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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】軸シール装置及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3288 20160101AFI20241004BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20241004BHJP
   F16J 15/447 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
F16J15/3288
F16J15/16 B
F16J15/447
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024504675
(86)(22)【出願日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2023007015
(87)【国際公開番号】W WO2023167133
(87)【国際公開日】2023-09-07
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2022033346
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 昂平
(72)【発明者】
【氏名】河野 将弥
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亜積
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晋太朗
(72)【発明者】
【氏名】古庄 達郎
(72)【発明者】
【氏名】西本 慎
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-013647(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056343(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0208472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/324-15/3296
F16J 15/16-15/32
F16J 15/40-15/453
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸回りに回転可能なロータに対して径方向の外側に間隔をあけて配置されて前記中心軸回りの周方向に延び、前記径方向の外側に窪む収容溝を有したハウジングと、
前記周方向に積層された複数の薄板を有し、前記径方向の外側の外周端部が前記収容溝に収容され、前記径方向の内側の内周端部が前記ハウジングから前記径方向の内側に延びて前記ロータの外周面に摺接可能とされたシール体と、
前記収容溝内で前記ハウジング及び前記シール体のいずれか一方から他方に向けて前記中心軸が延びる軸方向に突出する凸部と、
前記凸部に対して前記径方向の外側に配置され、前記ハウジングから前記シール体に向けて前記軸方向に突出する外周凸部と、を備え、
前記シール体は、前記ロータと前記ハウジングとの間の環状空間を、前記軸方向の第一側の高圧領域と前記軸方向の第二側の低圧領域とに区画し、
前記シール体は、前記収容溝内では、前記軸方向の第二側を向くシール体低圧側側面を有し、
前記ハウジングは、
前記収容溝の一部を形成し、前記シール体低圧側側面に対して前記軸方向に間隔をあけて対向する対向面と、
前記低圧領域と前記収容溝の内部とを連通する連通部と、有し、
前記凸部は、前記対向面又は前記シール体低圧側側面に形成され、前記対向面と前記シール体低圧側側面との間を、前記径方向の外側の第一空間部と前記径方向の内側の第二空間部とに区画し、
前記連通部は、前記第一空間部と前記低圧領域とを連通し
前記シール体は、本体部と、前記シール体低圧側側面よりも前記径方向の外側で、前記本体部から前記軸方向の両側に突出する頭部とを有し、
前記収容溝は、前記本体部が収容される本体部収容部と、前記本体部収容部に対して前記径方向の外側に形成されて前記頭部が収容される頭部収容部とを有し、
前記頭部収容部は、前記径方向の外側を向いて、前記頭部が前記径方向の外側から接触可能な外周接触面を有し、
前記外周凸部は、前記軸方向の第一側を向く第一面と、前記径方向の外側を向く第二面とを有し、
前記第一面は、前記シール体低圧側側面に突き当たり、
前記第二面は、前記外周接触面と連続する面を形成し、前記頭部に前記径方向の内側から突き当たっている軸シール装置。
【請求項2】
前記シール体に対して前記軸方向の第一側に配置された側板をさらに備え、
前記シール体は、前記軸方向の第一側を向くシール体高圧側側面を有し、
前記側板は、前記収容溝内で前記シール体高圧側側面に沿って配置され、
前記凸部は、前記側板における前記径方向の内側の端部よりも前記径方向の外側に配置されている請求項1に記載の軸シール装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記対向面に形成されて前記軸方向の第一側に突出し、前記シール体低圧側側面が突き当たることで前記シール体の前記軸方向の第二側への移動を規制する請求項に記載の軸シール装置。
【請求項4】
前記連通部は、一端が前記対向面で開口し、他端が前記低圧領域に臨む前記ハウジングの外面で開口するよう形成された連通孔を少なくとも一つ有する請求項に記載の軸シール装置。
【請求項5】
前記連通孔は、前記周方向に離れて複数形成されている請求項4に記載の軸シール装置。
【請求項6】
前記連通部は、前記凸部を前記径方向に貫通し、前記第一空間部と前記第二空間部とを連通するよう形成された連通溝を少なくとも一つ有する請求項に記載の軸シール装置。
【請求項7】
前記連通溝は、前記周方向に離れて複数形成されている請求項6に記載の軸シール装置。
【請求項8】
前記収容溝の内部に配置され、前記ハウジングに対して前記シール体を前記径方向に付勢する付勢部材をさらに備える請求項に記載の軸シール装置。
【請求項9】
前記ハウジング及び前記シール体の少なくとも一方は、前記周方向に複数に分割された分割体からなり、
前記軸方向から見た際に、前記周方向で隣り合う前記分割体の継ぎ目と重なる領域に、前記対向面及び前記シール体低圧側側面の少なくとも一方に形成され、前記対向面及び前記シール体低圧側側面のいずれか一方から他方に向けて前記軸方向に突出し、前記継ぎ目に沿って前記径方向に延びる継ぎ目凸部をさらに備える請求項に記載の軸シール装置。
【請求項10】
請求項に記載の軸シール装置を備える回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸シール装置及び回転機械に関する。
本願は、2022年3月4日に日本に出願された特願2022-033346号について優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンや蒸気タービン等の回転機械の回転軸回りには、高圧側から低圧側に流れる作動流体の漏れ量を抑えるために、軸シール装置が配置されている。軸シール装置は、回転軸と回転軸の外周側を覆うステータとの間の環状空間を、回転軸が延びる軸方向で低圧領域側と高圧領域側と区画するようにシールしている。
【0003】
