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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   B60Q 1/04 20060101AFI20241004BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B60Q1/04 E
B60Q1/14 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024042645
(22)【出願日】2024-03-18
(62)【分割の表示】P 2020031680の分割
【原出願日】2020-02-27
(65)【公開番号】P2024061882
(43)【公開日】2024-05-08
【審査請求日】2024-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】上杉 篤志
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】石川 晃暉
【審査官】谷口 東虎
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-088233(JP,A)
【文献】特開2020-032876(JP,A)
【文献】特開2008-230364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前方部位の配置される灯具と、
前記車両の前方に位置する対象物を検出する検出装置からの情報が入力され、前記灯具を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光の光量が、前記車両と前記対象物との間の距離が所定の距離未満かつ当該所定の距離より短い特定の距離以上の場合には、前記距離が短くなるほど少なくなり、前記距離が前記特定の距離未満の場合には、前記距離が短くなるほど前記距離が前記特定の距離での光量から多くなるように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記制御部は、前記距離が前記所定の距離未満かつ前記特定の距離以上の場合には、前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光の光量が、前記距離が前記所定の距離以上である場合において前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光を示す基準光の光量を示す基準光量よりも少なくなるように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記制御部は、前記距離が前記特定の距離より短い別の特定の距離未満の場合には、前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光の光量が、前記基準光量より多い特定量になるように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記制御部は、前記距離が前記特定の距離より短い別の特定の距離未満の場合には、前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光の光量が、前記基準光量より少ない特定量になるように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記制御部は、前記距離が前記所定の距離未満かつ前記特定の距離以上の場合には、前記距離が短くなるほど前記光量が徐々に減少するように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項6】
前記制御部は、前記距離が前記所定の距離未満かつ前記特定の距離以上の場合には、前記距離が短くなるほど前記光量が段階的に減少するように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項7】
前記制御部は、前記距離が前記特定の距離未満の場合には、前記距離が短くなるほど前記光量が徐々に増加するように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項8】
前記制御部は、前記距離が前記特定の距離未満の場合には、前記距離が短くなるほど前記光量が段階的に増加するように、前記灯具を制御する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項9】
前記特定の距離は、前記車両の走行状況によって変化する
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項10】
前記情報は、前記検出装置によって撮影される前記車両の前方の撮影画像における前記対象物の割合及び前記撮影画像から検出される前記対象物の大きさの時間的な変化量を示す
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項11】
前記情報は、ミリ波を前記対象物に送信して前記対象物に当たって反射される前記ミリ波を受信する前記検出装置のミリ波レーダの受信結果、または、前記検出装置のステレオカメラによって撮影される撮影画像を示す
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、前方車等の自ら発光する発光物体と、道路標識等の自ら発光せず光を所定の広がり角度で再帰反射する再帰反射物体とを検出する車両用前照灯システムが知られている。このような車両用前照灯システムは、特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される車両用前照灯システムは、光の照射と非照射とを交互に繰り返す前照灯と、照射時と非照射時とにそれぞれ自車前方を撮影し、照射時画像と非照射時画像とを生成する撮影部とを備える。また、車両用前照灯システムは、当該非照射時画像中に位置する高輝度部を発光物体として判定し、照射時画像中に位置するが非照射時画像には位置しない高輝度部を再帰反射物体として判定する検出部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-110999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される車両用前照灯システムにおいて、検出部によって検出される発光物体や再帰反射物体といった対象物の情報は、自車の前照灯からの光の配光の制御に利用される。配光が制御された状態において、自車の前照灯からの光が自車の前方に位置する道路標識等の対象物を照射する場合、光の一部は、反射光として対象物から自車に向かうことがある。