(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】テゴプラザンおよび非ステロイド性抗炎症薬を含有する医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4184 20060101AFI20241004BHJP
A61K 31/192 20060101ALI20241004BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20241004BHJP
A61K 9/24 20060101ALI20241004BHJP
A61K 9/54 20060101ALI20241004BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241004BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241004BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20241004BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
A61K31/4184
A61K31/192
A61K9/16
A61K9/24
A61K9/54
A61P1/00
A61P29/00
A61P25/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2023539957
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(86)【国際出願番号】 IB2021062408
(87)【国際公開番号】W WO2022144785
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0188540
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
【住所又は居所原語表記】239 Osongsaengmyeong 2-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, 28158, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンジョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュファン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ダソム
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ウンキョン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,テキュン
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018473(WO,A1)
【文献】特表2012-531409(JP,A)
【文献】Dong Kyu Kim et al.,"Effects of Tegoprazan, a Novel Potassium-Competitive Acid Blocker, on Rat Models of Gastric Acid-Related Disease",Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2019年06月,Vol.369,p.318-327,DOI: 10.1124/jpet.118.254904
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
9/00-9/72
47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有効成分を含む第1コンパートメント;および第2有効成分を含む第2コンパートメントを含有する医薬組成物であって、
第1有効成分が制御放出を受け、第2有効成分が即時放出を受け、ここで
第1有効成分が非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であり
、
第2有効成分が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物であ
り、そして、
非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセンまたはその薬学的に許容される塩を含有する、医薬組成物。
【請求項2】
テゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩が、非晶形または結晶形である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物が、第1有効成分および第2有効成分の両方を含有する配合製剤の単位剤形である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
単位剤形が、第1有効成分を含む第1コンパートメントと、第2有効成分を含む第2コンパートメントとを含有する、請求項3に記載の医薬組成物であって、
第1有効成分を含む第1コンパートメントが、
第1有効成分を有するコア;および
コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶コーティング層を含む粒子を含む、医薬組成物。
【請求項5】
粒子が錠剤、ペレット、または顆粒である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
単位剤形が錠剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
第2有効成分を含有する第2コンパートメントが、第2有効成分を含む第2有効成分層である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
第2有効成分層が、第1有効成分を含有する第1コンパートメント上に位置し、これを取り囲むコーティング層である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
第2有効成分層が、第1有効成分を含有する第1コンパートメント上に積層されている、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
第2有効成分層が、第2有効成分を含む粒子を含有する、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
第2有効成分を含有する粒子が、錠剤、ペレット、または顆粒である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
第1有効成分と第2有効成分と間の接触を遮断するための分離層が、第1コンパートメントのコアと腸溶性コーティング層との間;および第1コンパートメントと第2コンパートメントとの間の少なくともどちらかにおいてさらに含有される、請求項7~請求項11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
単位剤形がカプセルである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項14】
第1有効成分を含有する第1コンパートメントが、
第1有効成分を含むコア;および
コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子であり、そして
第2有効成分を含有する第2コンパートメントが、第2有効成分を含有する粒子である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
カプセルが、第1有効成分を含有する粒子および第2有効成分を含有する粒子で充填されている、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
第1有効成分を含有する粒子および第2有効成分を含有する粒子が、それぞれ独立に、錠剤、ペレット、顆粒、またはそれらの混合物である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
カプセルに錠剤が充填されている、請求項13に記載の医薬組成物であって、
錠剤が、第1有効成分を含む第1コンパートメント;および第2有効成分を含む第2コンパートメントを含有し、ここで、
第1有効成分を含む第1コンパートメントが、
第1有効成分を有するコア;および
コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子を含み、そして
第2有効成分を含む第2コンパートメントが、
第2有効成分を含む粒子、または第2有効成分を含む第2有効成分層である、医薬組成物。
【請求項18】
腸溶性コーティング層が、コアの総重量に基づい
て5重量%以
上20重量%以下である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物が、炎症および/または疼痛疾患を予防または治療するための組成物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項20】
医薬組成物が、炎症および/または疼痛疾患、および胃腸疾患を予防または治療するための組成物である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項21】
胃腸疾患が非ステロイド系抗炎症薬によって引き起こされる、請求項
20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
疼痛疾患、炎症性疾患および/または胃腸疾患を予防または治療するための薬剤の調製における、請求項1~請求項
21のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テゴプラザンと非ステロイド性抗炎症薬とを含む医薬組成物およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、鎮痛、解熱、および抗炎症作用を有する薬剤であり、片頭痛、関節痛、筋肉痛、関節リウマチ、痛風などの疼痛や炎症を伴う、急性または慢性疾患の治療に使用される。
【0003】
しかし、薬物使用者の高齢化に伴い、筋骨格系や循環器系の疾患の増加によりNSAIDsの使用が増加し、その投与によって引き起こされる副作用も問題となっている。特に、慢性疾患または障害(疼痛や炎症)に対して継続的なNSAIDs治療を必要とする患者の間で、NSAID関連潰瘍を発症するリスクがあることが知られている。NSAIDs使用者の20~40%に発現する副作用は、主に胃や小腸に多く見られ、典型的には消化不良(胃痛、胸やけ、膨満感、または吐き気)、びらん、胃炎/十二指腸炎、潰瘍などの症状を示す胃腸疾患、および出血過多による貧血に関与する。また、胃腸疾患や出血などの副作用を治療しても、慢性疾患や障害(疼痛や炎症)のためにNSAIDsの継続的な治療が必要な患者は、NSAIDsを服用し続け、そのため胃腸疾患や出血などの副作用の再発を頻繁に起こす。