例えば特許文献1には、回転軸を中心として周方向に延びる環状凹部が形成されたハウジングと、回転軸の外周に配置され、回転軸の径方向外側の部分が環状凹部に収納されているシール体と、を備えた軸シール装置が開示されている。シール体は、多数のシール片がそれぞれの厚さ方向を回転軸の周方向に向けて、周方向に積層されている。このような軸シール装置は、断面溝形を成し、ハウジングの環状凹部内でシール体を保持する保持リングと、シール体の高圧領域側に沿って配置された高圧サイドシール板と、シール体の低圧領域側に沿って配置された低圧サイドシール板と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/056343号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、ハウジング、及びシール体以外に、保持リング、低圧サイドシール等、複数の部品が必要である。コストを抑えるために、これらの部品を削減しようとすると、軸シール装置におけるシール性が損なわれる可能性がある。例えば、低圧サイドシールや保持リングを省略すると、高圧領域側からハウジングの環状凹部内に入り込んだ作動流体が、ハウジングとシール体の低圧領域側との隙間を径方向の外側から内側に向かって流れることがある。その結果、回転軸の外周面に対してシール体の径方向内側の先端部と、回転軸の外周面との間に生じる摩擦が過大となり、シール体の摩耗に繋がる可能性がある。
【0006】
本開示は、シール体の摩耗を抑えつつ、低コスト化を図ることが可能な軸シール装置及び回転機械を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る軸シール装置は、中心軸回りに回転可能なロータに対して径方向の外側に間隔をあけて配置されて前記中心軸回りの周方向に延び、前記径方向の外側に窪む収容溝を有したハウジングと、前記周方向に積層された複数の薄板を有し、前記径方向の外側の外周端部が前記収容溝に収容され、前記径方向の内側の内周端部が前記ハウジングから前記径方向の内側に延びて前記ロータの外周面に摺接可能とされたシール体と、前記収容溝内で前記ハウジング及び前記シール体のいずれか一方から他方に向けて前記中心軸が延びる軸方向に突出する凸部と、前記凸部に対して前記径方向の外側に配置され、前記ハウジングから及び前記シール体に向けて前記軸方向に突出する外周凸部と、を備え、前記シール体は、前記ロータと前記ハウジングとの間の環状空間を、前記軸方向の第一側の高圧領域と前記軸方向の第二側の低圧領域とに区画し、前記シール体は、前記収容溝内では、前記軸方向の第二側を向くシール体低圧側側面を有し、前記ハウジングは、前記収容溝の一部を形成し、前記シール体低圧側側面に対して前記軸方向に間隔をあけて対向する対向面と、前記低圧領域と前記収容溝の内部とを連通する連通部と、有し、前記凸部は、前記対向面又は前記シール体低圧側側面に形成され、前記対向面と前記シール体低圧側側面との間を、前記径方向の外側の第一空間部と前記径方向の内側の第二空間部とに区画し、前記連通部は、前記第一空間部と前記低圧領域とを連通し、前記シール体は、本体部と、前記シール体低圧側側面よりも前記径方向の外側で、前記本体部から前記軸方向の両側に突出する頭部とを有し、前記収容溝は、前記本体部が収容される本体部収容部と、前記本体部収容部に対して前記径方向の外側に形成されて前記頭部が収容される頭部収容部とを有し、前記頭部収容部は、前記径方向の外側を向いて、前記頭部が前記径方向の外側から接触可能な外周接触面を有し、前記外周凸部は、前記軸方向の第一側を向く第一面と、前記径方向の外側を向く第二面とを有し、前記第一面は、前記シール体低圧側側面に突き当たり、前記第二面は、前記外周接触面と連続する面を形成し、前記頭部に前記径方向の内側から突き当たっている。
【0008】
本開示に係る回転機械は、上記したような軸シール装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の軸シール装置及び回転機械によれば、シール体の摩耗を抑えつつ、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の実施形態に係る回転機械の概略構成図である。
図2】ロータの軸方向から見た軸シール装置を示す図である。
図3】本開示の第一実施形態における軸シール装置の断面図である。
図4】本開示の第一実施形態の第一変形例における軸シール装置の断面図である。
図5図4の軸シール装置のハウジングのA-A矢視図である。
図6】本開示の第一実施形態の第二変形例における軸シール装置の断面図である。
図7図6の軸シール装置のハウジングのB-B矢視図である。
図8】本開示の第二実施形態における軸シール装置の断面図である。
図9図8の軸シール装置のハウジングのC-C矢視図である。
図10】本開示の第二実施形態の変形例における軸シール装置の断面図である。
図11】本開示の第三実施形態における軸シール装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第一実施形態)
以下、添付図面を参照して、本開示による軸シール装置、回転機械を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこれらの実施形態のみに限定されるものではない。
(回転機械の構成)
図1に示すように、本実施形態における回転機械1は、例えばガスタービンである。回転機械1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン4と、ロータ5と、軸シール装置10Aとを有している。
【0012】
圧縮機2は、多量の空気を内部に取り入れて圧縮する。燃焼器3は、圧縮機2にて圧縮された空気に燃料を混合して燃焼させる。タービン4は、燃焼器3で発生させた燃焼ガスがその内部に導入される。タービン4は、導入された燃焼ガスの熱エネルギーを回転エネルギーに変換し、ロータ5を中心軸O回りに回動させる動力を発生する。ロータ5は、中心軸Oの延びる軸方向Daに円柱状に延びている。ロータ5は、タービン4の回動する動力の一部を圧縮機2に伝達し、圧縮機2を駆動する。
【0013】
より具体的には、タービン4は、動翼7bと、静翼6bと、ケーシング8と、を備えている。動翼7bは、ロータ5に対して径方向Drの外側Droに配置されている。タービン4は、動翼7bに燃焼ガスを吹き付けることで燃焼ガスの熱エネルギーを機械的な回転エネルギーに変換して動力を発生させる。ケーシング8は、軸方向Daに延びる筒状に形成されている。静翼6bは、ケーシング8に対して径方向Drの内側Driに配置されている。動翼7bと静翼6bとは、軸方向Daに交互に配列されている。動翼7bは、ロータ5の軸方向Daに流れる燃焼ガスの圧力を受けて中心軸O回りにロータ5を回転させる。ロータ5に与えられた回転エネルギーは、軸端から取り出されて利用される。
【0014】
なお、以下の説明の都合上、中心軸Oが延びている方向を軸方向Daとする。また、中心軸を基準としたロータ5や軸シール装置10Aにおける径方向を単に径方向Drとする。また、この径方向Drで中心軸Oに近づく側を径方向Drの内側Dri、この径方向Drで径方向Drの内側Driとは反対側を径方向Drの外側Droとする。また、中心軸Oを中心としたロータ5や軸シール装置10Aの周方向を単に周方向Dcとする。
【0015】
圧縮機2は、ロータ5を介してタービン4と同軸で接続されている。圧縮機2は、タービン4の回転を利用して外気を圧縮して圧縮空気を生成する。圧縮機2は、生成した圧縮空気を燃焼器3に供給する。圧縮機2は、タービン4と同様に、静翼6aと、動翼7aと、ケーシング9と、を備えている。動翼7aは、ロータ5に対して径方向Drの外側Droに配置されている。ケーシング9は、軸方向Daに筒状に延びている。静翼6aは、ケーシング9に対して径方向Drの内側Driに配置されている。動翼7aと静翼6aとは、ロータ5の軸方向Daに交互に配列されている。
【0016】
(軸シール装置の構成)
