(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H02M3/155 P
(21)【出願番号】P 2023579948
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005290
(87)【国際公開番号】W WO2023152860
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 遼司
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/038823(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0315540(US,A1)
【文献】特開2021-111989(JP,A)
【文献】特開2020-162360(JP,A)
【文献】特開2010-130774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子を有して、第1直流回路から入力される直流電圧を電圧指令に応じて変圧して第2直流回路に出力するDC/DC変換器と、前記電圧指令である変調波と搬送波との比較に基づき前記半導体スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部と、を備えた電力変換装置において、
前記制御部は、
前記搬送波の一周期に渡って前記半導体スイッチング素子がスイッチングを行わない第1周期T1と、前記搬送波の一周期内のいずれかのタイミングで前記半導体スイッチング素子がスイッチングを行う第2周期T2と、の双方の周期が確保されるように、前記変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させる第1期間を、前記変調波の値に応じて調整する、
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1期間は、前記変調波の最大値を含む位相範囲において設定される、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記変調波に対する閾値を設定し、前記変調波が前記閾値を超える位相範囲において、前記変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させ、
前記閾値は、前記第1周期T1と前記第2周期T2との双方が確保される前記第1期間となるように調整される、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記DC/DC変換器は、
第1接続点を介して直列接続された前記半導体スイッチング素子を有する各相のレグ回路を並列接続したフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路の各相の前記レグ回路の前記第1接続点にそれぞれの第1端が接続され、それぞれの第2端が前記第2直流回路に接続されたリアクトル、および各前記リアクトルの第2端にそれぞれの第1端が接続されたエネルギー蓄積要素を有するフィルタ回路と、を備え、
各相の前記レグ回路に接続される前記フィルタ回路の前記エネルギー蓄積要素のそれぞれの第2端は、第2接続点を介して互いに接続され、
前記第2接続点は、前記第1直流回路の負極側、あるいは前記第1直流回路の正極側と負極側との間の中性点電位を有する中性点、に接続され、
前記制御部は、
各相の前記レグ回路の前記半導体スイッチング素子を、各相の前記レグ回路間で極性が反転された前記変調波により制御し、
前記搬送波の周期に対して整数倍の周期を有して振動する零相電圧指令を、各相の前記レグ回路に対する前記変調波にそれぞれ重畳することで、前記第1周期T1と前記第2周期T2との双方の周期が確保されるように、前記変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させる第1期間を、前記変調波の値に応じて調整する、
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記零相電圧指令の振幅は、前記変調波の最大値あるいは最小値を超えない範囲に設定される、請求項4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記フィルタ回路の共振周波数は、前記零相電圧指令の周波数よりも低く調整される、
請求項4または請求項5に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記搬送波の振幅を調整することで、前記第1期間を調整する、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、入力される直流電力を任意の直流電圧値に変圧するDC/DC変換器において、所望の出力電圧を確保するために、DC/DC変換器の出力電圧を安定化させる技術が提案されている。例えば、負荷急変時のDC/DC変換器の高速応答を実現させることで、出力電圧を安定化させて所望の電圧を出力する、以下のようなスイッチング電源装置としての電力変換装置が開示されている。
【0003】
