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特許7566220制御装置、制御システムおよびメッセージ遅延検知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】制御装置、制御システムおよびメッセージ遅延検知方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/02 20090101AFI20241004BHJP
【FI】
H04W24/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2024542480
(86)(22)【出願日】2022-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2022031729
(87)【国際公開番号】W WO2024042615
(87)【国際公開日】2024-02-29
【審査請求日】2024-07-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】明日香 昌
(72)【発明者】
【氏名】板垣 沙知
(72)【発明者】
【氏名】徳丸 真
【審査官】石原 由晴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/095413(WO,A1)
【文献】特表2016-527812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の制御装置と第2の制御装置とが通信装置を経由してメッセージの送受信を行う制御システムにおける前記第2の制御装置である制御装置であって、
前記第1の制御装置から送信された前記メッセージである第1のメッセージを前記通信装置経由で受信し、前記通信装置経由で前記第1の制御装置に対して前記メッセージである第2のメッセージを送信する通信部と、
前記第1のメッセージに付与されている前記第1の制御装置の第1の満期時間による前記第1のメッセージを送信した第1の時刻情報と、前記第1の満期時間とは異なる前記制御装置の第2の満期時間による前記第1のメッセージを受信または前記第2のメッセージを送信した第2の時刻情報と、を用いて、前記第1のメッセージの遅延を検知する遅延検知部と、
前記第2の満期時間で時刻を計測する時刻計測部と、
を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記遅延検知部は、
最新の前記第1のメッセージである第1の最新メッセージを受信したときの最新の第2の時刻情報と前回の前記第1のメッセージである第1の前回メッセージを受信したときの前回の第2の時刻情報との差分である第2の時刻情報についての差分と、
前記第1の最新メッセージに付与されている前記第1の最新メッセージの送信時刻と前記第1の前回メッセージに付与されている前記第1の前回メッセージの送信時刻との差分である第1の時刻情報についての差分と、
の第1の差分の絶対値が規定された第1の遅延閾値未満であり、かつ、
前記最新の第2の時刻情報と、
前記第1の最新メッセージに付与されている第2の時刻情報であって前記第1の制御装置が前記第1の最新メッセージを送信する前に受信した最新の第2のメッセージである第2の最新メッセージに付与されている前記第2の最新メッセージの前記制御装置での送信時刻である前回の第2の時刻情報と、
の第2の差分が規定された第2の遅延閾値未満の場合、前記第1のメッセージで遅延は発生していないと判定し、
前記第1の差分の絶対値が前記第1の遅延閾値以上、および前記第2の差分が前記第2の遅延閾値以上のうち少なくとも1つに該当する場合、前記第1のメッセージで遅延が発生していると判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記遅延検知部は、前記第1の制御装置の前記第1の満期時間が既知の場合、前記第1のメッセージに付与されている第1の時刻情報に基づいて、前記第1の満期時間が変化しているか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記遅延検知部は、前記第1の制御装置の前記第1の満期時間が登録された満期時間管理テーブルを保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記遅延検知部は、前記第1の制御装置が起動したときに前記第1の制御装置から送信されるメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報、および前記第1の制御装置から周期的に送信されるメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報のうち少なくとも1つによって、前記満期時間管理テーブルに登録する情報を取得する、
ことを特徴とする請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記遅延検知部は、前記第1の制御装置が前記第1の満期時間の情報を含めて周期的にメッセージを送信している状況において前記制御装置が新たに起動する場合、前記第1の制御装置から取得したメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報を確認し、前記第1の満期時間と異なる前記第2の満期時間を設定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記遅延検知部は、新たに起動する前記第1の制御装置から前記第2の満期時間の取得要求のメッセージを前記通信部経由で取得した場合、新たに起動する前記第1の制御装置に対して前記通信部から前記第2の満期時間の情報を含むメッセージを送信する制御を行う、
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記遅延検知部は、前記制御装置が新たに起動する場合、前記第1の制御装置に対して前記第1の満期時間の取得要求のメッセージを前記通信部経由で送信する制御を行い、前記第1の制御装置から前記第1の満期時間の情報を含むメッセージを前記通信部経由で取得する、
ことを特徴とする請求項5に記載の制御装置。
【請求項9】
前記遅延検知部は、前記第1の制御装置から周期的に送信されるメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報に基づいて、前記第1のメッセージの遅延を検知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
第1の制御装置と、
請求項1から9のいずれか1つに記載の制御装置である第2の制御装置と、
を備え、
