(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20241004BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20241004BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B7/025
(21)【出願番号】P 2023530435
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2022024340
(87)【国際公開番号】W WO2022265101
(87)【国際公開日】2022-12-22
【審査請求日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2021101445
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】梅村 滋和
(72)【発明者】
【氏名】磯部 修
(72)【発明者】
【氏名】野々口 航太
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-010032(JP,A)
【文献】国際公開第2018/212146(WO,A1)
【文献】特開2019-076977(JP,A)
【文献】特開2019-145769(JP,A)
【文献】特開2016-143751(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/023
B32B 7/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に保護層を備える電磁波シールドフィルムであり、
前記保護層は黒色保護層を有し、
前記保護層表面の、最小自己相関長さSalは10μm以下、界面の展開面積比Sdrは200%以上であり、
前記Salに対する前記Sdrの比[Sdr/Sal]は50以上である、電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記保護層は、前記電磁波シールドフィルムの内部に位置する黒色保護層と、前記電磁波シールドフィルムの表面に位置する透明保護層または黒色保護層とを備える、請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記黒色保護層は前記電磁波シールドフィルムの表面に位置する、請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記保護層側の明度L
*は24以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記保護層表面の二乗平均平方根傾斜Sdqは2.0以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記保護層側の85°光沢度は25以下である請求項1~5のいずれか1項に記載の電磁波シールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波シールドフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スマートフォンやタブレット端末を始めとした携帯機器などには、内部から発生する電磁波や外部から侵入する電磁波を遮断するために、電磁波シールドフィルムを貼り付けたフレキシブルプリント配線板(FPC)が用いられている。
【0003】
シールドプリント配線板には、電磁波シールドフィルム(以下、単に「シールドフィルム」と称する場合がある)が使用される。例えば、プリント配線板に接着して使用されるシールドフィルムは、金属層などのシールド層と当該シールド層の表面に設けられた導電性接着シートと、上記シールド層を保護するための保護層と、を有する。
【0004】
例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイなどを搭載した画面表示装置に使用される電磁波シールドフィルムには、遮光性が求められる。
【0005】
近年、視認性などの観点から、より遮光性に優れる電磁波シールドフィルムが求められる傾向がある。特許文献1および2には、黒色層を備え、黒色度を高めた電磁波シールド体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2009-76824号公報
【文献】特開2004-288972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1および2に開示の電磁波シールド体は、いずれも、黒色層中の着色剤の種類を特定のものとすることで黒色度を向上させている。このように、着色剤の種類を特定するなど黒色層の組成を限定する方法では、黒色度が向上したとしても、シールドフィルムやシールドフィルムを構成する各層が従来備えるべき性能が劣るなど、他の性能について悪化することがある。
【0008】
従って、本開示の目的は、黒色層の構成組成に関わらず黒色度に優れる電磁波シールドフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、電磁波シールドフィルムの表面に、黒色層を含む保護層を備え、保護層表面の形状を特定のものとすることにより、黒色層の構成組成に関わらず黒色度に優れることを見出した。本開示はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0010】
本開示は、表面に保護層を備える電磁波シールドフィルムであり、
上記保護層は黒色保護層を有し、
上記保護層表面の、最小自己相関長さSalは10μm以下、界面の展開面積比Sdrは200%以上であり、
