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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 25/08 20060101AFI20241004BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20241004BHJP
   B63J 3/04 20060101ALI20241004BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20241004BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20241004BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B63B25/08 G
B63H21/38 B
B63J3/04
F02B43/10 Z
F02M21/02 N
F02M37/00 341Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023511177
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2022014492
(87)【国際公開番号】W WO2022210377
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2021060215
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】森本 晋介
(72)【発明者】
【氏名】山田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】雲石 隆司
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2111525(KR,B1)
【文献】特開2019-014335(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112696289(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/08 - 25/16
B63H 21/38
B63J 3/04
F02B 43/10 - 45/10
F02M 21/00 - 21/12
F02M 37/00 - 37/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンクと、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ラインと、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、前記アンモニア充填ラインを介して前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインへ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンクと、
前記アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプと、
前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りラインと、
回収対象の前記燃料アンモニアを水に吸収させて回収可能なアンモニア回収部と、
前記高圧貯蔵タンクの気相に連通され前記高圧貯蔵タンク内の気体を前記アンモニア回収部に送り込む気体排出ラインと、
を備える船舶。
【請求項2】
前記アンモニア燃料戻りラインは、前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の前記燃料アンモニアを、前記アンモニア貯めタンクに戻す
請求項に記載の船舶。
【請求項3】
前記燃料供給ラインと前記アンモニア回収部とを接続する第一パージガス排出ラインと、
前記アンモニア燃料戻りラインと前記アンモニア回収部とを接続する第二パージガス排出ラインと、を備える
請求項に記載の船舶。
【請求項4】
前記アンモニア充填ラインは、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに導入可能な第一充填ラインと、前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに導入可能な第二充填ラインと、のうち少なくとも前記第一充填ラインを備える
請求項1に記載の船舶。
【請求項5】
少なくとも前記第一充填ラインの前記燃料アンモニアを昇圧可能な昇圧ポンプを備える
請求項に記載の船舶。
【請求項6】
前記第二充填ラインは、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを前記アンモニア貯めタンクに導入する
請求項4又は5に記載の船舶。
【請求項7】
前記高圧貯蔵タンクは、
少なくとも前記燃料供給ラインよりも下方に設けられている
請求項4から6の何れか一項に記載の船舶。
【請求項8】
船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンクと、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ラインと、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、前記アンモニア充填ラインを介して前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインへ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンクと、
前記アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプと、
前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りラインと、
前記燃料アンモニアを回収可能なアンモニア回収部と、
前記高圧貯蔵タンクと前記アンモニア回収部とを接続する気体排出ラインと、
前記燃料供給ラインと前記アンモニア回収部とを接続する第一パージガス排出ラインと、
前記アンモニア燃料戻りラインと前記アンモニア回収部とを接続する第二パージガス排出ラインと、
を備える船舶。
【請求項9】
船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンクと、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ラインと、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記燃料アンモニアを前記燃焼装置へ向けて圧送するアンモニア高圧ポンプと、を備え、
前記アンモニア充填ラインは、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに導入可能な第一充填ラインと、前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに導入可能な第二充填ラインと、のうち少なくとも前記第一充填ラインを備え、
少なくとも前記第一充填ラインの前記燃料アンモニアを昇圧可能な昇圧ポンプを更に備える船舶。
【請求項10】
船体と、
前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、
前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、
前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、
前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンクと、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ラインと、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記燃料アンモニアを前記燃焼装置へ向けて圧送するアンモニア高圧ポンプと、
前記燃料アンモニアを回収可能なアンモニア回収部と、
