(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】気密端子
(51)【国際特許分類】
H01R 9/16 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H01R9/16 101
(21)【出願番号】P 2023531887
(86)(22)【出願日】2022-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2022025224
(87)【国際公開番号】W WO2023276862
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2021106729
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川端 裕貴
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-299132(JP,A)
【文献】特開昭59-141179(JP,A)
【文献】特開2019-149304(JP,A)
【文献】特開2013-193935(JP,A)
【文献】特開2017-022334(JP,A)
【文献】特開平06-068921(JP,A)
【文献】中国実用新案第206098773(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R9/00
H01R9/15-9/28
C04B37/00-37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導通ピンと、
高圧側の第1主面および低圧側の第2主面に開口して、前記導通ピンを挿入するための貫通孔を備えてなる、円柱状の絶縁部材と、
該絶縁部材を囲繞する金属からなる環状部材と、
前記第1主面または該第1主面から延出する凸状部の凸面に前記導通ピンを固定する第1ろう付け部と、を備えてなる気密端子であって、
前記環状部材は、
環状部と、
該環状部の低圧側で前記絶縁部材を支持する支持部と、を備え、
前記支持部の支持面と、前記第2主面の外周部とが、第2ろう付け部を介して接合されてな
り、
前記第2主面の外周部は、環状のメタライズ層を備え、
該メタライズ層の表面の内周側は、円周方向に沿って凸部を有する、気密端子。
【請求項2】
前記凸部は、前記円周方向に沿って環状である、請求項
1に記載の気密端子。
【請求項3】
前記メタライズ層の表面は、前記円周方向に沿って溝を有する、請求項
1または2に記載の気密端子。
【請求項4】
導通ピンと、
高圧側の第1主面および低圧側の第2主面に開口して、前記導通ピンを挿入するための貫通孔を備えてなる、円柱状の絶縁部材と、
該絶縁部材を囲繞する金属からなる環状部材と、
前記第1主面または該第1主面から延出する凸状部の凸面に前記導通ピンを固定する第1ろう付け部と、を備えてなる気密端子であって、
前記環状部材は、
環状部と、
該環状部の低圧側で前記絶縁部材を支持する支持部と、を備え、
前記支持部の支持面と、前記第2主面の外周部とが、第2ろう付け部を介して接合されてな
り、
前記第2主面の外周部は、
環状のメタライズ層と、
該メタライズ層上にめっき層と、を備え、
該めっき層の表面の内周側は、円周方向に沿って凸部を有する、気密端子。
【請求項5】
前記凸部は、前記円周方向に沿って環状である、請求項
4に記載の気密端子。
【請求項6】
前記めっき層の表面は、前記円周方向に沿って溝を有する、請求項
4または5に記載の気密端子。
【請求項7】
前記めっき層の表面は、粗さ曲線における切断レベル差(Rδc)の平均値が、5.1μm以下である、請求項
4~6のいずれかに記載の気密端子。
【請求項8】
前記めっき層の表面は、前記切断レベル差(Rδc)の平均値が、内周側よりも外周側の方が大きい、請求項
7に記載の気密端子。
【請求項9】
前記第2ろう付け部は、該第2ろう付け部の露出面に連通しない空隙を内部に有する、請求項1
~8のいずれかに記載の気密端子。
【請求項10】
前記環状部の内周面の一部と、前記絶縁部材の外周面の一部とが、第3ろう付け部を介して接合されてなる、請求項1
~9のいずれかに記載の気密端子。
【請求項11】
前記第3ろう付け部は、該第3ろう付け部の露出面に連通しない空隙を内部に有する、請求項
10に記載の気密端子。