上記Salに対する上記Sdrの比[Sdr/Sal]は50以上である、電磁波シールドフィルムを提供する。
【0011】
上記保護層は、上記電磁波シールドフィルムの内部に位置する黒色保護層と、上記電磁波シールドフィルムの表面に位置する透明保護層または黒色保護層とを備えていてもよい。
【0012】
上記黒色保護層が上記電磁波シールドフィルムの表面に位置していてもよい。
【0013】
上記保護層側の明度L*は24以下であることが好ましい。
【0014】
上記保護層表面の二乗平均平方根傾斜Sdqは2.0以上であることが好ましい。
【0015】
上記保護層側の85°光沢度は25以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本開示の電磁波シールドフィルムは、黒色層の構成組成に関わらず黒色度に優れる。このため、黒色層の構成組成を変更せず、シールドフィルムの性能を維持させつつ黒色度に優れるものとすることができる。また、黒色度に優れるため、遮光性に優れ、シールドフィルムをプリント配線板に貼り合わせた状態において、プリント配線板の美観やシールドフィルムの保護層の表面に印字した場合の印字の視認性、およびプリント配線板の回路パターンの隠蔽性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】本開示の電磁波シールドフィルムの他の実施形態を示す断面模式図である。
【
図3】本開示の電磁波シールドフィルムのさらに他の実施形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[電磁波シールドフィルム]
本開示の電磁波シールドフィルムは、保護層を少なくとも備える。上記保護層は、上記電磁波シールドフィルムの表面に備えられる。上記電磁波シールドフィルムは、上記保護層以外のその他の層を備えていてもよい。上記その他の層としては、電磁波のシールド性を発揮する電磁波シールド層、導電性接着剤層などが挙げられる。上記電磁波シールドフィルムを構成する各層は、それぞれ、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0019】
(保護層)
上記保護層は、上記電磁波シールドフィルムにおいて、上記電磁波シールド層等の内部の各層を保護する機能を有する。上記保護層は黒系色を呈する保護層(黒色保護層)を少なくとも備える。上記保護層は、絶縁性を有する層(絶縁保護層)であってもよい。
【0020】
上記保護層は、単層であってもよいし複層であってもよい。上記保護層が複層である場合、例えば、材質または硬度もしくは弾性率等の物性が異なる2層以上の積層体であってもよい。例えば、硬度が低い外層と、硬度が高い内層との積層体は、外層がクッション効果を有するため、電磁波シールドフィルムをプリント配線板に加熱加圧する工程において金属層等の電磁波シールド層に加わる圧力を緩和できる。このため、プリント配線板に設けられた段差によって電磁波シールド層が破壊されることを抑制することができる。
【0021】
上記保護層が単層である場合、単層である上記保護層は上記黒色保護層であり、上記黒色保護層が上記電磁波シールドフィルムの表面に位置する。上記保護層が複層である場合、上記保護層中の少なくとも1層は上記黒色保護層である。また、上記保護層が複層である場合、上記電磁波シールドフィルムの内部(すなわち表面以外)に黒色保護層を少なくとも1層有することが好ましい。また、上記保護層が複層である場合、上記電磁波シールドフィルムの表面に位置する上記保護層は透明保護層または黒色保護層であることがより好ましい。この場合、表面に位置する保護層には、表面硬度に優れるなど、内部に位置する黒色保護層とは異なる機能を発揮させることが可能となる。また、上記保護層が複層である場合において黒色保護層を複数有する場合、複数の黒色保護層は、組成(着色剤の含有量等)や厚さなどが互いに同一の層であってもよく、異なる層であってもよい。
【0022】
上記電磁波シールドフィルムの一実施形態について、
図1~
図3を用いて説明する。
図1~
図3は、それぞれ、上記電磁波シールドフィルムの一実施形態を示す断面模式図である。
【0023】
図1に示す電磁波シールドフィルム1は、導電性接着剤層4と、導電性接着剤層4の一方の面に隣接して設けられた電磁波シールド層3と、電磁波シールド層3の表面(導電性接着剤層4とは反対側の表面)に設けられた保護層2とを備える。保護層2は黒色保護層21単層で構成されている。言い換えると、電磁波シールドフィルム1は、導電性接着剤層4、電磁波シールド層3、および黒色保護層21をこの順に備える。なお、電磁波シールド層3は備えていなくてもよい。
【0024】
図2に示す電磁波シールドフィルム1は、保護層2が、黒色保護層21および透明保護層22の二層で構成されている点で、
図1に示す電磁波シールドフィルム1とは異なる。透明保護層22は、電磁波シールドフィルム1の表面に位置する。
図3に示す電磁波シールドフィルム1は、その表面に位置する保護層が透明保護層22ではなく黒色保護層23である点で、
図2に示す電磁波シールドフィルム1とは異なる。
【0025】
上記保護層表面(例えば、
図1~
図3に示す2a)の最小自己相関長さSalは10μm以下であり、好ましくは9.7μm以下、より好ましくは6.0μm以下である。上記Salは、小さいほど表面の個々の凹凸の高さが小さいことを示す。上記Salは、例えば1μm以上であり、好ましくは2μm以上である。
【0026】
上記保護層表面の界面の展開面積比Sdrは200%以上であり、好ましくは250%以上、より好ましくは300%以上である。上記Sdrは、定義領域の展開面積(表面積)が、定義領域の面積に対してどれだけ増大しているかを示し、完全に平坦な面のSdrは0%である。
【0027】