前記高圧貯蔵タンクと前記アンモニア回収部とを接続する気体排出ラインと、
前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りラインと、
前記アンモニア燃料戻りラインと前記アンモニア回収部とを接続する第二パージガス排出ラインと、
を備え、
前記アンモニア充填ラインは、
前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに導入可能な第一充填ラインと、前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに導入可能な第二充填ラインと、のうち少なくとも前記第一充填ラインを備える船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、船舶に関する。
本願は、2021年3月31日に日本に出願された特願2021-060215号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、高温水素リッチアンモニアと燃焼用空気とを燃焼させて機械的動力を発生させる動力装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許第5315493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような装置では、例えば、点検で運転を停止するときなどに、内燃機関の内部や燃料流路内に残留したアンモニアを、不活性ガスを用いてパージする必要がある。パージして排出されたアンモニアは、例えば、アンモニア回収装置によりアンモニア水として回収された後、中和や希釈等を行い船外に排出される。そのため、パージされた燃料が無駄になってしまうという課題が有る。
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、パージされたアンモニアを有効利用して燃料消費を抑えることが可能な船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る船舶は、船体と、前記船体に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンクと、前記アンモニアタンクに接続された燃料供給ラインと、前記燃料供給ラインを介して前記アンモニアタンクから前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置と、前記燃料供給ラインを介して少なくとも前記燃焼装置に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、前記燃焼装置に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンクと、前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ラインに導入可能なアンモニア充填ラインと、前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニアタンクからの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、前記アンモニア充填ラインを介して前記高圧貯蔵タンクに貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ラインへ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンクと、前記アンモニア貯めタンクよりも前記燃焼装置に近い側の前記燃料供給ラインに設けられて、前記アンモニア貯めタンクに貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプと、前記燃焼装置で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプよりも前記アンモニアタンクに近い側の前記燃料供給ラインに戻すアンモニア燃料戻りラインと、回収対象の前記燃料アンモニアを水に吸収させて回収可能なアンモニア回収部と、前記高圧貯蔵タンクの気相に連通され前記高圧貯蔵タンク内の気体を前記アンモニア回収部に送り込む気体排出ラインと、を備える。
【発明の効果】
【0006】
上記態様の船舶によれば、パージされたアンモニアを有効利用して燃料消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第一実施形態に係る船舶の側面図である。
図2】本開示の第一実施形態に係る配管系統を示す図であり、燃焼装置の駆動時の状態を示している。
図3】本開示の第一実施形態に係る配管系統を示す図であり、パージ時の状態を示している。
図4】本開示の第一実施形態に係る配管系統を示す図であり、アンモニア充填前の状態を示している。
図5】本開示の第一実施形態に係る配管系統を示す図であり、アンモニア充填時の状態を示している。
図6】本開示の第一実施形態の変形例に係る配管系統を示す図であり、残留した僅かな燃料アンモニアを含む不活性ガスをパージする際の状態を示している。
図7】本開示の第二実施形態に係る配管系統を示す図である。
図8】本開示の第二実施形態の変形例に係る配管系統を示す図である。
図9】本開示の第三実施形態に係る配管系統を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〈第一実施形態〉
以下、本開示の第一実施形態に係る船舶について、図面を参照して説明する。図1は、本開示の第一実施形態に係る船舶の側面図である。
(船舶の構成)
図1に示すように、この第一実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニアタンク10と、配管系統20と、ベントポスト30と、アンモニア回収部60と、回収アンモニア水タンク70と、を備えている。船舶1の船種は、特定のものに限られない。船舶1の船種は、例えば液化ガス運搬船、フェリー、RORO船、自動車運搬船、客船等を例示できる。
【0009】
船体2は、その外殻をなす、一対の舷側5A,5Bと、船底6と、を有している。舷側5A,5Bは、左右舷側をそれぞれ形成する一対の舷側外板を備える。船底6は、これら舷側5A,5Bを接続する船底外板を備える。これら一対の舷側5A,5B及び船底6により、船体2の外殻は、船首尾方向FAに直交する断面において、U字状を成している。
【0010】
船体2は、最も上層に配置される全通甲板である上甲板7を更に備えている。上部構造4は、この上甲板7上に形成されている。上部構造4内には、居住区等が設けられている。本第一実施形態の船舶1では、例えば、上部構造4よりも船首尾方向FAの船首3a側に、貨物を搭載するカーゴスペース(図示無し)が設けられている。
【0011】
燃焼装置8は、燃料を燃焼させることで熱エネルギーを発生させる装置であり、上記の船体2内に設けられている。本第一実施形態の燃焼装置8は、船舶1を推進させるための主機に用いられる内燃機関である。そして、この燃焼装置8は、燃料としてアンモニア(以下、燃料アンモニアと称する)を用いている。なお、燃焼装置8は、船舶1を推進させるための主機に用いられる内燃機関に限られず、例えば、船内に電気を供給する発電機等に用いられる内燃機関、作動流体としての蒸気を発生させるボイラー等を例示できる。
【0012】
アンモニアタンク10は、燃料アンモニアとして液化アンモニアを貯留している。本第一実施形態で例示するアンモニアタンク10は、上部構造4よりも船尾3b側の上甲板7上に設置されているが、アンモニアタンク10の配置は、上部構造4よりも船尾3b側の上甲板7上に限られない。
【0013】
ベントポスト30は、例えば、カーゴタンクから排出されたベントガス等のガスを、上甲板7よりも上方へ導いて大気中へ放出する。本第一実施形態のベントポスト30は、上甲板7上に設けられ、上甲板7から上方に向かって延びている。ベントポスト30は、上下方向Dvに延びる筒状をなしており、その上部が開口している。
【0014】
