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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】タンクカバーシール構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 35/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B62J35/00 F
B62J35/00 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023544003
(86)(22)【出願日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2022032223
(87)【国際公開番号】W WO2023027175
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021138075
(32)【優先日】2021-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】前田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】横村 光
(72)【発明者】
【氏名】熊坂 剛志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 晋
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-93568(JP,A)
【文献】特開2007-168763(JP,A)
【文献】特開2010-208421(JP,A)
【文献】特開2008-50006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空のタンク本体(21)と、前記タンク本体(21)を覆うタンクカバー(31)と、を備え、
前記タンク本体(21)の上部には、上下方向に延びる給油筒(24)と、前記給油筒(24)の外周側を囲って余剰燃料を受ける給油トレー(26)と、を備え、
前記タンクカバー(31)は、前記給油トレー(26)を設置した箇所を上方に露出させるカバー開口形成部(33)を備え、
前記給油トレー(26)の外周部には、上方に起立するトレー外周壁(26b)が形成され、
前記カバー開口形成部(33)の内周部には、下方に垂下するカバー内周壁(33b)が形成され、
前記トレー外周壁(26b)と前記カバー内周壁(33b)との間には、シール部材(35,135,235,335)が設けられ、
前記シール部材(35,135,235,335)は、前記トレー外周壁(26b)の上端縁(26b1)と前記カバー内周壁(33b)の下端縁(33b1)との間に上下方向で挟み込まれ、
前記シール部材(35,135,235,335)は、前記カバー内周壁(33b)の前記下端縁(33b1)に支持されるカバー側溝部(36a)と、前記トレー外周壁(26b)の前記上端縁(26b1)に支持されるトレー側溝部(37a)と、を備えていることを特徴とするタンクカバーシール構造。
【請求項2】
前記トレー外周壁(26b)の前記上端縁(26b1)と前記カバー内周壁(33b)の前記下端縁(33b1)とは、前記給油筒(24)の径方向で互いに避けて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のタンクカバーシール構造。
【請求項3】
前記カバー内周壁(33b)の前記下端縁(33b1)よりも径方向外側に、前記トレー外周壁(26b)の前記上端縁(26b1)が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンクカバーシール構造。
【請求項4】
前記カバー側溝部(36a)の方が、前記トレー側溝部(37a)よりも深く形成されていることを特徴とする請求項1に記載のタンクカバーシール構造。
【請求項5】
前記カバー内周壁(33b)は、前記給油筒(24)の軸方向に対して、下側ほど内周側に位置するように傾斜して延びていることを特徴とする請求項1又はに記載のタンクカバーシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクカバーシール構造に関する。
本願は、2021年8月26日に、日本に出願された特願2021-138075号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク本体をタンクカバーで覆った燃料タンクが知られている(例えば、特許文献1参照)。この構成において、タンク本体の上部には、給油口の周囲を囲う給油口トレーを備えている。タンクカバーの上部には、給油トレー設置部位を上方に露出させるカバー開口形成部を備えている。給油口トレーとカバー開口形成部との間には、シール部材が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特開2020-093568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構成において、カバー開口形成部の内周部には、下方に垂下するカバー内周壁を備えている。給油トレーの外周部には、上方に起立するトレー外周壁を備えている。カバー内周壁は、トレー外周壁よりも径方向外側に位置している。カバー内周壁の下方には、シール部材が配置されている。シール部材は、タンクカバーの上壁部とタンク本体の上壁部との間に保持されるとともに、径方向内側のトレー外周壁に接触している。