自車に向かう反射光は、車両と対象物との間の距離が短いほど、自車の運転者にグレアを与えてしまう懸念がある。これにより、運転者の視認性が低下してしまう懸念が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、運転者の視認性の低下を抑制し得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の車両用前照灯は、車両の前方部位の配置される灯具と、前記車両の前方に位置する対象物を検出する検出装置からの情報を基に、前記車両と前記対象物との間の距離を算出する算出部と、前記算出部によって算出された距離を基に、前記対象物が所定の要件を満たした状態か否かを判定する判定部と、前記灯具を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記判定部によって前記対象物が前記所定の要件を満たした状態と判定される場合において、前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光の光量が前記算出部によって算出された前記距離が短くなるほど少なくなるように、前記灯具を制御することを特徴とする。
【0007】
自車の車両用前照灯からの光が自車の前方に位置する道路標識等の対象物の少なくとも一部を照射する場合、光の一部は、反射光として対象物から自車に向かうことがある。自車に向かう反射光は、車両と対象物との間の距離が短いほど、自車の運転者にグレアを与えてしまう懸念がある。ここで、所定の要件が例えば車両と対象物との間の距離が所定の距離未満であることを示すとすると、本発明の車両用前照灯では、車両と対象物との間の距離が所定の距離未満である状態における光量は、車両と対象物との間の距離が短くなるほど、少なくなる。このように、光量が車両と対象物との間の距離が短くなるほど少なくなると、光量が車両と対象物との間の距離が短くなるほど少なくならない場合よりも、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0008】
また、前記制御部は、前記判定部によって前記対象物が前記所定の要件を満たした状態と判定される場合において、前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光の光量が前記判定部によって前記対象物が前記所定の要件を満たした状態ではないと判定される場合において前記灯具から前記対象物の少なくとも一部に向かって出射される光を示す基準光の光量を示す基準光量よりも少なくなるように、前記灯具を制御することが好ましい。
【0009】
ここで、所定の要件が例えば車両と対象物との間の距離が所定の距離未満であることを示すとし、判定部によって対象物が所定の要件を満たした状態と判定される場合と、判定部によって対象物が所定の要件を満たしていない状態と判定される場合との比較について説明する。対象物が所定の要件を満たした状態における光量が、対象物が所定の要件を満たしていない状態における基準光量よりも少なくなると、光量が基準光量よりも少なくならない場合よりも、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0010】
また、前記制御部は、前記光量が徐々に減少するように、前記灯具を制御することが好ましい。
【0011】
この車両用前照灯では、光量の急峻な変化が抑制される。従って、この車両用前照灯によれば、急峻な変化による自車の運転者の視認性の低下を抑制し得る。また、この車両用前照灯によれば、光量が徐々に少なくならない場合に比べて、自車の運転者は車両の前方の明るさに目が自然に慣れ易くなり得る。従って、この車両用前照灯によれば、自車の運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0012】
或いは、前記制御部は、前記光量が段階的に減少するように、前記灯具を制御することが好ましい。
【0013】
この車両用前照灯では、光量が段階的に少なくなるタイミングで、制御部は灯具を制御すればよい。従って、光量が段階的に少なくならない場合に比べて、制御部の負担が軽減され得る。
【0014】
また、前記情報は、前記検出装置によって撮影される前記車両の前方の撮影画像における前記対象物の割合及び前記撮影画像における前記対象物の大きさの変化量を示し、前記算出部は、前記割合及び前記変化量を基に前記距離を算出することが好ましい。
【0015】
この車両用前照灯では、車両と対象物との間の距離が短いほど、車両が対象物に近づくため、撮影画像における対象物の割合及び撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量は大きくなる。当該割合及び変化量が大きいほど、光量が少なくなり、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0016】
或いは、前記情報は、ミリ波を前記対象物に送信して前記対象物に当たって反射される前記ミリ波を受信する前記検出装置のミリ波レーダの受信結果を示し、前記算出部は、前記受信結果を基に、前記距離を算出することが好ましい。
【0017】
この車両用前照灯では、ミリ波レーダを用いても車両と対象物との間の距離が算出され、車両と対象物との間の距離が短いほど光量が少なくなり、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これによりミリ波レーダを用いても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、ミリ波レーダを用いても、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0018】
或いは、前記情報は、前記検出装置のステレオカメラによって撮影される撮影画像を示し、前記算出部は、前記撮影画像を基に前記距離を算出することが好ましい。
【0019】
この車両用前照灯では、ステレオカメラを用いても車両と対象物との間の距離が算出され、車両と対象物との間の距離が短いほど光量が少なくなり、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これによりステレオカメラを用いても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、ステレオカメラを用いても、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0020】
また、前記算出部によって算出される前記距離をD0とし、前記距離D0が算出されてから計測部によって計測される経過時間をT1とし、前記経過時間T1において前記計測部によって計測される前記車両の速度をV1とし、前記経過時間T1における前記車両と前記対象物との間の距離をD1とすると、前記算出部は、以下の式から、前記距離D1を算出することが好ましい。
