(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】行動計画装置及び行動計画方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/26 20060101AFI20241004BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
G01C21/26 A
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2023576464
(86)(22)【出願日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2022002926
(87)【国際公開番号】W WO2023144938
(87)【国際公開日】2023-08-03
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 翔太
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-217829(JP,A)
【文献】特開2019-151183(JP,A)
【文献】特開2009-9288(JP,A)
【文献】特開2020-193954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体周辺の周辺情報を用いて、前記移動体が置かれた状況を示すシーン情報を生成するシーン生成部と、
前記シーン情報を用いて前記移動体の取り得る行動の候補であるモードを複数並行して演算するモード演算部と、
前記モード演算部により演算した前記モードから1つを選択して、前記移動体の行動として出力するモード選択部と、
を備える行動計画装置。
【請求項2】
移動体周辺の周辺情報を用いて、前記移動体が置かれた状況を示すシーン情報を生成するシーン生成部と、
前記シーン生成部により生成された前記シーン情報が1つである場合は、前記シーン情報を用いて前記移動体の取り得る行動の候補であるモードを1つ以上演算し、前記シーン生成部により生成された前記シーン情報が複数である場合は、前記シーン情報を用いて前記モードを複数並行して演算するモード演算部と、
前記モード演算部により演算した前記モードから1つを選択して、前記移動体の行動として出力するモード選択部と、
を備える行動計画装置。
【請求項3】
前記モード演算部は、前記シーン情報と前記モード演算部の現在の前記モードとを用いて、前記モードを演算することを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の行動計画装置。
【請求項4】
前記モード演算部は、前記シーン情報と前記モード演算部の過去の前記モードとを用いて、前記モードを演算することを特徴とする請求項1
から3のいずれか一項に記載の行動計画装置。
【請求項5】
前記モード演算部は、FSM、ニューラルネットワーク、及びオントロジーのうち少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の行動計画装置。
【請求項6】
前記モード選択部は、予め設定された前記モードの優先度を用いて、前記モード演算部により演算された前記モードから1つを選択して前記移動体の前記行動として出力することを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の行動計画装置。
【請求項7】
前記優先度は、前記移動体周辺に存在する障害物に対応するための前記モードを優先するように設定されることを特徴とする請求項
6に記載の行動計画装置。
【請求項8】
前記優先度は、目標速度が小さいモードを優先するように設定されることを特徴とする請求項
6または
7に記載の行動計画装置。
【請求項9】
前記優先度は、前記移動体の現在位置から目標位置までの距離が近いモードを優先するように設定されることを特徴とする請求項
6から
8のいずれか1項に記載の行動計画装置。
【請求項10】
前記シーン生成部は、前記周辺情報及び外部からの前記移動体の運転に関する指示を示す情報である外部指示情報を用いて前記シーン情報を生成し、
前記モード演算部は前記外部指示情報及び前記シーン情報を用いて前記モードを演算することを特徴とする請求項1から
9のいずれか一項に記載の行動計画装置。
【請求項11】
移動体周辺の周辺情報を用いて、前記移動体が置かれた状況を示すシーン情報を生成するステップと、
前記シーン情報を用いて前記移動体の取り得る行動の候補であるモードを複数並行して演算するステップと、
演算した前記モードから1つを選択して、前記移動体の行動として出力するステップと、
を備える行動計画方法。
【請求項12】
移動体周辺の周辺情報を用いて、前記移動体が置かれた状況を示すシーン情報を生成するステップと、
生成された前記シーン情報が1つである場合は、前記シーン情報を用いて前記移動体の取り得る行動の候補であるモードを1つ以上演算し、生成された前記シーン情報が複数である場合は、前記シーン情報を用いて前記モードを複数並行して演算するステップと、
演算した前記モードから1つを選択して、前記移動体の行動として出力するステップと、
を備える行動計画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、行動計画装置及び行動計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転技術の開発が盛んであり、ユーザの運転支援のみにとどまらず、ユーザによる運転操作を介在することなく自動運転を行う技術が脚光を浴びている。そこで、車両が自動運転により市街地を走行する際に、交通ルール、信号機、歩行者、他車両の位置、及び他車両の速度の情報等を取得し、自車両の行動を決定する行動計画装置が必要となる。
【0003】
例えば特許文献1では、障害物検出枠の順番を示す知識ツリーを用いて、障害物検出枠に障害物があるか否かを順番に判断する。これにより、適切な危険度を算出し、適切な自車両の行動を決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の知識ツリーは、特定地点における自車両の位置によって定まる障害物検出枠、及び自車両に対して注意すべき障害物検出枠の順番を示すデータである。そのため、特許文献1に記載の発明は、自車両に対して直近に考慮すべきものを一つ一つ順に知識ツリーに従って判断し、自車両の行動を決定する。そのため、特許文献1に記載の発明は、交差点に他車両、及び横断歩道待ちの横断歩行者等が存在するといった考慮すべきものが複数存在する複合的なシーンにおいて、他車両が存在しなくなってから、歩行者の移動可能性を判断するため、自車両の停止時間が長くなり行動が保守的になる。このように、特許文献1に記載の発明では、自車両の行動決定に時間を要するため、交差点のスループットを上げることが難しい。本発明は上記のような問題を解決するためになされたものであり、交差点等の自車両の行動を計画する際に考慮すべきものが複数存在する複合的なシーンにおいて、特許文献1に記載の発明よりも保守的な行動を回避する行動計画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る行動計画装置は、移動体周辺の周辺情報を用いて、移動体が置かれた状況を示すシーン情報を生成するシーン生成部と、シーン生成部により生成されたシーン情報が1つである場合は、シーン情報を用いて移動体の取り得る行動の候補であるモードを1つ以上演算し、シーン生成部により生成されたシーン情報が複数である場合は、シーン情報を用いてモードを複数並行して演算するモード演算部と、モード演算部により演算したモードから1つを選択して、移動体の行動として出力するモード選択部と、を備えたものである。
【0007】
本開示に係る行動計画方法は、移動体周辺の周辺情報を用いて、移動体が置かれた状況を示すシーン情報を生成するステップと、生成されたシーン情報が1つである場合は、シーン情報を用いて移動体の取り得る行動の候補であるモードを1つ以上演算し、生成されたシーン情報が複数である場合は、シーン情報を用いてモードを複数並行して演算するステップと、演算したモードから1つを選択して、移動体の行動として出力するステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、シーン生成部により生成されたシーン情報が複数である場合は、シーン情報を用いてモードを複数並行して演算し、演算したモードから1つを選択して自車両の行動として出力する。これにより、複合的なシーンにおいて、保守的な行動を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は実施の形態1の行動計画装置を含む自車両の一部を示すブロック図である。
【
図2】
図2は実施の形態1の行動計画装置のハードウェア構成例を示す概略図である。
【
図3】
図3は実施の形態1の行動計画方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は実施の形態1の自車両が置かれた状況を示す概略図である。
【
図5】
図5は実施の形態1のシーン生成部により生成されたシーン情報を示す図である。
【
図6】
図6は実施の形態1の第一モード演算部を示す概略図である。
【
図7】
図7は実施の形態1の第二モード演算部を示す概略図である。
【
図8】
図8は実施の形態1の第一モード演算部の遷移条件を示す図である。
【
図9】
図9は実施の形態1の第二モード演算部の遷移条件を示す図である。
【
図10】
図10は実施の形態1の行動計画装置を備える自車両の行動を示す概略図である。
【
図11】
図11は実施の形態1の行動計画装置の各構成の出力結果の一例を示す図である。
【
図12】
図12は実施の形態1の行動計画装置の動作を時系列で示す図である。
【
図13】
図13は実施の形態1の比較例の行動計画装置の動作を時系列で示す図である。
【
図14】
図14は実施の形態2の行動計画装置を含む自車両の一部を示すブロック図である。
【
図15】
図15は実施の形態2の行動計画方法を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は実施の形態2の行動計画装置を備える自車両の行動を示す概略図である。
【
図17】
図17は実施の形態2のシーン生成部により生成されたシーン情報を示す図である。
【
図18】
図18は実施の形態2の第一モード演算部を示す概略図である。
【
図19】
図19は実施の形態2の第一モード演算部の遷移条件を示す図である。
【
図20】
図20は実施の形態2の行動計画装置の各構成の出力結果の一例を示す図である。
【
図21】
図21は実施の形態2の行動計画装置の動作を時系列で示した図である。
【
図22】
図22は実施の形態2の比較例の行動計画装置の動作を時系列で示した図である。
【
図23】
図23は実施の形態3の自車両が置かれた状況を示す概略図である。
【
図24】
図24は実施の形態3の行動計画装置の各構成の出力結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1における行動計画装置1について
図1を用いて説明する。
図1は、実施の形態1の行動計画装置1を含む自車両20の一部を示すブロック図である。行動計画装置1は、自車両20の行動を計画する装置であり、周辺情報取得部2、シーン生成部8、モード演算部9、及びモード選択部10を備える。本実施の形態では自車両20は自動車である例を説明する。
【0011】