アンモニア回収部60は、回収対象のアンモニアを水Wに吸収させて回収アンモニア水として回収する。本第一実施形態のアンモニア回収部60は、アンモニアタンク10よりも船尾3b側の上甲板7上に配置されている。アンモニア回収部60としては、例えば、アンモニアを含む気体に対して水を噴射することでアンモニアを水に吸収させる、いわゆるスクラバーを用いることができる。このアンモニア回収部60には、船体2内に設けられた水タンク(図示せず)に貯留された水(例えば、清水)が供給される。なお、アンモニア回収部60は、アンモニアを水に吸収させて回収アンモニア水として回収できる構成であればよく、上記構成や配置に限られない。
【0015】
回収アンモニア水タンク70は、アンモニア回収部60で回収された回収アンモニア水を貯留する。本第一実施形態における回収アンモニア水タンク70は、アンモニア回収部60の設置された上甲板7よりも下方の船体2内に配置されている。
【0016】
図2は、本開示の第一実施形態に係るアンモニアの流通する配管系統20を示す図である。
図2に示すように、本第一実施形態の船舶1は、上記構成に加えて、更に、燃料供給ライン21と、アンモニア高圧ポンプ25と、アンモニア燃料戻りライン22と、不活性ガス供給装置50と、ベントライン38と、高圧貯蔵タンク26と、アンモニア充填ライン27と、を備えている。また、本第一実施形態の船舶1は、更に、アンモニア貯めタンク40を備えている。
【0017】
燃料供給ライン21は、アンモニアタンク10に接続され、アンモニアタンク10に貯留された燃料アンモニアを燃焼装置8に供給可能な流路を形成している。本第一実施形態における燃料供給ライン21は、第一供給ライン21Aと、第二供給ライン21Bとを備えている。第一供給ライン21Aは、アンモニアタンク10とアンモニア高圧ポンプ25とを接続している。第二供給ライン21Bは、アンモニア高圧ポンプ25と燃焼装置8とを接続している。
【0018】
本第一実施形態における第一供給ライン21Aの途中には、アンモニア貯めタンク40が設置されている。アンモニア貯めタンク40には、アンモニア燃料戻りライン22とアンモニア充填ライン27とが接続されている。アンモニア貯めタンク40は、アンモニアタンク10から流入する燃料アンモニアと、アンモニア燃料戻りライン22から流入する液体の燃料アンモニアと、アンモニア充填ライン27から流入する液体の燃料アンモニアとを、一時的に貯留可能に構成されている。アンモニアタンク10は、例えば、アンモニア貯めタンク40よりも上方に配置され、アンモニアタンク10の燃料アンモニアは、その自重によりアンモニア貯めタンク40へ流入可能となっている。第一供給ライン21Aには、複数の開閉弁81,82が設けられている。これら開閉弁81,82は、アンモニア貯めタンク40の入口の位置と、アンモニア高圧ポンプ25の入口の位置とに、それぞれ設けられている。
【0019】
アンモニア高圧ポンプ25は、アンモニア貯めタンク40から燃焼装置8へ供給される燃料アンモニアを加圧する。このアンモニア高圧ポンプ25により加圧された燃料アンモニアは、第二供給ライン21Bを介して燃焼装置8へ供給される。第二供給ライン21Bには、複数の開閉弁83,84が設けられている。これら複数の開閉弁83,84は、第二供給ライン21Bの両端部、すなわちアンモニア高圧ポンプ25の出口の位置と、燃焼装置8の入口の位置とに、それぞれ設けられている。なお、図2では図示を省略しているが、アンモニア高圧ポンプ25と燃焼装置8との間に、アンモニア高圧ポンプ25により加圧された燃料アンモニアを加熱するアンモニアヒーターが設けられている。
【0020】
アンモニア燃料戻りライン22は、燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアをアンモニア高圧ポンプ25よりもアンモニアタンク10側の燃料供給ライン21へ戻している。本第一実施形態におけるアンモニア燃料戻りライン22は、余剰の燃料アンモニアを第一供給ライン21Aに設けられたアンモニア貯めタンク40に戻している。アンモニア燃料戻りライン22には、複数の開閉弁85,86が設けられている。これら開閉弁85,86は、アンモニア燃料戻りライン22の両端部、すなわち燃焼装置8の出口の位置と、アンモニア貯めタンク40の入口の位置とに、それぞれ設けられている。
【0021】
不活性ガス供給装置50は、燃焼装置8の燃料としての燃料アンモニアが流通する流通経路Rの燃料アンモニアを窒素等の不活性ガスに置き換える、いわゆるパージを行う。不活性ガス供給装置50は、不活性ガス供給部51と、不活性ガス供給ライン52と、不活性ガス供給弁53と、を備えている。不活性ガスとしては、例えば、不活性ガス生成装置(不図示)により船体2の内部で生成した不活性ガスや、船体2に設けられた不活性ガスタンク(不図示)に予め貯留した不活性ガスを用いることができる。なお、不活性ガスは、燃料アンモニアに接触した際に化学反応しない気体であればよい。
【0022】
不活性ガス供給部51は、不活性ガスを不活性ガス供給ライン52へ供給する。
不活性ガス供給ライン52は、不活性ガス供給部51と、流通経路Rとを接続している。より具体的には、不活性ガス供給ライン52は、不活性ガス供給部51と、流通経路Rのパージ対象領域20pとを接続している。本第一実施形態におけるパージ対象領域20pは、開閉弁83よりも燃焼装置8側の燃料供給ライン21、開閉弁86よりも燃焼装置8側のアンモニア燃料戻りライン22、及び、燃焼装置8内に形成される流通経路Rである。本第一実施形態で例示する不活性ガス供給ライン52は、パージ対象領域20pのうち第二供給ライン21Bのパージ対象領域20pに接続されている。
【0023】
不活性ガス供給弁53は、不活性ガス供給ライン52に設けられている。不活性ガス供給弁53は、通常時に閉塞状態とされ、不活性ガス供給部51からパージ対象領域20pへの不活性ガスの供給を遮断している。ここで、通常時とは、燃焼装置8を稼働しているとき等、燃料アンモニアを燃焼装置8に供給可能にしているときである。この通常時において、開閉弁81から開閉弁86は開放状態とされ、アンモニア貯めタンク40から第二供給ライン21Bを通して燃焼装置8に燃料アンモニアが供給され、余剰の燃料アンモニアが燃焼装置8からアンモニア貯めタンク40に戻される。
【0024】
不活性ガス供給弁53は、燃焼装置8の緊急停止時や長期停止時等に、閉塞状態から開放状態にされる。言い換えれば、パージ対象領域20pに残留する燃料アンモニアをパージする際に閉塞状態から開放状態に操作される。このようなパージを行う際には、まず開閉弁83,86が閉塞状態とされ、第二供給ライン21B、アンモニア燃料戻りライン22が遮断される。これにより、アンモニア高圧ポンプ25から燃焼装置8への燃料アンモニアの供給が停止された状態になる。次いで、不活性ガス供給弁53が閉塞状態から開放状態とされると、これにより不活性ガス供給部51からパージ対象領域20pに不活性ガスが供給可能な状態になる。
【0025】
ベントライン38は、不活性ガス供給装置50によって供給された不活性ガスとともに、流通経路R内に残留していた燃料アンモニアを高圧貯蔵タンク26に導く。不活性ガスと共に燃料アンモニアがベントライン38に流出することで、パージ対象領域20p(流通経路R)内の燃料アンモニアが不活性ガスに置き換えられる。本第一実施形態においては、第一ベントライン38A、第二ベントライン38B、及び第三ベントライン38Cの三つのベントライン38が設けられている。第一ベントライン38Aは、燃料供給ライン21と高圧貯蔵タンク26とを接続している。より具体的には、第一ベントライン38Aは、燃料供給ライン21のうちの第二供給ライン21Bと高圧貯蔵タンク26とを接続している。第二ベントライン38Bは、アンモニア燃料戻りライン22と高圧貯蔵タンク26とを接続している。第三ベントライン38Cは、燃焼装置8内と高圧貯蔵タンク26とを接続している。第一ベントライン38A、第二ベントライン38B、及び第三ベントライン38Cには、それぞれ開閉弁87,88,89が設けられている。
【0026】
高圧貯蔵タンク26は、不活性ガス及び燃料アンモニアを高圧状態(例えば、20barG以上)で貯蔵可能に構成されている。この高圧貯蔵タンク26は、一般的なノックアウトドラムよりも高圧まで耐えられる高圧容器である。高圧貯蔵タンク26には、ベントライン38を介して不活性ガスとともに燃料アンモニアが導入される。この際、不活性ガス供給装置50の高圧の不活性ガスを用いて燃料アンモニアが圧送されるため、流通経路R内に残留していた燃料アンモニアは、高圧貯蔵タンク26に導入された後も、液体の状態を維持する。高圧貯蔵タンク26内では、不活性ガスを含む気相と、燃料アンモニアの液相とが存在した状態となる。この高圧貯蔵タンク26内の液相には、アンモニア充填ライン27が連通され、高圧貯蔵タンク26内の気相には、アンモニア回収部60へ気体を送り込む気体排出ライン28が連通されている。
