(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】選別処理システム
(51)【国際特許分類】
B07C 5/34 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B07C5/34
(21)【出願番号】P 2024545122
(86)(22)【出願日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 JP2024013656
【審査請求日】2024-07-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2023年度、独立行政法人環境再生保全機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】黒田 真司
(72)【発明者】
【氏名】中村 保博
(72)【発明者】
【氏名】木本 勲
(72)【発明者】
【氏名】小池 徹弥
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特許第7367269(JP,B1)
【文献】特開2007-244990(JP,A)
【文献】国際公開第2023/187854(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07C 1/00- 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1選別システムと、
中央システムと、を備え、
前記第1選別システムは、
複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する第1選別装置と、
前記第1選別装置に投入される前記混合物に関する原料情報を取得する第1検出部と、
過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する第1データ格納部と、
前記第1選別装置の選別条件を変更する第1制御部と、
前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記第1データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える第1演算部と、
第1判定部と、を有し、
前記中央システムは、
過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する中央データ格納部と、
前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記中央データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える中央演算部と、を有し、
前記第1判定部は、前記第1検出部が取得した前記原料情報に基づき、前記中央システムに前記原料情報を送信するか否かを判定する、
選別処理システム。
【請求項2】
前記第1判定部は、前記第1検出部が取得した前記原料情報、前記第1データ格納部に蓄積されたデータベース、および前記第1演算部が予測した選別結果のうち、少なくとも一つ以上の情報に基づいて前記判定を行う、
請求項1に記載の選別処理システム。
【請求項3】
前記中央システムは課金額設定部を有し、
前記課金額設定部は、課金単位期間における、前記第1選別システムから前記中央システムへのデータ転送量、前記中央データ格納部への前記原料情報のデータ保存量、および前記中央演算部でのデータ処理量のうち、少なくとも1つの指標に応じて、前記第1選別システムを所有するユーザーへの課金額を設定する、
請求項1または2に記載の選別処理システム。
【請求項4】
第2選別システムをさらに備え、
前記第2選別システムは、
複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する第2選別装置と、
前記第2選別装置に投入される前記混合物に関する原料情報を取得する第2検出部と、
過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する第2データ格納部と、
前記第2選別装置の選別条件を変更する第2制御部と、
前記第2検出部が取得した前記原料情報および前記第2データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える第2演算部と、
第2判定部と、を有し、
前記第2判定部は、前記第2検出部が取得した前記原料情報に基づき、前記中央システムに前記原料情報を送信するか否かを判定する、
請求項
1または2に記載の選別処理システム。
【請求項5】
前記第1選別装置は、静電選別によって前記混合物を選別する、
請求項1
または2に記載の選別処理システム。
