(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】昇降機用シーブ
(51)【国際特許分類】
B66B 11/08 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B66B11/08 M
(21)【出願番号】P 2023539390
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2021028608
(87)【国際公開番号】W WO2023012865
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】澤谷 和毅
(72)【発明者】
【氏名】山田 智己
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210308(JP,A)
【文献】特開2018-90381(JP,A)
【文献】特開2005-247571(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105122(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/71134(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の形状を有する基部材と、
前記基部材と同軸でかつ前記基部材よりも径の大きい円筒状の形状を有する巻き掛け部材と、
前記巻き掛け部材の径方向において前記基部材と前記巻き掛け部材との間に設けられた複数の中間部材と、
を備え、
前記複数の中間部材のそれぞれは、
前記基部材に接続された第1端部と、
前記巻き掛け部材に接続された第2端部と、
前記巻き掛け部材の周方向において前記第2端部とは異なる位置で前記巻き掛け部材に接続された第3端部と、
前記第1端部と前記第2端部及び前記第3端部との間に形成された分岐部と、を有している昇降機用シーブ。
【請求項2】
前記径方向における前記巻き掛け部材の肉厚と、前記径方向における前記基部材の肉厚と、は同一である請求項1に記載の昇降機用シーブ。
【請求項3】
前記複数の中間部材は、前記周方向において互いに隣り合う第1中間部材及び第2中間部材を含んでおり、
前記第1中間部材の前記第2端部と、前記第2中間部材の前記第3端部とは、前記周方向において互いに隣り合っており、
前記第1中間部材の前記第2端部と前記第1中間部材の前記第3端部との間の前記周方向における距離と、前記第1中間部材の前記第2端部と前記第2中間部材の前記第3端部との間の前記周方向における距離と、は同一である請求項1又は請求項2に記載の昇降機用シーブ。
【請求項4】
前記複数の中間部材は、前記周方向において互いに隣り合う第1中間部材及び第2中間部材を含んでおり、
前記第1中間部材の前記第2端部と前記第1中間部材の前記第3端部との間の前記周方向における距離と、
前記第1中間部材の前記第2端部と前記第2中間部材の前記第3端部との間の前記周方向における距離と、
前記第1中間部材の前記第1端部と前記第2中間部材の前記第1端部との間の前記周方向における距離と、
前記第1中間部材の前記分岐部と前記巻き掛け部材との間の前記径方向における距離と、
はいずれも、前記巻き掛け部材の軸方向における前記巻き掛け部材の厚みの0.3倍以上である請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の昇降機用シーブ。
【請求項5】
前記複数の中間部材のそれぞれと、前記基部材と、前記巻き掛け部材とは、互いに別体に形成されている請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の昇降機用シーブ。
【請求項6】
前記巻き掛け部材は、前記基部材及び前記複数の中間部材とは異なる材料により形成されている請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の昇降機用シーブ。
【請求項7】
前記巻き掛け部材は、前記周方向において複数の分割部品に分割されており、
前記複数の分割部品のそれぞれは、前記複数の中間部材のうちの少なくとも1つの中間部材に、ボルトを用いて結合されている請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の昇降機用シーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基部材と巻き掛け部材との間に設けられた複数の中間部材を備える昇降機用シーブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エレベータ用の綱車機構が記載されている。この綱車機構は、軸受部と、軸受部よりも大径となるシーブと、を有している。シーブは、軸受部と同心状に設けられている。シーブと軸受部とは、複数のスポーク状の接続部材により接続されている。シーブと軸受部との間には、複数の穴が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の綱車機構において、複数の接続部材のそれぞれは、綱車機構の径方向に沿って延伸している。複数の穴のそれぞれは、綱車機構の周方向において隣り合う2つの接続部材の間に形成されている。これにより、シーブには、綱車機構の径方向において穴の外側に位置する部分と、綱車機構の径方向において接続部材の外側に位置する部分と、が綱車機構の周方向に沿って交互に形成される。