【請求項12】
前記支持部の径方向の幅は、前記絶縁部材の外径の最大値の3%以上10%以下である、請求項1~
11のいずれかに記載の気密端子。
【請求項13】
前記絶縁部材は、前記第2主面の中央部に前記第2主面から低圧側に向かって延びる延出部を有し、
前記第2ろう付け部は、前記延出部に向かって伸びるフィレットを有し、
該フィレットの先端部と、前記延出部の外周面との間に、間隙を有する、請求項1~
12のいずれかに記載の気密端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気密端子に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫、エアコンなどの冷媒コンプレッサ(圧縮機)に用いられる気密端子は、コンプレッサが冷媒を充填した耐圧容器の中に配置されるため、高耐圧、高耐電圧であることが要求されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、円形の天板部、天板部の外周端から下方に向かって延びる筒状部、筒状部の下端から延在したフランジ部および天板部から内方側に向かって延びかつその内部にリード封着孔が形成された小筒状部を備えた金属外環と、金属外環のリード封着孔に封着用ガラスを介して封着されたリードと、金属外環の内面側の封着用ガラスに溶着された絶縁スリーブとからなり、絶縁スリーブが、金属外環の内面側の封着用ガラスに天板部と平行に小筒状部を超えて延在するように溶着された圧縮機用気密端子が提案されている。また、絶縁スリーブはアルミナ、フォルステライトなどのセラミックスからなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示に係る気密端子は、導通ピンと、高圧側の第1主面および低圧側の第2主面に開口して、導通ピンを挿入するための貫通孔を備えてなる、円柱状の絶縁部材と、絶縁部材を囲繞する金属からなる環状部材と、第1主面または第1主面から延出する凸状部の凸面に導通ピンを固定する第1ろう付け部と、を備えてなる。環状部材は、環状部と、環状部の低圧側で絶縁部材を支持する支持部と、を備える。支持部の支持面と、第2主面の外周部とが、第2ろう付け部を介して接合されてなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の限定されない実施形態の気密端子を示す平面図であり、絶縁部材の第2主面から見た図である。
【
図2】
図1に示す気密端子を絶縁部材の第1主面から見た平面図である。
【
図3】
図1および
図2に示す気密端子におけるIII-III断面の断面図である。
【
図4】
図3に示す気密端子における第1~第3ろう付け部の周辺の拡大図である。
【
図5】
図4に示す気密端子における第2、第3ろう付け部の周辺の拡大図である。
【
図6】本開示の限定されない実施形態の気密端子を示す図であって、第2、第3ろう付け部の周辺の断面図であり、
図5に相当する図である。
【
図7】本開示の限定されない実施形態の気密端子を示す平面図であり、
図1に相当する図である。
【
図8】
図7に示す気密端子における第2、第3ろう付け部の周辺の断面図であり、
図5に相当する図である。
【
図9】本開示の限定されない実施形態の圧縮機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
特許文献1のように、金属外環の内側の空間内の絶縁スリーブの体積が大きい場合には、より高い耐圧性が求められる。また、高温に晒されると、封着用ガラスは溶融しやすく、高温に晒されても耐えられる構造にすることが求められている。
【0008】
本開示は、高い耐圧性を維持することができる気密端子および圧縮機を提供する。
【0009】
本開示に係る気密端子は、高い耐圧性を維持することができる。
【0010】
<気密端子>
以下、本開示の限定されない実施形態の気密端子について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下で参照する各図では、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみが簡略化して示される。したがって、気密端子は、参照する各図に示されない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および各部材の寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0011】