【0004】
したがって、非ステロイド性抗炎症薬によって引き起こされる副作用を制御するための研究開発が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、テゴプラザンと非ステロイド性抗炎症薬とを含む医薬組成物を提供することである。
【0006】
本発明の目的は、テゴプラザンと非ステロイド性抗炎症薬とを含む医薬組成物を調製するための方法を提供することである。
【0007】
本発明の目的は、テゴプラザンと非ステロイド性抗炎症薬とを含む医薬組成物を投与することを含む、疼痛疾患、炎症性疾患および/または胃腸疾患の予防または治療方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、疼痛疾患、炎症性疾患および/または胃腸疾患を予防または治療するための、テゴプラザンと非ステロイド性抗炎症薬とを含む医薬組成物の使用を提供することである。
【0009】
本発明の目的は、疼痛疾患、炎症性疾患および/または胃腸疾患を予防または治療するための薬剤の調製における、テゴプラザンと非ステロイド性抗炎症薬とを含む医薬組成物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明で開示された各説明および実施形態は、それぞれ他の説明およびその実施形態にも適用することができる。言い換えれば、本発明で開示された様々な要素の組み合わせは、すべて本発明の範囲に含まれる。また、本発明の範囲が以下に説明する具体的な記述に限定されると理解するべきではない。
【0011】
さらには、本明細書において、第1や第2、上(upper)や下(lower)などは、分類のためだけに用いられており、いかなる順序や位置も特定するものとはみなされない。
【0012】
また、本明細書において、文脈上特に断りのない限り、単数表現は複数表現を含み、複数表現は単数表現を含む。
【0013】
本発明は、テゴプラザンを非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と同時に投与することができる医薬配合製剤(複合体)を提供することができる。
【0014】
本発明は、非ステロイド系薬物の使用によって引き起こされる胃腸の副作用を最小限に抑えつつ、安定性を向上させ、即時放出領域(コンパートメント)と腸溶性領域(コンパートメント)を互いに分離するように設計された医薬組成物、およびその調製方法を提供することができる。
【0015】
本発明は、以下を提供することができる:
(1)第1有効成分を含む第1コンパートメント;および第2有効成分を含む第2コンパートメントを含有する医薬組成物であって、
第1有効成分が制御放出を受け、第2有効成分が即時放出を受け、ここで
第1有効成分が非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であり、そして
第2有効成分が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物である、医薬組成物。
【0016】
(2)テゴプラザンまたはその薬学的に許容される塩が、非晶形または結晶形である、(1)に記載の医薬組成物。
【0017】
(3)医薬組成物が、第1有効成分および第2有効成分の両方を含有する配合製剤の単位剤形である、(1)~(2)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0018】
(4)単位剤形が、第1有効成分を含む第1コンパートメントと、第2有効成分を含む第2コンパートメントとを含有する、(1)~(3)のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
第1有効成分を含む第1コンパートメントが、
第1有効成分を有するコア;および
コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶コーティング層を含む粒子を含む、医薬組成物。
【0019】
(5)粒子が錠剤、ペレット、または顆粒である、(1)~(4)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0020】
(6)単位剤形が錠剤である、(1)~(5)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0021】
(7)第2有効成分を含有する第2コンパートメントが、第2有効成分を含む第2有効成分層である、(1)~(6)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0022】
(8)第2有効成分層が、第1有効成分を含有する第1コンパートメント上に位置し、これを取り囲むコーティング層である、(1)~(7)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0023】
(9)第2有効成分層が、第1有効成分を含有する第1コンパートメント上に積層(laminated)されている、(1)~(8)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0024】
(10)第2有効成分層が、第2有効成分を含む粒子を含有する、(1)~(9)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0025】
(11)第2有効成分を含有する粒子が、錠剤、ペレット、または顆粒である、(1)~(10)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0026】
(12)第1有効成分と第2有効成分との間の接触を遮断するための分離層が、第1コンパートメントのコアと腸溶性コーティング層との間;および第1コンパートメントと第2コンパートメントとの間の少なくともどちらかにおいてさらに含有される、(1)~(11)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0027】
(13)単位剤形がカプセルである、(1)~(12)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0028】
(14)第1有効成分を含有する第1コンパートメントが、
第1有効成分を含むコア;および
コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子であり、そして
第2有効成分を含有する第2コンパートメントが、第2有効成分を含有する粒子である、(1)~(13)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0029】
(15)カプセルが、第1有効成分を含有する粒子および第2有効成分を含有する粒子で充填されている、(1)~(14)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0030】
(16)第1有効成分を含有する粒子および第2有効成分を含有する粒子が、それぞれ独立に、錠剤、ペレット、顆粒、またはそれらの混合物である、(1)~(15)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0031】
(17)カプセルに錠剤が充填されている、(1)~(16)のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、
錠剤が、第1有効成分を含む第1コンパートメント;および第2有効成分を含む第2コンパートメントを含有し、ここで、
第1有効成分を含む第1コンパートメントが、
第1有効成分を有するコア;および
コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子を含み、そして
第2有効成分を含む第2コンパートメントが、
第2有効成分を含む粒子、または第2有効成分を含む第2有効成分層である、医薬組成物。
【0032】
(18)腸溶性コーティング層が、コアの総重量に基づいて約5重量%以上約20重量%以下である、(1)~(17)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0033】
(19)非ステロイド性抗炎症薬が、ナプロキセンまたはその薬学的に許容される塩を含有する、(1)~(18)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0034】
(20)医薬組成物が、炎症および/または疼痛疾患を予防または治療するための組成物である、(1)~(19)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0035】
(21)医薬組成物が、炎症および/または疼痛疾患、および胃腸疾患を予防または治療するための組成物である、(1)~(20)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0036】
(22)胃腸疾患が非ステロイド系抗炎症薬によって引き起こされる、(1)~(21)のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【0037】
(23)(1)~(22)のいずれか1項に記載の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含有する、疼痛疾患、炎症性疾患および/または胃腸疾患の予防または治療方法。
【0038】
(24)疼痛疾患、炎症性疾患および/または胃腸疾患を予防または治療するための、(1)~(22)のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【0039】
(25)疼痛疾患、炎症性疾患および/または胃腸疾患を予防または治療するための薬剤の調製における、(1)~(22)のいずれか1項に記載の医薬組成物の使用。
【0040】
本発明は、第1有効成分を含む第1コンパートメント;および第2有効成分を含む第2コンパートメントを含む医薬組成物であって、
第1有効成分が制御放出を受け、第2有効成分が即時放出を受け、ここで
第1有効成分が非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)であり、そして
第2有効成分がテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物である、医薬組成物を提供することができる。