【0005】
シーブにおいて、穴の外側に位置する部分の剛性は、接続部材の外側に位置する部分の剛性よりも低くなる。このため、シーブがロープから荷重を受けると、穴の外側に位置する部分には、綱車機構の中心に向かう方向へのたわみ変形が生じやすくなる。綱車機構の回転に伴い、上記のたわみ変形が周期的に繰り返し生じた場合、乗りかごには振動が伝わる。このため、乗りかごの乗り心地が低下してしまうという課題があった。
【0006】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、乗りかごの乗り心地の低下を抑制できる昇降機用シーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る昇降機用シーブは、円筒状の形状を有する基部材と、前記基部材と同軸でかつ前記基部材よりも径の大きい円筒状の形状を有する巻き掛け部材と、前記巻き掛け部材の径方向において前記基部材と前記巻き掛け部材との間に設けられた複数の中間部材と、を備え、前記複数の中間部材のそれぞれは、前記基部材に接続された第1端部と、前記巻き掛け部材に接続された第2端部と、前記巻き掛け部材の周方向において前記第2端部とは異なる位置で前記巻き掛け部材に接続された第3端部と、前記第1端部と前記第2端部及び前記第3端部との間に形成された分岐部と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、乗りかごの乗り心地の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る昇降機用シーブを備える昇降機の構成の一例を示す図である。
【
図2】実施の形態1に係る昇降機用シーブを備える昇降機の構成の別の例を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る昇降機用シーブの構成を示す斜視図である。
【
図4】実施の形態2に係る昇降機用シーブの構成を示す正面図である。
【
図5】実施の形態3に係る昇降機用シーブの構成を示す正面図である。
【
図6】実施の形態4に係る昇降機用シーブの構成を示す正面図である。
【
図7】
図6のVII-VII断面を示す断面図である。
【
図8】実施の形態5の比較例に係る昇降機用シーブを製造する際の鋳造方案の例を示す図である。
【
図9】実施の形態5に係る昇降機用シーブを製造する際の鋳造方案の例を示す図である。
【
図10】実施の形態5に係る昇降機用シーブを製造する際の鋳造方案の例を示す図である。
【
図11】実施の形態5に係る昇降機用シーブを製造する際の鋳造方案の例を示す図である。
【
図12】実施の形態6に係る昇降機用シーブの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係る昇降機用シーブについて説明する。
図1は、本実施の形態に係る昇降機用シーブを備える昇降機の構成の一例を示す図である。
図1では、2:1ローピング方式の昇降機が例示されている。
【0011】
図1に示すように、昇降路10の上部には、巻上機20が設置されている。巻上機20は、昇降路10の上部に設けられた不図示の支持梁に固定されている。
【0012】
巻上機20は、綱車21、不図示の巻上機モータ、及び不図示の巻上機ブレーキを有している。巻上機モータは、綱車21を回転させる。巻上機ブレーキは、綱車21の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキは、綱車21の回転を制動する。
【0013】
綱車21には、複数本の主ロープ22が巻き掛けられている。
図1では、1本の主ロープ22のみが示されている。
【0014】
昇降路10の上部には、第1綱止め11及び第2綱止め12が設けられている。各主ロープ22の一端は、第1綱止め11に接続されている。各主ロープ22の他端は、第2綱止め12に接続されている。
【0015】
乗りかご23及び釣合いおもり24は、複数本の主ロープ22によって昇降路10内に吊り下げられている。乗りかご23及び釣合いおもり24は、綱車21が回転することによって、昇降路10内を昇降する。
【0016】
乗りかご23の下部には、第1かご吊り車23a及び第2かご吊り車23bが設けられている。釣合いおもり24の上部には、おもり吊り車24aが設けられている。
【0017】
複数本の主ロープ22は、第1綱止め11側から順に、第1かご吊り車23a、第2かご吊り車23b、綱車21、及びおもり吊り車24aに巻き掛けられている。
【0018】
図1に示した昇降機において、本実施の形態に係る昇降機用シーブは、第1かご吊り車23a、第2かご吊り車23b、綱車21、及びおもり吊り車24aのうち少なくとも1つとして用いられている。
【0019】