【請求項6】
前記混合物はプラスチック片群であり、前記物体の種類はプラスチックの材質である、
請求項1
または2に記載の選別処理システム。
【請求項7】
第1選別システムと、
中央システムと、を備え、
前記第1選別システムは、
複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する第1選別装置と、
前記第1選別装置に投入される前記混合物に関する原料情報を取得する第1検出部と、
過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する第1データ格納部と、
前記第1選別装置の選別条件を変更する第1制御部と、
前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記第1データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える第1演算部と、を有し、
前記中央システムは、
過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する中央データ格納部と、
前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記中央データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える中央演算部と、
課金額設定部と、を有し、
前記課金額設定部は、課金単位期間における、前記第1選別システムから前記中央システムへのデータ転送量、前記中央データ格納部への前記原料情報のデータ保存量、および前記中央演算部でのデータ処理量のうち、少なくとも1つの指標に応じて、前記第1選別システムを所有するユーザーへの課金額を設定する、
選別処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、選別処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の選別処理システムは、複数種類の物体を含む混合物を、物体の種類ごとに選別する。このような選別処理システムでは、同一の選別装置のなかでも投入原料の状態が変動すると、選別パフォーマンスが変化する。投入原料の状態とは、例えば組成比、比電荷、粒径、投入量等である。選別パフォーマンスとは、例えば回収率、純度等である。選別パフォーマンスを向上するために、選別対象の混合物から検出した情報に基づき、適切な選別条件を決定することが求められる。特許文献1においては、選別条件を決定する際に、2つのシステムを併用することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、2つのシステムを併用して選別条件を決定する構成において、2つのシステム間で毎回通信を行う場合に、データ通信量が増大し、システムの保守管理負担が増大するという課題がある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、2つのシステムを併用して選別条件を決定する構成において、システムの保守管理負担を軽減することが可能な選別処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る選別処理システムは、第1選別システムと、中央システムと、を備え、前記第1選別システムは、複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する第1選別装置と、前記第1選別装置に投入される前記混合物に関する原料情報を取得する第1検出部と、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する第1データ格納部と、前記第1選別装置の選別条件を変更する第1制御部と、前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記第1データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える第1演算部と、第1判定部と、を有し、前記中央システムは、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する中央データ格納部と、前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記中央データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える中央演算部と、を有し、前記第1判定部は、前記第1検出部が取得した前記原料情報に基づき、前記中央システムに前記原料情報を送信するか否かを判定する。
【0007】