気密端子1は、
図1~
図5に示す一例のように、導通ピン2、絶縁部材3、環状部材4および第1ろう付け部5を備えてなる。この気密端子1は、例えば、圧縮機などに用いることができる。以下、気密端子1が圧縮機用である場合を例にとって、気密端子1の各構成要素について順に説明する。
【0012】
導通ピン2は、導電性を有し、気密端子1が取り付けられる耐圧容器の内外に電気信号を入出力させる導電路として機能し得る。導通ピン2の材質としては、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、リン脱酸銅などの銅、チタン、ニッケル、オーステナイト系ステンレス鋼(例えば、SUS304)、Cu-Ni系合金(例えば、キュプロニッケル)、Fe-Co系合金、Fe-Co-C系合金、Fe-Ni系合金、Fe-Ni-Co合金などの良導電性の金属が挙げられ得る。
【0013】
導通ピン2の形状は、円柱状または多角柱状であってもよい。導通ピン2は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。導通ピン2が複数の場合には、導通ピン2の数は、2以上50以下であってもよい。
【0014】
絶縁部材3は、絶縁性を有し、導通ピン2を電気的に絶縁しつつ保持する部材として機能し得る。絶縁部材3の材質としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体などのセラミックス等の電気絶縁材料が挙げられ得る。
【0015】
絶縁部材3の形状は、円柱状である。より具体的には、絶縁部材3の形状は、軸Sに沿って延びる円柱状である。軸Sは、
図3に示す一例のように、絶縁部材3における第1主面31および第2主面32のそれぞれの中心を通る。
【0016】
第1主面31は、高圧側A1の主面である。また、第2主面32は、低圧側A2の主面である。高圧側A1とは、相対的に圧力が高い側のことを意味してもよく、また、低圧側A2とは、相対的に圧力が低い側のことを意味してもよい。気密端子1を用いるとき、高圧側A1の第1主面31は、低圧側A2の第2主面32よりも圧力が高い場所に位置してもよい。例えば、気密端子1を耐圧容器に取り付けた場合には、高圧側A1の第1主面31が、耐圧容器の内部に位置してもよく、また、低圧側A2の第2主面32が、耐圧容器の外部に位置してもよい。
【0017】
絶縁部材3は、第1主面31から延出する凸状部33を備えてもよい。凸状部33は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。凸状部33の数は、導通ピン2の数と同じであってもよい。
【0018】
凸状部33の凸面331(頂面)は、メタライズ層6を備えてもよい。メタライズ層6の厚みは、例えば、10μm以上50μm以下程度に設定されてもよい。メタライズ層6の材質としては、例えば、Mo-Mn合金などが挙げられ得る。
【0019】
絶縁部材3は、導通ピン2を挿入するための貫通孔34を備えてなる。貫通孔34は、第1主面31および第2主面32に開口する。なお、凸状部33がある場合には、貫通孔34は、凸面331に開口してもよい。また、メタライズ層6がある場合には、貫通孔34は、メタライズ層6の表面に開口してもよい。絶縁部材3が、後述する延出部37を有する場合には、貫通孔34は、延出部37における低圧側A2の端面に開口してもよい。
【0020】
貫通孔34は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。貫通孔34の数は、導通ピン2の数と同じであってもよい。貫通孔34が複数の場合には、複数の貫通孔34は、絶縁部材3の円周方向に沿って等間隔に位置してもよい。例えば、貫通孔34が3つの場合には、3つの貫通孔34が、絶縁部材3の軸Sを基準として120°の回転対称となるように位置してもよい。
【0021】
貫通孔34には、導通ピン2が両端を突出させた状態で挿入される。耐圧容器の内部に位置する装置と、耐圧容器の外部に位置する装置とを、貫通孔34から突出する導通ピン2の両端にそれぞれ電気的に接続させると、耐圧容器の内外の装置間に電気信号を伝達させる端子として気密端子1が機能し得る。