前記第1の制御装置が送信する第1のメッセージに付与される前記第1のメッセージを送信した第1の時刻情報の第1の満期時間は、前記第2の制御装置が前記第1のメッセージを受信または第2のメッセージを送信した第2の時刻情報の第2の満期時間と異なる、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項11】
第1の制御装置と第2の制御装置とが通信装置を経由してメッセージの送受信を行う制御システムにおける前記第2の制御装置である制御装置のメッセージ遅延検知方法であって、
通信部が、前記第1の制御装置から送信された前記メッセージである第1のメッセージを前記通信装置経由で受信し、前記通信装置経由で前記第1の制御装置に対して前記メッセージである第2のメッセージを送信する通信ステップと、
遅延検知部が、前記第1のメッセージに付与されている前記第1の制御装置の第1の満期時間による前記第1のメッセージを送信した第1の時刻情報と、前記第1の満期時間とは異なる前記制御装置の第2の満期時間による前記第1のメッセージを受信または前記第2のメッセージを送信した第2の時刻情報と、を用いて、前記第1のメッセージの遅延を検知する遅延検知ステップと、
時刻計測部が、前記第2の満期時間で時刻を計測する時刻計測ステップと、
を含むことを特徴とするメッセージ遅延検知方法。
【請求項12】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、
最新の前記第1のメッセージである第1の最新メッセージを受信したときの最新の第2の時刻情報と前回の前記第1のメッセージである第1の前回メッセージを受信したときの前回の第2の時刻情報との差分である第2の時刻情報についての差分と、
前記第1の最新メッセージに付与されている前記第1の最新メッセージの送信時刻と前記第1の前回メッセージに付与されている前記第1の前回メッセージの送信時刻との差分である第1の時刻情報についての差分と、
の第1の差分の絶対値が規定された第1の遅延閾値未満であり、かつ、
前記最新の第2の時刻情報と、
前記第1の最新メッセージに付与されている第2の時刻情報であって前記第1の制御装置が前記第1の最新メッセージを送信する前に受信した最新の第2のメッセージである第2の最新メッセージに付与されている前記第2の最新メッセージの前記制御装置での送信時刻である前回の第2の時刻情報と、
の第2の差分が規定された第2の遅延閾値未満の場合、前記第1のメッセージで遅延は発生していないと判定し、
前記第1の差分の絶対値が前記第1の遅延閾値以上、および前記第2の差分が前記第2の遅延閾値以上のうち少なくとも1つに該当する場合、前記第1のメッセージで遅延が発生していると判定する、
ことを特徴とする請求項11に記載のメッセージ遅延検知方法。
【請求項13】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、前記第1の制御装置の前記第1の満期時間が既知の場合、前記第1のメッセージに付与されている第1の時刻情報に基づいて、前記第1の満期時間が変化しているか否かを判定する、
ことを特徴とする請求項11に記載のメッセージ遅延検知方法。
【請求項14】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、前記第1の制御装置の前記第1の満期時間が登録された満期時間管理テーブルを保持する、
ことを特徴とする請求項11に記載のメッセージ遅延検知方法。
【請求項15】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、前記第1の制御装置が起動したときに前記第1の制御装置から送信されるメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報、および前記第1の制御装置から周期的に送信されるメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報のうち少なくとも1つによって、前記満期時間管理テーブルに登録する情報を取得する、
ことを特徴とする請求項14に記載のメッセージ遅延検知方法。
【請求項16】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、前記第1の制御装置が前記第1の満期時間の情報を含めて周期的にメッセージを送信している状況において前記制御装置が新たに起動する場合、前記第1の制御装置から取得したメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報を確認し、前記第1の満期時間と異なる前記第2の満期時間を設定する、
ことを特徴とする請求項15に記載のメッセージ遅延検知方法。
【請求項17】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、新たに起動する前記第1の制御装置から前記第2の満期時間の取得要求のメッセージを前記通信部経由で取得した場合、新たに起動する前記第1の制御装置に対して前記通信部から前記第2の満期時間の情報を含むメッセージを送信する制御を行う、
ことを特徴とする請求項15または16に記載のメッセージ遅延検知方法。
【請求項18】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、前記制御装置が新たに起動する場合、前記第1の制御装置に対して前記第1の満期時間の取得要求のメッセージを前記通信部経由で送信する制御を行い、前記第1の制御装置から前記第1の満期時間の情報を含むメッセージを前記通信部経由で取得する、
ことを特徴とする請求項15または16に記載のメッセージ遅延検知方法。
【請求項19】
前記遅延検知ステップにおいて、前記遅延検知部は、前記第1の制御装置から周期的に送信されるメッセージに含まれる前記第1の満期時間の情報に基づいて、前記第1のメッセージの遅延を検知する、
ことを特徴とする請求項11から13のいずれか1つに記載のメッセージ遅延検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、列車の制御で使用される制御装置、制御システムおよびメッセージ遅延検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の装置が相互にメッセージを交換し、列車などの制御を行うシステムがある。複数の装置がメッセージを交換する際にメッセージの送受信で遅延が発生すると、ある装置は、他の装置から送信された遅延したメッセージを用いて列車の制御を行うことで、列車の制御に失敗する可能性がある。このような問題に対して、特許文献1には、1つのマスタの通信装置と複数のスレーブの通信装置とがデータの送受信を行うシステムにおいて、複数のスレーブの通信装置が、それぞれ異なる通信周期でマスタの通信装置と通信を行う技術が開示されている。特許文献1に記載のシステムは、複数のスレーブの通信装置がそれぞれ異なる通信周期でマスタの通信装置と通信を行うことで、輻輳の発生などを回避し、遅延の発生を抑制することができる。