【0027】
気体排出ライン28には、開閉弁90が設けられている。この開閉弁90は、高圧貯蔵タンク26に不活性ガスと共に燃料アンモニアが導入される際に閉塞状態とされる一方で、高圧貯蔵タンク26の内部を低圧化する際に開放状態にされる。なお、高圧貯蔵タンク26の液相には、ノックアウトドラム(図示せず)を介して、アンモニア回収部60へ接続される他のラインを設けてもよい。このようにすることで、高圧貯蔵タンク26内に残っている液体アンモニアを排出して、高圧貯蔵タンク26内を低圧化することが可能となる。
【0028】
アンモニア充填ライン27は、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを、燃料供給ライン21に導入させる。より具体的には、アンモニア充填ライン27は、高圧貯蔵タンク26内の圧力を利用して、高圧貯蔵タンク26の液相の液体アンモニアを燃料供給ライン21に導入可能になっている。本第一実施形態において例示するアンモニア充填ライン27は、第一供給ライン21Aに設けられたアンモニア貯めタンク40に液化アンモニアを導入させている。アンモニア充填ライン27には、高圧貯蔵タンク26に近い側に開閉弁91が設けられている。この開閉弁91は、高圧貯蔵タンク26から燃料供給ライン21に燃料アンモニアを導入させるときに開放状態とされ、それ以外の場合は閉塞状態とされる。
【0029】
(配管系統による動作)
次に、上述した配管系統20を用いたパージ処理、及び、アンモニア充填処理について図面を参照しながら説明する。なお、図中、開放状態の開閉弁を白抜き、閉塞状態の開閉弁を黒塗りで示している。
まず、アンモニアタンク10に貯留された燃料アンモニアを用いて燃焼装置8を動作させる場合、図2に示すように、開閉弁81,82,83,84,85,86を開放状態とし、開閉弁87,88,89,90,91を閉塞状態にする。また、不活性ガス供給弁53は閉塞状態にする。すると、アンモニアタンク10からアンモニア貯めタンク40に燃料アンモニアが流入して一時的に貯留される。そして、アンモニア高圧ポンプ25を動作させると、アンモニア貯めタンク40の燃料アンモニアがアンモニア高圧ポンプ25に引き込まれて、昇圧されて第二供給ライン21Bに送り出される。この第二供給ライン21Bに送り出された燃料アンモニアは、燃焼装置8へ流入して燃料として用いられる。そして、燃焼装置8に流入したものの燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアは、アンモニア燃料戻りライン22を介してアンモニア貯めタンク40に戻される。なお開閉弁90は、開放状態としてもよい。
【0030】
一方で、例えば、燃焼装置8で用いられる燃料が切り替えられる場合や、メンテナンス等により燃焼装置8による燃料アンモニアの使用が停止される場合、図3に示すように、開閉弁84,85,87,88,89、不活性ガス供給弁53を開放状態とし、開閉弁81,82,83,86,90,91を閉塞状態にする。そして、不活性ガス供給部51を動作させる。すると、燃料供給ライン21のうち、第二供給ライン21Bに残留した燃料アンモニア、アンモニア燃料戻りライン22に残留した燃料アンモニア、及び、燃焼装置8に残留した燃料アンモニアが、それぞれ高圧の不活性ガスによりパージされて、不活性ガスと共に高圧貯蔵タンク26に導入される。なお、パージ完了後、全ての開閉弁81~91および不活性ガス供給弁53は、閉塞状態にする。また、以降の工程では、不活性ガス供給弁53は、閉塞状態を維持するため、不活性ガス供給弁53の開閉状態の説明は省略する。
【0031】
次いで、燃焼装置8において、燃料アンモニアの使用を再開する場合、図4に示すように、まず、開閉弁91を開放状態とし、開閉弁81~90を閉塞状態にする。これにより、高圧貯蔵タンク26に高圧にて貯蔵されているパージされた燃料アンモニアがアンモニア充填ライン27を介してアンモニア貯めタンク40内に導入される。
【0032】
そして、図5に示すように、開閉弁82~86,91を開放状態とし、開閉弁87~90を閉塞状態にして、アンモニア高圧ポンプ25を動作せると、アンモニア貯めタンク40に導入された燃料アンモニアが第一供給ライン21Aとアンモニア高圧ポンプ25を経て第二供給ライン21Bに供給される。更に、第二供給ライン21Bに供給された燃料アンモニアは、燃焼装置8及びアンモニア燃料戻りライン22の各流通経路Rに至り、アンモニア貯めタンク40に戻される。つまり、アンモニア貯めタンク40の燃料アンモニアが、第一供給ライン21A、第二供給ライン21B、燃焼装置8、アンモニア燃料戻りライン22により形成される環状の流路を循環することとなる。
【0033】
その後、これら第二供給ライン21B、燃焼装置8、及びアンモニア燃料戻りライン22の内部が、十分に燃料アンモニアによって満たされた状態になると、図5の状態から開閉弁91を閉塞状態とした後に開閉弁81を開放状態とする。これにより、燃焼装置8が、アンモニアタンク10の燃料アンモニアを用いて動作する状態となる。
【0034】
ここで、再度、燃料アンモニアの使用が停止される前に、開閉弁90を開放状態にして、高圧貯蔵タンク26の内部を低圧にする。これにより、高圧貯蔵タンク26では、パージされた燃料アンモニアを受け入れ可能な状態となる。そして、高圧貯蔵タンク26の内部が低圧になることで、仮に高圧貯蔵タンク26内に燃料アンモニアが残留している場合には、燃料アンモニアが気化して、不活性ガスと共にアンモニア回収部60へと送り込まれる。
【0035】
(作用効果)
上記の通り、本第一実施形態の船舶1は、船体2と、船体2に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンク10と、アンモニアタンク10に接続された燃料供給ライン21と、燃料供給ライン21を介してアンモニアタンク10から燃料アンモニアが導入される燃焼装置8と、燃料供給ライン21を介して燃焼装置8に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、燃焼装置8に圧送された不活性ガスとともに燃焼装置8内の燃料アンモニアが導入され、燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で、燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンク26と、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを、燃料供給ライン21に導入可能なアンモニア充填ライン27と、を備えている。
【0036】
このような船舶1によれば、燃料アンモニアの残留する燃料供給ライン21と燃焼装置8との流通経路Rを不活性ガスによりパージした際に、このパージにより排出された燃料アンモニアを液体の状態で高圧貯蔵タンク26に貯蔵できる。そして、このような船舶1においては、再度、燃料アンモニアを用いて燃焼装置8を動作させる前に、燃料供給ライン21及び燃焼装置8内の不活性ガスをアンモニアに置換する作業を行う必要があるが、この作業を行う際に、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを用いて不活性ガスをアンモニアに置換することができる。したがって、パージされたアンモニアを有効利用して、アンモニアタンク10に貯留された燃料アンモニアの消費を抑えることができる。さらに、例えば、流通経路Rに残留した燃料アンモニアを全量パージしたときにアンモニア回収部60で処理するアンモニアの量を減ずる事が可能となり、アンモニア回収部60を小型化する事が可能になる。
【0037】
上記第一実施形態の船舶1は、更に、燃料供給ライン21に設けられて、アンモニアタンク10からの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、アンモニア充填ライン27を介して高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された燃料アンモニアを燃料供給ライン21へ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンク40と、アンモニア貯めタンク40よりも燃焼装置8に近い側の燃料供給ライン21に設けられて、アンモニア貯めタンク40に貯留された燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプ25と、を備えている。