【0022】
環状部材4は、気密端子1を耐圧容器に取り付けるための取り付け部位として機能し得る。環状部材4は、絶縁部材3を囲繞する。より具体的には、環状部材4は、絶縁部材3の少なくとも一部を囲繞する。また、環状部材4は、金属からなる。金属としては、例えば、機械構造用炭素鋼、SS400などの一般構造用圧延鋼(冷間圧延鋼)、Fe-Ni-Co合金などが挙げられ得る。
【0023】
第1ろう付け部5は、絶縁部材3の第1主面31または第1主面31から延出する凸状部33の凸面331に導通ピン2を固定する部位である。例えば、
図4に示す一例のように、第1ろう付け部5は、凸面331に導通ピン2を固定してもよい。なお、メタライズ層6がある場合には、第1ろう付け部5は、メタライズ層6の表面に導通ピン2を固定してもよい。
【0024】
また、導通ピン2の外周面が、第1主面31または凸面331に対向する鍔21を備える場合には、第1ろう付け部5は、鍔21を介して第1主面31または凸面331に導通ピン2を固定してもよい。この場合には、導通ピン2の固定性が安定しやすい。なお、鍔21は、導通ピン2の周方向に沿って位置してもよく、また、導通ピン2の周方向に沿って環状であってもよい。
【0025】
第1ろう付け部5は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。第1ろう付け部5の数は、導通ピン2の数と同じであってもよい。第1ろう付け部5が複数の場合には、複数の第1ろう付け部5は、互いに離れて位置する。
【0026】
第1ろう付け部5のろう材としては、例えば、銀ろう(例えば、Bag-8、Bag-8a、Bag-9)などが挙げられ得る。この点は、後述する第2ろう付け部7および第3ろう付け部8においても同じである。
【0027】
ここで、環状部材4は、
図3に示す一例のように、環状部41と、環状部41の低圧側A2で絶縁部材3を支持する支持部42と、を備える。そして、
図4に示す一例のように、支持部42の支持面421と、第2主面32の外周部321とが、第2ろう付け部7を介して接合されてなる。これらの場合には、高圧側A1から低圧側A2に向かって高い圧力がかかっても、支持部42が絶縁部材3を低圧側A2で支持しているので、高い耐圧性を維持することができる。
【0028】
なお、支持部42は、環状部41と一体形成品であってもよい。支持部42の内径は、環状部41の内径よりも小さくてもよい。支持部42の支持面421は、第2主面32の外周部321に対向してもよい。
【0029】
支持面421における少なくとも一部と、外周部321における少なくとも一部とが、第2ろう付け部7を介して接合されていてもよい。絶縁部材3が、第2主面32の外縁を面取りした面取り部35を有する場合には、第2ろう付け部7は、外周部321から面取り部35にかけて位置してもよい。なお、面取り部35の形状は、平面状または曲面状であってもよい。
【0030】
外周部321が、後述するメタライズ層9を備える場合には、支持面421とメタライズ層9とが、第2ろう付け部7を介して接合されてなってもよい。また、外周部321が、メタライズ層9の上に後述するめっき層11を備える場合には、支持面421とめっき層11とが、第2ろう付け部7を介して接合されてなってもよい(
図8参照)。第2ろう付け部7のろう材は、第1ろう付け部5のろう材と同じであってもよく、また、異なってもよい。
【0031】
第2ろう付け部7は、
図5に示す一例のように、第2ろう付け部7の露出面71に連通しない空隙72を内部に有してもよい。この場合には、昇温および降温を繰り返しても、空隙72によって応力を吸収することができるので、第2ろう付け部7にクラックが発生しにくくなる。
【0032】
露出面71は、支持面421と外周部321との間から露出する第2ろう付け部7の表面であってもよい。第2ろう付け部7が、後述するフィレット73を有する場合には、露出面71は、フィレット73の表面であってもよい。空隙72は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。
【0033】
環状部41の内周面411の一部と、絶縁部材3の外周面36の一部とが、第3ろう付け部8を介して接合されてなってもよい。この場合には、絶縁部材3が環状部材4に対して径方向の動きも制約されるため、さらに高い耐圧性を維持することができる。
【0034】
