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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】プリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
H05K3/18 H
H05K3/18 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024528753
(86)(22)【出願日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 JP2023021104
(87)【国際公開番号】W WO2023243500
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2024-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2022095739
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
(72)【発明者】
【氏名】部谷 拓斗
(72)【発明者】
【氏名】山口 賀人
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197851(JP,A)
【文献】特開2019-75456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/00- 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有するベースフィルムと、
前記主面上に配置されている導電パターンとを備え、
前記導電パターンは、前記主面上に直接的又は間接的に配置されている下地導電層と、前記下地導電層上に配置されている電解銅めっき層とを有し、
前記下地導電層と前記電解銅めっき層との界面において所定の観察長の範囲内にあるボイドの面積の合計を前記観察長で除した値であるボイド密度は、0.01μm/μm超5.5μm/μm以下であり、
前記下地導電層の厚さをT(μm)、前記観察長をL(μm)、前記観察長の範囲内で前記界面に存在するボイドの長さの合計をVL(μm)とした際、T×VL/Lの値は、前記観察長の範囲内で0.39以下である、プリント配線板。
【請求項2】
前記導電パターンは、前記主面上に配置されているシード層をさらに有し、
前記下地導電層は、前記シード層上に配置されている下地層と、前記下地層上に配置されている無電解めっき層とを含む、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記下地層及び前記無電解めっき層は、銅により形成されている、請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記導電パターンの厚さは、5μm以上150μm以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記界面におけるサイドエッチング量は、前記導電パターンの幅の0.33倍以下である、請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記導電パターンは、互いに隣り合う複数の配線部を有し、
前記複数の配線部の間の隣り合う2つの間の距離は5μm以上100μm以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プリント配線板に関する。本出願は、2022年6月14日に出願した日本特許出願である特願2022-095739号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
特開2019-197851号公報(特許文献1)には、プリント配線板が記載されている。特許文献1に記載のプリント配線板は、ベースフィルムと、導電パターンとを有している。
【0003】
ベースフィルムは、主面を有している。導電パターンは、主面上に配置されている。導電パターンは、シード層と、無電解銅めっき層と、電解銅めっき層とを有している。シード層は、主面上に配置されている。無電解銅めっき層は、シード層上に配置されている。電解銅めっき層は、無電解銅めっき層上に配置されている。無電解銅めっき層及び電解銅めっき層は、銅により形成されている。すなわち、導電パターンは、セミアディティブ法を用いて形成されている。
【0004】
特許文献1のプリント配線板では、無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面におけるボイド密度が、0.01μm/μm以下になっている。なお、無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面におけるボイド密度は、断面視において所定の観察長の範囲内で無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面に存在しているボイドの面積の合計を当該観察長で除した値である。
【0005】