このように構成することで、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを、円滑に燃料供給ライン21に戻すことができる。また、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアは、アンモニア高圧ポンプ25によって燃料供給ライン21や燃焼装置8へ送り込まれるため、円滑に流通経路Rの不活性ガスを燃料アンモニアに置換することが可能となる。
【0038】
上記第一実施形態の船舶1は、更に、前記燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプ25よりも前記アンモニアタンク10に近い側の前記燃料供給ライン21に戻すアンモニア燃料戻りライン22を備えている。
このように構成することで、燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを、再度アンモニア高圧ポンプ25によって燃焼装置8へ送り込むことができる。さらに、高圧貯蔵タンク26の燃料アンモニアを燃料供給ライン21に戻す際には、このアンモニア燃料戻りライン22を用いて燃料供給ライン21及び燃焼装置8に燃料アンモニアを循環させることができる。したがって、燃料供給ライン21及び燃焼装置8に不活性ガスの残留が生じることを抑制できる。
【0039】
上記第一実施形態の船舶1におけるアンモニア燃料戻りライン22は、更に、燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを、アンモニア貯めタンク40に戻している。
従って、高圧貯蔵タンク26から送り込まれた燃料アンモニアと、アンモニア燃料戻りライン22により戻された燃料アンモニアとをアンモニア貯めタンク40内で円滑に合流させることができる。
【0040】
《第一実施形態の変形例》
次に、本開示の第一実施形態の変形例を図面に基づき説明する。なお、この変形例においては、不活性ガスを燃料供給ライン21からアンモニア回収部60へ直接的に導入可能にするとともに、不活性ガスをアンモニア燃料戻りライン22からアンモニア回収部60へ直接的に導入可能にしている点でのみ相違する。したがって、上述した第一実施形態と同一部分に同一符号を付して、重複説明を省略する。
【0041】
図6は、本開示の第一実施形態の変形例に係る配管系統を示す図であり、残留した僅かな燃料アンモニアを含む不活性ガスをパージする際の状態を示している。
図6に示すように、本第一実施形態の変形例における配管系統20は、上述した第一実施形態の構成に加えて、第一パージガス排出ライン61と、第二パージガス排出ライン62と、開閉弁92,93と、を備えている。
【0042】
第一パージガス排出ライン61は、燃料供給ライン21とアンモニア回収部60とを接続している。より具体的には、第一パージガス排出ライン61は、燃料供給ライン21のうちの第二供給ライン21Bとアンモニア回収部60とを接続している。この第一パージガス排出ライン61には、開閉弁92が設けられている。
第二パージガス排出ライン62は、アンモニア燃料戻りライン22とアンモニア回収部60とを接続している。この第二パージガス排出ライン62には、開閉弁93が設けられている。
【0043】
開閉弁92,93は、通常時、及び、ベントライン38を介して流通経路R内に残留していた燃料アンモニアを高圧貯蔵タンク26に導いているときに閉塞状態とされる。
上述した第一実施形態のパージ処理においては、初めに加圧状態の不活性ガスに押されて流通経路R内に残留していた燃料アンモニアが高圧貯蔵タンク26に流入するが、そのままパージ処理を継続すると、不活性ガスも高圧貯蔵タンク26に流入し始めてしまう。しかし、この変形例においては、不活性ガスが高圧貯蔵タンク26に流入し始める前に、開閉弁87~89を閉塞状態にして、開閉弁92,93を開放状態にする。より具体的には、開閉弁84,85,92,93,不活性ガス供給弁53を開放状態とし、開閉弁81,82,83,86,87, 88,89、90,91を閉塞状態として、不活性ガス供給部51の動作を継続させる。
【0044】
この変形例のようにすることで、流通経路R内に残留している僅かな燃料アンモニア及び不活性ガスは、不活性ガス供給部51から供給される新たな加圧状態の不活性ガスにより押されて、高圧貯蔵タンク26を経由することなく、第一パージガス排出ライン61及び第二パージガス排出ライン62を介して直接的にアンモニア回収部60へ導入されて処理されることとなる。そして、流通経路Rに燃料アンモニアが残留していない状態となった後、不活性ガス供給弁53を閉塞状態として、その後、全ての開閉弁81~93を閉塞状態とする。
【0045】
この変形例のように構成することで、上述した第一実施形態の作用効果に加えて、高圧貯蔵タンク26に不活性ガスが導入されることを抑えて、残留した僅かな燃料アンモニアを含む不活性ガスを直接的にアンモニア回収部60に導入させることが可能となる。そのため、燃料アンモニアを流通経路Rに残留させずに、且つ高圧貯蔵タンク26が大型化することを抑えることができる。また、第一パージガス排出ライン61によって、燃料供給ライン21のうちの第二供給ライン21Bとアンモニア回収部60とを連通させ、第二パージガス排出ライン62によってアンモニア燃料戻りライン22とアンモニア回収部60とを連通させて、第二供給ライン21Bおよびアンモニア燃料戻りライン22のそれぞれを低圧の不活性ガス雰囲気とすることができるため、迅速にメンテナンス等を行うことも可能となる。
【0046】
〈第二実施形態〉
以下、本開示の第二実施形態に係る船舶について、図面を参照して説明する。なお、この第二実施形態は、上述した第一実施形態と、アンモニア充填ラインの構成のみが異なる。そのため、図1を援用すると共に、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して、重複する説明を省略する。
【0047】
図7は、本開示の第二実施形態に係る配管系統を示す図である。
図1図7に示すように、第二実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニアタンク10と、配管系統20と、ベントポスト30と、アンモニア回収部60と、回収アンモニア水タンク70と、燃料供給ライン21と、アンモニア高圧ポンプ25と、アンモニア燃料戻りライン22と、不活性ガス供給装置50と、ベントライン38と、高圧貯蔵タンク26と、アンモニア充填ライン127と、アンモニア貯めタンク40と、を備えている。
【0048】
アンモニア充填ライン127は、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを、燃料供給ライン21に導入させる。アンモニア充填ライン127は、第一充填ライン41と、第二充填ライン42と、を備えている。
第一充填ライン41は、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを、アンモニア高圧ポンプ25よりも燃焼装置8に近い側の燃料供給ライン21である第二供給ライン21Bに導入可能に構成されている。
【0049】
第二充填ライン42は、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを、アンモニア高圧ポンプ25よりもアンモニアタンク10に近い側の燃料供給ライン21である第一供給ライン21Aに導入可能に構成されている。この第二実施形態の第二充填ライン42は、第一実施形態のアンモニア充填ライン27と同様に、第一供給ライン21Aに設けられたアンモニア貯めタンク40に液化アンモニアを導入させている。ここで、この第二実施形態では、第一充填ライン41が、高圧貯蔵タンク26と第二供給ライン21Bとを連通させ、第二充填ライン42が、第一充填ライン41から分岐して、第一充填ライン41とアンモニア貯めタンク40とを連通させている場合を例示しているが、この構成に限られない。例えば、第二充填ライン42は、高圧貯蔵タンク26からアンモニア貯めタンク40に至るように形成してもよい。
【0050】
