(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】焼成炉
(51)【国際特許分類】
F27B 9/22 20060101AFI20241004BHJP
F27B 9/30 20060101ALI20241004BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F27B9/22
F27B9/30
F27D9/00
(21)【出願番号】P 2024042832
(22)【出願日】2024-03-18
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219200
【氏名又は名称】株式会社ノリタケTCF
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】福島 宏康
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悦史
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-148905(JP,A)
【文献】特開2020-164353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/00-9/40
F27D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送空間を内部に有する加熱室と、
プッシャと、
シール部材と、
冷媒供給装置と
を備え、
前記加熱室は、前記搬送空間に設定された搬送方向の後端に挿通孔を備え、
前記プッシャは、
前記シール部材を介して前記挿通孔に挿通されるシャフトと、
前記搬送空間内において前記シャフトの一端に設けられたプッシャヘッドと、
前記シャフトを前記搬送方向に沿って駆動する駆動装置と
を備え、
前記シャフトは、前記シール部材と接する位置において、内部に空洞を備えており、
前記冷媒供給装置は、前記空洞に冷媒を供給する、
焼成炉。
【請求項2】
前記シャフトの前記空洞には、内管が設けられており、
前記内管の内側および外側のうち、一方には前記冷媒が供給され、他方からは前記冷媒が排出される、請求項1に記載された焼成炉。
【請求項3】
前記シャフトは、
一端に前記プッシャヘッドが取り付けられた中実部と、
前記中実部の他端から前記搬送方向とは反対方向に向かって延びる、内部に前記空洞が設けられた中空部と
を有する、請求項1または2に記載された焼成炉。
【請求項4】
前記中実部と前記中空部の境界は、前記プッシャヘッドが引き込まれている構成の時に前記搬送空間よりも外側に位置している、請求項3に記載された焼成炉。
【請求項5】
前記挿通孔には、断熱材が設けられている、請求項1または2に記載された焼成炉。
【請求項6】
前記断熱材は、無機繊維から構成されている、請求項5に記載された焼成炉。
【請求項7】
前記シール部材は、前記加熱室の外部に設けられている、請求項1または2に記載された焼成炉。
【請求項8】
前記加熱室には、前記挿通孔を備えるガイドが取り付けられており、
前記ガイドは、前記シール部材を収容する収容部と、前記シール部材と、前記収容部に収容された前記シール部材を押さえる押さえ部とを含む、請求項1または2に記載された焼成炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2023-148905号公報には、搬出部を有するマッフルと、複数のヒータと、炉体と、排気筒と、搬送用プッシャと、搬出用プッシャとを有するマッフル炉が開示されている。搬送用プッシャは、アクチュエータと、アームと、ヘッドとを備えている。搬送用プッシャのアームは、一方の側面から搬送部の内部に挿入されている。当該側面には、搬送部の気密性を確保しつつ、アームの摺動を支持するシール部材が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プッシャのシャフトが挿通される箇所に設けられているシール部材は、炉体内の熱等によって劣化しうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される焼成炉は、搬送空間を内部に有する加熱室と、プッシャと、シール部材と、冷媒供給装置とを備えている。加熱室は、搬送空間に設定された搬送方向の後端に挿通孔を備えている。プッシャは、シャフトと、プッシャヘッドと、駆動装置とを備えている。シャフトは、シール部材を介して挿通孔に挿通されている。プッシャヘッドは、搬送空間内においてシャフトの一端に設けられている。駆動装置は、シャフトを搬送方向に沿って駆動する。シャフトは、シール部材と接する位置において、内部に空洞を備えている。冷媒供給装置は、空洞に冷媒を供給する。かかる焼成炉では、シール部材の劣化が抑えられうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図3】