D1=D0-V1×T1
【0021】
ここでは、検出装置からの情報は、例えば、検出装置のカメラによって撮影される車両の前方の撮影画像における対象物の割合及び撮影画像における対象物の大きさの変化量、ミリ波を対象物に送信して対象物に当たって反射されるミリ波を受信する検出装置のミリ波レーダの受信結果、または検出装置のステレオカメラによって撮影される撮影画像を示すとする。この車両用前照灯では、算出部は車両と対象物との間の距離D0を算出してから経過時間T1経過後に距離を再度算出する場合、算出部は、算出された当該距離D0と、車両の速度V1及び距離を算出してから経過した経過時間T1とを基に、距離を算出する。従って、算出部が経過時間T1経過後に距離を再度算出する場合、算出部は、経過時間T1経過後において検出装置からの情報を用いる必要はなく、検出装置からの情報を一度用いるのみでよい。従って、この車両用前照灯によれば、算出部が距離を算出する度に検出装置からの情報を用いる場合に比べて、算出部の負担が軽減され得る。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、車両を概念的に示す平面図である。
図2図2は、図1に示す1つの灯具を概略的に示す鉛直方向の断面図である。
図3図3は、車両用前照灯の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、対象物までの距離に応じた光量の変化を示す図である。
図5図5は、対象物が所定の要件を満たしていない場合におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
図6図6は、対象物である再帰反射物体が所定の要件を満たした場合において、光量が基準光量から少なくなった場合におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
図7図7は、対象物である再帰反射物体が所定の要件を満たした場合において、車両が図6に示す状態から対象物に向かってさらに近づいて光量が図6に示す配光パターンにおける光量からさらに少なくなった場合におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
図8図8は、対象物である人間が所定の要件を満たした場合において、光量が基準光量から少なくなった場合におけるハイビームの配光パターンを示す図である。
図9図9は、対象物までの距離に応じた光量の変化の変形例を示す図である。
図10図10は、算出部による距離の算出の変形例における車両を概念的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る車両用前照灯の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する各実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、理解の容易のため、それぞれの図において一部が誇張して記載される場合等がある。
【0025】
図1は、車両10を概念的に示す平面図である。図1に示すように、車両10は、車両用前照灯20と、検出装置100とを備える。
【0026】
本実施形態の車両用前照灯20は、自動車用の前照灯とされる。車両用前照灯20は、車両10の前方部位の左右に配置される一対の灯具30と、算出部37と、判定部40と、制御部50と、記録部60とを主に備える。なお、本明細書において「右」とは車両10の進行方向において右側を意味し、「左」とは車両10の進行方向において左側を意味する。
【0027】
一対の灯具30は、車両10の左右方向において互いに概ね対称な形状とされる。本実施形態の一対の灯具30は、ロービームまたはハイビームを車両10の前方に出射する。一対の灯具30のうちの一方の灯具30aの構成は、形状が概ね対称であることを除いて、一対の灯具30のうちの他方の灯具30bの構成と同じとされる。
【0028】
図2は、図1に示す一方の灯具30aを概略的に示す鉛直方向の断面図である。図2に示すように、一方の灯具30aは、光源31と、リフレクタ32と、反射装置33と、投影レンズ34と、光吸収板35とを主な構成として備える。
【0029】
本実施形態では、光源31は、光源31の前方に向かって光を出射する。光源31は、光を出射する発光素子である。このような光源31として、例えば白色の光を出射するLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
【0030】
本実施形態では、リフレクタ32は、曲面状の板状部材とされる。リフレクタ32は、曲面状のリフレクタ32の内面に位置する反射面32rを有する。反射面32rは、光源31側と反対側に凹状となるように湾曲している。このような反射面32rは、例えば、回転楕円曲面形状である。また、反射面32rが前方側から光源31に被さるように、リフレクタ32は配置される。反射面32rは、光源31から出射する光を反射装置33の後述する反射制御面33rに反射する。
【0031】
本実施形態では、反射装置33は、光源31より上方かつリフレクタ32より後方に配置される。本実施形態の反射装置33は、所謂DMD(Digital Mirror Device)とされ、光を反射する反射制御面33rを有する。反射制御面33rは前方側を向くように配置される。この反射制御面33rには、光源31から出射してリフレクタ32の反射面32rによって反射した光が照射される。反射制御面33rは、二次元配列される複数の反射素子の反射面によって構成されている。これら反射素子は、図示しない基板に個別に傾倒可能に支持される。この複数の反射素子は、リフレクタ32からの光が投影レンズ34に向かうように反射される第1傾倒状態と、リフレクタ32からの光が光吸収板35に向かうように反射される第2傾倒状態とにそれぞれ個別に切り替え可能とされている。このような反射装置33は、反射素子の傾倒状態を制御することによって、反射制御面33rから投影レンズ34に向かう光によって所望の配光パターンを形成したり、配光パターンを変化させたりできる。また、これらの反射素子の傾倒状態を経時的に制御することによって、所望の配光パターンの光の強度分布を所望の強度分布にできる。
【0032】
投影レンズ34は、入射する光の発散角を調節するレンズである。投影レンズ34は、反射装置33よりも前方に配置され、反射制御面33rから投影レンズ34に向かう光が入射し、この光の発散角が投影レンズ34において調整される。投影レンズ34は、入射面及び出射面が凸状に形成されたレンズとされる。投影レンズ34の後方焦点は、反射装置33の反射制御面33r上またはその近傍に位置している。このような投影レンズ34で発散角が調整された所定の光が一方の灯具30aから出射し、この所定の光は車両10の前方に照射される。