【0041】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用を有する薬剤であるため、片頭痛、関節痛、筋肉痛、関節リウマチ、痛風などの幅広い急性または慢性疼痛疾患や炎症性疾患の治療に使用されている。本発明において、非ステロイド性抗炎症薬は、互換的に非ステロイド性消炎薬、非ステロイド性抗炎症薬、またはNSAID(s)を指すことがある。
【0042】
本発明において、NSAIDは、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジクロフェナク、アセクロフェナク、エトドラク、インドメタシン、ナブメトン、スリンダク、ベノキサプロフェン、カルプロフェン、デキシブプロフェン、デクスケトプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルノキサプロフェン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、ケトロラック、ロキソプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、メフェナム酸、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、ピロキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、テノキシカム、セレコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ルミラコキシブ、パレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ 、ニメスリド、ケトロラック、アザプロパゾン、トルフェナム酸、スリンダク、ジフルニサル、チアプロフェン酸、ポドフィロトキシン誘導体、アセメタシン、オキサプロジン、フロクタフェニン、フェニルブタゾン、プログルメタシン、フルルビプロフェン、トルメチン、フェンブフェン、それらの薬学的に許容される塩、それらの前駆体、およびそれらの混合物からなる群から選択され得る。好ましくは、NSAIDはナプロキセンまたはその薬学的に許容される塩であってもよいが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0043】
本発明の実施形態において、医薬組成物は、NSAIDを単位剤形あたり約7.5 mg~約2000 mg、好ましくは約100 mg~約1500 mg、より好ましくは約250 mg~約1000 mgの量で含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明の医薬組成物は、第2有効成分として、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0045】
テゴプラザンは、下記の式1で表される化合物であり、「(S)-4-(5,7-ジフルオロクロマン-4-イルオキシ)-N,N,2-トリメチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキサミド」とも呼ばれる。
[式1]
【0046】
本明細書において、「テゴプラザン」という用語は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を指すことがある。
【0047】
本発明の実施形態において、テゴプラザンは非晶形または結晶形であってもよい。また、テゴプラザンの薬学的に許容される塩は、非晶形または結晶形であってもよい。本発明の医薬組成物は、テゴプラザンの結晶学的形態にかかわらず、テゴプラザンを安定に維持することができる。
【0048】
本発明において、「薬学的に許容される塩」という用語は、有効成分を含む医薬組成物を投与された対象に重篤な刺激を引き起こさず、有効成分の生物活性や物性を損なわない、任意の無機酸、有機酸または塩基によって形成される塩を意味することができる。本明細書で使用される塩は、当該技術分野で従来から使用されている塩、例えば、薬学的に許容される遊離酸によって形成される酸付加塩を含んでもよい。薬学的に許容される塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸塩、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベン酸塩、塩酸塩/塩化物塩、臭化水素酸塩/臭化物塩、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ピドロ酸塩(pidolate salt)およびキシナホ酸塩からなる群から具体的に選択され得るが、これらに限定されるものではない。例えば、テゴプラザンの薬学的に許容される塩としては、通常、テゴプラザンの薬理活性を示すものであれば、上記の塩を含めて制限なく使用することができる。具体的には、テゴプラザンの薬学的に許容される塩は、テゴプラザンピドロ酸塩またはテゴプラザンリンゴ酸塩であってもよい。
【0049】
第2有効成分であるテゴプラザンは、アシッドポンプ拮抗作用を介する疾患、例えば、胃腸疾患、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、NSAID誘発性潰瘍、胃炎、ヘリコバクター・ピロリ感染、消化不良、機能性消化不良(functional dyspepsia)、ゾリンジャー・エリソン(Zollinger-Ellison)症候群、非びらん性逆流症(NERD)、内臓関連痛、胸やけ(heartburn, pyrosis)、吐き気、食道炎、嚥下障害、唾液分泌、気道病変または喘息などの治療に効果的に使用できる。
【0050】
本発明の実施形態において、医薬組成物は、第2有効成分を単位剤形あたり約5 mg~約100 mg、具体的には約20 mg~約100 mg、より具体的には約25 mg~約50 mgの量で含んでもよい。
【0051】
本発明の実施形態において、医薬組成物は、疼痛および/または炎症性疾患の予防または治療とともに、胃腸疾患の予防または治療用であってもよく、胃腸疾患は、非ステロイド性抗炎症薬の使用によって引き起こされるものであってもよい。
【0052】
本発明において、疼痛および/または炎症性疾患は、NASIDsの使用を必要とする疾患、または当該NSAIDsの使用によって予防または治療され得る疾患を含んでもよい。例として、心血管障害、筋骨格系障害、片頭痛、関節痛、筋肉痛、関節リウマチ、痛風等の疼痛および/または炎症を伴う急性または慢性疾患が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
本発明の医薬組成物においては、第1有効成分である非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)は制御放出を受けてもよく、第2有効成分であるテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は即時放出を受けてもよい。
【0054】
本発明において、「即時放出(IR)」という用語は、有効成分が投与後直ちにまたは短時間に放出されることを意味することができる。
【0055】
本明細書において、「制御放出(CR)または修飾放出(MR)」または「制御放出」という用語は、胃腸管の特定の場所または薬剤服用後の一定時間経過後に有効成分が急速に放出または長期にわたって連続的に放出されるように薬剤の放出を制御することを意味することができ、遅延放出および/または徐放の両方を含んでもよい。具体的には、本発明における「制御放出」は、薬物を服用した後、特定の部位または一定時間経過後に放出される遅延放出であってもよく、また薬物を服用した後、特定の部位または一定時間(長時間)ゆっくりと放出される徐放、またはその両方であってもよい。より具体的には、本発明における「制御放出」とは、薬物の服用後に胃液以外の環境下で薬物が放出され始める遅延放出であってもよく、薬物の服用後に胃液環境以外の腸内環境下で薬物が継続的に放出される徐放を意味することもできる。具体的な一実施形態において、本発明における「制御放出」は、胃以外の腸内環境下で薬物が急速に放出され始める遅延放出であってもよい。
【0056】
本発明の実施形態において、医薬組成物は、胃液よりも高いpH領域で第1有効成分を放出するものであってもよい。具体的には、医薬組成物中の第1有効成分は、胃液のような酸性pHでは溶解または溶出しないが、胃液よりも高いpH範囲、例えば、胃液または上部小腸のpHよりも高いpH範囲、例えば、腸液環境において、第1有効成分が溶解または溶出し始めてもよい。より具体的には、第1有効成分は、pH 約5またはそれよりも高いpH範囲で、医薬組成物から放出され始めてもよい。具体的な一実施形態において、医薬組成物は、胃以外の腸内(腸液)環境下で第1有効成分を放出するものであってもよい。具体的には、医薬組成物中の第1有効成分は、腸内(腸液)環境のpHより低いpH範囲、例えば胃液などの環境において、遅延放出を受けてもよく、また放出されなくてもよい。より具体的には、医薬組成物中の第1有効成分は、胃液または胃液のような環境において、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の量で放出されてもよく、また放出されなくてもよい。具体的には、胃液または胃液のような環境とは、約2~約4のpHを有する環境を意味することができる。例えば、医薬組成物は、胃液または酸性環境(例えば、pH 約2~約4)において溶出実験を実施した場合に、2時間以内に、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満の量で第1有効成分を放出するものであってもよく、またこれを放出しないものであってもよい。
【0057】
本発明の実施形態において、医薬組成物は、胃液などの酸性pHで第2有効成分を放出するものであってもよい。言い換えれば、第2有効成分は、胃液のような酸性pHで溶解または溶出し始めてもよい。具体的な一実施形態において、医薬組成物は、胃酸環境下で第2有効成分を放出するものであってもよい。
【0058】
医薬組成物を投与した場合、第1有効成分である非ステロイド性抗炎症薬は制御放出を受けてもよく、第2有効成分であるテゴプラザンは即時放出を受けてもよいため、第2有効成分が最初に高い血中濃度を示すことができる。
【0059】
したがって、本発明の医薬組成物を投与することにより、胃腸疾患等に対する予防または治療効果を発揮することができる。そして、第1有効成分である非ステロイド性抗炎症薬の投与によって引き起こされる、胃腸障害や胃腸疾患の症状、例えば、消化不良(胃痛、胸やけ、膨満感、または吐き気)、びらん、胃炎/十二指腸炎、潰瘍、胃腸出血、および出血過多による貧血などの副作用を予防または治療することができる。
【0060】
また、医薬組成物は、第1有効成分および第2有効成分の薬理効果を低下させることなく、各有効成分の薬理効果を十分に発揮させることができる。具体的には、医薬組成物は、第1有効成分および第2有効成分の薬理効果を低下させることなく、単剤の各レベルで高い生物学的利用能を示すことができる。