特許文献1に記載のプリント配線板では、無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面におけるボイド密度を0.01μm/μm以下にすることにより、導電パターンのベースフィルムからの剥離が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-197851号公報
【発明の概要】
【0007】
本開示のプリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に配置されている導電パターンとを備えている。導電パターンは、主面上に直接的又は間接的に配置されている下地導電層と、下地導電層上に配置されている電解銅めっき層とを有している。下地導電層と電解銅めっき層との界面において所定の観察長の範囲内にあるボイドの面積の合計を観察長で除した値であるボイド密度は、0.01μm/μm超5.5μm/μm以下である。下地導電層の厚さをT(μm)、観察長をL(μm)、観察長の範囲内で界面に存在するボイドの長さの合計をVL(μm)とした際に、T×VL/Lの値は、観察長の範囲内で0.39以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、プリント配線板100の平面図である。
図2図2は、プリント配線板100の底面図である。
図3図3は、図1中のIII-IIIにおける断面図である。
図4図4は、図3中のIVにおける拡大図である。
図5図5は、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面における模式的な拡大断面図である。
図6図6は、プリント配線板100の製造工程図である。
図7図7は、準備工程S1を説明する断面図である。
図8図8は、無電解めっき工程S2を説明する断面図である。
図9図9は、レジストパターン形成工程S3を説明する断面図である。
図10図10は、電解めっき工程S4を説明する断面図である。
図11図11は、変形例に係るプリント配線板100の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
導電パターンをセミアディティブ法で形成しようとする際には、第1に、シード層上に無電解銅めっき層が形成される。第2に、無電解銅めっき層上にレジストパターンが形成される。第3に、レジストパターンの開口部から露出している無電解銅めっき層上に電解銅めっき層が形成される。第4に、レジストパターンが除去される。第5に、隣り合う電解銅めっき層の部分の間から露出している無電解銅めっき層及びシード層が、エッチングにより除去される。
【0010】
無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面におけるボイド密度が大きくなると、隣り合う電解銅めっき層の部分の間から露出している無電解銅めっき層及びシード層を除去するためのエッチングにより、無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面においてサイドエッチングが進行しやすくなる。このようなサイドエッチングが過度に進展すると、導電パターンの一部がベースフィルムから剥離する原因となる。
【0011】
例えばレジストパターンを形成する際にレジストパターンと無電解銅めっき層との密着性を確保するための密着助剤処理が行われたり、電解銅めっき層の厚さを確保するために厚さの大きいレジストパターンが用いられたりする場合には、無電解銅めっき層の表面に残存するコンタミネーションの影響により、無電解銅めっき層と電解銅めっき層との界面におけるボイド密度を0.01μm/μm以下にすることが困難なことがある。
【0012】
[本開示の効果]
本開示のプリント配線板によると、下地導電層と電解銅めっき層との界面におけるボイド密度が大きくなる場合でも下地導電層と電解銅めっき層との界面におけるサイドエッチングに起因した導電パターンの一部のベースフィルムからの剥離を抑制可能である。
【0013】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明者は、下地導電層と電解銅めっき層との界面において所定の観察長の範囲内にあるボイドの面積の合計を観察長で除した値であるボイド密度が0.01μm/μm超5.5μm/μm以下である場合において、導電パターンの一部のベースフィルムからの剥離を抑制できることを見出した。さらに、本発明者は、導電パターンの剥離が下地導電層と電解銅めっき層との界面におけるサイドエッチングに起因して引き起こされること及び当該サイドエッチング量が無電解銅めっき層及び下地導電層の厚みと相関があることを見出した。本開示は、導電パターンの一部のベースフィルムからの剥離抑制が可能なプリント配線板を提供するものである。
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1)実施形態に係るプリント配線板は、主面を有するベースフィルムと、主面上に配置されている導電パターンとを備える。導電パターンは、主面上に直接的又は間接的に配置されている下地導電層と、下地導電層上に配置されている電解銅めっき層とを有する。下地導電層と電解銅めっき層との界面において所定の観察長の範囲内にあるボイドの面積の合計を観察長で除した値であるボイド密度は、0.01μm/μm超5.5μm/μm以下である。下地導電層の厚さをT(μm)、観察長をL(μm)、観察長の範囲内で界面に存在するボイドの長さの合計をVL(μm)とした際に、T×VL/Lの値は、観察長の範囲内で0.39以下である。なお、下地導電層が主面上に直接的に配置されているとは主面と下地導電層とが接触していることであり、下地導電層が主面上に間接的に配置されているとは主面と下地導電層との間に少なくとも1つの層(例えば、後述するシード層)が配置されていることである。