周辺情報取得部2は障害物情報取得部3及び道路情報取得部5を備える。障害物情報取得部3は、障害物情報検出部4から自車両20周辺に存在する障害物の情報を取得する。道路情報取得部5は、道路情報検出部6から自車両20周辺の道路の情報を取得する。以下では、障害物情報検出部4により検出された自車両20周辺に存在する障害物の情報を障害物情報、道路情報検出部6により検出された自車両20周辺の道路の情報を道路情報と称する。また、周辺情報取得部2は障害物情報及び道路情報の総称である周辺情報を取得する。
【0012】
なお、周辺情報取得部2は、必ずしも行動計画装置1に含まれていなくてもよい。一例として、管制による自車両20の遠隔制御においては、周辺情報取得部2と、周辺情報取得部2以外の構成要素(シーン生成部8、モード演算部9及びモード選択部10)とは、分離して設けられる場合が有り得る。具体的には、周辺情報取得部2が自車両20内に設けられ、周辺情報取得部2以外の構成要素が行動計画装置1として管制側に設けられる。これに限定されず、例えばその逆であってもよい。
【0013】
障害物情報検出部4は障害物情報を検出する。障害物は、例えば自車両20周辺に存在する他車両21、歩行者22、自転車、バイク等の交通参加者である。障害物情報検出部4は、例えば自車両20に備えられたカメラ、レーダ、LiDAR、及びソナーセンサの少なくとも1つである。また、障害物情報検出部4は、自車両20ではなく、例えばインフラ側に備えられたカメラ、レーダ、LiDAR、及びソナーセンサの少なくとも1つであってもよい。障害物情報検出部4がインフラ側に備えられた場合、障害物情報取得部3は障害物情報検出部4との無線通信によって、障害物情報を取得する。障害物情報検出部4は、自車両20周辺に存在する障害物を、他車両21、歩行者22、自転車、又はバイク等で分類された種別と紐づけた障害物情報として障害物情報取得部3に出力してもよい。
【0014】
道路情報検出部6は道路情報を検出する。道路情報検出部6は、自車両20が順守すべき信号機の検出、検出した信号機の点灯状態の検出、及び道路標識の検出等を行う。道路情報検出部6は例えば自車両20に備えられたカメラ、レーダ、LiDAR、及びソナーセンサの少なくとも1つである。また、道路情報検出部6は、自車両20ではなく、例えばインフラ側に備えられたカメラ、レーダ、LiDAR、及びソナーセンサの少なくとも1つであってもよい。道路情報検出部6がインフラ側に備えられた場合、道路情報取得部5は道路情報検出部6との無線通信によって、道路情報を取得する。
【0015】
また、道路情報検出部6は地図取得部7を備えてもよい。地図取得部7は、自車両20の走行予定経路の地図データを取得し、取得した地図データを道路情報として道路情報取得部5に出力する。地図データは、自車両20が走行するレーンの中心線、交差点の停止線情報、優先道路情報、及び非優先道路情報等である。
【0016】
地図取得部7は、自車両20の走行予定経路の地図データを予め取得し、カメラ、レーダ、LiDAR、及びソナーセンサの少なくとも1つから得られる情報を用いて、地図データ上の自車両20の位置を特定する。そして、地図取得部7は、自車両20周辺の道路情報を道路情報検出部6に出力する。もしくは、地図取得部7は、逐次自車両20周辺の走行経路の地図データを取得し、自車両20周辺の道路情報を道路情報検出部6に出力してもよい。
【0017】
また、自車両20は自車両20の位置を特定するためにGNSSセンサを備えてもよく、障害物情報検出部4及び道路情報検出部6は周辺情報取得部2に情報を出力する際に、自車両20の位置を基準とした相対的な座標系を用いた情報を出力してもよく、特定の地点を基準とした絶対的な座標系を用いた情報を出力してもよい。
【0018】
シーン生成部8は、周辺情報取得部2により取得した周辺情報を用いて、自車両20が置かれた状況を示すシーン情報を生成する。シーン生成部8の詳細な動作については後述する。
【0019】
モード演算部9は、シーン生成部8により生成されたシーン情報を用いて、自車両20の取り得る行動の候補であるモードを演算する。自車両20の取り得る行動とは、自車両20が現時点又は将来にわたり実行すべき行動である。自車両20の取り得る行動は、例えば自車両20が現在走行している経路をそのまま走行すること、及び経路上の特定の位置で停止すること等が含まれる。行動計画装置1は複数のモード演算部9を備える。そして、複数のモード演算部9は、シーン生成部8により生成されたシーン情報が1つの場合にはモードを1つ以上演算し、シーン生成部8により生成されたシーン情報が複数である場合には、モードを複数並行して演算する。具体的にモードは、目標とする経路、目標速度、及び目標位置のうち少なくとも一つを示す情報である。また、モード演算部9は、モード毎に目標とする経路、目標速度、及び目標位置の値を予め設定してもよく、モードと自車両20の周辺環境から動的に変更してもよい。例えば、モード演算部9は、目標速度を自車両20の移動量ごとに算出してもよい。モード演算部9により演算されたモードは、上述の記載に限定されるものではなく、上下限の加速度、ステアリング角度、及びレーンチェンジのためのレーン番号などを示す情報であってもよい。モード演算部9の詳細な動作については後述する。
【0020】
モード選択部10は、複数のモード演算部9により演算したモードから1つを選択して、自車両20の行動として出力する。すなわち、モード選択部10は、シーン生成部8により生成されたシーン情報が1つでモードを1つしか演算しない場合、あるいは複数のモード演算部9により演算したモードの種類が1種類の場合は、そのモードを自車両20の行動として出力する。また、モード選択部10は、複数のモード演算部9により異なる複数のモードが演算された場合は、予め設定されたモードの優先度を用いて、複数のモード演算部9により演算された複数のモードから1つを選択して自車両20の行動として出力する。優先度は、例えば、障害物に対応するためのモードを優先させるように設定する。また、障害物に対応するためのモードが複数ある場合は、障害物によって発生しうる危険度が高いものを優先するように設定する。これにより、行動計画装置1は障害物によって発生しうる危険を回避することができる。モード選択部10の詳細な動作については後述する。
【0021】
次に、行動計画装置1のハードウェア構成例を説明する。
図2は実施の形態1の行動計画装置1のハードウェア構成例を示す概略図である。行動計画装置1の各構成は、
図2Aに示すように専用のハードウェアである処理回路12であってもよいし、
図2Bに示すようにメモリ14に格納されているプログラムを実行するプロセッサ13であってもよい。
【0022】
図2Aに示すように行動計画装置1の各構成が専用のハードウェアである場合、処理回路12は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものが該当する。行動計画装置1の各構成の機能それぞれを処理回路12で実現してもよいし、各構成の機能をまとめて1つの処理回路12で実現してもよい。
【0023】
図2Bに示すように、行動計画装置1の各構成がプロセッサ13である場合、各構成の機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェア又はファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ14に格納される。プロセッサ13は、メモリ14に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、行動計画装置1の各構成の機能を実現する。すなわち、行動計画装置1の各構成は、プロセッサ13により実行されるときに、後述する各実施の形態の配光制御方法の各ステップが結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ14を備える。また、これらのプログラムは、行動計画装置1の各構成の手順又は方法をコンピュータに実行させるものであるともいえる。
【0024】
ここで、プロセッサ13とは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、又はDSP(Digital Signal Processor)等のことである。メモリ14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)等の不揮発性又は揮発性の半導体メモリであってもよいし、ハードディスク、フレキシブルディスク等の磁気ディスクであってもよいし、ミニディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等の光ディスクであってもよい。
【0025】
なお、行動計画装置1の各構成の機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェア又はファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、行動計画装置1における処理回路12は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0026】
次に、行動計画装置1による行動計画方法について説明する。
図3は実施の形態1の行動計画方法を示すフローチャートである。
図3のフローチャートの処理動作は、自車両20が走行中に繰り返し実行される。本実施の形態では、
図3に示すSTARTからENDを1演算周期として説明する。
【0027】
ステップS1及びステップS2では、周辺情報取得部2は周辺情報を取得する。より詳細には、ステップS1では、障害物情報取得部3は障害物情報検出部4から障害物情報を取得する。ステップS2では、道路情報取得部5は道路情報検出部6から道路情報を取得する。行動計画装置1はステップS1及びステップS2は同時に実施してもよく、ステップS2を実施した後にステップS1を実施してもよい。
【0028】
ステップS3では、シーン生成部8はステップS1及びステップS2において周辺情報取得部2が取得した周辺情報を用いて、自車両20が置かれた状況を示すシーン情報を生成する。
【0029】
ステップS4では、モード演算部9はステップS3においてシーン生成部8が生成したシーン情報は1つであるか否かを判定する。
【0030】
モード演算部9はシーン情報が1つであると判定した場合(ステップS4のYES)、モード演算部9はシーン情報を用いてモードを1つ以上演算する(ステップS5)。
【0031】
モード演算部9はシーン情報が複数であると判定した場合(ステップS4のNO)、モード演算部9はシーン情報を用いてモードを複数並行して演算する(ステップS6)。
【0032】
ステップS7では、モード選択部10はステップS5又はステップS6において演算したモードは1つであるか否かを判定する。
【0033】
モード選択部10はモードが1つであると判定した場合(ステップS7のYES)、モード演算部9はステップS5又はステップS6において演算したモードを自車両20の行動として出力する(ステップS8)。
【0034】
モード選択部10はモードが複数であると判定した場合(ステップS7のNO)、モード演算部9はステップS5又はステップS6において演算した複数のモードの中から1つを選択して、自車両20の行動として出力する。(ステップS9)。
【0035】
以上により、行動計画装置1の処理動作を終了する。
【0036】
次に、
図4に示す自車両20が置かれた状況を例に、行動計画装置1の処理動作を具体的に説明する。
図4は、実施の形態1の自車両20が置かれた状況を示す概略図である。