図3は、シャフト31およびガイド50の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示における実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0008】
図1は、焼成炉1の模式的な平面図である。
図1では、加熱室10等の内部を露出させた状態の平面が示されている。
図2は、プッシャ30の模式図である。
図2では、左方から見たプッシャ30が模式的に示されている。
図3は、シャフト31およびガイド50の模式図である。
図3では、ガイド50の断面が模式的に示されている。
図1~
図3では、断熱材以外の断面のハッチングは、適宜省略されている。
【0009】
〈焼成炉1〉
焼成炉1は、加熱容器Aに被処理物を収容した状態で搬送しつつ加熱処理するための装置である。ここでは、加熱容器Aは、サヤとも称される箱状の容器が用いられている。この実施形態では、被処理物を収容している加熱容器Aには、蓋が載せられている。加熱容器の形状、材質等は、特に限定されない。加熱容器Aは、台板A1に載せられた状態で搬送される。なお、加熱容器は、必ずしも台板に載せられていなくてもよい。台板A1に載せられ、被処理物が収容された加熱容器Aは、適宜に被搬送物Aとも称される。
【0010】
図1に示されているように、焼成炉1は、搬入室80と、加熱室10と、プッシャ30と、搬出室90とを備えている。焼成炉1は、シール部材57と、冷媒供給装置70と(
図2参照)を備えている。搬入室80および搬出室90は、加熱室10に接続されている。被搬送物Aは、搬入室80から加熱室10に搬入される。被搬送物Aは、加熱室10内で搬送方向Yに沿って間欠的に搬送されつつ加熱処理される。加熱処理された被搬送物Aは、加熱室10から搬出室90に搬出される。この実施形態では、搬送方向Yは、搬送方向Xと搬送方向Zに対して略直角に設定されている。搬送方向Xと搬送方向Zは、反対方向に設定されている。
【0011】
この実施形態では、加熱室10は、直方体状に形成されている。加熱室10は、後壁11と、前壁12と、側壁13,14と、底壁15(
図2参照)と、天井壁16(
図2参照)とを備えている。後壁11と前壁12は、搬送方向Yに沿って対向している。側壁13と側壁14は、搬送方向Xおよび搬送方向Zに沿って対向している。側壁13は、搬送方向Yに沿って見たときに右側に位置しており、側壁14は、搬送方向Yに沿って見たときに左側に位置している。底壁15と天井壁16は、高さ方向に沿って対向している。加熱室10の側壁13には、搬入室80および搬出室90が接続されている。搬入室80は、加熱室10の上流側に設けられており、搬出室90は、加熱室10の下流側に設けられている。
【0012】
〈搬入室80〉
搬入室80は、搬入路81と、搬入路81を囲う角筒状の壁82とを備えている。搬入室80は、側壁13の上流部13aに接続されている。搬入室80は、側壁13に対して略直角に接続されている。被搬送物Aは、搬送方向Xに沿って搬入路81上を搬送され、加熱室10に搬入される。搬入室80内で被搬送物Aを搬送する方法および搬入路81の構成は、特に限定されない。被搬送物Aは、例えば、プッシャ式搬送装置、ベルトコンベア式搬送装置、ローラコンベア式の搬送装置等によって搬送されてもよい。搬入室80では、被処理物を加熱室10内で処理する前の処理が実行されてもよい。搬入室80には、雰囲気を切り替えるための置換室が設けられていてもよい。搬入室80は、被処理物を予熱するためのヒータが設けられていてもよい。搬入室は、加熱室に対して必ずしも直角に設けられている必要はない。搬入室は、例えば、加熱室と同一直線上に設けられていてもよい。搬入室80から加熱室10に搬入された被搬送物Aは、加熱室10内で加熱処理される。
【0013】
〈加熱室10〉
加熱室10は、この実施形態では、マッフルによって構成されている。加熱室10内の雰囲気は、マッフルによって維持されうる。マッフルは、被処理物と、加熱源(ヒータ)との間に介在する筒状の部材である。被処理物は、マッフルを介して間接的に加熱される。詳細な図示省略は省略するが、ヒータは、加熱室10と、加熱室10(マッフル)を囲うカバー17(
図2参照)との間に設けられている。マッフルの材料としては、金属、セラミック、カーボン等が用いられうる。加熱室10は、架台10aから延びる支柱10a1に支持されている(
図2参照)。