図2は、本実施の形態に係る昇降機用シーブを備える昇降機の構成の別の例を示す図である。
図2では、1:1ローピング方式の昇降機が例示されている。
図2に示すように、昇降路10の上には、機械室13が設けられている。
【0020】
機械室13には、巻上機20、そらせ車25、及び調速機26が設置されている。巻上機20の綱車21、及びそらせ車25には、複数本の主ロープ22が巻き掛けられている。主ロープ22の一端には、乗りかご23が接続されている。主ロープ22の他端には、釣合いおもり24が接続されている。
【0021】
乗りかご23及び釣合いおもり24は、複数本の主ロープ22によって昇降路10内に吊り下げられている。乗りかご23及び釣合いおもり24は、綱車21が回転することによって、昇降路10内を昇降する。
【0022】
乗りかご23の下部と釣合いおもり24の下部との間には、コンペンロープ27が吊り下げられている。コンペンロープ27は、綱車21の一側と他側とにおける複数本の主ロープ22の重量不均衡を補償する。
【0023】
昇降路10の下部には、釣合い車28が設けられている。釣合い車28には、コンペンロープ27が巻き掛けられている。コンペンロープ27には、釣合い車28により張力が付与されている。
【0024】
調速機26は、乗りかご23の速度が過大速度に達したか否かを検出する。調速機26は、調速機車29を有している。調速機車29には、調速機ロープ30が巻き掛けられている。
【0025】
調速機ロープ30は、昇降路10内に環状に設けられている。調速機ロープ30は、乗りかご23に接続されている。昇降路10の下部には、張り車31が設けられている。張り車31には、調速機ロープ30が巻き掛けられている。乗りかご23が昇降すると、調速機ロープ30が循環移動する。調速機車29は、乗りかご23の走行速度に応じた回転速度で回転する。
【0026】
図2に示した昇降機において、本実施の形態に係る昇降機用シーブは、綱車21、そらせ車25、釣合い車28、調速機車29、及び張り車31のうち少なくとも1つとして用いられている。
【0027】
図3は、本実施の形態に係る昇降機用シーブの構成を示す斜視図である。
図3では、
図1に示した昇降機の第1かご吊り車23aとして用いられている昇降機用シーブ40が例示されている。
図3に示すように、昇降機用シーブ40は、基部材50、巻き掛け部材60、及び複数の中間部材70を有している。本実施の形態では、基部材50、巻き掛け部材60、及び複数の中間部材70は一体に形成されている。
【0028】
基部材50は、円筒状の形状を有するハブ部材である。基部材50は、不図示の軸受を介して、不図示のシーブ軸を保持している。シーブ軸は、昇降機用シーブ40の回転軸となる。
【0029】
巻き掛け部材60は、基部材50と同軸で、かつ基部材50よりも径の大きい円筒状の形状を有している。巻き掛け部材60は、基部材50の外周側に配置されている。
【0030】
以下の説明では、巻き掛け部材60の中心軸に沿う方向のことを、「巻き掛け部材60の軸方向」又は単に「軸方向」という場合がある。巻き掛け部材60の軸方向と垂直な断面において、巻き掛け部材60の中心軸を中心とした円周に沿う方向のことを、「巻き掛け部材60の周方向」又は単に「周方向」という場合がある。同断面において、巻き掛け部材60の半径に沿う方向のことを、「巻き掛け部材60の径方向」又は単に「径方向」という場合がある。
【0031】
巻き掛け部材60には、複数本の主ロープ22が巻き掛けられる。巻き掛け部材60の外周面60aには、巻き掛け部材60の周方向にそれぞれ延伸した複数の溝61が形成されている。複数の溝61は、巻き掛け部材60の軸方向に沿って互いに並列している。溝61のそれぞれには、主ロープ22が1つずつ保持される。
【0032】
中間部材70のそれぞれは、巻き掛け部材60の径方向において基部材50と巻き掛け部材60との間に設けられている。中間部材70のそれぞれは、基部材50と巻き掛け部材60との間を接続している。複数の中間部材70は、周方向に等間隔で配置されている。
【0033】
中間部材70のそれぞれは、基部材50の外周面50aから巻き掛け部材60の内周面60bに向かって延伸している。軸方向と垂直な断面において、中間部材70のそれぞれは、巻き掛け部材60に近づくにつれて枝分かれした分岐構造を有している。本実施の形態では、中間部材70のそれぞれは、軸方向と垂直な断面において、Y字状の形状を有している。
【0034】
中間部材70のそれぞれは、第1端部71、第2端部72及び第3端部73を有している。第1端部71は、基部材50の外周面50aに接続されている。第2端部72は、巻き掛け部材60の内周面60bに接続されている。第3端部73は、巻き掛け部材60の周方向において第2端部72とは異なる位置で、巻き掛け部材60の内周面60bに接続されている。巻き掛け部材60の径方向に見たとき、第2端部72及び第3端部73のそれぞれは、例えば、全ての溝61と重なるように配置されている。
【0035】
巻き掛け部材60において、第2端部72又は第3端部73が接続されている部分は、被支持部62となる。巻き掛け部材60は、複数の被支持部62において中間部材70に支持されている。
【0036】
