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特許7566219離型剤の付着状態の評価方法、潤滑剤の付着状態の評価方法および離型剤の付着状態の評価システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】離型剤の付着状態の評価方法、潤滑剤の付着状態の評価方法および離型剤の付着状態の評価システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/20 20060101AFI20241004BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20241004BHJP
【FI】
B22D17/20 D
B22D17/32 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024542389
(86)(22)【出願日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2023029057
(87)【国際公開番号】W WO2024070261
(87)【国際公開日】2024-04-04
【審査請求日】2024-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2022158330
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146180
【氏名又は名称】株式会社MORESCO
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】富松 宏明
(72)【発明者】
【氏名】辻元 隆仁
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-094564(JP,A)
【文献】国際公開第2016/021006(WO,A1)
【文献】特開2014-057972(JP,A)
【文献】特開2019-206029(JP,A)
【文献】特開2008-215957(JP,A)
【文献】特開2003-231131(JP,A)
【文献】特開2005-188994(JP,A)
【文献】特開2007-069217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 1/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイカスト鋳造に用いられ、金型に付着させた離型剤の付着状態の評価方法であって、
金型を加熱する工程と、
加熱した前記金型の表面に、離型剤を直接付着させる工程と、
前記離型剤が付着した前記金型の表面の外観の画像データを取得する工程と、
取得された前記外観の画像データに対応する色数値化情報から、予め取得している色数値化情報と前記離型剤の付着状態との相関関係に基づいて前記金型の表面における前記離型剤の付着状態を導出する工程と、
導出した前記離型剤の付着状態に関するデータを出力する工程と、を含む、離型剤の付着状態の評価方法。
【請求項9】
塑性加工に用いられ、金型に付着させた潤滑剤の付着状態の評価方法であって、
金型を加熱する工程と、
加熱した前記金型の表面に、潤滑剤を直接付着させる工程と、
前記潤滑剤が付着した前記金型の表面の外観の画像データを取得する工程と、
取得された前記外観の画像データに対応する色数値化情報から、予め取得している色数値化情報と前記潤滑剤の付着状態との相関関係に基づいて前記金型の表面における前記潤滑剤の付着状態を導出する工程と、
導出した前記潤滑剤の付着状態に関するデータを出力する工程と、を含む、潤滑剤の付着状態の評価方法。
【請求項10】
ダイカスト鋳造に用いられ、金型に直接付着させた離型剤の付着状態を評価する離型剤の付着状態の評価システムであって、
前記金型の外観の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データから取得された前記金型の外観の画像データに対応する色数値化情報と、予め取得している色数値化情報と前記離型剤の付着状態との相関関係に基づいて前記金型の表面における前記離型剤の付着状態を導出する導出部と、
前記導出部により導出された前記離型剤の付着状態に関するデータを出力する出力部と、を含む、離型剤の付着状態の評価システム。
【請求項11】
前記画像データ取得部は、3Dスキャナーを含み、
前記画像データ取得部は、前記3Dスキャナーで撮影することにより前記金型の外観の3次元画像データを取得し、
前記出力部は、前記金型の3次元画像に前記離型剤の付着状態を重ねて表示する、請求項10に記載の離型剤の付着状態の評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型剤の付着状態の評価方法、潤滑剤の付着状態の評価方法および離型剤の付着状態の評価システムに関するものである。本出願は、2022年9月30日出願の日本出願第2022-158330号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
離型剤の塗布量を計測する技術が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2016/021006
【文献】特開2013-244508号公報
