(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】焼成炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/30 20060101AFI20241004BHJP
F27B 9/22 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F27B9/30
F27B9/22
(21)【出願番号】P 2024042831
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219200
【氏名又は名称】株式会社ノリタケTCF
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】福島 宏康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悦史
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-148905(JP,A)
【文献】特開2017-67438(JP,A)
【文献】特開2010-151369(JP,A)
【文献】特開2000-297985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00-9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線に沿ったトンネル状のマッフルと、
前記マッフルが載せられる架台と、
前記マッフルの第1端部に設けられ、前記マッフルの長さ方向に沿って、被処理物を押し込むメインプッシャーと、
前記マッフルの前記第1端部において、前記マッフルの長さ方向に交差するように繋がった搬入路と、
前記搬入路を通じて前記マッフル内に前記被処理物を押し込む搬入プッシャーと、
前記マッフルの第2端部において、前記マッフルの長さ方向に交差するように繋がった搬出路と、
前記マッフルの前記第2端部に設けられ、前記搬出路に向けて被処理物を押し出す搬出プッシャーと、
を備え、
前記マッフルの前記第2端部と、前記搬出路と、前記搬出プッシャーは、前記架台に対して固定的に配置されており、
前記マッフルの前記第1端部と、前記搬入路と、前記搬入プッシャーは、前記架台に対して前記マッフルの長さ方向に可動に配置されている、
焼成炉。
【請求項2】
前記マッフルは、搬送レールを備えている、請求項1に記載の焼成炉。
【請求項3】
前記搬入路には、第1置換室が設けられており、
前記搬出路には、第2置換室が設けられており、
前記第1置換室は、架台に対して前記マッフルの長さ方向に可動に配置され、
前記第2置換室は、架台に対して固定的に配置されている、請求項1に記載の焼成炉。
【請求項4】
前記第1置換室を載置する架台には、フリーローラが設けられている、請求項3に記載の焼成炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開2013/065556号には、窒化ホウ素粉末の連続的製造方法が開示されている。かかる製造方法に用いられる高温連続反応炉として、グラファイト製ヒータとグラファイト製マッフル型トンネルとを有するプッシャー式トンネル炉が開示されている。該プッシャー式トンネル炉は、中心部分が1550℃~2400℃に保たれ、内部は高純度窒素で充満されている。
【0003】
特開2023-148905号公報には、処理物が搬送される搬送空間を隔離するトンネル状のマッフル炉が開示されている。かかるマッフル炉は、プッシャー炉であるため、処理物が押されながら進む。マッフル炉は、搬入部と、搬送部と、搬送用プッシャーと、搬出用プッシャーとを有している。搬送用プッシャーは、マッフル炉内の搬送部の処理物を前方に向けて押し出す。搬出用プッシャーは、マッフル炉内の搬送部の処理物を搬出部に向けて押し出す。また、マッフル炉は、搬送空間を搬送方向に沿って仕切る仕切りを有している。このマッフル炉では、マッフル内の温度を410℃から800℃まで段階的に上昇させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2013/065556号
【文献】特開2023-148905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
焼成炉では、高温加熱によってマッフルが熱膨張する。熱膨張による影響は、マッフルの長さ方向(すなわち、搬送方向)に特に顕著に表れる。本開示は、マッフルの熱膨張による影響(歪み)を小さく抑えうる焼成炉の新規構造を提案するものである。
【0006】
