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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】接合方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/005 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B23K1/005 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024522789
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2022021369
(87)【国際公開番号】W WO2023228310
(87)【国際公開日】2023-11-30
【審査請求日】2024-04-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小川 翔平
(72)【発明者】
【氏名】矢野 佑樹
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-539616(JP,A)
【文献】特開2008-177240(JP,A)
【文献】特開昭63-43791(JP,A)
【文献】特開2019-130584(JP,A)
【文献】特開2017-051955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材の上面に接合材を配置し、
前記接合材の上面に第2の部材を配置し、
前記第1の部材の温度と前記第2の部材の温度とを測定可能に、温度測定部を配置し、
前記第2の部材にレーザービームを照射しつつ、前記温度測定部で前記第1の部材の温度と前記第2の部材の温度とを測定し、
測定された前記第2の部材の温度が第1のしきい値以上となった場合に、前記レーザービームの出力を低下させ、
前記第2の部材の温度が前記第1のしきい値以上となった後、測定された前記第1の部材の温度が第2のしきい値以上となった場合に、前記レーザービームの出力を停止させる、
接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合方法であり、
前記レーザービームの出力を停止させることが、前記第2の部材の温度が上限設定値以上になる前に前記第1の部材の温度が前記第2のしきい値以上になった場合に、前記レーザービームの出力を停止させることであり、
前記上限設定値が、前記第1のしきい値よりも高い温度である、
接合方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合方法であり、
前記第1のしきい値および前記第2のしきい値が、前記接合材の液相線温度である、
接合方法。
【請求項4】
請求項1または2に記載の接合方法であり、
前記第1の部材の前記上面の一部に、第1の黒化処理が施され、
前記第2の部材の上面の少なくとも一部に、第2の黒化処理が施され、
前記第1の部材の前記上面に前記接合材を配置することが、前記第1の部材の前記上面のうちの前記第1の黒化処理が施されていない領域に、前記接合材を配置することであり、
前記温度測定部で前記第1の部材の温度と前記第2の部材の温度とを測定することが、前記温度測定部で前記第1の部材の前記第1の黒化処理が施された前記上面の温度と前記第2の部材の前記第2の黒化処理が施された前記上面の温度とを測定することである、
接合方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接合方法であり、
前記第2の黒化処理が、前記第2の部材の前記上面の一部のみに施される、
接合方法。
【請求項6】
請求項1または2に記載の接合方法であり、
前記第2の部材の上面に、凹部が形成され、
前記レーザービームが、前記凹部に照射される、
接合方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の接合方法であり、
前記第2の部材に、開口が形成され、
前記レーザービームが、前記開口を介して前記接合材に直接照射される、
接合方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の接合方法であり、
前記第2の部材に前記レーザービームを照射する前に、前記第2の部材を前記接合材および前記第1の部材に対して押し付ける、
接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願明細書に開示される技術は、接合技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1においては、レーザービームの照射によって線材が加熱され、さらに、その熱伝導によってはんだ付けが行われている。
【0003】