図4に示す自車両20が置かれた状況は、自車両20が交差点の非優先道路において右折をするために、他車両21の通過待ちをしている状況であり、横断歩道近傍には歩行者22が存在している状況である。
図4において、実線で示す範囲は交差点エリアであり、破線で示す範囲は横断歩道エリアである。
【0037】
まず、シーン生成部8によるシーン情報の生成の方法の一例を説明する。シーン生成部8は道路情報を用いて、例えば自車両20が交差点付近に存在しているか否か、自車両20が優先道路を走行しているか否か、及び自車両20が横断歩道付近を走行しているか否かを判定する。また、シーン生成部8は障害物情報及び道路情報を用いて、例えば交差点内に他車両21が存在するか否か、及び横断歩道の近くに歩行者22が存在するか否かの判定をする。
【0038】
次に、シーン生成部8は、上述の障害物情報及び道路情報を用いて判定した結果を、
図5に示すようにシーン情報として生成する。
図5は、実施の形態1のシーン生成部8により生成されたシーン情報を示す図である。
図5の左の列はシーン情報変数、中央の列はシーン情報変数の内容、右の列は
図5に示す状況においてシーン生成部8により生成されたシーン情報の出力結果である。シーン情報は、数値を含む変数、又はシンボリックな表現等、自車両20が置かれた状況を識別できる形式であれば、いずれの形式で表現されてもよい。本実施の形態では、シーン情報は数値を含む変数として表現される場合について説明する。シーン生成部8は、自車両20が置かれた状況をシーン情報として数値的に表現するために、
図5の左の列に示すシーン情報変数を予め記憶している。
【0039】
図4及び
図5に示すように、シーン生成部8は、自車両20が右折予定の経路上に停止障害物は存在しないためstop_obs_inlane=0、自車両20が交差点エリア内に存在しているためnear_int=1、自車両20の近傍EVSに障害物は存在しないためobs_insurr=0、他車両21が交差点エリア内に存在しているためobs_in_int=1、自車両20が非優先道路を走行しているためego_in_prioritylane=0、横断歩道エリア内に歩行者22が存在しているためppl_around_crswlk=1、歩行者22が横断歩道エリア内に存在するが動いていないためppl_stop=1、自車両20が横断歩道エリア前で停止しているためego_stop_frnt_crswlk=1、自車両20の走行経路上を横切る障害物は不在のためacrobs_inlane=0をシーン情報として生成する。
【0040】
シーン生成部8が、
図5に示すシーン情報変数ego_stop_frnt_crswlkに相当する横断歩道前で自車両20が停止しているか否かを判断する方法について説明する。周辺情報取得部2は自車両20に設置された内界センサから横断歩道前で自車両20が停止しているか否かを示す周辺情報を取得する。そして、シーン生成部8はこの周辺情報を用いて横断歩道前で自車両20が停止しているか否かを判定する。もしくは、周辺情報取得部2は、道路情報検出部6が備える地図取得部7によって周辺情報を取得してもよい。具体的には、地図取得部7は、予め設定された演算周期毎に自車両20の位置情報と道路情報である横断歩道の停止線情報とを出力し、演算周期毎の差分を取る。これにより、道路情報検出部6は自車両20が横断歩道前で停止しているか否かを把握することができる。但し、周辺情報取得部2が横断歩道前で自車両20が停止しているか否かを取得する方法は、これに限定されない。また、シーン生成部8により生成されるシーン情報の項目は
図5に示す項目に限定されない。シーン生成部8は上記で生成されたシーン情報をモード演算部9に出力する。
【0041】
次に、モード演算部9によるモードの演算方法の一例を説明する。上述のとおり、複数のモード演算部9は、シーン生成部8により生成されたシーン情報が1つの場合にはモードを1つ以上演算し、シーン生成部8により生成されたシーン情報が複数である場合には、モードを複数並行して演算する。以下では複数のモード演算部9は、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bである例を示す。そして、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bはそれぞれの演算を並行して実行することができる。なお、複数のモード演算部9は第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bである例を示したが、少なくとも2つのモードを独立して演算可能に設計されればよい。
【0042】
以下では、モード演算部9によるモードの演算方法の一例として、FSM(Finite State Machine、有限状態機械)を用いた方法を説明する。
【0043】
本実施の形態では、モード演算部9はシーン生成部8により生成されたシーン情報が複数の場合、2つのFSMを用いて2つのモードを並行して演算する例を説明する。以下では、2つのFSMをそれぞれ第一モード演算部9a、及び第二モード演算部9bとする。
図6は実施の形態1の第一モード演算部9aを示す概略図であり、
図7は実施の形態1の第二モード演算部9bを示す概略図である。
図8は実施の形態1の第一モード演算部9aの遷移条件を示す図であり、
図9は実施の形態1の第二モード演算部9bの遷移条件を示す図である。
【0044】
第一モード演算部9aは、道路情報に準拠した行動を達成するためのモード演算を実施し、第二モード演算部9bは、障害物に対する回避、及び道路の優先権に即した行動を達成するためのモード演算を実施する。なお、FSMは
図6及び
図7に示すものに限定されず、それぞれのFSMにおいて、有限個のモードとそれらの遷移条件とを決定するものであればよい。
【0045】
図6に示すように、第一モード演算部9aで演算するモードとして、経路追従(以下、「LF(Lane Following)」と称する)、減速及び停車(以下、「ST(STop)」と称する)、交差点接近走行(以下、「AI(Approach Intersection)」と称する)、停止線前停止(以下、「SI(Stop Intersection)」と称する)、交差点横断(以下、「CI(Cross Intersection)」と称する)、緊急停止(以下、「ES(Emergency Stop)」と称する)の6つのモードが設定されるとする。
【0046】
LFは、同一経路上を走行するモードである。STは、停止障害物の前で減速して停止するモードである。AIは、交差点内に進入前の停止線に向かって走行するモードである。SIは、交差点手前の停止線で停止するように減速して停止するモードである。CIは、交差点内を横断するモードである。ESは、車両周辺に障害物が存在する場合に緊急停止するモードである。
【0047】
図7に示すように、第二モード演算部9bで演算するモードとして道なり走行(以下、「RD(Road Driving)」と称する)、横断歩道前停止(以下、「SC(Stop Crosswalk)」と称する)、横断意志確認(以下、「WC(Wait Crossing)」と称する)、横断歩道近傍徐行(以下、「CCC(Careful Cross Crosswalk)」と称する)、飛び出し停止(以下、「SPO(Stop Popping out Obstacle)」と称する)の5つのモードが設定されるとする。
【0048】
RDは、同一経路上を走行するモードである。SCは、横断歩道近傍に歩行者22が存在する際に、減速して停止するモードである。WCは、横断歩道近傍の歩行者22が動かない場合に、歩意志の確認をするモードである。CCCは、横断歩道近傍の歩行者22が一定時間動かない場合に、横断歩道を徐行するモードである。SPOは、道路傍から交差障害物が現れた際に、その前で停止するモードである。
【0049】
第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bは、シーン生成部8により生成されたシーン情報を用いて、
図6から
図9に示すようにモード間の遷移が可能なように設計される。そして、モード演算部9は、シーン生成部8により生成されたシーン情報及びモード演算部9における現在のモードを用いて、遷移先のモードを演算する。
【0050】
具体的には、例えば第一モード演算部9aにおける現在のモードがLFモードである場合、第一モード演算部9aは
図8に示す(a1)から(a3)に対応する条件式のみを考慮すればよい。あるいは、モード演算部9は、シーン生成部8により生成されたシーン情報及びモード演算部9における過去のモードを用いて、遷移先のモードを演算してもよい。過去のモードとは、現在のモードよりも一つ前の演算周期におけるモード、又は現在の演算周期の前のモードのことである。ここでは、現在のモードよりも一つ前の演算周期におけるモードを過去のモードとする。この場合、
図8及び
図9に示す全ての条件式について判定することで、現在のモードに依存せず遷移先のモードを演算することができる。過去のモードは、遷移条件として使用される。具体的には、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bが遷移条件として過去のモードを利用し、
図8では第一モード演算部9aが過去のモードをprev_mode1として利用し、
図9では第二モード演算部9bが過去のモードをprev_mode2として利用する例を示している。
【0051】
図8及び
図9において、現在のモードは自車両20の現在時点におけるモードを表している。また、自動運転開始時においては、第一モード演算部9aはLFモードを初期モードとする。すなわち、第一モード演算部9aではLFモードから始まることを想定している。第二モード演算部9bはRDモードを初期モード、すなわちRDモードから始まることを想定している。
【0052】
遷移先のモードは、現在のモードと遷移条件とに基づいて決定される、次に遷移するモードである。
【0053】
遷移番号は、現在のモードから遷移先のモードへの遷移を番号で表したものであり、第一モード演算部9aでは(a1)~(a18)まで付与され、第二モード演算部9bでは(b1)~(b12)まで付与される。
図6及び
図8の(a1)~(a18)はそれぞれ対応しており、
図7及び
図9の(b1)~(b12)に関してもそれぞれ対応している。
【0054】
遷移条件は、各遷移における条件である。遷移式は、遷移条件を条件式で表したものであり、複数でも構わない。代表出力は、遷移時に自車両20の挙動が変化するような項目である。
【0055】
なお、
図6及び
図7に示す黒点はFSMにおける、初期モードを示している。上で述べた状態の遷移は黒点で示されるモードを起点として演算される。
【0056】
例えば、第一モード演算部9aは、第一モード演算部9aの現在のモードがLFモードであり、遷移式「stop_obs_inlane==1」を満たす場合、遷移番号(a1)の遷移を実行し、AIモードを演算結果として出力する。この場合の代表出力は、停止障害物前への停止である。
【0057】
次に、行動計画装置1の詳細な動作を
図10、
図11を用いて説明する。
図10は、実施の形態1の行動計画装置1を備える自車両20の行動を示す概略図である。
図10では、自車両20が時刻t1からt6にかけて、横断歩道の存在する信号機のない交差点を、右折して通過する時系列を表した図である。
図10において、実線で示す範囲は交差点エリアであり、破線で示す範囲は横断歩道エリアである。
図11は、実施の形態1の行動計画装置1の各構成の出力結果の一例を示す図である。
図11では、
