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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】エレベータ及びその対面式位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/02 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B66B3/02 R
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2024508887
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(86)【国際出願番号】 JP2022013471
(87)【国際公開番号】W WO2023181165
(87)【国際公開日】2023-09-28
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】横井 彰敏
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】井上 甚
(72)【発明者】
【氏名】水田 崇聖
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 佳正
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-294363(JP,A)
【文献】国際公開第2008/114529(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/111096(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/035368(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0109026(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 3/00- 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路を昇降する昇降体、及び
前記昇降体の位置を検出する対面式位置検出装置
を備え、
前記対面式位置検出装置は、
前記昇降路内の設定領域に対応する位置に配置されている磁石と、
前記昇降体に設けられ、前記磁石を検出する検出器と、
前記検出器からの信号を処理し、前記昇降体が前記設定領域に位置しているか否かを判定する信号処理回路と
を有しており、
前記検出器は、
前記磁石を検出する第1センサと、
前記第1センサに対して前記昇降体の昇降方向へずらして配置されており、前記磁石を検出する第2センサと
を有しており、
前記信号処理回路は、前記第1センサと前記第2センサとの両方が前記磁石に対向しているときに、前記昇降体が前記設定領域に位置していると判定するエレベータ。
【請求項2】
前記第1センサの出力値をV1、前記第2センサの出力値をV2とし、a1、n1、m1、a2、n2、及びm2をそれぞれ定数としたとき、
前記信号処理回路は、
V1-n1/m1×V2≧a1と、
V2-n2/m2×V1≧a2とが成立するかどうかに基づいて、前記昇降体が前記設定領域に位置しているか否かを判定する請求項1記載のエレベータ。
【請求項3】
b1及びb2をそれぞれ定数としたとき、
前記信号処理回路は、
V1≧b1とV2≧b2とが成立するかどうかに基づいて、前記昇降体が前記設定領域に位置しているか否かを判定する請求項2記載のエレベータ。
【請求項4】
前記信号処理回路は、ソフトウェアを用いないロジック回路により構成されている請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記磁石は、ラバー磁石である請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記磁石は、複数の分割体に分割されており、前記複数の分割体を同一平面に並べて構成されている請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項7】
前記昇降体は、かごである請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項8】
前記かごは、かごドアを有しており、
前記設定領域は、前記かごドアの開放が許可される戸開領域である請求項7記載のエレベータ。
【請求項9】
前記設定領域は、前記かごのリレベル領域である請求項7記載のエレベータ。
【請求項10】
前記かごの絶対位置を検出する絶対位置検出装置、及び
前記絶対位置検出装置からの信号に基づいて、前記かごの運転を制御する制御装置
をさらに備え、
前記制御装置は、前記対面式位置検出装置からの信号に基づいて、前記絶対位置検出装置によって検出された前記絶対位置を補正する請求項7から請求項9までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項11】