【0033】
本実施形態では、光吸収板35は、反射装置33よりも前方かつ上方に配置される。光吸収板35は、光吸収性を有する板状部材であり、光吸収板35に入射する光の多くを熱に変換する。反射制御面33rから光吸収板35に向かう光が光吸収板35に入射すると、この光の多くは光吸収板35によって熱に変換される。熱は、光吸収板35から光吸収板35の外部に放出される。光吸収板35として、例えばアルミニウム等の金属から構成されて表面に黒アルマイト加工等が施される板状部材が挙げられる。
【0034】
なお、一方の灯具30aの構成は特に上記に限定されるものではない。一方の灯具30aの構成は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)やガルバノミラー等を用いて光源31から出射する光を走査させて光を前方に出射する構成であってもよい。または、一方の灯具30aの構成は、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)や回折格子等を用いて光源31から出射する光を回折して所望の配光パターンを形成して前方に出射する構成であってもよい。
【0035】
ここで、図1に戻り、車両10の説明を続ける。
【0036】
本実施形態では、検出装置100は、車両10の前方に位置する対象物を検出する。検出装置100が検出する対象物として、再帰反射物体及び再帰反射物体以外の物体が挙げられる。再帰反射物体は、自ら発光せず、再帰反射物体を照射する光を所定の広がり角度で再帰反射する物体である。このような再帰反射物体としては、例えば、道路の傍らに設置される道路標識等が挙げられる。また、再帰反射物体以外の物体としては、例えば、先行車や対向車等の車両、歩行者等の人間が挙げられる。検出装置100の構成として、検出装置100は、例えば、図示しないカメラ、画像処理部、及び検出部等を主に備える。カメラは、車両10の前部に取り付けられ、車両10の前方を撮影する。カメラによって撮影される撮影画像には、一対の灯具30から出射する光が照射される領域の少なくとも一部が含まれる。画像処理部は、カメラによって撮影された撮影画像に画像処理を施す。検出部は、画像処理部によって画像処理された撮影画像から撮影画像における対象物の割合、及び、撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量を検出する。時間が経過して対象物から離れている車両が対象物に近づいた場合には対象物の大きさの変化量は小さく、時間が経過して車両が前進して対象物に近い車両が対象物にさらに近づいた場合には対象物の大きさの変化量はより大きくなる。対象物の大きさとは、例えば、対象物の面積や、対象物の幅などを示す。検出装置100は、車両10の前方に位置する対象物を検出した場合に、撮影画像における対象物の割合、及び、撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量といった情報を算出部37に出力する。また、検出装置100は、撮影画像を記録部60に出力する。なお、検出装置100が検出する対象物、対象物の種類の数、及び検出装置100の構成は特に限定されるものではない。画像処理部の構成及び検出部の構成として、例えば、制御部50と同様の構成が挙げられる。制御部50の構成については、後述する。
【0037】
算出部37は、車両10の前方に位置する対象物を検出する検出装置100からの情報を基に、車両10と対象物との間の距離を算出する。本実施形態では、算出部37は、検出装置100からの情報における上記割合及び上記変化量を基に、距離を算出する。算出された距離は、情報として判定部40に入力される。算出部37の構成は、例えば、制御部50と同様の構成が挙げられる。
【0038】
判定部40は、算出部37によって算出された距離を基に、対象物が所定の要件を満たした状態か否かを判定する。所定の要件としては、例えば、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満であることが挙げられる。所定の距離とは、例えば130mである。この距離の数値は、閾値として記録部60に記録されており、日中や夜間といった車両10の走行状況などに応じて適宜変更可能にされてもよい。判定部40は、記録部60から閾値である所定の距離を読み出し、算出された距離と所定の距離とを比較し、算出された距離が所定の距離よりも大きいか否かを判定する。算出された距離が所定の距離以上である場合、対象物が所定の要件を満たした状態ではないと判定部40は判定する。また、算出された距離が所定の距離未満である場合、対象物が所定の要件を満たした状態であると判定部40は判定する。判定部40の判定結果は、制御部50に入力される。なお、所定の要件は、特に限定されるものではなく、距離でなくても撮影画像における対象物の大きさなどであってもよい。判定部40の構成は、例えば、制御部50と同様の構成が挙げられる。
【0039】
制御部50は、例えば、マイクロコントローラ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large-scale Integrated Circuit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの集積回路やNC(Numerical Control)装置を用いることができる。また、制御部50は、NC装置を用いた場合、機械学習器を用いたものであってもよく、機械学習器を用いないものであってもよい。
【0040】
制御部50は、車両10に搭載される図示しないライトスイッチからの制御信号が入力されているか否かを判定する。制御信号は、一対の灯具30のそれぞれの光源31からの光の出射の開始を指示する信号である。制御信号が制御部50に入力されている場合には、制御部50は一対の灯具30を駆動させる。制御信号が制御部50に入力されていない場合、制御部50は、一対の灯具30の駆動を停止させる。
【0041】
記録部60は、検出装置100から出力される撮影画像と、判定部40における上記した閾値である所定の距離と、後述する光量の所定量とを記録する。記録部60としては、例えば、ROM等の半導体メモリ、磁気ディスク等が挙げられる。
【0042】
次に、本実施形態の車両用前照灯20の動作について説明する。
【0043】
図3は、本実施形態における車両用前照灯20の動作を示すフローチャートである。図3に示すように、本実施形態のフローチャートは、ステップS1~ステップS6を含んでいる。
【0044】
(ステップS1)
検出装置100は、カメラによって車両10の前方を撮影する。検出装置100は、車両10の前方に位置する対象物を撮影画像から検出した場合に、撮影画像における対象物の割合、及び撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量といった情報を算出部37に出力する。情報が算出部37に入力されると、処理はステップS2に移行する。