【0003】
複数の装置が相互にメッセージを交換し、列車などの制御を行うシステムには、装置間の通信を途中でハブなどの通信装置が中継するものもある。このようなシステムでは、途中の通信装置で障害が発生した場合にも、装置間のメッセージの送受信で遅延が発生する可能性がある。装置間の通信装置などによる遅延を検知する手法として、各装置が、送信するメッセージに時刻情報を付与することで、メッセージに含まれる時刻情報、自装置でメッセージを受信したときの時刻情報などを用いる手法がある。
【0004】
具体的には、装置Aは、メッセージごとに、メッセージの送信時刻の時刻情報を自装置から送信するメッセージに付与する。また、装置Aは、装置Bから取得したメッセージに含まれる装置Bから送信されたメッセージの送信時間の時刻情報を、ACKNOWLEDGE情報として、自装置から送信するメッセージに付与する。装置Bは、装置Aから複数のメッセージを取得することで、前回のメッセージの送信時刻と今回のメッセージの送信時刻とを比較した時間差が、自装置の時計で計測したメッセージ受信時間間隔に対して適正であれば、メッセージは遅延していないと判定する。ただし、装置Aからの複数のメッセージが同じ遅延時間を持つ場合、装置Bは、遅延を検知できない。そこで、装置Bは、装置Aからのメッセージに含まれるACKNOWLEDGE情報と、自装置で計測した現在の時間とを比較し、時間差が十分に小さい場合は装置Aから受信したメッセージは十分新しいものとして、メッセージは遅延していないと判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2020/095413号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
制御用のメッセージは、速達性を実現するため、時刻情報などに使用可能な領域の長さに制限がある。例えば、24時間で計測時間が満期時間になる場合、24時間後には時計が0から始まるということが起こる。このような制限がある場合、装置Aから送信されたメッセージが装置間のハブなどの通信装置でちょうど24時間滞留してから装置Bに出力されると、装置Bは、受信したメッセージが24時間前に装置Aから送信されたものであることを検知できない。すなわち、装置Bは、受信したメッセージが遅延していることを検知できない、という問題があった。
【0007】
ここで、メッセージに付与する時刻情報の情報量、すなわちビット数を増やして西暦などで表すことで、上記のような問題は解消できる。しかしながら、装置間で送受信するメッセージで時刻情報のためのビット数を増やす場合、通信時間が増大するとともに通信コストも増大する。また、列車などを制御する既存のシステムでは、扱う時刻情報の満期時間は決まっていると考えられるため、メッセージの構成を変更することは容易ではない。
【0008】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、メッセージの情報量を増やすことなく、受信したメッセージの遅延を検知可能な制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、第1の制御装置と第2の制御装置とが通信装置を経由してメッセージの送受信を行う制御システムにおける第2の制御装置である制御装置である。制御装置は、第1の制御装置から送信されたメッセージである第1のメッセージを通信装置経由で受信し、通信装置経由で第1の制御装置に対してメッセージである第2のメッセージを送信する通信部と、第1のメッセージに付与されている第1の制御装置の第1の満期時間による第1のメッセージを送信した第1の時刻情報と、第1の満期時間とは異なる制御装置の第2の満期時間による第1のメッセージを受信または第2のメッセージを送信した第2の時刻情報と、を用いて、第1のメッセージの遅延を検知する遅延検知部と、第2の満期時間で時刻を計測する時刻計測部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の制御装置は、メッセージの情報量を増やすことなく、受信したメッセージの遅延を検知可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る制御システムの構成例を示す図
図2】実施の形態1に係る制御装置の構成例を示す図
図3】比較例として制御装置が同じ満期時間の時刻情報を用いて、通信装置を経由してメッセージを送受信する様子を示す第1のシーケンス図
図4】比較例として制御装置が同じ満期時間の時刻情報を用いて、通信装置を経由してメッセージを送受信する様子を示す第2のシーケンス図
図5】実施の形態1に係る制御装置が異なる満期時間の時刻情報を用いて、通信装置を経由してメッセージを送受信する様子を示すシーケンス図
図6】実施の形態1に係る制御装置が受信したメッセージの遅延を検知する動作を示すフローチャート
図7】実施の形態1に係る制御装置を実現する処理回路をプロセッサおよびメモリで構成する場合の処理回路の構成例を示す図
図8】実施の形態1に係る制御装置を実現する処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図
図9】実施の形態2に係る制御装置がメッセージの送信元の制御装置の満期時間の変化を検知する動作を示すフローチャート
図10】実施の形態2に係る制御装置の遅延検知部が保持する満期時間管理テーブルの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示の実施の形態に係る制御装置、制御システムおよびメッセージ遅延検知方法を図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る制御システム100の構成例を示す図である。制御システム100は、列車制御装置11と地上制御装置21a,21cとがメッセージの交換、すなわち通信を行って、列車10の走行を制御するシステムである。制御システム100は、列車10と、地上制御装置21a,21cと、レイヤ2スイッチ24a,24c,25a~25cと、地上無線装置22a~22cと、アンテナ23a~23cと、を備える。地上無線装置22a~22cおよびアンテナ23a~23cは、列車10が走行する線路40に沿って設置されている。地上無線装置22aに接続されるアンテナ23aによって通信エリア30aが形成され、地上無線装置22bに接続されるアンテナ23bによって通信エリア30bが形成され、地上無線装置22cに接続されるアンテナ23cによって通信エリア30cが形成される。図1の例では、列車10は、通信エリア30a、通信エリア30b、通信エリア30cの順で通過するように走行する。
【0014】
