12が胴部23の肉厚t11の2倍以上であるプリフォーム20が適用される。また、プリフォーム20の寸法や仕様、例えば、第1層15および第2層16の厚さは、製造する容器10の形状に応じて適宜変更できる。なお、プリフォーム20全体の軸方向長さ(首部22の上端から底部24の第2層16の下端までの長さ)は、容器10より長く設定されるのが望ましい。また、底部24から下方に延びるゲート部(第2層16の材料の導入痕)は、ブロー成形前に削除してもよい。
【0023】
(容器の製造装置の説明)
図4は、第1実施形態のブロー成形装置30の構成を模式的に示す図である。第1実施形態のブロー成形装置30は、容器の製造装置の一例であって、プリフォーム20を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用して容器をブロー成形するホットパリソン方式(1ステージ方式とも称する)を採用する。
【0024】
ブロー成形装置30は、第1射出成形部31と、第1温度調整部32と、第2射出成形部33と、第2温度調整部34と、ブロー成形部35と、取り出し部36と、搬送機構37とを備える。第1射出成形部31、第1温度調整部32、第2射出成形部33、第2温度調整部34、ブロー成形部35および取り出し部36は、搬送機構37を中心として所定角度(例えば60度)ずつ回転した位置に配置されている。なお、ブロー成形装置30は、第1温度調整部32を省く構成としてもよい。
【0025】
(搬送機構37)
搬送機構37は、
図4の紙面垂直方向の軸を中心に回転するように移動する移送板37aを備える。移送板37aには、プリフォーム20の首部22(または容器10の首部12)を保持するネック型37b(
図1では不図示)が、所定角度ごとにそれぞれ1以上配置されている。搬送機構37は、移送板37aを60度分ずつ移動させることで、ネック型37bで首部22が保持されたプリフォーム20(または容器10)を、第1射出成形部31、第1温度調整部32、第2射出成形部33、第2温度調整部34、ブロー成形部35、取り出し部36の順に搬送する。ブロー成形装置30から第1温度調整部32が省かれる場合、搬送機構37は、移送板37aを72度分ずつ移動させることで、プリフォーム20(または容器10)を、第1射出成形部31、第2射出成形部33、第2温度調整部34、ブロー成形部35、取り出し部36の順に搬送する。
なお、搬送機構37は、昇降機構(縦方向の型開閉機構)やネック型37bの型開き機構をさらに備え、移送板37aを昇降させる動作や、射出成形部31等における型閉じや型開き(離型)に係る動作も行う。
【0026】
(第1射出成形部31)
第1射出成形部31は、射出キャビティ型40、射出コア型41、ホットランナー型42を備え、プリフォーム20の中間成形体20Aを製造する。
図4に示すように、第1射出成形部31には、第1層15を形成する樹脂材料(第1樹脂材料)をホットランナー型42に供給する第1射出装置38が接続されている。
【0027】
図5(a)は、第1射出成形部31での射出成形工程を示している。第1射出成形部31では、上記の射出キャビティ型40、射出コア型41と、搬送機構37のネック型37bとを型閉じして第1層15の型空間が形成される。そして、上記の型空間内にホットランナー型42を介して第1射出装置38から第1の樹脂材料を流し込むことで、第1射出成形部31において第1層15に相当する中間成形体(単層プリフォーム)20Aが製造される。
【0028】
ここで、第1樹脂材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、容器10の仕様に応じて適宜選択できる。具体的な材料の種類としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PCTA(ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、Tritan(トライタン(登録商標):イーストマンケミカル社製のコポリエステル)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PC(ポリカーボネート)、PES(ポリエーテルスルホン)、PPSU(ポリフェニルスルホン)、PS(ポリスチレン)、COP/COC(環状オレフィン系ポリマー)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル:アクリル)、PLA(ポリ乳酸)などが挙げられる。また、第1樹脂材料には、着色材などの添加材が添加されていてもよい。特に限定するものではないが、透光性を備えることと材料コストの低さを考慮すると、第1樹脂材料はPETを適用することが好ましい。
【0029】
なお、第1射出成形部31の型開きをしたときにも、搬送機構37のネック型37bは開放されずにそのまま中間成形体20Aを保持して搬送する。第1射出成形部31で同時に成形される中間成形体20Aの数(すなわち、ブロー成形装置30で同時に成形できる容器10の数)は、適宜設定できる。
【0030】
(第1温度調整部32)