【0045】
(ステップS2)
本ステップでは、制御部50は、ライトスイッチからの制御信号を基に、光を出射させるか否かを判定する。制御信号が制御部50に入力されておらず、光が出射されない場合、制御部50は、一対の灯具30の駆動を停止させ、処理はステップS1に戻る。また、制御信号が制御部50に入力されて、光が出射される場合、処理はステップS3に移行する。
【0046】
(ステップS3)
本ステップでは、算出部37は、車両10の前方に位置する対象物を検出する検出装置100からの情報における上記割合及び上記変化量を基に、車両10と対象物との間の距離を算出する。算出された距離は、判定部40に入力される。処理はステップS4に移行する。
【0047】
(ステップS4)
本ステップでは、判定部40は、算出部37によって算出された距離を基に対象物が所定の要件を満たすか否かを判定する。ここでは、所定の要件としては、上記したように、車両10と車両10の前方に位置する対象物との間の距離が所定の距離未満であることが挙げられる。対象物が所定の要件を満たした状態ではないと判定部40が判定した場合には、処理はステップS5に移行する。また、対象物が所定の要件を満たした状態であると判定部40が判定した場合には処理はステップS6に移行する。
【0048】
(ステップS5)
本ステップでは、対象物が車両10の左斜め前方に位置し、車両10と対象物との間の距離が所定の距離以上であるものとして説明する。また、車両10と対象物との間の距離が所定の距離以上である場合において、一対の灯具30から対象物を含む車両10の前方に向かって出射される光を基準光とし、基準光の光量を基準光量として説明する。例えば、基準光量は、対象物を照射する基準光の一部が反射光として対象物から自車に向かったとしても、対象物からの反射光によって自車の運転者にグレアを与えない程度の光の光量である。
【0049】
ところで、図4は、対象物までの距離に応じた光量の変化を示す。図4の縦軸は光量の多さを示し、縦軸の上側では光量が多く、縦軸の下側では光量が少ないことを示す。また、図4の横軸は、車両10から車両10の前方に位置する対象物までの距離を示し、横軸の左側では距離が長く対象物が車両10から遠く、横軸の右側では距離が短く対象物が車両10に近いことを示す。
【0050】
本ステップでは、図4に示すように、車両10と対象物との間の距離が所定の距離以上である場合、基準光量が一定となるように、制御部50は一対の灯具30を駆動させる。これにより、一対の灯具30は、車両10の前方に向かって基準光を出射する。なお、本ステップでは、基準光量の制御は、特に限定されるものではなく、基準光量は変化してもよい。
【0051】
図5は、車両10と対象物との間の距離が所定の距離以上である場合におけるハイビームの配光パターン200を示す図である。ここでは、例えば、対象物が道路の傍らに設置される道路標識といった再帰反射物体401である場合、当該再帰反射物体401は例えば道路の傍らから立設される金属の支柱である支持部403によって支持される。図5においてSは水平線を示し、配光パターン200が太線で示され、この配光パターン200は、車両10から例えば25m離れた鉛直面上に形成される配光パターンとされている。基準光が出射されて、配光パターン200が形成されると、処理はステップS1に戻る。
【0052】
(ステップS6)
本ステップでは、対象物が車両10の左斜め前方に位置し、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満であるものとして説明する。
【0053】
本ステップでは、一対の灯具30から対象物を含む車両10の前方に向かって出射される光の光量が算出部37によって算出された距離が短くなるほど少なくなるように、制御部50は一対の灯具30を駆動させる。また、本ステップでは、当該光量が基準光量よりも少なくなるように、制御部50は一対の灯具30を駆動させる。これにより、一対の灯具30は、距離が短くなるほど少ない且つ基準光量よりも少ない光量で光を車両10の前方に向かって出射する。図4に示すように、光量は、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満となってから、少なくなる。
【0054】
また、本ステップでは、制御部50は、光量が所定期間の間に基準光量から基準光量よりも少ない所定量に徐々に減少するように、一対の灯具30を制御する。本実施形態では、光量は、基準光量から所定量に一定の変化率で減少しており、直線的に減少する。所定期間とは、例えば、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満となってから車両10が所定距離前進し車両10が対象物に近づいた距離である。このような距離は、例えば、車両10と対象物との間の距離が1mといった距離となるように車両10が前進する距離である。この距離の数値は、閾値として記録部60に記録されており、日中や夜間といった車両10の走行状況などに応じて適宜変更可能にされてもよい。所定期間の終了地点において、車両10は対象物よりも手前に位置する。なお、所定期間の終了地点において、車両10は対象物とすれ違う位置に位置してもよく、従って、車両10と対象物との間の距離はゼロとなってもよい。なお、所定期間は、特に限定される必要はなく、例えば、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満となってからの所定時間経過するまでの時間であってもよい。
【0055】
図6及び図7のそれぞれは、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満である場合におけるハイビームの配光パターンを示す図である。また、図6は光量が基準光量から少なくなった場合における配光パターン310を示す図であり、図7は車両が図6に示す状態から対象物に向かってさらに近づいて光量が図6に示す配光パターン310における光量からさらに少なくなった場合における配光パターン320を示す図である。配光パターン310及び配光パターン320のそれぞれのうちの対象物である再帰反射物体401及び支持部403が重なる領域を領域AR1としており、配光パターン310及び配光パターン320のそれぞれのうちの領域AR1を除く領域を領域AR11としている。
【0056】
図6に示す配光パターン310において、光は領域AR1及び領域AR11に出射されるため、領域AR1における光量は、領域AR11における光量と同じとされる。また、配光パターン310の領域AR1及び領域AR11における光量は、上記したように配光パターン200における基準光量よりも少ない。従って、一対の灯具30からの光の一部が対象物を照射して、光の一部が反射光として対象物から自車に向かったとしても、配光パターン310においての反射光の強度は、配光パターン200においての反射光の強度よりも抑制される。