【0061】
したがって、本医薬組成物は、第1有効成分である非ステロイド性抗炎症薬の投与によって引き起こされる、胃腸疾患や胃腸障害の症状、また出血などの副作用を予防または治療しながら、第1有効成分および第2有効成分の薬理効果を低下させることなく、急性または慢性疼痛や炎症性疾患に対して優れた治療または予防効果を発揮することができる。
【0062】
本発明において、「胃腸疾患または胃腸障害の予防または治療」という用語は、非ステロイド性抗炎症薬の投与によって引き起こされる副作用である、胃腸疾患または胃腸障害の発生を予防、遅延または抑制することを含んでもよく、また胃腸疾患もしくは胃腸障害に関連する症状を緩和すること、または胃腸疾患もしくは胃腸障害の悪化を予防、遅延もしくは抑制することを含んでもよい。
【0063】
本発明において「投与」とは、有効成分(活性成分)を任意の適切な方法により対象に提供することを意味することができ、本発明の医薬組成物は、その組成物が標的組織に到達する限り、一般的なあらゆる経路で投与することができる。本発明の実施形態において、投与は経口投与であってもよい。
【0064】
本発明において、医薬組成物が投与される「対象」は、ヒト、モルモット、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、七面鳥、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラットまたはウサギなどの哺乳類を含んでもよいが、これらに限定されるものではなく、具体的にはヒトであってもよい。
【0065】
本発明の実施形態において、医薬組成物は医薬配合製剤であってもよく、具体的には、第1有効成分と第2有効成分とが一つの単位剤形に製剤化された配合製剤であってもよい。この場合、第1有効成分および第2有効成分は、一つの単位剤形に一緒に含まれてもよい。例えば、単位剤形が錠剤である場合、錠剤は、第1有効成分および第2有効成分の両方を含んでもよい。
【0066】
具体的な一実施形態において、医薬組成物は、第1有効成分を含む第1コンパートメントと第2有効成分を含む第2コンパートメントとを含む医薬配合製剤であってもよく、第1コンパートメントと第2コンパートメントとが一つの単位剤形に製剤化され、第1有効成分は医薬配合製剤からの制御放出を受け、第2有効成分は医薬配合製剤からの即時放出を受けてもよい。具体的には、第1有効成分は、医薬配合製剤からの遅延放出を受けてもよい。具体的な一実施形態において、医薬組成物(医薬配合製剤)は、腸内(腸液)環境下で第1有効成分が遅延放出を受けてもよい。
【0067】
本発明の実施形態において、配合製剤である医薬組成物の単位剤形は、錠剤またはカプセルであってもよく、錠剤は、錠剤中錠剤(tablet-in-tablet)、コーティング錠(マルチコーティング錠)、または積層構造を有する多層錠(2層錠または3層錠)であってもよい。
【0068】
単位剤形において、第1有効成分を含む第1コンパートメントは、第1有効成分を有するコアと、コア上に位置し、コアを囲む腸溶性コーティング層とを含む粒子を含み、また第2有効成分を含む第2コンパートメントは、第2有効成分を含む粒子または第2有効成分を含む第2有効成分層を含んでもよい。
【0069】
本明細書において、コンパートメントとは、本発明の医薬組成物において、有効成分を含む粒子、該粒子を含む層、または有効成分を含む層などの有効成分を含む領域を意味することができ、医薬組成物の単位剤形に応じて、粒子そのもの、該粒子を含む層、または有効成分を含む層を表すこともある。
【0070】
本発明の実施形態において、配合製剤である医薬組成物の単位剤形が錠剤である場合、錠剤は、第1有効成分を含む第1コンパートメントと、第2有効成分を含み、第1コンパートメント上に位置し、第1コンパートメントを取り囲む、または第1コンパートメントに積層された第2コンパートメントとを含んでもよい。
【0071】
具体的には、第1コンパートメントは、第1有効成分を有するコアと、コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層とを含む粒子を含んでもよい。第1コンパートメントは、粒子そのものを意味することもでき、錠剤の形状に応じて、粒子を含む層を意味することもできる。本発明では、粒子は、第1有効成分を含む粒子を指すことがある。
【0072】
腸溶性コーティング層は、pH依存的に溶解する腸溶性材料を含有する腸溶性コーティング層であってもよい。具体的には、pH依存的に溶解する腸溶性材料を含む腸溶性コーティング層は、胃などの酸性pHでは溶解せず、腸内環境などのpH 約5またはそれよりも高いpH領域で溶解してもよい。例えば、腸溶性コーティング層は、胃などの環境の酸性pHでは不溶性であるが、腸などの環境のpH領域では可溶性であってもよい。より具体的には、腸溶性コーティング層は、pH 5未満では全く溶解しないか、ほとんど溶解せず(約10%以下)、pH 約5以上(pH 約5.5、6、6.5、7)で急速に溶解してもよい。このように、本発明の医薬組成物において、第1有効成分は、pHが約5未満(例えば、胃液環境)では医薬組成物(例えば、第1有効成分を含む粒子)から全く放出されないか、ほとんど放出されないが、pHが約5以上(例えば、腸液環境)になると放出されてもよい。すなわち、医薬組成物を対象に投与した場合、胃液環境下(耐酸性)では医薬組成物から第1有効成分が放出されないこともあるが、腸液環境下では、急速に放出されることもあれば、一定時間かけてゆっくりと放出されることもある。具体的には、第1有効成分は、腸液(腸の)環境下で急速に放出されてもよい。
【0073】
本発明の実施形態において、腸溶性コーティング層に含まれる腸溶性材料は、pH 約5以上で可溶性、具体的にはpH 約5~約7で可溶性であってもよく、例えば、メタクリル酸共重合体、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸ポリビニル、酢酸トリメリト酸セルロース、カルボキシメチルエチルセルロース、セラック、および他の適切な機能性材料から選択される少なくとも一つを含んでもよい。具体的には、腸溶性層材料はメタクリル酸共重合体を含んでもよい。
【0074】
本発明の実施形態において、腸溶性コーティング層は、腸溶性材料を適切な溶媒に分散または溶解させた溶液を使用することにより調製することができる。この場合、溶媒は、水、有機溶媒、またはそれらの混合物であってもよく、具体的には、水、C1~C5の直鎖または分岐鎖のアルコール、アセトン、またはそれらの混合物であってもよく、より具体的には、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、またはそれらの混合物であってもよく、さらに具体的には、水、エタノール、またはエタノール水溶液であってもよい。
【0075】
本発明の実施形態において、腸溶性材料を適切な溶媒に分散または溶解させた溶液は、腸溶性コーティング層の柔軟性および硬度などの所望の機械的特性を達成するために、薬学的に許容できる可塑剤をさらに含んでもよい。したがって、腸溶性コーティング層は、可塑剤をさらに含んでもよい。可塑剤としては、例えば、トリアセチン、クエン酸エステル、フタル酸エステル、セバシン酸ジブチル、セチルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリソルベートなどの可塑剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。可塑剤の量は、例えばビッカース硬度で例示される腸溶性コーティング層の機械的特性、すなわち柔軟性や硬度が、コアの製剤化時(例えば錠剤に圧縮する時)に、選択した腸溶性材料および可塑剤ならびに腸溶性コーティング層を形成するために塗布する腸溶性材料の量に関して、腸溶性コーティング層で覆ったコアの耐酸性が著しく低下しないよう最適化することができる。また、本発明の実施形態において、分散剤、着色剤、顔料重合体、例えばポリ(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル)、粘度低下剤、および消泡剤などの添加剤が腸溶性コーティング層に含まれてもよい。さらに、本発明の実施形態では、層の厚さを増加させ、酸感受性材料への酸性胃液の拡散を減少させるために、他の化合物を添加することができる。
【0076】
本発明の実施形態において、腸溶性材料を適当な溶媒に分散または溶解させた溶液は、腸溶性コーティング層を形成するために、クエン酸トリエチル、ポリソルベート80、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0077】
本発明の実施形態において、第1有効成分であるNSIADを保護し、本発明に係る医薬組成物の形態(剤形)の十分な耐酸性を得るためには、腸溶性コーティング層は、第1有効成分を含むコアの総重量に基づいて、約5重量%以上、好ましくは約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、より好ましくは約10重量%以上であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。本発明の実施形態において、腸溶性コーティング層の厚さは、従来の加工条件および所望の溶出特性に応じて適切に調整することができる。例えば、腸溶性コーティング層は、第1有効成分を含むコアの総重量に基づいて、約20重量%以下、約15重量%以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0078】
本発明の実施形態において、第1有効成分を含む粒子は、錠剤、顆粒、またはペレットの形態であってもよい。
【0079】
具体的な一実施形態において、第1有効成分を含む粒子が錠剤である場合、コアは、第1有効成分を有する顆粒を含む非コーティング錠であってもよい。非コーティング錠は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよく、薬学的に許容される添加剤は、顆粒の内部、顆粒の外部や内部、または顆粒の外部に含まれてもよい。この場合、コーティングされていない錠剤上に位置し、コーティングされていない錠剤を取り囲む腸溶性コーティング層が形成されてもよい。顆粒は、湿式顆粒、直接圧縮顆粒、またはそれらの混合物であってもよく、顆粒は、高速せん断造粒機を用いて湿式造粒を行ったもの、流動層造粒機を用いて直接圧縮造粒を行ったものであってもよい。具体的には、NSAIDの打錠性を向上させるために、湿式造粒により調製された顆粒であってもよい。湿式造粒は、水、エタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される溶液を用いて実施することができ、具体的には、水が好ましい場合があるが、これに限定されるものではない。
【0080】