ここで開示される焼成炉の一態様は、直線に沿ったトンネル状のマッフルと、前記マッフルが載せられる架台とを有している。前記マッフルの第1端部には、前記マッフルの長さ方向に沿って、被処理物を押し込むメインプッシャーと、前記マッフルの前記第1端部において、前記マッフルの長さ方向に交差するようにつながった搬入路と、前記搬入路を通じて前記マッフル内に前記被処理物を押し込む搬入プッシャーとが設けられている。前記マッフルの第2端部には、前記マッフルの長さ方向に交差するように繋がった搬出路と、記マッフルの前記第2端部に設けられ、前記搬出路に向けて被処理物を押し出す搬出プッシャーとを備えている。前記マッフルの前記第2端部と、前記搬出路と、前記搬出プッシャーは、前記架台に対して固定的に配置されており、前記マッフルの前記第1端部と、前記搬入路と、前記搬入プッシャーは、前記架台に対して前記マッフルの長さ方向に可動に配置されている。
【0007】
かかる焼成炉によれば、マッフルの長さ方向における搬出口側が固定されており、搬入口側が可動となっている。かかる結果は、マッフルの熱膨張による影響(歪み)を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図5】
図5は、焼成炉1を載置する架台50の構成を模式的に示した図である。
【
図7】
図7は、第1置換室60aの模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<用語の定義>
以下、本開示における実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中の、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0010】
図1は、焼成炉1の模式的な平面図である。
図2は、マッフル10の縦断側面図である。
図1では、ここで開示される一態様の焼成炉1の大まかな構成が分かるように、マッフル10の内部を露出させた状態で、焼成炉1を上から見た模式的な平面図が図示されている。
図2では、マッフル10内の被処理物Aの搬送状態が分かるように、マッフル10の搬送方向Yに沿って縦断したII-II断面図(
図1参照)が模式的に図示されている。
図1及び
図2では、シール部材以外のハッチングは適宜省略されている。
【0011】
<焼成炉1>
焼成炉1は、
図1に示されているように、マッフル10と、メインプッシャー20と、搬入路30と、搬出路40と、搬出プッシャー45とを有している。ここでは、焼成炉1の搬送方向Y(長さ方向)に沿って前後が規定されている。すなわち、焼成炉1に対して、被処理物が搬送される方向に沿って、上流側を後(Rr)、下流側を前(F)とし、前後が規定されている。また、かかる被処理物が搬送される方向に沿って前方に向かって左右(L、R)が規定されている。
【0012】
この実施形態では、焼成炉1は、搬入プッシャーも有している。搬入プッシャーは、被処理物を搬入方向Xに沿って押し出す。
図1では、搬入方向Xの上流側が右(R)、下流側が左(L)と規定される。搬入プッシャーは、搬入路30の延長線上に取り付けられている。
【0013】
焼成炉1は、加熱容器Bに載せられた被処理物(以下、被処理物Aとも称する)を搬送方向Yに沿って搬送しつつ、連続的に加熱処理する。この実施形態では、焼成炉1は、被処理物Aを搬送方向Y(RrからF)に搬送しつつ加熱する。被処理物Aは、搬送レール17上をメインプッシャー20で順次押されることによって搬送される。焼成炉1は、マッフル炉であり、プッシャー炉である。
【0014】
被処理物Aは、マッフル10を介してヒータ(図示せず)により間接的に加熱処理させる。被処理物Aは、例えば、放熱材料である窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等の窒化物系セラミックス粉体や、リチウムイオン電池の負極材料である炭素系やケイ素系の粉体が加熱処理に用いられうる。しかし、被処理物Aは、これらに限定されるものではない。この実施形態では、被処理物Aは、加熱容器Bに収容された状態で焼成炉1内を搬送される。加熱容器Bは、例えば、耐熱性に優れる材料から構成されている。加熱容器Bの材質及び形状は、加熱温度や被処理物の種類等に応じて適宜選択されうる。加熱容器Bの材料は、例えば、カーボンやセラミックである。この実施形態では、加熱容器Bの形状は、底が平で周りが側壁で囲まれた略矩形である。なお、加熱容器Bは「サヤ」とも称される。加熱容器Bには蓋B1が取り付けられていてもよい。蓋B1は、加熱容器Bと同じ材料であってもよい。
【0015】
<マッフル10>