上記従来の構成において、シール部材はブロック状の大きな断面形状を有しており、コンパクト化の面で課題がある。
【0005】
そこで本発明は、タンク本体をタンクカバーで覆った燃料タンクのタンクカバーシール構造において、給油トレーとタンクカバーとの間をコンパクトにシールすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、本発明の態様は以下の構成を有する。
(1)本発明の態様に係るタンクカバーシール構造は、中空のタンク本体(21)と、前記タンク本体(21)を覆うタンクカバー(31)と、を備え、前記タンク本体(21)の上部には、上下方向に延びる給油筒(24)と、前記給油筒(24)の外周側を囲って余剰燃料を受ける給油トレー(26)と、を備え、前記タンクカバー(31)は、前記給油トレー(26)を設置した箇所を上方に露出させるカバー開口形成部(33)を備え、前記給油トレー(26)の外周部には、上方に起立するトレー外周壁(26b)が形成され、前記カバー開口形成部(33)の内周部には、下方に垂下するカバー内周壁(33b)が形成され、前記トレー外周壁(26b)と前記カバー内周壁(33b)との間には、シール部材(35,135,235,335)が設けられ、前記シール部材(35,135,235,335)は、前記トレー外周壁(26b)の上端縁(26b1)と前記カバー内周壁(33b)の下端縁(33b1)との間に上下方向で挟み込まれ、前記シール部材(35,135,235,335)は、前記カバー内周壁(33b)の前記下端縁(33b1)に支持されるカバー側溝部(36a)と、前記トレー外周壁(26b)の前記上端縁(26b1)に支持されるトレー側溝部(37a)と、を備えている。
本発明の上記(1)に記載のタンクカバーシール構造によれば、給油トレーとタンクカバーとの間のシール部材が、トレー外周壁の上端縁とカバー内周壁の下端縁との間に上下方向で挟み込まれることで、シール部材によって給油トレーとタンクカバーとの間をコンパクトにシールすることができる。
また、カバー内周壁の下端縁およびトレー外周壁の上端縁がそれぞれ溝部に入り込んでシール部材を支持することで、さらなるシール性の向上を図ることができる。
【0007】
(2)上記(1)に記載のタンクカバーシール構造では、前記トレー外周壁(26b)の前記上端縁(26b1)と前記カバー内周壁(33b)の前記下端縁(33b1)とは、前記給油筒(24)の径方向で互いに避けて配置されてもよい。
本発明の上記(2)に記載のタンクカバーシール構造によれば、トレー外周壁の上端縁とカバー内周壁の下端縁とが、給油筒の径方向で互いに避けて配置されることで、トレー外周壁の上端縁とカバー内周壁の下端縁とが互いに上下方向で対向してシール部材を挟み込む場合に比べて、シール部材が局部的に圧縮されることを抑え、シール性を良好に確保することができる。
【0008】
(3)上記(1)又は(2)に記載のタンクカバーシール構造では、前記カバー内周壁(33b)の前記下端縁(33b1)よりも径方向外側に、前記トレー外周壁(26b)の前記上端縁(26b1)が配置されてもよい。
本発明の上記(3)に記載のタンクカバーシール構造によれば、タンク外側に位置するタンクカバーのカバー内周壁から給油トレー側に水滴等が落ちても、この水滴等が給油トレーに受け止められるため、給油トレーよりも外側(タンクカバーに覆われる部位)に水滴等が浸入することを抑えることができる。
【0010】
(5)上記(1)に記載のタンクカバーシール構造では、前記カバー側溝部(36a)の方が、前記トレー側溝部(37a)よりも深く形成されてもよい。
本発明の上記(5)に記載のタンクカバーシール構造によれば、タンク外側に位置するタンクカバーのカバー内周壁から水滴等が浸入することを抑えやすくなる。また、シール部材をタンクカバーの小組部品として取り扱いやすくなり、かつ小組状態のタンクカバーをタンク本体に取り付けやすくなる。すなわち、小組状態のタンクカバーをタンク本体に取り付ける際、シール部材のトレー側溝部が視認されなくても、トレー側溝部とトレー外周壁とを嵌合させやすくなる。
【0011】
(6)上記(1)又は(5)に記載のタンクカバーシール構造では、前記カバー内周壁(33b)は、前記給油筒(24)の軸方向に対して斜め下方に延びてもよい。
本発明の上記(6)に記載のタンクカバーシール構造によれば、カバー内周壁の斜めの面でシール部材との密着度を向上させ、シール部材の材料(ゴム)の体積を減らすことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タンク本体をタンクカバーで覆った燃料タンクのタンクカバーシール構造において、給油トレーとタンクカバーとの間をコンパクトにシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における自動二輪車の右側面図である。