即ち、従来の電力変換装置としてのスイッチング電源装置における降圧型DC/DCコンバータにおいて、入力端子には上側パワーMOSFETが接続され、接地電位側には下側パワーMOSFETが接続される。上側パワーMOSFETと下側パワーMOSFETとの中点には、インダクタとコンデンサとから成るLC平滑フィルタと、抵抗とコンデンサとから成るCRフィルタの一端が接続され、さらにLC平滑フィルタの中点には上記CRフィルタのもう一端と、出力端子が接続される。ここで、電源の負荷急減の場合には出力電圧が急激に上昇する。この電圧がVref+Δの電圧レベルを超えると、デューティ0%に相当するPWMパルス信号が選択され、ゲートドライバ回路に出力される。これにより下側パワーMOSFETが強制的にオン状態となり急速に出力電圧を下降させて、出力電圧変動は大幅に抑制される。一方、負荷急増の場合には、出力電圧が急激に減少する。この電圧がVref-Δの電圧レベルより下がると、デューティ100%に相当するPWMパルス信号が選択され、ゲートドライバ回路に出力される。これにより、上側パワーMOSFETが強制的にオン状態となり急速に出力電圧を上昇させて、出力電圧変動は大幅に抑制される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-113542号公報(段落[0015]~[0022])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されるスイッチング電源装置では、入力される直流電圧を降圧して任意の直流電圧に変圧している。そして、負荷の変動に伴う電圧変動に対応してデューティ比を100%または0%として、半導体スイッチング素子がスイッチングしない期間を過渡的に設けることで、電圧変動を抑制して出力電圧を安定化させ、所望の出力電圧を確保している。
ここで、降圧型DC/DC変換器は、一般的に入力電圧以上の電圧は出力不可である。また、入力電圧以下であっても、例えば、搬送波(キャリア波)に基づいて半導体スイッチング素子を駆動するパルス信号のパルス幅を決定して、半導体スイッチング素子のオン/オフを制御する電力変換装置において、キャリア波の周波数毎にスイッチングを行う場合では、デッドタイムの影響等によって出力電圧指令に応じた出力電圧が出力できないという課題がある。キャリア波の周波数を変更することでデッドタイムの影響を低減して出力電圧指令に応じた出力電圧を出力することも可能であるが、この場合は、ソフトウェアおよびハードウエアの複雑化を招く。
本願は、上記のような課題を解決するための技術を開示するものであり、簡易な構成を有しつつ、安定的に所望の出力電圧を出力できる電力変換装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に開示される電力変換装置は、
半導体スイッチング素子を有して、第1直流回路から入力される直流電圧を電圧指令に応じて変圧して第2直流回路に出力するDC/DC変換器と、前記電圧指令である変調波と搬送波との比較に基づき前記半導体スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部と、を備えた電力変換装置において、
前記制御部は、
前記搬送波の一周期に渡って前記半導体スイッチング素子がスイッチングを行わない第1周期T1と、前記搬送波の一周期内のいずれかのタイミングで前記半導体スイッチング素子がスイッチングを行う第2周期T2と、の双方の周期が確保されるように、前記変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させる第1期間を、前記変調波の値に応じて調整する、
ものである。
【発明の効果】
【0007】
本願に開示される電力変換装置によれば、簡易な構成を有しつつ、安定的に所望の出力電圧を出力できる電力変換装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1による電力変換装置の回路構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1による電力変換装置の他の回路構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1による電力変換装置の他の回路構成例を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1による電力変換装置の制御部の構成例を示す図である。
【
図5】実施の形態1による電力変換装置のパルス幅変調部の構成例を示す図である。
【
図6】実施の形態1による電力変換装置のパルス幅変調部の制御を説明するための波形図である。
【
図7】実施の形態1による電力変換装置において、過変調制御部を挿入する箇所の一例を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態1による電力変換装置において、過変調制御部による制御が行われない場合のゲート信号を示す図である。
【
図9】実施の形態1による電力変換装置において、過変調制御部による過変調制御が行われた場合のゲート信号を示す図である。
【
図10】実施の形態1による電力変換装置の過変調制御部の具体的な構成の一例を示す図である。
【
図11】実施の形態1による電力変換装置のパルス幅変調部の構成例を示す図である。
【
図12】各実施の形態による制御部のハードウエアの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は実施の形態1による電力変換装置100の回路構成例を示すブロック図である。
本実施の形態に係る電力変換装置100は、DC/DC変換器40と、このDC/DC変換器40を制御する制御部50と、を備える。
DC/DC変換器40は、直流電圧を出力する第1直流回路としてのDC電源部1と、直流電圧を入力とする第2直流回路としての負荷装置2との間に設けられ、DC電源部1から入力される直流電圧を所望の直流電圧に変圧し、正極端子40P、負極端子40Nを介して負荷装置2に出力する。