乗場に設けられている乗場敷居
をさらに備え、
前記かごは、かご敷居を有しており、
前記磁石は、前記乗場敷居に対して取り付けられており、
前記検出器は、前記かご敷居に対して取り付けられている請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項12】
前記昇降路に設けられているトーガード
をさらに備え、
前記かごは、エプロンを有しており、
前記磁石は、前記トーガードに設けられており、
前記検出器は、前記エプロンに設けられている請求項7から請求項10までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項13】
前記対面式位置検出装置は、
前記第1センサからの信号と前記第2センサからの信号とに基づいて、前記磁石に対する前記検出器の絶対位置を算出する絶対位置算出回路
をさらに有している請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載のエレベータ。
【請求項14】
昇降路内の設定領域に対応する位置に設けられる磁石、
前記昇降路を昇降する昇降体に設けられ、前記磁石を検出する検出器、及び
前記検出器からの信号を処理し、前記昇降体が前記設定領域に位置しているか否かを判定する信号処理回路
を備え、
前記検出器は、
前記磁石を検出する第1センサと、
前記第1センサに対して前記昇降体の昇降方向へずらして配置され、前記磁石を検出する第2センサと
を有しており、
前記信号処理回路は、前記第1センサと前記第2センサとの両方が前記磁石に対向しているときに、前記昇降体が前記設定領域に位置していると判定するエレベータの対面式位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベータ及びその対面式位置検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のエレベータの位置検出装置では、金属板からなる被検出体が昇降路に設けられている。かごには、2つの渦電流検出器が設けられている。2つの渦電流検出器は、かごの昇降方向に互いにずらして配置されている。演算装置は、2つの渦電流検出器からの出力値を比較し、比較結果に基づいて、位置検出信号を出力する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-255999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のエレベータの位置検出装置では、被検出体として金属板が用いられている。しかし、昇降路内には、被検出体以外にも金属製の構造物が設置されている。このため、金属製の構造物が被検出体として誤検出される恐れがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、昇降体の位置の誤検出を抑制することができるエレベータ及びその対面式位置検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベータは、昇降路を昇降する昇降体、及び昇降体の位置を検出する対面式位置検出装置を備え、対面式位置検出装置は、昇降路内の設定領域に対応する位置に設けられている磁石と、昇降体に設けられ、磁石を検出する検出器と、検出器からの信号を処理し、昇降体が設定領域に位置しているか否かを判定する信号処理回路とを有しており、検出器は、磁石を検出する第1センサと、第1センサに対して昇降体の昇降方向へずらして配置されており、磁石を検出する第2センサとを有しており、信号処理回路は、第1センサと第2センサとの両方が磁石に対向しているときに、昇降体が設定領域に位置していると判定する。
本開示に係るエレベータの対面式位置検出装置は、昇降路内の設定領域に対応する位置に設けられる磁石、昇降路を昇降する昇降体に設けられ、磁石を検出する検出器、及び検出器からの信号を処理し、昇降体が設定領域に位置しているか否かを判定する信号処理回路を備え、検出器は、磁石を検出する第1センサと、第1センサに対して昇降体の昇降方向へずらして配置され、磁石を検出する第2センサとを有しており、信号処理回路は、第1センサと第2センサとの両方が磁石に対向しているときに、昇降体が設定領域に位置していると判定する。
【発明の効果】
【0007】
本開示のエレベータ及びその対面式位置検出装置によれば、昇降体の位置の誤検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1によるエレベータを示す概略の構成図である。
図2図1の対面式位置検出装置を示す斜視図である。
図3図2の磁石を第1センサ及び第2センサが通過する際における第1センサ及び第2センサの出力を示す説明図である。
図4図3の磁石を第1センサ及び第2センサが通過する際における第1センサの出力と第2センサの出力との関係を示すグラフである。