軸シール装置10Aは、高圧側から低圧側に漏れる流体の漏れ量を低減するために、ロータ5とロータ5を覆うステータとの間の環状空間をシールしている。タービン4においては、軸シール装置10Aは、高圧側から低圧側に漏れる燃焼ガスの漏れ量を低減するために配置されている。軸シール装置10Aは、タービン4において、タービン4の静翼6bとロータ5との間や、タービン4のケーシング8とロータ5との間に配置されている。圧縮機2においては、軸シール装置10Aは、高圧側から低圧側に漏れる圧縮空気の漏れ量を低減するために配置されている。軸シール装置10Aは、圧縮機2において、圧縮機2の静翼6aとロータ5との間や、圧縮機2のケーシング9とロータ5との間に配置されている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態の軸シール装置10Aは、円弧状に延びる複数(本実施形態では8つ)の分割体11を有している。軸シール装置10Aは、分割体11が周方向Dcに並ぶことで、中心軸O回りの周方向Dcに環状に形成されている。
【0018】
図3に示すように、軸シール装置10Aの各分割体11は、ハウジング30Aと、シール体20と、シム38と、側板40と、凸部50とを備えている。
【0019】
ハウジング30Aは、軸シール装置10Aにおいて外殻を構成している。ハウジング30Aは、ロータ5に対して径方向Drの外側Droに間隔をあけて配置されている。ハウジング30Aは、図1に示すように、回転機械1のステータである静翼6a,6b、動翼7a,7b及びケーシング8,9に対して径方向Drの内側Driに配置されている。ハウジング30Aは、静翼6a,6b、動翼7a,7b及びケーシング8,9の一部として形成されていてもよく、別部材として形成されていてもよい。
【0020】
図2に示すように、ハウジング30Aは、中心軸O回りの周方向Dcに延びている。図3に示すように、ハウジング30Aは、シール体20の一部を収容する収容溝31を有している。収容溝31は、ハウジング30Aにおいて径方向Drの内側を向く内周面30fから、径方向Drの外側Droに窪んでいる。収容溝31は、後述するシール体20の本体部22を収容する本体部収容部32と、シール体20の頭部23を収容する頭部収容部33と、を有している。
【0021】
本体部収容部32は、収容溝31において径方向Drの内側Driの空間を形成している。本体部収容部32は、ハウジング30Aの内周面30fで開口している。頭部収容部33は、本体部収容部32に対して径方向Drの外側Droの空間を形成している。頭部収容部33は、本体部収容部32と繋がっている。頭部収容部33は、本体部収容部32に対し、軸方向Daの両側に拡幅して形成されている。これにより、本体部収容部32及び頭部収容部33を備える収容溝31は、周方向Dcから見た際に、断面T字状の空間を形成している。
【0022】
シール体20は、リーフシールを構成する複数の薄板21を、周方向Dcに積層することで形成されている。複数の薄板21は、それぞれ金属板で形成されている。複数の薄板21は、周方向Dcに微小な隙間をあけて配置されている。各薄板21は、周方向Dc及び径方向に直交する面に沿って配置されている。軸方向Daから見た際に、各薄板21は、中心軸Oを中心とした放射方向(径方向Dr)に対し、傾いて配置されている。各薄板21は、径方向Drの外側Droから内側Driに向かって、周方向Dcの他方側から一方側に傾斜するように延びている。薄板21は、径方向Drの外側Droの端部で、例えば溶接により互いに接合されている。複数の薄板21から構成されるシール体20は、一つの分割体11において、全体として、周方向Dcに延び、軸方向Daから見た際に、円弧状に形成されている。
【0023】
シール体20は、本体部22と、頭部23と、を有している。本体部22は、周方向Dcから見た際に、軸方向Daに一定の幅寸法W1を有している。本体部22は、幅寸法W1よりも長く径方向Drに延びている。本体部22は、周方向Dcから見た際に、軸方向Daよりも径方向Drに長い長方形状をなしている。頭部23は、本体部22に対して径方向Drの外側Droに形成されている。頭部23は、本体部22と一体に形成されている。頭部23は、周方向Dcから見た際に、本体部22に対して軸方向Daの両側に突出している。頭部23は、軸方向Daにおける幅寸法W2が、本体部22の幅寸法W1よりも大きい。頭部23は、周方向Dcから見た際に、径方向Drよりも軸方向Daに長い長方形状をなしている。
【0024】
シール体20は、本体部22の径方向Drの外側Droの端部に、軸方向Daに窪む第一凹部24A及び第二凹部24Bを有している。本体部22の径方向Drの外側Droの端部は、本体部22と頭部23との境界に近い端部である。第一凹部24Aは、本体部22において軸方向Daの第一側Da1を向く面に形成されている。第一凹部24Aは、軸方向Daの第二側Da2に窪んで形成されている。第二凹部24Bは、本体部22において軸方向Daの第二側Da2を向く面に形成されている。第二凹部24Bは、軸方向Daの第一側Da1に窪んで形成されている。第二凹部24Bは、周方向Dcから見た際に、第一凹部24Aと径方向Drにおいて同じ位置に形成されている。したがって、本体部22は、周方向Dcから見た際に、第一凹部24A及び第二凹部24Bが形成され他領域のみで、軸方向Daの長さが幅寸法W1よりも短くなっている。
【0025】
このようなシール体20は、径方向Drの外側Droの外周端部20tが収容溝31に収容されている。外周端部20tは、頭部23の径方向の外側Droの端である。シール体20は、本体部22の大部分が本体部収容部32に収容され、頭部23が頭部収容部33に収容されている。シール体20は、本体部22の径方向Drの内側Driの内周端部20sが、ハウジング30Aの内周面30fから径方向Drの内側Driに突出している。内周端部20sは、本体部22の径方向の内側Driの端である。これにより、シール体20の内周端部20sは、ロータ5の外周面5fに摺接可能に配置されている。つまり、複数の薄板21の径方向Drの内側Driの端がロータ5の外周面5fに摺接可能に配置されている。
【0026】
シール体20は、ロータ5とハウジング30Aとの間の環状空間100を、軸方向Daの第一側Da1の高圧領域Hと、軸方向Daの第二側Da2の低圧領域Lとに区画するようにシールしている。高圧領域Hは、低圧領域Lに比べて圧力が高い領域である。なお、軸方向Daにおける高圧領域Hと低圧領域Lとの位置は、軸シール装置10Aが配置される位置によって異なる場合がある。したがって、軸シール装置10Aにおける軸方向Daの第一側Da1(シール体20に対して高圧領域Hが位置している側)及び第二側Da2(シール体20に対して低圧領域Lが位置している側)は、回転機械1を基準に見た際には、図3とは逆になる場合がある。
【0027】
本体部22は、収容溝31内において、軸方向Daの第一側Da1を向くシール体高圧側側面22fと、軸方向Daの第二側Da2を向くシール体低圧側側面22gと、を有している。なお、シール体高圧側側面22f及びシール体低圧側側面22gは、実際には、複数の薄板21の側面の集合した領域であり、一つの連続した面ではない。
【0028】
また、シール体20が収容されている収容溝31は、シール体低圧側側面22gに対して軸方向Daの第二側Da2に間隔をあけて対向する低圧側対向面(対向面)32gを有している。つまり、低圧側対向面32gは、軸方向Daの第一側Da1を向く面である。低圧側対向面32gにおける径方向Drの内側Driの端部32sは、ハウジング30Aにおいてロータ5に最も径方向Drで近い位置となるように、内周面30fから径方向Drの内側Driに突出した位置に配置されている。
【0029】
さらに、収容溝31は、シール体高圧側側面22fに対して軸方向Daの第一側Da1に間隔をあけて対向する高圧側対向面32fを有している。つまり、高圧側対向面32fは、軸方向Daの第二側Da2を向く面である。高圧側対向面32fにおける径方向Drの内側Driの端部32aは、ハウジング30Aにおいてロータ5に最も径方向Drで近い位置となるように、内周面30fから径方向Drの内側Driに突出した位置に配置されている。本実施形態では、高圧側対向面32fの端部32aは、低圧側対向面32gの端部32sと径方向Drにおいて同じ位置に配置されている。
【0030】