さらに、アンモニア充填ライン127には、第一実施形態のアンモニア充填ライン27と同様に、高圧貯蔵タンク26に近い側に開閉弁91が設けられている。この開閉弁91は、高圧貯蔵タンク26から燃料供給ライン21に燃料アンモニアを導入させるときに開放状態とされ、それ以外の場合は閉塞状態とされる。
【0051】
この第二実施形態では、高圧貯蔵タンク26内の圧力は、第二供給ライン21B内の圧力よりも高くなっており、アンモニア充填ライン127は、この高圧貯蔵タンク26内の圧力を利用して、高圧貯蔵タンク26の液相の液体アンモニアを、第二供給ライン21B及びアンモニア貯めタンク40に導入させることが可能となっている。なお、アンモニア充填ライン127を介して液体アンモニアを燃料供給ライン21へ導入させるときに高圧貯蔵タンク26の圧力が第二供給ライン21B内の圧力よりも高ければよく、例えば、アンモニア充填ライン127を介して液体アンモニアを燃料供給ライン21へ導入させるときにだけ、第二供給ライン21B内の圧力を逃がすようにしてもよい。
【0052】
(作用効果)
上記第二実施形態によれば、高圧貯蔵タンク26をアンモニア高圧ポンプ25よりも燃焼装置8に近い位置に配置した場合に、燃焼装置8に近い位置に配索された第二供給ライン21Bへ液体アンモニアを導入させることができる。したがって、高圧貯蔵タンク26の配置自由度を高めつつ、高圧貯蔵タンク26の液体アンモニアを迅速に燃料供給ライン21に導入することができる。
【0053】
《第二実施形態の変形例》
上記第二実施形態では、高圧貯蔵タンク26内の圧力が第二供給ライン21B内の圧力よりも高い場合について説明した。しかし、高圧貯蔵タンク26内の圧力は、第二供給ライン21B内の圧力以下であってもよい。
図8は、本開示の第二実施形態の変形例における配管系統を示す図である。
図8に示すように、第二実施形態の変形例における配管系統20は、上述した第二実施形態の構成に加えて、昇圧ポンプ43と、開閉弁44,45とを備えている。
【0054】
昇圧ポンプ43は、第一充填ライン41の燃料アンモニアを昇圧可能に構成されている。この第二実施形態の変形例で例示する昇圧ポンプ43は、高圧貯蔵タンク26と開閉弁91との間のアンモニア充填ライン127に設けられている。この昇圧ポンプ43により昇圧された液体アンモニア、すなわち、昇圧ポンプ43よりも燃料供給ライン21側のアンモニア充填ライン127内の圧力は、アンモニア高圧ポンプ25よりも燃焼装置8に近い側の燃料供給ライン21である第二供給ライン21B内の圧力よりも高い圧力とされている。
【0055】
開閉弁44は、第一充填ライン41内の流路を開閉可能とされ、開閉弁45は、第二充填ライン42内の流路を開閉可能とされている。これら開閉弁44,45によって、高圧貯蔵タンク26の液体アンモニアの導入先が、切替可能となっている。これら開閉弁44,45は、通常時、閉塞状態とされ、高圧貯蔵タンク26の液体アンモニアを燃料供給ライン21に導入させるときに開放状態にされる。この第二実施形態変形例では、第一充填ライン41の途中から第二充填ライン42が分岐しているため、開閉弁44は、第二充填ライン42の分岐する位置よりも第二供給ライン21B側の第一充填ライン41に設けられている。なお、上述した第二実施形態の変形例において、開閉弁91を省略してもよい(第三実施形態も同様)。
【0056】
(作用効果)
上記第二実施形態の変形例によれば、高圧貯蔵タンク26内の液体アンモニアの圧力を、第二供給ライン21B内の圧力よりも高くしなくても、高圧貯蔵タンク26内の液体アンモニアを昇圧ポンプによって昇圧して、第二供給ライン21Bに導入させることができる。したがって、より耐圧の低い高圧貯蔵タンク26を用いることが可能となる。
【0057】
〈第三実施形態〉
次に、本開示の第三実施形態に係る船舶について、図面を参照して説明する。上述した第一、第二実施形態では、如何なる高圧貯蔵タンク26の配置も含み得るものであったが、この第三実施形態は、高圧貯蔵タンクの鉛直方向における配置に特徴がある。そのため、図1を援用すると共に、上述した第一実施形態及び第二実施形態と同一部分に同一符号を付して説明すると共に、重複する説明を省略する。
【0058】
図9は、本開示の第三実施形態に係る配管系統を示す図である。
図1図9に示すように、第三実施形態の船舶1は、船体2と、上部構造4と、燃焼装置8と、アンモニアタンク10と、配管系統20と、ベントポスト30と、アンモニア回収部60と、回収アンモニア水タンク70と、燃料供給ライン21と、アンモニア高圧ポンプ25と、アンモニア燃料戻りライン22と、不活性ガス供給装置150と、ベントライン38と、高圧貯蔵タンク126と、アンモニア充填ライン127と、アンモニア貯めタンク40と、を備えている。
【0059】
不活性ガス供給装置150は、燃焼装置8の燃料としての燃料アンモニアが流通する流通経路Rの燃料アンモニアを窒素等の不活性ガスに置き換える、いわゆるパージを行う。不活性ガス供給装置150は、第一、第二実施形態の不活性ガス供給装置50と同様に、不活性ガス供給部51と、不活性ガス供給ライン52と、不活性ガス供給弁53と、を備えている。この第三実施形態の不活性ガス供給装置150は、更に、高圧貯蔵タンク126のパージを行うための不活性ガス供給ライン46と、不活性ガス供給弁47とを備えている。不活性ガス供給ライン46は、不活性ガス供給部51と、高圧貯蔵タンク126とを接続している。不活性ガス供給弁47は、不活性ガス供給ライン46に設けられ、不活性ガス供給部51から高圧貯蔵タンク126に不活性ガスを供給するときに閉塞状態から開放状態とされる。
【0060】
高圧貯蔵タンク126は、第一、第二実施形態の高圧貯蔵タンク26と同様に、不活性ガス及び燃料アンモニアを高圧状態で貯蔵可能に構成されている。この高圧貯蔵タンク126には、ベントライン38を介して不活性ガスとともに燃料アンモニアが導入される。高圧貯蔵タンク126内では、不活性ガスを含む気相と、燃料アンモニアの液相とが存在した状態となる。この高圧貯蔵タンク126内の液相には、アンモニア充填ライン127が連通され、高圧貯蔵タンク126内の気相には、アンモニア回収部60へ気体を送り込む気体排出ライン28が連通されている。
【0061】
高圧貯蔵タンク126は、燃料供給ライン21及びアンモニア燃料戻りライン22よりも鉛直方向で下方に設けられている。より具体的には、燃料供給ライン21のうち最も下方に位置する最下部、及び、アンモニア燃料戻りライン22のうち最も下方に位置する最下部の何れの最下部よりも、高圧貯蔵タンク126は鉛直方向で下方に配置されている。言い換えれば、燃料供給ライン21内の液体アンモニアやアンモニア燃料戻りライン22内の液体アンモニアが、それぞれ重力により高圧貯蔵タンク126へ移動可能なように、燃料供給ライン21及びアンモニア燃料戻りライン22に対して高圧貯蔵タンク126の液相が下方に配置されている。なお、この第三実施形態において、ベントライン38は、燃料供給ライン21の最下部や、アンモニア燃料戻りライン22の最下部に接続するようにしてもよい。
【0062】
(作用効果)
第三実施形態によれば、上述した第一、第二実施形態の効果に加えて、不活性ガス供給装置150による不活性ガスの供給を行っても燃料供給ライン21及びアンモニア燃料戻りライン22から排出されずにそれぞれの配管の下部に残留してしまった液体アンモニアを、その自重によって高圧貯蔵タンク126に導くことができる。したがって、燃料供給ライン21及びアンモニア燃料戻りライン22の液体アンモニアをより効率よく回収することが可能となる。
【0063】
〈他の実施形態〉
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
上記実施形態においては、燃焼装置8がアンモニアを燃料とする主機である場合について説明した。しかし、燃焼装置8は、アンモニアのみを燃焼させる装置に限られるものではなく、例えば、アンモニアとアンモニア以外の燃料(例えば、重油等)とを切り替え可能な燃焼装置8であってもよい。
上記実施形態においては、配管系統に用いられる弁を開閉弁と記載しているが、当該弁は全開または全閉のみの位置が保持できる弁のみの意味ではなく、中間開度保持可能な弁も含めた弁として記載している。
【0064】
上記実施形態においては、アンモニア回収部60および回収アンモニア水タンク70を備える場合について説明した。しかし、アンモニア回収部60および回収アンモニア水タンク70ではなく燃焼等によりアンモニアを無害化するアンモニア処理装置を装備することでも良い。