図5】第1センサの出力と、第2センサの出力と、かごが設定領域に位置していると信号処理回路が判定する領域との関係を示すグラフである。
図6図2の信号処理回路に含まれる第1回路を示す回路図である。
図7図2の信号処理回路に含まれる第2回路を示す回路図である。
図8図2の信号処理回路に含まれる第3回路を示す回路図である。
図9図2の信号処理回路に含まれる第4回路を示す回路図である。
図10図2の信号処理回路に含まれる第5回路を示す回路図である。
図11図3の磁石の長さ寸法を大きくした場合における第1センサ及び第2センサの出力を示す説明図である。
図12図11の磁石を第1センサ及び第2センサが通過する際における第1センサの出力と第2センサの出力との関係を示すグラフである。
図13】実施の形態1による対面式位置検出装置の第1設置例を示す斜視図である。
図14】実施の形態1による対面式位置検出装置の第2設置例を示す側面図である。
図15】実施の形態1による対面式位置検出装置の第3設置例を示す斜視図である。
図16】実施の形態2によるエレベータを示す概略の構成図である。
図17】実施の形態3による対面式位置検出装置を示す側面図である。
図18】実施の形態4による対面式位置検出装置を示す斜視図である。
図19】第1センサの出力と、第2センサの出力と、絶対位置検出領域との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1によるエレベータを示す概略の構成図である。図1において、昇降路1の上には、機械室2が設けられている。機械室2には、巻上機3、そらせ車4、及び制御装置5が設置されている。
【0010】
巻上機3は、駆動シーブ6、図示しない巻上機モータ、及び図示しない巻上機ブレーキを有している。巻上機モータは、駆動シーブ6を回転させる。巻上機ブレーキは、駆動シーブ6の静止状態を保持する。また、巻上機ブレーキは、駆動シーブ6の回転を制動する。
【0011】
駆動シーブ6及びそらせ車4には、懸架体7が巻き掛けられている。懸架体7としては、複数本のロープ又は複数本のベルトが用いられている。懸架体7の第1端部には、かご8が接続されている。懸架体7の第2端部には、釣合おもり9が接続されている。
【0012】
かご8及び釣合おもり9は、懸架体7により吊り下げられており、駆動シーブ6を回転させることにより昇降路1内を昇降する。制御装置5は、巻上機3を制御することにより、かご8の運行を制御する。
【0013】
昇降路1内には、図示しない一対のかごガイドレールと、図示しない一対の釣合おもりガイドレールとが設置されている。一対のかごガイドレールは、かご8の昇降を案内する。一対の釣合おもりガイドレールは、釣合おもり9の昇降を案内する。
【0014】
かご8は、かごドア10を有している。かごドア10は、かご出入口を開閉する。複数の乗場11には、乗場ドア12がそれぞれ設けられている。各乗場ドア12は、対応する乗場出入口を開閉する。また、各乗場ドア12は、かご8の着床時にかごドア10に連動して開閉動作する。
【0015】
対面式位置検出装置20は、複数の磁石21、検出器22、及び信号処理回路23を有している。また、対面式位置検出装置20は、かご8の位置を検出する。
【0016】
複数の磁石21は、昇降路1に設けられている。また、複数の磁石21は、かご8の昇降方向、即ち上下方向に互いに間隔をおいて配置されている。各磁石21は、昇降路1内の設定領域に対応する位置に配置されている。
【0017】
設定領域としては、戸開領域、リレベル領域等が挙げられる。戸開領域は、かごドア10の開放が許可される領域である。リレベル領域は、かご8の着床時に、かご8の上下方向への変位を補正する領域である。通常、リレベル領域は、戸開領域よりも狭い範囲である。
【0018】
検出器22及び信号処理回路23は、かご8に設けられている。実施の形態1における昇降体は、かご8である。検出器22は、複数の磁石21のそれぞれを検出する。
【0019】
信号処理回路23は、検出器22からの信号を処理し、かご8が複数の設定領域のそれぞれに位置しているか否かを判定する。信号処理回路23による判定結果を含む信号は、制御装置5に送られる。
【0020】
図2は、図1の対面式位置検出装置20を示す斜視図である。但し、図2において、信号処理回路23は、ブロックにより示されている。また、図2では、複数の磁石21のうちの1つのみが示されている。
【0021】
各磁石21は、バックプレート24に固定されている。即ち、各磁石21は、バックプレート24を介して、昇降路1内に設置されている。
【0022】
検出器22は、第1センサ25と、第2センサ26とを有している。第1センサ25及び第2センサ26は、互いに独立して各磁石21の磁界を検出する。
【0023】
第2センサ26は、第1センサ25に対して、かご8の昇降方向へずらして配置されている。この例では、第2センサ26は、第1センサ25に対して間隔をおいて、第1センサ25の真上に配置されている。即ち、第1センサ25と第2センサ26とは、同一直線上に配置されている。
