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特許7566226加工条件調整装置、加工システム、加工条件調整方法、加工方法、および加工条件調整プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-03
(45)【発行日】2024-10-11
(54)【発明の名称】加工条件調整装置、加工システム、加工条件調整方法、加工方法、および加工条件調整プログラム
(51)【国際特許分類】
   B23H 1/00 20060101AFI20241004BHJP
【FI】
B23H1/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2024545227
(86)(22)【出願日】2024-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2024011725
【審査請求日】2024-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118762
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 順
(72)【発明者】
【氏名】林 克彦
(72)【発明者】
【氏名】太田 信行
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特許第7126639(JP,B1)
【文献】特開2010-42499(JP,A)
【文献】特開2008-36812(JP,A)
【文献】特開平7-116927(JP,A)
【文献】国際公開第2022/210472(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00 - 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電加工に対して作業者が所望する要求仕様を取得し、前記要求仕様から加工試験の項目である加工試験項目を推論するための学習済の加工試験項目モデルを用いて、取得した前記要求仕様から最小数の前記加工試験項目を導出する試験項目推論装置と、
前記加工試験に対応する加工結果をモデル更新用データとして取得し、前記加工結果から加工条件パラメータを推論し前記加工条件パラメータから前記加工結果を推論するための学習済の基準加工結果モデルと、取得した前記モデル更新用データとに基づいて、前記基準加工結果モデルを更新することで、更新後の基準加工結果モデルである更新加工結果モデルを生成する加工結果モデル更新装置と、
前記更新加工結果モデルを用いて、前記要求仕様から前記要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを計算加工条件パラメータとして計算するパラメータ調整部と、
前記更新加工結果モデルと前記計算加工条件パラメータとに基づいて、前記計算加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する加工結果推定部と、
を備える、
ことを特徴とする加工条件調整装置。
【請求項2】
前記加工試験項目と、前記加工条件パラメータと、前記推定加工結果とを表示する表示部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の加工条件調整装置。
【請求項3】
前記加工結果モデル更新装置は、
放電加工機が前記加工試験を実行した際の加工状態、前記放電加工機の他の放電加工機との機械構成の違いまたは号機間差の情報である機械特性、前記放電加工機が前記加工試験を実行した際に所望の工作物を得るために前記放電加工機に入力された加工軌跡の解析結果である軌跡解析結果、前記放電加工機が前記加工試験を実行した際の加工環境、および導出された前記加工試験項目の少なくとも1つと、前記加工結果とを含んだ前記モデル更新用データを取得し、前記基準加工結果モデルと、取得した前記モデル更新用データとに基づいて、前記更新加工結果モデルを生成する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の加工条件調整装置。
【請求項4】
前記加工結果モデル更新装置は、
前記モデル更新用データに含まれる各要素に重み付けを行って前記更新加工結果モデルを生成する、
ことを特徴とする請求項に記載の加工条件調整装置。
【請求項5】
前記試験項目推論装置は、
前記機械特性、前記軌跡解析結果、および前記加工環境の少なくとも1つと、前記要求仕様とを含んだ導出用データを取得し、前記加工試験項目モデルを用いて、取得した前記導出用データから前記加工試験項目を導出する、
ことを特徴とする請求項に記載の加工条件調整装置。
【請求項6】
前記試験項目推論装置は、