【文献】特開2003-251448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鋳造や塑性加工等の金型を用いた加工を行う際に、離型剤や潤滑剤等の加工に用いられる液体(加工用液体)を均一にムラなく付着させることが重要である。例えば、ダイカスト鋳造において、良好な生産性を確保すると共に、鋳造品の品質向上を図るためには、できるだけ正確かつ簡便に、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価できることが求められる。そこで、本発明は、正確かつ簡便に、金型に付着させた加工用液体の付着状態を評価することができる加工用液体の付着状態の評価方法および加工用液体の付着状態の評価システムを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従った離型剤の付着状態の評価方法は、ダイカスト鋳造に用いられ、金型に付着させた離型剤の付着状態の評価方法であって、金型を加熱する工程と、加熱した金型の表面に、離型剤を付着させる工程と、離型剤が付着した金型の表面の外観の画像データを取得する工程と、取得された外観の画像データに対応する色数値化情報から、予め取得している色数値化情報と離型剤の付着状態との相関関係に基づいて金型の表面における離型剤の付着状態を導出する工程と、導出した離型剤の付着状態に関するデータを出力する工程と、を含む。また、本発明の評価方法および評価システムは、塑性加工用の潤滑剤の金型への付着状況の評価にも用いることができる。
【発明の効果】
【0006】
上記離型剤の付着状態の評価方法によれば、正確かつ簡便に、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施の形態1における離型剤の付着状態の評価方法に用いられるダイカスト装置の一部を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明に係る離型剤の付着状態の評価システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、離型剤を付着させる状態を示す概略断面図である。
図4図4は、実施の形態1に係る離型剤の付着状態の評価方法における代表的な工程を示すフローチャートである。
図5図5は、固定金型の表面および可動金型の表面を撮影する状態を示す概略断面図である。
図6図6は、撮影画像の一例として、撮影した画像から形成された3次元画像上に、外観画像データを重ね合わせた画像である。
図7図7は、膜厚と色数値化情報との対応関係を示すグラフである。
図8図8は、可動金型の表面に付着した離型剤の膜厚分布の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
本発明に係る評価方法は、金型に付着させて使用する離型剤や潤滑剤等の加工用液体の付着状態を評価することができる。本発明に係る離型剤の付着状態の評価方法は、ダイカスト鋳造に用いられ、金型に付着させた離型剤の付着状態の評価方法であって、金型を加熱する工程と、加熱した金型の表面に、離型剤を付着させる工程と、離型剤が付着した金型の表面の外観の画像データを取得する工程と、取得された外観の画像データに対応する色数値化情報から、予め取得している色数値化情報と離型剤の付着状態との相関関係に基づいて金型の表面における離型剤の付着状態を導出する工程と、導出した離型剤の付着状態に関するデータを出力する工程と、を含む。なお、本発明に係る評価方法により塑性加工の金型に付着させる潤滑剤の付着状態の評価を行ったところ、同様の態様で潤滑剤の付着状態を評価し、付着状態の分布を表示することができた。ここで、評価した潤滑剤は、金型に塗布した際に、視認性の被膜を形成する塑性加工用潤滑剤である。
【0009】
ダイカスト鋳造においては、所定の温度に加熱した金型を組み合わせて構成されるキャビティ内に溶融金属を流し込み、成型後、組み合わせた金型から製品を取り外して、鋳造品を製造する。離型剤は、溶融金属と金型との焼き付きを防止し、鋳造品を高精度に製造すると共に、鋳造品を円滑に金型から外すことを目的として、塗布や噴霧、吐出等の方法により金型の表面に付着させる。離型剤の付着量が多すぎると、鋳造品の表面に着色が発生したり、離型剤成分の気化等により品質の悪化を招く。また、離型剤の付着量が少なすぎたり、金型の表面における離型剤の付着量のムラが生ずると、高精度な鋳造品の製造が阻害されたり、鋳造品の金型からの取り外しが困難となるおそれがある。よって、離型剤は、金型の表面へ適切な量をできるだけ均一に付着させることが求められる。
【0010】
ここで、離型剤の付着状態、すなわち、金型の表面に適量の離型剤が均一に付着できているか否かを把握することは、良好な生産性および鋳造品の品質向上の観点から重要である。なお、付着させる離型剤の目視等による膜厚の計測、さらには付着状態の把握は、その膜厚が非常に薄く、かつ従来から用いられている離型剤の色は一般的に透明であるため、金型が基本的に黒色であることも相まって困難であった。特に、金型の形状が複雑であった場合、隅々まで離型剤が付着しているかを確認することは容易ではない。また、塗膜の色が金型の色と区別できない場合にも、離型剤の付着状態を把握することは困難である。
【0011】