マッフル10は、被処理物Aが搬送方向に沿って搬送される搬送空間10aを囲むように直線に沿ったトンネル状(又は筒状)に形成されている。マッフル10の材料は、金属、セラミック、又はカーボンを用いることができる。この実施形態では、金属製のマッフル10を使用している。金属製のマッフル10は、セラミックやカーボンに比べて加工がしやすい。また、マッフル10の材料に金属を用いることで、マッフル内の雰囲気ガスの漏洩を低減することができる。また、マッフル10は、ヒータ(図示せず)と断熱材(図示せず)を介して炉体(外壁、図示せず)により搬送方向Yの周囲を覆われている。ヒータは加熱装置である。ヒータの種類、材料及び形状等は、特に限定されず、目的とする加熱温度や加熱雰囲気等の加熱条件に応じて適宜選択されうる。ヒータの種類は、例えば、遠赤外線や電気である。ヒータの材料は、例えば、セラミック、カーボン、又は金属等である。ヒータの形状は、円筒形状であってもよく、板状のパネルヒータであってもよい。また、マッフル10内には温度センサが取り付けられていてもよい。その場合、温度センサによって検出される温度に基づいて温度条件を調整することが可能となる。
【0016】
マッフル10は、
図1及び
図2に示すように、底壁10dと、底壁10dに対向する上壁10bと、搬送空間10aを挟んで一対の側壁10c1、10c2とを有している。また、
図2では、焼成炉1の高さ方向に沿って上下(U、D)が規定されている。この実施形態では、マッフル10の底壁10dには、搬送方向Yに沿って搬送レール17が設けられている。
【0017】
図1及び
図2に示すように、マッフル10の搬送方向Yの後方Rrの端部(第1端部10e)には、メインプッシャー20が備えられている。また、マッフル10の第1端部10e側の側壁10c2には、第1開口部11が設けられている。マッフル10の搬送方向Yの前方Fの端部(第2端部10f)側には、搬出プッシャー45が備えられている。この実施形態では、マッフル10の第1端部11と、第2端部13は搬送方向Yにおいて搬送空間10aを挟んで対向している。マッフル10の第2端部10f側の側壁10c1には、第2開口部12が設けられている。マッフル10の第2端部10f側の側壁10c2には、第3開口部13が設けられている。
【0018】
マッフル10の第1開口部11は、被処理物Aを搬入路30から搬送空間10aに導入するための開口部である。また、第1開口部11は、マッフル10と搬入路30とを接続する接続部でもある。この実施形態では、
図1に示すように、マッフル10の第1開口部11は、マッフル10の第1端部10e側における一方の側壁10c1に設けられている。マッフル10の第1開口部11は、搬入路30から被処理物Aが導入されるため、少なくとも被処理物A(若しくは加熱容器B)よりも大きな内径を有していればよい。
【0019】
マッフル10の第2開口部12は、搬出プッシャー45により被処理物Aを搬出方向に押し出すための開口部である。マッフル10の第3開口部13は、被処理物Aを搬送空間10aから搬出路40に導入するための開口部である。
図1に示すように、搬出路10は、第2開口部12と第3開口部13を介して、マッフル10の第2端部10f側において、マッフル10と交差するように繋がっている。この実施形態では、マッフル10の第2開口部12は、マッフル10の第2端部10f側における一方の側壁10c1に設けられている。また、マッフル10の第3開口部13は、マッフル10の第2開口部12と対向するように、もう一方のマッフル10の側壁10c2に設けられている。マッフル10の第2開口部12と第3開口部13は、搬送空間10aを挟んで対向するように設けられている。
【0020】
<メインプッシャー>
メインプッシャー20は、所定時間毎に、マッフルの長さ方向(搬送方向Y(RrからF))に沿って、被処理物Aを所定距離だけ押し込む装置である。メインプッシャー20は、
図1及び
図2に示すように、マッフル10の第1端部10eに設けられている。メインプッシャー20は、搬入路30からマッフル10の搬送空間10aに供給された被処理物Aを搬送方向Yに押し出すことができる。この実施形態では、メインプッシャー20は、プッシャーヘッド20aと、プッシャーロッド20bと、シール部20cと、アクチュエータ20dとを備えている。プッシャーロッド20bは、マッフル10の第1端部10eから搬送空間10aに挿入されている。第1端部10eにはシール部20cが設けられている。シール部20cは、マッフル10内の気密性を確保しつつ、プッシャーロッド20bの摺動を支持している。プッシャーヘッド20aは、搬送空間10a内部に延びたプッシャーロッド20bの先端に取り付けられている。
【0021】