中間部材70のそれぞれは、分岐部74、第1脚部75、第2脚部76及び第3脚部77を有している。分岐部74は、第1端部71と、第2端部72及び第3端部73と、の間に形成されている。分岐部74と第1端部71との間は、第1脚部75によって接続されている。第1脚部75は、軸方向と垂直な断面において、巻き掛け部材60の径方向に沿って直線状に延伸している。
【0037】
分岐部74と第2端部72との間は、第2脚部76によって接続されている。第2脚部76は、軸方向と垂直な断面において、直線状に延伸している。同断面における第2脚部76の延伸方向は、巻き掛け部材60の径方向に対して傾斜している。
【0038】
分岐部74と第3端部73との間は、第3脚部77によって接続されている。第3脚部77は、軸方向と垂直な断面において、直線状に延伸している。同断面における第3脚部77の延伸方向は、巻き掛け部材60の径方向に対して、第2脚部76の延伸方向とは逆方向に傾斜している。
【0039】
本実施の形態では、中間部材70のそれぞれがY字状の形状を有しているが、中間部材70のそれぞれは、軸方向と垂直な断面においてV字状の形状を有していてもよい。中間部材70のそれぞれがV字状の形状を有している場合、分岐部74と第1端部71との間の距離が短くなるため、第1脚部75は実質的に形成されていなくてもよい。
【0040】
本実施の形態では、5つの中間部材70が設けられているが、中間部材70の数は、2以上4以下、又は6以上であってもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係る昇降機用シーブ40は、基部材50と、巻き掛け部材60と、複数の中間部材70と、を備えている。基部材50は、円筒状の形状を有している。巻き掛け部材60は、基部材50と同軸でかつ基部材50よりも径の大きい円筒状の形状を有している。複数の中間部材70は、巻き掛け部材60の径方向において基部材50と巻き掛け部材60との間に設けられている。
【0042】
複数の中間部材70のそれぞれは、第1端部71、第2端部72、第3端部73及び分岐部74を有している。第1端部71は、基部材50に接続されている。第2端部72は、巻き掛け部材60に接続されている。第3端部73は、周方向において第2端部72とは異なる位置で、巻き掛け部材60に接続されている。分岐部74は、第1端部71と、第2端部72及び第3端部73と、の間に形成されている。
【0043】
昇降機用シーブ40に巻き掛けられている複数本の主ロープ22には、乗りかご23の重量と、乗りかご23内の乗客の重量と、の和に相当する張力が生じる。巻き掛け部材60には、複数本の主ロープ22の張力に応じた径方向荷重が中心軸に向かって加えられる。このため、巻き掛け部材60には、中心軸に向かう方向へのたわみ変形が生じ得る。特に、隣り合う2つの被支持部62の間の周方向距離が長くなると、2つの被支持部62の間で巻き掛け部材60に生じるたわみ変形が大きくなりやすい。
【0044】
昇降機用シーブ40の回転に伴って、上記のたわみ変形が周期的に繰り返し生じると、乗りかご23には、巻き掛け部材60の変形量に応じた振動が伝わる。乗りかご23に伝わる振動を抑えるためには、巻き掛け部材60に生じる変形量を小さくすることが重要になる。
【0045】
本実施の形態では、中間部材70のそれぞれは、第2端部72及び第3端部73において巻き掛け部材60を支持している。このため、中間部材のそれぞれが1つの端部のみにおいて巻き掛け部材を支持している構成と比較すると、本実施の形態では、隣り合う2つの被支持部62の間の周方向距離を短くすることができる。これにより、2つの被支持部62の間で巻き掛け部材60に生じるたわみ変形量を小さくすることができる。したがって、昇降機用シーブ40から乗りかご23に伝わる振動を抑えることができるため、乗りかご23の乗り心地の低下を抑制することができる。
【0046】
溝61の摩耗量は、巻き掛け部材60に生じる変形量に依存する。本実施の形態によれば、2つの被支持部62の間において巻き掛け部材60に生じる変形量を小さくすることができるため、巻き掛け部材60の周方向において溝61の摩耗量を均一化することができる。したがって、本実施の形態によれば、乗りかご23の乗り心地が経年的に低下してしまうのを抑制することもできる。
【0047】
本実施の形態では、中間部材70が分岐構造を有しているため、中間部材70の構造的強度を高めることができる。これにより、巻き掛け部材60の周方向における中間部材70の変形を抑制することができる。したがって、中間部材70に発生する応力が小さくなるため、中間部材70の軽量化を図ることができる。結果として、昇降機用シーブ40全体の慣性モーメントを低減でき、加減速時の制御が容易になるため、乗りかご23の乗り心地を向上させることができる。
【0048】
また、巻き掛け部材60の周方向における中間部材70の変形を抑制することができるため、周方向における巻き掛け部材60の変形量を小さくすることができる。これにより、巻き掛け部材60に巻き掛けられている各主ロープ22のロープ軸方向への移動量が小さくなるため、乗りかご23の乗り心地を向上させることができる。
【0049】
実施の形態2.