別の具体的な実施形態において、第1有効成分を含む粒子が顆粒である場合、コアは、第1有効成分を含む初期顆粒であってもよい。顆粒は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。この場合、顆粒は、腸溶性コーティング材で取り囲まれた形態であってもよい。顆粒は、互いに矛盾しなければ、非コーティング錠に含まれる顆粒について記載したものと実質的に同じであってもよい。
【0081】
別の具体的な実施形態では、第1有効成分を含む粒子がペレットである場合、コアは、シード(seed)と、シード上に位置し、第1有効成分を含むコーティング層とを含んでもよい。シードは、薬学的活性成分を含まない糖シード(sugar seed)であってもよく、第1有効成分を含むコーティング層は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。この場合、ペレット上に位置し、ペレットを取り囲む腸溶性コーティング層が形成されてもよい。
【0082】
本発明において、「薬学的に許容される添加剤」という用語は、生体を刺激せず、注入(投与)された有効成分の生物活性や性質を阻害しない物質であればよく、本発明で使用できる添加剤の種類は特に限定されず、当該技術分野で従来から使用されており薬学的に許容できるものであれば、いかなる添加剤を用いてもよい。例えば、薬学的に許容される添加剤としては、担体、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される薬学的に許容される賦形剤などを含んでもよく、さらに可塑剤、着色剤、顔料、充填剤、粘度低下剤、および帯電防止剤などの任意の他の添加剤および補助剤(adjuvants)などを含んでもよい。
【0083】
結合剤は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、ポビドン、デンプン、アルファ化デンプン(pregelatinized starch)、およびそれらの混合物からなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。結合剤は、粒子の総重量に基づいて約1~約20重量%、好ましくは約1~約5重量%の量で含まれてもよい。
【0084】
崩壊剤は、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、微結晶セルロース、粉末セルロース、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルファ化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、およびそれらの混合物からなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。崩壊剤は、粒子の総重量に基づいて、約0.5~約10重量%、好ましくは約1~約5重量%の量で含まれてもよい。
【0085】
潤滑剤は、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、水素化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、タルク、およびこれらの混合物からなる群から選択され得るが、これに限定されるものではない。潤滑剤は、粒子の総重量に基づいて、約0.2~約5重量%、好ましくは約1~約3重量%の量で含まれてもよい。
【0086】
他の添加剤および補助剤はいずれも、希釈剤、着色剤、付着防止剤、またはそれらの混合物であってもよいが、これらに限定されるものではない。例えば、他の添加剤および補助剤は、例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク、および他の添加剤であってもよい。
【0087】
希釈剤は、マンニトール、スクロース、微結晶セルロース、ラクトース、ソルビトール、キシリトール、グルコース、およびそれらの混合物からなる群から選択され得るが、これらに限定されるものではない。
【0088】
コアは、コアの総重量に基づいて、第1有効成分を約20~約95重量%、好ましくは約50~約95重量%の量で含んでもよい。
【0089】
本発明において、「コーティング」とは、通常のコーティングまたは積層(lamination)の手順によってコーティング(塗布)または積層することを意味することができるが、これに限定されるものではない。例えば、コーティングは、コーティングパンやコーティング造粒機などの適当な装置や、水および/または有機溶媒をコーティングまたは積層の工程に用いる流動層装置において、コーティングまたは積層の手順により塗布または積層することを意味することができる。本発明において、「コーティング層」とは、コーティングにより形成された層を意味することができる。
【0090】
本発明の実施形態では、第1有効成分を含む粒子は、分離層をさらに含んでもよい。分離層は、第1有効成分を含むコアと粒子の腸溶性コーティング層との間に位置してもよく、腸溶性コーティング層上に位置してもよく、またコアと腸溶性コーティング層との間と腸溶性コーティング層上の両方に位置してもよい。分離層は、第1有効成分の安定性に影響を及ぼす可能性のある物質との接触を確実に遮断する隔離層の機能を果たし、第1有効成分を含むコアおよびこれを含む粒子が割れたり変形したりすることを防止することができる。したがって、第1有効成分およびそれを含む粒子の安定性を高めることができる。本発明において、分離層は、互換的に隔離層または障壁(バリア)を指すことがある。
【0091】
本発明の実施形態において、分離層は、水溶性または水中で急速に崩壊する層であってもよい。分離層は、水溶性または水中で急速に崩壊する分離層材料で作られた膜、壁、コーティングなどの、当業者によって経口剤形に適用可能なすべての手段を含んでもよい。例えば、分離層は、コーティングパンやコーティング造粒機などの適当な装置、またはコーティングや積層の工程で水および/または有機溶媒が使用される流動床装置において、コーティングまたは積層の手順に従って分離層材料を塗布することによって形成することができる。分離層を形成する分離層材料は、糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの薬学的に許容できる化合物から選択される少なくとも一つであっても良い。分離層は、可塑剤、着色剤、顔料、充填剤、粘度低下剤(anti-viscosity agents)、および帯電防止剤などの添加剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク、および他の添加剤などの添加剤を含んでもよい。分離層は、薬学的に許容される添加剤を溶媒に分散または溶解させ、コアおよび/または腸溶性コーティング層上にコーティングすることにより形成することができる。薬学的に許容される添加剤および溶媒は、互いに矛盾しなければ、上述と実質的に同じであってもよい。分離層は、コアおよび粒子の割れを防止し、コアを腸溶性コーティング層から分離することができるため、本発明の医薬組成物の安定性をさらに向上させることができる。
【0092】
また、第2コンパートメントは、第1コンパートメント上に位置し、第2有効成分を含有する第2有効成分層を含んでもよい。
【0093】
本発明の実施形態において、単位剤形が、配合製剤である医薬組成物における錠剤中錠剤またはコーティング錠である場合、第2有効成分層は、第1コンパートメント上に位置し、これを取り囲んでもよい。この場合、第1コンパートメントは、第1有効成分を含む粒子そのものであってもよく、具体的には、第1有効成分を含有する粒子は錠剤であってもよい。
【0094】
第2有効成分層は、第1有効成分を含む粒子(第1コンパートメント)上に、第2有効成分を含む組成物を、第1有効成分を含む粒子を取り囲むようにコーティングして形成してもよく、または第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む顆粒;および顆粒以外の薬学的に許容される添加剤、を含む混合物を第1有効成分を含む粒子(第1コンパートメント)と共に打錠して形成してもよい。この場合、顆粒は、湿式顆粒であってもよいし、直接圧縮顆粒であってもよい。
【0095】
本発明の実施形態において、第2有効成分層は、第1有効成分を含む粒子(第1コンパートメント)を取り囲むコーティング層であってもよく、第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含むコーティング溶液で形成されてもよい。具体的には、第2有効成分層は、適当なコーティング法や積層法により、第1有効成分を含む粒子(第1コンパートメント)上に、第1有効成分を含む粒子(第1コンパートメント)を取り囲むようにコーティング溶液を塗布することにより形成することができる。
【0096】
添加剤は、当該技術分野で従来から使用され、薬学的に許容されるものであれば、いずれのものも特に限定されることなく、使用することができる。添加剤の非限定的な例としては、糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの薬学的に許容される化合物から選択される少なくとも一つが挙げられる。また、添加剤は、互いに矛盾しなければ、薬学的に許容される添加剤について記載したものと実質的に同じであってもよい。
【0097】
具体的な一実施形態において、第1有効成分を含む粒子が分離層を含む場合、および分離層が第1有効成分を含む粒子における腸溶性コーティング層上に位置する場合、第2有効成分層は分離層上に形成されてもよい。別の具体的な実施形態では、第1有効成分を含む粒子が分離層を含むが、分離層がコアと腸溶性コーティング層との間にのみ存在する場合、すなわち、第1有効成分を含む粒子における分離層が腸溶性コーティング層上に位置していない場合、第2有効成分層は、第1有効成分を含む粒子の腸溶性コーティング層上に位置してもよい。
【0098】
本発明の実施形態において、分離層は、第1有効成分を含む粒子(第1コンパートメント)と第2有効成分層(第2コンパートメント)との間に存在してもよく、この場合、分離層は、第1有効成分と第2有効成分との間の接触を遮断し、第1コンパートメントと第2コンパートメントの腸溶性コーティング層を分離することができる。
【0099】
本発明の医薬組成物は、腸溶性コーティング層や腸溶性コーティング層上に形成された分離層によって、第1有効成分と第2有効成分とが接触しないため、有効成分の優れた安定性を維持できる。特に、分離層を含む場合には、粒子の分割や割れを防止することができるため、優れた製剤安定性を提供することができる。
【0100】
本発明の実施形態において、第2有効成分層上に、さらに着色層が含まれてもよい。
【0101】