【0014】
なお、加熱室の構成は、特に限定されない。被処理物を加熱するヒータは、加熱室内に設けられていてもよい。ヒータとしては、例えば、円筒状のセラミック製のヒータ、金属シースヒータ等が用いられうる。また、ヒータの形状は特に限定されず、例えば、板状のパネルヒータ等が用いられてもよい。ヒータとしては、熱風加熱方式のヒータが用いられていてもよい。加熱室には、内部の雰囲気を制御する給気配管および排気配管が接続されていてもよい。
【0015】
加熱室10は、搬送空間10bを内部に有している。加熱室10は、搬送空間10bに設けられた搬送路10cを内部に有している。被搬送物Aは、搬送路10c上を搬送される。搬送路10cには、被搬送物Aの搬送を案内する構成が設けられていてもよい。搬送路10cには、例えば、搬送方向Yに沿ったレール、ガイド等が設けられていてもよい。被搬送物Aは、以下の順序でプッシャ30(ここでは、プッシャ30A)によって搬送方向Yに沿って間欠的に押され、搬送空間10bを搬送される。
【0016】
まず、被搬送物Aが搬入室80から加熱室10に搬入される。搬入された被搬送物Aは、プッシャ30によって搬送方向Yに向かって少なくとも被搬送物A(台板A1)ひとつ分搬送される。搬送方向Yに被搬送物Aが搬送されることによって、搬入室80と加熱室10が交叉する位置には、被搬送物Aが搬送された長さ分のスペースができる。当該スペースに、被搬送物Aが搬入室80から搬入される。搬入された被搬送物Aは、プッシャ30によって搬送方向Yに向かって搬送される。この時、先に搬送された被搬送物Aの後端に、後から搬送された被搬送物Aの先端が当たる。これによって、先に搬送された被搬送物Aは、後に搬送された被搬送物Aに押されて搬送方向Yに搬送される。これが繰り返されることによって、被搬送物Aは、間欠的に搬送空間10b内を搬送される。
【0017】
加熱室10内を搬送された被搬送物Aは、搬出室90が接続されている位置に達すると、プッシャ30(ここでは、プッシャ30B)によって加熱室10から搬出される。なお、搬入室80からの被搬送物Aの搬入と、搬出室90からの被搬送物Aの搬出とは、交互に行われうる。これによって、加熱室10内に配置される被搬送物Aの数は、一定数に維持されうる。
【0018】
この実施形態では、プッシャ30Bが被搬送物Aを押す方向(搬送方向Z)は、搬送方向Yと略直角に設定されている。加熱室10には、プッシャ30Bのプッシャヘッド35(
図2参照)が収容される、プッシャ収容部18が設けられている。プッシャ収容部18は、側壁14から搬送方向Zとは反対側に窪んだ領域である。プッシャ収容部18は、側壁14等と同様の材料から構成されていてもよい。プッシャ収容部18は、略直方体状である。プッシャヘッド35が側壁14よりも搬送方向Z側に突出することによって、被搬送物Aは、搬出室90に搬出される。
【0019】
〈搬出室90〉
搬出室90は、搬出路91と、搬出路91を囲う角筒状の壁92とを備えている。搬出室90は、側壁13の下流部13bに接続されている。搬出室90は、側壁13に対して略直角に接続されている。被搬送物Aは、搬送方向Zに沿って搬出路91上を搬送される。搬出室90では、被処理物を加熱室10内で処理した後の処理が実行されてもよい。搬出室90には、雰囲気を切り替えるための置換室が設けられていてもよい。搬出室90は、被処理物を均熱化したり、冷却したりするための設備が設けられていてもよい。搬出室は、加熱室に対して必ずしも直角に設けられている必要はない。搬出室は、例えば、加熱室と同一直線上に設けられていてもよい。
【0020】
〈プッシャ30〉
以下、焼成炉1に用いられうるプッシャ30について、搬出室90側に設けられているプッシャ30Bを一例として説明する。プッシャ30Aは、プッシャ30Bと同様の構成とすることができるので、説明は省略する。
図2に示されているように、プッシャ30Bは、シャフト31と、プッシャヘッド35と、駆動装置60とを備えている。プッシャ30Bは、架台30aに載せられている。
【0021】
〈プッシャヘッド35〉
プッシャヘッド35は、被搬送物Aを搬送方向Zに沿って搬送する部位である。プッシャヘッド35は、搬送空間10b内に設けられている。プッシャヘッド35は、シャフト31の一端(先端部)31bに設けられている。この実施形態では、プッシャヘッド35は、台板A1を押すことによって被搬送物Aを搬送方向Zに沿って搬送する。プッシャヘッド35は、基部35aと、当接部35bとを有している。基部35aは、シャフト31が接続された部位である。当接部35bは、被搬送物A(または台板A1)と当接する部位である。この実施形態では、当接部35bは、基部35aの下部から前方に向かって延びている。当接部35bは、台板A1の側面と重なる高さに設定されている。当接部の形状は、特に限定されない。