【0016】
上記(1)のプリント配線板によると、下地導電層と電解銅めっき層との界面におけるボイド密度が大きくなる場合でも下地導電層と電解銅めっき層との界面におけるサイドエッチングに起因した導電パターンの一部のベースフィルムからの剥離を抑制可能である。
【0017】
(2)上記(1)のプリント配線板では、導電パターンが主面上に配置されているシード層をさらに有していてもよい。下地導電層は、シード層上に配置されている下地層と、下地層上に配置されている無電解めっき層とを含んでいてもよい。
【0018】
(3)上記(2)のプリント配線板では、下地層及び無電解めっき層が、銅により形成されていてもよい。
【0019】
(4)上記(1)から(3)のプリント配線板では、導電パターンの厚さが、5μm以上150μm以下であってもよい。
【0020】
(5)上記(1)から(4)のプリント配線板では、界面におけるサイドエッチング量が、導電パターンの幅の0.33倍以下であってもよい。
【0021】
(6)上記(1)から(5)のプリント配線板では、導電パターンが、互いに隣り合う複数の配線部を有していてもよい。複数の配線部の間の隣り合う2つの間の距離は、5μm以上100μm以下であってもよい。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。実施形態に係るプリント配線板を、プリント配線板100とする。
【0023】
(プリント配線板100の構成)
以下に、プリント配線板100の構成を説明する。
【0024】
図1は、プリント配線板100の平面図である。図2は、プリント配線板100の底面図である。なお、図2には、図1とは反対側から見た際のプリント配線板100が示されている。図3は、図1中のIII-IIIにおける断面図である。図4は、図3中のIVにおける拡大図である。図1から図4に示されるように、プリント配線板100は、ベースフィルム10と、導電パターン21及び導電パターン22とを有している。
【0025】
ベースフィルム10は、主面10aと主面10bとを有している。主面10a及び主面10bは、ベースフィルム10の厚さ方向における端面である。主面10bは、主面10aの反対面である。ベースフィルム10は、可撓性のある電気絶縁性の材料により形成されている。ベースフィルム10は、例えば、ポリイミド又は液晶ポリマーにより形成されている。
【0026】
導電パターン21は、主面10a上に配置されている。導電パターン21は、平面視において、渦巻状に巻回されている。導電パターン21は、互いに隣り合っている複数の配線部21aを有している。
【0027】
導電パターン22は、主面10b上に配置されている。導電パターン22は、平面視において、渦巻状に巻回されている。導電パターン22は、互いに隣り合っている複数の配線部22aを有している。
【0028】
導電パターン21は、一方端においてランド21bを有しており、他方端においてランド21cを有している。ランド21b及びランド21cは、それぞれ、導電パターン21の最外周及び最内周にある。導電パターン22は、一方端においてランド22bを有しており、他方端においてランド22cを有している。ランド22b及びランド22cは、それぞれ導電パターン22の最内周及び最外周にある。ランド21c及びランド22bは、平面視において、互いに重なっている。
【0029】
導電パターン21の幅を幅W1とし、導電パターン22の幅を幅W2とする。幅W1及び幅W2は、例えば5μm以上50μm以下である。導電パターン21の厚さを、厚さT1とする。導電パターン22の厚さを、厚さT2とする。厚さT1は、例えば5μm以上150μm以下であり、8μm以上100μm以下であってもよく、30μm以上100μm以下であってもよい。厚さT2は、例えば5μm以上150μm以下であり、8μm以上100μm以下であってもよい。厚さT2は、30μm以上100μm以下であってもよい。隣り合う2つの配線部21aの間の距離を、距離DIS1とする。隣り合う2つの配線部22aの間の距離を、距離DIS2とする。距離DIS1及び距離DIS2は、例えば、5μm以上100μm以下である。距離DIS1及び距離DIS2は、5μm以上20μm以下であってもよい。
【0030】
厚さT1、厚さT2、距離DIS1及び距離DIS2の測定は、以下の方法により行われる。第1に、ベースフィルム10の厚さ方向に沿い、かつ平面視における導電パターン21(導電パターン22)の長さ方向に直交する断面において、電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて断面画像が取得される。第2に、取得された断面画像において、導電パターン21の厚さ、導電パターン22の厚さ、隣り合う2つの配線部21aの間の距離及び隣り合う2つの配線部22aの間の距離が測定される。この測定は、断面画像上において導電パターン21(導電パターン22)の幅が最大となる位置で行われる。以上により、厚さT1、厚さT2、距離DIS1及び距離DIS2の値が得られる。