実施の形態2に係る昇降機用シーブについて説明する。
図4は、本実施の形態に係る昇降機用シーブの構成を示す正面図である。なお、実施の形態1と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図4に示すように、本実施の形態の昇降機用シーブ40では、巻き掛け部材60の径方向における巻き掛け部材60の肉厚t1と、巻き掛け部材60の径方向における基部材50の肉厚t2と、が同一である(t1=t2)。
【0051】
本実施の形態に係る昇降機用シーブ40は、鋳造によって製造されている。本実施の形態では、基部材50、巻き掛け部材60及び複数の中間部材70は、一体に形成されている。仮に、巻き掛け部材60の肉厚t1が基部材50の肉厚t2よりも大きい場合(t1>t2)、鋳造の際に、巻き掛け部材60は、基部材50よりも後に冷え固まる。このため、巻き掛け部材60には、引け巣などの鋳物の内部不良が内在しやすくなる。
【0052】
巻き掛け部材60には、複数の溝61が形成される。これにより、鋳造後の巻き掛け部材60には、基部材50よりも多くの加工が加えられる。このため、巻き掛け部材60に内在する内部不良は、製品表面に露出しやすい。これにより、昇降機用シーブ40の製品強度が低下してしまう場合がある。
【0053】
一方、巻き掛け部材60の肉厚t1が基部材50の肉厚t2よりも小さい場合(t1<t2)、鋳造の際に、基部材50は、巻き掛け部材60よりも後に冷え固まる。このとき、中間部材70は、金属組織の変態に伴う凝固収縮と、温度の低下による熱収縮とによって、昇降機用シーブ40の中心軸に向かう方向に引っ張られる。中間部材70の強度は、基部材50及び巻き掛け部材60のそれぞれの強度よりも低い。このため、中間部材70に生じた引っ張り応力が許容応力を上回ると、中間部材70に割れが生じるおそれがある。
【0054】
昇降機用シーブ40の製造時における内部不良及び割れの発生を抑制し、製品の不良率を低減するためには、基部材50と巻き掛け部材60とが同時期に冷え固まるようにするのが望ましい。
【0055】
本実施の形態では、巻き掛け部材60の肉厚t1と基部材50の肉厚t2とが同一であるため、基部材50と巻き掛け部材60とが同時期に冷え固まるようにすることができる。したがって、本実施の形態によれば、昇降機用シーブ40の製造時において内部不良及び割れの発生を抑制できるため、製品の不良率を低減することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施の形態に係る昇降機用シーブ40では、巻き掛け部材60の径方向における巻き掛け部材60の肉厚t1と、上記径方向における基部材50の肉厚t2と、は同一である。
【0057】
この構成によれば、昇降機用シーブ40の鋳造時において、基部材50及び巻き掛け部材60のそれぞれの冷却が均一化される。これにより、引け巣などの内部不良が巻き掛け部材60に偏って生じるのを防ぐことができる。また、溶湯が凝固する際に生じる内部応力が緩和されるため、割れの発生を抑制することができる。
【0058】
実施の形態3.
実施の形態3に係る昇降機用シーブについて説明する。
図5は、本実施の形態に係る昇降機用シーブの構成を示す正面図である。なお、実施の形態1又は2と同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図5に示すように、複数の中間部材70は、巻き掛け部材60の周方向において互いに隣り合う第1中間部材70-1及び第2中間部材70-2を含んでいる。第1中間部材70-1及び第2中間部材70-2のそれぞれは、第2端部72及び第3端部73を有している。
【0060】
第1中間部材70-1の第2端部72と、同じ第1中間部材70-1の第3端部73とは、周方向において互いに隣り合っている。また、第1中間部材70-1の第2端部72と、第2中間部材70-2の第3端部73とは、周方向において互いに隣り合っている。
【0061】
ここで、第1中間部材70-1の第2端部72と、第1中間部材70-1の第3端部73と、の間の周方向における距離をL1とする。第1中間部材70-1の第2端部72と、第2中間部材70-2の第3端部73と、の間の周方向における距離をL2とする。本実施の形態では、距離L1と距離L2とは同一である(L1=L2)。
【0062】
仮に、距離L1と距離L2とが異なっている場合、長い方の距離を有する部分では巻き掛け部材60の変形が大きくなるため、周方向において巻き掛け部材60の変形量に偏りが生じてしまう。これにより、乗りかご23には、周期的な振動が伝わってしまう場合がある。
【0063】
これに対し、本実施の形態では、距離L1と距離L2とが同一であるため、周方向における巻き掛け部材60の変形量の偏りを抑えることができる。また、本実施の形態では、距離L1及び距離L2の最大値を最小化することができるため、巻き掛け部材60の変形をより小さくすることができる。したがって、乗りかご23の乗り心地の低下をさらに抑制できる。
【0064】
以上説明したように、本実施の形態に係る昇降機用シーブ40では、複数の中間部材70は、周方向において互いに隣り合う第1中間部材70-1及び第2中間部材70-2を含んでいる。第1中間部材70-1の第2端部72と、第2中間部材70-2の第3端部73とは、周方向において互いに隣り合っている。第1中間部材70-1の第2端部72と第1中間部材70-1の第3端部73との間の周方向における距離L1と、第1中間部材70-1の第2端部72と第2中間部材70-2の第3端部73との間の周方向における距離L2と、は同一である。
【0065】
この構成によれば、距離L1と距離L2とが同一であるため、周方向における巻き掛け部材60の変形量の偏りを抑えることができる。また、この構成によれば、距離L1及び距離L2の最大値を最小化することができるため、巻き掛け部材60の変形をより小さくすることができる。したがって、乗りかご23の乗り心地の低下をさらに抑制することができる。
【0066】
実施の形態4.