本開示の第2態様に係る選別処理システムは、第1選別システムと、中央システムと、を備え、前記第1選別システムは、複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する第1選別装置と、前記第1選別装置に投入される前記混合物に関する原料情報を取得する第1検出部と、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する第1データ格納部と、前記第1選別装置の選別条件を変更する第1制御部と、前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記第1データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える第1演算部と、を有し、前記中央システムは、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する中央データ格納部と、前記第1検出部が取得した前記原料情報および前記中央データ格納部に格納された前記データベースに基づき、前記選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える中央演算部と、課金額設定部と、を有し、前記課金額設定部は、課金単位期間における、前記第1選別システムから前記中央システムへのデータ転送量、前記中央データ格納部への前記原料情報のデータ保存量、および前記中央演算部でのデータ処理量のうち、少なくとも1つの指標に応じて、前記第1選別システムを所有するユーザーへの課金額を設定する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の第1態様によれば、第1判定部が、原料情報を中央システムに送信するか否かを判定するため、第1選別システムと中央システムが通信を行う頻度を低減できる。したがって、2つのシステム間で毎回通信を行う場合と比較して、データ通信量を抑制できる。また、第2態様によれば、中央システムの使用頻度が高いユーザーから、合理的に使用料金を回収することができる。このように、データ通信量を抑制すること、あるいは、合理的に使用料金を回収することで、システムの保守管理負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の選別処理システムの構成を示す図である。
【
図2】実施の形態1の第1選別システムの構成を示す図である。
【
図3】実施の形態1に係る選別処理方法を説明するフローチャートである。
【
図4】実施の形態2の選別処理システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、図面を参照しながら、本開示の実施の形態について説明する。なお、本開示の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
図1は、実施の形態1における選別処理システム1を説明する構成図である。選別処理システム1は、第1選別システム10と、中央システム40と、を備えている。また、選別処理システム1は、第1選別システム10とは異なる複数の選別システムを備えていてもよい。
図1の例では、選別処理システム1は第2選別システム20および第3選別システム30を備えている。ただし、選別処理システム1が備える選別システムの数は変更可能である。
【0011】
第1選別システム10は、第1検出部11と、第1選別装置12と、第1処理装置13と、を有する。第1処理装置13は、第1データ格納部13aと、第1判定部13bと、第1演算部13cと、を有する。第2選別システム20および第3選別システム30は、第1選別システム10と同じ構成を有してもよい。
図1の例で、第2選別システム20は、第2検出部21と、第2選別装置22と、第2処理装置23と、を有する。第2処理装置23は、第2データ格納部23aと、第2判定部23bと、第2演算部23cと、を有する。ただし、第2選別システム20および第3選別システム30の構成は、第1選別システム10と異なっていてもよい。
【0012】
選別システム10~30は、複数種類の物体を含む混合物を、物体の種類ごとに選別するように構成されている。
図2に示すように、本実施の形態では、「複数種類の物体を含む混合物」として、プラスチック片群Pを例に説明する。
図2の例では、プラスチック片群Pに、材質が異なる2種類のプラスチック片p1、p2が含まれている。ただし、3種類以上のプラスチック片が、プラスチック片群Pに含まれていてもよい。以下では、プラスチック片p1がABSであり、プラスチック片p2がPSである場合を例に説明する。プラスチック片p1、p2は、例えば家電製品の筐体を粉砕機によって粉砕して乾燥することで得られる。プラスチック片p1、p2は、例えば10mm角程度の大きさに形成されている。
【0013】