着色層は、第2有効成分を含む第2有効成分層上に位置してもよく、第2有効成分層を取り囲む層であってもよく、水溶性または水に速やかに崩壊または溶解する層であってもよい。着色層は、コーティングパン、コーティング造粒機などの適当な装置において、また水および/または有機溶媒をコーティングまたは積層の工程に用いる流動層装置において、コーティングまたは積層の手順によって塗布することができる。着色層は、オパドライなどの着色コーティング基材および/または糖、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの薬学的に許容できる化合物から選択される少なくとも一つを単独または混合して使用して、形成してもよい。また、着色層は、可塑剤、着色剤、顔料、充填剤、粘度低下剤、および帯電防止剤などの添加剤、例えばステアリン酸マグネシウム、二酸化チタン、タルク、および他の添加剤などを含んでもよい。
【0102】
本発明の実施形態において、配合製剤である医薬組成物において、単位剤形が多層錠である場合、多層錠は、第2有効成分を有する粒子(第2コンパートメント)を含む第2有効成分層が第1コンパートメント上に積層されたものであってもよい。この場合、粒子は、顆粒であってもよい。この場合、第1コンパートメントは、第1有効成分を有する粒子を含む層であってもよい。具体的には、多層錠は、顆粒である第1有効成分を含む粒子と、第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む顆粒とを、多層打錠機を用いて打錠することによって形成することができ、顆粒は、湿式顆粒または直接圧縮顆粒であってもよい。
【0103】
多層錠は、第1コンパートメントと第2コンパートメントとの間に分離層をさらに含んでもよく、分離層は、互いに矛盾しなければ、上述したものと実質的に同じであってもよい。
【0104】
多層錠は、着色層をさらに含んでもよく、着色層は、第1コンパートメントと第2コンパートメントとが積層された多層錠を取り囲んでもよい。着色層は、互いに矛盾しなければ、上述したものと実質的に同じであってもよい。
【0105】
本発明の実施形態において、配合製剤である医薬組成物の単位剤形がカプセルである場合、カプセルは、上述した本発明の錠剤が充填されたカプセルであってもよい。この場合、錠剤は、ミニ錠剤であってもよい。具体的には、カプセルは、上述した本発明の錠剤のミニ錠剤が充填されたカプセルであってもよい。
【0106】
別の具体的な実施形態では、カプセルは、第1有効成分を含む粒子;および第2有効成分を含む粒子が充填されたカプセルであってもよい。具体的には、第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子は、それぞれ独立に、錠剤、顆粒、ペレット、またはそれらの混合物であってもよい。
【0107】
第1有効成分を含む粒子は、互いに矛盾しなければ、単位剤形が錠剤である場合に記載した第1有効成分を含む粒子と実質的に同一であってもよい。
【0108】
第2有効成分を含む粒子が錠剤である場合、コアは、第2有効成分を有する顆粒を含む非コーティング錠であってもよい。非コーティング錠は、さらに薬学的に許容される添加剤を含んでもよく、薬学的に許容される添加剤は、顆粒の内部および/または顆粒の外部に含まれてもよい。
【0109】
第2有効成分を含む粒子が顆粒である場合、コアは、第2有効成分を含む初期顆粒であってもよい。顆粒は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。
【0110】
第2有効成分を含む粒子がペレットである場合、コアは、シードと、シード上に位置し、第2有効成分を含むコーティング層とを含んでもよい。ペレットは、薬学的に許容される添加物をさらに含んでもよい。
【0111】
第2有効成分を含む粒子中の薬学的に許容される添加剤は、互いに矛盾しなければ、第1有効成分を含む粒子について記載したものと実質的に同じであってもよい。
【0112】
第2有効成分を含む粒子は、粒子上に分離層をさらに含んでもよく、分離層は、互いに矛盾しなければ、第1有効成分を含む粒子について記載したものと実質的に同じであってもよい。
【0113】
第1有効成分を含む粒子および/または第2有効成分を含む粒子は、第1有効成分を含む粒子および/または第2有効成分を含む粒子上に位置し、粒子を取り囲む着色層をさらに含んでもよく、着色層は、互いに矛盾しなければ、上述したものと実質的に同じであってもよい。
【0114】
本発明の実施形態において、配合製剤としての医薬組成物中の単位剤形はコーティング錠(マルチコーティング錠)であることが好ましい。
【0115】
具体的な一実施形態において、単位剤形は、第1有効成分を含むコア;コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層;および腸溶性コーティング層上に位置し、腸溶性コーティング層を取り囲み、2有効成分を含むコーティング層である第2有効成分層、を含んでもよい。この場合、コアは、非コーティング錠の形態であってもよい。
【0116】
別の具体的な実施形態では、単位剤形は、第1有効成分を含むコア;コア上に位置し、コアを取り囲む分離層;分離層上に位置し、分離層を取り囲む腸溶性コーティング層;および腸溶性コーティング層上に位置し、腸溶性コーティング層を取り囲み、第2有効成分を含むコーティング層である第2有効成分層、を含んでもよい。この場合、コアは、非コーティング錠であってもよい。
【0117】
別の具体的な実施形態では、単位剤形は、第1有効成分を含むコア;コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層;腸溶性コーティング層上に位置し、腸溶性コーティング層を取り囲む分離層;および分離層上に位置し、分離層を取り囲み、第2有効成分を含むコーティング層である第2有効成分層、を含んでもよい。この場合、コアは非コーティング錠であってもよい。
【0118】
別の具体的な実施形態では、単位剤形は、第1有効成分を含むコア;コア上に位置し、コアを取り囲む第1分離層;第1分離層上に位置し、第1分離層を取り囲む腸溶性コーティング層;腸溶性コーティング層上に位置し、腸溶性コーティング層を取り囲む第2分離層;および第2分離層上に位置し、第2分離層を取り囲み、第2有効成分を含むコーティング層である第2有効成分層、を含んでもよい。この場合、コアは、非コーティング錠であってもよい。
【0119】
本発明の具体的な実施形態において、単位剤形は、第2有効成分層上に位置し、第2有効成分層を取り囲む着色層をさらに含んでもよい。
【0120】
本発明の配合製剤としての医薬組成物において、単位剤形から、第1有効成分が制御放出を受け、第2有効成分が即時放出を受けてもよい。具体的には、単位剤形から、第1有効成分が腸(腸液)環境において速やかに放出され(遅延放出)、第2有効成分が胃(胃液)環境において放出されてもよい。このように、本医薬組成物は、投与されると、非ステロイド性抗炎症薬を第1有効成分とする疼痛や炎症に対して優れた治療効果を発揮し、また非ステロイド性抗炎症薬の投与によって引き起こされる、消化不良(胃痛、胸焼け、膨満感、または吐き気)、びらん、胃炎/十二指腸炎、潰瘍、胃腸出血などの胃腸障害または胃腸疾患の症状、および出血過多に起因する貧血なども予防または治療し、それにより副作用を最小限に抑えることができる。特に、非ステロイド性抗炎症薬による継続的な治療が必要な慢性疼痛や炎症性疾患の対象者が、非ステロイド性抗炎症薬の服用を継続する場合であっても、非ステロイド性抗炎症薬の服用によって引き起こされる副作用を治療しながら、非ステロイド性抗炎症薬の服用によって引き起こされる副作用の再発を防止することが可能である。
【0121】
また、本発明の医薬組成物は、一つの単位剤形中に第1有効成分として非ステロイド性抗炎症薬を、第2有効成分としてテゴプラザンを含有するため、有効成分を別々に投与するよりも優れた服薬の利便性と服薬遵守性を示す。さらに、この医薬組成物は、第1有効成分と第2有効成分とを一つの単位剤形中に含むにもかかわらず、有効成分の薬効を損なうことなく、優れた安定性と優れた薬理効果を発揮することができる。
【0122】
本発明は、本発明の医薬組成物を調製するための方法を提供することができる。
【0123】
本発明の医薬組成物を調製するための方法は:
第1有効成分を含む第1コンパートメントを形成すること;および
第1コンパートメント上に第2有効成分を含む第2コンパートメントを形成すること、を含んでもよい。
【0124】
本発明の実施形態では、医薬組成物を調製するための方法において、第1有効成分を含む第1コンパートメントの形成は、第1有効成分を含む粒子の調製を含んでもよく、第1有効成分を含む粒子の調製は:
第1有効成分を含むコアを形成すること;および
コア上に腸溶性コーティング層を形成すること、を含んでもよい。
【0125】
腸溶性コーティング層の形成において、第1有効成分を含むコアを含む粒子と、コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層とが形成されてもよい。
【0126】
粒子は、錠剤、顆粒またはペレットであってもよく、粒子、錠剤、顆粒、ペレットおよびそれらの調製は、互いに矛盾しなければ、医薬組成物について記載したものと実質的に同じであってもよい。例えば、粒子が錠剤である場合、非コーティング錠は、第1有効成分を含有する顆粒を打錠することにより調製することができ、顆粒は、第1有効成分と医薬的に許容される添加剤との混合物から、高速せん断造粒機を用いた湿式造粒または流動層造粒機を用いた直接圧縮造粒により調製することができる。具体的には、顆粒は、湿式造粒によって調製することができる。
【0127】
本発明の実施形態において、第1有効成分を含む粒子の調製において、コア上に腸溶性コーティング層を形成する前および/または後に分離層を形成する工程をさらに含んでもよい。
【0128】
腸溶性コーティング層を形成する前に分離層の形成をさらに含む場合には、分離層が形成されたコア上に腸溶性コーティング層を形成してもよい。腸溶性コーティング層の形成後に分離層の形成をさらに含む場合には、腸溶性コーティング層上に分離層を形成してもよい。
【0129】
本発明の実施形態において、第2有効成分を含有する第2コンパートメントの形成は、第1コンパートメント上に第2有効成分を含有する組成物をコーティングすることを含んでもよい。具体的には、第1有効成分を有するコアを含み、コア上に位置し、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子上に、第2有効成分を含む組成物をコーティングすることを含んでもよい。粒子が、コアと腸溶性コーティング層との間および/または腸溶性コーティング層上に分離層をさらに含む場合、分離層が形成された腸溶性コーティング層上に第2有効成分を含む組成物をコーティングすることを含んでもよい。
【0130】
本発明の実施形態では、第1コンパートメント上に第2有効成分を含む組成物をコーティングした後、着色層をコーティングすることをさらに含んでもよい。着色層は、上述したものと実質的に同じであってもよい。
【0131】
具体的な一実施形態において、本発明の医薬組成物を調製するための方法は:
第1有効成分を含むコアを形成すること;
コア上にコアを取り囲む腸溶性コーティング層を形成すること;および