実施の形態4に係る昇降機用シーブについて説明する。
図6は、本実施の形態に係る昇降機用シーブの構成を示す正面図である。
図7は、
図6のVII-VII断面を示す断面図である。なお、実施の形態1~3のいずれかと同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図6及び
図7に示す昇降機用シーブ40は、砂型鋳造によって製造されている。ここで、第1中間部材70-1の第1端部71と、第2中間部材70-2の第1端部71と、の間の周方向における距離をL3とする。第1中間部材70-1の分岐部74と、巻き掛け部材60と、の間の径方向における距離をL4とする。軸方向における巻き掛け部材60の厚みをt3とする。
【0068】
実施の形態3と同様に、第1中間部材70-1の第2端部72と、第1中間部材70-1の第3端部73と、の間の周方向における距離はL1である。第1中間部材70-1の第2端部72と、第2中間部材70-2の第3端部73と、の間の周方向における距離はL2である。
【0069】
本実施の形態では、距離L1、距離L2、距離L3及び距離L4は、いずれも厚みt3の0.3倍以上である。すなわち、距離L1及び厚みt3は、L1≧0.3×t3の関係を満たしている。距離L2及び厚みt3は、L2≧0.3×t3の関係を満たしている。距離L3及び厚みt3は、L3≧0.3×t3の関係を満たしている。距離L4及び厚みt3は、L4≧0.3×t3の関係を満たしている。
【0070】
厚みt3は、鋳造の際に造型される砂型の高さに相当する。距離L1、距離L2、距離L3及び距離L4のそれぞれは、砂型の厚みに相当する。砂型の厚みが砂型の高さに対して小さい場合、砂型の強度が低下するため、注湯時の溶湯圧によって砂型が崩れやすくなる。鋳込みの際に砂型が崩れると、崩れた砂が製品に流れ込むため、製品不良が発生する。砂型の厚みが砂型の高さに対して極端に小さい場合、砂型の造型自体が困難になる場合もある。砂型に起因する製品不良を抑制するためには、砂型の高さに対して砂型の厚みを一定以上に確保する必要がある。
【0071】
本実施の形態では、距離L1、距離L2、距離L3及び距離L4がいずれも厚みt3の0.3倍以上であるため、砂型の高さに対して砂型の厚みを一定以上に確保することができる。したがって、昇降機用シーブ40の鋳造に必要な砂型強度を確保できるため、砂型に起因する製品不良を抑制することができる。したがって、昇降機用シーブ40の製造歩留まりを向上させることができる。
【0072】
以上説明したように、本実施の形態に係る昇降機用シーブ40では、複数の中間部材70は、周方向において互いに隣り合う第1中間部材70-1及び第2中間部材70-2を含んでいる。第1中間部材70-1の第2端部72と第1中間部材70-1の第3端部73との間の周方向における距離をL1とする。第1中間部材70-1の第2端部72と第2中間部材70-2の第3端部73との間の周方向における距離をL2とする。第1中間部材70-1の第1端部71と第2中間部材70-2の第1端部71との間の周方向における距離をL3とする。第1中間部材70-1の分岐部74と巻き掛け部材60との間の径方向における距離をL4とする。このとき、距離L1、距離L2、距離L3及び距離L4はいずれも、巻き掛け部材60の軸方向における巻き掛け部材60の厚みt3の0.3倍以上である。
【0073】
この構成によれば、昇降機用シーブ40の鋳造に必要な砂型強度を確保できるため、砂型に起因する製品不良を抑制することができる。
【0074】
実施の形態5.