【0022】
〈シャフト31〉
シャフト31は、円筒軸状の部材である。この実施形態では、シャフト31は、ステンレス製である。シャフト31は、内部に空洞31aを備えている。空洞31aは、略円柱状に形成された空間である。空洞31aは、プッシャヘッド35がプッシャ収容部18に引き込まれている状態において、シャフト31の後端部31cから後壁18aと重なる位置に達している。後壁18aには、後述するシール部材57が設けられたガイド50が取り付けられている(
図3参照)。このため、シャフト31の空洞31aは、シャフト31がシール部材57と接する位置と重なっている。
【0023】
この実施形態では、シャフト31は、中実部32と、中空部33とを有している。中実部32は、シャフト31の先端側を構成している。中実部32は、内部に空洞が設けられていない部位である。このため、中実部32は、略円柱状である。中実部32の先端には、プッシャヘッド35が取り付けられている。中空部33は、内部に空洞31aが設けられた部位である。中空部33は、シャフトの後端側を構成している。換言すると、中空部33は、中実部32の他端から搬送方向Zとは反対方向に向かって延びている。
【0024】
中実部32と中空部33の境界は、プッシャヘッド35がプッシャ収容部18に引き込まれている構成の時に、後述する断熱材53aと重なる位置に位置している。このため、中実部32と中空部33の境界は、搬送空間10bよりも外側に位置している。中空部33は、プッシャヘッド35が引き込まれている構成の時に、搬送空間10bには露出しない。
【0025】
図3に示されているように、空洞31aの先端部31a1は、先に向かうに従って径が小さくなっている。換言すると、空洞31aの先端部31a1は、略円錐状に形成されている。シャフト31の空洞31aには、内管34が設けられている。内管34は、略円筒状である。内管34は、空洞31a内において、シャフト31の後端部31cから空洞31aの先端部31a1の近傍まで延びている。内管34の先端部は、尖っている。シャフト31の中空部33の空洞31aには、冷媒供給装置70(
図2参照)から冷媒が供給される。
【0026】
〈冷媒供給装置70〉
冷媒供給装置70は、シャフト31の空洞31aに冷媒を供給する装置である。冷媒供給装置70としては、空洞31aに冷媒を供給できる装置であれば、特に限定されない。
図2に示されているように、シャフト31には、供給口31dと排出口31eが設けられている。供給口31dは、シャフト31の後端部31cにおいて、内管34の後端に設けられている。排出口31eは、シャフト31の後端部31cにおいて、シャフト31の外周面に設けられている。冷媒供給装置70は、供給口31dと排出口31eに接続されている。供給口31dには、冷媒供給装置70から冷媒が供給され、排出口31eからは、冷媒供給装置70に向かって冷媒が排出される。シャフト31は、この実施形態では、内管34の内側に冷媒が供給され、外側から冷媒が排出されるように構成されている。なお、内管34の外側に冷媒が供給され、内側から冷媒が排出されるように、冷媒が流通する向きが設定されていてもよい。
【0027】
この実施形態では、冷媒供給装置70として、チラーとも称される、予め設定された温度の冷媒を循環させる装置が用いられている。空洞31aに供給される冷媒の温度は、例えば、常温、常温よりも低い温度等、搬送空間10bの雰囲気温度よりも低い温度である。特に限定されないが、冷媒としては、水等を用いることができる。冷媒供給装置70は、加熱室10の外部に配置されている。
【0028】
冷媒供給装置70は、ポンプによって冷媒を循環させる。冷媒供給装置70は、チューブ31fを介して供給口31dと排出口31eと接続されている。チューブ31fは、ケーブルキャリア31f1に束ねられている。ケーブルキャリア31f1は、シャフト31の駆動に追従して曲がるように構成されている。冷媒供給装置70は、ポンプによって、冷媒を循環させる。冷媒は、冷媒供給装置70内での熱交換によって設定温度に冷却され、冷媒供給装置70と、シャフト31の空洞31a内を循環する。これによって、シャフト31の外周側面は、冷媒によって冷やされる。
【0029】
シャフト31は、後壁18aから加熱室10の外部に出ている。シャフト31が挿通される後壁18aには、貫通孔19が形成されている。貫通孔19は、略円形に開口した孔である。前記加熱室10の貫通孔19には、ガイド50が取り付けられている。
【0030】
〈ガイド50〉
ガイド50は、ベース部材51と、筒部材53と、密閉部材55とを備えている。ガイド50は、挿通孔54,56b1,58cを備えている(