低圧側対向面32g及び高圧側対向面32fは、収容溝31の内周面の一部を形成する。より具体的には、低圧側対向面32g及び高圧側対向面32fは、本体部収容部32の一部を形成している。シール体20の本体部22は、収容溝31の低圧側対向面32g及び高圧側対向面32fの双方に対し、軸方向Daに隙間をあけて配置されている。シール体20において、頭部23は、シール体高圧側側面22f及びシール体低圧側側面22gよりも径方向Drの外側Droに形成されている。
【0031】
また、頭部23が収容される頭部収容部33は、径方向Drの外側Droを向く外周接触面33hを有している。頭部23は、頭部収容部33内において、外周接触面33hに径方向Drの外側Droから接触している。外周接触面33hは、本体部収容部32に対して軸方向Daの両側に拡がる部分に形成されている。つまり、外周接触面33hは、周方向Dcから見た際に、低圧側対向面32gの径方向Drの外側Droの端部から軸方向Daの第二側Da2に向かって延びている。
【0032】
シム38は、薄板状の部材である。シム38は、頭部23に対して径方向Drの外側Droに配置されている。シム38は、径方向Drが厚み方向となる向きで、頭部収容部33内に配置されている。シム38は、頭部23に対して径方向Drの外側Droに配置されている。シム38は、径方向Drに必要に応じて複数(本実施形態では、例えば5枚)が積層されている。シム38は、頭部収容部33内で、頭部23の径方向Drの外側Droへの移動を規制している。複数のシム38によって、シール体20は、径方向Drの外側Droに一定寸法以上移動することが規制されている。
【0033】
側板40は、シール体20に対して軸方向Daの第一側Da1に配置されている。本実施形態の側板40は、シール体20に対して軸方向Daの第一側Da1のみに、一枚だけ配置されている。側板40は、収容溝31内でシール体高圧側側面22fに沿って配置されている。側板40は、周方向Dc及び径方向Drに延びている。側板40における径方向Drの内側Driの端部40aは、高圧側対向面32fにおける径方向Drの内側Driの端部32aと、径方向Drでほぼ同じ位置に配置されている。側板40は、径方向Drの外側Droに、第一凹部24Aに係合する係合凸部41を有している。係合凸部41は、側板40において、軸方向Daの第二側Da2に突出する領域である。係合凸部41は、側板40において、径方向Drの外側Droの端部を含むように形成されている。
【0034】
凸部50は、ハウジング30A及びシール体20の間で、シール体20の軸方向Daの第二側Da2への移動を規制する。収容溝31内で、ハウジング30A及びシール体20のいずれか一方には、凸部50が形成されている。本実施形態において、凸部50は、例えば、ハウジング30Aの低圧側対向面32gに形成されている。凸部50は、低圧側対向面32gから、軸方向Daの第一側Da1に突出している。凸部50は、周方向Dcに延びている。凸部50は、周方向Dcから見た際に、低圧側対向面32gにおいて、径方向Drの内側Driの端部32sよりも径方向Drの外側Droに配置されている。凸部50は、周方向Dcから見た際に、側板40における径方向Drの内側Driの端部40aよりも径方向Drの外側Droに配置されている。したがって、凸部50は、シール体低圧側側面22gに突き当たることによって、シール体20の軸方向Daの第二側Da2への移動を規制している。
【0035】
なお、この凸部50は、シール体20に形成してもよい。その場合、凸部50は、シール体20のシール体低圧側側面22gに形成され、軸方向Daの第二側Da2に突出する。そして、凸部50は、低圧側対向面32gに突き当たることによって、シール体20の軸方向Daの第二側Da2への移動を規制することとなる。
【0036】
また、凸部50により、収容溝31内において、低圧側対向面32gとシール体低圧側側面22gとの間が、径方向Drの外側Droの第一空間部201と、径方向Drの内側Driの第二空間部202と、に区画されている。第一空間部201は、径方向Drの外側Droで、頭部収容部33と隣り合う空間である。第二空間部202は、径方向Drの内側Driで低圧領域Lと連通している空間である。
【0037】
ここで、第一空間部201の軸方向Daにおける寸法S1は、本実施形態では、例えば0.1~0.3mmと設定した。
【0038】
第二空間部202の軸方向Daにおける寸法S3は、第一空間部201の寸法S1に対し、例えば2.0倍~4.0倍とするのが好ましい。本実施形態では、寸法S3は、例えば0.2~0.6mmと設定した。
【0039】
また、第二空間部202の径方向Drにおける寸法S4は、軸シール装置10Aの大きさに関わらず、一定の値であることが好ましい。寸法S4は、例えば、設計値5.0mm程度とした場合、設計値に対して10~30%程度の増減する範囲に収まっていることが好ましい。したがって、本実施形態では、寸法S4は、例えば約2~8mmと設定した。
【0040】
また、第一空間部201の径方向Drにおける寸法S2は、本体部22の径方向Drの長さ(図3における本体部22と頭部23との接続位置から内周端部20sまでの長さ)に対して、70~90%程度であることが好ましい。また、径方向Drにおける寸法S4は、本体部22の径方向Drの長さに対して、10~30%程度であることが好ましい。
【0041】
ハウジング30Aは、低圧領域Lと収容溝31の内部とを連通する連通部60Aをさらに有している。連通部60Aは、第一空間部201と低圧領域Lとを連通している。本実施形態において、連通部60Aは、一端が低圧側対向面32gで開口し、他端が低圧領域Lに臨むハウジング30Aの外面で開口するよう形成された連通孔61を少なくとも一つ有している。連通孔61は、凸部50に対して径方向Drの外側Droで低圧側対向面32gと繋がっている。本実施形態において、連通孔61は、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かうにしたがって、径方向Drの内側Driに向かうように傾斜して延びている。連通孔61は、低圧側対向面32gに対して一つのみ形成されている。なお、連通孔61は、傾斜して延びた形状であることに限定されるものではない。連通孔61は、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって中心軸Oと平行に延びていてもよい。
【0042】
(作用効果)
上記構成の軸シール装置10A及び回転機械1では、図3に示すように、高圧領域Hであるシール体20に対して軸方向Daの第一側Da1の領域に、高圧の作動流体が存在している。そして、低圧領域Lであるシール体20に対して軸方向Daの第二側の領域は、高圧領域Hに比べて圧力の低い状態となっている。したがって、シール体20を構成する薄板21同士の僅かな隙間を通して、軸方向Daにおいて高圧領域Hから、薄板21同士の間を通って低圧領域Lへ向かう作動流体の流れが生じる。
【0043】
さらに、凸部50により、低圧側対向面32gとシール体低圧側側面22gとの間が、径方向Drの外側Droの第一空間部201と径方向Drの内側Driの第二空間部202とに区画される。第二空間部202は、低圧領域Lと繋がっており、低圧領域Lと同等の低圧となっている。そして、連通部60Aにより、低圧領域Lと第一空間部201とが連通することで、第一空間部201も、低圧領域Lの同等の低圧となる。このため、第一空間部201及び第二空間部202は、軸方向Daでシール体20を挟んで位置する高圧領域Hに対して、圧力差が生じている。これにより、高圧領域Hから低圧領域Lに向かう流れとして、第一空間部201に向かう作動流体の第一の流れF1と、第二空間部202に向かう作動流体の第二の流れF2が生じる。
【0044】
ここで、高圧領域Hから第一空間部201に向かう作動流体の第一の流れF1は、第二の流れF2に比べて、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かうにしたがって、径方向Drの外側Droに向かように斜めに流れることになる。この第一の流れF1によって、シール体20がロータ5の外周面5fに対して、径方向Drの外側Droにわずかに浮くように押圧される。これにより、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fと強く接触してしまうことが抑えられる。したがって、シール体20の摩耗が抑えられる。