なお、外周面36の一部が、メタライズ層9を備える場合には、内周面411の一部とメタライズ層9とが、第3ろう付け部8を介して接合されてなってもよい。また、外周面36の一部が、メタライズ層9の上にめっき層11を備える場合には、内周面411の一部とめっき層11とが、第3ろう付け部8を介して接合されてなってもよい(
図8参照)。
【0035】
面取り部35がある場合には、第3ろう付け部8は、外周面36の一部から面取り部35にかけて位置してもよい。第3ろう付け部8のろう材は、第1ろう付け部5または第2ろう付け部7のろう材と同じであってもよく、また、異なってもよい。
【0036】
第3ろう付け部8は、
図5に示す一例のように、第2ろう付け部7から離れてもよい。この場合には、昇温および降温を繰り返しても、第2ろう付け部7と第3ろう付け部8との間の空隙Vによって応力を吸収することができる。そのため、第2ろう付け部7および第3ろう付け部8にクラックが発生しにくくなる。なお、第3ろう付け部8の少なくとも一部が、第2ろう付け部7から離れてもよい。例えば、第3ろう付け部8の一部が、第2ろう付け部7に繋がってもよい。
【0037】
第3ろう付け部8は、第3ろう付け部8の露出面81に連通しない空隙82を内部に有してもよい。この場合には、昇温および降温を繰り返しても、空隙82によって応力を吸収することができるので、第3ろう付け部8にクラックが発生しにくくなる。
【0038】
露出面81は、内周面411の一部と、外周面36の一部との間から露出する第3ろう付け部8の表面であってもよい。第3ろう付け部8が、高圧側A1に向かって伸びるフィレット83を有する場合には、露出面81は、フィレット83の表面であってもよい。空隙82は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。
【0039】
図3に示す一例のように、支持部42の径方向の幅D1は、絶縁部材3の外径D2の最大値の3%以上10%以下であってもよい。幅D1が外径D2の最大値の3%以上である場合には、支持面421の面積が増えるので、さらに高い耐圧性を維持することができる。また、幅D1が外径D2の最大値の10%以下である場合には、導通ピン2の外周面と支持部42の内周面との沿面距離を長くすることができるので、これらの面間で短絡が生じにくくなる。
【0040】
なお、幅D1は、特定の値に限定されない。幅D1は、例えば、1mm以上2.5mm以下程度に設定されてもよい。また、外径D2の最大値も特定の値に限定されない。外径D2の最大値は、例えば、20mm以上30mm以下程度に設定されてもよい。
【0041】
絶縁部材3は、
図3に示す一例のように、第2主面32の中央部に第2主面32から低圧側A2に向かって延びる延出部37を有してもよい。また、第2ろう付け部7は、
図5に示す一例のように、延出部37に向かって伸びるフィレット73を有してもよい。そして、
図1に示す一例のように、フィレット73の先端部73aと、延出部37の外周面371との間に、間隙G(スペース)を有してもよい。言い換えれば、フィレット73の先端部73aが、延出部37の外周面371から離れてもよい。
【0042】
これらの場合には、フィレット73があることによって、支持部42と絶縁部材3との接合強度が向上する。また、絶縁部材3の低圧側A2の延出部37がある場合には、間隙Gがあることによって、絶縁部材3の低圧側A2が拘束されないため、昇温および降温を繰り返しても、応力が絶縁部材3に残留しにくく、クラックが絶縁部材3に生じにくくなる。
【0043】
なお、間隙Gは、特定の値に限定されない。間隙Gは、例えば、0.5mm以上1.5mm以下程度に設定されてもよい。また、フィレット73の先端部73aは、支持部42よりも内側(軸Sの側)に位置してもよい。
【0044】
延出部37の形状は、円柱状であってもよい。例えば、延出部37の形状が、
図3に示す一例のように、円錐台状である場合には、応力集中が生じにくく、延出部37が破損しにくい。また、延出部37は、軸Sに沿って延びてもよい。なお、絶縁部材3の軸S方向における長さLの最大値は、例えば、14.5mm以上24.5mm以下程度に設定されてもよい。
【0045】
第2主面32の外周部321は、
図1及び