列車10は、列車制御装置11と、車上無線装置12と、アンテナ13と、を備える。なお、図1ではアンテナ13は列車10の外部にあるが、アンテナ13も列車10に含まれるものとする。列車制御装置11は、生成したメッセージを、車上無線装置12、およびアンテナ13を経由して、地上制御装置21a,21cに対して送信する。地上制御装置21a,21cは、アンテナ23a~23c、地上無線装置22a~22c、レイヤ2スイッチ24a,24c,25a~25cなどを経由して、列車制御装置11から送信されたメッセージを受信する。また、地上制御装置21a,21cは、生成したメッセージを、レイヤ2スイッチ24a,24c,25a~25c、地上無線装置22a~22c、アンテナ23a~23c、などを経由して、列車制御装置11に対して送信する。列車制御装置11は、アンテナ13、および車上無線装置12を経由して、地上制御装置21a,21cから送信されたメッセージを受信する。
【0015】
本実施の形態において、列車制御装置11は、レイヤ2スイッチ24a,24c,25a~25c、地上無線装置22a~22c、アンテナ23a~23c、アンテナ13、車上無線装置12などを経由して受信する地上制御装置21a,21cからのメッセージの遅延を検知する。同様に、地上制御装置21a,21cは、車上無線装置12、アンテナ13、アンテナ23a~23c、地上無線装置22a~22c、レイヤ2スイッチ24a,24c,25a~25cなどを経由して受信する列車制御装置11からのメッセージの遅延を検知する。列車制御装置11および地上制御装置21a,21cは、送信するメッセージに付与する時刻情報、およびメッセージを受信したときの時刻情報について、それぞれが異なる満期時間で時刻を計測する。
【0016】
列車制御装置11および地上制御装置21a,21cは、列車10の走行を制御する構成は異なるが、メッセージの遅延を検知する構成は同様である。本実施の形態では、メッセージの遅延を検知することについてのみ説明するため、列車制御装置11および地上制御装置21a,21cを区別しない場合は制御装置50とし、制御装置50の構成および動作について説明する。図2は、実施の形態1に係る制御装置50の構成例を示す図である。制御装置50は、通信部51と、遅延検知部52と、時刻計測部53と、を備える。制御装置50は、第1の制御装置と第2の制御装置とが通信装置を経由してメッセージの送受信を行う制御システム100における第2の制御装置である。第1の制御装置および第2の制御装置は制御装置50であり、通信装置は、車上無線装置12、地上無線装置22a~22c、レイヤ2スイッチ24a,24c,25a~25cなどである。通信装置は、複数の通信装置から構成されていてもよい。例えば、第1の制御装置が列車制御装置11の場合、第2の制御装置は地上制御装置21aまたは地上制御装置21cであり、第1の制御装置が地上制御装置21aまたは地上制御装置21cの場合、第2の制御装置は列車制御装置11である。
【0017】
通信部51は、第1の制御装置から送信されたメッセージである第1のメッセージを通信装置経由で受信し、通信装置経由で第1の制御装置に対してメッセージである第2のメッセージを送信する。
【0018】
遅延検知部52は、第1のメッセージに付与されている第1の制御装置の第1の満期時間による第1のメッセージを送信した第1の時刻情報と、第1の満期時間とは異なる制御装置50の第2の満期時間による第1のメッセージを受信または第2のメッセージを送信した第2の時刻情報と、を用いて、第1のメッセージの遅延を検知する。
【0019】
時刻計測部53は、第2の満期時間で時刻を計測する。
【0020】
本実施の形態において、第1の制御装置が送信する第1のメッセージに付与される第1のメッセージを送信した第1の時刻情報の第1の満期時間は、第2の制御装置が第1のメッセージを受信または第2のメッセージを送信した第2の時刻情報の第2の満期時間と異なる。
【0021】
つづいて、2つの制御装置50が通信装置を経由してメッセージを送受信する動作について説明する。ここで、複数の制御装置50がそれぞれ異なる満期時間で時刻を計測する必要性を説明するため、比較例として、複数の制御装置50が同じ満期時間で時刻を計測した場合のメッセージの送受信の様子について説明する。
【0022】
図3は、比較例として制御装置50A,50Bが同じ満期時間の時刻情報を用いて、通信装置60を経由してメッセージを送受信する様子を示す第1のシーケンス図である。図3において、制御装置50Aが前述の第1の制御装置に相当し、制御装置50Bが前述の第2の制御装置に相当し、通信装置60が前述の通信装置に相当する。通信装置60は、第1の制御装置である制御装置50Aと第2の制御装置である制御装置50Bとの間にあればよいので、図1の例のように複数の装置によって構成されていてもよい。図3において、制御装置50Aが列車制御装置11の場合、制御装置50Bは地上制御装置21aまたは地上制御装置21cであり、制御装置50Aが地上制御装置21aまたは地上制御装置21cの場合、制御装置50Bは列車制御装置11である。
【0023】
まず、制御装置50Aの通信部51は、送信するメッセージである第1のメッセージに送信時刻の情報である第1の時刻情報TA_1を付与して、第1のメッセージを送信する(ステップS11)。なお、送信時刻については、第1のメッセージが生成された時刻であってもよい。以降についても同様とする。通信装置60は、制御装置50Aから送信された第1のメッセージを、遅延δ1の遅延時間で中継して制御装置50Bに送信する(ステップS12)。制御装置50Bの時刻計測部53は、制御装置50Aから送信され、通信装置60で中継された第1のメッセージを受信した時刻を第2の時刻情報TB_1として計測する。
【0024】
制御装置50Bの通信部51は、送信するメッセージである第2のメッセージに送信時刻の情報である第2の時刻情報TB_2を付与して、第2のメッセージを送信する(ステップS13)。なお、送信時刻については、第2のメッセージが生成された時刻であってもよい。以降についても同様とする。通信装置60は、制御装置50Bから送信された第2のメッセージを、遅延δ2の遅延時間で中継して制御装置50Aに送信する(ステップS14)。制御装置50Aの通信部51は、制御装置50Bから送信され、通信装置60で中継された第2のメッセージを受信する。
【0025】
制御装置50Aの通信部51は、送信するメッセージである第1のメッセージに送信時刻の情報である第1の時刻情報TA_2、およびACKNOWLEDGE情報として第2のメッセージに付与されている第2の時刻情報TB_2を付与して、第1のメッセージを送信する(ステップS15)。なお、図3では、ACKNOWLEDGE情報をACK情報と表記している。以降についても同様とする。通信装置60は、制御装置50Aから送信された第1のメッセージを、遅延δ3の遅延時間で中継して制御装置50Bに送信する(ステップS16)。制御装置50Bの時刻計測部53は、制御装置50Aから送信され、通信装置60で中継された第1のメッセージを受信した時刻を第2の時刻情報TB_3として計測する。
【0026】