腸溶性コーティング層上に腸溶性コーティング層を取り囲む、第2有効成分を含む第2有効成分層(第2有効成分コーティング層)を形成すること、
を含んでもよい。
【0132】
別の具体的な実施形態において、本発明の医薬組成物を調製するための方法は:
第1有効成分を含むコアを形成すること;
コア上に分離層を形成すること;および
分離層上に分離層を取り囲む腸溶性コーティング層を形成すること;および
腸溶性コーティング層上に腸溶性コーティング層を取り囲む、第2有効成分を含有する第2有効成分層(第2有効成分コーティング層)を形成すること、
を含んでもよい。
【0133】
さらに別の具体的な実施形態において、本発明の医薬組成物を調製するための方法は:
第1有効成分を含むコアを形成すること;
コア上にコアを取り囲む腸溶性コーティング層を形成すること;
腸溶性コーティング層上に腸溶性コーティング層を取り囲む分離層を形成すること;および
分離層上に分離層を取り囲む、第2有効成分を含有する第2有効成分層(第2有効成分コーティング層)を形成すること
を含んでもよい。
【0134】
さらに別の具体的な実施形態では、本発明の医薬組成物を調製するための方法は:
第1有効成分を含むコアを形成すること;
コア上に第1分離層を形成すること;
第1分離層上に第1分離層を取り囲む腸溶性コーティング層を形成すること;
腸溶性コーティング層上に腸溶性コーティング層を取り囲む第2分離層を形成すること;および
第2分離層上に第2分離層を取り囲む、第2有効成分を含む第2有効成分層(第2有効成分コーティング層)を形成すること、
を含んでもよい。
【0135】
上記の具体的な実施形態において、第2有効成分層上に、第2有効成分層を取り囲む、着色層を形成することをさらに含んでもよい。
【0136】
上記の具体的な実施形態において、コアは非コーティング錠であってもよく、第1有効成分を含むコアの形成は、第1有効成分を含む顆粒を打錠して、第1有効成分を含む非コーティング錠であるコアを形成することであってもよい。
【0137】
本発明の医薬組成物の調製方法において、医薬組成物、第1有効成分、第2有効成分、コア、腸溶性コーティング層、分離層、第2有効成分層、および着色層は、互いに矛盾しなければ、医薬組成物について記載したものと同じであってもよい。
【0138】
本発明は、本発明の医薬組成物を投与することを含む、炎症性疾患、疼痛疾患、および/または胃腸疾患を予防または治療するための方法を提供することができる。
【0139】
本発明の予防または治療方法では、薬学的有効量の医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することができる。
【0140】
本発明において「薬学的有効量」とは、医学的治療に適用される合理的な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味することができ、有効量のレベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬剤の活性、薬剤に対する感受性、投与時間、投与経路および排泄率、治療期間および併用薬剤などの要因、ならびに医療分野において周知の要因に応じて決定することができる。以上のような要因を考慮すると、副作用のない最小限の量で最大の効果が得られるような量による投与を行うことが重要であり、その量は当業者が容易に決定することができる。
【0141】
本発明の予防または治療方法において、医薬組成物は、本発明の医薬組成物について記載したものと実質的に同じであってもよい。また、対象および投与は、本発明の医薬組成物について記載したものと同じであってもよい。
【0142】
本発明は、炎症性疾患、疼痛性疾患および/または胃腸疾患を予防または治療するための本発明の医薬組成物の使用を提供することができる。
【0143】
本発明は、炎症性疾患、疼痛性疾患および/または胃腸疾患を予防または治療するための薬剤の調製における本発明の医薬組成物の使用を提供することができる。
【0144】
上記の使用において、医薬組成物は、本発明の医薬組成物について記載したものと実質的に同じであってもよい。
【発明の効果】
【0145】
本発明の医薬組成物は、非ステロイド性抗炎症薬とテゴプラザンを1単位剤形で含んでもよいため、服薬の利便性と遵守性を高め、有効成分や製剤の安定性を向上させ、非ステロイド性抗炎症薬の制御放出を維持しながらテゴプラザンを即時放出の形態に維持し、それによりそれぞれを同時投与した場合と同等の生物学的利用能を発揮する。したがって、既存の非ステロイド性抗炎症薬の存在によって引き起こされる胃腸系の副作用を顕著に改善し、最小限に抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る錠剤を示す模式図である。
【
図2-4】
図2~
図4は、テゴプラザンの結晶形、非晶形、および多形結晶形を含むテゴプラザン層におけるテゴプラザンの結晶形、非晶形、および多形結晶形のDSC結果を示す図である。
図2~
図4において、「初期」は初期段階で保管した結果を、「ストレス4週間」はストレス条件で4週間保管した後の結果をそれぞれ表す。
【
図5】
図5は、本発明の具体的な一実施形態による錠剤のインビボ薬物動態パラメータの結果を示す図である。
図5のAおよびBにおいて、参考文献は、K-CAB錠25 mgおよびナプロシンEC 500 mgのそれぞれを同時投与対照薬とした場合の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0147】
以下、本発明につき実施例(実施形態)を挙げて説明する。ただし、以下の実施例(実施形態)は、本発明を説明するためだけのものであり、したがって、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0148】
実施例1~5:コア錠の調製
下記の表1に記載の組成物を用いて、コア錠を調製した。具体的には、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースを精製水に溶解して得られる結合剤溶液を用いて、ナプロキセンとクロスカルメロースナトリウムの混合物、またはナプロキセンとクロスポビドンの混合物を高速せん断造粒機を用いた湿式造粒、または流動層造粒機を用いた造粒に供した。次いで、コロイド状二酸化ケイ素およびステアリン酸マグネシウムを添加して混合し、ナプロキセンコア(非コーティング錠)調製用混合物を調製した。この混合物を打錠機(Sejong Pharmatech社製)を用いて圧縮し、錠剤とした。
【0149】
【表1】
上記の表の総重量には溶媒の重量は含まれない。
【0150】
試験例1:ナプロキセン溶出試験
実施例1~5のコア錠とナクセンF錠500 mg(対照薬、Chong Kun Dang)について、パドル法に従って、pH 7.4の溶液900 mL中、ナプロキセン溶出試験を実施した。試験開始後5分、10分、15分、30分、45分、および60分に試験液を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いてナプロキセンの溶出率を確認した。具体的な試験条件は以下の通りである。
【0151】
<高速液体クロマトグラフィーの条件>
- カラム: 内径約4.6 mm、長さ約15 cmのステンレス管に5μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリルシリカゲルを充填したカラムまたはそれに相当するカラム
- カラム温度:約30℃の一定温度
- 検出器:紫外吸収分光光度計(波長:262 nm)
- 流量:1.0 mL/分
- 移動相:0.01 mol/L酢酸アンモニウム緩衝液:アセトニトリル(11:9)の混合物
(0.01 mol/L酢酸アンモニウム緩衝液:酢酸アンモニウム(CH3COONH4)0.77 gを水に溶解して1 Lとし、0.45μmのメンブランフィルターでろ過して調製)
- 溶出液:pH 7.4溶液、900 mL、パドル法、75 rpm
実施例1~5のコア錠およびナクセンF 500 mgからのナプロキセンの溶出率を確認した結果を表2に示す。
【0152】
【0153】
上記の表2に示すように、高速せん断造粒により調製した顆粒を用いて調製した実施例1のコア錠と、流動層造粒を用いて調製した顆粒を用いて調製した実施例5のコア錠の結果が示すように、顆粒の調製方法による溶出率の差はなく、実施例1~4に示すように錠剤の組成による溶出率の差がないことが確認できる。
【0154】
実施例6~12:分離層と腸溶層の塗布
実施例1に従って調製したコア錠に、下記の表3の組成を有する分離層および腸溶層を塗布した。具体的には、下記の表3の組成で調製したヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)またはエチルセルロース(EC)溶液を用いて、実施例1に従って調製したコア錠の表面に一次分離層を塗布し、積層した。その上に、メタクリル酸共重合体L30 D-55(商品名オイドラギットRL30 D-55;エボニック(EVONIK)工業社製)から調製した溶液を用いて腸溶性層を塗布し積層した(実施例6~11)。実施例12は、コア錠の表面に直接腸溶層を形成することにより調製した。参考までに、本発明の実施形態において、メタクリル酸共重合体L30 D-55(商品名EudragitR L30 D-55;エボニック工業社製)の量は、固形分としての量を意味する。
【0155】
【表3】
上記の表の総重量には溶媒の重量は含まれない。
【0156】
試験例2:ナプロキセン溶出試験
実施例6~12およびナプロシンEC 500 mg(ロシュ社製)について、パドル法に従って、pH 7.4の溶液900 mL中、ナプロキセンの溶出試験を実施した。試験開始後5分、10分、15分、30分、45分、および60分に試験液を採取し、高速液体クロマトグラフを用いてナプロキセンの溶出率を確認し、その結果を表4に示す。高速液体クロマトグラフィーの条件は、上記の試験例1と同じとした。
【0157】
【0158】
上記の表4の実施例6~10および実施例11の結果が示すように、一次分離層のコーティング基材(実施例6~10:HPMC、実施例11:EC)、HPMC粘度と溶媒、および溶媒比によってナプロキセンの溶出に差がないことが確認できる。また、実施例12に示すように、一次分離層がない場合には、腸溶層の直接的な影響により、ナプロキセンの溶出が遅延することが確認できる。
【0159】
実施例13~19:各腸溶性コーティング基材に対する腸溶性層の塗布について
実施例6と同様に調製した一次分離層を塗布した錠剤上に、メタクリル酸共重合体、クエン酸トリエチル、ポリソルベートからなる腸溶層をコーティングし、積層した。このとき、下記の表5の組成で、実施例13~19と同様に各基材、メタクリル酸系共重合体の比率でコーティングを行った。
【0160】
【表5】
上記の表の総重量には溶媒の重量は含まれない。
【0161】
試験例3:耐酸性試験