図5に示す一例のように、環状のメタライズ層9を備えてもよい。メタライズ層9の表面の内周側は、円周方向に沿って凸部91を有してもよい。これらの場合には、気密性を上げるために、第2ろう付け部7を形成する際のろう材の量を増やしたとしても、ろう材が内側に流れるのを低減し、ろう材のフィレット73を良好に形成できる。また、延出部37がある場合には、フィレット73が延出部37に到達するおそれが低くなり、昇温および降温を繰り返しても、応力が絶縁部材3に残留しにくく、クラックが絶縁部材3に生じにくくなる。
【0046】
メタライズ層9の内周側の端部9aは、第2ろう付け部7よりも内側に位置してもよい。また、フィレット73がある場合には、端部9aは、フィレット73よりも内側に位置してもよい。延出部37がある場合には、端部9aは、延出部37から離れてもよい。
【0047】
凸部91は、第2ろう付け部7よりも内側に位置してもよい。また、フィレット73がある場合には、凸部91は、フィレット73よりも内側に位置してもよい。凸部91は、メタライズ層9におけるフィレット73から露出した部分のうち、径方向における幅の中央9bよりも端部9aに近い領域に位置してもよい。
【0048】
なお、面取り部35がある場合には、メタライズ層9は、外周部321から面取り部35にかけて位置してもよい。また、メタライズ層9は、外周部321から外周面36の一部にかけて位置してもよい。
【0049】
凸部91は、
図1に示す一例のように、円周方向に沿って環状であってもよい。この場合には、気密性を上げるために、第2ろう付け部7を形成する際のろう材の量を増やしたとしても、ろう材が内側に流れるのを低減し、ろう材のフィレット73を良好に形成できる。また、延出部37がある場合には、フィレット73が延出部37に到達するおそれがさらに低くなり、昇温および降温を繰り返しても、応力が絶縁部材3に残留しにくく、クラックが絶縁部材3に生じにくくなる。
【0050】
メタライズ層9の表面は、円周方向に沿って溝92を有してもよい。この場合には、昇温および降温を繰り返しても、応力がメタライズ層9の表面に残留しにくく、クラックがメタライズ層9に生じにくくなる。
【0051】
溝92は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。溝92が複数の場合には、溝92の数は、2以上5以下であってもよい。また、溝92は、第2ろう付け部7よりも内側に位置してもよい。フィレット73がある場合には、溝92は、フィレット73よりも内側に位置してもよい。溝92は、凸部91よりも外側に位置してもよい。溝92は、円周方向に沿って環状であってもよい。
【0052】
メタライズ層9の厚みは、例えば、10μm以上50μm以下程度に設定されてもよい。メタライズ層9の材質としては、例えば、Mo-Mn合金などが挙げられ得る。メタライズ層9の材質は、凸状部33の凸面331が備えるメタライズ層6の材質と同じであってもよく、また、異なってもよい。なお、凸面331が備えるメタライズ層6を第1メタライズ層6、外周部321が備えるメタライズ層9を第2メタライズ層9と言い換えてもよい。
【0053】
環状部材4は、
図3に示す一例のように、高圧側A1に向かうにしたがって外径が大きくなる鍔部43を備えてもよい。気密端子1は、鍔部43を介して耐圧容器に取り付けられてもよい。
【0054】
次に、本開示の限定されない実施形態の気密端子1A、1Bについて、図面を用いて説明する。以下では、気密端子1A、1Bにおける気密端子1との相違点について主に説明し、気密端子1と同じ構成を有する点については詳細な説明を省略する場合がある。
【0055】
気密端子1Aでは、
図6に示す一例のように、第3ろう付け部8が、第2ろう付け部7に繋がってもよい。言い換えれば、第2ろう付け部7と第3ろう付け部8との間の空隙Vが存在しなくてもよい。この場合には、環状部材4に対する絶縁部材3の動きがより制約されるため、さらに高い耐圧性を維持することができる。
【0056】
気密端子1Bでは、
図7および
図8に示す一例のように、第2主面32の外周部321が、環状のメタライズ層9と、メタライズ層9の上にめっき層11と、を備えてもよい。めっき層11の表面の内周側は、円周方向に沿って凸部111を有してもよい。
【0057】
これらの場合には、気密性を上げるために、第2ろう付け部7を形成する際のろう材の量を増やしたとしても、ろう材が内側に流れるのを低減し、ろう材のフィレット73を良好に形成できる。また、延出部37がある場合には、フィレット73が延出部37に到達するおそれが低くなり、昇温および降温を繰り返しても、応力が絶縁部材3に残留しにくく、クラックが絶縁部材3に生じにくくなる。