【0024】
第1センサ25の下端から第2センサ26の上端までの距離は、かご8の昇降方向における各磁石21の寸法よりも小さい。これにより、複数の設定領域のうちの1つにかご8が位置しているときには、第1センサ25と第2センサ26との両方が、その設定領域に対応する磁石21に対向している。
【0025】
信号処理回路23は、第1センサ25と第2センサ26との両方がいずれかの磁石21に対向しているときに、その磁石21に対応する設定領域にかご8が位置していると判定する。
【0026】
各磁石21における磁極の向きは、第1センサ25及び第2センサ26と対向する方向であり、図2のZ軸に平行な方向である。即ち、各磁石21は、Z軸に平行な方向へ磁力を発生している。
【0027】
この例では、Z軸に平行な方向は、かご8の奥行方向である。また、X軸に平行な方向は、かご8の昇降方向、即ち上下方向である。また、Y軸に平行な方向は、かご8の幅方向である。
【0028】
第1センサ25及び第2センサ26のそれぞれは、各磁石21と対向する方向に感度を持っている。第1センサ25及び第2センサ26のそれぞれとしては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、又は磁気インピーダンス素子を用いることができる。
【0029】
図3は、図2の磁石21を第1センサ25及び第2センサ26が通過する際における第1センサ25及び第2センサ26の出力を示す説明図である。図3の上段には、磁石21と第1センサ25と第2センサ26とが示されている。図3の中段には、磁石21に対する第1センサ25の位置と、第1センサ25の出力との関係が示されている。図3の下段には、磁石21に対する第2センサ26の位置と、第2センサ26の出力との関係が示されている。
【0030】
図3において、かご8の昇降方向における磁石21の長さ寸法は、L1=2×X1である。また、第1センサ25の中心と第2センサ26の中心と間の距離は、2×pである。中段のグラフ、及び下段のグラフにおいて、Zは、第1センサ25及び第2センサ26と、磁石21との間の距離である。また、ΔZ2>ΔZ1である。
【0031】
図4は、図2の磁石21を第1センサ25及び第2センサ26が通過する際における第1センサ25の出力と第2センサ26の出力との関係を示すグラフである。
【0032】
なお、0<X2-ΔX<X2+ΔX<X1である。
【0033】
図3及び図4に示すように、X=±X2のとき、第1センサ25及び第2センサ26と、磁石21との間の距離Zによらず、第1センサ25の出力と第2センサ26の出力との関係がそれぞれ線形になる。
【0034】
図5は、第1センサ25の出力と、第2センサ26の出力と、かご8が設定領域に位置していると信号処理回路23が判定する領域との関係を示すグラフである。
【0035】
図5において、互いに平行な複数の斜線を付した領域R1は、かご8が設定領域に位置していると信号処理回路23が判定する領域である。領域R1は、X=-X2とX=X2との間の領域であって、第1センサ25の出力がb1以上、かつ第2センサ26の出力がb2以上の領域である。
【0036】
第1センサ25の出力値をV1、第2センサ26の出力値をV2としたとき、信号処理回路23は、以下の式1、式2、式3、及び式4の全てが成立するときに、かご8が設定領域に位置していると判定する。
【0037】
V1-n1/m1×V2≧a1 ・・・式1
【0038】
V2-n2/m2×V1≧a2 ・・・式2
【0039】
V1≧b1 ・・・式3
【0040】
V2≧b2 ・・・式4
【0041】
但し、a1、n1、m1、a2、n2、m2、b1、b2は、それぞれ定数であり、n1>m1、n2>m2である。また、n1/m1、及びn2/m2は、それぞれ例えば1/2である。
【0042】
式3及び式4によって、第1センサ25及び第2センサ26のそれぞれの出力値が小さく、不安定な領域が判定領域から除外される。
【0043】
また、信号処理回路23は、かご8が設定領域に位置していると判定した場合、出力をON、即ちHighとする。
【0044】
このように、信号処理回路23は、式1と式2とが成立するかどうかに基づいて、かご8が設定領域に位置しているか否かを判定する。また、信号処理回路23は、式3と式4とが成立するかどうかに基づいて、かご8が設定領域に位置しているか否かを判定する。
【0045】
図6は、図2の信号処理回路23に含まれる第1回路を示す回路図である。第1回路は、上記の式1に対応している。また、第1回路は、第1分圧回路31a、第1差分回路32a、第1閾値発生回路33a、及び第1閾値判定回路34aを有している。
【0046】
第1分圧回路31aには、第2センサ26からの出力が入力される。第1分圧回路31aは、第2センサ26からの出力にn1/m1を乗じて出力する。
【0047】
第1差分回路32aには、第1センサ25からの出力と、第1分圧回路31aからの出力とが入力される。第1差分回路32aは、第1センサ25からの出力と、第1分圧回路31aからの出力との差分を出力する。