図2】上記自動二輪車の給油部の車体左右中心面に沿う断面図である。
図3図2の断面を含む斜視図である。
図4図2の第一要部拡大図である。
図5図2の第二要部拡大図である。
図6】実施形態の第一変形例を示す断面図である。
図7】実施形態の第二変形例を示す断面図である。
図8】実施形態の第三変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0015】
<車両全体>
図1に示すように、本実施形態は、鞍乗り型車両の一例としての自動二輪車1に適用されている。自動二輪車1の前輪2は、左右一対のフロントフォーク3の下端部に支持されている。左右フロントフォーク3の上部は、ステアリングステム4を介して、車体フレーム5の前端部のヘッドパイプ6に支持されている。ステアリングステム4のトップブリッジ上には、バータイプの操向ハンドル4aが取り付けられている。
【0016】
車体フレーム5は、ヘッドパイプ6と、ヘッドパイプ6から後方へ後下がりに延びるメインフレーム7と、メインフレーム7の後端部から下方へ延びるピボットフレーム8と、メインフレーム7およびピボットフレーム8の後部から後方へ後上がりに延びるシートフレーム9と、を備えている。
左右ピボットフレーム8には、スイングアーム11の前端部が揺動可能に枢支されている。スイングアーム11の後端部には、自動二輪車1の後輪12が支持されている。
【0017】
メインフレーム7の下方には、自動二輪車1の原動機であるエンジン(内燃機関)13を含むパワーユニットPUが搭載されている。パワーユニットPUは、前部に位置するエンジン13と後部に位置する変速機14とを一体に有している。変速機14ひいてはパワーユニットPUの出力軸は、後輪12と例えばチェーン式伝動機構を介して連結されている。
【0018】
メインフレーム7の上方には、燃料タンク16が支持されている。燃料タンク16の後方でシートフレーム9の上方には、前シート17および後シート18が前後に並んで支持されている。シートフレーム9の周囲は、リヤボディカバー23に覆われている。
【0019】
後部同乗者が着座する後シート18は、運転者が着座する前シート17よりも上方に位置している。前後シート17,18の周辺(メインフレーム7およびピボットフレーム8よりも後方の部位、車体後部)は、後上がりのシートフレーム9に支持されている。車体後部の各部品は、全体的に後上がりの態様をなしている。
【0020】
<燃料タンク>
図2図3を併せて参照し、燃料タンク16は、タンクカバー31に覆われている。燃料タンク16は、前シート17に着座した運転者の両膝間に位置するように配置されている。燃料タンク16は、中空のタンク本体21の上端部に給油口22を有し、この給油口22をヒンジ式のタンクキャップ29により開閉可能とする。タンク本体21は、例えばプレス成型された鋼板部品を溶接等により一体に結合して構成されている。タンク本体21の周囲(外面側)は、樹脂製のタンクカバー31に覆われている。燃料タンク16およびタンクカバー31は、例えば左右対称に構成されている。
【0021】
タンク本体21の前部上端には、側面視で前下がりに傾斜した平坦状の上壁部23を備えている。上壁部23の略中央には、側面視で上壁部23と直交するように傾斜した円筒状の給油筒24を備えている。給油筒24の上端側には、タンク本体21の給油口22が位置している。給油筒24および給油口22の中心軸線C1は、車体左右中央に位置している。
【0022】
タンクカバー31は、タンク本体21の外面との間に隙間を空けてタンク本体21を覆う。タンクカバー31は、特にタンク本体21の上部を覆うとともに、例えばタンク本体21の上部から左右側部に渡る範囲を覆う。タンクカバー31は、自動二輪車1の外観に露出する外装部品であり、例えばポリプロピレンやABS樹脂等の合成樹脂で構成されている。タンクカバー31は、例えば左右両側のサイドカバーと左右サイドカバー間のセンターカバーとに分割されてもよい。
【0023】
給油筒24は、上下方向に延びる円筒状に形成されている。給油筒24の軸方向は、車両上下方向に対して、上側ほど前側に位置するように傾斜(前傾)している。給油筒24は、燃料タンク16における前下がりの上壁部23と直交するように配置されている。給油筒24の上部は、上側ほど縮径するテーパ部24aとされる。テーパ部24aは、給油トレー26内に突出するように配置されている。
【0024】
タンク本体21の上壁部23には、給油トレー26が配置されたタンク開口形成部25を備えている。タンク開口形成部25は、上壁部23の平面視で円形状のタンク開口25aを形成している。上壁部23の平面視とは、図2において上壁部23と直交する方向(軸線C1に沿う方向)から見た上面視である。タンク開口形成部25は、タンク開口25aの周縁からタンク内側(下方)に屈曲して延びるタンク内周壁25bを形成している。
【0025】