制御装置50Bの遅延検知部52は、第1の時刻情報TA_1,TA_2、および第2の時刻情報TB_1,TB_2,TB_3を用いて、制御装置50Aの時刻情報を確認用の式(1)、およびACKNOWLEDGE情報を確認用の式(2)を満たすか否かを確認する。
【0027】
|(TB_3-TB_1)-(TA_2-TA_1)|=δ3-δ1<ε1 …(1)
【0028】
TB_3-TB_2<ε2 …(2)
【0029】
なお、式(1)においてε1は規定された第1の遅延閾値であり、式(2)においてε2は規定された第2の遅延閾値である。制御装置50Bの遅延検知部52は、式(1)および式(2)を満たす場合、制御装置50Aから送信される第1のメッセージで遅延は発生していないと判定する。制御装置50Bの遅延検知部52は、式(1)および式(2)のうち少なくとも1つを満たさない場合、制御装置50Aから送信される第1のメッセージで遅延が発生していると判定する。
【0030】
つぎに、図3において、制御装置50Aの時刻計測部53が計測する第1の時刻情報の第1の満期時間、および制御装置50Bの時刻計測部53が計測する第2の時刻情報の第2の満期時間がともに24時間であり、通信装置60において、制御装置50Aから送信された第1のメッセージが通常の遅延δ3の遅延時間よりも24時間長く滞留すなわち遅延して制御装置50Bに送信される場合について説明する。図4は、比較例として制御装置50A,50Bが同じ満期時間の時刻情報を用いて、通信装置60を経由してメッセージを送受信する様子を示す第2のシーケンス図である。
【0031】
まず、制御装置50Aの通信部51は、後述するステップS22以降の動作のおおよそ24時間前において、図3に示すステップS14と同様の第2のメッセージを受信し、図3に示すステップS15と同様、送信するメッセージである第1のメッセージに送信時刻の情報である第1の時刻情報TA_2、およびACKNOWLEDGE情報として第2のメッセージに付与されている第2の時刻情報TB_2を付与して、第1のメッセージを送信する(ステップS21)。ただし、ステップS21で制御装置50Aから送信された第1のメッセージは、通信装置60において通常よりも24時間長く滞留することになる。
【0032】
制御装置50Aの通信部51は、送信するメッセージである第1のメッセージに送信時刻の情報である第1の時刻情報TA_1を付与して、第1のメッセージを送信する(ステップS22)。ステップS22の第1のメッセージに付与される第1の時刻情報TA_1は、ステップS21の第2のメッセージに付与される第1の時刻情報TA_2のおおよそ24時間後であり、ステップS21の第1の時刻情報TA_2からステップS22の第1の時刻情報TA_1までの間で第1の満期時間が1度満期になっているものとする。
【0033】
通信装置60は、制御装置50Aから送信された第1のメッセージを、遅延δ1の遅延時間で中継して制御装置50Bに送信する(ステップS23)。制御装置50Bの時刻計測部53は、制御装置50Aから送信され、通信装置60で中継された第1のメッセージを受信した時刻を第2の時刻情報TB_1として計測する。ステップS23の第1のメッセージの受信時刻である第2の時刻情報TB_1は、ステップS21の第2のメッセージに付与される第2の時刻情報TB_2のおおよそ24時間後であり、ステップS21の第2の時刻情報TB_2からステップS23の第2の時刻情報TB_1までの間で第2の満期時間が1度満期になっているものとする。
【0034】
制御装置50Bの通信部51は、送信するメッセージである第2のメッセージに送信時刻の情報である第2の時刻情報TB_2を付与して、第2のメッセージを送信する(ステップS24)。通信装置60は、制御装置50Bから送信された第2のメッセージを、遅延δ2の遅延時間で中継して制御装置50Aに送信する(ステップS25)。制御装置50Aの通信部51は、制御装置50Bから送信され、通信装置60で中継された第2のメッセージを受信する。
【0035】
ここで、通信装置60は、ステップS21で制御装置50Aから受信していた第1のメッセージを、24時間+遅延δ3の遅延時間で中継して制御装置50Bに送信する(ステップS26)。制御装置50Bの時刻計測部53は、制御装置50Aから送信され、通信装置60で中継された第1のメッセージを受信した時刻を第2の時刻情報TB_3として計測する。
【0036】
制御装置50Bの遅延検知部52は、図3の例の場合と同様、第1の時刻情報TA_1,TA_2、および第2の時刻情報TB_1,TB_2,TB_3を用いて、制御装置50Aの時刻情報を確認用の式(1)、およびACKNOWLEDGE情報を確認用の式(2)を満たすか否かを確認する。このとき、式(1)は、実際には以下のようになる。なお、式(2)は前述と同様のため、記載を省略する。
【0037】
|(TB_3-TB_1)-(TA_2-TA_1)|=MOD(24+δ3,24)-δ1=δ3-δ1<ε1 …(1)
【0038】
このように、通信装置60において、制御装置50Aの第1の満期時間および制御装置50Bの第2の満期時間と同じ時間の遅延が発生した場合、制御装置50Bの遅延検知部52は、通信装置60で遅延が発生していることを検知できない。すなわち、制御装置50Bの遅延検知部52は、ステップS26で受信した第1のメッセージに付与されている第1の時刻情報TA_2およびACKNOWLEDGE情報の第2の時刻情報TB_2が実際にはおおよそ24時間前のものであるが、直近の時刻情報として認識してしまう。
【0039】
そのため、本実施の形態では、制御装置50Aの第1の満期時間および制御装置50Bの第2の満期時間を異なる満期時間にする。図5は、実施の形態1に係る制御装置50A,50Bが異なる満期時間の時刻情報を用いて、通信装置60を経由してメッセージを送受信する様子を示すシーケンス図である。図5において、制御装置50Aの第1の満期時間を24時間とし、制御装置50Bの第2の満期時間を23時間とする。なお、通信装置60での第1のメッセージの滞留時間は図4の例の場合と同様、通常の遅延δ3の遅延時間よりも24時間長いものとする。
【0040】
まず、制御装置50Aの通信部51は、後述するステップS32以降の動作のおおよそ24時間前において、図3に示すステップS14と同様の第2のメッセージを受信し、図3に示すステップS15と同様、送信するメッセージである第1のメッセージに送信時刻の情報である第1の時刻情報TA_2、およびACKNOWLEDGE情報として第2のメッセージに付与されている第2の時刻情報TB_2を付与して、第1のメッセージを送信する(ステップS31)。ただし、ステップS31で制御装置50Aから送信された第1のメッセージは、通信装置60において通常よりも24時間長く滞留することになる。
【0041】