【0045】
さらに、第二空間部202は、ロータ5の外周面5fに近い位置で低圧領域Lと繋がるように形成される。そのため、高圧領域Hから第二空間部202に向かう作動流体の第二の流れF2は、第一の流れF1に比べて、ロータ5の外周面5fに沿うように、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に比較的真っすぐ流れることになる。径方向Drの外側Droに向かって斜めに流れる第一の流れF1と、第一の流れF1とは異なる方向へ向かう第二の流れF2とによって、シール体20の径方向Drの外側Droへ浮上する力を十分に確保することができる。これにより、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fと強く接触してしまうことがより安定して抑えられる。したがって、シール体20の摩耗がより効果的に抑えられる。
【0046】
また、凸部50がシール体20に突き当たることで、シール体20が軸方向Daの第二側Da2に移動することが抑えられる。これにより、シール体20が、収容溝31内で姿勢を崩すことが抑えられる。その結果、収容溝31でシール体20が傾いてしまって、高圧領域Hから収容溝31内を通って第一空間部201と繋がるような隙間が形成されることが抑えられる。したがって、高圧領域Hから収容溝31内でシール体20を頭部収容部33から回り込んで第一空間部201に至る作動流体の流れが生じことが抑えられる。その結果、保持リングや低圧サイドシール等の別の部材を備えず、軸シール装置10Aを構成する部品点数を抑えた場合であっても、シール体20の周囲での作動流体の流れを適切に維持できる。これらにより、シール体20の摩耗を抑えつつ、部品点数を削減して低コスト化を図ることが可能となる。さらに、このような軸シール装置10Aを備えることで、シール体20の摩耗を抑えつつ、低コスト化を図ることができる回転機械1を提供することが可能となる。
【0047】
さらに、凸部50は、シール体高圧側側面22fに沿って配置された側板40の径方向Drの内側Driの端部40aに対して、径方向Drの外側Droに配置されている。これにより、第一空間部201は、側板40の端部40aよりも、径方向Drの外側Droに形成されることになる。そのため、入口である高圧領域Hに対して、第一空間部201は、大きく径方向Drの外側Droに位置することになる。したがって、高圧領域Hから第一空間部201に向かう作動流体の第一の流れF1は、より径方向Drの外側Droに向かうような流れとなる。その結果、第一の流れF1によるシール体20をロータ5の外周面5fに対して浮かす力が強くなる。これにより、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fと強く接触してしまうことがより安定して抑えられる。したがって、シール体20の摩耗がより効果的に抑えられる。
【0048】
また、凸部50は、低圧側対向面32gに形成されている。これにより、シール体低圧側側面22gが、低圧側対向面32gに形成された凸部50に突き当たることで、シール体20の軸方向Daの第二側Da2への移動が規制される。したがって、収容溝31内でシール体20の姿勢が崩れるのを抑えることができる。また、凸部50をハウジング30Aに形成することで、シール体20を構成する複数の薄板21の形状が複雑化することを抑えることができる。これにより、シール体20を低コストで製作することができる。
【0049】
また、連通部60Aは、一端が低圧側対向面32gで開口し、他端が低圧領域Lに臨むハウジング30Aの外面で開口するよう形成された連通孔61を有している。これにより、第一空間部201は、連通孔61を通して、低圧領域Lに連通する。したがって、第一空間部201内の圧力を、単純な構造で、低圧領域Lと同等とすることができる。
【0050】
また、シール体20の頭部23が、頭部収容部33の外周接触面33hに径方向Drの外側Droから接触している。シール体20は、凸部50だけでなく、頭部23によっても、収容溝31内での姿勢が維持される。そのため、収容溝31でシール体20が傾いてしまって、高圧領域Hから収容溝31内を通って第一空間部201と繋がるような隙間が形成されることが抑えられる。さらに、頭部23が、頭部収容部33の外周接触面33hに接触していることで、高圧領域Hから、頭部収容部33を通ってきた高い圧力の作動流体が第一空間部201に流入することも抑えられる。これらにより、高圧領域Hから収容溝31内でシール体20を頭部収容部33から回り込んで第一空間部201に至る作動流体の流れが生じことがより安定して抑えられる。
【0051】
(第一実施形態の第一変形例)
なお、上記第一実施形態において、連通部60Aとして、一つの連通孔61のみを有するように構成されたが、連通部の構成はこのような構造に限定されるものではない。
【0052】
例えば、図4及び図5に示すように、軸シール装置10Bのハウジング30Bは、連通部60Bとして、複数の連通孔62を備えている。各連通孔62は、例えば、軸方向Daに延びることで、一端が低圧側対向面32gで開口し、他端が低圧領域Lに臨むハウジング30Aの外面で開口している。この場合、図5に示すように、連通孔62は、凸部50に対して径方向Drの外側Droで、周方向Dcに等間隔をあけて形成されている。なお、連通孔62は、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かって中心軸Oと平行に延びた形状であることに限定されるものではない。複数の連通孔62は、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かうにしたがって、径方向Drの内側Driに向かうように傾斜して延びていてもよい。
【0053】
これにより、第一空間部201は、一端が低圧側対向面32gで開口し、他端が低圧領域Lに臨むハウジング30Aの外面で開口する複数の連通孔62を通して、低圧領域Lに繋がる。したがって、上記第一実施形態と同様、第一空間部201内の圧力を、低圧領域Lと同等とすることができる。さらに、複数の連通孔62よって低圧領域Lに繋がることで、一つの連通孔61で低圧領域Lと繋がる場合に比べて、第一空間部201内での圧力のばらつきが生じることを抑えられる。これにより、第一空間部201内を均一な圧力状態で低圧とすることができる。
【0054】
(第一実施形態の第二変形例)
また、図6及び図7に示すように、軸シール装置10Cのハウジング30Cは、連通部60Cとして、連通溝63を備えている。連通溝63は、凸部50を径方向Drに貫通し、第一空間部201と第二空間部202とを連通するよう形成されている。このような連通溝63は、周方向Dcに間隔をあけて複数形成されている。
【0055】
これにより、第一空間部201は、凸部50を径方向Drに貫通する連通溝63を通して、第二空間部202に連通する。第二空間部202は、低圧領域Lと繋がっている。したがって、第一空間部201は、第二空間部202を介して、間接的に低圧領域Lと繋がる。したがって、上記第一実施形態と同様、第一空間部201内の圧力を、低圧領域Lと同等とすることができる。さらに、凸部50から窪む溝として連通溝63を形成することで、連通孔61や62のように、ハウジング30Aを貫通する貫通孔を形成するよりも加工が容易となる。したがって、連通部60Cをより簡易的に形成することができる。
【0056】
さらに、複数の連通溝63よって低圧領域Lに繋がることで、一つの連通溝63で低圧領域Lと繋がる場合に比べて、第一空間部201内での圧力のばらつきが生じることを抑えられる。これにより、第一空間部201内を均一な圧力状態で低圧とすることができる。