図2に示す第1選別装置12は、静電選別によって、プラスチック片p1、p2を種類ごとに選別する。
図2の例で、第1選別装置12は、投入部121、帯電筒122、振動フィーダ123、第1電極124、第2電極125、直流電源126、回収箱127、および仕切り板128、129を備える。ただし、
図2の第1選別装置12の構成は一例に過ぎず、変更可能である。
【0014】
第1選別装置12は、互いに帯電特性が異なる複数種類のプラスチック片p1、p2が混在したプラスチック片群Pを、プラスチック片p1とプラスチック片p2とに静電選別することができる。
【0015】
投入部121は、ホッパー121aと、投入フィーダ121bとを含む。ホッパー121aには、乾燥されたプラスチック片群Pが供給される。ホッパー121aは、単位時間当たり予め定められた量のプラスチック片群Pを投入フィーダ121bに供給する。投入フィーダ121bは、ホッパー121aから投入されたプラスチック片群Pを、帯電筒122内に供給する。
【0016】
帯電筒122および振動フィーダ123は、帯電部を構成する。帯電部は、プラスチック片p1、p2の各々を帯電させて落下させる。具体的に、帯電筒122は、回転することによりプラスチック片群Pを攪拌する。帯電筒122内では、プラスチック片群Pに混在する複数種類のプラスチック片p1、p2が互いに摩擦して帯電する。帯電したプラスチック片p1、p2の各々は、摩擦帯電系列に応じた極性(プラスまたはマイナス)の電荷量を有する。この例では、ABS片のプラスチック片p1はプラスに帯電し、PS片のプラスチック片p2はマイナスに帯電する。
【0017】
帯電したプラスチック片p1、p2は、振動フィーダ123の上面の後端部に供給される。プラスに帯電したプラスチック片p1とマイナスに帯電したプラスチック片p2とは、静電気力によって吸引し合い、ペアリングする。振動フィーダ123は、プラスチック片p1、p2を上下振動させながら前方に押し出す。これにより、プラスチック片p1、p2のペアリングが解消され、プラスチック片p1、p2が図中のX方向に進行する。また、プラスチック片p1、p2は振動フィーダ123の先端から落下する。
【0018】
電極124、125および直流電源126は、電界発生部を構成する。電界発生部は、帯電した各プラスチック片に静電界を印加し、各プラスチック片の帯電状態に応じた位置に各プラスチック片を落下させる。具体的に、電極124、125は、平板状に形成されている。電極124、125は、図中のX方向に配列され、プラスチック片p1、p2の落下する経路を挟むようにして、互いに対向して配置される。第1電極124には接地電圧GNDが印加される。直流電源126は、第1電極124と第2電極125との間に所定の直流電圧を印加し、第1電極124と第2電極125との間に静電界を発生させる。
【0019】
振動フィーダ123によってペアリングが解消されたプラスチック片p1、p2が電極124、125間に落とされると、各プラスチック片は、帯電状態(極性、電荷量)に応じた静電気力により、電極124側または電極125側に引き寄せられながら落下する。つまり、各プラスチック片p1、p2は、帯電状態に応じた放物線の軌道を描き、異なる位置に落下する。この例では、プラスチック片p1は、プラスに帯電しているので、第1電極124側に落下する。一方、プラスチック片p2は、マイナスに帯電しているので、第2電極125側に落下する。
【0020】
回収箱127は、電極124、125の下方に設けられ、振動フィーダ123から電極124、125間を通過して落下したプラスチック片p1、p2を回収する。回収箱127は、直方体状に形成され、その上部は開口されている。回収箱127の開口部は、長方形状に形成されており、その長辺は図中のX方向に向けられている。
【0021】
仕切り板128、129の各々は、仕切り部材とも称される。仕切り板128、129は、回収箱127内において、図中のYZ平面と平行に配置され、図中のX方向に移動可能に設けられている。仕切り板128、129の各々のX方向の位置は、第1制御部14によって制御される。仕切り板128は第1電極124側に位置し、仕切り板129は第2電極125側に位置する。回収箱127は、仕切り板128、129によって、第1電極124側の回収室127aと、第2電極125側の回収室127bと、中間の回収室127cとに分割される。
【0022】
振動フィーダ123から電極124、125間を通過して落下した各プラスチック片p1、p2は、その帯電状態に応じて3つの回収室127a~127cのうちのいずれかに回収される。この例では、プラスチック片p1は、プラスに帯電するので、回収室127aに回収される。一方、プラスチック片p2は、マイナスに帯電するので、回収室127bに回収される。十分に帯電しなかったプラスチック片p1、p2は、回収室127cに回収される。
【0023】