【0058】
めっき層11の内周側の端部11aは、第2ろう付け部7よりも内側に位置してもよい。また、フィレット73がある場合には、端部11aは、フィレット73よりも内側に位置してもよい。延出部37がある場合には、端部11aは、延出部37から離れてもよい。
【0059】
凸部111は、第2ろう付け部7よりも内側に位置してもよい。また、フィレット73がある場合には、凸部111は、フィレット73よりも内側に位置してもよい。凸部111は、めっき層11におけるフィレット73から露出した部分のうち、径方向における幅の中央11bよりも端部11aに近い領域に位置してもよい。
【0060】
なお、面取り部35がある場合には、めっき層11は、外周部321から面取り部35にかけて位置してもよい。また、めっき層11は、外周部321から外周面36の一部にかけて位置してもよい。
【0061】
めっき層11の厚みは、例えば、2μm以上6μm以下程度に設定されてもよい。めっき層11の材質としては、例えば、ニッケルなどが挙げられ得る。
【0062】
凸部111は、
図7に示す一例のように、円周方向に沿って環状であってもよい。この場合には、気密性を上げるために、第2ろう付け部7を形成する際のろう材の量を増やしたとしても、ろう材が内側に流れるのを低減し、ろう材のフィレット73を良好に形成できる。また、延出部37がある場合には、フィレット73が延出部37に到達するおそれがさらに低くなり、昇温および降温を繰り返しても、応力が絶縁部材3に残留しにくく、クラックが絶縁部材3に生じにくくなる。
【0063】
めっき層11の表面は、円周方向に沿って溝112を有してもよい。この場合には、昇温および降温を繰り返しても、応力がメタライズ層9の表面に残留しにくく、クラックがメタライズ層9やめっき層11に生じにくくなる。
【0064】
溝112は、1つであってもよく、また、複数であってもよい。溝112が複数の場合には、溝112の数は、2以上5以下であってもよい。また、溝112は、第2ろう付け部7よりも内側に位置してもよい。フィレット73がある場合には、溝112は、フィレット73よりも内側に位置してもよい。溝112は、凸部111よりも外側に位置してもよい。溝112は、円周方向に沿って環状であってもよい。
【0065】
めっき層11の表面は、粗さ曲線における切断レベル差(Rδc)の平均値が、5.1μm以下であってもよい。この場合には、メタライズ層9がめっき層11から露出しにくくなり、長期間に亘って用いても、メタライズ層9の酸化による劣化を低減することができる。
【0066】
なお、切断レベル差(Rδc)の平均値は、1.2μm以上であってもよい。切断レベル差(Rδc)の平均値は、めっき層11におけるフィレット73から露出した部分で評価してもよい。
【0067】
めっき層11の表面は、切断レベル差(Rδc)の平均値が、内周側よりも外周側の方が大きくてもよい。外周側は、フィレット73のめっき層11に対するアンカー効果が高くなる表面積が増えるので、接合強度が高くなる。内周側は、浮遊粒子がめっき層11の表面に固着しにくくなり、めっき層11の劣化が抑制される。
【0068】
なお、切断レベル差(Rδc)の平均値を評価する際の内周側は、めっき層11におけるフィレット73から露出した部分のうち、径方向における幅の中央11bよりも、めっき層11の内周側の端部11aに近い側であってもよく、また、外周側は、中央11bよりも端部11aから遠い側であってもよい。
【0069】
切断レベル差(Rδc)の平均値は、粗さ曲線における25%の負荷長さ率での切断レベルと、粗さ曲線における75%の負荷長さ率での切断レベルとの差を表してもよい。切断レベル差(Rδc)の平均値は、例えば、JIS B 0601:2001に準拠して表面粗さ計測を行い、平均値を算出して得た値であってもよい。測定条件は、例えば、以下のように設定してもよい。
測定機:形状解析レーザ顕微鏡((株)キーエンス製の「VK-X1100」またはその後継機種)
測定方法:表面粗さ計測
照明:同軸落射照明
カットオフ値λs:なし
カットオフ値λc:0.08mm
カットオフ値λf:なし
終端効果の補正:あり
測定倍率:120倍(5×24)
測定箇所:120°毎3箇所
測定範囲:2792μm×2093μm/箇所