【0057】
なお、連通溝63は、周方向Dcに間隔をあけて複数形成される構造に限定されるものではない。連通溝63は、凸部50に対して一つのみが形成されていてもよい。
【0058】
(第二実施形態)
次に、本開示に係る軸シール装置10Dの第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第二実施形態では、外周凸部70を有する点で第一実施形態と異なっている。
【0059】
図8及び図9に示すように、第二実施形態の軸シール装置10Dのハウジング30Dは、外周凸部70をさらに備えている。外周凸部70は、凸部50に対して径方向Drの外側Droに配置されている。外周凸部70は、低圧側対向面32gにおいて、径方向Drの外側Droの端部に形成されている。外周凸部70は、低圧側対向面32gから軸方向Daの第一側Da1に突出して形成されている。外周凸部70は、低圧側対向面32gに対して凸部50と同じ突出量で軸方向Daに突出している。外周凸部70は、軸方向Daの第一側Da1を向く第一面70aを有している。第一面70aは、シール体20のシール体低圧側側面22gに突き当たっている。また、外周凸部70は、径方向Drの外側Droを向く第二面70bを有している。第二面70bは、シール体20の頭部23に径方向Drの内側Driから突き当たっている。つまり、第二面70bは、外周接触面33hと連続する面を形成している。
【0060】
第二実施形態において、第一空間部201は、凸部50の径方向Drの外側Droかつ外周凸部70の径方向Drの内側Driに形成されている。
【0061】
また、図9に示すように、軸シール装置10Dを構成する複数の分割体11において、周方向Dcで隣り合う分割体11同士の間には、継ぎ目Jが形成されている。継ぎ目Jは、軸方向Daから見た際に、径方向Drに傾いて直線状に延びている。実施形態において、隣り合う分割体11同士の継ぎ目Jは、径方向Drの内側Driから外側Droに向かって周方向Dcの一方側から他方側に傾斜して延びている。
【0062】
軸シール装置10Dは、軸方向Daから見た際、隣り合う分割体11の継ぎ目Jと重なる領域に、継ぎ目凸部90が形成されている。継ぎ目凸部90は、周方向Dcで隣り合う分割体11のうち、一方の分割体(第一分割体)11Aと、他方の分割体(第二分割体)11Bとにそれぞれ形成されている。一方の分割体11Aに形成された継ぎ目凸部90A、他方の分割体11Bに形成された継ぎ目凸部90Bは、それぞれ、径方向Drの内側Driから外側Droに向かって継ぎ目Jに沿って延びている。継ぎ目凸部90は、凸部50、外周凸部70と同様、低圧側対向面32gから軸方向Daの第一側Da1に向けて突出している。ここで、凸部50、外周凸部70、及び継ぎ目凸部90は、低圧側対向面32gから軸方向Daの第一側Da1への突出寸法が同一であることが好ましい。また、軸方向Daから見た際に、凸部50と継ぎ目凸部90との接続部分や、外周凸部70及び継ぎ目凸部90の接続部分には、滑らかな曲面を形成するR部95が形成されていてもよい。
【0063】
なお、継ぎ目凸部90が形成されている場合に、凸部50及び外周凸部70の両方が形成された構造であることに限定されるものではない。例えば、継ぎ目凸部90が形成されていても、外周凸部70が形成されておらず、凸部50のみが形成された構造とされていてもよい。
【0064】
上記のような構成では、凸部50と外周凸部70とが、シール体低圧側側面22gに突き当たる。これにより、シール体20は、凸部50だけでなく、凸部50に対して径方向Drの外側Droに配置された外周凸部70によっても、収容溝31内で姿勢が維持される。径方向Drに離れた凸部50及び外周凸部70の二か所で姿勢が維持されることで、シール体20を収容溝31内でより安定した姿勢で維持することができる。
【0065】
また、外周凸部70が、シール体低圧側側面22gに突き当たる第一面70aと、シール体20の頭部23に径方向Drの内側Driから突き当たる第二面70bと、を有している。このため、高圧領域Hから頭部収容部33を通ってからシール体20を回り込むように第一空間部201に至る作動流体を第一面70a及び第二面70bの二か所で塞き止めることができる。したがって、第一空間部201を低圧の状態に安定して維持できる。
【0066】
また、分割体11同士の継ぎ目Jの部分に継ぎ目凸部90が形成されている。これにより、周方向Dcで隣り合う分割体11のそれぞれにおいて、第一空間部201は、分割体11の継ぎ目Jの部分に繋がらない状態(連通しない状態)となる。これにより、第一空間部201内の作動流体が継ぎ目Jからハウジング30Dの外部に漏れてしまうことが抑えられる。その結果、第一空間部201内の圧力状態が、分割体11の継ぎ目Jによって変動してしまうことが抑えられる。
【0067】
また、凸部50と継ぎ目凸部90との接続部分や、外周凸部70及び継ぎ目凸部90の接続部分には、滑らかな曲面を形成するR部95が形成されている。その結果、凸部50及び外周凸部70に対して継ぎ目凸部90を形成する際の工具の制約が少なくできる。その結果、凸部50、外周凸部70、及び継ぎ目凸部90が一体に形成しやすくなる。
【0068】
(第二実施形態の変形例)
なお、上記第二実施形態において、外周凸部70は、シール体低圧側側面22gに突き当たる位置に形成されていたが、外周凸部の構造はこのような構造に限定されるものではない。
【0069】
例えば、図10に示すように、軸シール装置10Eのハウジング30Eにおいて、外周凸部71を、シール体20の第二凹部24B内に挿入するようにしてもよい。この場合、シール体20が軸方向Daの第二側Da2に移動した場合、外周凸部71の先端部が第二凹部24B内でシール体20の本体部22に突き当たる。
【0070】
(第三実施形態)
次に、本開示に係る軸シール装置の第三実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態においては、上記第一実施形態及び第二実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第三実施形態では、付勢部材80をさらに備える点で第一実施形態と異なっている。
【0071】
図11に示すように、第三実施形態の軸シール装置10Fは、ハウジング30F内に、シール体20を径方向Drの内側Driに付勢する付勢部材80をさらに備える。付勢部材80は、収容溝31の頭部収容部33の内部に配置されている。付勢部材80は、例えば、コイルスプリングからなる付勢部材本体81と、付勢部材本体81を固定する固定部材82とを備えている。
【0072】
付勢部材本体81は、頭部収容部33内で開口するように、頭部収容部33に対して径方向Drに窪むようにハウジング30Fに形成された挿入孔30h内に収められている。固定部材82は、挿入孔30hに形成された雌ネジ部にねじ込まれることによって、ハウジング30Fに締着固定されている。付勢部材本体81は、固定部材82とシム38との間に圧縮状態で挟み込まれることで、ハウジング30Fに対して、シール体20を径方向Drの内側Driに付勢している。
【0073】
このような付勢部材80を備えることにより、シール体20は、ロータ5の外周面5fに向かって径方向Drの内側Driに押された状態となる。その結果、シール体20を収容溝31に収容した際に、シール体20の内周端部20sとロータ5の外周面5fとが接触した際の反力で、シール体20が径方向Drの外側Droに過度に移動してしまうことが抑えられる。これにより、圧縮機2やタービン4の運転中に、シール体20の内周端部20sとロータ5の外周面5fとの間の隙間が過度に大きくなってしまうことを抑制できる。したがって、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fに適切に摺接し、シール性を良好に発揮した状態を、安定して維持することができる。
【0074】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0075】