【0031】
導電パターン21及び導電パターン22の各々は、例えば、セミアディティブ法により形成されている。より具体的には、導電パターン21及び導電パターン22の各々は、シード層23と、下地層24と、無電解めっき層25と、電解銅めっき層26とを有している。下地層24及び無電解めっき層25は、あわせて下地導電層27とすることがある。
【0032】
シード層23は、ベースフィルム10の主面(主面10a、主面10b)上に配置されている。シード層23は、例えばスパッタ層(スパッタリングにより形成されている層)である。シード層23は、例えば、ニッケルクロム合金により形成されている。下地層24は、シード層23上に配置されている。すなわち、下地導電層27は、シード層23を介在させてベースフィルム10の主面上に配置されている。下地層24は、例えばスパッタ層である。下地層24は、銅により形成されていてもよい。なお、導電パターン21及び導電パターン22の各々は、シード層23を有していなくてもよい。この場合には、下地導電層27がベースフィルム10の主面上に直接的に配置される。
【0033】
無電解めっき層25は、下地層24上に配置されている。無電解めっき層25は、無電解めっきにより形成されている層である。無電解めっき層25は、銅により形成されていてもよい。電解銅めっき層26は、無電解めっき層25上に配置されている。電解銅めっき層26は、電解めっきにより形成されている層である。電解銅めっき層26は、銅により形成されている。
【0034】
図示されていないが、ベースフィルム10には、貫通穴が形成されている。ベースフィルム10の貫通穴は、ベースフィルム10を厚さ方向に沿って貫通している。ベースフィルム10の貫通穴は、平面視においてランド21c及びランド22bに重なっている。
【0035】
無電解めっき層25は、ベースフィルム10の貫通穴の内壁面上にも配置されている。電解銅めっき層26は、ベースフィルム10の貫通穴内にも埋め込まれている。これにより、導電パターン21及び導電パターン22が、互いに電気的に接続されている。ランド21bとランド22cとの間に電圧が印加されることにより導電パターン21及び導電パターン22に渦巻状に電流が流れ、この電流により磁場が発生される。すなわち、プリント配線板100は、コイル装置になっている。
【0036】
図5は、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面における模式的な拡大断面図である。図5に示されるように、下地層24の厚さ及び無電解めっき層25の厚さは、それぞれ厚さT3及び厚さT4とする。厚さT3及び厚さT4の合計を、T(μm)とする。すなわち、Tは、下地導電層27の厚さである。厚さT3及び厚さT4は、厚さT1(厚さT2)と同様の方法により測定される。
【0037】
無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面、すなわち、下地導電層27と電解銅めっき層26との界面には、ボイドVが存在している。無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度は、0.01μm/μm超5.5μm/μm以下である。なお、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度は、断面視において所定の観察長の範囲内で無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面に存在しているボイドの面積の合計を当該観察長で除した値である。
【0038】
無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度の算出に際しては、第1に、ベースフィルム10の主面に直交する断面において、SEMを用いて、断面画像が取得される。断面画像の倍率は、10000倍以上50000倍以下とされる。
【0039】
第2に、上記の断面画像中の無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面において、所定の観察長(以下においては、この観察長をL(μm)とすることがある)の範囲内にあるボイドVの合計面積が測定される。観察長の方向は、ベースフィルム10の主面に平行になっている。ボイドVの面積は、GNU Image Manipulation Program等の画像処理ソフトを用いてボイドVが黒色となるように断面画像を2値化するとともに、当該画像処理ソフトを用いて得られた明度のヒストグラムから黒色部分の割合を算出することにより得られる。第3に、算出されたボイドVの合計面積を上記の観察長で除することにより、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度が算出される。
【0040】
上記の断面画像中の無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面において、上記の観察長の範囲内にあるボイドVの長さの合計を、VL(μm)とする。図5に示される例では、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面に3つのボイドVが存在している。これら3つのボイドVの長さをそれぞれVL1、VL2及びVL3とすると、VL1、VL2及びVL3は、それぞれ無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面に沿う方向における3つのボイドVの各々の長さである。VLは、VL1、VL2及びVL3の合計になる。T×VL/Lの値は、0.39以下である。