メインプッシャー20は、アクチュエータ20dが操作されることでプッシャーロッド20bが前方に動き、搬送空間10aの被処理物Aを前方F方向に向けて押し出す。メインプッシャー20は、被処理物Aを押し出した後、プッシャーヘッド20aとプッシャーロッド20bを後方に待機させる。これにより、搬入路30から搬送空間10aに新たに被処理物Aが供給されるスペースが確保される。この実施形態では、アクチュエータ20dとして、サーボモータが用いられている。しかし、これに限らず、アクチュエータ20dは、シリンダ機構であってもよい。アクチュエータ20dは、マッフル10の外側に設けられているため、マッフル10内の温度の影響をほとんど受けることなく、プッシャーロッド20bを動かすことができる。
【0022】
<搬入路30>
搬入路30は、
図1に示すように、マッフル10の第1端部10e側において、マッフル10の長さ方向に交差するように繋がっている。搬入路30は、搬入口31から搬入された被処理物Aをマッフル10内に導入するための搬入空間30aを有するトンネル状(又は筒状)の経路である。
図3は、搬入路30の縦断側面図である。
図3では、搬入路30の内部が分かるように、搬入路30の搬入方向Xに沿って縦断したIII-III断面(
図1参照)を模式的に示した図である。
図1及び
図3に示すように、搬入路30は、底壁30dと、底壁30dに対向する上壁30bと、搬入空間30aを挟んで一対の側壁30c1、30c2とを有している。この実施形態では、搬入路30の底壁30dには、搬送方向Yと交差する搬送レール17が設けられている。搬入路30の材料は、マッフル10と同じ材料であってもよい。搬入路30は、マッフル10と同様に、ヒータ(図示せず)と断熱材(図示せず)を介して炉体(外壁、図示せず)により搬送方向Yの周囲を覆われていてもよい。
【0023】
搬入路30は、
図1及び
図3に示すように、搬入口31と、シャッター61とを備えている。また、搬入路30は、
図1及び
図3には示さない搬入プッシャーも備えている。搬入口31は、被処理物Aを搬入空間30aに搬入するための開口部である。搬入口31は、マッフル10の第1開口部11と搬入空間30aを挟んで対向して設けられている。シャッター61は、焼成炉1内を密閉空間とするための開閉機能である。シャッター61は、蓋であってもよい。また、シャッター61は、後述する置換室60に由来するものであってもよい。シャッター等の開閉機能を有することで、焼成炉1内と外部の雰囲気を分断することができる。
【0024】
<搬入プッシャー>
搬入プッシャーは、所定時間毎に、マッフル10の搬入方向X(RからL)に沿って、被処理物Aを所定距離だけ押し込む装置である。搬入プッシャーは、搬入路30の搬入口31側に備えられている。搬入プッシャーは、被処理物Aを搬入方向Xに順次押し出すことで、被処理物Aをマッフル10の搬送空間10aに供給する。搬入プッシャーは、搬入路30を通じてマッフル10内に被処理物Aを押し込むことができる。搬入プッシャーは、メインプッシャー20と同様に、プッシャーヘッドと、プッシャーロッドと、シール部と、アクチュエータとを備えていてもよい。
【0025】
<搬出路40>
搬出路40は、
図1に示すように、マッフル10の第2開口部12と第3開口部13を貫通して設けられている。搬出路40は、マッフル10の第2端部10f側において、マッフルの長さ方向に交差するように繋がっている。搬入路30は、搬送空間30aの被処理物Aを焼成炉1の外へ搬出するための搬出空間40aを有するトンネル状(又は筒状)の経路である。
図4は、搬出路40の縦断断面図である。
図4では、搬出路40の内部が分かるように、搬入路30の搬出方向Zに沿って縦断したIV-IV断面(
図1参照)を模式的に示した図である。
図1及び
図4に示すように、搬出路40は、底壁40dと、底壁40dに対向する上壁40bと、搬出空間40aを挟んで一対の側壁40c1、40c2とを有している。この実施形態では、搬出路40の底壁40dには、搬送方向Yと交差する搬送レール17が設けられている。搬出路40の材料は、マッフル10と同じ材料であってもよい。搬出路40は、マッフル10と同様に、ヒータ(図示せず)と断熱材(図示せず)を介して炉体(外壁、図示せず)により搬送方向Yの周囲を覆われていてもよい。
【0026】
搬出路40は、
図1及び
図4に示すように、搬出口41、搬出プッシャー45と、シャッター61とを備えている。搬出口41は、被処理物Aを焼成炉1の外側に排出するための開口部である。搬出口41は、マッフル10の第3開口部13と搬出空間40aを挟んで対向して設けられている。搬出プッシャー45は、搬出路40における搬出口42とは対向する端部40eに備えられている。シャッター61は、焼成炉1内を密閉空間とするための開閉機能である。シャッター61は、蓋であってもよい。また、シャッター61は、後述する置換室60に由来するものであってもよい。シャッター等の開閉機能を有することで、焼成炉1内と外部の雰囲気を分断することができる。
【0027】