図2および
図3参照)。シャフト31は、挿通孔54,56b1,58cに挿通されている。ベース部材51は、後壁18aの外側面に取り付けられた部材である。ベース部材51は、ボルト等によって後壁18aの外側面に取り付けられうる。
【0031】
筒部材53は、ベース部材51から貫通孔19を通って加熱室10内に挿通されている。筒部材53は、略円筒状の部材である。筒部材53の内周面は、シャフト31が挿通される挿通孔54を形成している。筒部材53の外径は、貫通孔19の内径と略同一である。筒部材53の内径は、シャフト31の外径よりも大きい。加熱室10内において、筒部材53の周囲には、断熱材53aが設けられている。これによって、搬送空間10bの熱が、加熱室10の外部、シャフト31等に伝わりにくくなる。断熱材53aとしては、例えば、セラミック製、カーボン製のものが用いられうる。筒部材53の端部には、断熱材53aを押さえる蓋53bが取り付けられている。
【0032】
この実施形態では、筒部材53の挿通孔54にも、断熱材54aが設けられている。断熱材54aは、筒部材53の内周面と、シャフト31との間に介在している。断熱材54aとしては、無機繊維から構成されたものが用いられている。断熱材54aとしては、アルミナ繊維、ムライト繊維、ロックウール、ガラス繊維、リフラクトリーセラミックファイバー、カーボン繊維等から構成されたブランケット状の断熱材が用いられうる。
【0033】
密閉部材55は、加熱室10の外側に設けられている。密閉部材55は、後壁18aの外側面に取り付けられたベース部材51に取り付けられている。
図3に示されているように、ガイド50の密閉部材55は、収容部56と、シール部材57と、押さえ部58とを備えている。シール部材57は、ダストシール57aと、グランドパッキン57bと、Oリング57cとを備えている。シール部材57は、加熱室10の外部に設けられている。収容部56と押さえ部58の略中央部には、シャフト31が挿通されている。
【0034】
収容部56は、シール部材57を収容する部位である。収容部56は、円盤状の円盤部56aを有している。円盤部56aは、ボルト56a1によってベース部材51に取り付けられている。円盤部56aとベース部材51の間には、Oリング57cが設けられている。収容部56は、円盤部56aからシャフト31の先端側に向かって突出した先端部56bと、シャフト31の後端側に向かって突出した後端部56cとを有している。先端部56bには、シャフト31が挿通される挿通孔56b1が設けられている。挿通孔56b1には、外径方向に窪んだ窪みが設けられている。窪みは、周方向に連続している。窪みには、ダストシール57aが設けられている。ダストシール57aは、先端部56bに設けられており、収容部56の先端部56bとシャフト31の間に介在している。これによって、加熱室10側から密閉部材55内へのダスト等の侵入が抑えられうる。
【0035】
後端部56cは、後方に向かって延びたボルト56c1を有している。収容部56には、後端部56cから円盤部56a側に向かって窪んだ凹部56dが設けられている。凹部56dには、グランドパッキン57bが収容されている。グランドパッキン57bは、凹部56dの底に収められている。収容部56の凹部56dには、押さえ部58が挿通されている。押さえ部58は、ボルト56c1を介して収容部56に対して押さえつけられるように構成されている。
【0036】
押さえ部58は、略円筒状の部位である。押さえ部58の後端には、外径方向に突出した突出部58aが設けられている。詳細な図示は省略するが、突出部58aは、押さえ部58の周方向において略同じ間隔で4箇所に設けられている。突出部58aには、ボルト56c1が挿通される挿通孔が形成されている。ボルト56c1には、突出部58aの外側(後方)からナット58bが取り付けられている。突出部58aの外側からナット58bを締めることによって、押さえ部58は、収容部56に対して押さえつけられている。押さえ部58の略中央部には、挿通孔58cが設けられている。挿通孔58cの径は、シャフト31の外径と略同一である。押さえ部58の先端部は、グランドパッキン57bに押さえつけられており、凹部56dにおいて収容部56とシャフト31の間に介在している。これによって、ガイド50の気密性が向上されうる。
【0037】
収容部56の凹部56dの側周面には、外径方向に窪んだ窪みが形成されている。窪みは、周方向に連続して形成されている。窪みは、凹部56dの深さ方向に沿って2箇所に設けられている。窪みには、Oリング57cが収容されている。Oリング57cによって、収容部56と押さえ部58の間の気密性が向上されている。
【0038】
