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  • 特許-自動走行中の車両の作動方法 図1
  • 特許-自動走行中の車両の作動方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】自動走行中の車両の作動方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023534215
(86)(22)【出願日】2021-10-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 EP2021078189
(87)【国際公開番号】W WO2022122223
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-08-01
(31)【優先権主張番号】102020007444.8
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ミーレンツ,ホルガー
【審査官】西畑 智道
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189776(JP,A)
【文献】特開2019-119310(JP,A)
【文献】特開2020-021315(JP,A)
【文献】特開2008-234489(JP,A)
【文献】特開2020-147092(JP,A)
【文献】特表2016-536210(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動走行中の車両の作動方法(1)において、
前記車両が、
前記車両(1)の前方に渋滞が検知された場合、前記車両(1)の車線(F1)上にいる後続車両(2)の非常点滅表示灯(2.1)が点滅しているか否かを判定し、
前記後続車両(2)の前記非常点滅表示灯(2.1)が点滅している場合、後面衝突の危険性は、前記非常点滅表示灯(2.1)が点滅していない場合よりも低いと評価し、
前記後続車両(2)の前記非常点滅表示灯(2.1)が点滅している場合、前記車両(1)は先行車両(3)との車間距離を拡大する
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
先行車両(3)の制動灯が点灯している、および/または非常点滅表示灯(3.1)が点滅していることによって前記渋滞が検出される
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記後続車両(2)の前記非常点滅表示灯(2.1)が点滅していない場合、前記車両(1)は、先行車両(3)との車間距離を短縮する
ことを特徴とする、請求項1または請求項記載の方法。
【請求項4】
前記先行車両(3)との前記車間距離は、時間的ギャップとして定義されている
ことを特徴とする、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記車両(1)の乗員には、前記渋滞に関して視覚的および/または聴覚的に情報が伝達される
ことを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記車両(1)の乗員には、前記車両(1)が急ブレーキ操作を行う可能性について視覚的および/または聴覚的に情報が伝達される
ことを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記車両(1)の前方に前記渋滞が検知された場合、前記車両(1)の非常点滅表示灯が点滅する
ことを特徴とする、請求項1~請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動走行中の車両の作動方法に関する。
【0002】
下記特許文献1から、車両の走行支援システムが周知である。この走行支援システムには、先行車両に関する情報を検出するため、先行車両の情報収集装置が含まれている。さらに、この走行支援システムには、後続車両に関する情報を検出するため、後続車両の情報収集装置が含まれている。これに加え、前面衝突の危険性に対する計算装置が設けられ、これにより、先行車両と当該車両との間の相対速度の少なくとも1つのパラメータを考慮して、先行車両との前面衝突の危険性を計算するようになっている。これに加え、この走行支援システムには後面衝突の危険性に対する計算装置が含まれており、これにより、先行車両に対する前面衝突の危険性における相対速度のパラメータの重みよりも大きな重みを持つ、後続車両と当該車両との間の相対速度の少なくとも1つのパラメータを考慮して、後続車両による後面衝突の危険性を計算するようになっている。この車両支援システムは、さらに、先行車両に対する前面衝突の危険性および後続車両による後面衝突の危険性に依存して走行制御を実施するための制御ユニットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】独国特許出願公開第10 2009 017 431 A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、車両の自動走行の作動方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明に基づき、請求項1に示されている特徴を有する方法によって解決される。