また、実施形態では、回転機械1の例としては、ガスタービンを挙げたが、これに限られない。回転機械1としては、蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の大型流体機械等が挙げられる。
【0076】
<付記>
各実施形態に記載の軸シール装置10A~10F及び回転機械1は、例えば以下のように把握される。
【0077】
(1)第1の態様に係る軸シール装置10A~10Fは、中心軸O回りに回転可能なロータ5に対して径方向Drの外側Droに間隔をあけて配置されて前記中心軸O回りの周方向Dcに延び、前記径方向Drの外側Droに窪む収容溝31を有したハウジング30A~30Fと、前記周方向Dcに積層された複数の薄板21を有し、前記径方向Drの外側Droの外周端部20tが前記収容溝31に収容され、前記径方向Drの内側Driの内周端部20sが前記ハウジング30A~30Fから前記径方向Drの内側Driに延びて前記ロータ5の外周面5fに摺接可能とされたシール体20と、前記収容溝31内で前記ハウジング30A~30F及び前記シール体20のいずれか一方から他方に向けて前記中心軸Oが延びる軸方向Daに突出する凸部50と、を備え、前記シール体20は、前記ロータ5と前記ハウジング30A~30Fとの間の環状空間100を、前記軸方向Daの第一側Da1の高圧領域Hと前記軸方向Daの第二側Da2の低圧領域Lとに区画し、前記シール体20は、前記収容溝31内では、前記軸方向Daの第二側Da2を向くシール体低圧側側面22gを有し、前記ハウジング30A~30Fは、前記収容溝31の一部を形成し、前記シール体低圧側側面22gに対して前記軸方向Daに間隔をあけて対向する対向面32gと、前記低圧領域Lと前記収容溝31の内部とを連通する連通部60Aと、有し、前記凸部50は、前記対向面32g又は前記シール体低圧側側面22gに形成され、前記対向面32gと前記シール体低圧側側面22gとの間を、前記径方向Drの外側Droの第一空間部201と前記径方向Drの内側Driの第二空間部202とに区画し、前記連通部60Aは、前記第一空間部201と前記低圧領域Lとを連通している。
【0078】
この軸シール装置10A~10Fでは、凸部50により、対向面32gとシール体低圧側側面22gとの間が、径方向Drの外側Droの第一空間部201と径方向Drの内側Driの第二空間部202とに区画される。第二空間部202は、低圧領域Lと繋がっており、低圧領域Lと同等の低圧となっている。そして、連通部60Aにより、低圧領域Lと第一空間部201とが連通することで、第一空間部201も、低圧領域Lの同等の低圧となる。このため、第一空間部201及び第二空間部202は、軸方向Daでシール体20を挟んで位置する高圧領域Hに対して、圧力差が生じている。これにより、高圧領域Hから低圧領域Lに向かう流れとして、第一空間部201に向かう作動流体の第一の流れF1と、第二空間部202に向かう作動流体の第二の流れF2が生じる。
【0079】
ここで、高圧領域Hから第一空間部201に向かう作動流体の第一の流れF1は、第二の流れF2に比べて、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に向かうにしたがって、径方向Drの外側Droに向かように斜めに流れることになる。この第一の流れF1によって、シール体20がロータ5の外周面5fに対して、径方向Drの外側Droにわずかに浮くように押圧される。これにより、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fと強く接触してしまうことが抑えられる。したがって、シール体20の摩耗が抑えられる。
【0080】
さらに、第二空間部202は、ロータ5の外周面5fに近い位置で低圧領域Lと繋がるように形成される。そのため、高圧領域Hから第二空間部202に向かう作動流体の第二の流れF2は、第一の流れF1に比べて、ロータ5の外周面5fに沿うように、軸方向Daの第一側Da1から第二側Da2に比較的真っすぐ流れることになる。径方向Drの外側Droに向かって斜めに流れる第一の流れF1と、第一の流れF1とは異なる方向へ向かう第二の流れF2とによって、シール体20の径方向Drの外側Droへ浮上する力を十分に確保することができる。これにより、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fと強く接触してしまうことがより安定して抑えられる。したがって、シール体20の摩耗がより効果的に抑えられる。
【0081】
また、凸部50によって、シール体20が軸方向Daの第二側Da2に移動することが抑えられる。これにより、シール体20が、収容溝31内で姿勢を崩すことが抑えられる。その結果、収容溝31でシール体20が傾いてしまって、高圧領域Hから収容溝31内を通って第一空間部201と繋がるような隙間が形成されることが抑えられる。したがって、高圧領域Hから収容溝31内でシール体20を回り込んで第一空間部201に至る作動流体の流れが生じことが抑えられる。その結果、保持リングや低圧サイドシール等の別の部材を備えず、軸シール装置10Aを構成する部品点数を抑えた場合であっても、シール体20の周囲での作動流体の流れを適切に維持できる。これらにより、シール体20の摩耗を抑えつつ、部品点数を削減して低コスト化を図ることが可能となる。
【0082】
(2)第2の態様に係る軸シール装置10A~10Fは、(1)の軸シール装置10A~10Fであって、前記シール体20に対して前記軸方向Daの第一側Da1に配置された側板40をさらに備え、前記シール体20は、前記軸方向Daの第一側Da1を向くシール体高圧側側面22fを有し、前記側板40は、前記収容溝31内で前記シール体高圧側側面22fに沿って配置され、前記凸部50は、前記側板40における前記径方向Drの内側Driの端部40aよりも前記径方向Drの外側Droに配置されている。
【0083】
これにより、入口である高圧領域Hに対して、第一空間部201は、大きく径方向Drの外側Droに位置することになる。したがって、高圧領域Hから第一空間部201に向かう作動流体の第一の流れF1は、より径方向Drの外側Droに向かうような流れとなる。その結果、第一の流れF1によるシール体20をロータ5の外周面5fに対して浮かす力が強くなる。これにより、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fと強く接触してしまうことがより安定して抑えられる。したがって、シール体20の摩耗がより効果的に抑えられる。
【0084】
(3)第3の態様に係る軸シール装置10A~10Fは、(1)又は(2)の軸シール装置10A~10Fであって、前記凸部50は、前記対向面32gに形成されて前記軸方向Daの第一側Da1に突出し、前記シール体低圧側側面22gが突き当たることで前記シール体20の前記軸方向Daの第二側Da2への移動を規制する。
【0085】
これにより、シール体低圧側側面22gが、対向面32gに形成された凸部50に突き当たることで、シール体20の軸方向Daの第二側Da2への移動が規制される。したがって、収容溝31内でシール体20の姿勢が崩れるのを抑えることができる。また、凸部50をハウジング30Aに形成することで、シール体20を構成する複数の薄板21の形状が複雑化することを抑えることができる。これにより、シール体20を低コストで製作することができる。
【0086】
(4)第4の態様に係る軸シール装置10A、10Bは、(1)から(3)の何れか一つの軸シール装置10A、10Bであって、前記連通部60A、60Bは、一端が前記対向面32gで開口し、他端が前記低圧領域Lに臨む前記ハウジング30A、30Bの外面で開口するよう形成された連通孔61、62を有する。
【0087】
これにより、第一空間部201は、連通孔61を通して、低圧領域Lに連通する。したがって、第一空間部201内の圧力を、単純な構造で、低圧領域Lと同等とすることができる。