搬出路40は、焼成炉1内を密閉空間とするため、開閉機能を有している。ここでは、搬出路40は、開閉機能として、シャッター61を有している。しかし、開閉機能は、特に限定されない。開閉機能は、例えば、蓋やシャッター等である。また、開閉機能は、後述する置換室60に由来するものであってもよい。
【0028】
<搬出プッシャー45>
搬出プッシャー45は、所定時間毎に、被処理物Aをマッフル10の搬出方向Z(LからR)に沿って所定距離だけ押し出す装置である。搬出プッシャー45は、搬送空間10aの被処理物Aを搬出方向Zに順次押し出すことで、被処理物Aを焼成炉1外に排出する。搬出プッシャー45は、
図1に示すように、マッフル10の第2端部10f側に設けられている。この実施形態では、搬出プッシャー45は、プッシャーヘッド45aと、プッシャーロッド45bと、シール部45cと、アクチュエータ45dとを備えている。プッシャーロッド45bは、搬出路40の端部40eから搬出空間40aに挿入されている。端部40eにはシール部45cが設けられている。シール部45cは、マッフル10内の気密性を確保しつつ、プッシャーロッド45bの摺動を支持している。プッシャーヘッド45aは、搬出空間40a内部に延びたプッシャーロッド45bの先端に取り付けられている。
【0029】
<架台50>
図5は、焼成炉1を載置する架台50の構成を模式的に示した図である。
図5に示すように、架台50は、焼成炉1(マッフル10、メインプッシャー20、搬出プッシャー45、搬入路30、及び搬出路40)の底面をそれぞれ支持する。架台50には、マッフル10の第2端部10f側が固定されている。ここでは、マッフル10の第2端部10fと、搬出路40と、搬出プッシャー45とが、架台に対して固定的に配置されている。固定方法は、特に限られない。固定方法は、例えば、金具、ベルト、接着、又は溶接等により固定される。固定に使用する金具としては、例えば、ボルト又はリベット等である。この実施形態では、第2端部10fと、搬出路40と、搬出プッシャー45とが、ブラケット51とボルト52により、架台50に固定されている。
【0030】
また、架台50には、マッフル10の第1端部10e側がマッフル10の長さ方向に可動に配置されている。ここでは、マッフル10の第1端部10eと、搬入路30と、搬入プッシャー35とが、架台50に対して固定されていない。マッフル10の第1端部10eと、搬入路30と、搬入プッシャーとが、架台50に対してマッフル10の長さ方向に可動に配置されている。
【0031】
焼成炉は、被処理物を高温で加熱する装置である。高温加熱によって、焼成炉に用いられるマッフルが熱膨張する。ところで、長時間焼成する用途において、生産性を向上させるため、マッフルの全長を長くする場合がある。この場合、マッフル全体として、大凡4m以上の長さになる場合もある。また、被処理物によっては、より高温での加熱が求められる場合がある。例えば、セラミックス材料の脱バインダ工程では、マッフル内の温度は、500℃~600℃程度にもなる。そのような長いマッフルが用いられ、かつ高温にさらされる場合にマッフルの長さが全体として2cm以上も伸びる。発明者らは、上記のような熱膨張によるマッフルの伸びにより、マッフルに歪が生じるおそれがあると考えた。かかる歪みにより、マッフルの気密性や被処理物の搬送に影響が生じるおそれがあると考えた。
【0032】
上記のように、ここで開示される焼成炉1は、マッフル10と、メインプッシャー20と、搬入路30と、搬入プッシャーと、搬出路40と、搬出プッシャー45と、架台50とを有している。また、マッフルの第2端部10fと、搬出路40と、搬出プッシャー45は、架台50に対して固定的に配置されている。しかし、マッフルの第1端部10eと、搬入路30と、搬入プッシャーは、架台50に対してマッフル10の長さ方向(ここでは、RrからF)に可動に配置されている。これにより、熱膨張によるマッフル10の伸びを一方向(ここでは、Rr方向)に規制することができる。すなわち、マッフル10の第1端部10eが、マッフル10が熱膨張した分マッフル10の長さ方向にスライドすることができる。その結果、マッフル10内部の歪みを小さくすることができる。例えば、マッフル10と搬入路30又は搬出路40の連結部(第1開口部11又は第3開口部13)における歪みを低減させることができる。
【0033】
なお、マッフル10の第1端部10e側を架台50に対して固定し、マッフル10の第2端部10f側を架台50に対して可動とすることもできる。しかし、本実施形態のように、マッフル10の第2端部10f側を架台に対して固定することが好ましい。マッフル10が熱膨張した際、非固定的(可動)に配置しているマッフルの端部に伸びが集中しやすい。本実施形態では、マッフル10の第1端部10e側が、第2端部10f側に比べ、加熱容器B(被処理物A)の間隔に余裕ができやすい。その場合であっても、メインプッシャー20により、加熱容器B(被処理物A)を搬送方向Yに押し込むことができる。加熱容器B(被処理物A)の間隔を少なくすることができるため、搬出プッシャー45による押出をより安定させることができる。