上記保護層表面の、上記Sal(μm)に対する上記Sdr(%)の比[Sdr/Sal]は、50以上であり、好ましくは53以上、より好ましくは60以上である。
【0028】
上記電磁波シールドフィルムにおいて、上記Sal、上記Sdr、および上記比[Sdr/Sal]がそれぞれ上述の範囲内であることにより、保護層表面の個々の凹凸が小さく、且つ、展開表面積が大きい。これにより、保護層表面に入射する可視光の反射率を低下させる。このため、保護層表面の形状を上述の範囲内とすれば、黒色保護層の構成組成に関わらず、保護層表面の形状を上述の範囲内としない場合に対して黒色度に優れる。また、上記電磁波シールドフィルムは、保護層表面のSalおよびSdrを特定の範囲とするものであり、保護層表面の凹凸形状の高さを高くしようとするものではないため、保護層や、後述の転写フィルムにおいて粒子を埋め込むための離型処理層等の埋め込み層を厚く設ける必要が無い。このため、従来の電磁波シールドフィルムに比べて、電磁波シールドフィルムの生産性、カール耐性、粒子の脱落耐性などを低下させない。
【0029】
上記保護層表面の二乗平均平方根傾斜Sdqは、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは3.0以上、さらに好ましくは3.5以上である。上記Sdqが2.0以上であると、保護層表面の黒色度が高くなる傾向がある。
【0030】
上記保護層表面の算術平均高さSaは、0.4~2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~1.5μmである。算術平均高さSaが上記範囲内であると、光沢度と生産性のバランスの点で好ましい。上記保護層表面の最大山高さSpは、2.5~9.0μmであることが好ましく、より好ましくは3.0~7.0μmである。最大山高さSpが上記範囲内であると、光沢度と生産性のバランスの点で好ましい。上記保護層表面の最大谷深さSvは、2.0~7.0μmであることが好ましく、より好ましくは3.0~7.0μmである。最大谷深さSvが上記範囲内であると、光沢度と生産性のバランスの点で好ましい。上記保護層表面の最大高さSzは、6.0~20.0μmであることが好ましく、より好ましくは6.5~15.0μmである。最大高さSzが上記範囲内であると、光沢度と生産性のバランスの点で好ましい。
【0031】
上記保護層を構成する各層はバインダー成分を含むことが好ましい。上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0032】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0033】
上記熱硬化型樹脂としては、熱硬化性を有する樹脂(熱硬化性樹脂)および上記熱硬化性樹脂を硬化して得られる樹脂の両方が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化型樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0034】
上記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ系樹脂、スピロ環型エポキシ系樹脂、ナフタレン型エポキシ系樹脂、ビフェニル型エポキシ系樹脂、テルペン型エポキシ系樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂、ノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0035】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0036】
上記活性エネルギー線硬化型化合物は、活性エネルギー線照射により硬化し得る化合物(活性エネルギー線硬化性化合物)および上記活性エネルギー線硬化性化合物を硬化して得られる化合物の両方が挙げられる。活性エネルギー線硬化性化合物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に1個以上(好ましくは2個以上)のラジカル反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性化合物などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化型化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0037】
上記黒色保護層は、着色剤を含むことが好ましい。上記着色剤としては、黒系着色剤が好ましい。上記黒系着色剤としては、公知乃至慣用の黒色を呈するための着色剤(顔料、染料等)を用いることができ、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、松煙等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、アントラキノン系着色剤、窒化ジルコニウムなどが挙げられる。黒系着色剤は一種のみを用いてもよいし、二種以上を用いてもよい。また、黒色以外の色を呈する着色剤を組み合わせて配合して黒系着色剤として機能する着色剤を用いてもよい。
【0038】
上記保護層は、本開示の効果を損なわない範囲内において、上述の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、例えば、硬化剤、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、他の着色剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0039】