【0041】
図4に示されるように、導電パターン21(導電パターン22)を形成するためのエッチングは、所定のサイドエッチング量を有している。サイドエッチング量とは、サイドエッチングにより無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面に形成される切り欠きの当該界面に沿う方向における深さである。言い換えると、サイドエッチング量とは、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面に沿う方向における切り欠きの頂点と下地導電層27の最も離れた端との間の距離DIS3である。距離DIS3は、幅W1(幅W2)の0.33倍以下であってもよく、0.17倍以下であってもよい。距離DIS3は、距離DIS1(距離DIS2)と同様の方法により測定される。
【0042】
(プリント配線板100の製造方法)
以下に、プリント配線板100の製造方法を説明する。
【0043】
図6は、プリント配線板100の製造工程図である。図6に示されるように、プリント配線板100の製造方法では、準備工程S1と、無電解めっき工程S2と、レジストパターン形成工程S3と、電解めっき工程S4と、エッチング工程S5とを有している。無電解めっき工程S2は、準備工程S1後に行われる。レジストパターン形成工程S3は、無電解めっき工程S2後に行われる。電解めっき工程S4は、レジストパターン形成工程S3後に行われる。エッチング工程S5は、電解めっき工程S4後に行われる。
【0044】
図7は、準備工程S1を説明する断面図である。図7に示されるように、準備工程S1では、ベースフィルム10が準備される。なお、準備工程S1において準備されるベースフィルム10では、主面10a及び主面10b上にシード層23が配置されており、シード層23上に下地層24が配置されている。
【0045】
図8は、無電解めっき工程S2を説明する断面図である。図8に示されるように、無電解めっき工程S2では、無電解めっきが行われることにより、下地層24上に無電解めっき層25が形成される。
【0046】
図示されていないが、上記の無電解めっきに先立って、ベースフィルム10に対する穴開け加工が行われることにより、貫通穴が形成される。そのため、上記の無電解めっきにより、ベースフィルム10の貫通穴の内壁面上にも無電解めっき層25が形成されることになる。
【0047】
図9は、レジストパターン形成工程S3を説明する断面図である。図9に示されるように、レジストパターン形成工程S3では、無電解めっき層25上に、レジストパターン30が形成される。レジストパターン30には、開口部31が形成されている。開口部31は、レジストパターン30を厚さ方向に沿って貫通している。つまり、開口部31から、無電解めっき層25が露出している。
【0048】
レジストパターン形成工程S3では、第1に、ドライフィルムレジストが無電解めっき層25上に貼付される。この際、ドライフィルムレジスト(レジストパターン30)と無電解めっき層25との密着性を確保するために、無電解めっき層25の表面に密着助剤処理が行われてもよい。
【0049】
第2に、ドライフィルムレジストが露光及び現像されることにより、ドライフィルムレジストが部分的に除去されて開口部31が形成される。以上により、レジストパターン30が形成される。レジストパターン30が形成された後、プラズマ等を用いて、開口部31から露出している無電解めっき層25の表面がクリーニングされてもよい。
【0050】
図10は、電解めっき工程S4を説明する断面図である。図10に示されるように、電解めっき工程S4では、電解めっきが行われることにより、開口部31から露出している無電解めっき層25上に電解銅めっき層26が形成される。厚さT1(厚さT2)を大きくしようとする(電解銅めっき層26の厚さを大きくしようとする)場合、それに応じてレジストパターン30が厚く形成される。電解銅めっき層26が形成された後、レジストパターン30は除去される。
【0051】
エッチング工程S5では、隣り合う電解銅めっき層26の間から露出している無電解めっき層25、下地層24及びシード層23が、エッチングにより除去される。この際、電解銅めっき層26とその下にある無電解めっき層25との界面において、サイドエッチングが進行することがある。
【0052】
(プリント配線板100の効果)
レジストパターン30を形成する際に、レジストパターン30と無電解めっき層25との密着性を確保するための密着助剤処理が行われることがある。また、電解銅めっき層26の厚さを確保するために厚さの大きいレジストパターン30が用いられる場合、開口部31の幅に対するレジストパターン30の厚さの比率が大きくなることにより、レジストパターン形成工程S3において開口部31への薬液浸透性の低下やレジスト成分除去性や無電解めっき層25の表面における異物除去性の低下のために、無電解めっき層25の表面にコンタミネーションが残存する。レジストパターン30の厚さを開口部31の幅で除した値が0.5を超える場合には、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度が大きく(より具体的には、0.01μm/μm超5.5μm/μm以下)なることがある。