【0048】
第1閾値発生回路33aは、閾値として、定数a1を発生する。第1閾値判定回路34aには、第1閾値発生回路33aからの出力と、第1差分回路32aからの出力とが入力される。第1閾値判定回路34aは、第1差分回路32aからの出力が定数a1以上であるかどうかに応じた信号を、式1出力として出力する。
【0049】
図7は、図2の信号処理回路23に含まれる第2回路を示す回路図である。第2回路は、上記の式2に対応している。また、第2回路は、第2分圧回路31b、第2差分回路32b、第2閾値発生回路33b、及び第2閾値判定回路34bを有している。
【0050】
第2分圧回路31bには、第1センサ25からの出力が入力される。第2分圧回路31bは、第1センサ25からの出力にn2/m2を乗じて出力する。
【0051】
第2差分回路32bには、第2センサ26からの出力と、第2分圧回路31bからの出力とが入力される。第2差分回路32bは、第2センサ26からの出力と、第2分圧回路31bからの出力との差分を出力する。
【0052】
第2閾値発生回路33bは、閾値として、定数a2を発生する。第2閾値判定回路34bには、第2閾値発生回路33bからの出力と、第2差分回路32bからの出力とが入力される。第2閾値判定回路34bは、第2差分回路32bからの出力が定数a2以上であるかどうかに応じた信号を、式2出力として出力する。
【0053】
図8は、図2の信号処理回路23に含まれる第3回路を示す回路図である。第3回路は、上記の式3に対応している。また、第3回路は、第3閾値発生回路35aと、第3閾値判定回路36aとを有している。
【0054】
第3閾値発生回路35aは、閾値として、定数b1を発生する。第3閾値判定回路36aには、第3閾値発生回路35aからの出力と、第1センサ25からの出力とが入力される。第3閾値判定回路36aは、第1センサ25からの出力が定数b1以上であるかどうかに応じた信号を、式3出力として出力する。
【0055】
図9は、図2の信号処理回路23に含まれる第4回路を示す回路図である。第4回路は、上記の式4に対応している。また、第4回路は、第4閾値発生回路35bと、第4閾値判定回路36bとを有している。
【0056】
第4閾値発生回路35bは、閾値として、定数b2を発生する。第4閾値判定回路36bには、第4閾値発生回路35bからの出力と、第2センサ26からの出力とが入力される。第4閾値判定回路36bは、第2センサ26からの出力が定数b2以上であるかどうかに応じた信号を、式4出力として出力する。
【0057】
図10は、図2の信号処理回路23に含まれる第5回路を示す回路図である。第5回路は、AND回路37を有している。AND回路37には、式1出力、式2出力、式3出力、及び式4出力が入力される。AND回路37は、式1、式2、式3、及び式4の全てが満たされているかどうかに応じた信号を、信号処理回路出力として出力する。
【0058】
信号処理回路23は、第1回路、第2回路、第3回路、第4回路、及び第5回路の組み合わせにより構成されている。即ち、信号処理回路23は、ソフトウェアを用いないロジック回路により構成されている。
【0059】
なお、第1分圧回路31a及び第2分圧回路31bは、それぞれ抵抗を用いたハーフブリッジ回路により代用することもできる。
【0060】
また、第1閾値発生回路33a、第2閾値発生回路33b、第3閾値発生回路35a、及び第4閾値発生回路35bのそれぞれにおける閾値は、抵抗を用いたハーフブリッジ回路によって電源電圧を分圧して生成することもできる。
【0061】
また、要求される位置精度に対して、第1センサ25、第2センサ26、及び信号処理回路23のばらつきが小さいならば、m1=m2、n1=n2、a1=a2、b1=b2であってもよい。
【0062】
図11は、図3の磁石21の長さ寸法を大きくした場合における第1センサ25及び第2センサ26の出力を示す説明図である。
【0063】
図3における磁石21の長さ寸法は、L1=2×X1であるのに対して、図11における磁石21の長さ寸法は、L2=2×X3=2×(X1+c)である。
【0064】
図12は、図11の磁石21を第1センサ25及び第2センサ26が通過する際における第1センサ25の出力と第2センサ26の出力との関係を示すグラフである。図12において、X4=X2+cである。また、式1~式4における各定数は、磁石21の長さ寸法L1=2×X1の場合と同じ値である。
【0065】
このように、磁石21の長さ寸法が異なる場合であっても、同様の信号処理回路23によって、かご8が設定領域に位置しているかどうかを判定することができる。
【0066】
図13は、実施の形態1による対面式位置検出装置20の第1設置例を示す斜視図である。複数の乗場11には、それぞれ乗場敷居13が設けられている。各乗場敷居13は、対応する乗場ドア12の下方に配置されている。
【0067】
かご8は、かご敷居14を有している。かご敷居14は、かごドア10の下方に配置されている。かご8の着床時、かご敷居14は、着床した階の乗場敷居13に対向する。
【0068】