【0006】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
自動走行中の車両の作動方法では、本発明に基づき、当該車両の前方に渋滞が検知された場合、当該車両の車線上にいる後続車両の非常点滅表示灯が点滅しているか否かを判定し、後続車両の非常点滅表示灯が点滅している場合、後面衝突の危険性は、非常点滅表示灯が点滅していない場合よりも低いと評価する。
【0008】
本方法は、自動走行中に渋滞の最後尾に向かって進む車両にとって最適な解決方法となり、これにより、交通安全性が向上し、衝突の危険を推測することができる。ここでは、非常点滅表示灯が点滅していることによって検知される後続車両の減速準備を利用することにより、渋滞最後尾を形成する先行車両に対する衝突の危険性が軽減される。
【0009】
車両は前方の渋滞を検知することから、それに応じて車両の減速を予測的に開始できるため、車両乗員の快適性を向上させること可能である。
【0010】
本発明の実施形態では、先行車両の制動灯が点灯している、および/または非常点滅表示灯が点滅していることによって渋滞が検出されることにより、極めて高い信頼性で渋滞を検知できるため、次の段階で後続車両が非常点滅表示灯を点滅しているかどうかを確認し、それに応じて衝突の危険性を評価する。代替または追加として、渋滞、特に渋滞最後尾は、その他の適切な情報、例えば相対速度および/または車間距離変化によっても検出することができる。
【0011】
後続車両の非常点滅表示灯が点滅している場合、本方法の発展形態では、先行車両までの車間距離が拡大されるため、当該車両と先行車両との前面衝突の危険性をほぼ排除することができる。
【0012】
さらに、本方法では、後続車両の非常点滅表示灯が点滅していない場合、車両は先行車両との車間距離を短縮して、後続車両による後面衝突時に車両の加速をできる限り少なくし、作用する衝突力を変形によって吸収するようになっている。
【0013】
好ましくは、先行車両との車間距離は、時間的ギャップとして定義される。この場合、時間的ギャップとは、互いに連続する2台の車両が特定の箇所を通過する時間間隔であると理解できる。特に、時間的ギャップは、先行車両までの空いている区間を走行するために車両が必要とする時間間隔に相当する。従って、先行車両3までの車間距離は、時間的距離である。
【0014】
別の実施形態では、車両の乗員には、渋滞に関して視覚的および/または聴覚的に情報が伝達されるため、乗員は、場合によっては危険な状況が生じること、および/または移動に時間的遅れが生じる可能性もあることについて知ることになる。危険な状況に関連して、また現在の状況に関して乗員に情報が伝達されることにより、乗員は正しい姿勢を取ることができるため、後面衝突および/または前面衝突が発生した時に、乗員の安全手段の拘束効果を事前に整えておくことができる。
【0015】
さらに、もう1つの考えられる発展形態では、車両が急ブレーキ操作を行う可能性について視覚的および/または聴覚的に情報が乗員に伝達されることにより、乗員は、乗員の安全手段に関して最適な着座姿勢を取ることができる。
【0016】
好ましくは、渋滞が検知された場合、車両の非常点滅表示灯が点滅する。これにより、車両が急ブレーキ操作を行う可能性のあることが後続の交通に伝えられる。
【0017】
以下に、本発明の実施形態を、図を用いて詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】渋滞最後尾に向かって進む車両と、その後続車両の模式図である。
図2】前方の渋滞に対する自動走行中の車両の作動方法の手順を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
互いに対応する部分は、すべての図において同じ符号が付けられている。
【0020】
図1は同一の方向に通る2本の車線F1、F2を有する道路区間Fを示し、車両1は左車線F1の渋滞最後尾に向かって進み、車両1の後ろには後続車両2が同じ車線F1上に存在している。
【0021】
渋滞最後尾は、2台の先行車両3によって形成され、渋滞最後尾を示すために、それぞれの車両は非常点滅表示灯(ハザードランプ)3.1を点滅させている。
【0022】
渋滞最後尾に向かって進む車両1は自動走行で走行しており、運転は車両1自身によって完全に実行される。例えば、車両1は、いわゆるロボタクシーまたはいわゆるロボトラックである。
【0023】
自動走行する車両1が、渋滞最後尾に向かって進む手動運転の車両と同じように反応することをほぼ確実なものにし、後続の車両1および先行車両3に対して存在する衝突の危険性または少なくとも1つの衝突強度を少なくとも軽減するため、以下に、図2に示されている手順を使って説明される方法が提供される。
【0024】
図1に示されている、危険な状況とも呼ぶことのできるそのような交通状況では、後続車両2による後面衝突と、車両1と車線F1の先行車両3との前面衝突の両方を回避することが目標となる。