給油トレー26は、上方に開放する浅い容器形状をなしている。給油トレー26は、平面視でタンク開口25aと同径の円形状をなしている。給油トレー26は、給油口22から溢れた燃料(余剰燃料)を受け止める。給油トレー26は、タンク本体21の上壁部23と略平行に配置されるトレー底壁26aと、トレー底壁26aの外周縁から上方に屈曲して延びるトレー外周壁26bと、を備えている。トレー外周壁26bは、タンク本体21の上壁部23を越えて上方まで延びている。タンク外周壁26bは、タンク内周面に内周側から嵌合し、溶接等により結合されている。タンク開口25aは、給油トレー26によって閉塞されている。
【0026】
トレー底壁26aは、トレー外周壁26bから離間した内周部に、給油筒24の上部を接続する管接続部27を備えている。管接続部27は、トレー底壁26aに平面視円形状のトレー開口27aを形成し、給油筒24の上部をトレー底壁26aの上方に突出させている。
【0027】
管接続部27は、トレー開口27aの周縁から上方に屈曲して立ち上がり、テーパ部24aに外周側から嵌合する外テーパ部27bと、外テーパ部27bの上端から内周側に屈曲して延びる円環状の頂壁27cと、頂壁27cの内周縁から下方に屈曲して延びる円筒状の内周壁27dと、を備えている。内周壁27dの内周側の開口は、実質的な給油口22を構成している。頂壁27cは、後述するリッド29bの下面側に装着した給油口シール27eを密接させる上面(シール面)を形成している。管接続部27の外テーパ部27bには、給油筒24のテーパ部24aが溶接等により結合されている。
【0028】
給油トレー26内には、給油口22を開閉するリッド装置(タンクキャップ)29が取り付けられている。リッド装置29は、トレー底壁26aにボルト締結等により固定される円環状のリム部29aと、リム部29aの内周側に配置され、リム部29aの周方向の一部(実施形態では後端部)に車幅方向(左右方向)に沿うヒンジ軸29cを介して支持されるリッド29bと、を備えている。リッド29bは、ヒンジ軸29cを中心に回動可能である。リッド装置29は、リッド29bがヒンジ軸29cを中心に回転することで、給油口22を開閉させる。
【0029】
リッド29bの下面側には、給油口22を油密に閉塞可能なキャップ体29dが一体回動可能に設けられている。キャップ体29dは、リッド閉時(図2図3に示す状態)には、給油口22の内側に入り込んで給油口22を閉塞する。キャップ体29dは、リッド開時(図2図3に示す状態からヒンジ軸29cを中心に上方へ回動した状態)には、給油口22から退避して給油口22を開放する。キャップ体29dは、リッド閉時にリッド29bの回動をロックするロック機構(不図示)と、ロック機構のロック解除のためのキー操作を可能とするキーシリンダ29eと、を備えている。
【0030】
リッド装置29の上面側は、トレー外周壁26bの上端よりも上方に突出している。リッド装置29の上面側は、タンクカバー31の上面部と面一状をなすように配置されている。タンクカバー31におけるタンク本体21の上壁部23に上方から対向するカバー上壁部32には、リッド装置29を上方に露出させるカバー開口形成部33を備えている。カバー開口形成部33は、タンク本体21における給油トレー26を設置した箇所を上方に露出させている。
【0031】
カバー開口形成部33は、平面視円形状のカバー開口33aを形成している。カバー開口形成部33の内周部には、下方に垂下するカバー内周壁33bが形成されている。カバー内周壁33bは、軸線C1に沿う軸方向に対し、下側ほど内周側に位置するように傾斜している。カバー内周壁33bとタンクカバー31の平坦状の上面部とは、カバー内周壁33bとタンクカバー31の平坦状の上面部との間に、断面視で鈍角をなすように屈曲している。
【0032】
カバー内周壁33bは、リッド装置29のリム部29aとの間に径方向の隙間を有して配置されている。カバー内周壁33bとリム部29aとの間には、シール部材35の内周側リップ部38が径方向で挟み込まれている。
シール部材35は、カバー内周壁33bに全周に渡って装着される環状をなし、例えば合成ゴム等の弾性部材で一体形成されている。シール部材35は、カバー内周壁33bとリム部29aとの間をシールする他、カバー内周壁33bとトレー外周壁26bとの間をシールする。
【0033】
図4図5を参照し、シール部材35は、カバー内周壁33bの下部が入り込むカバー側溝部36aを形成する断面U字状の嵌合部36と、嵌合部36の外周側に張り出す外周側張り出し部37と、嵌合部36の内周側に張り出す内周側リップ部38と、を備えている。シール部材35は、カバー側溝部36aにカバー内周壁33bを嵌め込むことで、タンクカバー31に対して小組された状態となり、タンクカバー31と一体的に取り扱うことが可能である。
【0034】
外周側張り出し部37は、シール部材35の内周側の先端縁から下側ほど外周側に広がるように形成される部位である。外周側張り出し部37の下端は、トレー外周壁26bの上端縁26b1が突き当たる段差状に形成されている。外周側張り出し部37の下端には、トレー外周壁26bの上端縁26b1を食い込ませるように凹むトレー側溝部37aが形成されている。トレー側溝部37aは、カバー側溝部36aに対して、溝深さが浅く形成されている。これにより、外周側張り出し部37に対するトレー外周壁26bの着脱が容易である。
【0035】