各乗場敷居13には、バックプレート24を介して磁石21が取り付けられている。 かご敷居14には、支持部材27を介して、検出器22が取り付けられている。
【0069】
このように、磁石21は、乗場敷居13に対して取り付けることができ、検出器22は、かご敷居14に対して取り付けることができる。
【0070】
図14は、実施の形態1による対面式位置検出装置20の第2設置例を示す側面図である。昇降路1内には、複数の平板状のトーガード15が設けられている。各トーガード15の上端は、図14では省略されているが、対応する乗場敷居13の下部に取り付けられている。
【0071】
かご8は、平板状のエプロン16を有している。エプロン16の上端は、図14では省略されているが、かご敷居14の下部に取り付けられている。かご8の着床時、エプロン16は、着床した階のトーガード15に対向する。
【0072】
磁石21は、トーガード15に取り付けられている。検出器22は、エプロン16に取り付けられている。
【0073】
図15は、実施の形態1による対面式位置検出装置20の第3設置例を示す斜視図である。第3設置例では、1つのエレベータに2組の対面式位置検出装置20が設けられている。
【0074】
バックプレート24には、長さ寸法が互いに異なる2つの磁石21が取り付けられている。長さ寸法が大きい磁石21は、戸開領域に対応している。長さ寸法が小さい磁石21は、リレベル領域に対応している。
【0075】
かご8には、2つの検出器22が搭載されている。各検出器22は、対応する磁石21に対向する。
【0076】
このようなエレベータ及びその対面式位置検出装置20では、対面式位置検出装置20における被検出体として、磁石21が用いられている。そして、検出器22は、第1センサ25及び第2センサ26を有している。また、信号処理回路23は、第1センサ25と第2センサ26との両方が磁石21に対向しているときに、かご8が設定領域に位置していると判定する。
【0077】
このため、昇降路1内の金属製の構造物が被検出体として誤検出されることがなく、かご8の位置の誤検出を抑制することができる。
【0078】
また、磁石21は金属製の構造物を避けて設置する必要がないため、磁石21及び検出器22の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0079】
また、磁石21に水が付着することによる誤検出も抑制することができる。このため、例えば非常用エレベータにも、対面式位置検出装置20を容易に適用することができる。
【0080】
また、第1センサ25及び第2センサ26として、それぞれ直流式センサを用いることにより、電磁ノイズの影響による誤検出も抑制することができる。
【0081】
また、埃の付着による誤検出、及び外乱光の影響による誤検出も抑制することができる。
【0082】
また、かご8の水平方向への揺れによる検出位置ずれの発生を抑制することができる。
【0083】
また、信号処理回路23は、上記の式1と式2とが成立するかどうかに基づいて、かご8が設定領域に位置しているか否かを判定する。このため、かご8が設定領域に位置していることを、より精度良く検出することができる。
【0084】
また、信号処理回路23は、式3と式4とが成立するかどうかに基づいて、かご8が設定領域に位置しているか否かを判定する。このため、かご8が設定領域に位置していることを、より精度良く検出することができる。
【0085】
また、信号処理回路23は、ソフトウェアを用いないロジック回路により構成されている。このため、信号処理回路23を、故障の少ない簡便な回路とすることができる。
【0086】
また、検出器22は、かご8に設けられている。このため、かご8の位置を直接精度良く検出することができる。
【0087】
また、戸開領域を設定領域とすることにより、戸開領域を精度良く検出することができる。
【0088】
また、リレベル領域を設定領域とすることにより、リレベル領域を精度良く検出することができる。
【0089】
また、各磁石21を乗場敷居13に対して取り付け、検出器22をかご敷居14に対して取り付けることにより、各磁石21の位置決め、及び検出器22の位置決めを容易に行うことができる。
【0090】
また、かご8の幅方向における中央において、各磁石21を乗場敷居13に取り付け、検出器22をかご敷居14に取り付けることにより、懸架体7の引っ掛かり、及びかご8の傾きによる検出精度の低下を抑制することができる。
【0091】
また、磁石21をトーガード15に取り付け、検出器22をエプロン16に取り付けることにより、図13に示されているバックプレート24及び支持部材27を省略することができる。
【0092】
なお、検出器22は、かご出入口の上方に設置されているかごドア桁に設置されてもよい。この場合、各磁石21は、乗場出入口の上方に設置されている乗場ドア桁に設置されてもよい。これにより、検出器22の設置を容易に行うことができる。また、検出器22への配線を容易に設置することができる。
【0093】
実施の形態2.