【0025】
このことは、同時に後続車両2による後面衝突を回避する必要がある場合、先行車両3に対する車両1の目標車間距離を比較的小さくするという結果になり得る。
【0026】
本方法では、第1のステップS1において、車両1の周辺センサーによって検知されたセンサー信号に基づいて、この前方の渋滞が検知されるようになっている。
【0027】
特に、周辺センサーは、車両1の走行中に信号を連続的に検知する少なくとも1つのレーダーセンサーを有しており、これらの信号に基づいて、例えば先行車両3ならびに道路形状のパラメータが決定される。
【0028】
これに加え、この周辺センサーは少なくとも1つのライダーセンサーも有しており、このセンサーも同様に少なくとも先行車両3および道路形状のパラメータを検出するために設けられている。
【0029】
さらに、周辺センサーは、車両1の走行中に連続的に画像信号を記録する少なくとも1つのカメラを備え、これらの画像信号を評価することにより、先行車両3および道路形状のパラメータが決定され、さらに、これらの画像信号に基づいて、2台の先行車両3がそれぞれの非常点滅表示灯3.1を作動させたことが判定される。
【0030】
周辺センサーの少なくとも1つの適切なセンサーを用いて、および/または適切なカメラを用いて相応に検知された信号および/または画像データに基づき、車両1の後ろに後続車両2が存在していることが判定される。
【0031】
センサーならびにカメラが検知した信号および画像信号は、第2のステップS2において融合(マージ)され、この融合によって、車両1の後ろに非常点滅表示灯2.1を点滅させている後続車両2が存在し、車両1の前には非常点滅表示灯3.1を点滅させている先行車両3が存在していることが判定される。
【0032】
さらに、この融合とデジタルナビゲーションマップにより利用可能な道路区間Fの道路トポロジーの既存データとに基づいて、車両1周辺の道路形状が決定される。
【0033】
第3のステップS3では、車両1~3と道路区間Fとの間の関係を考慮した周辺モデルを作成する。
【0034】
第4のステップS4は計画および決定に関連するものであり、先行車両3および特に点滅している非常点滅表示灯3.1に基づいて、車両1が向かっている渋滞状況を決定する。
【0035】
さらに、第4のステップS4に関して、車両1の乗員には、渋滞状況の存在および急ブレーキ操作の可能性について情報が伝達されるようになっている。これにより、乗員は、そのようなブレーキ操作に対して準備し、必要に応じて正しい姿勢で座ることにより、乗員の安全手段の拘束効果を最適化することができる。
【0036】
さらに、車両1の非常点滅表示灯の点滅が計画され、後続の交通に渋滞状況、特に渋滞最後尾に対して注意を喚起させる。
【0037】
また、後続車両2がその非常点滅表示灯2.1を点滅しているかどうかの判定も行われることになっているため、後続車両2の車両使用者に前方の渋滞に関して情報が伝達されている蓋然性は比較的高くなる。さらに、後続車両2が非常点滅表示灯2.1を点滅させた場合、後続車両2と車両1の追突事故の危険性がないように、後続車両2が現在の走行速度を大幅に減速させるという蓋然性も、非常点滅表示灯2.1が点滅している場合は比較的高くなる。
【0038】
第5のステップS5では、車両1の乗員に、第4のステップS4で計画されたように、聴覚的および/または視覚的信号の出力によって、車両1が現在の走行速度を変更すること、特に急激に減速することについて情報が伝達される。
【0039】
これに先だって、車両1は、2台の先行車両3によって形成されている渋滞最後尾に接近するための減速軌道を算出し、後続車両2は、車両1に対する後面衝突の危険がないように、車両1の大幅な減速に対して反応することが想定される。
【0040】
さらに、車両1は非常点滅表示灯(詳しく図示されていない)を点滅させて、現在の走行速度の変更を開始する。これに加え、開始されるブレーキ操作は、いわゆる快適なブレーキより強くなる可能性のあることが乗員に伝達される。
【0041】
すなわち、後続車両2の非常点滅表示灯2.1が点滅していることに基づいて、この後続車両がブレーキを準備していることが確認されると、車両1は、同じ車線F1上の先行車両3との目標車間距離を拡大することにより、先行車両3との衝突の危険を減らすことができる。つまり、後続車両2のブレーキ準備は、先行車両3との衝突の危険性を減らすために利用される。このとき、目標車間距離とは、車両2が先行車両3に対して維持しなければならない所定距離である。目標車間距離の維持は、例えば、車両1と先行車両3との車間距離を目標車間距離に制御する車間距離維持システムによって実現される。有利には、目標車間距離は、所定の時間的ギャップとして定義される。この場合、時間的ギャップとは、車両1と先行車両3との間の現在空白になっている区間を走行するために車両1が必要とする時間間隔であると理解することができる。すなわち、後続車両2の非常点滅表示灯2.1が点滅している場合または点滅していない場合、先行車両3までの時間的ギャップは増加または減少する。
図1
図2