【0057】
図7に示す配光パターン320において、光は領域AR1及び領域AR11に出射されるため、領域AR1における光量は、領域AR11における光量と同じとされる。また、配光パターン320の領域AR1及び領域AR11における光量は配光パターン310の領域AR1及び領域AR11における光量よりも少なくなるため、配光パターン320の領域AR1及び領域AR11は配光パターン310の領域AR1及び領域AR11よりも暗くなる。また、配光パターン320においての反射光の強度は、配光パターン310においての反射光の強度よりも抑制される。本実施形態では、光量は車両10と対象物との間の距離が短くなるほど少なくなるため、光の一部が対象物を照射して、光の一部が反射光として対象物から自車に向かったとしても、反射光の強度は抑制され得る。従って、車両10と対象物との間の距離が短くなっても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。
【0058】
図4において、所定量の光は、消灯するのではなく、必要最低限度の光量で出射する。必要最低限度の光量とは、例えば、車両10の前方において自車の運転者の視認性が確保される程度の明るさである。光量が所定量に変化すると、光量が基準光量に戻るように、制御部50は一対の灯具30を駆動させる。ここでは、光量は、一定期間の間に所定量から基準光量にまで徐々に増加する。また、ここでは、例えば、光量は、一定の変化率で増加しており、直線的に増加する。なお、光量の増加については、特に限定されない。例えば、光量は、一定期間の間に所定量から基準光量まで段階的に増加してもよい。或いは、車両10が対象物に近づくほど、光量の変化率が徐々に大きくなり、光量は所定量から基準光量へ図4において下に凸の円弧のように曲線的に増加してもよい。或いは、車両10が対象物に近づくほど、光量の変化率が徐々に小さくなり、光量は所定量から基準光量へ図4において上に凸の円弧のように曲線的に増加してもよい。或いは、光量は、所定量から瞬時に基準光量に戻ってもよい。一定期間は、光量の減少時の所定期間よりも短くされるが、減少時の所定期間と同じでもよい。光量が基準光量に戻る状態において、車両10は対象物よりも手前に位置する。なお、光量が基準光量に戻る状態において、車両10は対象物とすれ違う位置に位置してもよく、従って、車両10と対象物との間の距離はゼロとなってもよい。
【0059】
ところで、ステップS4とステップS5とにおいて、対象物が歩行者等の人間であっても、対象物が再帰反射物体401である場合と同様に、制御部50は一対の灯具30を駆動させ、配光パターン200,310,320が形成される。図8は、対象物である人間405が所定の要件を満たした場合において、光量が基準光量から少なくなった場合におけるハイビームの配光パターン310を示す図である。配光パターン310のうちの対象物である人間405が重なる領域を領域AR1としており、配光パターン310のうちの領域AR1を除く領域を領域AR11としている。対象物が人間405である場合であっても、対象物が図6に示す再帰反射物体401である場合と同様に、配光パターン310において、領域AR1における光量は領域AR11における光量と同じとされ、配光パターン310の領域AR1及び領域AR11における光量は上記したように配光パターン200における基準光量よりも少ない。また、車両10が図8に示す状態から人間405に向かってさらに近づくと、対象物が図7に示す再帰反射物体401である場合と同様に、配光パターン320における光量は図8に示す配光パターン310における光量からさらに少なくなる。この場合、対象物が図7に示す再帰反射物体401である場合と同様に、配光パターン320において、領域AR1における光量は領域AR11における光量と同じとされ、配光パターン320の領域AR1及び領域AR11は配光パターン310の領域AR1及び領域AR11よりも暗くなる。
【0060】
上記したように光量が制御されると、処理はステップS1に戻る。
【0061】
以上のように、本実施形態の車両用前照灯20は、車両10の前方部位の配置される一対の灯具30と、車両10の前方に位置する対象物を検出する検出装置100からの情報を基に、車両10と対象物との間の距離を算出する算出部37と、算出部37によって算出された距離を基に、対象物が所定の要件を満たした状態か否かを判定する判定部40と、一対の灯具30を制御する制御部50とを備える。制御部50は、判定部40によって対象物が所定の要件を満たした状態と判定される場合において、一対の灯具30から対象物に向かって出射される光の光量が算出部37によって算出された距離が短くなるほど少なくなるように、一対の灯具30を制御する。
【0062】
自車の車両用前照灯20からの光が自車の前方に位置する道路標識等の対象物を照射する場合、光の一部は、反射光として対象物から自車に向かうことがある。自車に向かう反射光は、車両10と対象物との間の距離が短いほど、自車の運転者にグレアを与えてしまう懸念がある。ここで、所定の要件が例えば車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満であることを示すとすると、本実施形態の車両用前照灯20では、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満である状態における光量は、車両10と対象物との間の距離が短くなるほど、少なくなる。このように、光量が車両10と対象物との間の距離が短くなるほど少なくなると、光量が車両10と対象物との間の距離が短くなるほど少なくならない場合よりも、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0063】
また、本実施形態の車両用前照灯20では、制御部50は、判定部40によって対象物が所定の要件を満たした状態と判定される場合において、一対の灯具30から対象物に向かって出射される光の光量が判定部40によって対象物が所定の要件を満たした状態ではないと判定される場合において一対の灯具30から対象物に向かって出射される基準光の基準光量よりも少なくなるように、一対の灯具30を制御する。
【0064】
ここで、所定の要件が例えば車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満であることを示すとし、判定部40によって対象物が所定の要件を満たした状態と判定される場合と、判定部40によって対象物が所定の要件を満たしていない状態と判定される場合との比較について説明する。対象物が所定の要件を満たした状態における光量が、対象物が所定の要件を満たしていない状態における基準光量よりも少なくなると、光量が基準光量よりも少なくならない場合よりも、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0065】