【0088】
(5)第5の態様に係る軸シール装置10Bは、(4)の軸シール装置10Bであって、前記連通孔62は、前記周方向に離れて複数形成されている。
【0089】
このように、複数の連通孔62よって低圧領域Lに繋がることで、一つの連通孔61で低圧領域Lと繋がる場合に比べて、第一空間部201内での圧力のばらつきが生じることを抑えられる。これにより、第一空間部201内を均一な圧力状態で低圧とすることができる。
【0090】
(6)第6の態様に係る軸シール装置10Cは、(1)から(4)の何れか一つの軸シール装置10Cであって、前記連通部60Cは、前記凸部50を前記径方向Drに貫通し、前記第一空間部201と前記第二空間部202とを連通するよう形成された連通溝63を有する。
【0091】
これにより、第一空間部201内の圧力を、低圧領域Lと同等とすることができる。さらに、凸部50から窪む溝として連通溝63を形成することで、ハウジング30Aを貫通する貫通孔を形成するよりも加工が容易となる。したがって、連通部60Cをより簡易的に形成することができる。
【0092】
(7)第7の態様に係る軸シール装置10Cは、(6)の軸シール装置10Cであって、連通溝63は、前記周方向Dcに離れて複数形成されている。
【0093】
このように、複数の連通溝63よって低圧領域Lに繋がることで、一つの連通溝63で低圧領域Lと繋がる場合に比べて、第一空間部201内での圧力のばらつきが生じることを抑えられる。これにより、第一空間部201内を均一な圧力状態で低圧とすることができる。
【0094】
(8)第8の態様に係る軸シール装置10D、10Eは、(1)から(7)の何れか一つの軸シール装置10D、10Eであって、前記凸部50に対して前記径方向Drの外側Droに配置され、前記対向面32g及び前記シール体低圧側側面22gのいずれか一方から他方に前記軸方向Daに突出する外周凸部70、71をさらに備える。
【0095】
これにより、シール体20は、凸部50だけでなく、凸部50に対して径方向Drの外側Droに配置された外周凸部70、71によっても、収容溝31内で姿勢が維持される。径方向Drに離れた凸部50及び外周凸部70、71の二か所で姿勢が維持されることで、シール体20を収容溝31内でより安定した姿勢で維持することができる。
【0096】
(9)第9の態様に係る軸シール装置10A~10Fは、(1)から(8)の何れか一つの軸シール装置10A~10Fであって、前記シール体20は、本体部22と、前記シール体低圧側側面22gよりも前記径方向Drの外側Droで、前記本体部22から前記軸方向Daの両側に突出する頭部23とを有し、前記収容溝31は、前記本体部22が収容される本体部収容部32と、前記本体部収容部32に対して前記径方向Drの外側Droに形成されて前記頭部23が収容される頭部収容部33とを有し、前記頭部収容部33は、前記径方向Drの外側Droを向いて、前記頭部23が前記径方向Drの外側Droから接触可能な外周接触面33hを有している。
【0097】
これにより、シール体20の頭部23が、頭部収容部33の外周接触面33hに径方向Drの外側Droから接触している。シール体20は、凸部50だけでなく、頭部23によっても、収容溝31内での姿勢が維持される。そのため、収容溝31でシール体20が傾いてしまって、高圧領域Hから収容溝31内を通って第一空間部201と繋がるような隙間が形成されることが抑えられる。さらに、頭部23が、頭部収容部33の外周接触面33hに接触していることで、高圧領域Hから、頭部収容部33を通ってきた高い圧力の作動流体が第一空間部201に流入することも抑えられる。これらにより、高圧領域Hから収容溝31内でシール体20を頭部収容部33から回り込んで第一空間部201に至る作動流体の流れが生じことがより安定して抑えられる。
【0098】
(10)第10の態様に係る軸シール装置10Fは、(1)から(9)の何れか一つの軸シール装置10Fであって、前記収容溝31の内部に配置され、前記ハウジング30Fに対して前記シール体20を前記径方向Drの内側Driに付勢する付勢部材80をさらに備える。
【0099】
これにより、シール体20は、ロータ5の外周面5fに向かって径方向Drの内側Driに押された状態となる。その結果、高圧領域Hから第一空間部201に向かって流れる作動流体の第一の流れF1によって、シール体20が径方向Drの外側Droに過度に移動してしまうことが抑えられる。したがって、シール体20の内周端部20sがロータ5の外周面5fに適切に摺接し、シール性を良好に発揮した状態を、安定して維持することができる。
【0100】
(11)第11の態様に係る軸シール装置10Dは、(1)から(10)の何れか一つの軸シール装置10Dであって、前記ハウジング30D及び前記シール体20の少なくとも一方は、前記周方向Dcに複数に分割された分割体11からなり、前記軸方向Daから見た際に、前記周方向Dcで隣り合う前記分割体11の継ぎ目と重なる領域に、前記対向面32g及び前記シール体低圧側側面22gの少なくとも一方に形成され、前記対向面32g及び前記シール体低圧側側面22gのいずれか一方から他方に向けて前記軸方向Daに突出し、前記継ぎ目に沿って前記径方向Drに延びる継ぎ目凸部90をさらに備える。
【0101】
これにより、周方向Dcで隣り合う分割体11のそれぞれにおいて、第一空間部201は、分割体11の継ぎ目Jの部分に繋がらない状態(連通しない状態)となる。これにより、第一空間部201内の作動流体が継ぎ目Jからハウジング30Dの外部に漏れてしまうことが抑えられる。その結果、第一空間部201内の圧力状態が、分割体11の継ぎ目Jによって変動してしまうことが抑えられる。
【0102】
(12)第12の態様に係る回転機械1は、(1)から(11)の何れか一つの軸シール装置10A~10F、を備える。
【0103】
回転機械の例としては、ガスタービン、蒸気タービン、圧縮機、水車、冷凍機、ポンプ等の大型流体機械を挙げられる。
【0104】
これにより、上記したような軸シール装置10A~10Fを備えることで、シール体20の摩耗を抑えつつ、低コスト化を図ることができる回転機械1を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示の軸シール装置及び回転機械によれば、シール体の摩耗を抑えつつ、低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0106】
1…回転機械
2…圧縮機
3…燃焼器
4…タービン
5…ロータ
5f…外周面
6a、6b…静翼
7a、7b…動翼
8、9…ケーシング
10A、10B、10C、10D、10E、10F…軸シール装置
11、11A、11B…分割体
20…シール体
20s…内周端部
20t…外周端部
21…薄板
22…本体部
22f…シール体高圧側側面
22g…シール体低圧側側面
23…頭部
24A…第一凹部
24B…第二凹部
30A、30B、30C、30D、30E、30F…ハウジング
30f…内周面
30h…挿入孔
31…収容溝
32…本体部収容部
32a…(高圧側対向面の)端部
32f…高圧側対向面
32g…低圧側対向面(対向面)
32s…(低圧側対向面の)端部
33…頭部収容部
33h…外周接触面
38…シム
40…側板
40a…(側板の)端部
41…係合凸部
50…凸部
60A、60B、60C…連通部
61、62…連通孔
63…連通溝
70…外周凸部
70a…第一面
70b…第二面
71…外周凸部
80…付勢部材
81…付勢部材本体
82…固定部材
90、90A、90B…継ぎ目凸部
95…R部
100…環状空間
201…第一空間部
202…第二空間部
Da…軸方向
Da1…第一側
Da2…第二側
Dc…周方向
Dr…径方向
Dri…内側
Dro…外側
H…高圧領域
L…低圧領域
J…継ぎ目
O…中心軸
S1…寸法
S2…寸法
S3…寸法
S4…寸法
W1…幅寸法
W2…幅寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11