実施の形態5に係る昇降機用シーブについて説明する。まず、本実施の形態の比較例について説明する。
図8は、本実施の形態の比較例に係る昇降機用シーブを製造する際の鋳造方案の例を示す図である。
図8に示す鋳造方案では、鋳物砂型80の外枠となる鋳枠82内に、2つの昇降機用シーブ40が配置されている。注湯湯口81は、平面視において、2つの昇降機用シーブ40のいずれからも離れた位置に配置されている。鋳造工程での歩留まりを向上させ、製品の製造コストを低減するために、鋳造方案では、可能な限り多数の製品を鋳枠82内に配置するのが望ましい。
【0075】
しかしながら、この比較例では、基部材50、巻き掛け部材60及び中間部材70が一体物であるため、鋳枠82の大きさに対して製品サイズが大きくなっている。これにより、鋳枠82内において製品が配置されない部分の面積が大きくなる。このため、この比較例では、鋳造工程での歩留まりが低下し、製品の製造コストが増加してしまう。
【0076】
図9~
図11は、本実施の形態に係る昇降機用シーブを製造する際の鋳造方案の例を示す図である。本実施の形態では、巻き掛け部材60と、基部材50と、複数の中間部材70のそれぞれと、が互いに別体に形成されている。さらに、巻き掛け部材60は、周方向において、複数の分割部品63に分割されている。分割部品63、基部材50及び中間部材70は、それぞれ別々の鋳枠82a、82b、82cを用いて作製される。鋳枠82a、82b、82cのそれぞれの大きさは、例えば、鋳枠82の大きさと同一である。
【0077】
図9に示す鋳造方案では、複数の分割部品63が鋳枠82a内に配置されている。分割部品63のそれぞれは、部分円筒状の形状を有している。本実施の形態では、巻き掛け部材60は、鋳造工程の後に、5つの分割部品63が円筒状に接合されることによって形成される。注湯湯口81aは、平面視において、複数の分割部品63のいずれからも離れた位置に配置されている。分割部品63のそれぞれの大きさは、昇降機用シーブ40の大きさよりも小さくなっている。これにより、鋳枠82a内には、より多数の分割部品63を効率的に配置することができる。このため、鋳枠82a内において分割部品63が配置されない部分の面積は、
図8に示した比較例の鋳枠82内において製品が配置されない部分の面積と比べて小さくなる。
【0078】
図10に示す鋳造方案では、複数の基部材50が鋳枠82b内に配置されている。注湯湯口81bは、平面視において、複数の基部材50のいずれからも離れた位置に配置されている。基部材50のそれぞれの大きさは、昇降機用シーブ40の大きさよりも小さくなっている。これにより、鋳枠82b内には、より多数の基部材50を効率的に配置することができる。このため、鋳枠82b内において基部材50が配置されない部分の面積は、
図8に示した比較例の鋳枠82内において製品が配置されない部分の面積と比べて小さくなる。
【0079】
図11に示す鋳造方案では、複数の中間部材70が鋳枠82c内に配置されている。注湯湯口81cは、平面視において、複数の中間部材70のいずれからも離れた位置に配置されている。中間部材70のそれぞれの大きさは、昇降機用シーブ40の大きさよりも小さくなっている。これにより、鋳枠82c内には、より多数の中間部材70を効率的に配置することができる。このため、鋳枠82c内において中間部材70が配置されない部分の面積は、
図8に示した比較例の鋳枠82内において製品が配置されない部分の面積と比べて小さくなる。
【0080】
本実施の形態では、昇降機用シーブ40が複数の部品に分割されており、各部品が別々の鋳枠82a、82b、82cを用いて鋳造される。鋳枠82a、82b、82cのそれぞれでは、各部品の配置を効率化できる。このため、鋳造工程での歩留まりを向上させることができる。したがって、昇降機用シーブ40の製造コストを低減することができる。
【0081】
以上説明したように、本実施の形態に係る昇降機用シーブ40では、複数の中間部材70のそれぞれと、基部材50と、巻き掛け部材60とは、互いに別体に形成されている。
【0082】
この構成によれば、中間部材70、基部材50及び巻き掛け部材60を別々の鋳枠82a、82b、82cを用いて鋳造できるため、鋳枠82a、82b、82cのそれぞれにおいて各部材の配置を効率化できる。したがって、鋳造工程での歩留まりを向上させることができ、昇降機用シーブ40の製造コストを低減することができる。
【0083】
また、この構成によれば、昇降機用シーブ40が複数の部品に分割されているため、各部品の大きさを昇降機用シーブ40の大きさよりも小さくすることができる。これにより、鋳造工程において凝固収縮及び熱収縮により生じる内部応力の増加を抑制できる。したがって、中間部材70、基部材50及び巻き掛け部材60のそれぞれにおいて、割れの発生を防止できる。
【0084】
実施の形態6.