上記保護層の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~20μmであることが好ましく、より好ましくは2~15μm、さらに好ましくは3~10μmである。上記厚さが1μm以上であると、より充分に内部の層を保護することができる。上記厚さが20μm以下であると、柔軟性および屈曲性に優れ、また経済的にも有利である。
【0040】
上記保護層が複層である場合、電磁波シールドフィルムの表面に位置する保護層(例えば透明保護層)の厚さは、0.1~10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5~5μmである。また、電磁波シールドフィルムの内部に位置する黒色保護層の厚さは、0.5~15μmであることが好ましく、より好ましくは1~10μmである。
【0041】
(電磁波シールド層)
上記電磁波シールド層としては、電磁波シールド性を有する公知乃至慣用のシールド層が使用できる。上記電磁波シールド層は、中でも、金属層を含むことが好ましい。上記電磁波シールド層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0042】
上記金属層を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、スズ、パラジウム、クロム、チタン、亜鉛、またはこれらの合金などが挙げられる。上記金属層としては、金属板または金属箔であることが好ましい。すなわち、上記金属層としては、銅板(銅箔)、銀板(銀箔)が好ましい。
【0043】
上記電磁波シールド層の厚さは、0.01~10μmであることが好ましい。上記厚さが0.01μm以上であると、より充分なシールド性能を得ることができる。上記厚さが10μm以下であると、屈曲性がより良好となる。
【0044】
(導電性接着剤層)
上記導電性接着剤層は、例えば上記電磁波シールドフィルムをプリント配線板に接着するための接着性と導電性を有する。導電性接着剤層は、電磁波シールド層と隣接して形成されていることが好ましい。導電性接着剤層は、単層、複層のいずれであってもよい。
【0045】
上記導電性接着剤層は、接着剤として機能を発揮し得るバインダー成分と、導電性粒子とを含有することが好ましい。上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、および活性エネルギー線硬化型化合物としては、それぞれ、上述の保護層が含み得るバインダー成分として例示されたものが挙げられる。上記バインダー成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0046】
上記バインダー成分としては、中でも、熱硬化型樹脂が好ましい。この場合、電磁波シールドフィルムをプリント配線板上に配置した後、加圧および加熱によりバインダー成分を硬化させることができ、接着性がより良好となる。
【0047】
上記バインダー成分が熱硬化型樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。上記硬化剤は、上記熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0048】
上記導電性接着剤層におけるバインダー成分の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、40~98質量%が好ましく、より好ましくは50~97質量%、さらに好ましくは60~96質量%、さらに好ましくは70~95.5質量%、特に好ましくは75~95質量%である。上記含有割合が40質量%以上であると、プリント配線板に対する接着性により優れる。上記含有割合が98質量%以下であると、導電性粒子を充分に含有させることができる。
【0049】
上記導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、金属繊維、カーボンフィラー、カーボンナノチューブなどが挙げられる。上記導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0050】
上記金属粒子および上記金属被覆樹脂粒子の被覆部を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛などが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0051】
上記金属粒子としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。上記金属粒子は、電解法、アトマイズ法、還元法などにより作製することができる。
【0052】
上記金属粒子としては、中でも、銀粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。導電性に優れ、金属粒子の酸化および凝集を抑制し、且つ金属粒子のコストを下げることができる観点から、特に、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。
【0053】
上記導電性粒子の形状としては、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。
【0054】
上記導電性粒子のメディアン径(D50)は、1~50μmであることが好ましく、より好ましくは3~40μmである。上記メディアン径が1μm以上であると、導電性粒子の分散性が良好で凝集が抑制でき、また酸化されにくい。上記平均粒径が50μm以下であると、導電性が良好となる。上記メディアン径は、体積基準の粒度分布より測定することができる。
【0055】