回収室127aに回収されたプラスチック片p1と、回収室127bに回収されたプラスチック片p2と、回収室127cに回収されたプラスチック片p1、p2とは、搬送機(図示せず)によって運ばれ、別々の容器に収容される。
【0024】
プラスチック片群Pの一部は、予め定められた頻度で、第1検出部11によってサンプリングされる。第1検出部11は、プラスチック片群Pに関する原料情報を取得する。第1検出部11には、複数の種類のセンサが含まれていてもよい。具体例として、第1検出部11は、プラスチック片p1、p2の組成比を検出してもよい。また、第1検出部11は、プラスチック片群Pの比電荷を検出してもよい。つまり、「原料情報」は、組成比、比電荷であってもよい。また、「原料情報」に、組成比、比電荷の両方が含まれてもよく、その他の種類の情報が含まれてもよい。
【0025】
プラスチック片p1、プラスチック片p2の種類の判別方法は、特に限定されないが、例えば赤外線センサを用いてもよい。つまり、プラスチック片群Pの一部を抜き取って赤外線を照射し、反射光のスペクトルからプラスチックの種類を判別する。そして、種類が判別されたプラスチック片p1、p2の質量などを比較することで、プラスチック片群Pの組成比を算出できる。また、帯電量センサ等によってプラスチック片p1、p2の帯電量を測定し、質量で除算することで、比電荷を算出できる。プラスチック片群Pの組成比の例示として、プラスチック片p1(ABS)の含有率が60%であり、プラスチック片p2(PS)の含有率が40%であってもよい。比電荷の例示として、プラスチック片p1(ABS)の比電荷が+20nC/gであり、プラスチック片p2(PS)の比電荷が-10nC/gであってもよい。このような原料情報は、経時的に変化する場合がある。したがって第1検出部11は、例えば一定の時間間隔で、プラスチック片群Pの原料情報を取得する。
【0026】
第1検出部11は、取得した現在の原料情報を第1処理装置13に入力する。原料情報は、第1データ格納部13aに格納される。第1データ格納部13aには、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースが格納されている。第1演算部13cは、第1選別装置12の選別条件に関する設定値を出力する、解析モデルを備えている。この解析モデルは、第1検出部11が検出した現在の原料情報と、第1データ格納部13aに格納されたデータベースと、に基づき、最適な選別精度が得られるように選別条件の設定値を解析する。
【0027】
第1演算部13cの解析結果である、選別条件の設定値は、第1制御部14に入力される。第1制御部14は、第1演算部13cから入力された設定値に基づき、第1選別装置12の選別条件を制御する。例えば、第1制御部14は、X方向における仕切り板128、129の位置を制御してもよい。あるいは、第1制御部14は、帯電筒122の回転速度または傾き、直流電源126が第2電極125に印可する電圧などを制御してもよい。つまり「設定値」とは、仕切り板128、129のX方向における位置、帯電筒122の回転速度または傾き、直流電源126の電圧、等である。「設定値」に、これら複数のパラメータが含まれてもよい。
【0028】
選別システム10~30は、中央システム40と通信を行うことが可能である。選別システム10~30は、中央システム40に対して、クラウド等を介して接続されている。詳細は後述するが、第1判定部13bは、第1選別システム10が中央システム40と通信を行うか否かを判定する。同様に、第2判定部23bは、第2選別システム20が中央システム40と通信を行うか否かを判定する。
【0029】
図1に示すように、中央システム40は、中央データ格納部41と、中央演算部42と、を備える。中央データ格納部41には、過去の原料情報、選別条件、および選別精度に関するデータベース(以下、ビッグデータと称する)が格納されている。このビッグデータには、選別システム10~30から取得されたデータが含まれてもよいし、その他の選別システムあるいはシミュレーション結果等から取得されたデータが含まれてもよい。中央システム40は、このようなビッグデータを取得するため、定期的に選別システム10~30と通信を行ってもよい。あるいは、中央システム40の管理者が、手動で選別システム10~30からデータを収集し、中央データ格納部41に格納してもよい。
【0030】
中央演算部42は、中央データ格納部41に格納されたビッグデータと、選別システム10~30から受信した現在の原料情報と、に基づき、各選別システム10~30における最適な選別条件に関する設定値を演算する。この演算は、中央演算部42が有する解析モデルを用いて実行される。中央演算部42が演算した選別条件に関する設定値は、選別システム10~30に送信される。
【0031】