図10に示す時刻t1からt6の各時刻において、シーン生成部8により生成されたシーン情報、第一モード演算部9aによる演算結果、第二モード演算部9bによる演算結果、モード選択部10の出力結果を表した図である。
図10及び
図11の時刻t1からt6はそれぞれ対応している。また、過去のモードであるprev_mode1及びprev_mode2は、ここでは前回モードとして記載する。より詳細には、前回の演算周期におけるモードである。また、任意のi(i=1~5)について、時刻t
i+1とt
iとの差t
i+1-t
iは、演算周期よりも大きいと仮定する。なお、時刻t1の場合のみ、前回モードは初期モードを指す。
【0058】
図10において、時刻t1は自車両20が交差点エリアに接近している様子を表している。
図11に示すように、時刻t1における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれ初期モードであるLFモード及びRDモードである。シーン生成部8は、障害物情報取得部3により取得した障害物情報、及び道路情報取得部5により取得した道路情報を用いて、自車両20が置かれた状況を次のシーン情報として生成する。自車両20が交差点エリアに近づいているためnear_int=1、交差点エリア内に他車両21が存在しないためobs_in_int=0、自車両20が走行しているレーンは非優先道路であるためego_in_prioritylane=0、横断歩道エリアに歩行者22が存在しないためppl_around_crswlk=0、ppl_stop=0、自車両20は走行中のためego_stop_frnt_crswlk=0がシーン生成部8によりシーン情報として生成される。
【0059】
第一モード演算部9aは、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移式「near_int==1」を満足するとして、遷移番号(a2)の遷移を実行し、AIモードを演算結果として出力する。
【0060】
第二モード演算部9bは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移番号(b1)、(b2)の遷移条件は満たされないため、同じRDモードに滞留する。すなわち、第二モード演算部9bはRDモードを演算結果として出力する。
【0061】
ここで、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの演算は、それぞれモードを演算する際に依存関係は存在しない。そのため、モード演算部9は、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの演算を並行して実行することができる。
【0062】
モード選択部10は、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bにおいて演算したモードの中から1つを選択して自車両20の行動として出力する。その際、モード選択部10は、第一モード演算部9aで演算したモードと第二モード演算部9bで演算したモードとが異なる場合、障害物によって発生し得る危険に対応するためのモードを優先して選択する。すなわち、モード選択部10は、時刻t1に関しては、第一モード演算部9aでのAIモード(交差点接近走行)と第二モード演算部9bでのRDモード(道なり走行)では、AIモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、AIモードを選択する。
【0063】
図10において、時刻t2は自車両20が交差点の停止線に近づいている状況であり、他車両21が交差点エリアに進入し、歩行者22が横断歩道エリアに接近している様子を表している。
図11に示すように、時刻t2における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれAIモード及びRDモードである。モード演算部9は、時刻t1からt2の間でモードが変化しないため、時刻t2における前回モードは、時刻t1の第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bにより演算したモードのまま保持する。これは、他の時刻においても同様である。また、時刻t2における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれAIモード及びRDモードである。
【0064】
シーン生成部8は、障害物情報取得部3により取得した障害物情報、及び道路情報取得部5により取得した道路情報を用いて、自車両20が置かれた状況を次のシーン情報として生成する。自車両20が交差点エリアに存在しているためnear_int=1、交差点エリア内に他車両21が存在するためobs_in_int=1、自車両20が走行しているレーンは非優先道路であるためego_in_prioritylane=0、横断歩道エリアに歩行者22が存在しないためppl_around_crswlk=0、ppl_stop=0、自車両20は走行中のためego_stop_frnt_crswlk=0がシーン生成部8によりシーン情報として生成される。
【0065】
第一モード演算部9aは、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移式「obs_in_int==1||ego_in_prioritylane==0」を満足するとして、遷移番号(a7)の遷移を実行し、SIモードを演算結果として出力する。
【0066】
第二モード演算部9bでは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移番号(b1)、(b2)の遷移条件は満たされないため、同じRDモードに滞留する。すなわち、第二モード演算部9bはRDモードを演算結果として出力する。
【0067】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのSIモード(停止線前停止)と第二モード演算部9bでのRDモード(道なり走行)では、SIモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、SIモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0068】
図10において、時刻t3は自車両20が交差点の停止線に近づいている際に、他車両21は交差点を通過中であり、歩行者22は横断歩道エリア内で停止している様子を表している。
図11に示すように、時刻t3における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれSIモード及びRDモードである。また、時刻t3における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれSIモード及びRDモードである。シーン生成部8は、near_int、obs_in_int、及びego_in_prioritylaneは時刻t2と同様のシーンであるため、near_int=1、obs_in_int=1、及びego_in_prioritylane=0をシーン情報として生成し、横断歩道エリアに歩行者22が存在するためppl_around_crswlk=1、横断歩道エリア内の歩行者22は停止しているためppl_stop=1、自車両20は走行中のためego_stop_frnt_crswlk=0をシーン情報として生成する。
【0069】
第一モード演算部9aは、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a10)、(a11)の遷移条件は満たされないため、同じSIモードで滞留する。すなわち、第一モード演算部9aはSIモードを演算結果として出力する。
【0070】
第二モード演算部9bは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「ppl_around_crswlk==1」を満足するため、遷移番号(b1)の遷移を実行し、SCモードを演算結果として出力する。時刻t3に関しては、第一モード演算部9aの演算結果であるSIモード(停止線前停止)及び第二モード演算部9bの演算結果であるSCモード(横断歩道前停止)は、どちらも障害物によって発生しうる危険を伴うシーンである。その場合、モード選択部10は、あらかじめ危険度に重みづけをしておくことも可能であり、ここではSIモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0071】
図10において、時刻t=t4は自車両20が交差点の停止線の前で停止している際に、他車両21は交差点を通過中であり、歩行者22は横断歩道エリア内で停止している様子を表している。
図11に示すように、時刻t4における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれSIモード及びSCモードである。また、時刻t4における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれSIモード及びSCモードである。シーン生成部8は、near_int、obs_in_int、及びego_in_prioritylaneは時刻t3と同様のシーンであるため、near_int=1、obs_in_int=1、及びego_in_prioritylane=0をシーン情報として生成し、ppl_around_crswlk、及びppl_stopも時刻t3と同様のシーンであるため、ppl_around_crswlk=1、及びppl_stop=1をシーン情報として生成し、自車両20は横断歩道前で停止中のためego_stop_frnt_crswlk=1をシーン情報として生成する。
【0072】
第一モード演算部9aは、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a10)、(a11)の遷移条件は満たされないため、同じSIモードで滞留する。すなわち、第一モード演算部9aはSIモードを演算結果として出力する。
【0073】
第二モード演算部9bは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「ego_stop_frnt_crswlk==1&&ppl_stop==1」を満足するため、遷移番号(b4)の遷移を実行し、WCモードを演算結果として出力する。
【0074】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのSIモード(停止線前停止)と第二モード演算部9bでのWCモード(横断意志確認)では、WCモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、WCモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0075】
図10において、時刻t5は、時刻t4からt5にかけて、自車両20が停止線の前で停止している際に、他車両21は交差点を通過し終えたが、歩行者22は横断歩道エリア内で依然として停止していたため、横断歩道エリア内を徐行して通過している様子を表している。