調製した実施例13~19について、耐酸性試験を行った。耐酸性評価は、韓国薬局方に基づき、0.1N塩酸水溶液を用いた溶解装置で2時間のナプロキセンの溶出率を評価し、ナプロキセンの溶出率が10%未満であることに基づいて実施した。高速液体クロマトグラフィーの条件は、上記の試験例1の条件と同じとした。耐酸性評価の結果は、下記の表6に示す通りである。
【0162】
【0163】
上記の表6から分かるように、実施例13~15の結果が示すように、腸溶性コーティング層の含有量によって耐酸性に差があることが確認できる。また、実施例16~19の結果が示すように、腸溶性コーティング基材の種類や溶媒によって耐酸性に差がないことが確認できる。
【0164】
実施例20~28:二次分離層およびテゴプラザン層の塗布
実施例12の腸溶層を含む錠剤の表面、または実施例13の一次分離層および腸溶層を含む錠剤の表面に、下記の表7の組成で調製したヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはエチルセルロースの溶液を用いて二次分離層をコーティングして積層した。有効成分として、テゴプラザン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびポリソルベートからなる溶液を用いて、下記の表7の組成に示すように、テゴプラザンをその上にコーティングして積層した(実施例20~24、27および28)。実施例25および26では、下記の表7に示すように、二次分離層をコーティングせずに、テゴプラザンコーティング層を直接コーティングして積層した。
【0165】
【表7】
上記の表の総重量には溶媒の重量は含まれない。
【0166】
上記の表7に示すように、実施例20~23、27および28の錠剤は、ナプロキセンコア錠上に一次分離層-腸溶層-二次分離層-テゴプラザンの4層のコーティング層を含む。実施例24は、ナプロキセンコア錠上に腸溶層-二次分離層-テゴプラザンコーティング層の3つのコーティング層を含む。実施例25は、ナプロキセンコア錠に一次分離層-腸溶層-テゴプラザンコーティング層の3つのコーティング層を含む。実施例26は、ナプロキセンコア錠に腸溶層-テゴプラザンコーティング層の2つのコーティング層を含む。
【0167】
試験例4:テゴプラザンの溶出試験結果
調製した実施例20~28に関して、韓国薬局方のパドル法に従って、pH 1.2の溶液900 mL中、テゴプラザンの溶出試験を実施した。試験開始後5分、10分、15分、30分、45分、および60分に試験液を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いてテゴプラザンの溶出率を確認した。具体的な試験条件は以下の通りである。
【0168】
<高速液体クロマトグラフィーの条件>
- カラム:内径約4.6 mm、長さ約15 cmのステンレス管に液体クロマトグラフィー用の5μmオクタデシルシリルシリカゲルを充填したカラムまたはそれと同等なカラム。
- カラム温度:約30℃の一定温度
- 検出器:紫外吸収分光光度計(波長:262nm)
- 流量: 1.0 mL/分
- 移動相:0.01 mol/L酢酸アンモニウム緩衝液:アセトニトリル(11:9)の混合液
(0.01 mol/L酢酸アンモニウム緩衝液:酢酸アンモニウム(CH3COONH4)0.77 gを水に溶解して1 Lとし、0.45μmのメンブランフィルターでろ過して調製)
- 溶出液: pH 1.2 溶液、900 mL、パドル法、50 rpm
実施例20~28のテゴプラザンの溶出試験の結果を表に示す。
【0169】
【0170】
上記の表8から分かるように、実施例20~23の結果が示すように、二次分離層基材の粘度および種類のそれぞれによって、テゴプラザンの溶出に差がないことが確認できる。また、実施例20および実施例24~26の結果から、一次分離層および/または二次分離層の有無によって、テゴプラザンの溶出率に差がないことが確認できる。また、実施例20および実施例27~28の結果から、テゴプラザンコーティング層のコーティング基材(HPMC)の粘度によってもテゴプラザンの溶出率に差がないことが確認できる。
【0171】
試験例5:テゴプラザンの安定性試験結果
調製した実施例20~28をHDPE容器に入れ、ストレス条件下(60℃、80%RH)で4週間保管した後、高速液体クロマトグラフィー(初期およびストレス条件下4週間保管後(ストレス4週間))を用いて、不純物量の増加を確認した。具体的な試験条件は以下の通りである:
<高速液体クロマトグラフィーの条件>
- カラム:内径約4.6 mm、長さ約15 cmのステンレス管に液体クロマトグラフィー用の2.7μmオクタデシルシリルシリカゲルを充填したカラム
- カラム温度:約30℃の一定温度
- 検出器:紫外吸収分光光度計(波長:220 nm)
- 流量: 0.8 mL/分
- 測定範囲:試験液注入後25分間
- 移動相A:0.01 mol/L酢酸アンモニウム緩衝液:アセトニトリル(19:1)の混合液
(0.01 mol/L酢酸アンモニウム緩衝液:酢酸アンモニウム(CH3COONH4)0.77 gを水に溶解して1 Lとし、希酢酸でpH 6.5±0.2に調整し、0.45 μmのメンブランフィルターでろ過して調製)
- 移動相 B: アセトニトリル
- 移動相勾配(gradient)条件
【0172】
【表9】
テゴプラザンの安定性試験の結果を表 10 に示す。
【0173】
【0174】
上記の表10の結果によれば、二次分離層の有無および二次分離層の構成によって、テゴプラザンの安定性に差がないことが確認できる。また、実施例20~28は、いずれも総不純物の基準値である1.0%以下の値で安定であることが確認できる。
【0175】
試験例6:テゴプラザンコーティング液の安定性試験結果
下記の表11の組成に示すように、テゴプラザン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびポリソルベートから作成した溶液から、有効成分であるテゴプラザンのコーティング溶液を調製した。具体的には、下記の表11の組成に示すように、テゴプラザンの結晶形、非晶形、および多形結晶形を含むコーティング液を調製し、20 mLガラスバイアルに入れ、ストレス条件(60℃、80%RH)で4週間保管して、DSCにより結晶形の変化を観察した。その結果を
図2~
図4に示す。
【0176】
【0177】
図2~
図4から分かるように、テゴプラザンの結晶形、非晶形、および多形結晶形から作成したコーティング溶液の組成から、結晶形の変化が見られないことが確認できる。
【0178】
実施例34~39:テゴプラザン結晶形によるテゴプラザンコーティング層と着色層の塗布
下記の表12の組成に示すように、有効成分であるテゴプラザンを、テゴプラザン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリエチレングリコール、およびポリソルベートから作成した溶液を用いてコーティングして積層し、第4層のコーティング錠を作製した。その上に、オパドライホワイトと精製水から作成した溶液を用いて第5着色層をコーティングして積層し、実施例34~39のマルチコーティング錠を作製した。
【0179】
【表12】
上記の表の総重量には溶媒の重量は含まれない。
【0180】
試験例7:テゴプラザンの安定性試験
調製した実施例34~39をHDPE容器に入れ、ストレス条件下(60℃、80%RH)で4週間保管した後、高速液体クロマトグラフィーを用いて、不純物量の増加を確認した。高速液体クロマトグラフィーの条件は、上記の試験例5の条件と同じとした。その結果を表13に示す。
【0181】
【0182】
上記の表13の結果から分かるように、テゴプラザンの非晶形および結晶形、ならびにテゴプラザンの塩によって、テゴプラザンの安定性に差がないことが確認できる。特に、実施例34~39は、いずれも総不純物の基準である1.0%以下の結果を示すことが確認できた。すなわち、本発明の医薬組成物は、テゴプラザンの安定性に優れていることが確認きる。
【0183】
試験例8:テゴプラザンの溶出試験
調製した実施例34~39に関して、韓国薬局方のパドル法に従って、pH 1.2の溶液900 mL中、テゴプラザンの溶出試験を実施した。試験開始後5分、10分、15分、30分、45分、および60分に試験液を採取し、高速液体クロマトグラフィーを用いてテゴプラザンの溶出率を確認し、高速液体クロマトグラフィーの条件は上記の試験例4の条件と同じとした。その結果を表14に示す。
【0184】
【0185】
上記の表14の結果が示すように、テゴプラザンの結晶形および非晶形、ならびにテゴプラザンの塩によって、テゴプラザンの溶出率に差がないことが確認できる。
【0186】
試験例9:耐酸性試験
調製した実施例34について、耐酸性試験を行った。耐酸性評価は、韓国薬局方に従い、0.1N塩酸溶液とpH 4.0溶液を用いた溶解装置で2時間ナプロキセンの溶出率を評価し、ナプロキセンの溶出率が10%未満であることに基づいて実施した。高速液体クロマトグラフィーの条件は、上記の試験例1の条件と同じとした。耐酸性評価の結果は、下記の表15に示す通りである。
【0187】
【0188】
上記の表15から分かるように、実施例34に関して、0.1N HCl溶液およびpH 4.0溶液で2時間ナプロキセンが溶出しないことが確認できる。したがって、本発明の医薬組成物は、胃液環境においてナプロキセンを放出しないことが分かる。
【0189】
試験例10:インビボ薬物動態パラメータ試験
調製した実施例34を用い、ミニブタを用いてナプロキセンおよびテゴプラザンの生物学的利用能を確認した。ミニブタ8頭を対象とした無作為交差試験を行い、対照薬としてK-CAB錠25 mgおよびナプロシンEC 500 mgを同時投与した。
【0190】
具体的には、助手2名で動物が全く動かないようにした後、被験物質を舌の内側に挿入し、口を閉じて咽頭を軽く撫でて嚥下させ、飲み込むかどうかを確認する。その後、注射器を用いて、動物に約10 mLの水を与える。投与前に16時間以上飼料を与えずに絶食させ(一晩絶食)、被験物質投与後4時間後に飼料を投与した。血液は投与前に1回採取し、被験物質または対照物質投与後0.5、1、1.5、2、4、6、8、10、12、18、および24時間後(計12時点)に再度採取した。各採血時刻に橈側皮静脈から約3.0 mLの血液試料を採取した。薬物動態パラメータの結果を
図5に示す。
【0191】
図5の結果が示すように、実施例34のナプロキセンおよびテゴプラザンの薬物動態パラメータは、対照薬物の同時投与と同様に十分なpKパラメータを示すことが確認できる。したがって、実施例34は対照薬との同時投与と同様に優れた治療効果を示すことが分かる。
【0192】
したがって、本発明の医薬組成物は、テゴプラザンと非ステロイド系抗炎症薬とを一つの単位剤形中に配合した配合製剤であり、服薬の利便性および服薬遵守性に優れ、生物学的利用能など、市販の対照薬と同時投与した場合と同様の薬物動態パラメータを示し、それにより各成分の薬効を低下させることなく優れた効果を発揮する。