従来においては、離型剤を金型に塗布して形成される被膜は透明で、視認することができないため、離型剤の付着状態を把握するために、離型剤に蛍光剤を混入して紫外線を照射し、励起された蛍光を観測して離型剤の付着状態を把握したり、粉体を混入した離型剤を用いて触感により把握したり、また放射率を計測して離型剤の付着状態を把握していた。
【0012】
しかし、これらのような手法によると、そもそも離型剤成分以外の物質を離型剤に混入することになるため、本来の離型剤とは異なる付着挙動を示すことがあり、厳密に離型剤の付着状態を把握することは困難であった。また、膜厚測定後に金型上に膜厚測定用物質が残存していると不具合の原因となるため、金型を十分に洗浄する必要がであった。
【0013】
本発明者らは、離型性および耐熱性に優れるダイカスト金型用離型剤を開発した。この離型剤は、溶媒と有機酸塩を含み、金型に塗布すると白色の被膜を形成するという性質を持っていた。本発明者らは、この性質に着目して、本発明を創出するに至った。本発明に係る離型剤の付着状態の評価方法は、塗布後に目視できる離型剤に好適に用いることができる。このような離型剤は、膜厚を測定するために何らの異物を混入させる必要がなく、離型剤そのものの付着状態を評価することができる。例えば、離型剤に有機酸塩が含まれる場合は、離型剤を金型に塗布すると、溶媒が蒸発することにより、白色の被膜が金型の表面に形成される。このような白色の被膜は、視認性が良好であり、金型の外観から容易に離型剤の残存箇所を把握しやすい。そうすると、金型の表面の外観の画像データを取得した際に、取得された外観の画像データに対応する色数値化情報から、予め取得している色数値化情報と離型剤の付着状態との相関関係に基づいて離型剤の付着状態を導出する工程により離型剤の付着状態を容易に導出することができる。そして、導出した離型剤の付着状態に関するデータを出力して、金型の表面に付着された離型剤の付着状態を正確に評価することができる。なお、このような方法は、離型剤に何ら添加物を混入することなく離型剤をそのまま用いるため、離型剤の取り扱いが簡便となる。したがって、このような離型剤の付着状態の評価方法によると、正確かつ簡便に、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価することができる。なお、一例として、溶媒と有機酸塩とを含む離型剤を挙げているが、塗布後に形成される被膜が視認性を示す離型剤や潤滑剤等の加工用液体であれば、制限なく本発明を適用することが可能である。
【0014】
上記離型剤の付着状態の評価方法において、画像を取得する工程は、離型剤が付着した金型の3次元画像を取得する工程を含んでもよい。ダイカスト鋳造において用いられる金型については、複雑な形状、具体的には例えば、凹凸形状の数や起伏が大きいものが多い。このような金型において、金型の3次元画像を取得することにより、より望ましい離型剤の付着状態の情報を得ることができる。具体的には例えば、複雑に入り組んだ金型の奥まで離型剤が確実に付着できているか、ダイカスト鋳造を複数回重ねるうちに、離型剤が細部に蓄積されていないか等を容易に把握することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0015】
上記離型剤の付着状態の評価方法において、外観の画像データは、カラー画像を含んでもよい。このようにすることにより、カラー画像の情報を加味して、離型剤の付着状態を導出することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0016】
上記離型剤の付着状態の評価方法において、離型剤の付着状態に関するデータは、離型剤の膜厚に対応するデータであってもよい。このようにすることにより、離型剤の付着量、すなわち、離型剤の膜厚を高精度に導出することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0017】
上記離型剤の付着状態の評価方法において、色数値化情報は、明度、色相、彩度、色度または色彩度であってもよい。このようにすることにより、明度等を利用して離型剤の付着状態を導出することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0018】
上記離型剤の付着状態の評価方法において、データを出力する工程は、金型の3次元画像と離型剤の付着状態の分布を対応させて表示する工程を含んでもよい。このようにすることにより、視覚的に離型剤の付着状態の分布を金型の3次元画像に照らし合わせて把握することができる。したがって、より容易に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0019】
上記離型剤の付着状態の評価方法において、データを出力する工程は、離型剤の付着状態として導出された離型剤の膜厚に応じて色分けして表現された画像データを生成して出力する工程を含んでもよい。このようにすることにより、色の違いにより膜厚が異なることが容易に生成された画像から視覚的に認識することができる。したがって、より効率的に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0020】