第1演算部13cおよび中央演算部42の解析モデルは、例えば、重回帰分析を用いてもよい。また、第1演算部13cおよび中央演算部42の解析モデルは、機械学習を用いてもよい。これらの解析モデルは、過去の原料情報、選別条件の設定値、および選別精度の組み合わせに基づいて解析を行うことで、現在の原料情報に適した選別条件の設定値を出力する。第1演算部13cおよび中央演算部42の解析モデルは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
ここで、中央システム40の中央データ格納部41には、複数の選別システム10~30における過去の原料情報、選別条件、および選別精度に関するビッグデータが蓄積されている。したがって、選別システム10~30がそれぞれ単体で選別条件の設置値を決定するよりも、中央システム40の中央演算部42がビッグデータを用いて選別条件の設置値を決定するほうが、良好な選別精度を得られる可能性が高い。また、例えば中央演算部42としてスーパーコンピュータを採用した場合など、中央演算部42の解析モデルが第1演算部13cよりも高性能である場合が考えられる。その場合も、中央演算部42が決定する設定値のほうが、第1演算部13cが決定する設定値よりも、好ましい選別精度が得られる可能性がある。その一方で、選別システム10~30が、選別条件の決定に際して、毎回中央システム40と通信を行い、中央演算部42に演算させると、データ通信量が増大するという課題が生じる。
【0033】
上記に加えて、選別システム10~30における選別条件を毎回中央システム40において決定する場合には、以下の課題も考えられる。すなわち、選別システム10~30において原料情報を取得してから、その原料情報を中央システム40に送信し、選別条件を選別システム10~30に返すまでにタイムラグが発生する。また、中央システム40の処理負荷、保守管理費用が増大する。また、選別システム10~30の所有者が互いに異なる場合に、各所有者に関する情報の窃取、改竄等の、セキュリティ上のリスクが増大する。
【0034】
上記のような課題を軽減しながら、原料情報に基づいて適切な選別条件を決定するため、本実施の形態の選別処理システム1は
図3に示すフローチャートのように処理を行う。なお、
図3のフローチャートは一例に過ぎず、本開示の範囲を限定しない。
【0035】
まず、ステップS1において、第1検出部11が現在の原料情報を取得する。第1検出部11は、この原料情報を、第1判定部13bに入力する。ステップS2において、第1判定部13bは、現在の原料情報と、第1データ格納部13aに格納されたデータベースと、を照合する。さらに、中央システム40に現在の原料情報を送信するか否かを判定する。判定の具体例として、以下の第1の判定手法、第2の判定手法が挙げられる。
【0036】
第1の判定手法では、現在の原料情報と第1データ格納部13aに格納されたデータベースとに基づき、最適な選別条件を決定し、その選別条件による選別精度を予測する。選別精度とは、例えば回収率、純度などである。予測された選別精度が閾値を超える場合は、中央システム40に原料情報を送信せず、ステップS3に進む(ステップS2:NO)。予測された選別精度が閾値を下回る場合は、ステップS5に進み、中央システム40に原料情報を送信する(ステップS2:YES)。
【0037】
第2の判定手法では、現在の原料情報が既定の数値範囲内であるか否かに基づき、判定を行う。「既定の数値範囲」は、例えば、過去の選別結果に基づいて、所望の選別精度が得られるように定められる。「過去の選別結果」とは、第1選別システム10における選別結果でもよいし、他の選別システムにおける選別結果でもよい。例えば、第1選別システム10における過去の選別結果で、好ましい選別精度が得られなかった際の原料情報が、「既定の数値範囲」に含まれないようにしてもよい。現在の原料情報が既定の数値範囲内である場合は、中央システム40に原料情報を送信せず、ステップS3に進む(ステップS2:NO)。現在の原料情報が既定の数値範囲外である場合は、ステップS5に進み、中央システム40に原料情報を送信する(ステップS2:YES)。
【0038】
以下、第2の判定方法の具体例を示す。ここでは、「既定の数値範囲」が、ABSについて、組成比が40~80%であり、比電荷が10~30nC/gであると仮定する。第1検出部11が検出した現在の原料情報について、ABSの組成比が60%であり、比電荷が20nC/gであった場合、「既定の数値範囲」の内である。したがって第1判定部13bは、中央システム40に原料情報を送信しないと判定する。第1検出部11が検出した現在の原料情報について、ABSの組成比が90%であり、比電荷が15nC/gであった場合、「既定の数値範囲」の外である。したがって第1判定部13bは、中央システム40に原料情報を送信すると判定する。
【0039】