押さえ部58の挿通孔58cの内周面には、外径方向に窪んだ窪みが形成されている。窪みは、周方向に連続して形成されている。窪みは、挿通孔58cが貫通する方向に沿って2箇所に設けられている。窪みには、Oリング57cが収容されている。シャフト31は、Oリング57cを介して挿通孔58cに挿通されている。押さえ部58の窪みは、挿通孔58cが貫通する方向において収容部56の側周面の窪みと重なる位置に設けられている。これによって、押さえ部58とシャフト31の間の気密性が向上されている。
【0039】
押さえ部58の挿通孔58cのうち、突出部58aと重なる位置には、外径方向に窪んだ窪みが設けられている。窪みは、周方向に連続している。窪みには、ダストシール57aが設けられている。ダストシール57aは、押さえ部58の後端部に設けられており、押さえ部58の後端部とシャフト31の間に介在している。これによって、加熱室10側の外側から密閉部材55内へのダスト等の侵入が抑えられうる。
【0040】
シャフト31は、シール部材57を含んだガイド50に挿通され、加熱室10の外部に延びている。ガイド50には、シャフト31と略平行な複数のロッド50aと、複数のロッド50aを連結する連結板50bとが設けられていてもよい。この実施形態では、ロッド50aは、収容部56の後端部56cから後方に向かって延びている。この実施形態では、後端部56cから4本のロッド50aが延びている。詳細な図示は省略するが、収容部56の周方向において、ロッド50aは、隣り合う突出部58aの間から延びるように配置されている。連結板50bには、シャフト31が挿通される挿通孔50b1が形成されている。シャフト31は、ロッド50aと、連結板50bとによって案内されてもよい。
【0041】
シャフト31は、加熱室10の外部に設けられた駆動装置60(
図2参照)によって駆動される。
【0042】
〈駆動装置60〉
駆動装置60は、シャフト31を搬送方向Zに沿って駆動する装置である。
図2に示されているように、駆動装置は、モータ61と、ボールねじ62と、スライドシャフト63と、ハウジング64とを備えている。
【0043】
架台30aに載せられたベース60aからは、上方に一対の支持部材65が延びている。一対の支持部材65は、少なくともシャフト31が摺動する距離を空けて互いに対向している。一対の支持部材65には、ボールねじ62とスライドシャフト63が掛け渡されている。ボールねじ62とスライドシャフト63は、シャフト31と略平行に延びている。この実施形態では、ボールねじ62は、支持部材65の上部に支持されており、スライドシャフト63は、支持部材65の中央部に支持されている。
【0044】
ボールねじ62とスライドシャフト63には、ハウジング64が接続されている。ハウジング64には、シャフト31が接続されている。この実施形態では、シャフト31は、ハウジング64の上部に取り付けられている。ボールねじ62は、ハウジング64の中央部に接続されている。スライドシャフト63は、ハウジング64の中央部に接続されている。
【0045】
詳細な図示は省略するが、ハウジング64は、ボールねじ62が挿通されるボールナットを備えている。ハウジング64は、スライドシャフト63が挿通されるスライドブッシュを備えている。ハウジング64のボールナットは、ボールねじに螺合している。ハウジング64は、ボールねじ62の回転に応じて、スライドシャフト63に案内されながら、ボールナットを介してボールねじ上を搬送方向Zに沿って動くように構成されている。ボールねじ62が反対方向に回転することによって、ハウジング64は、搬送方向Zとは反対方向に動く。
【0046】
ボールねじ62は、モータ61と接続されている。この実施形態では、ボールねじ62は、モータ61のモータ軸に設けられたプーリ(図示省略)と、ボールねじ62に設けられたプーリ(図示省略)と、これらのプーリを繋ぐベルト66によって接続されている。モータ61の回転駆動力は、プーリと、ベルト66とを介してボールねじ62に伝わり、ボールねじ62が回転する。ボールねじ62が回転することによって、ハウジング64は、搬送方向Zに動く。
【0047】
ハウジング64に取り付けられているシャフト31は、搬送方向Zに動く。これによって、プッシャヘッド35は、プッシャ収容部18から搬送方向Zに向かって動き、被搬送物Aを搬送方向Zに沿って押し込む。被搬送物Aの搬送後、モータ61は、ボールねじ62を反対方向に回転させる。これによって、プッシャヘッド35は、再びプッシャ収容部18に戻る。その後、プッシャ30A(
図1参照)によって後続の被搬送物Aがプッシャヘッド35の前方に搬送される。このように、駆動装置60のモータ61の回転方向が切り替わることによって、シャフト31は搬送方向Zおよび反対方向に駆動され、被搬送物Aを順次搬送する。なお、駆動装置の構成は、かかる形態に限定されず、駆動装置は、シリンダ装置によって構成されていてもよい。