制御装置50Aの通信部51は、送信するメッセージである第1のメッセージに送信時刻の情報である第1の時刻情報TA_1を付与して、第1のメッセージを送信する(ステップS32)。ステップS32の第1のメッセージに付与される第1の時刻情報TA_1は、ステップS31の第2のメッセージに付与される第1の時刻情報TA_2のおおよそ24時間後であり、ステップS31の第1の時刻情報TA_2からステップS32の第1の時刻情報TA_1までの間で第1の満期時間が1度満期になっているものとする。
【0042】
通信装置60は、制御装置50Aから送信された第1のメッセージを、遅延δ1の遅延時間で中継して制御装置50Bに送信する(ステップS33)。制御装置50Bの時刻計測部53は、制御装置50Aから送信され、通信装置60で中継された第1のメッセージを受信した時刻を第2の時刻情報TB_1+1として計測する。ステップS33の第1のメッセージの受信時刻である第2の時刻情報TB_1+1は、ステップS31の第2のメッセージに付与される第2の時刻情報TB_2のおおよそ24時間後であり、ステップS31の第2の時刻情報TB_2からステップS33の第2の時刻情報TB_1+1までの間で第2の満期時間が1度満期になっているものとする。
【0043】
ここで、図5の例では、制御装置50Aの第1の満期時間の24時間に対して、制御装置50Bの第2の満期時間は、23時間であり、制御装置50Aの第1の満期時間よりも1時間短い。すなわち、ステップS31に示す制御装置50Aの第1の時刻情報TA_2のときの第1の満期時間および制御装置50Bの第2の時刻情報TB_2のときの第2の満期時間はともに満期になっているが、制御装置50Bの第2の満期時間の方が1時間早く満期になる。そのため、つぎの制御装置50Aの第1の満期時間および制御装置50Bの第2の満期時間、すなわちステップS32以降では、前の制御装置50Aの第1の満期時間および制御装置50Bの第2の満期時間のときと比較して、制御装置50Bの第2の満期時間による第2の時刻情報の方が、制御装置50Aの第1の満期時間による第1の時刻情報よりも進んでいるように見える。図5の例では、制御装置50Bの第2の満期時間による第2の時刻情報の方が制御装置50Aの第1の満期時間による第1の時刻情報よりも進んでいるように見える状況を、ステップS33における第2の時刻情報「TB_1+1」のように表している。
【0044】
制御装置50Bの通信部51は、送信するメッセージである第2のメッセージに送信時刻の情報である第2の時刻情報TB_2+1を付与して、第2のメッセージを送信する(ステップS34)。通信装置60は、制御装置50Bから送信された第2のメッセージを、遅延δ2の遅延時間で中継して制御装置50Aに送信する(ステップS35)。制御装置50Aの通信部51は、制御装置50Bから送信され、通信装置60で中継された第2のメッセージを受信する。
【0045】
ここで、通信装置60は、ステップS31で制御装置50Aから受信していた第1のメッセージを、24時間+遅延δ3の遅延時間で中継して制御装置50Bに送信する(ステップS36)。制御装置50Bの時刻計測部53は、制御装置50Aから送信され、通信装置60で中継された第1のメッセージを受信した時刻を第2の時刻情報TB_3+1として計測する。
【0046】
制御装置50Bの遅延検知部52は、第1の時刻情報TA_1,TA_2、および第2の時刻情報TB_1+1,TB_2,TB_3+1を用いて、制御装置50Aの時刻情報を確認用の式(1)、およびACKNOWLEDGE情報を確認用の式(2)を満たすか否かを確認する。このとき、式(1)および式(2)は以下のようになる。
【0047】
|((TB_3+1)-(TB_1+1))-(TA_2-TA_1)|=MOD(24+δ3,24)-δ1=δ3-δ1<ε1 …(1)
【0048】
(TB_3+1)-TB_2>ε2 …(2)
【0049】
このように、通信装置60において、制御装置50Aの第1の満期時間と同じ時間の遅延が発生した場合、制御装置50Bの遅延検知部52は、図4の例の場合と同様、式(1)からでは通信装置60で遅延が発生していることを検知できない。しかしながら、制御装置50Bの遅延検知部52は、式(2)を用いることで、図4の例の場合とは異なり、通信装置60で遅延が発生していることを検知できる。
【0050】
なお、通信装置60で制御装置50Aの第1の満期時間と同じ時間の遅延が発生した場合について説明したが、これに限定されない。数式による詳細な説明は省略するが、制御装置50Bの遅延検知部52は、式(1)および式(2)を用いることで、通信装置60で制御装置50Bの第2の満期時間と同じ時間の遅延が発生した場合、および、通信装置60で制御装置50Aの第1の満期時間と異なり、かつ通信装置60で制御装置50Bの第2の満期時間と異なる時間の遅延が発生した場合でも、通信装置60で遅延が発生していることを検知できる。例えば、制御装置50Bの遅延検知部52は、通信装置60で制御装置50Bの第2の満期時間と同じ時間の遅延が発生した場合、式(2)からでは通信装置60で遅延が発生していることを検知できない。しかしながら、制御装置50Bの遅延検知部52は、式(1)を用いることで、通信装置60で遅延が発生していることを検知できる。
【0051】
また、制御システム100において、制御装置50Aは、前述のような制御装置50Bの動作と同様の動作を行うことによって、制御装置50Bから送信されて受信したメッセージの遅延を検知することができる。
【0052】
図6は、実施の形態1に係る制御装置50が受信したメッセージの遅延を検知する動作を示すフローチャートである。第2の制御装置において、通信部51は、受信した第1のメッセージから第1の時刻情報および第2の時刻情報を取得する(ステップS101)。具体的には、通信部51は、第1の制御装置から送信された第1のメッセージを受信すると、第1のメッセージに付与されている当該第1のメッセージの送信時刻である第1の時刻情報を取得する。また、通信部51は、送信した第2のメッセージの送信時刻の情報である第2の時刻情報が、受信した第1のメッセージにACKNOWLEDGE情報として付与されている場合、第1のメッセージに付与されているACKNOWLEDGE情報である第2の時刻情報を取得する。時刻計測部53は、第1のメッセージを受信したときの時刻を計測し、第1のメッセージの受信時刻を第2の時刻情報として取得する(ステップS102)。
【0053】
遅延検知部52は、第1のメッセージを複数回受信したときの第2の時刻情報および各第1のメッセージに付与されている第1の時刻情報を用いて前述の式(1)に基づく第1の差分を算出する(ステップS103)。遅延検知部52は、ACKNOWLEDGE情報が付与されている第1のメッセージを受信したときの第2の時刻情報および当該ACKNOWLEDGE情報で示される第2のメッセージの送信時刻である第2の時刻情報を用いて前述の式(2)に基づく第2の差分を算出する(ステップS104)。遅延検知部52は、第1の差分の絶対値が第1の遅延閾値未満、かつ第2の差分が第2の遅延閾値未満の場合(ステップS105:Yes)、第1のメッセージで遅延は発生していないと判定する(ステップS106)。遅延検知部52は、第1の差分の絶対値が第1の遅延閾値以上、および第2の差分が第2の遅延閾値以上のうち少なくとも1つに該当する場合(ステップS105:No)、第1のメッセージで遅延が発生していると判定する(ステップS107)。