上記導電性接着剤層における導電性粒子の含有割合は、特に限定されないが、導電性接着剤層の総量100質量%に対して、2~80質量%が好ましく、より好ましくは5~60質量%、さらに好ましくは10~40質量%である。上記含有割合が2質量%以上であると、導電性がより良好となる。上記含有割合が80質量%以下であると、バインダー成分を充分に含有させることができ、プリント配線板に対する密着性がより良好となる。
【0056】
上記導電性接着剤層は、必要に応じて等方導電性または異方導電性を有する層とすることができる。上記導電性接着剤層が異方導電性を有する場合、上記電磁波シールドフィルムは上記電磁波シールド層を有する構成(例えば[保護層/電磁波シールド層/導電性接着剤層])であることが好ましい。上記導電性接着剤層が等方導電性を有する場合、上記電磁波シールドフィルムは上記電磁波シールド層を有しない構成(例えば[保護層/導電性接着剤層])であってもよい。
【0057】
上記導電性接着剤層は、本開示の効果を損なわない範囲内において、上述の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の接着剤層に含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、硬化促進剤、可塑剤、難燃剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ブロッキング防止剤などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0058】
上記導電性接着剤層の厚さは、1~40μmであることが好ましく、より好ましくは5~30μmである。上記厚さが1μm以上であると、被着体に対する密着強度がより良好となる。上記厚さが40μm以下であると、コストを抑えることができ、また上記導電性接着剤層を備えた製品を薄く設計することができる。なお、加熱等により導電性接着剤層を構成する接着剤成分(バインダー成分)が流動して被着体に形成された開口部に侵入した場合などにおける導電性接着剤層の厚さは、上記開口部に侵入していない領域における接着剤層の厚さである。
【0059】
上記電磁波シールドフィルムは、保護層側および/または導電性接着剤層側にセパレータ(剥離フィルム)を備えていてもよい。セパレータは、上記電磁波シールドフィルムから剥離可能なように積層される。セパレータは、保護層や導電性接着剤層を被覆して保護するための要素であり、電磁波シールドフィルムを使用する際には剥がされる。
【0060】
上記セパレータとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、フッ素系剥離剤や長鎖アルキルアクリレート系剥離剤等の剥離剤により表面コートされたプラスチックフィルムや紙類などが挙げられる。
【0061】
上記セパレータの厚さは、10~200μmであることが好ましく、より好ましくは15~150μmである。上記厚さが10μm以上であると、保護性能により優れる。上記厚さが200μm以下であると、使用時にセパレータを剥離しやすい。
【0062】
上記電磁波シールドフィルムは、さらに、保護層と電磁波シールド層の間に、アンカーコート層が形成されていてもよい。このような構成を有する場合、電磁波シールド層と保護層の接着性がより良好となる。
【0063】
上記アンカーコート層を形成する材料としては、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂をシェルとしアクリル系樹脂をコアとするコア・シェル型複合樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素ホルムアルデヒド系樹脂、ポリイソシアネートにフェノール等のブロック化剤を反応させて得られたブロックイソシアネート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。上記材料は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0064】
上記電磁波シールドフィルムの保護層側の明度L*は、24以下であることが好ましい。上記明度L*はL*a*b*表色系で規定される明度である。上記明度L*は、上記保護層が最表面である上記電磁波シールドフィルムについて保護層側から測定される値であり、セパレータを有する場合はセパレータを剥離して測定される。なお、上記保護層および上記導電性接着剤層から構成される積層構造において、保護層側から測定される明度L*が上記範囲内であることが特に好ましい。上記明度L*が24以下であると、黒色度が高く隠蔽性により優れる。上記明度L*は、JIS Z8722(2009)に基づいて測定することができる。
【0065】
上記電磁波シールドフィルムの保護層側の85°光沢度は、25以下であることが好ましく、より好ましくは22以下である。上記85°光沢度が25以下であると、シールドフィルムをプリント配線板に貼り合わせた状態におけるプリント配線板の回路パターンの隠蔽性により優れる。なお、上記保護層および上記導電性接着剤層から構成される積層構造において、保護層側から測定される85°光沢度が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0066】
上記電磁波シールドフィルムの保護層側の60°光沢度は、2.0以下であることが好ましく、より好ましくは1.5以下である。上記60°光沢度が2.0以下であると、シールドフィルムをプリント配線板に貼り合わせた状態において、プリント配線板の美観やシールドフィルムの保護層の表面に印字した場合の印字の視認性により優れる。なお、上記保護層および上記導電性接着剤層から構成される積層構造において、保護層側から測定される60°光沢度が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0067】