第1温度調整部32は、図示しない温度調整用金型(中間成形体20Aを外部から温度調整する加熱ポットまたは温度調整ポット(温調ポット)、および、プリフォーム20を内側から温度調整する加熱ロッド、温度調整ロッド(温調ロッド)またはエア導入ロッド)を備える。第1温度調整部32は、射出成形後の高温状態にある中間成形体20Aを、所定温度に保たれた温度調整用金型に収容することで冷却(または加熱)する。また、第1温度調整部32は、第2射出成形部33に搬送される前に、中間成形体20Aの温度分布を所定の状態に調整する機能も担う。
【0031】
(第2射出成形部33)
第2射出成形部33は、射出キャビティ型50、射出コア型51、ホットランナー型52を備え、第1層15の外周部に第2層16を射出成形する。
図4に示すように、第2射出成形部33には、第2層16を形成する樹脂材料(第2樹脂材料)をホットランナー型52に供給する第2射出装置39が接続されている。
【0032】
図5(b)は、第2射出成形部33での射出成形工程を示している。
第2射出成形部33の射出キャビティ型50は、第1射出成形部31で射出成形された中間成形体20Aを収容する。第2射出成形部33を型閉じした状態では、第1層15である中間成形体20Aの外周側の胴部から底部にかけて、射出キャビティ型50の内面との間に型空間が形成される。上記の型空間内にホットランナー型52を介して第2射出装置39から第2樹脂材料を充填することで、第1層15である中間成形体20Aの外周に第2層16が成形される。これにより、第1層15の外周側に第2層16が積層され、
図3のプリフォーム(多層プリフォーム、二層プリフォーム)20が製造される。
【0033】
第2樹脂材料は、熱可塑性の合成樹脂であり、具体的な材料の種類は第1樹脂材料の説明と同様である。第2樹脂材料の組成は、第1樹脂材料と同じでも異なっていてもよい。例えば、第1層15と第2層16で同じ樹脂材料を用いてもよく、異なる材料を用いてもよい。また、例えば、第1層15、第2層16の各材料で、着色材の分量や着色材の種類などを変化させてもよい。特に限定するものではないが、透光性を備えることと材料コストの低さを考慮すると、第2樹脂材料もPETを適用することが好ましい。
【0034】
(第2温度調整部34)
第2温度調整部34は、図示しない温度調整用金型(プリフォーム20を外部から温度調整する加熱ポットまたは温度調整ポット(温調ポット)、および、プリフォーム20を内側から温度調整する加熱ロッド、温度調整ロッド(温調ロッド)またはエア導入ロッド)を備える。第2温度調整部34は、温度調整用金型により射出成形されたプリフォーム20の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム20の温度をブロー成形に適した温度(例えば約90℃~105℃)かつ賦形される容器形状に適した温度分布に調整する。また、第2温度調整部34は、射出成形後の高温状態のプリフォーム20を冷却する機能も担う。
【0035】
(ブロー成形部35)
ブロー成形部35は、第2温度調整部34で温度調整されたプリフォーム20に対してブロー成形を行い、容器10を製造する。
図6は、ブロー成形部35でのブロー成形工程を示している。ブロー成形部35は、ブローキャビティ型60と、底型61と、延伸ロッド62およびエア導入部材(ブローコア)63を備える。
【0036】
ブローキャビティ型60は、底面を除く容器10の形状を規定する一対の割型である。ブローキャビティ型60は、
図6の上下方向に沿ったパーティング面(不図示)で分割され、
図6の左右方向に開閉可能に構成される。底型61は、ブローキャビティ型60の下側に配置され、容器10の底面の形状を規定する型材である。ブローキャビティ型60と底型61が型閉じされることで、容器10の形状を規定する型空間が形成される。
【0037】
延伸ロッド62およびエア導入部材(ブローコア)63は、プリフォーム20を保持するネック型37bに対して軸方向に進退可能に構成されている。延伸ロッド62は、プリフォーム20の底部24を内側から押圧し、必要に応じてプリフォーム20の縦軸延伸を行う。
【0038】
延伸ロッド62の先端には、立体模様17に対応する形状の凸部を有し、容器10の底部14に立体模様17の形状を転写する押圧片64が取り付けられている。押圧片64をプリフォーム20に挿入するために、押圧片64の外径はプリフォーム20の口部21(または胴部23もしくは底部24)の内径よりも小さく設定される。なお、プリフォーム20の内面に立体模様17を広範囲に形成するともに、押圧片64の押圧による応力集中を緩和する観点からは、押圧片64の外径はプリフォーム20の口部21(または胴部23もしくは底部24)の内径の2/3以上かつ4/5以下であることが好ましい。
【0039】
また、ブロー成形後に、延伸ロッド62を上昇させて後退させたときにエア導入部材(ブローコア)63と押圧片64の干渉を避けるために、押圧片64の直径は、エア導入部材(ブローコア)63の内径よりも小さく設定されることが好ましい。
【0040】