また、赤外線温度検出器を使って、レーザービームの照射を受けて加熱された線材の温度を検出し、検出された温度があらかじめ設定された温度と一致するように、レーザービームの照射出力が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭63-043791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、赤外線温度検出器を使って線材の温度を検出し、検出された線材の温度に基づいてレーザービームの照射出力を制御している。この場合、線材のレーザービームが照射される面と、当該面に対向して配置されたはんだの接合面との間の接触熱抵抗によって、上記の面間の熱伝導がばらつく。その結果として、はんだ付けのでき栄えがばらつくことがある。
【0006】
また、レーザービームが照射される材料の熱容量が十分に大きい場合、レーザービームで加熱しても材料が十分に昇温されず、接合が安定しにくい。これに対し、レーザービームの照射出力を上げると材料の温度が上がりすぎて、レーザービームが照射される面の周辺における熱に弱い部品(たとえば、半導体素子または樹脂モールド部品など)が損傷してしまう場合がある。また、急激かつ局所的な温度上昇によってレーザービームが照射される面の金属が溶融し、スパッタと呼ばれる金属屑が周囲に飛散する場合がある。その場合には、レーザービームが照射される面の周辺における部品が金属屑によって損傷したり、金属屑によって絶縁箇所がショートしたりしてしまうことがある。
【0007】
本願明細書に開示される技術は、以上に記載されたような問題を鑑みてなされたものであり、接合のばらつきを抑えて、安定性の高い接合を得るための技術である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願明細書に開示される技術の第1の態様である接合方法は、第1の部材の上面に接合材を配置し、前記接合材の上面に第2の部材を配置し、前記第1の部材の温度と前記第2の部材の温度とを測定可能に、温度測定部を配置し、前記第2の部材にレーザービームを照射しつつ、前記温度測定部で前記第1の部材の温度と前記第2の部材の温度とを測定し、測定された前記第2の部材の温度が第1のしきい値以上となった場合に、前記レーザービームの出力を低下させ、前記第2の部材の温度が前記第1のしきい値以上となった後、測定された前記第1の部材の温度が第2のしきい値以上となった場合に、前記レーザービームの出力を停止させる。
【発明の効果】
【0009】
本願明細書に開示される技術の少なくとも第1の態様によれば、レーザービームの照射による加熱で、第1の部材および第2の部材の温度状態を温度測定部で測定し、温度状態に応じてレーザービームの出力を適切に制御することで、過剰な入熱を避けて耐熱性が低い周辺部材を損傷させずに、安定した接合部を得ることができる。
【0010】
また、本願明細書に開示される技術に関連する目的と、特徴と、局面と、利点とは、以下に示される詳細な説明と添付図面とによって、さらに明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示すフローチャートである。
図2】本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。
図3】本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。
図4】本実施の形態に関する接合方法の工程の他の例を示す図である。
図5】本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。
図6】本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。
図7】本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示すフローチャートである。
図8】本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付される図面を参照しながら実施の形態について説明する。以下の実施の形態では、技術の説明のために詳細な特徴なども示されるが、それらは例示であり、実施の形態が実施可能となるためにそれらすべてが必ずしも必須の特徴ではない。
【0013】
なお、図面は概略的に示されるものであり、説明の便宜のため、適宜、構成の省略、または、構成の簡略化などが図面においてなされるものである。また、異なる図面にそれぞれ示される構成などの大きさおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されるものではなく、適宜変更され得るものである。また、断面図ではない平面図などの図面においても、実施の形態の内容を理解することを容易にするために、ハッチングが付される場合がある。
【0014】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0015】
また、本願明細書に記載される説明において、ある構成要素を「備える」、「含む」または「有する」などと記載される場合、特に断らない限りは、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0016】