【0048】
ところで、加熱室において内部の雰囲気を維持しつつ、被処理物をプッシャによって順次搬送しながら加熱処理する場合がある。プッシャのシャフトは、加熱室の挿通孔に挿通され、加熱室の内部および外部に延びている。この場合、プッシャのシャフトと、シャフトが挿通される加熱室の挿通孔には、加熱室の気密性を高めるためのシール部材が設けられうる。シャフトは、シール部材を介して挿通孔に挿通されている。本発明者の知見では、シール部材は、加熱室の熱、シャフトがシール材に対する摺動等によって劣化しうる。
【0049】
上述した実施形態では、焼成炉1は、搬送空間10bを内部に有する加熱室10と、プッシャ30と、シール部材57と、冷媒供給装置70とを備えている。加熱室10は、搬送空間10bに設定された搬送方向Zの後端に挿通孔56b1,58cを備えている。プッシャ30は、シャフト31と、プッシャヘッド35と、駆動装置60とを備えている。シャフト31は、シール部材57を介して挿通孔56b1,58cに挿通されている。プッシャヘッド35は、搬送空間10b内においてシャフト31の一端に設けられている。駆動装置60は、シャフト31を搬送方向Zに沿って駆動する。シャフト31は、シール部材57と接する位置において、内部に空洞31aを備えている。冷媒供給装置70は、空洞31aに冷媒を供給する。かかる焼成炉1では、シャフト31は、シール部材57と接する位置において、シャフト31の空洞31aに冷媒が供給される。シール部材57と接する位置において、シャフト31が冷却される。このため、焼成炉1内の熱は、シャフト31を介してシール部材57には伝わりにくい。その結果、熱によるシール部材57の劣化が抑えられやすく、プッシャ30のシャフト31が挿通されている部位のシール性が保たれやすい。シール部材57が劣化しにくくシール性が保たれることによって、加熱室10の雰囲気が維持されやすい。また、加熱室10のメンテナンス回数が少なく済みやすい。
【0050】
上述した実施形態では、シャフト31の空洞31aには、内管34が設けられている。内管34の内側および外側のうち、一方には冷媒が供給され、他方からは冷媒が排出される。これによって、冷媒が空洞31a内で留まりにくい。その結果、シャフト31の冷却効率が向上しうる。
【0051】
上述した実施形態では、シャフト31は、中実部32と、中空部33とを有している。中実部32の一端には、プッシャヘッド35が取り付けられている。中空部33は、中実部32の他端から搬送方向Zとは反対方向に向かって延びている。中空部33は、内部に空洞31aが設けられている。プッシャヘッド35が、空洞31aが設けられている中空部33に取り付けられておらず、中実部32に設けられていることによって、プッシャヘッド35とシャフト31の接続部には、空洞31aをシールするためのシール部材を設ける必要がない。これによって、プッシャ30を、シャフト31の空洞31aが設けられている部位において劣化しにくい構成とすることができる。
【0052】
上述した実施形態では、中実部32と中空部33の境界は、プッシャヘッド35が引き込まれている構成の時に搬送空間10bよりも外側に位置している。このため、冷媒によって冷却されやすい中空部33には、加熱室10の熱が伝わりにくい。その結果、シール部材57が設けられている位置において、シャフト31が加熱されにくく、当該位置の冷却効率が向上しうる。
【0053】
上述した実施形態では、挿通孔54には、断熱材54aが設けられている。これによって、加熱室10の熱が、シャフト31のうち、シール部材57が設けられている位置に伝わりにくくなる。
【0054】
上述した実施形態では、断熱材54aは、無機繊維から構成されている。搬送空間10bにおいてシャフト31の外周面にダスト等の不純物が付着した場合にも、断熱材54aによって当該不純物が除去されやすい。その結果、シール部材57とシャフト31が接する位置が汚れにくく、シール部材57の劣化が抑えられやすい。
【0055】
上述した実施形態では、シール部材57は、加熱室10の外部に設けられている。これによって、加熱室10の外部からシール部材57をメンテナンスしやすい。その結果、シール部材57の劣化が抑えられやすい。
【0056】
上述した実施形態では、加熱室10には、挿通孔54,56b1,58cを備えるガイド50が取り付けられている。ガイド50は、収容部56と、シール部材57と、押さえ部58とを含んでいる。収容部56は、シール部材57を収容する。押さえ部58は、収容部56に収容されたシール部材57を押さえる。かかる構成によって、収容部56と押さえ部58は、それぞれ取り外された状態でメンテナンスされやすい。また、シール部材57が配置される位置のメンテナンス性も良好でありうる。その結果、シャフト31が挿通されている部位のシール性が保たれやすい。