上記実施形態においては、回収アンモニア水タンク70を備える場合について説明した。しかし、回収アンモニア水タンク70を省略してもよい。この場合、アンモニア回収部60によって回収された回収アンモニア水を、貯蔵または、例えば、中和・希釈して船外に放出すればよい。
【0065】
上記実施形態においては、燃料供給ライン21にアンモニア貯めタンク40を設ける場合について説明した。しかし、アンモニア充填ライン27やアンモニア燃料戻りライン22からの燃料アンモニアを燃料供給ライン21に合流させて、一時的に貯留可能な構成であれば、アンモニア貯めタンク40に限られない。例えば、アンモニア貯めタンク40に代えて、アンモニア充填ライン27やアンモニア燃料戻りライン22が合流接続される箇所の燃料供給ライン21の配管を、他の燃料供給ライン21の配管よりも太い配管としてもよい。
【0066】
また、上記第一実施形態においては、高圧貯蔵タンク26内部の圧力を利用して高圧貯蔵タンク26内の燃料アンモニアを燃料供給ライン21に戻す場合について説明した。しかし、この構成に限られず、例えば、アンモニア充填ライン27にポンプを設けて高圧貯蔵タンク26内の燃料アンモニアを燃料供給ライン21に戻すようにしてもよい。
【0067】
さらに、上記第二、第三実施形態において第一充填ライン41と第二充填ライン42との両方を設ける場合を例示したが、第二充填ライン42は、必要に応じて設ければ良く、例えば省略してもよい。
【0068】
また、上記第二、第三実施形態において、第一実施形態の変形例と同様に、図7に破線で示すように、第一パージガス排出ライン61と、第二パージガス排出ライン62と、開閉弁92,93と、を設けてもよい。
【0069】
さらに、高圧貯蔵タンク126の配置は、第三実施形態で例示した配置に限られない。例えば、高圧貯蔵タンク126が設置される鉛直方向の位置は、当該高圧貯蔵タンク126が設置される区画(図示せず)内において、燃料供給ライン21のパージ対象領域20pのうちの最下部、及びアンモニア燃料戻りライン22のパージ対象領域20pのうちの最下部よりも下方であってもよい。例えば、高圧貯蔵タンク126と、燃料供給ライン21及びアンモニア燃料戻りライン22とが同一区画(図示せず)に設けられている場合には、高圧貯蔵タンク126は、当該区画内で、燃料供給ライン21のうち最も下方に位置する最下部、及び、アンモニア燃料戻りライン22のうち最も下方に位置する最下部の何れの最下部よりも鉛直方向で下方に配置すればよい。
【0070】
上記各実施形態及び変形例では、開閉弁84が第一ベントライン38Aの分岐する位置よりも燃料供給ライン21の下流側に配置され、開閉弁85が第二ベントライン38Bの分岐する位置よりもアンモニア燃料戻りライン22の上流側に配置されている場合を例示した。しかし、開閉弁84,85の配置は、これらの配置に限らない。例えば、開閉弁84を第一ベントライン38Aの分岐する位置よりも燃料供給ライン21の上流側に配置したり、開閉弁85を第二ベントライン38Bの分岐する位置よりもアンモニア燃料戻りライン22の下流側に配置したりしてもよい。
さらに、ベントライン38の分岐する位置よりも上流側とベントライン38の分岐する位置よりも下流側との何れか一方のみに開閉弁を設ける構成に限られない。例えば、第一ベントライン38Aの分岐する位置よりも燃料供給ライン21の上流側及び第一ベントライン38Aの分岐する位置よりも燃料供給ライン21の下流側の両方に開閉弁を設けたり、第二ベントライン38Bの分岐する位置よりも上流側及び第二ベントライン38Bの分岐する位置よりも下流側の両方に開閉弁を設けたりしてもよい。
【0071】
また、上記各実施形態及び変形例では、開閉弁84が第一パージガス排出ライン61の分岐する位置よりも燃料供給ライン21の下流側に配置され、開閉弁85が第二パージガス排出ライン62の分岐する位置よりもアンモニア燃料戻りライン22の上流側に配置されている場合を例示した。しかし、これら配置に限らない。開閉弁84を第一パージガス排出ライン61の分岐する位置よりも燃料供給ライン21の上流側に配置したり、開閉弁85を第二パージガス排出ライン62よりもアンモニア燃料戻りライン22の下流側に配置したりしてもよい。また、開閉弁84は、第一パージガス排出ライン61の分岐する位置よりも上流側と下流側との何れか一方のみに配置される場合に限られない。同様に、開閉弁85は、第二パージガス排出ライン62の分岐する位置よりも上流側と下流側との何れか一方のみに配置される場合に限られない。例えば、第一パージガス排出ライン61の分岐する位置よりも上流側と下流側との両方に開閉弁を設けたり、第二パージガス排出ライン62の分岐する位置よりも上流側と下流側との両方に開閉弁を設けたりしてもよい。
【0072】
さらに上記各実施形態及び変形例では、第一ベントライン38Aの分岐する位置が第一パージガス排出ライン61の分岐する位置よりも燃料供給ライン21の下流側とされ第二ベントライン38Bの分岐する位置が第二パージガス排出ライン62の分岐する位置よりもアンモニア燃料戻りライン22の上流側とされている場合を例示した。しかし、これらの構成に限られるものではない。例えば、第一ベントライン38Aと第一パージガス排出ライン61の位置関係を入れ替えて、第一ベントライン38Aの分岐する位置を第一パージガス排出ライン61の分岐する位置よりも燃料供給ライン21の上流側としたり、第二ベントライン38Bと第二パージガス排出ライン62の位置関係を入れ替えて、第二ベントライン38Bの分岐する位置を第二パージガス排出ライン62の分岐する位置よりもアンモニア燃料戻りライン22の下流側に配置としたりしても良い。
【0073】
〈付記〉
実施形態に記載の船舶1は、例えば以下のように把握される。
【0074】
(1)第1の態様によれば船舶1は、船体2と、前記船体2に設けられて、燃料アンモニアを液体の状態で貯留するアンモニアタンク10と、前記アンモニアタンク10に接続された燃料供給ライン21と、前記燃料供給ライン21を介して前記アンモニアタンク10から前記燃料アンモニアが導入される燃焼装置8と、前記燃料供給ライン21を介して少なくとも前記燃焼装置8に不活性ガスを圧送する不活性ガス供給装置と、前記燃焼装置8に圧送された不活性ガスとともに前記燃焼装置8内の前記燃料アンモニアが導入され、前記燃料アンモニアが液体の状態を維持可能な高圧状態で前記燃料アンモニアを貯蔵可能な高圧貯蔵タンク26と、前記高圧貯蔵タンク26に貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記燃料供給ライン21に導入可能なアンモニア充填ライン27と、を備える。
燃焼装置8としては、例えば、主機及び発電機にそれぞれ用いられる内燃機関、ボイラーが挙げられる。
【0075】
これにより、燃料アンモニアの残留する燃料供給ライン21と燃焼装置8との流通経路を不活性ガスによりパージした際に、このパージにより排出された燃料アンモニアを液体の状態で高圧貯蔵タンク26に貯蔵できる。そして、このような船舶1においては、再度、燃料アンモニアを用いて燃焼装置8を動作させる前に、燃料供給ライン21及び燃焼装置8内の不活性ガスをアンモニアに置換する作業を行う必要があるが、この作業を行う際に、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを用いて不活性ガスをアンモニアに置換することができる。したがって、パージされたアンモニアを有効利用して、アンモニアタンク10に貯留された燃料アンモニアの消費を抑えることができる。さらに、例えば、流通経路Rに残留した燃料アンモニアを全量パージしたときにアンモニア回収部60で処理するアンモニアの量を減ずる事が可能となり、アンモニア回収部60を小型化する事が可能になる。
【0076】
(2)第2の態様に係る船舶1は、(1)の船舶1であって、前記燃料供給ライン21に設けられて、前記アンモニアタンク10からの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、前記アンモニア充填ライン27を介して前記高圧貯蔵タンク26に貯蔵された前記燃料アンモニアを一時貯留可能であり、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ライン21へ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンク40と、前記アンモニア貯めタンク40よりも前記燃焼装置8に近い側の前記燃料供給ライン21に設けられて、前記アンモニア貯めタンク40に貯留された前記燃料アンモニアを圧送するアンモニア高圧ポンプ25と、を備える。