エア導入部材63は、ネック型37bに挿入された状態において、プリフォーム20の首部22の内周と密着し、プリフォーム20(または容器10)との気密を保つ。また、エア導入部材63は、ブロー成形時に、コンプレッサ(不図示)から供給されるブローエアをプリフォーム20に導入する。
【0041】
ブロー成形部35では、ブローキャビティ型60および底型61によって形成される型空間にプリフォーム20が収容される。そして、ブロー成形部35では、延伸ロッド62でプリフォーム20を延伸しながら、エア導入部材63からのブローエアがプリフォーム20内に導入される。これにより、ブロー成形部35は、プリフォーム20を型空間の形状に賦形して容器10を製造できる。なお、延伸ロッド62の押圧片64により、容器10の底部14の内面側には立体模様17の形状が転写される。
【0042】
なお、容器10の長さがプリフォーム20の長さとほぼ同じかプリフォーム20よりも短い場合がある(プリフォームの容器に対する縦軸延伸倍率が0.8~1.2の場合(特に0.9~1.1の場合))。上記の場合、押圧片64の下降動作と底型61の上昇動作はどちらが早くてもよい。すなわち、押圧片64と底型61のどちらかがプリフォーム20に対して先に接触してもよい。プリフォーム20の底部24が底型61と押圧片64で挟まれて押圧されることで、容器10の底部内面(または後述するように底部外面)に立体模様が転写される。
【0043】
(取り出し部36)
取り出し部36は、ブロー成形部35で製造された容器10の首部12をネック型37bから開放し、容器10をブロー成形装置30の外部へ取り出すように構成されている。
【0044】
(容器の製造方法の説明)
次に、本実施形態のブロー成形装置30による容器の製造方法について説明する。
図7は、容器の製造方法の工程を示すフローチャートである。
【0045】
(ステップS101:第1射出成形工程)
まず、第1射出成形部31は、射出キャビティ型40、射出コア型41および搬送機構37のネック型37bで形成された中間成形体20Aの型空間に第1射出装置38から樹脂材料を射出する。これにより、
図5(a)に示すように、プリフォーム20の第1層15に相当する中間成形体20Aが製造される。
【0046】
第1層15の射出成形が完了すると、第1射出成形部31が型開きされて中間成形体20Aが射出キャビティ型40、射出コア型41から離型される。次に、搬送機構37の移送板37aが所定角度分回転するように移動する。
【0047】
これにより、ネック型37bに保持された中間成形体20Aは、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第1温度調整部32に搬送される。このとき、中間成形体20Aは、第1射出成形部31から第1温度調整部32に搬送される間、空気に触れる。これにより、中間成形体20Aは、外表面から若干冷却されるとともに、スキン層(固化状態にある表面層)とコア層(軟化状態または溶融状態にある内部層)の間で熱交換(熱伝導)による均温化が進む。
【0048】
(ステップS102:第1温度調整工程)
次に、第1温度調整部32において、中間成形体20Aが温度調整用金型に収容され、第1層15の冷却と温度分布の調整(均温化や偏温除去)が行われる。第1温度調整工程により、中間成形体20Aは、スキン層とコア層の間で熱交換(熱伝導)による均温化が進む。なお、第1温度調整工程は省略されてもよい。
【0049】
第1温度調整工程(または第1射出成形工程)の後、搬送機構37の移送板37aが所定角度分回転するように移動し、ネック型37bに保持された温度調整後の中間成形体20Aが第2射出成形部33に搬送される。中間成形体20Aは、第1温度調整部32から第2射出成形部33に搬送される間にも空気に触れるので、外表面から若干冷却されるとともに、スキン層とコア層の間で熱交換(熱伝導)による均温化が進む。
【0050】
(ステップS103:第2射出成形工程)
続いて、第2射出成形部33において、射出キャビティ型50の内部に中間成形体20Aが収容された後、中間成形体20Aの外周と射出キャビティ型50の間に第2射出装置39から樹脂材料が射出される。これにより、
図5(b)に示すように中間成形体20Aの外周部に第2層16が形成され、プリフォーム20が製造される。
【0051】
第2層16の射出成形が完了すると、第2射出成形部33が型開きされてプリフォーム20が射出キャビティ型50、射出コア型51から離型される。次に、搬送機構37の移送板37aが所定角度分回転するように移動する。これにより、ネック型37bに保持されたプリフォーム20は、射出成形時の保有熱を含んだ状態で第2温度調整部34に搬送される。
【0052】
(ステップS104:第2温度調整工程)
続いて、第2温度調整部34において、プリフォーム20が温度調整用金型に収容され、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
【0053】
第2温度調整工程の後、搬送機構37の移送板37aが所定角度分回転するように移動し、ネック型37bに保持された温度調整後のプリフォーム20がブロー成形部35に搬送される。