前記導出用データに含まれる各要素に重み付けを行って前記加工試験項目を導出する、
ことを特徴とする請求項に記載の加工条件調整装置。
【請求項7】
前記加工結果を前記放電加工機から取得して、前記加工結果モデル更新装置に入力する加工結果計測装置をさらに備える、
ことを特徴とする請求項に記載の加工条件調整装置。
【請求項8】
前記要求仕様と、前記加工試験に対応する前記加工結果とに基づいて、前記基準加工結果モデルの更新が必要であるか否かを判定する更新要否判定部をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の加工条件調整装置。
【請求項9】
前記放電加工は、複数ステップを含んだ加工であり、前記基準加工結果モデルは、前の加工ステップの加工結果と、次の加工ステップの加工結果と、前記次の加工ステップにおける加工条件パラメータとに基づいて学習された学習済モデルである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の加工条件調整装置。
【請求項10】
放電加工を行う放電加工機と、
前記放電加工機が用いる加工条件パラメータを調整する加工条件調整装置と、
を有し、
前記加工条件調整装置は、
前記放電加工に対して作業者が所望する要求仕様を取得し、前記要求仕様から加工試験の項目である加工試験項目を推論するための学習済の加工試験項目モデルを用いて、取得した前記要求仕様から最小数の前記加工試験項目を導出する試験項目推論装置と、
前記放電加工機が実行した前記加工試験に対応する加工結果をモデル更新用データとして取得し、前記加工結果から前記加工条件パラメータを推論し前記加工条件パラメータから前記加工結果を推論するための学習済の基準加工結果モデルと、取得した前記モデル更新用データとに基づいて、前記基準加工結果モデルを更新することで、更新後の基準加工結果モデルである更新加工結果モデルを生成する加工結果モデル更新装置と、
前記更新加工結果モデルを用いて、前記要求仕様から前記要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを計算加工条件パラメータとして計算するパラメータ調整部と、
前記更新加工結果モデルと前記計算加工条件パラメータとに基づいて、前記計算加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する加工結果推定部と、
を備える、
ことを特徴とする加工システム。
【請求項11】
放電加工機が用いる加工条件パラメータを調整する加工条件調整装置が、放電加工に対して作業者が所望する要求仕様を取得し、前記要求仕様から加工試験の項目である加工試験項目を推論するための学習済の加工試験項目モデルを用いて、取得した前記要求仕様から最小数の前記加工試験項目を導出する試験項目推論ステップと、
前記加工条件調整装置が、前記加工試験に対応する加工結果をモデル更新用データとして取得し、前記加工結果から前記加工条件パラメータを推論し前記加工条件パラメータから前記加工結果を推論するための学習済の基準加工結果モデルと、取得した前記モデル更新用データとに基づいて、前記基準加工結果モデルを更新することで、更新後の基準加工結果モデルである更新加工結果モデルを生成する加工結果モデル更新ステップと、
前記加工条件調整装置が、前記更新加工結果モデルを用いて、前記要求仕様から前記要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを計算加工条件パラメータとして計算するパラメータ調整ステップと、
前記加工条件調整装置が、前記更新加工結果モデルと前記計算加工条件パラメータとに基づいて、前記計算加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する加工結果推定ステップと、
を含む、
ことを特徴とする加工条件調整方法。
【請求項12】
放電加工機が用いる加工条件パラメータを調整する加工条件調整装置が、放電加工に対して作業者が所望する要求仕様を取得し、前記要求仕様から加工試験の項目である加工試験項目を推論するための学習済の加工試験項目モデルを用いて、取得した前記要求仕様から最小数の前記加工試験項目を導出する試験項目推論ステップと、
前記放電加工機が、前記加工試験を実行する加工試験実行ステップと、
前記加工条件調整装置が、前記加工試験に対応する加工結果をモデル更新用データとして取得し、前記加工結果から前記加工条件パラメータを推論し前記加工条件パラメータから前記加工結果を推論するための学習済の基準加工結果モデルと、取得した前記モデル更新用データとに基づいて、前記基準加工結果モデルを更新することで、更新後の基準加工結果モデルである更新加工結果モデルを生成する加工結果モデル更新ステップと、