上記光沢度は、上記保護層が最表面である上記電磁波シールドフィルムについて保護層側から測定される値であり、セパレータを有する場合はセパレータを剥離して測定される。上記光沢度は、JIS Z8741に準拠した方法により測定することができる。
【0068】
上記電磁波シールドフィルムの保護層側の、波長450nmの光の反射率は、5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0%以下である。上記反射率が5.0%以下であると、黒色度がより高くなる。なお、上記保護層および上記導電性接着剤層から構成される積層構造において、保護層側から測定される上記反射率が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0069】
上記電磁波シールドフィルムの保護層側の、波長550nmの光の反射率は、5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0%以下である。上記反射率が5.0%以下であると、黒色度がより高くなる。なお、上記保護層および上記導電性接着剤層から構成される積層構造において、保護層側から測定される上記反射率が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0070】
上記電磁波シールドフィルムの保護層側の、波長650nmの光の反射率は、5.0%以下であることが好ましく、より好ましくは4.0%以下である。上記反射率が5.0%以下であると、黒色度がより高くなる。なお、上記保護層および上記導電性接着剤層から構成される積層構造において、保護層側から測定される上記反射率が上記範囲内であることが特に好ましい。
【0071】
上記反射率は、上記保護層が最表面である上記電磁波シールドフィルムについて保護層側から測定される値であり、セパレータを有する場合はセパレータを剥離して測定される。上記反射率は、JIS Z8722に準拠した方法により測定することができる。
【0072】
上記電磁波シールドフィルムは、プリント配線板用途であることが好ましく、フレキシブルプリント配線板(FPC)用途であることが特に好ましい。
【0073】
(電磁波シールドフィルムの製造方法)
上記電磁波シールドフィルムの製造方法の一実施形態について説明する。
図1に示す電磁波シールドフィルム1の作製においては、まず、保護層2および電磁波シールド層3の積層体と、導電性接着剤層4とを個別に作製する。その後、個別に作製された積層体と導電性接着剤層4とを貼り合わせる(ラミネート法)。なお、電磁波シールド層3を有しない電磁波シールドフィルムについては、保護層2と導電性接着剤層4とを個別に作製し、その後、保護層2と導電性接着剤層4とを貼り合わせる。
【0074】
保護層2は、例えば、保護層2形成用の樹脂組成物をセパレータなどの転写フィルム上に塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒および/または一部硬化させて形成することができる。上記転写フィルムの上記樹脂組成物を塗布する表面には凹凸形状が形成されている。このように上記保護層を形成することで、保護層表面に、上記凹凸形状に由来する形状が転写される。上記転写フィルム表面の凹凸形状は、サンドブラスト処理、粒子を転写フィルム表面に突出するように転写フィルムを構成する各層に埋め込む方法など、公知乃至慣用の方法により作製することができる。そして、サンドブラスト条件や埋め込む粒子の大きさの調整などを適宜行って、転写フィルム表面に形成する凹凸形状を設計することにより、保護層表面のSal、Sdr等の表面パラメータを調整することができる。その後、上記転写フィルムは、上記電磁波シールドフィルムにおいてセパレータとして使用してもよい。
【0075】
上記転写フィルムの凹凸形状を有する表面には、離型処理層が設けられていてもよい。上記離型処理層としては、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により表面処理されて形成された層が挙げられる。なお、離型処理層を有する場合、離型処理層の厚みや形状は、表面の凹凸形状が消失しないように、すなわち転写フィルムが上記凹凸形状を有することとなるように適宜設定される。
【0076】
上記保護層を形成する樹脂組成物は、例えば、上述の保護層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。樹脂組成物の固形分濃度は、形成する保護層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0077】
上記樹脂組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、リップコーターディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、スロットダイコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0078】
次に、転写フィルム上に形成された保護層2表面に、電磁波シールド層3を形成する。電磁波シールド層3の形成は、蒸着法またはスパッタリング法により行うことが好ましい。上記蒸着法およびスパッタリング法は、公知乃至慣用の方法が採用できる。このようにして、保護層2/電磁波シールド層3の積層体が作製される。
【0079】
一方、導電性接着剤層4の作製にあたり、導電性接着剤層4は、例えば、導電性接着剤層4形成用の接着剤組成物を、セパレートフィルムなどの仮基材または基材上に塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒および/または一部硬化させて形成することができる。