また、本願明細書に記載される説明において、「第1の」または「第2の」などの序数が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態の内容はこれらの序数によって生じ得る順序などに限定されるものではない。
【0017】
また、本願明細書に記載される説明において、「上」、「下」、「左」、「右」、「側」、「底」、「表」または「裏」などの特定の位置または方向を意味する用語が使われる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上使われるものであり、実施の形態が実際に実施される際の位置または方向とは関係しないものである。
【0018】
また、本願明細書に記載される説明において、「…の上面」または「…の下面」などと記載される場合、対象となる構成要素の上面自体または下面自体に加えて、対象となる構成要素の上面または下面に他の構成要素が形成された状態も含むものとする。すなわち、たとえば、「Aの上面に設けられるB」と記載される場合、AとBとの間に別の構成要素「C」が介在することを妨げるものではない。
【0019】
<第1の実施の形態>
以下、本実施の形態に関する接合方法について説明する。
【0020】
<接合方法の構成について>
図1は、本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示すフローチャートである。また、図2は、本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。以下、図1および図2を参照しつつ、接合方法について説明する。
【0021】
まず、被接合物1の上面に接合材2を配置する(図1のステップS01)。さらに、接合材2の上面に被接合物3を配置する(図1のステップS02)。ここで、接合材2は、たとえば、Sn-Ag-Cu系のはんだなどである。
【0022】
次に、被接合物3と被接合物1との両方の温度が検知可能なように、サーモカメラ4を配置する(図1のステップS03)。図2においては、サーモカメラ4の撮像可能な範囲(すなわち、温度検知が可能な範囲)が領域4aとして示されている。そして、被接合物3にレーザー光源5からレーザービーム5aを照射して被接合物3を加熱する(図1のステップS04)。この際、サーモカメラ4で、被接合物3のレーザービーム5aが照射されている照射部分3aの周辺と、被接合物1の温度とを測定する(図1のステップS05)。
【0023】
次に、被接合物3の温度が、あらかじめ定められた第1のしきい値(たとえば、はんだの液相線温度)以上であるか否かを判定する(図1のステップS06)。そして、サーモカメラ4で測定された被接合物3の温度が第1のしきい値よりも低い場合には、図1のステップS04に戻って被接合物3の加熱を継続する。一方で、被接合物3の温度が第1のしきい値以上である場合には、図1のステップS07で、レーザービーム5aの照射出力を下げる。そして、図1のステップS08へ進む。
【0024】
図1のステップS08では、被接合物3の温度があらかじめ定められた上限設定値(たとえば、はんだの液相線温度に20℃を加えた温度)以上になる前に、被接合物1の温度があらかじめ定められた第2のしきい値(たとえば、はんだの液相線温度)以上になったか否かを判定する。そして、被接合物3の温度が上限設定値以上になる前に被接合物1の温度が第2のしきい値以上になった場合には、図1のステップS09でレーザービーム5aの照射を停止して、接合材2を介する接合を完了させる。一方で、被接合物3の温度が上限設定値以上になる前に被接合物1の温度が第2のしきい値以上にならない場合(すなわち、レーザービーム5aが照射されている被接合物3の温度が上限設定値以上となったのに、被接合物1の温度が未だ第2のしきい値以上とならない場合)は、被接合物1に十分に伝熱されていない接合不良として、図1のステップS10でエラー表示をしつつ動作を停止する。
【0025】
図2には、図1で説明されたフローチャートを実施する際の装置構成の例が示されている。図2の例では、反射鏡6を使ってレーザー光源5から照射されたレーザービーム5aを任意の方向に制御する、ガルバノスキャナ方式が想定されている。しかしながら、レーザービームの照射方法はこのような方法に限られるものではなく、レーザー光源5とレーザービーム5aとを同軸として、レーザーヘッドを直接駆動軸で駆動させる方法であってもよい。
【0026】
また、図2の例の接合材2は、Sn-Ag-Cu系のはんだとされるが、その合金組成はSn-Ag-Cu系に限られるものではない。また、接合材2は、あらかじめ成形された板はんだ材が被接合物1と被接合物3との間に挟み込まれてもよいし、フラックスが混練されたペーストはんだがディスペンス塗布されてもよいし、スクリーン印刷されてもよい。また、あらかじめ被接合物1または被接合物3に予備はんだが施されていてもよい。また、はんだの代わりに、ろう材などの接合材が使用されてもよいし、接合材2を使用せずに少なくとも一方の被接合物を溶融させて、被接合物同士を直接溶接させてもよい。
【0027】