また、DC/DC変換器40は、正極端子40P、負極端子40Nに加えて、これら端子間の中性点電位を有する中性点ラインNLを備えている。詳細を後述するが、この中性点ラインNLは、DC/DC変換器40の入力側の回路に対して任意に接続される。
【0010】
以下、DC/DC変換器40の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、DC/DC変換器40は、DCリンク部10と、フルブリッジチョッパ回路部20と、フィルタ回路部30とを有する。
【0011】
DCリンク部10は、DC電源部1の正極と負極との間に設けられるDCリンクコンデンサ10Cを有して構成されており、DC電源部1からの直流電圧におけるリプル成分を除去する。
【0012】
フルブリッジチョッパ回路部20は、第1接続点としての正極点20Pを介して直列接続された半導体スイッチング素子21SU、21SLと、これら半導体スイッチング素子21SU、21SLに対してそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオード21DU、21DLと、を備えて構成されるA相のレグ回路20Aを有する。このA相のレグ回路20Aにおける正極点20Pは、フィルタ回路部30を介して正極端子40Pに接続される。
【0013】
また、フルブリッジチョッパ回路部20は、第2接続点としての負極点20Nを介して直列接続された半導体スイッチング素子22SU、22SLと、これら半導体スイッチング素子22SU、22SLに対してそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオード22DU、22DLとを備えた構成されるB相のレグ回路20Bを有する。このB相のレグ回路20Bにおける負極点20Nは、フィルタ回路部30を介して負極端子40Nに接続される。
フルブリッジチョッパ回路部20は、上記のように構成されたレグ回路20Aとレグ回路20Bとを、DC電源部1の正負極間において並列接続して構成される。
【0014】
フィルタ回路部30は、フルブリッジチョッパ回路部20と正極端子40P、負極端子40Nとの間に設けられ、これら正極端子40P、負極端子40Nを介して外部の負荷装置2に接続される。
【0015】
フィルタ回路部30におけるフィルタ31は、インダクタンス成分であるリアクトル31Lと、キャパシタンス成分であるエネルギー蓄積要素としてのフィルタコンデンサ31Cとを有する。リアクトル31Lの第1端は、レグ回路20Aの正極点20Pに接続され、第2端はフィルタコンデンサ31Cの第1端と正極端子40Pとに接続される。
【0016】
フィルタ回路部30におけるフィルタ32は、インダクタンス成分であるリアクトル32Lと、キャパシタンス成分であるエネルギー蓄積要素としてのフィルタコンデンサ32Cとを有する。リアクトル32Lの第1端は、レグ回路20Bの負極点20Nに接続され、第2端はフィルタコンデンサ32Cの第1端と負極端子40Nとに接続される。
【0017】
フィルタコンデンサ31Cの第2端とフィルタコンデンサ32Cの第2端とが、第2接続点としての中性点NPを介して直列接続され、この中性点NPは、中性点ラインNLを介して、DC/DC変換器40の入力側のDCリンク部10の負極に接続される。
なお、中性点ラインNLは、DC/DC変換器40の入力側のDCリンク部10における任意の箇所に接続可能であり、例えば、DCリンク部10の正極に接続してもよい。
【0018】
そして、詳細は後述するが、電力変換装置100の制御部50は、ゲート信号Gによってフルブリッジチョッパ回路部20における半導体スイッチング素子21(21SU、21SL)、22(22SU、22SL)を制御することにより、DCリンク部10における直流電圧を、所望の大きさの直流電圧に降圧する。半導体スイッチング素子21、22の制御方法としては、PWM制御が用いられる。
【0019】
DC/DC変換器40は、任意の大きさの直流電圧、直流電力潮流を制御するにあたり、正極端子40Pと負極端子40Nのそれぞれに対して1個つずつ、即ち、合計で2個の電流検出器5P、5Nを設ける。これにより、制御部50は、フルブリッジチョッパ回路部20から出力された電流の電流検出値i_sens1,i_sens2を取得する。
さらに、DC/DC変換器40は、正極端子40Pと負極端子40Nとの間の電圧を測定する1個の電圧検出部6を備える。これにより制御部50は、正極端子40Pと負極端子40Nとの間の出力電圧検出値V_sensを取得する。
【0020】
以下、
図1に示した電力変換装置100とは異なる構成の電力変換装置100ex1について説明する。
図2は、実施の形態1による電力変換装置100ex1の回路構成例を示すブロック図である。
基本的な構成は
図1に示した電力変換装置100と同様であるが、中性点ラインNLの接続箇所が異なる。
【0021】
図2に示すように、電力変換装置100ex1におけるDCリンク部10は、2つのDCリンクコンデンサ10CU、10CLの直列体により構成されており、これらコンデンサ10CU、10CLの接続点である中性点P、即ち、DC電源部1の正極側と負極側との間の中性点電位点に中性点ラインNLが接続されている。
このような構成とすることで、フィルタコンデンサ31C、32Cに印加される電圧が均等となり、結果としてフィルタコンデンサ31C、32Cに要求される耐電圧が低減されて、フィルタコンデンサ31C、32Cの小型化が可能となる。
【0022】
以下、上記電力変換装置100、100ex1とは異なる構成の電力変換装置100ex2について説明する。