上記離型剤の付着状態の評価方法においては、塗布後に目視で視認可能である離型剤が好適に用いられる。離型剤は、例えば、溶媒と有機酸塩とを含む。溶媒は、水を含んでもよく、塩基性化合物を含んでもよい。有機酸塩は、下記式(1)で表されるカルボン酸化合物を含んでもよい。式(1)中、Rは、炭素数2以上4以下のアルカンジイル基、ビニレン基、またはベンゼン環を示し、xは、2または3を示す。カルボン酸化合物は、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸およびトリメリット酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでもよい。このような離型剤は、離型性および潤滑性等において優れている。
【0021】
【化1】
【0022】
このような離型剤は、上記有機酸塩を含むため、溶媒が蒸発した際に、確実に白色の被膜として金型の表面に残存させることができる。したがって、より確実に離型剤が付着した領域を把握することができ、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0023】
本発明に係る潤滑剤の付着状態の評価方法は、塑性加工に用いられ、金型に付着させた潤滑剤の付着状態の評価方法であって、金型を加熱する工程と、加熱した金型の表面に、潤滑剤を付着させる工程と、潤滑剤が付着した金型の表面の外観の画像データを取得する工程と、取得された外観の画像データに対応する色数値化情報から、予め取得している色数値化情報と潤滑剤の付着状態との相関関係に基づいて金型の表面における潤滑剤の付着状態を導出する工程と、導出した潤滑剤の付着状態に関するデータを出力する工程と、を含む。
【0024】
上記潤滑剤の付着状態の評価方法によると、正確かつ簡便に、金型に付着させた潤滑剤の付着状態を評価することができる。
【0025】
本発明に係る評価システムは、金型に付着させて使用する離型剤や潤滑剤等の加工用液体の付着状態を評価することができる。本発明に係る離型剤の付着状態の評価システムは、ダイカスト鋳造に用いられ、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価する離型剤の付着状態の評価システムである。離型剤の付着状態の評価システムは、金型の外観の画像データを取得する画像データ取得部と、画像データから取得された金型の外観の画像データに対応する色数値化情報と、予め取得している色数値化情報と離型剤の付着状態との相関関係に基づいて金型の表面における離型剤の付着状態を導出する導出部と、導出部により導出された離型剤の付着状態に関するデータを出力する出力部と、を含む。なお、本発明に係る評価システムを用いて塑性加工の金型に付着させる潤滑剤の付着状態の評価を行ったところ、潤滑剤の付着状態を評価し、付着状態の分布を表示することができた。ここで、評価した潤滑剤は、金型に塗布した際に、視認性の被膜を形成する塑性加工用潤滑剤である。
【0026】
このような離型剤の付着状態の評価システムによると、正確かつ簡便に、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価することができる。
【0027】
上記離型剤の付着状態の評価システムにおいて、画像データ取得部は、3Dスキャナーを含んでもよい。画像データ取得部は、3Dスキャナーで撮影することにより金型の外観の3次元画像データを取得してもよい。出力部は、金型の3次元画像に離型剤の付着状態を重ねて表示してもよい。このようにすることにより、3次元的な離型剤の付着状態を視覚的に容易に把握することができる。したがって、より容易に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0028】
[実施形態の具体例]
次に、本発明に係る加工用液体の付着状態の評価方法および加工用液体の付着状態の評価システムの実施の一形態としてダイカスト鋳造用離型剤を例示して、図面を参照しつつ具体的に説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0029】
(実施の形態1)
まず、本発明の実施の形態1に係る離型剤の付着状態の評価方法および離型剤の付着状態の評価システムに用いられるダイカスト装置の概要について簡単に説明する。図1は、本発明の実施の形態1における離型剤の付着状態の評価方法に用いられるダイカスト装置の一部を示す概略断面図である。図1は、後述する金型が開けられた状態を示す。図2は、本発明に係る離型剤の付着状態の評価システムの構成を示すブロック図である。なお、上記システムは、一つの装置として一体化されていてもよいし、複数の装置を組み合わせて構成されていてもよい。また、評価システム51とダイカスト装置11が一体になっていてもよい。
【0030】
図1および図2を参照して説明する。本発明に係る離型剤の付着状態の評価システム51は、図1に示すダイカスト装置11と共に用いられ、画像データ取得部28と、導出部53と、出力部54と、を含む。画像データ取得部28は、後述する金型の外観の画像データを取得する。導出部53は、画像データ取得部28により取得された金型の外観の画像データに対応する色数値化情報から、予め取得している色数値化情報と離型剤の付着状態との相関関係に基づいて金型の表面における離型剤の付着状態を導出する。出力部54は、導出部53により導出された離型剤の付着状態に関するデータを出力する。これらの構成については、後述する。
【0031】