【0034】
マッフル10の熱膨張による伸長は、使用される温度帯やマッフルの全長によって変化する。炉内の温度が上昇するほど熱膨張率は大きくなる。なお、炉内温度は目的とする被処理物によって決定される。この実施形態では、マッフル10の全長Wは、長さ方向(第1端部10eから第2端部10f)に約4.4mである。また、マッフル10内部は、大凡500℃~600℃に加熱される。この場合、マッフル10は、熱膨張により長さ方向に最大で24mm伸長する。ここで開示される技術は、全長が長く、高温で使用される焼成炉に特に有効である。マッフル10の全長は、2m以上が好ましく、3m以上がより好ましく、4m以上がさらに好ましい。
【0035】
架台50は、
図5に示すように、長尺の第1フレーム50aと、第2フレーム50bと、支持部材50cとを備える。第1フレーム50aは、焼成炉1を載置するための架台50の上側に設けられている。第2フレーム50bは、架台50の下側に位置するように複数の支持部材50cを連結している。第2フレーム50bにより、架台50を補強することができる。この実施形態では、第2フレーム50bには、調整ボルト53と、アンカーボルト54とが設けられている。調整ボルト53は、架台の高さを調整することができる。アンカーボルト54は、床面と架台50とを固定することができる。
【0036】
架台50の第1フレーム50aには、フリーローラが設けられていてもよい。フリーローラの軸は、マッフル10の長さ方向と直交するように設けられる。こうすることで、マッフル10の第1端部10eを長さ方向に容易に可動させることができる。
【0037】
架台50の材料及び形状は、特に限定されない。ただし、載置する焼成炉1の荷重及び焼成炉1からの熱貫流に耐えうるものが好ましい。架台50の材料は、例えば、金属やセラミック等である。本実施形態では、ステンレス製の架台50に焼成炉1を載置している。架台50は、焼成炉1の全長を支持してもよい。また、複数の架台50により、マッフル10の第1端部10e付近及び第2端部10f付近等の特定の箇所を個別に支持してもよい。
【0038】
<搬送レール17>
マッフル10、搬入路30及び搬出路40には、適宜、搬送レール17が配置されていてもよい。搬送レール17を設置することで、被処理物A(若しくは加熱容器B又は台板B2)の搬送を規制することができる。搬送レール17は、マッフル10、搬入路30及び搬出路40の底壁または床に配置される。搬送レール17が配置されることで、マッフル10が熱膨張した場合であっても、被処理物Aをより確実に搬送することができる。この実施形態では、搬送レール17は、
図1に示されるように、搬入路30、マッフル10及び搬出路40に沿って配置された略C字状のレールである。搬送レール17の材料は、特に制限されない。搬送レールの材料は、熱膨張が少ない方が好ましい。搬送レールの材料は、例えば、カーボンやセラミック等が好ましい。
【0039】
搬送レール17上には、被処理物A(若しくは加熱容器B又は台板B2)がほぼ隙間なく載置される。この状態で、最も手前にある被処理物A(若しくは加熱容器B又は台板B2)が、プッシャーにより1個分押されると、搬送レール17上の被処理物A(若しくは加熱容器B又は台板B2)が順次押されて搬送される。この実施形態では、
図1及び
図2に示されているように、マッフル10の底壁10dに着脱可能なカーボン製の搬送レール17が設けられている。搬送レール17は、
図1及び
図3に示すように、凹部17aと両端に基部17bとを有している。ここでは、搬送レール17に載せられる台板B2に加熱容器Bが載置されている。台板B2は、搬送レール17に形成された凹部17aによって位置決めされることで、搬送レール17上を搬送される。
図1及び
図2に示すように、搬送レール17上には、加熱容器Bがほぼ隙間なく載置される。この状態で、搬送空間10aの最も前方F側にある加熱容器Bが、メインプッシャー20により1個分押されると、搬送レール17上の加熱容器Bが順次押されて搬送される。この搬入処理を繰り返すことによって、搬送レール17に沿って加熱容器Bを順次搬送することができる。なお、上述したように、マッフル10内の加熱容器Bは順次搬送されるため、加熱容器Bの搬入と搬出は、同じタイミングで行われる。そのため、搬入口31と搬出口41の開閉は同じタイミングで行われる。
【0040】
<ガス排気管16>