図3は、実施の形態1による電力変換装置100ex2の回路構成例を示すブロック図である。
上記電力変換装置100、100ex1では、DC/DC変換器40として、4個の半導体スイッチング素子を備えたフルブリッジチョッパ回路を示し、このフルブリッジチョッパ回路の正極点、負極点に対して2つの電流検出器をそれぞれ設ける構成を示した。
しかしながらDC/DC変換器40は、この構成に限定するものではなく、DC/DC変換器40としては入力の直流電圧を任意の直流電圧に変圧可能な構成を有していればよい。例えば、以下に説明するような、半導体スイッチング素子を2個使用するハーフブリッジチョッパ回路を用いるものでもよい。
【0023】
図3に示すように、ハーフブリッジチョッパ回路部20hは、第1接続点としての正極点20Pを介して直列接続された半導体スイッチング素子21SU、21SLと、これら半導体スイッチング素子21SU、21SLに対してそれぞれ逆並列に接続された還流ダイオード21DU、21DLと、を備えて構成されるレグ回路20Aを有する。このレグ回路20Aにおける正極点20Pは、フィルタ回路部30を介して正極端子40Pに接続される。
【0024】
フィルタ回路部30は、ハーフブリッジチョッパ回路部20hと正極端子40Pとの間に設けられ、この正極端子40Pを介して外部の負荷装置2に接続される。
フィルタ回路部30におけるフィルタ31は、インダクタンス成分であるリアクトル31Lと、キャパシタンス成分であるエネルギー蓄積要素としてのフィルタコンデンサ31Cとを有する。リアクトル31Lの第1端は、レグ回路20Aの正極点20Pに接続され、第2端はフィルタコンデンサ31Cの第1端と正極端子40Pとに接続される。
【0025】
以上のようなハーフブリッジ構成とすることで、必要となる半導体スイッチング素子の数、電流検出器の個数を低減することが可能となる。一方で、このような構成では、正極端子40P、負極端子40Nにおける電位が正負対称とならないため、別途、電位を固定する手段を設けることが必要な場合がある。
【0026】
なお、本実施の形態1に係る電力変換装置100では、入力側となるDC電源部1と、出力側となる負荷装置2との間のパワーフローに特段の指定は無い。例えば、DC電源部1と負荷装置2との間のパワーフローの方向が逆でもよく、即ち、DC/DC変換器40として昇圧回路が用いられてもよい。
また、負荷装置2としては、直流電力を受電して消費する直流負荷、例えば直流電力を充電して任意に放電することが可能なリチウムイオンバッテリー等の蓄電池を適用させることで、DCリンク部10を介して接続されたDC電源部1と負荷装置2の間で電力の融通を行うことができる。
【0027】
なお、
図1~
図3に示されるDC/DC変換器40は1つであるが、本実施の形態に係る電力変換装置は、複数の異なる直流の配電系統を有するシステムを想定しており、DCリンク部10を介して2つ以上のDC/DC変換器40を備えることができる。この時、各DC/DC変換器40の構成は同一であるが、出力する電圧に関しては任意に設定可能である。
【0028】
図4は、本実施の形態1に係る電力変換装置100の制御部50の構成例を示す図である。ここでは、DC/DC変換器40として、
図1に示したフルブリッジチョッパ回路部20を適用した電力変換装置100における制御部50の構成例を示す。
図4に示すように、制御部50は、出力電圧制御部(Automatic Voltage Regulator)51と、電流制御部(Automatic Current Regulator)52と、パルス幅変調部53a、53bとを備える。
【0029】
電力変換装置100は、入力される直流電圧を任意の直流電圧に降圧して出力するために、電圧検出部6により検出された出力電圧検出値V_sensが、出力電圧指令V_refに追従するように制御を行う。
この制御において、はじめに、出力電圧制御部51は、出力電圧指令V_refと出力電圧検出値V_sensとを入力として、DC/DC変換器40が出力すべき電流である出力電流指令値i_refを演算する。演算された出力電流指令値i_refは、後段の電流制御部52に入力される。
【0030】
次に、電流制御部52は、入力される出力電流指令値i_refと、電流検出器5P、5Nにより検出された、フルブリッジチョッパ回路部20から出力された電流の電流検出値i_sens1,i_sens2とに基づいて、フルブリッジチョッパ回路部20の2つのレグ回路20A、20Bへの変調波ma、mbを演算する。
なお、電流制御部52は、レグ回路20Aに対する変調波maを、図示しない反転回路を用いてその極性を反転させて、レグ回路20Bに対する変調波mbとして出力する。
【0031】
演算された変調波ma、mbは、パルス幅変調部53a、53bにそれぞれ入力される。
パルス幅変調部53a、53bは、フルブリッジチョッパ回路部20の2つのレグ回路20A、20Bの半導体スイッチング素子21、22を駆動するゲート信号G(Gate_21SU、Gate_21SL、Gate_22SU、Gate_21SL)を生成して出力する。これにより、フルブリッジチョッパ回路部20の半導体スイッチング素子21、22のオン/オフ動作が行われ、DCリンク部10を介して供給される直流電圧は、出力電圧指令V_refに応じた直流電圧に降圧される。
【0032】
図5は、
図4に示したパルス幅変調部53aの具体的な構成例を示す図である。
図6は、
図4に示したパルス幅変調部53aの制御を説明するための波形図である。
なお、パルス幅変調部53bの構成は、以下にて説明するパルス幅変調部53aの構成と同様であるため、説明を省略する。
また、ここでは例として、