【0077】
これにより、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアを、円滑に燃料供給ライン21に戻すことができる。また、高圧貯蔵タンク26に貯蔵された燃料アンモニアは、アンモニア高圧ポンプ25によって燃料供給ライン21や燃焼装置8へ送り込まれるため、不活性ガスを燃料アンモニアへ円滑に置換することが可能となる。
【0078】
(3)第3の態様に係る船舶1は、(2)の船舶1であって、前記燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプ25よりも前記アンモニアタンク10に近い側の前記燃料供給ライン21に戻すアンモニア燃料戻りライン22を更に備える。
【0079】
これにより、燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを、再度アンモニア高圧ポンプ25によって燃焼装置8へ送り込むことができる。さらに、高圧貯蔵タンク26の燃料アンモニアを燃料供給ライン21に戻す際には、このアンモニア燃料戻りライン22を用いて燃料供給ライン21及び燃焼装置8に燃料アンモニアを循環させることができる。したがって、燃料供給ライン21及び燃焼装置8に不活性ガスの残留が生じることを抑制できる。
【0080】
(4)第4の態様に係る船舶1は、(3)の船舶1であって、前記アンモニア燃料戻りライン22は、前記燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の前記燃料アンモニアを、前記アンモニア貯めタンク40に戻す。
【0081】
これにより、高圧貯蔵タンク26から送り込まれた燃料アンモニアと、アンモニア燃料戻りライン22により戻された燃料アンモニアとをアンモニア貯めタンク40内で円滑に合流させることができる。
【0082】
(5)第5の態様に係る船舶1は、(3)又は(4)の船舶1であって、前記燃料アンモニアを回収可能なアンモニア回収部60と、前記高圧貯蔵タンク26と前記アンモニア回収部60とを接続する気体排出ライン28と、を備える。
これにより、高圧貯蔵タンク26の内部を低圧化する際に、高圧貯蔵タンク26内の気相を、アンモニア回収部60に導入させてアンモニアを回収することができる。
【0083】
(6)第6の態様に係る船舶1は、(5)の船舶であって、前記燃料供給ライン21と前記アンモニア回収部60とを接続する第一パージガス排出ライン61と、前記アンモニア燃料戻りライン22と前記アンモニア回収部60とを接続する第二パージガス排出ライン62と、を備える。
これにより、高圧貯蔵タンク26に不活性ガスを導入させずに直接的にアンモニア回収部60に導入させることが可能となるため、高圧貯蔵タンク26が大型化することを抑えることができる。また、第一パージガス排出ライン61によって、第二供給ライン21Bとアンモニア回収部60とを連通させ、第二パージガス排出ライン62によってアンモニア燃料戻りライン22とアンモニア回収部60とを連通させて、第二供給ライン21Bおよびアンモニア燃料戻りライン22のそれぞれを低圧の不活性ガス雰囲気とすることができるため、迅速にメンテナンス等を行うことが可能となる。
【0084】
(7)第7の態様に係る船舶1は、(1)の船舶であって、前記燃料供給ライン21に設けられて、前記燃料アンモニアを前記燃焼装置8へ向けて圧送するアンモニア高圧ポンプ25を備え、前記アンモニア充填ライン127は、前記高圧貯蔵タンク26,126に貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプ25よりも前記燃焼装置8に近い側の前記燃料供給ライン21Bに導入可能な第一充填ライン41と、前記高圧貯蔵タンク26,126に貯蔵された前記燃料アンモニアを、前記アンモニア高圧ポンプ25よりも前記アンモニアタンク10に近い側の前記燃料供給ライン21Aに導入可能な第二充填ライン42と、のうち少なくとも第一充填ライン41を備える。
これにより、高圧貯蔵タンク26の配置自由度を高めつつ、高圧貯蔵タンク26の液体アンモニアを迅速に燃料供給ライン21に導入することができる。
【0085】
(8)第8の態様に係る船舶1は、(7)の船舶であって、少なくとも前記第一充填ライン41の前記燃料アンモニアを昇圧可能な昇圧ポンプ43を備える。
これにより、より耐圧の低い高圧貯蔵タンク26を用いることが可能となる。
【0086】
(9)第9の態様に係る船舶1は、(7)又は(8)の船舶であって、前記燃料供給ライン21に設けられて、前記アンモニアタンク10からの燃料アンモニアを一時貯留可能であるとともに、一時貯留された前記燃料アンモニアを前記燃料供給ライン21へ送り込むことが可能なアンモニア貯めタンク40を備え、前記第二充填ライン42は、前記高圧貯蔵タンク26,126に貯蔵された前記燃料アンモニアを前記アンモニア貯めタンク40に導入する。
これにより、高圧貯蔵タンク26,126から送り込まれた燃料アンモニアと、アンモニア燃料戻りライン22により戻された燃料アンモニアとをアンモニア貯めタンク40内で円滑に合流させることができる。
【0087】
(10)第10の態様に係る船舶1は、(7)から(9)の何れか一つの船舶であって、前記燃料アンモニアを回収可能なアンモニア回収部60と、前記高圧貯蔵タンク26,126と前記アンモニア回収部60とを接続する気体排出ライン28と、を備える。
これにより、高圧貯蔵タンク26の内部を低圧化する際に、高圧貯蔵タンク26内の気相を、アンモニア回収部60に導入させてアンモニアを回収することができる。
【0088】
(11)第11の態様に係る船舶1は、(10)の船舶であって、前記燃料供給ライン21と前記アンモニア回収部60とを接続する第一パージガス排出ライン61を備える。
これにより、迅速にメンテナンス等を行うことが可能となる。
【0089】
(12)第12の態様に係る船舶1は、(10)又は(11)の船舶であって、前記燃焼装置8で燃料として用いられずに残った余剰の燃料アンモニアを前記アンモニア高圧ポンプ25よりも前記アンモニアタンク10に近い側の前記燃料供給ライン21Aに戻すアンモニア燃料戻りライン22と、前記アンモニア燃料戻りライン22と前記アンモニア回収部60とを接続する第二パージガス排出ライン62と、を備える。
これにより、迅速にメンテナンス等を行うことが可能となる。
【0090】
(13)第13の態様に係る船舶1は、(7)から(12)の何れか一つの船舶であって、前記高圧貯蔵タンク126は、少なくとも前記燃料供給ライン21よりも下方に設けられている。
これにより、燃料供給ライン21の液体アンモニアをより効率よく回収することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上記態様によれば、パージされたアンモニアを有効利用して燃料消費を抑えることができる。
【符号の説明】
【0092】
1…船舶 2…船体 4…上部構造 5A,5B…舷側 6…船底 7…上甲板 8…燃焼装置 10…アンモニアタンク 20…配管系統 20p…パージ対象領域 21…燃料供給ライン 21A…第一供給ライン 21B…第二供給ライン 22…アンモニア燃料戻りライン 25…アンモニア高圧ポンプ 26,126…高圧貯蔵タンク 27,127…アンモニア充填ライン 28…気体排出ライン 30…ベントポスト 38…ベントライン 38A…第一ベントライン 38B…第二ベントライン 38C…第三ベントライン 40…アンモニア貯めタンク 41…第一充填ライン 42…第二充填ライン 43…昇圧ポンプ 44,45…開閉弁 46…不活性ガス供給ライン 47…不活性ガス供給弁 50,150…不活性ガス供給装置 51…不活性ガス供給部 52…不活性ガス供給ライン 53…不活性ガス供給弁 60…アンモニア回収部 61…第一パージガス排出ライン 62…第二パージガス排出ライン 70…回収アンモニア水タンク 81~93…開閉弁 R…流通経路
図1
図2
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図7
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図9