実施の形態6に係る昇降機用シーブについて説明する。
図12は、本実施の形態に係る昇降機用シーブの構成を示す斜視図である。なお、実施の形態1~5のいずれかと同一の機能及び作用を有する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
図12に示すように、昇降機用シーブ40は、基部材50、巻き掛け部材60、及び複数の中間部材70を有している。基部材50と、巻き掛け部材60と、複数の中間部材70のそれぞれとは、互いに別体に形成されている。さらに、巻き掛け部材60は、周方向において、複数の分割部品63に分割されている。本実施の形態では、1つの巻き掛け部材60を構成する分割部品63の数は、中間部材70の数と同数である。分割部品63のそれぞれは、部分円筒状の形状を有している。
【0086】
中間部材70のそれぞれは、結合部91及び結合部92を有している。結合部91は、中間部材70のそれぞれの第2端部72及び第3端部73に跨がって形成されている。また、結合部91は、第2端部72及び第3端部73のそれぞれから周方向外側につば状に突出している。結合部91は、巻き掛け部材60の内周面60bに沿った部分円筒状の形状を有している。結合部91には、六角ボルト93が通されるボルト穴が形成されている。分割部品63のそれぞれは、少なくとも1つの中間部材70に、六角ボルト93を用いて着脱可能に結合されている。本実施の形態では、分割部品63のそれぞれは、周方向において互いに隣り合う2つの結合部91に、六角ボルト93を用いて着脱可能に結合されている。
【0087】
結合部92は、中間部材70のそれぞれの第1端部71に形成されている。結合部92は、第1端部71から周方向外側につば状に突出している。結合部92は、基部材50の外周面50aに沿った部分円筒状の形状を有している。結合部92には、六角ボルト94が通されるボルト穴が形成されている。中間部材70のそれぞれの結合部92は、基部材50に六角ボルト94を用いて結合されている。
【0088】
トラクション式の昇降機の場合、巻き掛け部材の各溝には、各主ロープとの接触により摩耗が生じる。各溝の摩耗量が大きくなると、各主ロープの張力が過大になったり、各主ロープが早期に劣化したりする不具合が生じる場合がある。このため、巻き掛け部材の形成材料には、FCD(Ferrum Casting Ductile)材などの耐摩耗性の高い材料を用いるのが一般的である。一方で、FCD材が用いられる場合、FC(Ferrum Casting)材が用いられる場合と比較して製造時の鋳物不良が生じやすいため、歩留まりが低くなりやすい。さらに、FCD材の材料単価は、FC材の材料単価よりも高い。このため、昇降機用シーブの全体にFCD材を用いると、昇降機用シーブの製品コストが増加してしまう。
【0089】
本実施の形態の巻き掛け部材60は、複数の中間部材70及び基部材50のいずれとも異なる材料により形成されている。巻き掛け部材60は、FCD材により形成されている。複数の中間部材70及び基部材50は、FC材により形成されている。これにより、昇降機用シーブ40の部位に応じて適切な材料を用いることができる。したがって、本実施の形態によれば、各溝61の摩耗の進行を抑制できるとともに、昇降機用シーブ40の製品コストを低減させることができる。
【0090】
ここで、本実施の形態では、複数の中間部材70と基部材50とは同一の材料により形成されているが、複数の中間部材70と基部材50とは互いに異なる材料により形成されていてもよい。また、複数の中間部材70と基部材50が同一の材料により形成されている場合には、複数の中間部材70と基部材50とが一体に形成されていてもよい。
【0091】
また、トラクション式の昇降機の場合、各溝の摩耗が経年的に進行していく。一般に、各溝の摩耗が進行した場合、昇降機用シーブが新品に交換される。しかしながら、特に大容量の昇降機では、昇降機用シーブのサイズが機械室の搬出路のサイズよりも大きい場合がある。このような場合、昇降機用シーブの搬出が物理的に困難であるため、昇降機用シーブの交換が困難である場合があった。
【0092】
本実施の形態の巻き掛け部材60は、周方向において複数の分割部品63に分割されている。分割部品63のそれぞれは、少なくとも1つの中間部材70に六角ボルト93を用いて着脱可能に結合されている。これにより、分割部品63のそれぞれを昇降機用シーブ40から容易に取り外すことができ、かつ分割部品63のそれぞれを機械室13から容易に搬出することができる。したがって、複数の溝61のいずれかの摩耗が進行した場合、巻き掛け部材60のみを容易に交換することができる。よって、昇降機の保守コストを低減させることができる。
【0093】
以上説明したように、本実施の形態に係る昇降機用シーブ40では、巻き掛け部材60は、基部材50及び複数の中間部材70とは異なる材料により形成されている。この構成によれば、昇降機用シーブ40の部位に応じて適切な材料を用いることができる。
【0094】
本実施の形態に係る昇降機用シーブ40では、巻き掛け部材60は、周方向において複数の分割部品63に分割されている。複数の分割部品63のそれぞれは、複数の中間部材70のうちの少なくとも1つの中間部材70に、六角ボルト93を用いて結合されている。ここで、六角ボルト93は、ボルトの一例である。この構成によれば、巻き掛け部材60の交換が容易になるため、昇降機の保守コストを低減させることができる。
【0095】
上記の実施の形態1~6は、互いに組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0096】
10 昇降路、11 第1綱止め、12 第2綱止め、13 機械室、20 巻上機、21 綱車、22 主ロープ、23 乗りかご、23a 第1かご吊り車、23b 第2かご吊り車、24 釣合いおもり、24a おもり吊り車、25 そらせ車、26 調速機、27 コンペンロープ、28 釣合い車、29 調速機車、30 調速機ロープ、31 張り車、40 昇降機用シーブ、50 基部材、50a 外周面、60 巻き掛け部材、60a 外周面、60b 内周面、61 溝、62 被支持部、63 分割部品、70 中間部材、70-1 第1中間部材、70-2 第2中間部材、71 第1端部、72 第2端部、73 第3端部、74 分岐部、75 第1脚部、76 第2脚部、77 第3脚部、80 鋳物砂型、81、81a、81b、81c 注湯湯口、82、82a、82b、82c 鋳枠、91、92 結合部、93、94 六角ボルト。