図11に示すように、時刻t5における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれSIモード及びWCモードである。また、時刻t5における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれSIモード及びWCモードである。シーン生成部8は、near_int、及びego_in_prioritylaneは時刻t4と同様のシーンであるため、near_int=1、及びego_in_prioritylane=0をシーン情報として生成し、交差点エリア内から他車両21が不在となったためobs_in_int=0をシーン情報として生成し、ppl_around_crswlk、ppl_stopに関しては時刻t4と同様のシーンであるため、ppl_around_crswlk=1、ppl_stop=1をシーン情報として生成し、自車両20は走行を開始したためego_stop_frnt_crswlk=0をシーン情報として生成する。
【0076】
第一モード演算部9aは、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移式「obs_in_int==0」を満足するため、遷移番号(a10)の遷移を実行し、CIモードを演算結果として出力する。
【0077】
第二モード演算部9bは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「prev_mode2(i)==WC,i=予め設定された期間内」を満足するため、遷移番号(b7)の遷移を実行し、CCCモードを演算結果として出力する。この遷移式について、以下に具体例を示す。時刻t5とt4との差がΔt×4であるとする。Δtは演算周期である。すなわち、時刻t4とt5との間に、t=t4+Δt、t=t4+Δt×2、t=t4+Δt×3の演算周期が含まれると仮定する。t=t4+Δtにおけるprev_mode2、すなわちprev_mode2(t4+Δt)は、時刻t4における現在のモードと同じSCモードである。一方、prev_mode2(t4+Δt×2)=WC、prev_mode2(t4+Δt×3)=WC、prev_mode2(t5)=WCとなり、prev_mode2は予め設定された期間WCモードとなる。よって、時刻t5においては、上記遷移式を満足するため、
図9における遷移番号(b7)に従って、第二モード演算部9bでの演算結果はCCCとなる。なお、prev_mode2がどのくらいの期間WCを継続するかについては、予め設定されるものとする。
【0078】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのCIモード(交差点横断)と第二モード演算部9bでのCCCモード(横断歩道近傍徐行)では、CCCモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、CCCモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0079】
図10において、時刻t6は自車両20が交差点内を右折中の様子を表している。
図11に示すように、時刻t6における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれCIモード及びCCCモードである。また、時刻t6における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれCIモード及びCCCモードである。シーン生成部8は、near_int、obs_in_int、及びego_in_prioritylaneは時刻t4と同様のシーンであるため、near_int=1、obs_in_int=0、及びego_in_prioritylane=0をシーン情報として生成する。また、シーン生成部8はシーン情報を生成する際に、自車両20周辺にシーン算出エリアを予め設けてもよい。
図10において、シーン算出エリアを二重の実線で示す。この場合、シーン生成部8は、横断歩道エリアがシーン算出エリアから外れたことによりppl_around_crswlk=0、及びppl_stop=0、自車両20は走行中のためego_stop_frnt_crswlk=0をシーン情報として生成する。
【0080】
第一モード演算部9aは、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a12)、(a13)の遷移条件は満たされないため、同じCIモードで滞留する。すなわち、第一モード演算部9aはCIモードを演算結果として出力する。
【0081】
第二モード演算部9bは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「ppl_around_crswlk==0」を満足するため、遷移番号(b8)の遷移を実行し、RDモードを演算結果として出力する。
【0082】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのCIモード(交差点横断)と第二モード演算部9bでのRDモード(道なり走行)では、CIモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、CIモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0083】
また、シーン生成部8により生成されたシーン情報が1つである場合は、シーン情報を用いて前記自車両の取り得る行動の候補であるモードを1つ以上演算する。すなわち、モード演算部9は、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの一方を用いてモードを1つ演算し、モード選択部10は、演算したモードを自車両20の行動として出力する。または、モード演算部9は、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの両方でそれぞれモードを演算し、モード選択部10は、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bにおいて演算したモードから1つを選択して、自車両20の行動として出力してもよい。
【0084】
次に、本実施の形態の行動計画装置1の効果について
図12及び
図13を用いて説明する。
図12は実施の形態1の行動計画装置1の動作を時系列で示す図である。
図13は実施の形態1の比較例の行動計画装置の動作を時系列で示す図である。
図12は、
図10及び
図11で示した行動計画装置1の処理動作の流れを時系列で示している。
図12及び
図13の時刻t1からt6は、
図10及び
図11で示した時刻t1からt6と一致する。
【0085】
実施の形態1の行動計画装置は複数のモード演算部9を備え、複数のモード演算部9はシーン情報が複数である場合はモードを複数並行して演算する。本実施の形態では、モード演算部9は第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bであり、シーン情報が複数である場合は第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bが並行して2つのモードを演算する例を示した。
【0086】
図12に示すように、実施の形態1の行動計画装置1は、時刻t4から時刻t5にかけて、第二モード演算部9bにおいて横断歩行者22の歩行意志確認のモードを出力する。これにより、自車両20は時刻t5において他車両21が交差点から出た後に徐行して通過が可能となる。そのため、実施の形態1の行動計画装置1は後述する比較例の行動計画装置と比較して保守的な行動を回避できる。
【0087】
これに対し、
図13に示す比較例の行動計画装置は単一のモード演算部を備える。すなわち、比較例の行動計画装置のモード演算部は、シーン情報が複数である場合に、複数のモードを並行して演算することはできない。そして、比較例の行動計画装置の単一のモード演算部は、シーン情報を用いて最も安全と考えられるモードを1つ出力する。
図13は、
図10で示す歩行者22と他車両21の動作シナリオに関して、比較例の行動計画装置の処理動作を時系列で示している。
また、
図13では、実施の形態1の行動計画装置1と比較例の行動計画装置の動作を比較するため、
図12で示す実施の形態1の行動計画装置1のモード選択部10による出力結果を重畳させて示している。
【0088】
時刻t4において停止線の前で停止している際、他車両21の交差点通過待機、横断歩行者22の通過待ち、及び横断歩行者22の歩行意志確認の行動を自車両20は実施する必要がある。これらの状況に対して、
図13に示すように比較例の行動計画装置の単一のモード演算部は、歩行意志確認のWCモードではなく、最も安全と考えられる停止線前で停止するSIモードを出力する。よって、比較例の行動計画装置は、交差点内の他車両21が交差点を通過し終えた時刻t5から、歩行意志確認を始める。すなわち、比較例の行動計画装置は実施の形態1の行動計画装置1よりも、交差点における停止時間が長く、自車両20の行動が保守的である。
【0089】
このように、複数のモード演算部9により並行してモード演算可能な本実施の形態の行動計画装置1の動作と単一のモード演算部9を備える比較例1の行動計画装置の動作では、歩行意志確認の時間を同じように確保した場合、時刻t5からの徐行と時刻t7からの徐行という停止時間に差が表れる。
【0090】
すなわち、本実施の形態の行動計画装置1は、シーン生成部8により生成されたシーン情報が複数である場合は、シーン情報を用いてモードを複数並行して演算し、演算したモードから1つを選択して自車両20の行動として出力する。これにより、複合的なシーンにおいて、比較例の行動計画装置よりも保守的な行動を回避することができる。
【0091】
複数のモード演算部9における演算は、それぞれモードを演算する際に依存関係は存在しない。すなわち、第一モード演算部9aが演算するモードは、第二モード演算部9bが演算するモードに影響を受けない。その逆も同様である。具体的には、複数のモード演算部9はシーン情報及び複数のモード演算部9のそれぞれの現在のモードを用いてモードを演算する。もしくは、複数のモード演算部9はシーン情報及び複数のモード演算部9のそれぞれの過去のモードを用いてモードを演算する。これにより、複数のモード演算部9は、モードを複数並行して演算することができる。そのため、上述した単一のモード演算部9を備える比較例の行動計画装置と比較して、自車両の行動をより迅速に計画することができ、交差点における停止時間を短縮することができるため、保守的な行動を回避することができる。
【0092】
また、本実施の形態の行動計画装置1は、自車両周辺に存在する障害物及び道路の情報である周辺情報を用いてシーン情報を生成し、モードを複数並行して演算することにより、各時刻における自車両20の行動を計画する。そのため、自車両20は安全かつ交通の妨げとならない行動をとることが可能となり、自動運転の適用範囲を広げることができる。
【0093】
なお、モード演算部9はFSMを用いる方法を説明したが、FSMに限らない。モード演算部9は、ニューラルネットワークなどで事前に学習して使用する方法、及びオントロジーなどで表現される事前のルールに基づいて自車両20の行動を決定する方法など、様々な方法を用いることが可能である。つまり、モード演算部9は、FSM、ニューラルネットワーク、及びオントロジーのうち少なくとも1つであればよい。
【0094】
また、シーン生成部8により生成されたシーン情報が複数である場合に、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bは同時にモードを演算する例を示したがこれに限られない。複数のモード演算部9は、1演算周期内にそれぞれの演算を順番に実行してもよい。すなわち、複数のモード演算部9はモードを複数並行して演算するとは、複数のモード演算部9は1演算周期内にモードを複数演算することを含む。
【0095】
実施の形態2.