被接合物1または被接合物3は、Cu、AlまたはSUSなどの金属材料であることが望ましい。また、被接合物1または被接合物3には、Ni、SnまたはAuなどのめっきが施されてもよい。また、被接合物1は、半導体素子の上面に設けられた表面電極であってもよい。
【0028】
また、レーザー光源5からのレーザービームの照射出力を制御するパラメータとして設定される温度である第1のしきい値、上限設定値および第2のしきい値は、はんだの液相線温度、または、はんだの液相線温度に10℃または20℃を加えた温度とされているが、上記の温度はこれらに限られるものではなく、液相線温度に加えられる温度も10℃または20℃に限られるものではない。
【0029】
サーモカメラ4は、被接合物1、接合材2および被接合物3を、撮像することによって温度計測が可能となる場所および距離に配置される。レーザー光源5は、一般的には、金属溶接の用途としてYAGレーザーまたはファイバーレーザーなどの金属に吸収されやすい波長帯の光源が用いられるが、これらに限定されるものではなく、半導体レーザーまたはCOレーザーまたはディスクレーザーなどが用いられてもよい。
【0030】
接合工程において、レーザービーム5aが直接照射されない被接合物1の温度が低い場合、温度上昇によって接合材2が溶融した際に被接合物1への濡れ広がりが悪くなり、形成されるフィレット形状が安定しない。そのため、接合信頼性が低下する。一方で、それを回避するために、レーザービーム5aの照射出力を上げて接合時の温度を高くすると、熱に弱い周辺部材(たとえば、半導体素子とリードとの接合での半導体素子、または、融点が低い樹脂でインサートモールドされたリードを接合する場合のインサートモールド樹脂など)が、レーザービーム照射時の熱で損傷する場合がある。そのため、レーザービームの照射中の、被接合物1、接合材2および被接合物3の温度管理は重要である。
【0031】
本実施の形態で示された工程とすることで、被接合物1と接合材2との間、または、接合材2と被接合物3との間に異物が挟まれるなどによって、予期せず接触熱抵抗が増加する場合であっても、被接合物1および被接合物3の周辺における部材を損傷させずに、信頼性が高い接合部を形成することができる。また、接合の過程で被接合物3の昇温が遅い場合に、その場で接合の不具合を検知することができる。
【0032】
また、サーモカメラ4で比較的広い領域4aに含まれる部材の温度を同時に測定することで、被接合物1の温度および被接合物3の温度も同時に測定することができる。よって、レーザービーム5aが乱反射して照射部分3a以外の箇所で温度が上昇してしまい、他の部品が損傷してしまうことを抑制することができる。
【0033】
<第2の実施の形態>
本実施の形態に関する接合方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0034】
<接合方法の構成について>
図3は、本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。図3の例では、被接合物11の上面に接合材2を配置する。さらに、接合材2の上面に被接合物13を配置する。ここで、被接合物11の接合材2を搭載する面(すなわち上面)のうち、接合材2が配置される位置以外の領域には、温度モニター用の黒化処理11aが施されている。また、被接合物13の接合材2とは接触しない面(すなわち上面)には、温度モニター用の黒化処理13aが施されている。
【0035】
図3では、被接合物11の黒化処理11aが、接合材2が配置される位置以外のすべての領域とされたが、接合材2が配置される位置以外の領域のうちの一部であってもよい。
【0036】
図4は、本実施の形態に関する接合方法の工程の他の例を示す図である。図4の例では、被接合物21の上面に接合材2を配置する。さらに、接合材2の上面に被接合物23を配置する。ここで、被接合物21の接合材2を搭載する面(すなわち上面)のうち、接合材2が配置される位置以外の領域の一部には、温度モニター用の黒化処理21aが施されている。また、被接合物23の接合材2とは接触しない面(すなわち上面)の一部には、温度モニター用の黒化処理23aが施されている。
【0037】
上記のように、黒化処理が施される領域が、温度モニターに使用される領域のみであってもよい。黒化処理は、被接合物の表面に黒色塗料をスプレー塗布することによって行われるものであってもよいし、黒色のめっき処理(たとえば、クロムめっき、アルマイト処理または亜鉛めっきなど)が施されるものであってもよい。
【0038】
上記の黒化処理は、サーモカメラ4で温度を測定する際に表面の輻射率(放射率)の違いで測定される温度にばらつきが生じることを抑制するものである。そのため、輻射率(放射率)のばらつきを抑えることができる方法であれば黒化処理以外の方法が採用されてもよく、たとえば、被接合物がCuである場合には事前にベーク処理が施されてもよいし、低出力のレーザービームの照射などによって表面酸化膜が形成されたりしてもよい。
【0039】
サーモカメラ4は、物体が放出する赤外線を検出することで当該物体の温度を測定する。よって、物体の輻射率(放射率)のばらつきが小さいほど測定精度が安定する傾向がある。