計測の対象とする線1本当たりの長さ:2644μm
計測の対象とする線の本線:4本/箇所
計測の対象とする線の方向:円周方向
【0070】
<圧縮機>
次に、本開示の限定されない実施形態の圧縮機について、上記の気密端子1を備える場合を例に挙げて、図面を用いて説明する。
【0071】
図9に示す一例のように、圧縮機100は、ケーシング101(耐圧容器)および気密端子1を備えてなる。ケーシング101は、冷媒を圧縮するためのモータ102を収納する。気密端子1は、ケーシング101に取り付けられる。外部電源103からの電力が、導通ピン2を介してモータ102に供給される。
【0072】
すなわち、圧縮機100は、冷媒を圧縮するためのモータ102を収納したケーシング101と、ケーシング101に取り付けられた気密端子1と、を備えてなり、外部電源103からの電力を導通ピン2を介してモータ102に供給する。これらの場合には、圧縮機100が、高い耐圧性を維持することができる気密端子1を備えるため、長期間に亘って安定した運転が可能となる。
【0073】
気密端子1は、例えば、溶接によりケーシング101に取り付けられてもよい。モータ102は、例えば、3相モータであってもよい。外部電源103は、例えば、3相交流電源であってもよい。モータ102および外部電源103は、配線104を介して導通ピン2に電気的に接続されてもよい。
【0074】
圧縮機100は、圧縮機構105、吸い込み管106および吐き出し管107を備えてもよい。圧縮機構105は、ケーシング101に収納される。吸い込み管106および吐き出し管107は、ケーシング101に取り付けられる。吸い込み管106および吐き出し管107は、例えば、溶接によりケーシング101に取り付けられてもよい。
【0075】
圧縮機構105は、モータ102によって駆動されるとともに、冷媒を圧縮する。吸い込み管106は、冷媒を圧縮機構105へ送る。吐き出し管107は、圧縮機構105によって圧縮された冷媒を吐出して冷媒循環系に送り出す。
【0076】
圧縮機100が、上記した圧縮機構105、吸い込み管106および吐き出し管107を備える場合には、気密端子1を介して外部電源103からの電力がモータ102に供給され、モータ102の駆動によって圧縮機構105が冷媒を圧縮することが可能となる。また、冷媒は、吸い込み管106から圧縮機構105へと流れ込み、圧縮された冷媒が吐き出し管107から流れ出して冷媒循環系へ送られる。
【0077】
なお、
図9に示す一例においては、圧縮機100が気密端子1を備えてなるが、このような形態に限定されない。例えば、圧縮機100は、気密端子1Aまたは気密端子1Bを備えてなってもよい。
【0078】
以上、本開示に係る実施形態について例示したが、本開示は上記の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることはいうまでもない。
【0079】
例えば、上記の実施形態では、気密端子1が圧縮機用である場合を例にとって説明したが、気密端子1は、他の用途にも適用可能である。他の用途としては、例えば、センサユニット、アルミニウム電解コンデンサ、リレー用接点装置、医療機器などが挙げられ得る。
【符号の説明】
【0080】
1・・・気密端子
2・・・導通ピン
21・・・鍔
3・・・絶縁部材
31・・・第1主面
32・・・第2主面
321・・・外周部
33・・・凸状部
331・・・凸面
34・・・貫通孔
35・・・面取り部
36・・・外周面
37・・・延出部
371・・・外周面
4・・・環状部材
41・・・環状部
411・・・内周面
42・・・支持部
421・・・支持面
43・・・鍔部
5・・・第1ろう付け部
6・・・メタライズ層
7・・・第2ろう付け部
71・・・露出面
72・・・空隙
73・・・フィレット
73a・・・先端部
8・・・第3ろう付け部
81・・・露出面
82・・・空隙
83・・・フィレット
9・・・メタライズ層
9a・・・端部
9b・・・中央
91・・・凸部
92・・・溝
11・・・めっき層
11a・・・端部
11b・・・中央
111・・・凸部
112・・・溝
100・・・圧縮機
101・・・ケーシング
102・・・モータ
103・・・外部電源
104・・・配線
105・・・圧縮機構
106・・・吸い込み管
107・・・吐き出し管
S・・・軸
A1・・高圧側
A2・・低圧側
V・・・空隙
G・・・間隙