前記加工条件調整装置が、前記更新加工結果モデルを用いて、前記要求仕様から前記要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを計算加工条件パラメータとして計算するパラメータ調整ステップと、
前記加工条件調整装置が、前記更新加工結果モデルと前記計算加工条件パラメータとに基づいて、前記計算加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する加工結果推定ステップと、
を含む、
ことを特徴とする加工方法。
【請求項13】
放電加工に対して作業者が所望する要求仕様を取得し、前記要求仕様から加工試験の項目である加工試験項目を推論するための学習済の加工試験項目モデルを用いて、取得した前記要求仕様から最小数の前記加工試験項目を導出する試験項目推論ステップと、
前記加工試験に対応する加工結果をモデル更新用データとして取得し、前記加工結果から放電加工機が用いる加工条件パラメータを推論し前記加工条件パラメータから前記加工結果を推論するための学習済の基準加工結果モデルと、取得した前記モデル更新用データとに基づいて、前記基準加工結果モデルを更新することで、更新後の基準加工結果モデルである更新加工結果モデルを生成する加工結果モデル更新ステップと、
前記更新加工結果モデルを用いて、前記要求仕様から前記要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを計算加工条件パラメータとして計算するパラメータ調整ステップと、
前記更新加工結果モデルと前記計算加工条件パラメータとに基づいて、前記計算加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する加工結果推定ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする加工条件調整プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放電加工機の加工条件パラメータを調整する加工条件調整装置、加工システム、加工条件調整方法、加工方法、および加工条件調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤ放電加工機といった放電加工機に適用される加工条件は、複数の加工条件パラメータで構成されており、加工条件パラメータの組合せは多岐に渡るので、加工精度を向上させるための加工条件パラメータの調整には熟練者のノウハウが必要であった。
【0003】
特許文献1に記載の加工条件調整装置は、予め定められたテスト用の実加工を行うことで、ワイヤ放電加工機のシミュレーション処理に用いる計算モデルを現場の機械に適合するように更新し、更新後の計算モデルを用いて加工条件を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2022/210472号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、テスト用の実加工における加工寸法、面粗さなどの加工結果が考慮されていないので、加工条件パラメータを調整しても加工結果の高精度な補正が困難であり、加工条件パラメータに対して高精度な加工を実現するための調整ができないという問題があった。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、加工条件パラメータに対して高精度な加工を実現するための調整ができる加工条件調整装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の加工条件調整装置は、放電加工に対して作業者が所望する要求仕様を取得し、要求仕様から加工試験の項目である加工試験項目を推論するための学習済の加工試験項目モデルを用いて、取得した要求仕様から最小数の加工試験項目を導出する試験項目推論装置を備える。また、本開示の加工条件調整装置は、加工試験に対応する加工結果をモデル更新用データとして取得し、加工結果から加工条件パラメータを推論し加工条件パラメータから加工結果を推論するための学習済の基準加工結果モデルと、取得したモデル更新用データとに基づいて、基準加工結果モデルを更新することで、更新後の基準加工結果モデルである更新加工結果モデルを生成する加工結果モデル更新装置を備える。また、本開示の加工条件調整装置は、更新加工結果モデルを用いて、要求仕様から要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを計算加工条件パラメータとして計算するパラメータ調整部と、更新加工結果モデルと計算加工条件パラメータとに基づいて、計算加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する加工結果推定部とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示にかかる加工条件調整装置は、加工条件パラメータに対して高精度な加工を実現可能な調整ができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1にかかる加工条件調整装置を有した放電加工システムの構成を示す図