【0040】
被接合物に黒化処理を施すことによって、被接合物の輻射率(放射率)のばらつきに起因する測定温度のばらつきを低減し、高い精度でレーザービーム5aの照射出力を制御することができる。そのため、接合材2の融点と周辺部材の耐熱温度とが近い場合、または、耐熱温度が低い周辺部材が接合部に近い位置に配置されている場合などでも、これらの周辺部材への熱影響を最小限に留めることができる。
【0041】
<第3の実施の形態>
本実施の形態に関する接合方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0042】
<接合方法の構成について>
図5は、本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。図5の例では、被接合物1の上面に接合材2を配置する。さらに、接合材2の上面に被接合物33を配置する。ここで、被接合物33の接合材2とは接触しない面(すなわち上面)のレーザービーム5aが照射される部分には、凹部33aが形成されている。凹部33aの厚さは、被接合物33の凹部33aが形成されていない他の箇所の厚さの1/2となっている。
【0043】
なお、レーザービーム5aが照射される部分のみを薄くするのではなく、他の箇所(たとえば、温度モニター用の箇所)を含む領域を薄くしてもよい。また、熱応答性を高めることができればよいので、凹部33aの厚さは他の箇所の1/2に限られるものではない。
【0044】
レーザービーム5aが照射される部分の厚さを薄くすることで、当該箇所の被接合物33の熱容量が下がる。よって、熱応答性が高まることに加え、被接合物33を介する接合材2および被接合物1への伝熱効率が上がる。そのため、短時間で安定した接合部を得ることができる。また、温度モニター用の箇所まで薄くすることで、高い精度でレーザービーム照射中の被接合物33、接合材2および被接合物1の温度を測定することができる。
【0045】
なお、図5に示された被接合物33に、図3または図4に示された黒化処理が施されてもよいし、図5に示された被接合物1に、図3または図4に示された黒化処理が施されてもよい。
【0046】
<第4の実施の形態>
本実施の形態に関する接合方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0047】
<接合方法の構成について>
図6は、本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。図6の例では、被接合物1の上面に接合材2を配置する。さらに、接合材2の上面に被接合物43を配置する。ここで、被接合物43のレーザービーム5aが照射される部分には、開口43aが形成されている。開口43aは、被接合物43の上面から下面へ貫通する穴である。開口43aに照射されたレーザービーム5aは、開口43aから露出している接合材2に直接照射される。
【0048】
被接合物43に開口43aを形成することによって、接合材2をレーザービーム5aで直接加熱することができる。そのため、被接合物43と接合材2との接触熱抵抗が大きいことに起因して接合材2および被接合物1への伝熱が不足してしまうということを避けることができる。その結果、安定した接合部を得ることができる。
【0049】
なお、図6に示された被接合物43に、図3または図4に示された黒化処理が施されてもよいし、図6に示された被接合物1に、図3または図4に示された黒化処理が施されてもよい。
【0050】
<第5の実施の形態>
本実施の形態に関する接合方法について説明する。なお、以下の説明においては、以上に記載された実施の形態で説明された構成要素と同様の構成要素については同じ符号を付して図示し、その詳細な説明については適宜省略するものとする。
【0051】
<接合方法の構成について>
図7は、本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示すフローチャートである。また、図8は、本実施の形態に関する接合方法の工程の例を示す図である。以下、図7および図8を参照しつつ、接合方法について説明する。
【0052】
まず、被接合物1の上面に接合材2を配置する(図7のステップS21)。さらに、接合材2の上面に被接合物3を配置する(図7のステップS22)。
【0053】
次に、被接合物3の上面に押さえ治具8を配置して、被接合物3を接合材2および被接合物1に押し付ける(図7のステップS23)。押さえ治具8は、耐熱性が高い材料(たとえば、SUSなど)で構成される。また、押さえ治具8は、レーザービーム5aが照射される箇所を避け、および、サーモカメラ4での温度測定の妨げにならない箇所(たとえば、図8に示されるような、被接合物3の上面の端部)に配置される。
【0054】
次に、被接合物3と被接合物1との両方の温度が検知可能なように、サーモカメラ4を配置する(図7のステップS24)。なお、サーモカメラ4の配置は、押さえ治具8の配置(図7のステップS23)の前に行われてもよい。そして、被接合物3にレーザー光源5からレーザービーム5aを照射して被接合物3を加熱する(図7のステップS25)。この際、サーモカメラ4で、被接合物3のレーザービーム5aが照射されている照射部分3aの周辺と、被接合物1の温度とを測定する(図7のステップS26)。