断面において、トレー外周壁26bの延長方向には、タンクカバー31のカバー内周壁33bの基端(上端)が位置している。トレー外周壁26bの上端縁26b1に対し、カバー内周壁33bの下端縁33b1は内周側にオフセットしている。具体的に、軸方向から見て、トレー外周側の上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とは、互いに重ならないように配置されている。軸方向から見て、トレー外周側の上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とは、互いに径方向で離隔している。
【0036】
また、トレー外周壁26bの上端縁26b1に対し、カバー内周壁33bの下端縁33b1は、軸方向で上方に位置している。したがって、トレー外周壁26bとカバー内周壁33bとは、軸方向でラップしない配置となる。そして、シール部材35における軸方向でトレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1との間に位置する領域は、軸方向(上下方向)でトレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1との間に挟み込まれるといえる。また、シール部材35は、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bとの間に上下方向で挟み込まれるともいえる。
【0037】
実施形態において「シール部材35がトレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1との間に上下方向で挟み込まれる」とは以下の態様である。すなわち、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とが、給油筒24の軸方向で互いにラップしない配置にあり、これら上下端縁26b1,33b1の間に位置する部位をシール部材35が有していることである。
【0038】
以下、実施形態の変形例について説明する。実施形態と同一構成には同一符号を付して詳細説明は省略する。
【0039】
図6の変形例では、トレー外周壁26bの延長方向にカバー内周壁33bが連なるように配置され、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とが径方向でオフセットすることなく互いに対向している。この場合のシール部材135も、上下端縁26b1,33b1の間に挟み込まれる部位を有している。このシール部材135も、従来のブロック状の断面形状のものに比べて、特に径方向でコンパクトになっている。
【0040】
しかし、上下端縁26b1,33b1の間でシール部材135が局所的に圧縮されやすく、シール部材135の弾性を確保し難い。上下端縁26b1,33b1の間を大きく離すと、シール部材135周辺が上下方向で大型化してしまう。
これに対し、実施形態の構成では、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とが径方向で互いにオフセットしているので、このオフセット分で弾性部材の撓みを確保するとともに、シール部材135周辺の上下方向の大型化を抑えることができる。
【0041】
図7の変形例のように、トレー外周壁26bの上端縁26b1よりも径方向外側にカバー内周壁33bの下端縁33b1が配置される構成も考えられる。この場合のシール部材235も、上下端縁26b1,33b1の間に挟み込まれる部位を有している。シール部材235も実施形態と同様、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1との径方向のオフセット分だけ弾性部材の撓みが確保される。
【0042】
しかし、タンク外側に位置するタンクカバー31のカバー内周壁33bから給油トレー26側に水滴等が落ちると、この水滴等がトレー外周壁26bとシール部材235との嵌合部分に至りやすい。このため、トレー外周壁26bとシール部材235との嵌合部分であるトレー側溝部37aもカバー側溝部36aと同様に深く形成することが望ましい。
【0043】
図8の変形例のように、トレー側溝部37aを深く形成し、カバー側溝部36aを浅く形成する構成も考えられる。この場合のシール部材335も、上下端縁26b1,33b1の間に挟み込まれる部位を有している。シール部材335は、給油トレー26に予め組み付けておくとよい。
【0044】
しかし、タンク外側に位置するタンクカバー31のカバー内周壁33bには水滴等が掛かりやすいことを考慮すると、タンクカバー31のカバー内周壁33bとシール部材335との嵌合部分であるカバー側溝部36aもトレー側溝部37aと同様に深く形成することが望ましい。
【0045】
以上説明したように、上記実施形態におけるタンクカバーシール構造は、中空のタンク本体21と、タンク本体21を覆うタンクカバー31と、を備え、タンク本体21の上部には、上下方向に延びる給油筒24と、給油筒24の外周側を囲って余剰燃料を受ける給油トレー26と、を備え、タンクカバー31は、給油トレー26を設置した箇所を上方に露出させるカバー開口形成部33を備え、給油トレー26の外周部には、上方に起立するトレー外周壁26bが形成され、カバー開口形成部33の内周部には、下方に垂下するカバー内周壁33bが形成され、トレー外周壁26bとカバー内周壁33bとの間には、シール部材35が設けられ、シール部材35は、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1との間に上下方向で挟み込まれるものである。