また、本実施形態の車両用前照灯20では、光量が基準光量から所定量に徐々に減少するように、制御部50は一対の灯具30を制御する。
【0066】
この車両用前照灯20では、基準光量から所定量への光量の急峻な変化が抑制される。従って、この車両用前照灯20によれば、急峻な変化による自車の運転者の視認性の低下を抑制し得る。また、この車両用前照灯20によれば、光量が徐々に少なくならない場合に比べて、自車の運転者は車両10の前方の明るさに目が自然に慣れ易くなり得る。従って、この車両用前照灯20によれば、自車の運転者の視認性の低下を抑制し得る。なお、この車両用前照灯20では、減少する光量の変化率は一定であるが、所定期間の間において途中で変化率が変化するように、制御部50は一対の灯具30を制御してもよい。また、この車両用前照灯20では、光量は、直線的に減少することに限定されない。光量が、基準光量から所定量に曲線的に減少するように、制御部50は一対の灯具30を制御してもよい。例えば、車両10が対象物に近づくほど、光量の変化率が徐々に大きくなり、光量は基準光量から所定量へ図4において上に凸の円弧のように曲線的に減少してもよい。或いは、車両10が対象物に近づくほど、光量の変化率が徐々に小さくなり、光量は基準光量から所定量へ図4において下に凸の円弧のように曲線的に減少してもよい。
【0067】
また、本実施形態の車両用前照灯20では、情報は、検出装置100のカメラによって撮影される車両の前方の撮影画像における対象物の割合、及び撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量を示す。算出部37は、割合及び変化量を基に車両10と対象物との間の距離を算出する。
【0068】
この車両用前照灯20では、車両10と対象物との間の距離が短いほど、車両10が対象物に近づいており、撮影画像における対象物の割合及び撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量は大きくなる。当該割合及び変化量が大きいほど、光量が少なくなり、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これにより反射光が自車に進行したとしても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯20によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0069】
なお、本実施形態では、ステップS6において、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満である状態において、光量は、所定期間の間に基準光量から所定量に徐々に減少している。しかしながら、対象物までの距離が短くなるほど、光量が少なくなるのであれば、光量の変化は上記に限定される必要はない。対象物までの距離に応じた光量の変化の変形例について以下に説明する。
【0070】
図9は、対象物までの距離に応じた光量の減少の変形例を示す図である。本変形例では、光量が基準光量から所定量に段階的に減少するように、制御部50は一対の灯具30を制御する。
【0071】
本変形例の車両用前照灯20では、光量が段階的に少なくなるタイミングで、制御部50は灯具30を制御すればよい。従って、光量が段階的に少なくならない場合に比べて、制御部50の負担が軽減され得る。
【0072】
なお、制御部50は、上記実施形態及び変形例のいずれかによって光量の変化を制御する必要はなく、上記実施形態及び変形例の組み合わせによって光量の変化を制御してもよい。
【0073】
本実施形態では、算出部37は、検出装置100からの情報に含まれる撮影画像における対象物の割合及び撮影画像における対象物の大きさの変化量を基に車両10と対象物との間の距離を算出する。しかしながら、距離の算出は上記に限定される必要はない。距離の算出の変形例について以下に説明する。
【0074】
第1変形例では、検出装置100は、ミリ波レーダを備えている。ミリ波レーダは、ミリ波を対象物に送信して対象物に当たって反射される反射波を受信する。従って、本変形例では、検出装置100からの情報は、ミリ波を対象物に送信して対象物に当たって反射されるミリ波を受信するミリ波レーダの受信結果を示す。算出部37は、ミリ波レーダから入力される受信結果を基に、車両10と対象物との間の距離を算出する。
【0075】
本変形例の車両用前照灯20では、ミリ波レーダを用いても車両10と対象物との間の距離が算出され、車両10と対象物との間の距離が短いほど光量が少なくなり、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これによりミリ波レーダを用いても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、ミリ波レーダを用いても、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0076】
第2変形例では、検出装置100は、車両10の前方を撮影するステレオカメラを備えている。ステレオカメラは、2つのカメラを備えており、それぞれのカメラによって撮影される撮影画像を算出部37に出力する。算出部37は、2つ撮影画像において互いに対応する画素である対応画素における視差を求めるステレオマッチングを基に距離を算出する。従って、本変形例では、検出装置100からの情報はステレオカメラによって撮影される撮影画像を示し、算出部37はステレオカメラからの撮影画像を基に車両10と対象物との間の距離を算出すると理解できる。
【0077】
本変形例の車両用前照灯20では、ステレオカメラを用いても車両10と対象物との間の距離が算出され、車両10と対象物との間の距離が短いほど光量が少なくなり、自車に向かう反射光の強度が抑制され得る。これによりステレオカメラを用いても、自車の運転者へのグレアの付与が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、ステレオカメラを用いても、運転者の視認性の低下を抑制し得る。
【0078】
次に、第3変形例について説明する。図10は、第3変形例における車両を概念的に示す平面図である。まず、算出部37は、検出装置100からの情報に含まれる撮影画像における対象物の割合及び撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量を基に車両10と対象物との間の距離D0を算出する。記録部60は、初期値としての距離D0を記録する。また、本変形例では、車両用前照灯20は、距離D0が算出されてからの経過時間T1と、経過時間T1における車両10の速度V1とを計測するの計測部45をさらに備える。経過時間T1は、例えば、距離D0が算出されてからの一定時間経過したときの時間である。算出部37は、記録部60から距離D0を読み出し、計測部45から速度V1及び経過時間T1を入力される。算出部37は、距離D0と速度V1と経過時間T1とを基に、経過時間T1における車両10と対象物との間の距離D1を以下の式(1)から算出する。