【0054】
(ステップS105:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部35において、容器10のブロー成形が行われる。
まず、ブローキャビティ型60を型閉じしてプリフォーム20を型空間に収容し、エア導入部材63を下降させることで、プリフォーム20の首部22にエア導入部材63が当接される。そして、延伸ロッド62を降下させてプリフォーム20の底部24を内面から抑えて、必要に応じて縦軸延伸を行う(
図6(a))。
【0055】
そして、エア導入部材63からブローエアを供給することで、プリフォーム20が横軸延伸される(
図6(b))。これにより、プリフォーム20は、ブローキャビティ型60の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器10にブロー成形される。なお、プリフォーム20が容器10より長い場合、底型61を、ブローキャビティ型60の型閉じ前はプリフォーム20の底部24と接触しない下方の位置で待機させ、型閉じ後に成形位置まで素早く上昇させるようにしてもよい。
【0056】
また、ブロー成形の際には、延伸ロッド62の押圧片64がプリフォーム20の底部24と接触することで、容器10の底部14の内面側に立体模様17の形状が転写される。
【0057】
なお、上述のように、底型61をプリフォーム20に接触させて、その後に延伸ロッド62を降下させて押圧片64をプリフォーム20に押し当てるようにしてもよい。
【0058】
(ステップS106:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブローキャビティ型60および底型61が型開きされる。これにより、ブロー成形部35から容器10が移動可能となる。
続いて、搬送機構37の移送板37aが所定角度回転するように移動し、容器10が取り出し部36に搬送される。取り出し部36において、容器10の首部12がネック型37bから開放され、容器10がブロー成形装置30の外部へ取り出される。
【0059】
以上で、容器の製造方法における1つのサイクルが終了する。その後、搬送機構37の移送板37aが所定角度回転するように移動させることで、上記のS101からS105の各工程が繰り返される。なお、ブロー成形装置30の運転時には、1工程ずつの時間差を有する6組分(第1温度調整工程が省略される場合は5組分)の容器の製造が並列に実行される。
【0060】
また、ブロー成形装置30の構造上、第1射出成形工程、第2射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の各時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0061】
以下、第1実施形態の作用効果を述べる。
第1実施形態では、化粧品容器等に適した厚肉の容器10をブロー成形するために、底部24が厚肉であるプリフォーム20を2回の射出成形工程で製造する。そして、ブロー成形工程では、延伸ロッド62の押圧片64により容器10の底部14の内面に立体模様17を形成する。
【0062】
一般的に、プリフォームは肉厚に比例して保有熱が高くなるので、厚肉部分ほどプリフォームが変形しやすくなる。そのため、1回の射出成形で肉厚部分があるプリフォームを成形して厚肉部分に立体模様を転写する場合、厚肉部分がブロー成形で引き延ばされる際に、例えば、肉厚部分が所定以上の厚さをキープできなかったり肉厚部分の内面が凹凸状になったりし易い。さらに、肉厚部分は冷却不足に陥り易いため、立体模様(または立体模様が形成される肉厚部)にヒケや気泡、白化(結晶化)が生じる等の成形不良が生じうる。
【0063】
例えば、材料がPETの場合、白化等の不良が抑制できるプリフォームの最大厚さは9mm程度が限界である。よって、そのプリフォームから容器が成形される場合にはプリフォームが多少延伸されるため(少なくとも横軸方向には延伸される)、容器の底部の厚さは最大でも上記の最大厚さ以下の数値になってしまう(例えば5mm程度)。
【0064】
これに対し、第1実施形態では、上記のように2回に分けてプリフォーム20を射出成形し、搬送時に空気に触れるとともに温度調整された中間成形体20Aに第2層16を積層する。これにより、第1実施形態のプリフォーム20は、1回の射出成形工程で製造されたプリフォームと比べると、底部24が厚肉であるにも拘わらず内部の保有熱を低下させることができる。そのため、ブロー成形工程において厚肉の底部24の変形量を調整しやすくなり、容器10の底部14に立体模様17を精度よく形成できる。
【0065】
さらに、押圧片64の立体模様の長さ分、容器の肉厚の底部が一部(具体的には底部の中央領域)凹んで薄く形成されている。最も保有熱がありブロー成形時に最も冷却しにくい肉厚底部の中央領域の内部(コア層)に対して底型表面との距離が縮まるため、容器の底部の冷却効率を高めることができ、容器の底部の白化を抑制し易くできる。
【0066】