実施の形態2の行動計画装置1について
図14を用いて説明する。
図14は、実施の形態2の行動計画装置1を含む自車両20の一部を示すブロック図である。実施の形態2の行動計画装置1は外部指示取得部11を備える点が、実施の形態1の行動計画装置1とは異なる。実施の形態1と重複する説明は省略する。実施の形態2の行動計画装置1は、周辺情報取得部2により取得した周辺情報、及び外部指示取得部11により取得した外部指示情報を用いて、自車両20の行動を計画する。
【0096】
外部指示取得部11は、障害物情報検出部4及び道路情報検出部6とは別に設けられ、行動計画装置1外に設けられる外部装置15からの情報を取得し、取得した情報をシーン生成部8及びモード演算部9に出力する。外部装置15とは、例えば管制、スマートフォン等の携帯端末、及び自車両20に設けられた操作部のうち少なくとも1つである。外部指示取得部11が取得する情報を外部指示情報と称する。外部指示情報は、外部装置15からの自車両20の運転に関する指示を示す情報であり、具体的には、停留所への停止指示、その場での停止指示、その場からの再開指示、駐車スペースへの入庫指示、駐車スペースからの出庫指示、交差点での通行可能指示、又は通行禁止指示などである。
【0097】
シーン生成部8は、周辺情報取得部2により取得した周辺情報、及び外部指示取得部11により取得した外部指示情報を用いて、自車両20が置かれた状況をシーン情報として生成する。
【0098】
モード演算部9は、シーン生成部8により生成されたシーン情報、及び外部指示取得部11により取得した外部指示情報を用いて、自車両20の取り得る行動の候補であるモードを演算する。また、実施の形態1と同様に、モード演算部9は、シーン生成部8により生成されたシーン情報が1つの場合にはモードを1つ以上演算し、シーン生成部8により生成されたシーン情報が複数である場合には、モードを複数並行して演算する。そして、モード選択部10は演算したモードが複数である場合は、演算した複数のモードの中から1つを選択して、自車両20の行動として出力する。
【0099】
次に、行動計画装置1による行動計画方法について説明する。
図15は実施の形態2の行動計画方法を示すフローチャートである。
図15のフローチャートの処理動作は、自車両20が走行中に繰り返し実行される。本実施の形態では、
図15に示すSTARTからENDを1演算周期として説明する。
【0100】
ステップS1及びステップS2は、実施の形態1の行動計画方法と同様である。
【0101】
ステップS20では、外部指示取得部11は、外部装置15から外部指示情報を取得する。
【0102】
ステップS3では、シーン生成部8はステップS1からS3において取得した周辺情報及び外部指示情報を用いて、自車両20が置かれた状況をシーン情報として生成する。
【0103】
ステップS4では、モード演算部9はステップS3においてシーン生成部8が生成したシーン情報は1つであるか否かを判定する。
【0104】
モード演算部9はシーン情報が1つであると判定した場合(ステップS4のYES)、モード演算部9はステップS1からS3において取得した周辺情報及び外部指示情報を用いてモードを1つ以上演算する(ステップS5)。
【0105】
モード演算部9はシーン情報が複数であると判定した場合(ステップS4のNO)、モード演算部9はステップS1からS3において取得した周辺情報及び外部指示情報を用いてモードを複数並行して演算する(ステップS6)。
【0106】
ステップS7からS9は、実施の形態1の行動計画方法と同様である。
【0107】
以上により、行動計画装置1の処理動作を終了する。
【0108】
次に、行動計画装置1の詳細な動作について
図16から
図20を用いて説明する。
図16は、実施の形態2の行動計画装置1を備える自車両20の行動を示す概略図である。
図16は、時刻t1からt6にかけて、管制からの指定位置での停止指示の後、指定位置からの運転再開するように再度管制から指示され、その指定位置は横断歩道付近であり、横断歩道付近の歩行者22を考慮しながら、自車両20が横断歩道を通過する時系列を表した図である。
図16において指定位置は×印で示し、横断歩道エリアは破線で示す範囲である。
図17は、実施の形態2のシーン生成部8により生成されたシーン情報を示す図である。シーン生成部8は
図17に示すように、あらかじめ生成するシーン情報を定義する。
図18は実施の形態2の第一モード演算部9aを示す概略図である。
図19は、実施の形態2の第一モード演算部9aの遷移条件を示す図である。
図20は、実施の形態2の行動計画装置1の各構成の出力結果の一例を示す図である。
【0109】
モード演算部9は、
図18に示す第一モード演算部9a、及び
図7に示す第二モード演算部9bを備える。第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bは実施の形態1と同様に独立して演算可能に設計される。
【0110】
第一モード演算部9aは、道路情報に準拠した行動を達成するほか、外部指示情報に準拠した行動を達成するためのモード演算を実施する。
【0111】
図18では、第一モード演算部9aで演算するモードは、指示待ち(以下、「WI(Wait Instruction)」と称する)、LF、指定位置停止(以下、「SP(Stop Position)」と称する)、ESの4モードが設定される例を示している。LF、ESは実施の形態1における第一モード演算部9aで説明したモードと同じである。WIは、自動運転の開始又は再開を実施する際に、外部指示を待つためのモードである。SPは、外部指示により指定位置での停止が指示された際に、指定位置に停止するように減速して停止するモードである。
【0112】
第二モード演算部9bは、障害物に対する回避、及び道路の優先権に即した行動を達成するためのモード演算を実施する。第二モード演算部9bは実施の形態1と同様である。
【0113】
図19は、
図18で示している第一モード演算部9aの遷移条件を示す図である。第一モード演算部9aは、シーン生成部8により生成されたシーン情報、及び外部指示情報を用いて、モード間の遷移が可能なように設計される。
図19において、現在のモードは自車両20の現在のモードを表しており、自動運転の開始時などは第一モード演算部9aではWIを初期モード、すなわちWIから始まることを想定している。遷移先のモードは、現在のモードと遷移条件とに基づいて、次に遷移するモードである。遷移番号は、現在のモードから遷移先のモードへの遷移を番号であらわされたものであり、第一モード演算部9aでは、(a3)~(a27)まで付与される。
図18と
図19の番号はそれぞれ対応している。なお、
図18に示す黒点はFSMにおける、初期モードを示している。上で述べた状態の遷移は黒点で示されるモードを起点として演算される。
【0114】
図20は、
図16に示す時刻t1からt6の各時刻において、外部指示情報、シーン生成部8により生成されたシーン情報、第一モード演算部9aの前回モード及び今回の演算結果、第二モード演算部9bの前回モード及び今回の演算結果、モード選択部10の出力結果を表した図である。
図16及び
図20の時刻t1からt6はそれぞれ対応している。
【0115】
図16において、時刻t1は、外部指示待ちであった自車両20が、外部装置15からの指定位置への停止指示を受けて、走行する様子を表している。外部指示取得部11は、管制からの指定位置停止の指示を示す外部指示情報を取得する。
図20に示すように、時刻t1における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれ初期モードであるWIモード及びRDモードである。また、時刻t1における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれ初期モードであるWIモード及びRDモードである。シーン生成部8は、周辺情報取得部2により取得した周辺情報、及び外部指示取得部11により取得した外部指示情報を用いて、自車両20が置かれた状況を次のシーン情報として生成する。すなわち、自車両20が外部装置15からの指定位置に向かって走行しているが指定位置に到達していないため、stop_pos_reach=0、横断歩道エリアに歩行者22が存在しないため、ppl_around_crswlk=0、ppl_stop=0、自車両20は停止中だが横断歩道エリアから離れているためego_stop_frnt_crswlk=0がシーン生成部8によりシーン情報として生成される。
【0116】
第一モード演算部9aは、外部指示情報、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a20)の遷移条件を満足するとして、(a20)の遷移を実行し、SPモードを演算結果として出力する。
【0117】
第二モード演算部9bでは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移番号(b1)、(b2)の遷移条件は満たされないため、同じRDモードに滞留する。すなわち、第二モード演算部9bはRDモードを演算結果として出力する。
【0118】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのSPモード(指定位置停止)と第二モード演算部9bでのRDモード(道なり走行)では、SPモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、SPモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0119】
図16において、時刻t2は自車両20が指定位置への停車を完了した様子を表している。
図20に示すように、時刻t2における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれSPモード及びRDモードである。また、時刻t2における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれSPモード及びRDモードである。シーン生成部8は、自車両20が外部装置15からの指定位置到達したためstop_pos_reach=1、横断歩道エリアに歩行者22が存在しないためppl_around_crswlk=0、ppl_stop=0、自車両20は横断歩道エリア前で停止しているため、ego_stop_frnt_crswlk=1をシーン情報として生成する。
【0120】
第一モード演算部9aは、外部指示情報、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移式「stop_pos_reach==1」を満足するとして、(a23)の遷移を実行し、WIモードを演算結果として出力する。
【0121】
第二モード演算部9bでは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移番号(b1)、(b2)の遷移条件は満たされないため、同じRDモードに滞留する。すなわち、第二モード演算部9bはRDモードを演算結果として出力する。
【0122】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのWIモード(指示待ち)と第二モード演算部9bでのRDモード(道なり走行)では、WIモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、WIモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0123】
図16において、時刻t3は自車両20が外部装置15からの指示待ち中に、横断歩道エリアに歩行者22が進入している様子を表している。