図1のフルブリッジチョッパ回路部20におけるレグ回路20Aを構成する半導体スイッチング素子21SU、21SLに対するゲート信号Gとなるパルス信号の生成を例として説明する。
【0033】
パルス幅変調部53aでは、与えられた変調波maと、搬送波としてのキャリア波(Carrier wava)とを、比較器55によりその大小を比較することでゲート信号Gとなるパルス信号を生成する。ここで比較器55は、変調波maがキャリア波より大きい場合はオン信号として1を出力し、変調波maがキャリア波より小さい場合はオフ信号として0を出力する。
【0034】
比較器55により出力されたパルス信号に基づき、
図6に示すような、半導体スイッチング素子21SUに対するゲート信号G(Gate_21SU)が生成される。
また、比較器55が出力した信号を反転回路57によって反転したパルス信号に基づき、
図6に示すような、同一レグの対向素子である半導体スイッチング素子21SLのゲート信号G(Gate_21SL)が生成される。
さらに生成されたゲート信号Gate_21SU、Gate_21SLは、ゲート駆動装置56によって、実際に半導体スイッチング素子21SU、21SLのオン/オフを駆動可能な電圧に変換される。こうして生成されるゲート信号Gate_21SU、Gate_21SLにより、同一レグ回路内における半導体スイッチング素子21SU、21SLがそれぞれ駆動される。
【0035】
以上のようにして半導体スイッチング素子に対するゲート信号を生成することで、同一レグ回路内の半導体スイッチング素子において、上アームあるいは下アームの一方の半導体スイッチング素子がオン状態の際に、他方の半導体スイッチング素子がオフ状態となる。これにより、DCリンク部10の電圧が、レグ回路20Aの正極間で短絡することを防止している。
【0036】
以上の構成により理想的には、同一レグ回路内の上アームと下アームの半導体スイッチング素子の同時オンによる短絡は防止することが可能である。しかしながら一般的には、半導体スイッチング素子、ゲート駆動装置、における種々のばらつきに起因して生じ得るる同一レグ回路内の半導体スイッチング素子の同時オンを防止するため、上アームと下アームの半導体スイッチング素子が共にオフ状態となるデッドタイムが設けられる。
【0037】
ここで、フルブリッジチョッパ回路部20は、正極端子40P、負極端子40Nに対して対象な構成を有しており、また前述のように、フルブリッジチョッパ回路部20のレグ回路20Aに対する電圧指令としての変調波maとレグ回路20Bに対する電圧指令としての変調波mbとは極性が反転している。そのため、正極端子40Pおよび負極端子40Nに出力される電圧は、中性点ラインNLの電位に対して正負対称となる。
【0038】
即ち、
図1に示されるように、中性点ラインNLがDCリンク部10の負極である対地電位に接続されている構成では、正極端子40Pおよび負極端子40Nに出力される電圧は、対地電位に対して正負対象となる。また、
図2に示されるように、中性点ラインNLがDCリンク部10の中性点Pに接続されている構成では、正極端子40Pおよび負極端子40Nに出力される電圧は、DCリンク部10の正極と負極との間の中性点Pにおける中性点電位に対して正負対象となる。
【0039】
なお、この
図5においては図示されていないが、以下にて説明する本実施の形態の要部である過変調制御部60が、パルス幅変調部53aにおいて実際には設けられている。
以下、この過変調制御部60について説明する。
図7は、実施の形態1による過変調制御部60が、制御部50内において設けられる箇所の一例を示す図である。
図7に示すように、本実施の形態の過変調制御部60は、
図5に示したパルス幅変調部53a内の比較器55の前段側において挿入されている。
【0040】
ここで、DC/DC変換器40として、
図1に示したフルブリッジチョッパ回路部20を用いた場合において、レグ回路20Aを駆動するパルス幅変調部53aに与えられる理想的な変調波maは以下式により表される。
ma = Vout / Vin
但し、Voutは出力電圧、Vinは入力電圧を示す。
【0041】
つまり、入力電圧Vinが固定と仮定すると、出力電圧Voutが高くなるほど変調率は大きくなる。理想的には、上記式に従ってVin=Voutとなるまでの電圧を出力可能であるが、主回路上のインピーダンスによる電圧降下、デッドタイム、半導体スイッチング素子のスイッチングにおいて設けるゲート信号Gの最小パルス幅時間の影響等によって、DC/DC変換器40が出力可能な電圧は制限される。
特にデッドタイムによる出力電圧誤差の影響は、キャリア波の周波数に依存する。そのため、キャリア周期毎にスイッチングを実施する場合では、出力不可となる電圧範囲がより広くなる。
【0042】
図7に示すように、本実施の形態では、パルス幅変調部53aにおいて、変調波とキャリア波とを比較してパルス信号を生成する前段において、過変調制御部60を設けている。
この過変調制御部60は、変調波の大きさを調整する制御部である。
図7において、過変調制御部60に入力される変調波をma0として示し、過変調制御部60が調整して出力した変調波をma1として示す。
【0043】
過変調制御部60は、変調波ma0に対する閾値DThを設定している。そして、過変調制御部60は、変調波ma0がこの閾値DThを超える位相においては、変調波ma0を強制的に1以上、すなわちキャリア波の振幅よりも大きい値に増加させる過変調制御を行う。そして過変調制御部60は、このように調整された変調波を、変調波ma1として比較器55に対して出力する。
比較器55は、調整された変調波ma1とキャリア波とを比較することにより、ゲート信号Gとなるパルス信号を生成する。