【0057】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0058】
なお、本明細書は以下の項1~8を含んでいる。以下の項1~8は、上記した実施形態には限定されない。
【0059】
項1:
搬送空間を内部に有する加熱室と、
プッシャと、
シール部材と、
冷媒供給装置と
を備え、
前記加熱室は、前記搬送空間に設定された搬送方向の後端に挿通孔を備え、
前記プッシャは、
前記シール部材を介して前記挿通孔に挿通されるシャフトと、
前記搬送空間内において前記シャフトの一端に設けられたプッシャヘッドと、
前記シャフトを前記搬送方向に沿って駆動する駆動装置と
を備え、
前記シャフトは、前記シール部材と接する位置において、内部に空洞を備えており、
前記冷媒供給装置は、前記空洞に冷媒を供給する、
焼成炉。
【0060】
項2:
前記シャフトの前記空洞には、内管が設けられており、
前記内管の内側および外側のうち、一方には前記冷媒が供給され、他方からは前記冷媒が排出される、項1に記載された焼成炉。
【0061】
項3:
前記シャフトは、
一端に前記プッシャヘッドが取り付けられた中実部と、
前記中実部の他端から前記搬送方向とは反対方向に向かって延びる、内部に前記空洞が設けられた中空部と
を有する、項1または2に記載された焼成炉。
【0062】
項4:
前記中実部と前記中空部の境界は、前記プッシャヘッドが引き込まれている構成の時に前記搬送空間よりも外側に位置している、項3に記載された焼成炉。
【0063】
項5:
前記挿通孔には、断熱材が設けられている、項1~4のいずれか一項に記載された焼成炉。
【0064】
項6:
前記断熱材は、無機繊維から構成されている、項5に記載された焼成炉。
【0065】
項7:
前記シール部材は、前記加熱室の外部に設けられている、項1~6のいずれか一項に記載された焼成炉。
【0066】
項8:
前記加熱室には、前記挿通孔を備えるガイドが取り付けられており、
前記ガイドは、前記シール部材を収容する収容部と、前記シール部材と、前記収容部に収容された前記シール部材を押さえる押さえ部とを含む、項1~7のいずれか一項に記載された焼成炉。
【符号の説明】
【0067】
A 加熱容器(被搬送物)
A1 台板
1 焼成炉
10 加熱室
10a,30a 架台
10a1 支柱
10b 搬送空間
10c 搬送路
11 後壁
12 前壁
13,14 側壁
13a 上流部
13b 下流部
15 底壁
16 天井壁
17 カバー
18 プッシャ収容部
18a 後壁
19 貫通孔
30,30A,30B プッシャ
31 シャフト
31a 空洞
31a1 先端部
31b 一端
31c 後端部
31d 供給口
31e 排出口
31f チューブ
31f1 ケーブルキャリア
32 中実部
33 中空部
34 内管
35 プッシャヘッド
35a 基部
35b 当接部
50 ガイド
50a ロッド
50b 連結板
50b1 挿通孔
51 ベース部材
53 筒部材
53a,54a 断熱材
53b 蓋
54,56b1,58c 挿通孔
55 密閉部材
56 収容部
56a 円盤部
56a1 ボルト
56b 先端部
56c 後端部
56c1 ボルト
56d 凹部
57 シール部材
57a ダストシール
57b グランドパッキン
57c Oリング
58 押さえ部
58a 突出部
58b ナット
60 駆動装置
60a ベース
61 モータ
62 ボールねじ
63 スライドシャフト
64 ハウジング
65 支持部材
66 ベルト
70 冷媒供給装置
80 搬入室
81 搬入路
82,92 壁
90 搬出室
91 搬出路
【要約】
【課題】シール部材の劣化を抑える。
【解決手段】焼成炉1は、搬送空間10bを内部に有する加熱室10と、プッシャ30と、シール部材57と、冷媒供給装置70とを備えている。加熱室10は、搬送空間10bに設定された搬送方向Zの後端に挿通孔56b1,58cを備えている。プッシャ30は、シャフト31と、プッシャヘッド35と、駆動装置60とを備えている。シャフト31は、シール部材57を介して挿通孔56b1,58cに挿通されている。プッシャヘッド35は、搬送空間10b内においてシャフト31の一端に設けられている。駆動装置60は、シャフト31を搬送方向Zに沿って駆動する。シャフト31は、シール部材57と接する位置において、内部に空洞31aを備えている。冷媒供給装置70は、空洞31aに冷媒を供給する。
【選択図】
図3