ダイカスト装置11は、固定金型13と、可動金型14と、射出スリーブ15と、注入ピストン16と、を含む。固定金型13は、固定されている。一方、可動金型14は、固定金型13に対して動かせるように構成されている。可動金型14の移動の向きは、矢印Dで示す向きまたはその逆の向きである。固定金型13と可動金型14とを接触させると、キャビティ17が形成される。射出スリーブ15は、中空円筒状であって固定金型13内に配置されており、一方の開放端がキャビティ17に通じている。射出スリーブ15には、溶融金属を射出スリーブ15内に注入する注入口18が径方向に貫通するようにして設けられている。注入口18を介して、溶融金属、すなわち、溶融されたアルミニウム等の金属が射出スリーブ15内に注入される。なお、理解を容易にする観点から、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26を単純化して図示しているが、具体的には、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26には、複雑な凹凸形状が形成されるものである。
【0032】
注入ピストン16は、金型、具体的には固定金型13と可動金型14とを接触させて形成されるキャビティ17内へ射出スリーブ15内に溶融金属を射出する。溶融金属を射出する向きは、図1中の矢印Dで示す向きである。注入ピストン16は、プランジャーチップ21と、射出ロッド22と、を含む。プランジャーチップ21は、射出スリーブ15内に配置され、溶融金属と接触して溶融金属をキャビティ17内へ押し出す。射出ロッド22は、プランジャーチップ21と連結されており、射出スリーブ15の外部へ突き出る部分を有する。射出スリーブ15の内壁面19に潤滑剤を塗布することで、プランジャーチップ21が押し出される際のプランジャーチップ21の外径面24と射出スリーブ15の内壁面19との摩擦を軽減して、プランジャーチップ21を円滑に移動させる。
【0033】
次に、ダイカスト装置11を用いて鋳造品を製造する際の工程について簡単に説明する。まず、予め所定の温度に固定金型13および可動金型14を加熱した後、可動金型14を図1中の矢印Dの向きに移動させて固定金型13と可動金型14とを図1に示すように開けた状態とする。そして、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26に離型剤を付着させる。図3は、離型剤を付着させる状態を示す概略断面図である。図3を併せて、離型剤を表面25、表面26に付着させる際には、離型剤を吐出する離型剤吐出部材27を利用する。離型剤吐出部材27は、スプレー式であり、吐出口から離型剤を表面25、表面26に吐出可能に構成されている。離型剤は、離型剤吐出部材27から吐出され、表面25、表面26の全体に付着する。
【0034】
その後、可動金型14を矢印Dと逆の向きに移動させて閉じた状態とする。そして、射出ロッド22を矢印Dの向きに移動させる。そうすると、射出スリーブ15内にある溶融金属が射出スリーブ15から押し出され、キャビティ17内に充填される。そして、この状態を所定の時間維持し、溶融金属を固める。その後、可動金型14を矢印Dの向きに移動させて金型を開けた状態とする。そして、固定金型13側または可動金型14側に取り付いている鋳造品を取り外す。このようにして、鋳造品としての製品を得る。この場合、表面25、表面26には離型剤が付着しているため、容易に取り外すことができる。その後、再び離型剤を表面25、表面26に付着させて同様の鋳造品を製造する。
【0035】
ここで、用いられる離型剤について説明する。一例として、離型剤は、溶媒と有機酸塩とを含む。本実施形態においては、溶媒は、水である。離型剤は、塩基性化合物を含んでもよい。本実施形態においては、離型剤は、水、アジピン酸、テレフタル酸および水酸化ナトリウムを含む。
【0036】
ここで、このようなダイカスト装置11を用いた鋳造品の製造に関し、金型上の離型剤の付着状態を正確かつ簡便に把握することは非常に重要である。次に、離型剤の付着状態の評価方法について説明する。図4は、実施の形態1に係る離型剤の付着状態の評価方法における代表的な工程を示すフローチャートである。図4を参照して、実施の形態1における離型剤の付着状態の評価方法では、工程(S10)として、金型加熱工程が実施される。この工程(S10)では、ダイカスト装置11の内部または近傍の所定の箇所に設けられたヒーター(図示せず)を制御する。そして、鋳造が可能な温度まで固定金型13および可動金型14を加熱する。なお、この場合、例えば、数個の鋳造品を連続で試し打ちとして製造することにより固定金型13および可動金型14の双方を全体的に加熱することにしてもよい。
【0037】
所定の温度に固定金型13および可動金型14を加熱した後、工程(S20)として、離型剤付着工程が実施される。この工程(S20)では、上記した離型剤吐出部材27を用いて、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26に離型剤を付着させる。離型剤は、上記したものを用いる。
【0038】
次に、工程(S30)として、乾燥工程が実施される。この工程(S30)では、エアーを固定金型13の表面25および可動金型14の表面26に吹き付けることにより実施される。この時、離型剤に含まれる溶媒が蒸発する。そして、有機酸塩の成分が固定金型13の表面25および可動金型14の表面26に残る。すなわち、付着させた離型剤のうち、有機酸塩の成分については、白色の被膜として固定金型13の表面25および可動金型14の表面26に残る。
【0039】