図20に示すように、時刻t3における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれWIモード及びRDモードである。また、時刻t3における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれWIモード及びRDモードである。シーン生成部8は、自車両20が外部装置15からの指定位置到達したまま停止しており、新たに指定位置が与えられていないため、stop_pos_reach=1、横断歩道エリアに歩行者22が存在するため、ppl_around_crswlk=1、横断歩道エリア内の歩行者22は移動しているため、ppl_stop=0、時刻t2と同様に自車両20は横断歩道エリア前で停止しているため、ego_stop_frnt_crswlk=1をシーン情報として生成する。
【0124】
第一モード演算部9aは、外部指示情報、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a19)、(a20)、(a21)の遷移条件は満たされないため、同じWIモードに滞留する。
【0125】
第二モード演算部9bでは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「ppl_around_crswlk==1」を満足するため、遷移番号(b1)の遷移を実行し、SCモードを演算結果として出力する。
【0126】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのWIモード(指示待ち)と第二モード演算部9bでのSCモード(横断歩道前停止)では、WIモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、WIモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0127】
図16において、時刻t4は自車両20が外部装置15からの指示待ち中に、横断歩道エリアに進入した歩行者22が停止している様子を表している。
図20に示すように、時刻t4における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれWIモード及びSCモードである。また、時刻t4における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれWIモード及びSCモードである。シーン生成部8は、自車両20が外部装置15からの指定位置到達したまま停止しており、新たに指定位置が与えられていないため、stop_pos_reach=1、横断歩道エリアに歩行者22が存在するため、ppl_around_crswlk=1、横断歩道エリア内の歩行者22は停止しているため、ppl_stop=1、時刻t3と同様に自車両20は横断歩道エリア前で停止しているため、ego_stop_frnt_crswlk=1をシーン情報として生成する。
【0128】
第一モード演算部9aは、外部指示情報、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a19)、(a20)、(a21)の遷移条件は満たされないため、同じWIモードに滞留する。
【0129】
第二モード演算部9bでは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「ego_stop_frnt_crswlk == 1 && ppl_stop == 1」を満足するため、遷移番号(b4)の遷移を実行し、WCモードを演算結果として出力する。
【0130】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのWIモード(指示待ち)と第二モード演算部9bでのWCモード(横断意志確認)では、WIモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、WIモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0131】
図16において、時刻t5は、時刻t=t4からt5にかけて、自車両20が外部装置15からの指示待ち状態中に、歩行者22が横断歩道エリア内で依然として停止していたため、横断歩道エリア内を徐行して通過している様子を表している。外部指示取得部11は、管制から指定位置からの運転再開を示す外部指示情報を取得する。
図20に示すように、時刻t5における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれWIモード及びWCモードである。また、時刻t5における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれWIモード及びWCモードである。シーン生成部8、自車両20が外部指示情報を新たに受け取ったためstop_pos_reach=0、ppl_around_crswlk、ppl_stopに関しては、時刻t4と同様のシーンであるため、ppl_around_crswlk=1、ppl_stop=1、自車両20は走行中のため、ego_stop_frnt_crswlk=0をシーン情報として生成する。
【0132】
第一モード演算部9aは、外部指示情報、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a19)の遷移条件を満足するとして、(a19)の遷移を実行し、LFモードを演算結果として出力する。
【0133】
第二モード演算部9bは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bでの予め設定された期間にわたる現在のモードから、遷移式「prev_mode2(i) == WC,i=予め設定された期間内」を満足するため、遷移番号(b7)の遷移を実行し、CCCモードを演算結果として出力する。この遷移式については、実施の形態1における
図11を用いて説明したのと同様の考え方である。
【0134】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのLFモード(経路追従)と第二モード演算部9bでのCCCモード(横断歩道近傍徐行)では、CCCモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、CCCモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0135】
図16において、時刻t6は自車両20が横断歩道を通過し終えた様子を表している。
図20に示すように、時刻t6における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードは、それぞれLFモード及びCCCモードである。また、時刻t6における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードは、それぞれLFモード及びCCCモードである。シーン生成部8は、stop_pos_reachは時刻t5と同様のシーンであるため、stop_pos_reach=0、横断歩道エリアがシーン算出エリアから外れたことにより、ppl_around_crswlk=0、ppl_stop=0、自車両20は走行中のため、ego_stop_frnt_crswlk=0をシーン情報として生成する。
【0136】
第一モード演算部9aは、外部指示情報、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移番号(a22)、(a3)の遷移条件は満たされないため、同じLFモードで滞留する。
【0137】
第二モード演算部9bでは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「ppl_around_crswlk==0」を満足するため、遷移番号(b8)の遷移を実行し、RDモードを演算結果として出力する。
【0138】
モード選択部10は、第一モード演算部9aでのLFモード(経路追従)と第二モード演算部9bでのRDモード(道なり走行)では、LFモードの方が障害物によって発生しうる危険に対応するモードであるため、LFモードを選択して自車両20の行動として出力する。
【0139】
次に、本実施の形態の行動計画装置1の効果について
図21及び
図22を用いて説明する。
図21は実施の形態2の行動計画装置1の動作を時系列で示した図である。
図22は実施の形態2の比較例の行動計画装置の動作を時系列で示した図である。
図21は、
図16及び
図20で示した行動計画装置1の動作の流れを時系列で示している。
図21及び
図22の時刻t1からt6は、
図16及び
図20で示した時刻t1からt6と一致する。
【0140】
実施の形態2の複数のモード演算部9は、シーン情報が複数である場合はモードを複数並行して演算する。本実施の形態では、モード演算部9は第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bを有し、シーン情報が複数である場合は第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bが並行してモードを演算する例を示した。
【0141】
図21に示すように、実施の形態2の行動計画装置1は、時刻t4から時刻t5にかけて、第二モード演算部9bにおいて、横断歩行者22の歩行意志確認を実施する。これにより、時刻t5において外部装置15からの再開を指示する外部指示情報を取得した際に、自車両20は横断歩道近傍に存在する歩行者22を意識した徐行による通過が可能となる。
【0142】
これに対し、
図22に示す比較例の行動計画装置のモード演算部は、単一のモード演算部である。すなわち、比較例の行動計画装置のモード演算部は、シーン情報が複数である場合に、複数のモードを並行して演算することはできない。そして、比較例の行動計画装置の単一のモード演算部は、シーン情報を用いて最も安全と考えられるモードを1つ出力する。
図22は、
図16で示す歩行者22と外部指示の動作シナリオに関して、比較例の行動計画装置の動作を時系列で示している。また、
図22では、実施の形態2の行動計画装置1と比較例の行動計画装置の動作を比較するため、
図21に示す実施の形態2の行動計画装置のモード演算部による出力結果を重畳させて示している。
【0143】
図22に示すように、比較例の行動計画装置は、時刻t4から時刻t5にかけて、歩行者22に対する歩行意志確認ではなく、外部装置15からの指示待ちにより停止する。そのため、比較例の行動計画装置では、時刻t5において、外部装置15からの再開を指示する外部指示情報を取得した際、外部指示が歩行者22の情報を考慮せず再開指示を出力している虞があるため、時刻t5から単一のモード演算部による歩行意志確認が始まる。すなわち、比較例の行動計画装置は実施の形態2の行動計画装置1よりも、交差点における停止時間が長く、自車両20の行動が保守的である。
【0144】
このように、複数のモード演算部9により並行してモード演算可能な本実施の形態の行動計画装置1の動作と単一のモード演算部9の比較例1の行動計画装置1の動作では、歩行意志確認の時間を同じように確保した場合、時刻t5からの徐行と時刻t7からの徐行という停止時間に差が表れる。
【0145】
本実施の形態の行動計画装置1は、シーン生成部8により生成されたシーン情報が複数である場合は、シーン情報を用いてモードを複数並行して演算し、演算したモードから1つを選択して自車両20の行動として出力する。これにより、複合的なシーンにおいて、保守的な行動を回避することができる。
【0146】
また、シーン生成部8は、周辺情報及び外部装置15からの自車両20の運転に関する指示を示す情報である外部指示情報を用いてシーン情報を生成し、モード演算部9は外部指示情報及びシーン情報を用いてモードを演算する。これにより、本実施の形態の行動計画装置1は、外部装置15からの指示も絡むような複合的なシーンにおいて、比較例の行動計画装置よりも保守的な行動を回避することができる。
【0147】
実施の形態3.