【0054】
このように、遅延検知部52は、最新の第1のメッセージである第1の最新メッセージを受信したときの最新の第2の時刻情報との第1のメッセージである第1の前回メッセージを受信したときの前回の第2の時刻情報との差分である第2の時刻情報についての差分と、第1の最新メッセージに付与されている第1の最新メッセージの送信時刻と第1の前回メッセージに付与されている第1の前回メッセージの送信時刻との差分である第1の時刻情報についての差分と、の第1の差分を算出する。また、遅延検知部52は、最新の第2の時刻情報と、第1の最新メッセージに付与されている第2の時刻情報であって第1の制御装置が第1の最新メッセージを送信する前に受信した最新の第2のメッセージである第2の最新メッセージに付与されている第2の最新メッセージの制御装置50での送信時刻である前回の第2の時刻情報と、の第2の差分を算出する。遅延検知部52は、第1の差分の絶対値が規定された第1の遅延閾値未満であり、かつ、第2の差分が規定された第2の遅延閾値未満の場合、第1のメッセージで遅延は発生していないと判定する。遅延検知部52は、第1の差分の絶対値が第1の遅延閾値以上、および第2の差分が第2の遅延閾値以上のうち少なくとも1つに該当する場合、第1のメッセージで遅延が発生していると判定する。
【0055】
つづいて、制御装置50のハードウェア構成について説明する。制御装置50において、通信部51は通信装置60と通信を行う通信機である。遅延検知部52および時刻計測部53は、処理回路により実現される。処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0056】
図7は、実施の形態1に係る制御装置50を実現する処理回路をプロセッサ91およびメモリ92で構成する場合の処理回路90の構成例を示す図である。図7に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92で構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、制御装置50の処理が結果的に実行されることになるプログラムを格納するためのメモリ92を備える。このプログラムは、処理回路90により実現される各機能を制御装置50に実行させるためのプログラムであるともいえる。このプログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
【0057】
上記プログラムは、通信部51が、第1の制御装置から送信されたメッセージである第1のメッセージを通信装置60経由で受信し、通信装置60経由で第1の制御装置に対してメッセージである第2のメッセージを送信する通信ステップと、遅延検知部52が、第1のメッセージに付与されている第1の制御装置の第1の満期時間による第1のメッセージを送信した第1の時刻情報と、第1の満期時間とは異なる制御装置50の第2の満期時間による第1のメッセージを受信または第2のメッセージを送信した第2の時刻情報と、を用いて、第1のメッセージの遅延を検知する遅延検知ステップと、時刻計測部53が、第2の満期時間で時刻を計測する時刻計測ステップと、を制御装置50に実行させるプログラムであるとも言える。
【0058】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0059】
図8は、実施の形態1に係る制御装置50を実現する処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路93の例を示す図である。図8に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組み合わせたものが該当する。処理回路については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施の形態によれば、制御装置50において、遅延検知部52は、第1のメッセージに付与されている第1の制御装置の第1の満期時間による第1のメッセージを送信した第1の時刻情報と、第1の満期時間とは異なる制御装置50である第2の制御装置の第2の満期時間による第1のメッセージを受信または第2のメッセージを送信した第2の時刻情報と、を用いて、第1のメッセージの遅延を検知する。制御システム100において、各制御装置50は、それぞれが異なる満期時間で時刻を計測する。これにより、制御装置50は、メッセージの情報量を増やすことなく、受信したメッセージの遅延を検知することができる。
【0061】
実施の形態2.
実施の形態1では、制御装置50について、列車10に搭載される列車制御装置11と、地上に設置される地上制御装置21aまたは地上制御装置21cとがメッセージを交換する場合を想定して説明した。地上に設置された地上制御装置21aまたは地上制御装置21cから見ると、通信相手となる列車10に搭載される列車制御装置11は列車10の走行に伴って移動するため、通信相手が頻繁に変わることになる。一方、地上制御装置21aおよび地上制御装置21cもメッセージを交換するが、地上制御装置21aおよび地上制御装置21cは、固定されていて移動しないので、メッセージの交換を継続して行うことになる。実施の形態2では、制御装置50が、通信相手の第1の制御装置の第1の満期周期が既知の場合において、第1の制御装置の第1の満期時間が適切か否かを検知する場合について説明する。
【0062】
実施の形態2において、制御システム100の構成は、図1に示す実施の形態1の制御システム100の構成と同様である。また、制御装置50の構成は、図2に示す実施の形態1の制御装置50の構成と同様である。ここでは、地上制御装置21aを第1の制御装置とし、地上制御装置21cを第2の制御装置として説明する。本実施の形態において、第2の制御装置の遅延検知部52は、第1の制御装置の第1の満期時間が既知の場合、第1のメッセージに付与されている第1の時刻情報に基づいて、第1の満期時間が変化しているか否かを判定する。第1の満期時間が変化している場合には、第1の満期時間が元々24時間であったのに25時間に変更されている場合があり、第1の満期時間が元々24時間で第1の時刻情報で示される時刻の表し方にも変化はないが単位時間、例えば1時間の進み方が従来よりも早くなっているまたは遅くなっている場合がある。
【0063】
第2の制御装置の遅延検知部52は、第2の制御装置および第1の制御装置の設置時に制御システム100を管理する担当者などから、第1の制御装置の第1の満期時間の情報を受け付けて保持していてもよいし、過去に第1の制御装置から受信した第1のメッセージに付与されている第1の時刻情報に基づく第1のメッセージの送信間隔から第1の満期時間を算出してもよい。すなわち、第2の制御装置の遅延検知部52は、第1の制御装置の第1の満期時間について、予め保持していてもよいし、第1の制御装置から複数の第1のメッセージを受信することでメッセージの送受信を開始後に算出してもよい。