D1=D0-V1×T1 ・・・(1)
【0079】
本変形例の車両用前照灯20では、算出部37は車両10と対象物との間の距離D0を算出してからの経過時間T1後に距離D1を再度算出する場合、算出部37は、算出された距離D0と、車両10の速度V1及び経過時間T1とを基に、距離D1を算出する。従って、算出部37が所定時間経過後に距離D1を再度算出する場合、算出部37は、経過時間T1経過後において検出装置100からの情報を用いる必要はなく、検出装置100からの情報を一度用いるのみでよい。従って、この車両用前照灯20によれば、算出部37が距離を算出する度に検出装置100からの情報を用いる場合に比べて、算出部37の負担が軽減され得る。
【0080】
なお、距離D1が算出されると、算出部37は算出した距離D1を距離D0として設定し、記録部60は設定された距離D0を再度記録する。また、計測部45は、経過時間T1をリセットしたうえで距離D0が設定されてからの経過時間T1を再度計測し、速度V1を再度計測する。算出部37は、上記式(1)を用いて距離D1を再度算出する。このように、本変形例では、算出部37、記録部60、及び計測部45における上記処理が繰り返されればよい。
【0081】
本変形例の車両用前照灯20では、算出部37は、距離D0を算出するために、撮影画像における対象物の割合、及び撮影画像における対象物の大きさの時間的な変化量を用いているが、第1変形例のミリ波レーダまたは第2変形例のステレオカメラのいずれかを用いて距離D0を算出してもよい。また、上記した実施形態及び第1,2,3変形例における距離の算出は、所定期間における距離の算出に用いられてもよい。
【0082】
以上、本発明について、上記実施形態及び各変形例を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
一方の灯具30aの構成は、他方の灯具30bの構成と同じとされているが、他方の灯具30bの構成と異なってもよい。一方の灯具30a及び他方の灯具30bの構成は特に限定されるものではない。また、例えば、一方の灯具30a及び他方の灯具30bは、パラボラ型の灯具30、プロジェクター型の灯具30、または直射レンズ型の灯具30等とされてもよい。
【0084】
撮影画像は、動画像及び静止画像の少なくとも一方であればよい。
【0085】
車両10と対象物との間の距離が所定の距離以上である状態における基準光量及び車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満である状態における光量の制御について、ハイビームの配光パターンを用いて説明したが、ロービームの配光パターンにおいても、基準光量及び光量はハイビームの配光パターンと同様に制御される。
【0086】
検出装置100の構成の少なくとも一部は、車両用前照灯20の構成に含まれてもよい。この場合には、検出装置100のカメラやステレオカメラやミリ波レーダは、灯具30の筐体の内部に配置されてもよい。また、制御部50は、画像処理部、及び検出部として機能してもよいし、制御部50、画像処理部、及び検出部は、同じ制御基板に搭載されてもよい。画像処理部は、制御部50に比べて、画像処理に特化したマイクロコントローラ等であってもよい。
【0087】
検出装置100の検出部は、画像処理部によって画像処理された情報から対象物の存在、及び対象物の存在位置を検出してもよい。また、検出装置100の検出部は、ミリ波レーダの受信結果やステレオカメラの撮影画像を基に、対象物の存在、及び対象物の存在位置を検出してもよい。
【0088】
算出部37によって算出される距離は、例えば、メートルといったSI単位系で示される値である。なお、算出部37は、距離の実測値を算出する必要はなく、距離の実測値に比例する値を算出してもよく、距離の実測値や当該値といった距離に関する情報を算出すればよい。
【0089】
制御部50は、車両10と対象物との間の距離が所定の距離以上である状態における基準光量と、車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満である状態における光量との制御のために一対の灯具30を制御しているが、一対の灯具30のうちの1つの灯具を制御してもよい。
【0090】
車両10と対象物との間の距離が所定の距離以上である状態及び車両10と対象物との間の距離が所定の距離未満である状態において、車両10の前方に向かって出射される光は、車両10の前方において対象物の少なくとも一部に向かう光とされてもよい。このような場合、検出装置100は、車両10の前方に位置する対象物を検出すると、対象物の存在、対象物の存在位置といった情報を制御部50に出力する。制御部50は、この情報を基に、配光パターン310,320において対象物が重なる領域ARを検出する。また、制御部50は、領域ARの少なくとも一部へ向かう光を出射する一対の灯具30の少なくとも1つの光源31を制御する。ここでは、制御部50は、当該光源31から出射される光の光量が上記したように基準光量よりも少なくなるように、当該光源31を制御すればよい。なお、車両10の前方に向かって出射される光は、車両10の前方において少なくとも対象物に向かう光とされてもよい。このような場合であっても、制御部50は、対象物に向けて光源31から出射される光の光量が基準光量よりも少なくなるように、光源31を制御すればよい。
【0091】
所定量に変化した光量は、基準光量に戻る必要はなく、所定量よりも多くなればよい。従って、所定量に変化した光量は、所定量と基準光量との間の光量に変化してもよいし、基準光量よりも多くなってもよい。
【0092】
一対の灯具30から対象物を除く車両10の前方に向かう光の光量は、基準光量のままであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上説明したように、本発明によれば、運転者の視認性の低下を抑制し得る車両用前照灯が提供され、当該車両用前照灯は自動車等の車両用前照灯の分野等において利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
10・・・車両
20・・・車両用前照灯
30・・・灯具
37・・・算出部
40・・・判定部
50・・・制御部
60・・・記録部
100・・・検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10