ただし、第2の判定方法に関する上記具体例の数値範囲は、一例に過ぎない。また、第1判定部13bは、第1の判定方法および第2の判定方法を組み合わせて判定を行ってもよい。
【0040】
図3のステップS3において、第1演算部13cは、現在の原料情報と、第1演算部13cに蓄積されたデータベースと、に基づき、選別条件の設定値を出力する。ステップS6において、中央演算部42は、現在の原料情報と、中央データ格納部41に蓄積されたデータベース(ビッグデータ)と、に基づき、選別条件の設定値を出力する。ステップS4において、第1制御部14は、第1演算部13cまたは中央演算部42が出力した設定値に基づき、第1選別装置12の選別条件を制御する。
【0041】
つまり本実施の形態では、
図1、
図2に示すように、第1経路R1または第2経路R2によって、選別条件の設定値を第1制御部14に入力する。第1経路R1および第2経路R2のいずれを選択するかは、第1判定部13bが判定する。そして、中央システム40を経由せずとも好ましい選別結果が得られると予測される状況では第1経路R1が選択される。好ましい選別結果を得るために中央システム40を経由すべき状況では、第2経路R2が選択される。
【0042】
詳細は省略するが、第2選別システム20においても、同様の処理が行われてもよい。つまり、第2判定部23bが、第2検出部21が取得した現在の原料情報を、中央システム40に送信するか否かを判定してもよい。
【0043】
以上説明したように、実施の形態に係る選別処理システム1は、第1選別システム10と、中央システム40と、を備える。第1選別システム10は、複数種類の物体を含む混合物(プラスチック片群P)を物体の種類(プラスチック片p1、p2)ごとに選別する第1選別装置12と、第1選別装置12に投入される混合物に関する原料情報を取得する第1検出部11と、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する第1データ格納部13aと、第1選別装置12の選別条件を変更する第1制御部14と、第1検出部11が取得した原料情報および第1データ格納部13aに格納されたデータベースに基づき、選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える第1演算部13cと、第1判定部13bと、を有する。中央システム40は、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する中央データ格納部41と、第1検出部11が取得した原料情報および中央データ格納部41に格納されたデータベースに基づいて選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える中央演算部42と、を有する。第1判定部13bは、第1検出部11が取得した原料情報に基づき、中央システム40に原料情報を送信するか否かを判定する。
【0044】
上記のように構成された選別処理システム1によれば、第1選別システム10内で選別条件を適切に設定できる場合、第1選別システム10は中央システム40と通信を行わない。つまり、第1選別システム10と中央システム40が通信を行う頻度を低減できる。したがって、2つのシステム間で毎回通信を行う場合と比較して、データ通信量を抑制できる。また、第1選別システム10内では選別条件を適切に設定できない場合に、中央システム40と通信を行い、中央演算部42が決定した、より精度の高い選別条件の設定値を採用することができる。すなわち、選別処理システム1によれば、データ通信量と選別精度とを両立することができる。
【0045】
また、第1判定部13bは、第1検出部11が取得した原料情報、第1データ格納部13aに蓄積されたデータベース、および第1演算部13cが予測した選別結果のうち、少なくとも一つ以上の情報に基づいて判定を行ってもよい。この構成によれば、第1選別システム10単独で好ましい選別結果が得られるか否かに応じて、中央システム40に原料情報を送信するか否かを判定することができる。
【0046】
また、第2選別システム20は、第1選別システム10と同様の構成を有してもよい。つまり、第2選別システム20は、複数種類の物体を含む混合物を物体の種類ごとに選別する第2選別装置22と、第2選別装置22に投入される混合物に関する原料情報を取得する第2検出部21と、過去の原料情報、選別条件、および選別結果に関するデータベースを格納する第2データ格納部23aと、第2選別装置22の選別条件を変更する第2制御部24と、第2検出部21が取得した原料情報および第2データ格納部23aに格納されたデータベースに基づき、選別条件に関する設定値を出力する解析モデルを備える第2演算部23cと、第2判定部23bと、を有してもよい。第2判定部23bは、第2検出部21が取得した原料情報に基づき、中央システム40に原料情報を送信するか否かを判定してもよい。
【0047】
実施の形態2.