次に、図16は、実施の形態2によるエレベータを示す概略の構成図である。実施の形態2のエレベータは、絶対位置検出装置17を備えている。絶対位置検出装置17は、かご8の絶対位置を検出する。制御装置5は、絶対位置検出装置17からの信号に基づいて、かご8の運転を制御する。
【0094】
絶対位置検出装置17は、スケール18と、絶対位置センサ19とを有している。スケール18は、昇降路1内に設けられている。また、スケール18は、かご8の昇降行程の全体に渡って連続している。スケール18の材料としては、例えば磁気テープが用いられている。
【0095】
絶対位置センサ19は、かご8に搭載されている。また、絶対位置センサ19は、スケール18に対向している。また、絶対位置センサ19は、スケール18を検出することにより、かご8の絶対位置を検出する。絶対位置センサ19からの絶対位置検出信号は、制御装置5に送られる。
【0096】
制御装置5は、対面式位置検出装置20からの信号に基づいて、絶対位置検出装置17によって検出されたかご8の絶対位置を補正する。
【0097】
実施の形態2における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0098】
このようなエレベータでは、対面式位置検出装置20からの信号に基づいて、絶対位置検出装置17によって検出されたかご8の絶対位置が補正される。このため、例えば、温度変化によるスケール18の伸縮によって生じる絶対位置のずれを、適正に補正することができる。
【0099】
かご8の昇降行程が長い場合、例えば、絶対位置検出装置17により検出される絶対位置が5mm程度ずれることがある。これに対して、対面式位置検出装置20からの信号によって絶対位置を補正することにより、絶対位置のずれを±1mm程度まで抑えることができる。
【0100】
実施の形態3.
次に、図17は、実施の形態3による対面式位置検出装置20を示す側面図である。実施の形態3の磁石21は、複数の分割体に分割されており、複数の分割体を同一平面に並べて構成されている。
【0101】
この例では、磁石21は、第1分割体41と第2分割体42とに分割されている。第1分割体41と第2分割体42とは、バックプレート24上に上下方向に並べて配置されている。また、第1分割体41と第2分割体42との間には、隙間が設けられてい。この隙間によって、第1分割体41及び第2分割体42の膨張を吸収することができる。かご8の昇降方向における隙間の寸法は、例えば3mm~5mmである。
【0102】
第1分割体41の上端は、上端固定具43によってバックプレート24に固定されている。第2分割体42の下端は、下端固定具44によってバックプレート24に固定されている。
【0103】
これによって、第1分割体41及び第2分割体42の伸縮に対して、かご8の昇降方向における磁石21全体の範囲の変化が抑制されている。
【0104】
また、実施の形態3の磁石21は、ラバー磁石である。即ち、第1分割体41及び第2分割体42は、それぞれラバー磁石により構成されている。
【0105】
実施の形態3における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0106】
このようなエレベータでは、磁石21がラバー磁石であるため、磁石21を適正なサイズに容易に切断することができる。これにより、設定領域の種類に対応した様々な長さの磁石21を容易に製造することができる。
【0107】
また、磁石21が複数の分割体に分割されているため、分割体の数を増加させることにより、設定領域の長さ寸法を容易に大きくすることができる。
【0108】
また、隣り合う分割体の間に隙間を設けることにより、各分割体の膨張を吸収することができる。
【0109】
なお、磁石21は、かご8の昇降方向以外の方向に分割されていてもよい。
【0110】
また、各分割体は、必ずしもラバー磁石でなくてもよい。
【0111】
また、隣り合う分割体の間には、必ずしも隙間が設けられていなくてもよい。
【0112】
実施の形態4.