【0044】
以下、この過変調制御部60における過変調制御について、変調波とキャリア波が示された波形図を用いて説明する。
図8は、過変調制御部60による制御が行われない場合の、半導体スイッチング素子21SUに対するゲート信号G(Gate_21SU)を示す比較例の図である。
図9は、実施の形態1による、過変調制御部60による過度変調制御が行われる場合の、半導体スイッチング素子21SUに対するゲート信号G(Gate_21SU)を示す図である。
【0045】
図8に示される、変調波ma0が閾値DThを超える位相範囲においては、
図9に示すように、過変調制御によって、変調波ma1の値は、キャリア波を超えるように増加させられている。この、変調波ma1がキャリア波を超えるように調整されている第1期間Tnは、半導体スイッチング素子21SUのスイッチングが行われない、即ち、半導体スイッチング素子21SUがオン状態に固定されている期間である。
結果として、半導体スイッチング素子21SUのスイッチングが行われない期間は、
図8に示すw1から、
図9に示すw2にその期間長が調整される。
【0046】
過変調制御により、キャリア波を超えるように変調波ma1が調整された第1期間Tnにおいては、変調波ma1は1とみなしてよく、理想的にはDC/DC変換器40の入出力が接続されて、出力電圧VoutはVinと等しくなるよう上昇する。ただし、パルス幅変調部53aの前段には、
図4において説明したように、出力電圧指令V_refに応じた所望の出力電圧となるような制御が実施されているため、変調波ma0の値は小さくなる方向となる。
結果として、
図9に示すように、一定の期間、キャリア波を超えるように変調波ma1の値が調整される第1期間Tnが確保された後に、再び変調波ma1は、閾値DTh以下の値となり、その後、半導体スイッチング素子201のスイッチングが再開される。
【0047】
ここで、
図9に示されるキャリア波の各周期において、キャリア波の一周期に渡って半導体スイッチング素子がスイッチングを行わない第1周期T1と、キャリア波の一周期内のいずれかのタイミングで半導体スイッチング素子がスイッチングを行う第2周期T2と、の双方の周期が交互に確保されている。
即ち、過変調制御部60は、過変調制御において、キャリア波の一周期に渡ってスイッチングを行わない第1周期T1と、キャリア波の一周期内のいずれかのタイミングでスイッチングを行う第2周期T2と、の双方の周期が確保されるように、変調波を強制的に1以上引き上げるように調整する第1期間Tnの期間長を、変調波の値に応じて調整している。
【0048】
こうして、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域、即ち、変調波の値が大きくなる位相範囲においては、キャリア波の一周期に渡ってスイッチングが行われない第1周期T1が確保される。これにより、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域においてはデッドタイムが設定されないため、出力電圧誤差が低減される。そのため、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域であっても、出力電圧指令に応じた電圧を精度良く出力できる。こうして、キャリア周波数毎にスイッチングが行われる一般的な制御の場合と比較して、より安定的に所望の出力電圧を出力できる。
閾値DThは、このように、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域において、キャリア波の一周期に渡ってスイッチングが行われない第1周期T1が確保される値となるように調整されている。なお、第1期間Tnは、過変調制御部の構成、各種制御パラメータにも依存して変化するため、閾値の設定はこれらのパラメータに基づき行うとよい。
【0049】
また、このように、過変調制御部60は、変調波ma0に対する閾値DThを設定しており、変調波ma0がこの閾値DThを超える位相において、第1期間Tnが設定される。即ち、第1期間Tnは、変調波ma0の最大値を含む位相範囲において設定されることになる。これにより、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域において、確実に、スイッチングが行われない第1周期T1を確保できる。
なお、制御部50が、キャリア波の振幅を調整することで、第1期間Tnの期間を調整してもよい。
【0050】
図10は、実施の形態1による過変調制御部60の具体的な構成の一例を示す図である。
リミッタ回路61は、変調波ma0が設定された上限値以上の入力の場合、強制的に出力を設定された上限値に設定し、変調波ma0が設定された下限値以下の入力の場合、強制的に出力を設定された下限値とし、それ以外の値の入力はそのままゲイン1で出力する。また設定された閾値DThを出力する閾値設定部62、比較器63、加算器65を組み合わせることで、閾値設定部62から出力される閾値DThを超える変調波ma0は、強制的に1以上の値となる。
また、フルブリッジチョッパ回路部20のような2つのレグ回路20A、20Bを備える場合において、一方のレグ回路の変調波の極性が、他方のレグ回路の変調波の極性に対して反転しているような構成においても、この過変調制御部60を適用可能とするために、比較器64、減算器66を組み合わせることで、2つのレグ回路20A、20Bに対応できる処理を実施可能である。
【0051】
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置においては、