次に、実施の形態2について説明する。実施の形態2の選別処理システム1は、基本的な構成は実施の形態1と同様である。このため、実施の形態1と同様の部分は同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。
図4に示すように、実施の形態2に係る中央システム40は、課金額設定部43を有している。
【0048】
課金額設定部43は、選別システム10~30の所有者に対して、中央システム40の使用状況に応じた課金額を、課金単位期間ごとに設定する。課金単位期間とは、課金額を決定する対象となる期間である。例えば、1か月ごとに課金額を決定する場合、課金単位期間は1か月である。1週間ごとに課金額を決定する場合、課金単位期間は1週間である。課金額は、第1選別システム10から中央システム40へのデータ転送量に基づいて設定されてもよい。あるいは、課金額は、第1選別システム10から送信された原料情報についての、中央データ格納部41へのデータ保存量に基づいて設定されてもよい。あるいは、課金額は、第1選別システム10から送信された原料情報に対する、中央演算部42でのデータ処理量に基づいて設定されてもよい。
【0049】
つまり、課金額設定部43は、課金単位期間における、第1選別システム10から中央システム40へのデータ転送量、中央データ格納部41への原料情報のデータ保存量、および中央演算部42でのデータ処理量のうち、少なくとも1つの指標に応じて、第1選別システム10を所有するユーザーへの課金額を設定してもよい。この構成によれば、中央システム40の使用状況に応じた課金額を、ユーザーごとに設定することが可能となる。したがって、中央システム40の保守費用などを合理的に回収することが可能となる。これにより、システムの保守管理負担を軽減することができる。
【0050】
なお、本開示の技術的範囲は前記実施の形態に限定されず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0051】
例えば、第1判定部13b、第2判定部23b、第1演算部13c、第2演算部23c、中央演算部42、課金額設定部43等の各機能は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、プログラムメモリに格納されたプログラムを実行することにより実現される。これらの機能のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアが協働することで実現されてもよい。
【0052】
また、第1判定部13bおよび第1演算部13cの機能は同一のハードウェアによって実現されてもよい。第2判定部23bおよび第2演算部23cの機能は、同一のハードウェアによって実現されてもよい。第1データ格納部13a、第2データ格納部23a、中央データ格納部41の機能は、例えば、RAM、フラッシュメモリ、HDD、等の記憶装置によって実現されてもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、選別システム10~30が選別する「複数種類の物体を含む混合物」として、プラスチック片群Pを例に説明した。しかしながら、選別システム10~30は、プラスチック片以外の物体の混合物を選別してもよい。この場合も、本開示は、複数のシステムを併用して選別条件を決定する際に生じる課題の解決に寄与する。
【0054】
また、上記実施の形態では、静電選別によってプラスチック片を選別する場合を説明した。しかしながら、選別の方式は限定されず、例えば比重選別であってもよいし、光学選別であってもよい。比重選別とは、プラスチック片の種類ごとに比重が異なることを利用した選別方式である。例えば、プラスチック片群を振動させたり媒体に浮かべたりすると、比重が重いプラスチック片が下降し、比重が軽いプラスチック片が上昇する。
【0055】
光学選別とは、プラスチック片の種類ごとに光の反射性が異なることを利用した選別方式である。光学選別では、検出光をプラスチック片群に照射し、その反射光を検出する。検出光としては、赤外線あるいはX線等、様々な波長帯の光を用いることができる。反射光あるいはラマン散乱光のスペクトル等を検出することで、プラスチック片を種類ごとに区別することができる。このように区別した後で、エアブロー等によってプラスチック片を選別してもよい。
【0056】
また、実施の形態2において、第1判定部13b等が判定を行うことは必須の要件ではない。つまり、実施の形態2において、第1判定部13bは無くてもよい。
【0057】
また、実施の形態において言及した変形例を組み合わせたり、実施の形態における構成要素を適宜、変形、省略したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…選別処理システム 10~30…選別システム 10…第1選別システム 11…第1検出部 12…第1選別装置 13a…第1データ格納部 13b…第1判定部 13c…第1演算部 14…第1制御部 20…第2選別システム 21…第2検出部 22…第2選別装置 23a…第2データ格納部 23b…第2判定部 23c…第2演算部 24…第2制御部 40…中央システム 41…中央データ格納部 42…中央演算部 43…課金額設定部
【要約】
選別処理システムは、第1選別システムと、中央システムと、を備え、前記第1選別システムは、第1選別装置と、第1検出部と、第1データ格納部と、第1制御部と、第1演算部と、第1判定部と、を有し、前記中央システムは、中央データ格納部と、中央演算部と、を有し、前記第1判定部は、中央システムに原料情報を送信するか否かを判定する。