次に、図18は、実施の形態4による対面式位置検出装置20を示す斜視図である。実施の形態4による対面式位置検出装置20は、実施の形態1と同様の構成に加えて、絶対位置算出回路45を有している。但し、図18において、信号処理回路23及び絶対位置算出回路45は、ブロックにより示されている。また、図18では、複数の磁石21のうちの1つのみが示されている。
【0113】
絶対位置算出回路45は、第1センサ25からの信号と第2センサ26からの信号とに基づいて、各磁石21に対する検出器22の絶対位置を算出する。絶対位置算出回路45によって算出された絶対位置を含む信号は、制御装置5に送られる。
【0114】
図19は、図18の磁石21を第1センサ25及び第2センサ26が通過する際における第1センサ25の出力と、第2センサ26の出力と、絶対位置検出領域R2との関係を示すグラフである。絶対位置検出領域R2は、絶対位置算出回路45によって絶対位置を算出可能な領域である。
【0115】
絶対位置検出領域R2においては、第1センサ25の出力と、第2センサ26の出力と、磁石21に対する検出器22の絶対位置とは、一意に決まる。絶対位置算出回路45には、第1センサ25の出力と、第2センサ26の出力と、磁石21に対する検出器22の絶対位置との関係を示す絶対位置マップが予め記憶されている。
【0116】
絶対位置算出回路45は、第1センサ25の出力と、第2センサ26の出力と、絶対位置マップとに基づいて、磁石21に対する検出器22の絶対位置を算出する。
【0117】
実施の形態4における他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0118】
このようなエレベータでは、磁石21に対する検出器22の絶対位置が算出される。これにより、かご8の絶対位置を検出することもでき、他の絶対位置検出装置によって検出されたかご8の絶対位置と比較することにより、他の絶対位置検出装置の異常の有無を監視することができる。このため、他の絶対位置検出装置の健全性確認を作業員が行う手間を軽減することができる。
【0119】
なお、実施の形態1~4は、適宜組み合わせられてもよい。
【0120】
また、1つの設定領域に対して2組の対面式位置検出装置20を適用することにより、2重系のシステムが構成されてもよい。
【0121】
また、信号処理回路23は、かご8以外に設けられてもよい。例えば、信号処理回路23は、制御装置5内に設けられてもよい。
【0122】
また、磁石21の数は、設定領域の数に応じて変更可能であり、1つであっても、2つ以上であってもよい。
【0123】
また、昇降体は、釣合おもり9であってもよい。
【0124】
また、エレベータ全体のレイアウトは、図1のレイアウトに限定されるものではない。例えば、ローピング方式は、2:1ローピング方式であってもよい。
【0125】
また、エレベータは、機械室レスエレベータ、ダブルデッキエレベータ、ワンシャフトマルチカー方式のエレベータ等であってもよい。ワンシャフトマルチカー方式は、上かごと、上かごの真下に配置された下かごとが、それぞれ独立して共通の昇降路を昇降する方式である。
【符号の説明】
【0126】
1 昇降路、5 制御装置、8 かご(昇降体)、10 かごドア、11 乗場、13 乗場敷居、14 かご敷居、15 トーガード、16 エプロン、17 絶対位置検出装置、20 対面式位置検出装置、21 磁石、22 検出器、23 信号処理回路、25 第1センサ、26 第2センサ、41 第1分割体、42 第2分割体、45 絶対位置算出回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19