図2】実施の形態1にかかる加工条件調整装置の構成を示す図
図3】実施の形態1にかかる加工条件調整装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャート
図4】実施の形態2にかかる加工条件調整装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャート
図5】実施の形態3にかかる加工条件調整装置の構成を示す図
図6】実施の形態3にかかる加工条件調整装置が加工試験項目を導出する処理の処理手順を示すフローチャート
図7】実施の形態3にかかる加工条件調整装置が加工結果モデルを更新する処理の処理手順を示すフローチャート
図8】実施の形態4にかかる加工条件調整装置の構成を示す図
図9】実施の形態5にかかる加工条件調整装置の構成を示す図
図10】実施の形態6にかかる加工条件調整装置の構成を示す図
図11】実施の形態7にかかる加工条件調整装置が加工結果モデルを更新する処理を説明するための図
図12】実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置の構成を示す図
図13】実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置が用いるニューラルネットワークを説明するための図
図14】実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャート
図15】実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置が基準加工結果モデルの導出対象とする複数ステップを説明するための図
図16】実施の形態9にかかる試験項目モデル学習装置の構成を示す図
図17】実施の形態9にかかる試験項目モデル学習装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャート
図18】実施の形態1にかかる加工条件調整装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図
図19】実施の形態1にかかる加工条件調整装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示の実施の形態にかかる加工条件調整装置、加工システム、加工条件調整方法、加工方法、および加工条件調整プログラムを図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1にかかる加工条件調整装置を有した放電加工システムの構成を示す図である。図1では、加工条件調整装置10Aに適用される放電加工機の一例がワイヤ放電加工機1である場合について説明する。なお、加工条件調整装置10Aに適用される放電加工機は、ワイヤ放電加工機1に限らず、細穴放電加工機、形彫り放電加工機などの放電加工機であってもよい。図1では、定盤Tの上面と平行な面内の2つの軸であって互いに直交する2つの軸をX軸およびY軸とする。また、X軸およびY軸に直交する軸をZ軸とする。
【0012】
放電加工システムは、ワイヤ放電加工機1と、加工条件調整装置10Aとを有している。ワイヤ放電加工機1は、制御装置2と、電源装置3とを備えている。制御装置2は、数値制御装置である。電源装置3は、例えば、ワイヤ放電加工機1の状態を検知する検知部(図示せず)を備えていてもよい。
【0013】
また、ワイヤ放電加工機1は、ワイヤ電極6と、ワイヤ電極ボビン81と、ワイヤ電極回収箱82と、ワイヤ電極搬送ローラ83と、下部ローラ84と、ワイヤ走行速度制御モータ85とを備えている。また、ワイヤ放電加工機1は、上部ガイド86と、下部ガイド87と、加工部88と、X軸モータ89Xと、Y軸モータ89Yとを備えている。
【0014】
ワイヤ電極6は、ワイヤ電極ボビン81から供給され、ワイヤ電極搬送ローラ83、上部給電子8a、および上部ガイド86を介して加工部88に送られ、下部給電子8b、下部ガイド87、下部ローラ84、およびワイヤ走行速度制御モータ85を介してワイヤ電極回収箱82に回収される。
【0015】
上部給電子8aおよび下部給電子8bは、ワイヤ電極搬送ローラ83と下部ローラ84との間に配置されている。また、上部ガイド86および下部ガイド87もワイヤ電極搬送ローラ83と下部ローラ84との間に配置されている。
【0016】