【0046】
この構成によれば、給油トレー26とタンクカバー31との間のシール部材35が、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1との間に上下方向で挟み込まれることで、シール部材35によって給油トレー26とタンクカバー31との間をコンパクトにシールすることができる。
【0047】
上記タンクカバーシール構造において、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とは、給油筒24の径方向で互いに避けて配置されているとよい。
この構成によれば、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とが、給油筒24の径方向で互いに避けて(互いに重ならずに)配置されることで、トレー外周壁26bの上端縁26b1とカバー内周壁33bの下端縁33b1とが互いに上下方向で対向してシール部材35を挟み込む場合に比べて、シール部材35が局部的に圧縮されることを抑え、シール性を良好に確保することができる。
【0048】
上記タンクカバーシール構造において、カバー内周壁33bの下端縁33b1よりも径方向外側に、トレー外周壁26bの上端縁26b1が配置されているとよい。
この構成によれば、タンク外側に位置するタンクカバー31のカバー内周壁33bから給油トレー26側に水滴等が落ちても、この水滴等が給油トレー26に受け止められるため、給油トレー26よりも外側(タンクカバー31に覆われる部位)に水滴等が浸入することを抑えることができる。
【0049】
上記タンクカバーシール構造において、シール部材35は、カバー内周壁33bの下端縁33b1に支持されるカバー側溝部36aと、トレー外周壁26bの上端縁26b1に支持されるトレー側溝部37aと、を備えている。
この構成によれば、カバー内周壁33bの下端縁33b1およびトレー外周壁26bの上端縁26b1がそれぞれ溝部に入り込んでシール部材35を支持することで、さらなるシール性の向上を図ることができる。
【0050】
上記タンクカバーシール構造において、カバー側溝部36aの方が、トレー側溝部37aよりも深く形成されているとよい。
この構成によれば、タンク外側に位置するタンクカバー31のカバー内周壁33bから水滴等が浸入することを抑えやすくなる。また、シール部材35をタンクカバー31の小組部品として取り扱いやすくなり、かつ小組状態のタンクカバー31をタンク本体21に取り付けやすくなる。すなわち、小組状態のタンクカバー31をタンク本体21に取り付ける際、シール部材35のトレー側溝部37aが視認されなくても、トレー側溝部37aとトレー外周壁26bとを嵌合させやすくなる。
【0051】
上記タンクカバーシール構造において、カバー内周壁33bは、給油筒24の軸方向に対して斜め下方に延びているとよい。
この構成によれば、カバー内周壁33bの斜めの面でシール部材35との密着度を向上させ、シール部材35の材料(ゴム)の体積を減らすことができる。
【0052】
本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、実施形態は、運転者の左右膝間に配置される燃料タンク16およびタンクカバー31間のシール構造に適用したが、これに限らない。例えば、運転者の両膝よりも下方の車体低床部に配置される燃料タンクおよびタンクカバー(車体カバー含む)間のシール構造に適用する等、種々の車体位置に適用してもよい。
本実施形態のシール構造は、自動二輪車以外の鞍乗り型車両に適用してもよい。上記鞍乗り型車両には、運転者が車体を跨いで乗車する車両全般が含まれ、自動二輪車(原動機付自転車及びスクータ型車両を含む)のみならず、三輪(前一輪かつ後二輪の他に、前二輪かつ後一輪の車両も含む)又は四輪(四輪バギー等)の車両も含まれる。また、原動機に電気モータを含む車両に適用してもよい。また、鞍乗り型車両以外の車両(乗用車、バス、トラック等)に適用してもよい。
本実施形態のシール構造は、車両に適用されるものであるが、本発明は車両への適用に限らず、航空機や船舶等の種々輸送機器、ならびに建設機械や産業機械等、様々な乗物や移動体に適用してもよい。さらに、本発明は、乗物以外でも燃料タンクおよびタンクカバーを備える機器であれば、例えば手押しの芝刈り機や清掃機等に広く適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 自動二輪車(鞍乗り型車両)
16 燃料タンク
21 タンク本体
24 給油筒
26 給油トレー
26b トレー外周壁
26b1 上端縁
31 タンクカバー
33 カバー開口形成部
33b カバー内周壁
33b1 下端縁
35,135,235,335 シール部材
36a カバー側溝部
37a トレー側溝部
図1
図2
図3
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図8