【0080】
上記接着剤組成物は、例えば、上述の導電性接着剤層に含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、上述の樹脂組成物が含み得る溶剤として例示されたものが挙げられる。上記接着剤組成物の固形分濃度は、形成する導電性接着剤層の厚さなどに応じて適宜設定される。
【0081】
上記接着剤組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、上述の樹脂組成物の塗布に用いられるコーターとして例示されたものが挙げられる。
【0082】
次いで、それぞれ作製された積層体の露出面(電磁波シールド層3側)と導電性接着剤層4を貼り合わせ、電磁波シールドフィルム1が作製される。
【0083】
電磁波シールドフィルム1は、上記ラミネート法以外の他の態様として、各層を順次積層する方法で製造してもよい(ダイレクトコート法)。例えば、
図1に示す電磁波シールドフィルム1は、上述の積層体の電磁波シールド層3表面に、導電性接着剤層4形成用の接着剤組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて脱溶媒および/または一部硬化させて導電性接着剤層4を形成することで製造することができる。
【0084】
上記電磁波シールドフィルムを用いてシールドプリント配線板を作製することができる。例えば、上記電磁波シールドフィルムの導電性接着剤層をプリント配線板(例えば、カバーレイ)に貼り合わせることで、プリント配線板に上記電磁波シールドフィルムが貼り合わされたシールドプリント配線板を得ることができる。上記シールドプリント配線板において、例えばその後の加熱加圧処理によって、上記導電性接着剤層は熱硬化していてもよい。
【実施例】
【0085】
以下に、実施例に基づいて本開示の電磁波シールドフィルムの一実施形態についてより詳細に説明するが、本開示の電磁波シールドフィルムはこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0086】
実施例1~3および比較例1~3
(保護層の形成)
保護層表面が表1に示す表面パラメータを有する形状となるように作製された転写フィルムの離型処理面に、ポリエステル系樹脂および硬化剤としてのアミノ系樹脂を含む樹脂溶液(固形分:35質量%)を塗布し、加熱により脱溶媒することで、透明保護層を形成した。
【0087】
次に、上記透明保護層表面に、エポキシ樹脂にカーボンブラックを混合した樹脂溶液(固形分:20質量%)を塗布し、加熱により脱溶媒することで、黒色保護層を形成した。このようにして、転写フィルム上に、透明保護層(厚さ1μm)および黒色保護層(厚さ3μm)がこの順に積層された保護層を作製した。
【0088】
(導電性接着剤層の形成)
エポキシ樹脂に銅粉を混合した接着剤組成物(固形分:30質量%)を、表面を離型処理したPETフィルムの離型処理面に塗布し、加熱により脱溶媒することで、導電性接着剤層(厚さ10μm)を形成した。
【0089】
(電磁波シールドフィルムの作製)
得られた上記導電性接着剤層を、上記保護層の黒色保護層面と貼り合わせ、導電性接着剤層/黒色保護層/透明保護層の構成からなる電磁波シールドフィルムを作製した。
【0090】
(評価)
実施例および比較例で得られた各電磁波シールドフィルムについて以下の通り評価した。評価結果は表1に記載した。
【0091】
(1)保護層の表面パラメータ
コンフォーカル顕微鏡(商品名「OPTELICS HYBRID」、Lasertec社製、対物レンズ100倍)を用い、ISO25178に準拠して、電磁波シールドフィルムから転写フィルムを剥離し、露出した透明保護層表面の任意の5か所に形成された凹凸形状について、算術平均高さSa、最大山高さSp、最大谷深さSv、最大高さSz、最小自己相関長さSal、二乗平均平方根傾斜Sdq、および界面の展開面積比Sdrを測定した。なお、Sフィルタのカットオフ波長は0.0025mm、Lフィルタのカットオフ波長は0.8mmとした。
【0092】
(2)光沢度
携帯型光沢計(商品名「ガードナー・マイクロ-グロス」、BYK社製)を用いて、電磁波シールドフィルムから転写フィルムを剥離し、露出した透明保護層表面に形成された凹凸形状おける60°光沢度および85°光沢度を測定した。
【0093】
(3)反射率
分光測色計(商品名「CM-26d」、コニカミノルタ株式会社製)を用いて、JIS Z8722(条件c)に準拠して、電磁波シールドフィルムから転写フィルムを剥離し、露出した透明保護層表面について、波長450nm、550nm、および650nmのそれぞれの光の反射率を測定した。
【0094】
(4)明度L*
分光測色計(商品名「Ci64UV」、X-rite社製)を用いて、電磁波シールドフィルムから転写フィルムを剥離し、露出した透明保護層表面について、明度L*を測定した。
【0095】
【0096】
表1から分かるように、実施例の電磁波シールドフィルムは、Sal、Sdr、および[Sdr/Sal]のうちの少なくとも1つが特定の範囲内ではない電磁波シールドフィルム(比較例1~3)に対して、明度が低く、黒色度に優れていた。したがって、本実施例に基づき、黒色層の組成に関わらず、特定の表面形状を有する保護層を備えることにより黒色度が向上することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の電磁波シールドフィルムは携帯機器や画像表示装置に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 電磁波シールドフィルム
2 保護層
2a 保護層表面
21 黒色保護層
22 透明保護層
23 黒色保護層
3 電磁波シールド層
4 導電性接着剤層