加工部88は、上部給電子8aおよび下部給電子8bとの間で、且つ上部ガイド86と下部ガイド87との間に配置されている。ワイヤ電極6は、上部ガイド86および下部ガイド87によって保持されている。電源装置3から上部給電子8aおよび下部給電子8bに給電されると、上部給電子8aと下部給電子8bとの間のワイヤ電極6に加工電流が供給される。これにより、加工部88内のワイヤ電極6に加工電流が供給される。
【0017】
ワイヤ電極6は、加工部88において定盤T上に載置された工作物(加工対象物)4を加工した後、ワイヤ電極回収箱82に回収される。ワイヤ電極6の搬送速度は、ワイヤ走行速度制御モータ85によって制御される。
【0018】
制御装置2は、X軸モータ89XおよびY軸モータ89Yに位置指令を入力し、X軸モータ89XおよびY軸モータ89Yが、定盤TのX軸およびY軸上の位置を変更する。これにより、制御装置2は、工作物4に対するワイヤ電極6のXY平面内の相対位置を制御する。
【0019】
なお、ワイヤ放電加工機1は、ワイヤ電極6をXY平面に平行な面内で移動させることによって、工作物4に対するワイヤ電極6のXY平面内の相対位置を制御してもよい。
【0020】
図2は、実施の形態1にかかる加工条件調整装置の構成を示す図である。加工条件調整装置10Aは、加工条件パラメータを調整することで加工条件(放電加工条件)を調整するコンピュータである。加工条件調整装置10Aは、ワイヤ放電加工機1といった放電加工機に接続されている。
【0021】
加工条件調整装置10Aは、ワイヤ放電加工機1および作業者5から、加工条件の調整に用いる種々の情報を取得する。加工条件調整装置10Aは、入力部7と、加工結果モデル更新装置20と、試験項目推論装置30と、基準加工結果モデル記憶部45と、試験項目モデル記憶部43と、パラメータ調整部41と、加工結果推定部42と、表示部44とを備えている。なお、表示部44は、加工条件調整装置10Aの外部に配置されてもよい。
【0022】
入力部7は、作業者5によって入力される加工結果を受け付けて、加工結果モデル更新装置20に入力する。また、入力部7は、作業者5によって入力される要求仕様を受け付けて、試験項目推論装置30およびパラメータ調整部41に入力する。
【0023】
加工結果は、ワイヤ放電加工機1による加工によって得られる結果である。この加工結果は、加工試験によって得られた工作物4の所望値からの寸法誤差、面粗さ、加工速度、加工に要した時間(加工時間)、加工に要した消費電力、加工諸元などである。加工諸元は、加工結果に影響を与える情報である。加工諸元は、例えば、パンチ加工、ダイ加工といった加工の種類の情報、工作物4の材質、ワイヤ電極6の材質、ワイヤ電極6の直径、ワイヤ放電加工機1の機種などである。加工結果の種類は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0024】
要求仕様は、放電加工に対して作業者5が所望する仕様である。要求仕様に含まれる情報の種類は、加工結果に含まれる情報の種類と同様である。要求仕様は、加工諸元の範囲と、加工諸元の範囲に対して作業者5が要求する加工の結果の範囲(以下、要求加工結果という)とを含んでいる。
【0025】
要求加工結果は、ワイヤ放電加工機1による加工によって実現したい工作物4の寸法誤差の範囲、面粗さの範囲、加工速度の範囲、加工に要する時間の範囲、加工に要する消費電力の範囲などである。要求加工結果の種類は、1つであってもよいし、複数であってもよい。要求加工結果は、特定の範囲を示す情報に限らず特定値であってもよい。
【0026】
要求仕様は、作業者5が所望する仕様であり、要求加工結果は、作業者5が所望する仕加工の結果である。入力部7に入力される加工結果は、実際にワイヤ放電加工機1が加工試験によって加工した結果である。また、表示部44に表示される加工結果は、加工条件調整装置10Aなどが推定する加工結果(以下、推定加工結果という)である。以下では、ワイヤ放電加工機1が加工試験によって加工した結果を加工結果といい、要求加工結果を含んだ要求仕様、および推定加工結果と区別する。
【0027】
基準加工結果モデル記憶部45は、予め導出された基準加工結果モデルを記憶する。基準加工結果モデルは、加工結果と加工条件パラメータとの関係を表す学習済モデルである。すなわち、基準加工結果モデルは、加工結果から加工条件パラメータを推論し、加工条件パラメータから学習結果を推論するための学習済モデルである。
【0028】
基準加工結果モデルは、予め学習装置などで生成されて、ワイヤ放電加工機1に格納される。加工条件調整装置10Aは、ワイヤ放電加工機1に格納されている基準加工結果モデルを読み出して、基準加工結果モデル記憶部45に記憶させる。加工条件パラメータは、ワイヤ電極6の張力、ワイヤ電極6の送り速度、ワイヤ電極6に供給する加工電流値などである。
【0029】
なお、基準加工結果モデル記憶部45が記憶しておく基準加工結果モデルは、ワイヤ放電加工機1以外の装置から基準加工結果モデル記憶部45に送られてきてもよい。また、基準加工結果モデルは、加工条件調整装置10Aとは別の外部装置で記憶されてもよい。この場合、基準加工結果モデルを記憶する外部装置と加工条件調整装置10Aとはネットワークなどによって接続される。