次に、工程(S40)として、撮影工程が実施される。この工程(S40)では、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26を画像データ取得部28で撮影する。本実施形態においては、画像データ取得部28は、外観画像撮影素子(カラーモジュールカメラ)と3Dスキャナーとを含む。ここでは一例として、外観画像撮影素子は3Dスキャナーに内蔵されており、金型の外観画像と3次元画像の撮影が同時に行われる。3Dスキャナーは一般的なものが使用可能であるが、ダイカスト装置11を改造せずに凹凸のある形状である金型を撮影するには、ハンディタイプが好適である。図5は、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26を撮影する状態を示す概略断面図である。図5を参照して、撮影においては、画像データ取得部28を、例えば、表面25と表面26の間に配置して、場所を移動したり、種々の角度に傾けたりして撮影する。この場合、種々の位置および角度から固定金型13の表面25および可動金型14の表面26が撮影される。画像データ取得部28は、手動もしくは画像データ取得部28を固定した台を自動で動かすことにより、撮影位置を変えて画像を撮影する。このようにして、離型剤が付着した金型の3次元画像を取得する。なお、画像データ取得部28の一例として、外観画像撮影素子(カラーモジュールカメラ)と3Dスキャナーが搭載されている。すなわち、外観画像撮影素子には、カラーモジュールカメラと光源(LED)が搭載され、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26のカラー画像が撮影される。カラーモジュールカメラは、CMOS、CCD等が使用可能である。光源は画像撮影時にフラッシュとして発光させることにより、外光の影響を受けにくく、画像の色彩度を一定に保つことができる。3Dスキャナーは、2つのカメラと赤外線光源を搭載した非接触式のものであり、パッシブ方式により被写体との距離を測量し、金型の3次元画像が撮影される。赤外光を利用することにより、外光の影響を受けずに形状を正確に測定することができる。このようにして、離型剤が付着した金型の表面のカラー画像および金型の3次元画像を取得する。外観画像データと3次元画像データは、撮影位置を対応させて、メモリ等に保存される。なお、上記では、画像データ取得部28を移動させて金型の表面全体について撮影をしているが、撮影位置を固定して所定の場所を撮影する方式でもよい。
【0040】
その後、工程(S50)として、画像処理工程が実施される。この工程(S50)では、撮影した画像から外観画像および/または3D画像、すなわち、固定金型13の表面25および可動金型14の表面26の3次元画像が形成される。この場合、3次元画像は画像データ取得部28に含まれる3Dスキャナーにより撮影されているため、高精度に固定金型13の表面25および可動金型14の表面26の3次元画像を形成することができる。なお、以下の説明においては、可動金型14の表面26の画像について説明する。もちろん、固定金型13の表面25の画像についても、凹凸形状等は異なるものの可動金型14の表面26の画像と同様のことが言える。図6は、撮影画像の一例として、撮影した画像から形成された3次元画像上に、外観画像データを重ね合わせた画像である。図6を参照して、可動金型14の表面26においては、合わせ面31および合わせ面31の内側に配置されるキャビティ面32が設けられている。キャビティ面32の上部側の中央33に対して周りに位置する領域34およびキャビティ面32の下部側の表面の多くの領域35は白色が濃いことが把握できる。一方、キャビティ面32の上部側に位置する領域34のさらに周りの領域36やキャビティ面32の中央より右側の領域37は、ほとんど白色部分がないことが把握できる。これにより、3次元の形状と、外観情報とが同時に表示されるため、容易に離型剤の付着状態の分布を把握することができる。なお、3次元画像と外観画像とは、それぞれ別々に表示してもよい。
【0041】
次に、工程(S60)として、付着状態導出工程が実施される。この工程(S60)では、得られた3次元画像において、離型剤が付着している領域が白色として表れている。外観画像データから色数値化情報を取得し、色数値化情報を用いて付着状態が導出される。色数値化情報は、明度、色相、彩度、色度、色彩度等の指標により色を数値化した情報である。付着状態の導出については、以下の相関関係線が用いられる。相関関係は、離型剤毎に個別に取得される。ここでは一例として、付着状態として膜厚を導出している。図7は、膜厚と色数値化情報との対応関係を示すグラフである。なお、図7において、横軸は膜厚(μm)を示し、縦軸は色数値化情報(明度L)を示す。図7において、実線で示す線41は、それぞれ検量線である。すなわち、線41は、予め離型剤を付着させた際に計測した各膜厚と、それぞれの膜厚の時におけるL値とを丸印でプロットし近似曲線で結んだものである。撮影した画像を測色計で計測すると、その画像に対応する明度(L値)等の色数値化情報が取得される。膜厚は、例えば、非接触式の膜厚センサにより測定される。この検量線41を用いることにより、各領域のL値から各領域における膜厚を高精度に導出することができる。すなわち、離型剤の付着状態を導出する工程は、画像データから取得した色数値化情報に基づいて、離型剤の膜厚を導出する工程を含む。