図2に示すように、マッフル10には、ガス供給管(図示せず)又はガス排気管16等の配管が設けられていてもよい。ガス排気管16は、マッフル10内から雰囲気ガス(例えば、窒素やアルゴン等)又は被処理物Aの焼成により生じる反応ガスを給気するための配管である。ガス排気管には、排気ポンプ等の排気装置が接続されうる。ガス供給管は、マッフル10内に雰囲気ガスを供給するための配管である。カス供給管は、ガス供給源(図示せず)と接続されている。ガス排気管16及びガス供給管の配置や数は、本開示の技術を著しく損なわない限りにおいて、特に制限されない。この実施形態では、マッフル10の上壁10bに設けられた複数のガス排気孔16aにガス排気管16が設けられている。しかし、ガス排気孔16aはマッフル10の側壁10c1、10c2等に設けられていてもよい。なお、これらの配管は、フレキシブルホースに接続することで、搬送方向に可動させることができる。これにより、マッフル10が熱膨張によって搬送方向Yに伸長した際、マッフルと配管との位置ズレ(歪み)の影響を小さくすることができる。
【0041】
<置換室60>
搬入路30及び/又は搬出路40には置換室60が設けられていてもよい。置換室60は、焼成炉1内と焼成炉1外の雰囲気を仕切ることができる空間である。置換室60は、焼成炉1内の雰囲気を調整する機能を有している。被処理物Aは、置換室60に供給された際、置換室60内の雰囲気が焼成炉1内とほぼ同等となるように調整されてから搬入される。置換室60により、連続運転中であっても、マッフル10内の雰囲気を一定に保つことができるため、被処理物Aを安定して加熱することができる。本実施形態では、焼成炉1には、搬入路30に設けられた第1置換室60aと、搬出路40に設けられた第2置換室60bと、が設けられている。第1置換室60aは、搬入路30の搬入口31に取り付けられている。また、第2置換室60bは、搬出路40の搬出口41に取り付けられている。
【0042】
置換室60は、置換室60と焼成炉1とを仕切る炉体側シャッター61と、置換室60と外部とを仕切る外部シャッター62と、が設けられている。炉体側シャッター61は、置換室60と焼成炉1の内部とを区画している。また、外部シャッター62は、置換室60と焼成炉1の外部とを区画している。置換室60は、被処理物Aを搬送するためのガイドレール63を備えていてもよい。
【0043】
図6は、第1置換室60aの模式図である。また、
図7は、第1置換室60aの模式的な平面図である。
図7は、第1置換室60aの内部が分かるように、第1置換室60aの内部を上から見た平面図である。
図7に示すように、第1置換室60aは、炉体側シャッター61aと、外部シャッター62aと、ガイドレール63とを備える。なお、上述した搬入プッシャーは、第1置換室60aに設けられていてもよい。
【0044】
第1置換室60aは、焼成炉1内に被処理物Aを搬入するための機構を備えている。この実施形態では、まずシャッター62aが閉じられた状態で、シャッター61aが開かれる。次に、台板B2に載置された加熱容器Bが、第1置換室60aに導入される。第1置換室60aに加熱容器Bが導入されるとシャッター62aが閉じられる。そして、第1置換室60a内の雰囲気が調整される。第1置換室60a内の雰囲気が調整された後、シャッター61aが開かれる。第1置換室60aに設けられた搬入プッシャーが加熱容器Bを押し出すことにより、加熱容器Bが焼成炉1内に搬入される。こうすることで、焼成炉1の内部と外部との雰囲気を分けることができ、マッフル10内の被処理物Aへの外気による影響を抑制することができる。
【0045】
第1置換室60aは、架台50に載置されている。また、第1置換室60aは、架台50に対してマッフルの長さ方向に可動に配置されている。こうすることで、マッフル10が、熱膨張により第1端部10e側に伸長した際、長さ方向(ここでは、後方Rr)にスライドさせることができる。第1置換室60a又は第1置換室60aが載置される架台50には、フリーローラ55が設けられててもよい。フリーローラ55により、マッフル10の第1端部10eを長さ方向に容易に可動させることができる。この実施形態では、
図6に示されているように、第1置換室60aが載置される架台50には、フリーローラ55が設けられている。フリーローラ55の軸は、マッフル10の搬送方向Yと直交するように設けられている。
【0046】
第2置換室60bは、焼成炉1外に被処理物Aを搬出するための機構を備えている。この実施形態では、まずシャッター62bが閉じられた状態で、シャッター61bが開かれる。次に、加熱処理された被処理物Aが、搬出路40から第2置換室60bに導入される。第2置換室60bに被処理物Aが導入されるとシャッター61bが閉じられる。そして、第2置換室60b内の雰囲気が調整される。第2置換室60b内の雰囲気が調整された後、シャッター62bが開かれ、被処理物Aが搬出される。こうすることで、焼成炉1の内部と外部との雰囲気を分けることができる。
【0047】