【0030】
試験項目モデル記憶部43は、予め導出された加工試験項目モデルを記憶する。加工試験項目モデルは、要求仕様と加工試験項目との関係を表す学習済モデルである。すなわち、加工試験項目モデルは、要求仕様から加工試験の項目である加工試験項目を推論するための学習済モデルである。加工試験項目モデルは、予め学習装置などで生成される。なお、加工試験項目モデルは、加工条件調整装置10Aとは別の外部装置で記憶されてもよい。この場合、加工試験項目モデルを記憶する外部装置と加工条件調整装置10Aとはネットワークなどによって接続される。
【0031】
試験項目推論装置30は、加工試験項目モデルを用いて、要求仕様から加工試験項目を導出する。すなわち、試験項目推論装置30は、加工試験項目モデルに要求仕様を適用することで、要求仕様に対応する加工試験項目を推論する。試験項目推論装置30は、加工試験項目を加工結果モデル更新装置20および表示部44に送る。これにより、加工試験項目に対応する加工が実行され、この加工の加工結果が作業者5によって入力部7に入力されると、この加工結果が加工結果モデル更新装置20に送られる。また加工試験項目は、加工結果モデル更新装置20が基準加工結果モデルを更新する際に用いられる。
【0032】
加工試験項目は、例えば、加工条件パラメータの組合せ、ノズル離れ量(工作物4と加工液ノズルとの間の距離)、工作物4の定盤T上での載置位置などである。
【0033】
加工結果モデル更新装置20は、加工結果および加工試験項目に基づいて、基準加工結果モデル記憶部45が記憶している基準加工結果モデルを更新する。なお、加工結果モデル更新装置20は、加工試験項目を用いず、加工結果に基づいて、基準加工結果モデル記憶部45が記憶している基準加工結果モデルを更新してもよい。
【0034】
このように、加工試験項目に対応する加工結果は、基準加工結果モデルの更新に用いられる。加工結果モデル更新装置20は、更新した最新の更新加工結果モデルをパラメータ調整部41、加工結果推定部42、および表示部44に送る。
【0035】
パラメータ調整部41は、最新の更新加工結果モデルに要求仕様を適用することで、要求仕様に対応する加工条件パラメータ(計算加工条件パラメータ)を計算する。すなわち、パラメータ調整部41は、最新の更新加工結果モデルを用いて、要求仕様から加工条件パラメータを計算する。これにより、パラメータ調整部41は、要求仕様を満たす加工結果を得るための加工条件パラメータを計算する。
【0036】
また、パラメータ調整部41は、基準となる予め設定されている加工条件パラメータと、計算した加工条件パラメータとの差分に基づいて、加工条件パラメータの調整量(以下、パラメータ調整量という)を計算する。なお、パラメータ調整部41は、前回計算した加工条件パラメータと、今回計算した加工条件パラメータとの差分に基づいて、パラメータ調整量を計算してもよい。
【0037】
パラメータ調整部41は、基準加工結果モデルに対して加工結果に応じた調整が加えられた更新加工結果モデルを用いて、加工条件パラメータを計算している。このため、パラメータ調整部41が計算した加工条件パラメータは、加工結果に応じて調整された加工条件パラメータであるといえる。
【0038】
パラメータ調整部41は、計算した加工条件パラメータを加工結果推定部42に送る。また、パラメータ調整部41は、パラメータ調整量および計算した加工条件パラメータの少なくとも一方を表示部44に送る。以下では、パラメータ調整部41が、パラメータ調整量および計算した加工条件パラメータの両方を表示部44に送る場合について説明する。
【0039】
加工結果推定部42は、更新加工結果モデルに、パラメータ調整部41が計算した加工条件パラメータを適用することで、加工条件パラメータを調整した場合(基準加工結果モデルを更新した場合)の推定加工結果を推定する。すなわち、加工結果推定部42は、調整後の加工条件パラメータを用いて加工が実行された場合の推定加工結果を推定する。
【0040】
推定加工結果は、ワイヤ放電加工機1による加工によって得られる結果の推定値である。この推定加工結果は、作業者5によって入力される加工結果および要求仕様と同じ種類の情報である。すなわち、推定加工結果は、加工試験によって得られる工作物4の所望値からの寸法誤差、面粗さ、加工速度、加工時間、加工に要した消費電力などである。また、推定加工結果には、前述した加工諸元が含まれていてもよい。推定加工結果の種類は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0041】