【0053】
厚さT3及び厚さT4が大きくなると、エッチング工程S5のエッチング量を増やす必要があり、サイドエッチングが進行しやすくなる。また、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度が大きくなると、エッチング工程S5のエッチングにより、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面においてサイドエッチングが進行しやすくなる。このサイドエッチングが過度に進行することは、導電パターン21及び導電パターン22の一部がベースフィルムから剥離する原因となる。しかしながら、以下の評価結果に示されるように、サイドエッチング量を評価する指標である厚さT3及び厚さT4の合計に所定の観察長の範囲内において無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面に存在するボイドの長さの合計を乗じた上で当該観察長により除した値、すなわち、T×VL/Lの値を0.39以下にすることにより、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度が大きくなる場合でも導電パターン21(導電パターン22)の一部のベースフィルム10からの剥離が、抑制されることになる。
【0054】
表1には、サンプル1からサンプル9の詳細が示されている。サンプル1からサンプル9は、準備工程S1からエッチング工程S5が行われることにより形成された。なお、サンプル1からサンプル9を形成する際には、レジストパターン形成工程S3では、無電解めっき層25の表面に密着助剤処理が行われた上で、無電解めっき層25上にレジストパターン30が形成される。表1に示されているように、サンプル1からサンプル9では、下地層24の厚さ及び無電解めっき層25の厚さの合計(Tの値)、観察長(Lの値)、当該観察長の範囲内で無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面に存在しているボイドVの長さの合計(VLの値)を測定した。サンプル1からサンプル9では、レジストパターン30の厚さを開口部31の幅で除した値が0.5超であり、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度が0.01μm/μm超5.5μm/μm以下の範囲内にあった。
【0055】
サンプル1からサンプル9では、導電パターン21及び導電パターン22の剥離の有無が、目視又は顕微鏡を用いて観察された。導電パターン21及び導電パターン22に剥離が生じていなかったサンプルは、表1中で「OK」とされている。他方で、導電パターン21(導電パターン22)の一部に剥離が生じていたサンプルは、表1中で「NG」とされている。
【0056】
【表1】
【0057】
サンプル1からサンプル6では、T×VL/Lの値が0.39以下であり、導電パターン21及び導電パターン22に剥離が生じていなかった。他方で、サンプル7からサンプル9では、T×VL/Lの値が0.39を超えており、導電パターン21及び導電パターン22の一部に剥離が生じていた。
【0058】
この比較から、無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるボイド密度が大きい場合でも、T×VL/Lの値を0.39以下にすることにより無電解めっき層25と電解銅めっき層26との界面におけるサイドエッチングが抑制され、導電パターン21及び導電パターン22の一部のベースフィルム10からの剥離が抑制されることが明らかになった。
【0059】
(変形例)
図11は、変形例に係るプリント配線板100の断面図である。図11には、図3に対応する位置における断面が示されている。上記においては、下地導電層27が下地層24と無電解めっき層25の2層により構成されている場合の例を示したが、下地導電層27は、図11に示されるように、1層で構成されていてもよい。この場合、T×VL/Lの値を算出するに際して、Tの値は、下地導電層27の厚さの値とされる。図11に示される例では、下地導電層27がベースフィルム10の主面上に直接的に配置されている。
【0060】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記の実施形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
100 プリント配線板、10 ベースフィルム、10a,10b 主面、21 導電パターン、21a 配線部、21b,21c ランド、22 導電パターン、22a 配線部、22b ランド、22c ランド、23 シード層、24 下地層、25 無電解めっき層、26 電解銅めっき層、27 下地導電層、30 レジストパターン、31 開口部、DIS1,DIS2,DIS3 距離、S1 準備工程、S2 無電解めっき工程、S3 レジストパターン形成工程、S4 電解めっき工程、S5 エッチング工程、T1,T2,T3,T4 厚さ、V ボイド、W1,W2 幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11