第2置換室60bは、架台50に載置されている。第2置換室60bは、架台50に載置されている。また、第2置換室60bは、架台50に対して固定的に配置されていてもよい。本実施形態では、マッフル10の第2端部10fが固定されている。そのため、第2置換室60bを架台50に対して固定的に配置することで、熱膨張による伸長方向を一方向により規制することができる。この実施形態では、
図8に示されるように、第2置換室60bは、ブラケット51とボルト52により、架台50に固定されている。
【0048】
以上、ここで開示される発明の詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の
範囲を限定するものではない。また、ここでの開示は、種々変更でき、特段の問題が生じ
ない限りにおいて、各構成要素やここで言及された各処理は適宜に省略され、または、適
宜に組み合わされうる。
【0049】
なお、本明細書は以下の項1~4を含んでいる。以下の項1~4は、上記した実施形態には限定されない。
【0050】
項1:直線に沿ったトンネル状のマッフルと、前記マッフルが載せられる架台と、前記マッフルの第1端部に設けられ、前記マッフルの長さ方向に沿って、被処理物を押し込むメインプッシャーと、前記マッフルの前記第1端部において、前記マッフルの長さ方向に交差するように繋がった搬入路と、前記搬入路を通じて前記マッフル内に前記被処理物を押し込む搬入プッシャーと、前記マッフルの第2端部において、前記マッフルの長さ方向に交差するように繋がった搬出路と、前記マッフルの前記第2端部に設けられ、前記搬出路に向けて被処理物を押し出す搬出プッシャーと、を備え、前記マッフルの前記第2端部と、前記搬出路と、前記搬出プッシャーは、前記架台に対して固定的に配置されており、前記マッフルの前記第1端部と、前記搬入路と、前記搬入プッシャーは、前記架台に対して前記マッフルの長さ方向に可動に配置されている、焼成炉。
【0051】
項2:前記マッフルは、搬送レールを備えている、項1に記載の焼成炉。
【0052】
項3:前記搬入路には、第1置換室が設けられており、前記搬出路には、第2置換室が設けられており、前記第1置換室は、架台に対して前記マッフルの長さ方向に可動に配置され、前記第2置換室は、架台に対して固定的に配置されている、項1又は項2に記載の焼成炉。
【0053】
項4:前記第1置換室を載置する架台には、フリーローラが設けられている、項1~3のいずれか1項に記載の焼成炉。
【符号の説明】
【0054】
1 焼成炉
10 マッフル
10a 搬送空間
10b マッフルの上壁
10c1 マッフルの側壁
10c2 マッフルの側壁
10d マッフルの底壁
10e マッフルの第1端部
10f マッフルの第2端部
11 マッフルの第1開口部
12 マッフルの第2開口部
13 マッフルの第3開口部
16 ガス排気孔
16a ガス排気管
17 搬送レール
18 搬送レールの凹部
20 メインプッシャー
20a プッシャーヘッド
20b プッシャーロッド
20c シール部
20d アクチュエータ
30 搬入路
30a 搬入空間
30b 搬入路の上壁
30c1 搬入路の側壁
30c2 搬入路の側壁
30d 搬入路の底壁
31 搬入口
40 搬出路
40a 搬出空間
40b 搬出路の上壁
40c1 搬出路の側壁
40c2 搬出路の側壁
40d 搬出路の底壁
40e 搬出路の端部
41 搬出口
45 搬出プッシャー
45a プッシャーヘッド
45b プッシャーロッド
45c シール部
45d アクチュエータ
50 架台
50a 第1フレーム
50b 第2フレーム
50c 支持部材
51 ブラケット
52 ボルト
53 アンカーボルト
54 調整ボルト
55 フリーローラ
60 置換室
60a 第1置換室
60b 第2置換室
61 炉体側シャッター
61a 第1置換室の炉体側シャッター
61b 第2置換室の炉体側シャッター
62 外部シャッター
62a 第1置換室の外部シャッター
62b 第2置換室の外部シャッター
63 ガイドレール
A 被処理物
B 加熱容器
B1 蓋
B2 台板
W マッフルの長さ方向の全長
X 搬入方向
Y 搬送方向
Z 搬出方向
【要約】
【課題】焼成炉の内部の変形、破損を防止する。
【解決手段】ここで開示される焼成炉1は、マッフル10と、搬入路30と、搬出路40と、メインプッシャー20と、搬出プッシャー45とを有している。焼成炉1は、架台50に載置されている。搬入路30は、マッフルの第1端部10e側に設けられている。搬出路40は、マッフルの第2端部10f側に設けられている。この焼成炉1は、マッフルの第2端部10fと、搬出路40と、搬出プッシャー45とが、架台50に対して固定的に配置されている。これに対し、マッフルの第1端部10eと、搬入路30と、搬入プッシャーとが、架台50に対してマッフル10の長さ方向に可動に配置されている。
【選択図】
図1