【0064】
図9は、実施の形態2に係る制御装置50がメッセージの送信元の制御装置50の満期時間の変化を検知する動作を示すフローチャートである。第2の制御装置において、遅延検知部52は、第1の制御装置から送信される第1のメッセージを受信し、第1のメッセージに付与される第1の時刻情報を用いて、第1の制御装置の第1の時刻情報の第1の満期時間を算出する(ステップS201)。遅延検知部52は、算出した第1の満期時間と既知の第1の満期時間との差分が規定された範囲内の場合(ステップS202:Yes)、算出した第1の制御装置の第1の時刻情報の第1の満期時間は変化していないと判定する(ステップS203)。遅延検知部52は、算出した第1の満期時間と既知の第1の満期時間との差分が規定された範囲外の場合(ステップS202:No)、算出した第1の制御装置の第1の時刻情報の第1の満期時間は変化していると判定する(ステップS204)。第2の制御装置の遅延検知部52は、図9に示すフローチャートの動作を定期的に実施する。
【0065】
以上説明したように、本実施の形態において、第2の制御装置の遅延検知部52は、継続的にメッセージの送受信を行う第1の制御装置について、第1の満期時間が既知の場合、第1のメッセージに付与されている第1の時刻情報に基づいて、第1の満期時間が変化しているか否かを判定することができる。これにより、第2の制御装置の遅延検知部52は、第1の制御装置において第1の満期時間が変化していると判定した場合、例えば、制御システム100を管理する担当者などに対して通知を行うことで、第1の制御装置の状態を周知させることができる。
【0066】
なお、第2の制御装置の遅延検知部52は、第1の制御装置の第1の満期時間が登録された満期時間管理テーブルを保持していてもよい。図10は、実施の形態2に係る制御装置50の遅延検知部52が保持する満期時間管理テーブルの例を示す図である。図10において、制御装置番号は、第1の制御装置を識別するためのものであり、例えば、第2の制御装置の遅延検知部52が満期時間管理テーブルに第1の制御装置および第1の満期時間の情報を登録した順番によって付与される番号である。また、図10において、満期時間は、第1の制御装置ごとの第1の満期時間を示すものである。第2の制御装置の遅延検知部52は、図10の例では3つの第1の制御装置の第1の満期時間を管理しているが、管理する第1の制御装置の第1の満期時間の数は3つに限定されない。第2の制御装置の遅延検知部52は、図10に示すような満期時間管理テーブルを保持することで、第1の制御装置の第1の満期時間の管理が容易になる。
【0067】
第2の制御装置の遅延検知部52は、例えば、第1の制御装置が起動したときに第1の制御装置から送信されるメッセージに含まれる第1の満期時間の情報、および第1の制御装置から周期的に送信されるメッセージに含まれる第1の満期時間の情報のうち少なくとも1つによって、満期時間管理テーブルに登録する情報を取得してもよい。これにより、第2の制御装置の遅延検知部52は、制御システム100を管理する担当者などが予め満期時間管理テーブルを設定しなくても、満期時間管理テーブルに登録すべき情報を取得することができる。また、第2の制御装置の遅延検知部52は、制御システム100の運用中において新たに第1の制御装置が追加された場合でも、追加された第1の制御装置から第1の満期時間の情報を取得できるので、柔軟に対応することができる。
【0068】
ここで、前述のように第1の制御装置が第1の満期時間の情報を含めて周期的にメッセージを送信している状況において第2の制御装置が新たに起動する場合、第2の制御装置の遅延検知部52は、第1の制御装置から取得したメッセージに含まれる第1の満期時間の情報を確認し、第1の満期時間と異なる第2の満期時間を設定してもよい。これにより、第2の制御装置の遅延検知部52は、制御システム100を管理する担当者などが調整することなく、第1の制御装置の第1の満期時間と異なる第2の満期時間を設定することができる。すなわち、制御システム100において、複数の制御装置50は、それぞれが異なる満期時間を設定することができる。
【0069】
制御システム100において、新たに起動する制御装置50は、起動時、通信すべき制御装置50に対して満期時間の取得要求のメッセージを出力し、満期時間の取得要求のメッセージを受信した制御装置50が自装置の満期時間の情報を返送することによって、通信すべき制御装置50の満期時間の情報を収集してもよい。すなわち、第2の制御装置の遅延検知部52は、新たに起動する第1の制御装置から第2の満期時間の取得要求のメッセージを通信部51経由で取得した場合、新たに起動する第1の制御装置に対して通信部51から第2の満期時間の情報を含むメッセージを送信する制御を行う。または、第2の制御装置の遅延検知部52は、第2の制御装置が新たに起動する場合、第1の制御装置に対して第1の満期時間の取得要求のメッセージを通信部51経由で送信する制御を行い、第1の制御装置から第1の満期時間の情報を含むメッセージを通信部51経由で取得する。これにより、制御システム100は、制御装置50が周期的に送信するメッセージに満期時間の情報を載せる必要がないので、通信負荷を下げることができる。また、制御装置50は、周期的に送信するメッセージに満期時間の情報を載せる必要がないので、周期的に送信するメッセージのフォーマットを変更する必要がない。
【0070】
第2の制御装置の遅延検知部52が図10に示す満期時間管理テーブルを保持する場合について説明したが、これに限定されない。制御システム100の各制御装置50が周期的に送信するメッセージに満期時間の情報を含むことによって、第2の制御装置の遅延検知部52は、第1の制御装置から周期的に送信されるメッセージに含まれる第1の満期時間の情報に基づいて、第1のメッセージの遅延を検知してもよい。これにより、第2の制御装置の遅延検知部52は、図10に示すような満期時間管理テーブルを使用しなくてもよいので、制御システム100において制御装置50の管理が容易になる。
【0071】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 列車、11 列車制御装置、12 車上無線装置、13,23a~23c アンテナ、21a,21c 地上制御装置、22a~22c 地上無線装置、24a,24c,25a~25c レイヤ2スイッチ、30a~30c 通信エリア、40 線路、50,50A,50B 制御装置、51 通信部、52 遅延検知部、53 時刻計測部、60 通信装置、100 制御システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10