使用する色数値化情報は、離型剤の付着状態と相関関係を有する指標であればよく、例えば、明度(L値)、色度a値またはb値等を使用することができる。すなわち、離型剤の種類に応じて使用する色数値化情報を選択する。また、付着状態を導出する工程は、予め計測された画像の色数値化情報と離型剤の付着状態との相関関係に基づいて、撮影工程で取得した画像データに応じた色数値化情報から、付着状態を導出する工程を含む。付着状態に関するデータとは、離型剤の付着に関する情報であり、例えば、膜厚に対応する情報、付着量、付着量の大小、付着量が基準値を超えているか否か、付着量のばらつき等である。膜厚に対応する情報は、膜厚の数値であってもよいし、膜厚をレベルで表示したもの、膜厚の大小、膜厚が基準値を超えているか否か、膜厚のばらつき等、膜厚に対応する情報であれば表示形態は制限されない。付着状態に関するデータは、金型上での分布として導出してもよいし、所定の位置の付着情報だけを導出してもよい。例えば、離型剤が付着し難い位置における金型の外観画像を撮影し、付着情報を取得してもよい。なお、色数値化情報と付着状態との相関関係は、検量線以外の形態で表されていてもよい。なお、この付着状態の導出は、離型剤の付着状態の評価システム51に含まれる導出部53を用いて行われる。導出部53としては、例えば、離型剤の付着状態の評価システム51に含まれ、離型剤の付着状態の評価システム51全体の動作を制御する制御装置が用いられる。
【0042】
図8は、可動金型14の表面26に付着した離型剤の膜厚分布の状態の画像を示す概略図である。図8を参照して、画像29には、3次元画像が離型剤の膜厚によって色分けして表示されている。図8では、膜厚スケールに応じて色が割り当てられている。例えば、膜厚が0μmの場合は黒色で表示され、膜厚の数値が増えるのに応じて、寒色(青色)から暖色(赤色)が段階的もしくは連続的に割り当てられている。図8に示す画像29を視認することにより、離型剤が表面に適切に付着しているか否かを容易に評価することができる。なお、この出力は、離型剤の付着状態の評価システム51に含まれる出力部54を用いて行われる。出力部54としては、例えば、離型剤の付着状態の評価システム51に含まれ、制御装置からの信号に応じて画像の表示等を行うディスプレイやプリンタが用いられる。
【0043】
本発明に係る離型剤の付着状態の評価方法によると、付着後に視認可能な離型剤の一例として、溶媒と有機酸塩とを含む離型剤を用いている。このような離型剤は、離型剤そのものを使用して膜厚を測定することができ、何らの異物を混入させるものではない。そして、離型剤に含まれる有機酸塩は、例えば溶媒を離脱させることにより、白色の被膜として金型の表面に残存させることができる。このような白色の被膜は、視認性が良好であり、外観から容易に離型剤の残存箇所を把握しやすい。そうすると、金型の表面の画像を取得した際に、この得られた画像から離型剤の付着状態の導出工程により、離型剤の付着状態を容易に導出することができる。そして、導出した離型剤の付着状態に関するデータを出力して、金型の表面に付着された離型剤の付着状態を正確に評価することができる。なお、このような方法は、離型剤に何ら添加物を混入することなく離型剤をそのまま用いるため、離型剤の取り扱いが簡便となる。したがって、このような離型剤の付着状態の評価方法によると、正確かつ簡便に、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価することができる。
【0044】
なお、本発明に係る離型剤の付着状態の評価方法によると、離型剤に付着状態を評価するために用いられる何らの不純物も添加しないため、膜厚測定後の金型洗浄が不要となる。したがって、鋳造品としての製品を製造する途中の段階で、上記した画像データ取得部28による撮影等により、製品を製造している途中における離型剤の付着状態の評価を行うことができる。例えば、量産している状態における定期的な離型剤の付着状態の評価を実施する際に、特に有効に採用される。すなわち、各領域における最適な離型剤の付着量、そしてこれを実現する最適な離型剤の付着方法については、金型形状や鋳造条件、周辺設備の能力等に応じて任意に決められる。さらに、鋳造品を製造しながら、途中で本発明に係る離型剤の塗布状態の評価方法を実施することにより、離型剤の付着方法および条件を効率的に検討することができる。
【0045】
本実施形態によると、画像を取得する工程は、離型剤が付着した金型の3次元画像を取得する工程を含む。ダイカスト鋳造において用いられる金型については、複雑な形状、具体的には例えば、凹凸形状の数や起伏が大きいものが多い。このような金型において、金型の3次元画像を取得し、膜厚測定位置と膜厚に対応する情報を対応付けて可視化することにより、より詳細な離型剤の付着状態の情報を得ることができる。つまり、3次元画像上に膜厚に対応する情報を重ねて表示することにより、膜厚に対応する情報の分布を視覚化する。これにより、金型の広い範囲にわたる離型剤の付着情報を把握することができる。具体的には例えば、複雑に入り組んだ金型において離型剤が付着されていない部分がないか、凹部の奥まで離型剤が確実に付着できているか、ダイカスト鋳造を複数回重ねるうちに、離型剤が細部に蓄積されていないか等を容易に把握することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0046】