実施の形態3の行動計画装置1について説明する。上述のとおり、モード選択部10は複数のモード演算部9により異なる複数のモードが演算された場合は、予め設定されたモードの優先度を用いて、複数のモード演算部9により演算された複数のモードから1つを選択して自車両20の行動として出力する。実施の形態1では、優先度は、例えば、障害物に対応するためのモードを優先するように設定する例を説明した。実施の形態3は実施の形態1とモード選択部10における優先度の設定方法が異なる。その他の行動計画装置1の構成は、実施の形態1又は実施の形態2の行動計画装置1と同じである。
【0148】
上述のとおり、モード演算部9が演算するモードは、目標とする経路、目標速度、及び目標位置のうち少なくとも一つを示す情報である。
【0149】
モード選択部10は、目標速度が小さいモードを優先するように予め設定された優先度を保持する。そして、モード選択部10は、複数のモード演算部9により異なる複数のモードが演算された場合は、予め設定されたモードの優先度を用いて、複数のモード演算部9により演算された複数のモードから1つを選択して自車両20の行動として出力する。例えば、第一モード演算部9aの演算結果がCIモード(交差点を推奨車速で走行)であり、第二モード演算部9bの演算結果がCCCモード(横断歩道近傍を徐行)である場合、モード選択部10は目標速度が小さいCCCモードを自車両20の行動として出力する。
【0150】
なお、モード選択部10は、目標速度が小さいモードを優先するよう設定するだけでなく、障害物に対応するためのモードを優先するように、優先度を組み合わせて設定してもよい。
【0151】
また、モード選択部10は、自車両20の現在位置から目標位置までの距離が近いモードを優先するように予め設定された優先度を保持してもよい。
図23を用いて具体例を説明する。
図23は実施の形態3の自車両20が置かれた状況を示す概略図である。
図23では、自車両20が交差点を右折するために経路を計画し、走行する際に、交差点内の他車両21の通過待ちと横断歩道エリアに存在する、歩行者22を考慮する際のシーンを示している。
図23において、矢印は経路を示し、実線で示す範囲は交差点エリアであり、破線で示す範囲は横断歩道である。
【0152】
シーン生成部8は、実施の形態1と同様に、上述の障害物情報及び道路情報を用いて判定した結果を、
図5に示すようにシーン情報として生成する。第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bは、実施の形態1において
図6から
図9で説明したものと同様である。
【0153】
図24は、実施の形態3の行動計画装置1の各構成の出力結果の一例を示す図である。
図23に示す時刻における第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの前回モードをそれぞれ、AIモード及びRDモードとする。同様に、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bの現在のモードもAIモード及びRDモードとする。周辺情報取得部2で取得した周辺情報を用いてシーン生成部8は、自車両20が交差点エリアに存在しているためnear_int=1、交差点エリア内に他車両21が存在するためobs_in_int=1、自車両20が走行しているレーンは非優先道路であるため、ego_in_prioritylane=0、横断歩道エリアに歩行者22が存在しており停止しているため、ppl_around_crswlk=1、ppl_stop=1、自車両20は停止しているが横断歩道CWAから離れた位置のため、ego_stop_frnt_crswlk=0をシーン情報として生成する。
【0154】
第一モード演算部9aは、上述のシーン情報、及び第一モード演算部9aにおける現在のモードから、遷移式「obs_in_int==1||ego_in_prioritylane==0」を満足するとして、遷移番号(a7)の遷移を実行し、SIモードを演算結果として出力する。SIモードの目標位置は、停止線上の位置とする。
【0155】
第二モード演算部9bは、上述のシーン情報、及び第二モード演算部9bにおける現在のモードから、遷移式「ppl_around_crswlk==1」を満足するとして、遷移番号(b1)の遷移を実行し、SCモードを演算結果として出力する。SCモードの目標位置は、横断歩道エリアの手前とする。
【0156】
モード選択部10は、第一モード演算部9a及び第二モード演算部9bにおいてそれぞれで演算されたモードから目標位置を比較する。すなわち、第一モード演算部9aではSIモードが出力されたため、目標位置は交差点エリアの停止線上の位置となる。よって、モード選択部10は計画した経路において、点SIPと算出する。第二モード演算部9bでは、SCモードが出力されたため、目標位置は横断歩道エリアの手前の位置となる。つまり、モード選択部10は計画した経路において、点SCPと算出する。そして、モード選択部10は、経路上の自車両20の現在位置から目標位置までの距離が近い、SIモードを自車両20の行動として出力する。実施の形態1の設定方法では、障害物に対応するためのモードを優先して設定するため、横断歩道傍の歩行者に由来するSCモードが選択される可能性がある。一方、実施の形態3では、自車両20の現在位置から目標位置までの距離が近いモードを優先して設定するため、より適切なSIモードが選択される。これにより、モード選択部10は、より安全な行動を出力するよう、優先度を設定することが可能となる。
【0157】
なお、モード選択部10は、自車両20の現在位置から目標位置までの距離が近いモードを優先するよう設定するだけでなく、障害物に対応するためのモードを優先するように、優先度を組み合わせて設定してもよい。更に、モード選択部10は、自車両20の現在位置から目標位置までの距離が近いモードを優先するよう設定するだけでなく、目標速度が小さいモードと障害物に対応するためのモードとを優先するように、優先度を組み合わせて設定してもよい。
【0158】
本実施の形態の行動計画装置1は、シーン生成部8により生成されたシーン情報が複数である場合は、シーン情報を用いてモードを複数並行して演算し、演算したモードから1つを選択して自車両20の行動として出力する。これにより、複合的なシーンにおいて、
保守的な行動を回避することができる。
【0159】
また、モード選択部10は複数のモード演算部9により異なる複数のモードが演算された場合は、予め設定されたモードの優先度を用いて、複数のモード演算部9により演算された複数のモードから1つを選択して自車両20の行動として出力する。そして、モード選択部10は、目標速度が小さいモードを優先するように予め設定された優先度を保持する。また、モード選択部10は、自車両20の現在位置から目標位置までの距離が近いモードを優先するように予め設定された優先度を保持してもよい。これにより、複合的なシーンにおいて、より安全で最適な自車両20の行動計画することができる。
【0160】
なお、本明細書では行動計画装置1は、自車両20の行動を計画する例を説明したが、適用先を車両に限るものではなく、各種の移動体に適用することが可能である。行動計画装置1は、例えばビル内を点検するようなビル内移動ロボット、ライン点検ロボット、及びパーソナルモビリティなどの移動体の行動を計画する装置として使用することができる。移動体が自車両20以外の場合、道路情報検出部6内の地図取得部7は、例えば移動体が走行する経路の走行可能領域などを地図データとして取得する。また、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0161】
1 行動計画装置、2 周辺情報取得部、3 障害物情報取得部、4 障害物情報検出部、5 道路情報取得部、6 道路情報検出部、7 地図取得部、8 シーン生成部、9 モード演算部、9a 第一モード演算部、9b 第二モード演算部、10 モード選択部、11 外部指示取得部、12 処理回路、13 プロセッサ、14 メモリ、15 外部装置、20 自車両、21 他車両、22 歩行者