半導体スイッチング素子を有して、第1直流回路から入力される直流電圧を電圧指令に応じて変圧して第2直流回路に出力するDC/DC変換器と、前記電圧指令である変調波と搬送波との比較に基づき前記半導体スイッチング素子のスイッチングを制御する制御部と、を備えた電力変換装置において、
前記制御部は、
前記搬送波の一周期に渡って前記半導体スイッチング素子がスイッチングを行わない第1周期T1と、前記搬送波の一周期内のいずれかのタイミングで前記半導体スイッチング素子がスイッチングを行う第2周期T2と、の双方の周期が確保されるように、前記変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させる第1期間を、前記変調波の値に応じて調整する、
ものである。
【0052】
このように制御部は、搬送波の一周期に渡って半導体スイッチング素子がスイッチングを行わない第1周期T1と、搬送波の一周期内のいずれかのタイミングで半導体スイッチング素子がスイッチングを行う第2周期T2と、の双方の周期が確保されるように、変調波が搬送波を超えるようにその値を増加させている第1期間Tnを、変調波の値に応じて調整している。
これにより、搬送波の周期毎にスイッチングが行われないため、デッドタイムの影響による出力電圧誤差を抑制できる。こうして、キャリア波の周波数を変更することなく出力可能な電圧範囲を拡大できる。そのため、キャリア波の周波数を変更した場合のハードウェアの設計変更、制御部の複雑化を招くことがなく、電力変換装置は、簡易な構成を有しつつ、安定的に出力電圧指令に応じた所望の電圧を出力できる。
【0053】
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置においては、
前記第1期間は、前記変調波の最大値を含む位相範囲において設定される、
ものである。
【0054】
そのため、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域において、変調波が搬送波を超えるように変調波の値が増加される第1期間が確実に確保され、半導体スイッチング素子がスイッチングを行わないように制御できる。これにより、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域においても、出力可能な電圧範囲を拡大でき、更に安定的に出力電圧指令に応じた電圧を出力できる。
【0055】
また、上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置においては、
前記制御部は、
前記変調波に対する閾値を設定し、前記変調波が前記閾値を超える位相範囲において、前記変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させ、
前記閾値は、前記第1周期T1と前記第2周期T2との双方が確保される前記第1期間となるように調整される、
ものである。
【0056】
このように変調波に対して閾値を設定し、変調波が閾値を超えると変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させる。これにより、変調波が閾値を超える位相、即ち、入力電圧に対して出力電圧の比率が高い領域において、確実に半導体スイッチング素子がスイッチングを行わないように制御できる。
また、閾値は、第1周期T1と第2周期T2との双方を確保される第1期間を得られるように調整されているため、搬送波の周期毎にスイッチングが行われない。そのため、デッドタイムの影響による出力電圧誤差を抑制できる。
また、制御パラメータ、閾値の設計によって、第1期間を変化させることが可能となる。また、このように閾値を適切に設定することで、入力電圧に対して出力電圧が小さい領域においては、第1期間が設定されないように制御できる。
【0057】
実施の形態2.
以下、本願の実施の形態2を、上記実施の形態1と異なる箇所を中心に図を用いて説明する。上記実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略する。
図11に本実施の形態2に係る電力変換装置のパルス幅変調部253の構成を示す。本実施の形態2に係る電力変換装置について、DC/DC変換器40の構成は実施の形態1に示すフルブリッジチョッパ回路部と同様であるが、過変調制御部60による制御方法が異なる。
なお、本実施の形態2における電力変換装置においては、ハーフブリッジチョッパ構成のDC/DC変換器は、後述するように、出力端子である正極端子、負極端子において共通の電圧である零相電圧を制御できないため用いることができない。
【0058】
図11に示す通り、本実施の形態の過変調制御部260は、実施の形態1と同様に、パルス幅変調部53a内の比較器55a、55bの前段側において設けられる。
過変調制御部260は、零相電圧重畳部267と、加算器268a、268bとを有する。
そして、過変調制御部260は、出力電圧制御部51および電流制御部52によって演算された、2のレグ回路20A、20Bの変調波ma0、mb0に対して、零相電圧重畳部267により、各相共通の値である零相電圧指令を加算器258a、258bを用いて加算する。このとき、零相電圧指令は交流波形であり、零相電圧指令をキャリア波の整数倍の周期を有して振動するように設定することで、キャリア周期、およびキャリア周期と同期した制御部50の動作周期と同期させることが可能となる。これにより、過変調制御をキャリア波と同期して実施することが可能となる。
【0059】