本実施形態によると、外観の画像データは、カラー画像を含む。よって、カラー画像の情報を加味して、離型剤の付着状態を導出することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0047】
本実施形態によると、離型剤の付着状態に関するデータは、離型剤の膜厚に対応するデータである。よって、離型剤の付着量、すなわち、離型剤の膜厚を高精度に導出することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0048】
本実施形態によると、色数値化情報は、明度、色相、彩度、色度または色彩度である。よって、色相等を利用して離型剤の付着状態を導出することができる。したがって、より正確に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0049】
本実施形態によると、データを出力する工程は、金型の3次元画像と離型剤の付着状態の分布を対応させて表示する工程を含む。よって、視覚的に離型剤の付着状態の分布を金型の3次元画像に照らし合わせて把握することができる。したがって、より容易に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0050】
本実施形態によると、データを出力する工程は、離型剤の付着状態として導出された離型剤の膜厚に応じて色分けして表現された画像データを生成して出力する工程を含む。よって、色の違いにより膜厚が異なることが容易に生成された画像から視覚的に認識することができる。したがって、より効率的に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0051】
本発明に係る離型剤の付着状態の評価システムは、ダイカスト鋳造に用いられ、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価する離型剤の付着状態の評価システムである。離型剤の付着状態の評価システムは、金型の外観の画像データを取得する画像データ取得部と、金型の外観の画像データに対応する色数値化情報と、予め取得している色数値化情報と離型剤の付着状態との相関関係に基づいて金型の表面における離型剤の付着状態を導出する導出部と、導出部により導出された離型剤の付着状態に関するデータを出力する出力部と、を含む。
【0052】
このような離型剤の付着状態の評価システムによると、正確かつ簡便に、金型に付着させた離型剤の付着状態を評価することができる。
【0053】
上記離型剤の付着状態の評価システムにおいて、画像データ取得部は、3Dスキャナーを含んでもよい。画像データ取得部は、3Dスキャナーで撮影することにより金型の外観の3次元画像データを取得してもよい。出力部は、金型の3次元画像に離型剤の付着状態を重ねて表示してもよい。このようにすることにより、3次元的な離型剤の付着状態を視覚的に容易に把握することができる。したがって、より容易に離型剤の付着状態を評価することができる。
【0054】
(他の実施の形態)
なお、上記の実施の形態においては、金型の外観画像を撮影する撮像素子は、3Dスキャナーに内蔵されていたが、別々に配置されていてもよい。また、3次元画像を撮影しない場合には、3Dスキャナーは不要である。また、金型の外観画像としてカラー画像を取得することにしたが、これに限らず、付着後の離型剤被膜の特徴(色相、明度等)を示すのに適する波長におけるモノクロ画像を取得することにしてもよい。また、3次元画像を取得した場合は、金型の平面位置情報と厚さ方向の情報を含む画像が得られるため、より詳細な離型剤付着状態を評価することができるため好適であるが、これに限らず、2次元の画像を取得することにしてもよい。
【0055】
また、上記の実施の形態においては、図4に示す工程S30において、乾燥工程を含むこととしたが、使用する離型剤によっては、乾燥工程は省略等も可能である。
【0056】
本発明の評価方法および評価システムは、上述のダイカスト離型剤と同様に、金型等に塗布すると視認性のある皮膜を形成する潤滑剤や離型剤等の加工用液体の付着状態の評価にも使用することができる。加工用液体の一例としては、非黒鉛系の塑性加工用潤滑剤等が挙げられる。例えば、非黒鉛系塑性加工用潤滑剤は、カルボン酸化合物等の有機酸塩を含み、金型に塗布(潤滑剤付着工程)されると白色の被膜を形成する。画像データ取得部により塑性加工用金型の外観および色数値化情報を取得(画像データ取得工程)し、予め取得した色数値化情報と潤滑剤の付着状態の相関関係に基づいて潤滑剤の付着状態を導出(付着状態導出工程)し、その結果を出力(データ出力工程)することができるので、本発明の評価方法および評価システムを好適に用いることができる。
【0057】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
11 ダイカスト装置、13 固定金型、14 可動金型、15 射出スリーブ、16 注入ピストン、17 キャビティ、18 注入口、19 内壁面、21 プランジャーチップ、22 射出ロッド、24 外径面、25,26 表面、27 離型剤吐出部材、28 画像データ取得部、29 画像、31 合わせ面、32 キャビティ面、33 中央、34,35,36,37 領域、41 線(検量線)、51 離型剤の付着状態の評価システム、53 導出部、54 出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8