【0055】
次に、被接合物3の温度が、第1のしきい値以上であるか否かを判定する(図7のステップS27)。そして、サーモカメラ4で測定された被接合物3の温度が第1のしきい値よりも低い場合には、図7のステップS25に戻って被接合物3の加熱を継続する。一方で、被接合物3の温度が第1のしきい値以上である場合には、図7のステップS28で、レーザービーム5aの照射出力を下げる。そして、図7のステップS29へ進む。
【0056】
図7のステップS29では、被接合物3の温度が上限設定値以上になる前に、被接合物1の温度が第2のしきい値以上になったか否かを判定する。そして、被接合物3の温度が上限設定値以上になる前に被接合物1の温度が第2のしきい値以上になった場合には、図7のステップS30でレーザービーム5aの照射を停止して、接合材2を介する接合を完了させる。一方で、被接合物3の温度が上限設定値以上になる前に被接合物1の温度が第2のしきい値以上にならない場合は、図7のステップS31でエラー表示をしつつ動作を停止する。
【0057】
なお、上記では、耐熱性が高い押さえ治具8の材料としてSUSが例示されたが、たとえば、CuまたはAlなどが材料に採用されてもよい。また、押さえ治具8を接触式の温度計として、サーモカメラ4の代わりに被接合物3の表面温度を測定するようにしてもよい。
【0058】
押さえ治具8によって被接合物3を接合材2または被接合物1に押し付けることで、被接合物3が接合材2から浮き上がることを抑制することができる。その結果、接触熱抵抗を下げることができる。そのため、周辺部材を損傷させずに信頼性が高い接合部を安定して得ることができる。加えて、接合材2が溶融した際に被接合物3と被接合物1との間の距離が開いて接合不良となってしまうことを抑制することができる。
【0059】
<以上に記載された複数の実施の形態によって生じる効果について>
次に、以上に記載された複数の実施の形態によって生じる効果の例を示す。なお、以下の説明においては、以上に記載された複数の実施の形態に例が示された具体的な構成に基づいて当該効果が記載されるが、同様の効果が生じる範囲で、本願明細書に例が示される他の具体的な構成と置き換えられてもよい。すなわち、以下では便宜上、対応づけられる具体的な構成のうちのいずれか1つのみが代表して記載される場合があるが、代表して記載された具体的な構成が対応づけられる他の具体的な構成に置き換えられてもよい。
【0060】
また、当該置き換えは、複数の実施の形態に跨ってなされてもよい。すなわち、異なる実施の形態において例が示されたそれぞれの構成が組み合わされて、同様の効果が生じる場合であってもよい。
【0061】
以上に記載された実施の形態によれば、接合方法において、第1の部材の上面に接合材2を配置する。ここで、第1の部材は、たとえば、被接合物1、被接合物11または被接合物21などのうちの少なくとも1つに対応するものである。そして、接合材2の上面に第2の部材を配置する。ここで、第2の部材は、たとえば、被接合物3、被接合物13、被接合物23、被接合物33または被接合物43などのうちの少なくとも1つに対応するものである。そして、被接合物1の温度と被接合物3の温度とを測定可能に、温度測定部を配置する。ここで、温度測定部は、たとえば、サーモカメラ4または接触式の温度計などに対応するものである。そして、被接合物3にレーザービーム5aを照射しつつ、サーモカメラ4で被接合物1の温度と被接合物3の温度とを測定する。そして、測定された被接合物3の温度が第1のしきい値以上となった場合に、レーザービーム5aの出力を低下させる。そして、被接合物3の温度が第1のしきい値以上となった後、測定された被接合物1の温度が第2のしきい値以上となった場合に、レーザービーム5aの出力を停止させる。
【0062】
このような構成によれば、レーザービーム5aの照射による加熱工程において、被接合物1および被接合物3の温度状態をサーモカメラ4で測定し、温度状態に応じてレーザービーム5aの出力を適切に制御することで、過剰な入熱を避けて耐熱性が低い周辺部材を損傷させずに、安定した接合部を得ることができる。
【0063】
なお、上記の構成に本願明細書に例が示された他の構成を適宜追加した場合、すなわち、上記の構成としては言及されなかった本願明細書中の他の構成が適宜追加された場合であっても、同様の効果を生じさせることができる。
【0064】
また、以上に記載された実施の形態によれば、レーザービーム5aの出力を停止させることが、被接合物3の温度が上限設定値以上になる前に被接合物1の温度が第2のしきい値以上になった場合に、レーザービーム5aの出力を停止させることである。ここで、上限設定値が、第1のしきい値よりも高い温度である。このような構成によれば、接合材2を介して被接合物1へ適切に伝熱されているかを判定することができる。そのため、接触熱抵抗が大きいことに起因して被接合物1への伝熱が不足してしまうということを避けつつ、安定した接合部を得ることができる。