ここで零相電圧指令は上記のようにキャリア周期に基づいた周波数の交流であるが、その波形に指定は無く、零相電圧指令を変調波ma0、mb0に重畳させることにより、零相電圧指令が重畳された変調波ma1、mb1が、周期的にキャリア波を超える第1期間Tnを有するような波形であればよい。
【0060】
なお、この時、フルブリッジチョッパ回路部20における各相の2つのレグ回路20A、20Bの変調波ma0、mb0は、互いに極性が異なる。そのため、共通の交流成分である零相電圧指令を加算することで、各相の変調波ma1、mb1がそれぞれキャリア波を超過するタイミングが各相間で交互に切り替わる。
【0061】
この時、フィルタ回路部30の共振周波数の値と、零相電圧指令の周波数の値とが近い場合、出力電圧波形が振動的になるおそれがある。そのため、フィルタ回路30の共振周波数が零相電圧指令の周波数より低くなるように調整することで、周波数間における干渉を回避できる。
【0062】
また、零相電圧指令の振幅を、変調波の最大値あるいは最小値を超えない範囲に設定されることで、入力電圧に対して出力電圧が小さい領域において、意図しない、変調波のキャリア波の超過を防止できる。
【0063】
また、フィルタ回路部30の中性点NPを、DC電源部1の負極側あるいはDC電源部1の正極側と負極側との間の中性点電位を有する中性点に接続することで、零相電圧を重畳したことに起因するコモンモード電流が、負荷装置2側に流出することを抑制できる。
【0064】
なお、
図11に示すようなパルス幅制限部259を設け、比較器55から出力されたパルス信号において、所定のパルス幅よりも短いパルス信号を強制的に最低限の設定されたパルス幅を有するように調整する構成とすれば、デッドタイムによってパルスが消失することを抑制できる。
【0065】
上記のように構成された本実施の形態の電力変換装置においては、
前記DC/DC変換器は、
第1接続点を介して直列接続された前記半導体スイッチング素子を有する各相のレグ回路を並列接続したフルブリッジ回路と、
前記フルブリッジ回路の各相の前記レグ回路の前記第1接続点にそれぞれの第1端が接続され、それぞれの第2端が前記第2直流回路に接続されたリアクトル、および各前記リアクトルの第2端にそれぞれの第1端が接続されたエネルギー蓄積要素を有するフィルタ回路と、を備え、
各相の前記レグ回路に接続される前記フィルタ回路の前記エネルギー蓄積要素のそれぞれの第2端は、第2接続点を介して互いに接続され、
前記第2接続点は、前記第1直流回路の負極側、あるいは前記第1直流回路の正極側と負極側との間の中性点電位を有する中性点、に接続され、
前記制御部は、
各相の前記レグ回路の前記半導体スイッチング素子を、各相の前記レグ回路間で極性が反転された前記変調波により制御し、
前記搬送波の周期に対して整数倍の周期を有して振動する零相電圧を、各相の前記レグ回路に対する前記変調波にそれぞれ重畳することで、前記第1周期T1と前記第2周期T2との双方の周期が確保されるように、前記変調波が前記搬送波を超えるように該変調波の値を増加させる第1期間を、前記変調波の値に応じて調整する、
ものである。
【0066】
このように、搬送波の周期に対して整数倍の周期を有して振動する零相電圧指令を、各相のレグ回路に対する変調波にそれぞれ重畳することで、変調波が搬送波を超えるように該変調波の値を増加させる第1期間を周期的に得られる。これにより、デッドタイム等の影響によって本来出力電圧範囲が制限される電圧領域においても、安定的に所望の出力電圧が出力可能となる。
【0067】
また、フィルタ回路において、2つのエネルギー蓄積要素のそれぞれの第2端が接続される第2接続点は、第1直流回路の負極側、あるいは第1直流回路の正極側と負極側との間の中性点電位点に接続される。これにより零相電圧を重畳したことに起因するコモンモード電流が、負荷装置側に流出することを抑制でき、出力電圧を安定化させて所望の出力電圧を得られる。
【0068】
図12は、制御部50のハードウエアの一例を示す図である。
制御部50としての制御装置は、ハードウエアの一例を
図12に示すように、プロセッサ71と記憶装置72とから構成される。記憶装置72は、図示していない、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを備える。
また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を備えてもよい。プロセッサ71は、記憶装置72から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ71にプログラムが入力される。また、プロセッサ71は、演算結果等のデータを記憶装置72の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0069】
本願は、様々な例示的な実施の形態及び実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、及び機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。
従って、例示されていない無数の変形例が、本願に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【符号の説明】
【0070】
1 DC電源部(第1直流回路)、2 負荷装置(第2直流回路)、20A,20B レグ回路、21SU,21SL,22SU,22SL 半導体スイッチング素子、30 フィルタ回路、31C,32C フィルタコンデンサ(エネルギー蓄積要素)、31L,32L リアクトル、40 DC/DC変換器、100,100ex1,100ex2 電力変換装置。