また、第1実施形態では、厚肉のプリフォームを1回の射出成形工程で成形するときと比べて、第1射出成形工程、第2射出成形工程で射出するプリフォームは薄くなり、射出成形での難度も低下する。さらに、各射出成形工程での冷却時間などのパラメータを別々に調整することもできる。そのため、第1実施形態では、容器10の仕様に適した厚肉のプリフォーム20を容易に成形できるので、容器10の品質を向上させることができる。
【0067】
例えば、第1射出成形工程と第2射出成形工程で形成される第1層と第2層の厚さをそれぞれ8mmにしても、白化を抑えた状態でプリフォームの底部厚さを16mmに形成でき、容器の底部を10mm程度の厚さに容易に形成することができる(ただし、立体模様が形成される部分を除く)。
【0068】
さらに、第1実施形態では、厚肉のプリフォームを1回の射出成形工程で成形するときの射出・冷却時間と比べて、第1射出成形工程および第2射出成形工程のそれぞれの射出・冷却時間はいずれも短くなる。これにより、律速段階となるプリフォームの射出・冷却時間が短縮されるので、化粧品容器等に適した厚肉の容器10を製造するときの成形サイクルの短縮も図ることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、プリフォーム20を2回の射出成形工程で製造するので、プリフォーム20の第1層15と第2層16の着色を異ならせることもできる。かかる容器10に立体模様17を付与することで容器10の意匠性を一層高めることができる。
【0070】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。
図8、
図9は、第2実施形態の容器10Aを示す図である。なお、以下の説明では、第1実施形態と同じ要素に関しては同じ符号を用い、重複説明はいずれも省略する。
【0071】
図8、
図9に示すように、第2実施形態では、容器10Aの底部14の外面側に、立体形状のパターンの一例である立体模様17Aが付されている。立体模様17Aは、底部14の容器外表面から底部14の内側に向けて上に凹となるくぼみであり、例えば、山の外観を模した形状に形成されている。なお、容器10Aの他の構成は第1実施形態と同様である。
【0072】
第2実施形態の容器10Aの製造方法は、ブロー成形工程を除き第1実施形態と同様である。
図10は、第2実施形態におけるブロー成形部35でのブロー成形工程を示している。
【0073】
第2実施形態では、底型61のプリフォーム20に臨む上面に、立体模様17Aに対応する形状の凸部65が形成されている。なお、
図10に示す延伸ロッド62は、先端が平坦な先端ピース64aが先端部に取り付けられている。当該先端ピース64aは上記の押圧片64とは異なり立体模様の形状を転写するものではない。ただし、底部14の内面側にも立体模様を付加したい場合、立体模様の形状を転写する押圧片64を延伸ロッド62に取り付けてもよい。
【0074】
第2実施形態でのブロー成形部35では、プリフォーム20の首部22にエア導入部材63が当接された後、延伸ロッド62が降下するとともに底型61が上昇する(
図10(a))。これにより、プリフォーム20の底部24は、上面側に凸部65を有する底型61に押し当てられる。
【0075】
エア導入部材63からのブローエアがプリフォーム20内に導入されると、プリフォーム20はブローキャビティ型60の型空間に密着するように膨出して賦形され、容器10Aにブロー成形される。なお、底型61の凸部65により、容器10Aの底部14の外面側には立体模様17Aの形状が転写される。
上記の第2実施形態においても、第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0077】
上記実施形態では、容器における厚肉の底部の内面側または外面側のいずれかに立体模様を形成する例を説明した。しかし、本発明では、容器における厚肉底部の内面側および外面側の両方に立体模様を形成してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、第2射出成形工程において第1層の外側に第2層を積層してプリフォームを製造する例を説明した。しかし、本発明では、第2射出成形工程において第1層の内側に第2層を積層してプリフォームを製造してもよい。この場合、第1射出成形工程では、ピン等の押圧によって中間成形体の底部中央に薄膜部を形成する。そして、第2射出成形工程では、樹脂の射出で薄膜部を破断させて中間成形体の内側に樹脂を導入すればよい。
【0079】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
10,10A…容器、12…首部、13…胴部、14…底部、15…第1層、16…第2層、17,17A…立体模様、20…プリフォーム、20A…中間成形体、22…首部、23…胴部、24…底部、30…ブロー成形装置、31…第1射出成形部、32…第1温度調整部、33…第2射出成形部、34…第2温度調整部、35…ブロー成形部、38…第1射出装置、39…第2射出装置、61…底型、62…延伸ロッド、64…押圧片、65…凸部