【0065】
また、以上に記載された実施の形態によれば、第1のしきい値および第2のしきい値が、接合材の液相線温度である。このような構成によれば、被接合物1および被接合物3の温度状態をサーモカメラ4で測定し、温度状態に応じてレーザービーム5aの出力を適切に制御することで、過剰な入熱を避けて耐熱性が低い周辺部材を損傷させずに、安定した接合部を得ることができる。
【0066】
また、以上に記載された実施の形態によれば、接合方法において、被接合物11(または、被接合物21)の上面の一部に、第1の黒化処理が施される。ここで、第1の黒化処理は、たとえば、黒化処理11aまたは黒化処理21aなどのうちの少なくとも1つに対応するものである。そして、被接合物13(または、被接合物23)の上面の少なくとも一部に、第2の黒化処理が施される。ここで、第2の黒化処理は、たとえば、黒化処理13aまたは黒化処理23aなどのうちの少なくとも1つに対応するものである。被接合物11の上面に接合材2を配置することは、被接合物11の上面のうちの黒化処理11aが施されていない領域に、接合材2を配置することである。また、サーモカメラ4で被接合物11の温度と被接合物13の温度とを測定することが、サーモカメラ4で被接合物11の黒化処理11aが施された上面の温度と被接合物13の黒化処理13aが施された上面の温度とを測定することである。このような構成によれば、黒化処理によってサーモカメラ4での温度測定精度が向上する。そのため、高精度で温度制御することができるため、安定した接合部を得ることができる。
【0067】
また、以上に記載された実施の形態によれば、黒化処理23aが、被接合物23の上面の一部のみに施される。このような構成によれば、部品設計の制約上、被接合物に黒化処理を広く施せない場合でも、接合部周辺に部分的に黒化処理を施すことによって、間接的に接合部の温度を高精度に測定できる。よって、温度制御の精度が高まるため、安定した接合部を得ることができる。
【0068】
また、以上に記載された実施の形態によれば、被接合物33の上面に、凹部33aが形成される。そして、レーザービーム5aが、凹部33aに照射される。このような構成によれば、レーザービーム5aが照射される部分に凹部33aが形成されているため、当該部分の熱容量が低くなって熱応答が早くなる。そのため、安定した接合部を得ることができる。また、レーザービーム5aの、接合材2および被接合物1への伝熱効率が高まるため、安定した接合部を得ることができる。
【0069】
また、以上に記載された実施の形態によれば、被接合物43に、開口43aが形成される。そして、レーザービーム5aが、開口43aを介して接合材2に直接照射される。このような構成によれば、レーザービーム5aで接合材2を直接加熱することができるため、接触熱抵抗が大きい場合であっても被接合物1への伝熱が不足することを避けることができる。よって、安定した接合部を得ることができる。
【0070】
また、以上に記載された実施の形態によれば、被接合物3にレーザービーム5aを照射する前に、被接合物3を接合材2および被接合物1に対して押し付ける。このような構成によれば、被接合物3が浮き上がることを抑制し、接触熱抵抗を下げることができる。よって、被接合物3から接合材2を介する被接合物1への伝熱効率が上がるため、周辺部材を損傷させずに信頼性の高い接合部を得ることができる。また、接合材2が溶融した際に被接合物3と被接合物1との間の距離が離れて接合不良となってしまうことを抑制することができる。
【0071】
<以上に記載された複数の実施の形態の変形例について>
以上に記載された複数の実施の形態では、それぞれの構成要素の材質、材料、寸法、形状、相対的配置関係または実施の条件などについても記載する場合があるが、これらはすべての局面においてひとつの例であって、限定的なものではないものとする。
【0072】
したがって、例が示されていない無数の変形例と均等物とが、本願明細書に開示される技術の範囲内において想定される。たとえば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの実施の形態における少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態における構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0073】
また、以上に記載された少なくとも1つの実施の形態において、特に指定されずに材料名などが記載された場合は、矛盾が生じない限り、当該材料に他の添加物が含まれた、たとえば、合金などが含まれるものとする。
【0074】
また、本願明細書における説明は、本技術に関連するすべての目的のために参照され、いずれも、従来技術であると認めるものではない。
【符号の説明】
【0075】
2 接合材、4a 領域、5a レーザービーム、11a 黒化処理、13a 黒化処理、21a 黒化処理、23a 黒化処理、33a 凹部、43a 開口。
図1
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