パラメータ調整部41が基準加工結果モデルに入力する要求仕様には、加工諸元の範囲と、加工の結果の範囲である要求加工結果とを含んでいる。このように、要求仕様は、範囲を示す情報である。加工結果推定部42が基準加工結果モデルから出力する推定加工結果は、加工結果の特定値を示す情報である。加工結果推定部42は、推定した推定加工結果を表示部44に送る。なお、加工条件調整装置10Aは、加工結果推定部42を備えていなくてもよい。
【0042】
表示部44は、加工試験項目、調整後の加工条件パラメータ、および推定加工結果を表示する。なお、表示部44は、パラメータ調整量、基準加工結果モデル、更新加工結果モデルなどを表示してもよい。
【0043】
表示部44が表示する加工結果は、更新加工結果モデルおよびパラメータ調整量に対応し、このパラメータ調整量は、更新加工結果モデルおよび要求仕様に対応している。そして、更新加工結果モデルは、加工試験項目を用いて加工試験された場合の加工結果に対応し、加工試験項目は要求仕様に対応している。すなわち、表示部44が表示する加工結果は、作業者5によって入力された要求仕様に対応している。
【0044】
なお、パラメータ調整部41は、計算したパラメータ調整量をワイヤ放電加工機1に送信してもよい。これにより、ワイヤ放電加工機1は、パラメータ調整量を用いて加工を実行することができる。
【0045】
図3は、実施の形態1にかかる加工条件調整装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、加工条件調整装置10Aが実行する処理の処理手順と、作業者5が実行する処理の処理手順とを説明する。
【0046】
作業者5から加工条件の調整作業を開始する指示が加工条件調整装置10Aに入力されると、加工条件調整装置10Aの表示部44は、基準加工結果モデルを表示する(ステップS10)。作業者5は、基準加工結果モデルを確認し(ステップS20)、所望の要求仕様を入力部7に入力する(ステップS30)。加工条件調整装置10Aの試験項目推論装置30は、試験項目モデルおよび入力された要求仕様に基づいて、基準加工結果モデルを更新するための加工試験項目を導出する(ステップS40)。表示部44は、基準加工結果モデルを更新するための加工試験項目を表示する(ステップS50)。
【0047】
作業者5は、表示された加工試験項目に基づいて、加工試験項目に対応する加工試験を実施する(ステップS60)。すなわち、作業者5は、加工試験項目に対応する加工試験をワイヤ放電加工機1に実行させる。作業者5は、ワイヤ放電加工機1による加工の加工結果を計測し(ステップS70)、加工条件調整装置10Aに加工結果を入力する(ステップS80)。
【0048】
加工条件調整装置10Aの加工結果モデル更新装置20は、基準加工結果モデルと入力された加工結果とに基づいて更新加工結果モデルを導出する(ステップS90)。加工結果モデル更新装置20は、基準加工結果モデルを更新加工結果モデルに更新する(ステップS100)。
【0049】
パラメータ調整部41は、更新加工結果モデルに要求仕様を入力することで、要求仕様に対応する加工条件パラメータ(調整後の加工条件パラメータ)を計算する(ステップS110)。表示部44は、パラメータ調整量、および調整後の加工条件パラメータを表示する(ステップS120)。
【0050】
加工結果推定部42は、更新加工結果モデルに基づいて、調整後の加工条件パラメータで加工した場合の推定加工結果を推定する(ステップS130)。すなわち、加工結果推定部42は、更新加工結果モデルに調整後の加工条件パラメータを入力することで、調整後の加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する。表示部44は、加工結果推定部42によって推定された推定加工結果を表示する(ステップS140)。表示部44は、パラメータ調整量、および調整後の加工条件パラメータが計算された後は、何れのタイミングでパラメータ調整量、および調整後の加工条件パラメータを表示してもよい。なお、表示部44は、パラメータ調整量および推定加工結果の少なくとも一方の表示をしなくてもよい。
【0051】
作業者5は、表示された調整後の加工条件パラメータを用いて本加工を実施する(ステップS150)。すなわち、作業者5は、調整後の加工条件パラメータを用いた本加工をワイヤ放電加工機1に実行させる。
【0052】
このように、加工条件調整装置10Aは、加工試験が実行された際の寸法誤差、面粗さなどの加工結果を用いて、基準加工結果モデルを更新しているので、複雑な形状に対応した更新加工結果モデルを導出できる。
【0053】
また、加工条件調整装置10Aは、予め導出された基準加工結果モデルから作業者5の利用形態(要求仕様)に合わせて更新された更新加工結果モデルに基づいて、加工条件パラメータを調整できるので、要求仕様を満たす加工結果を得ることができる。
【0054】
また、加工条件調整装置10Aは、本加工が実行される前に高精度に推定加工結果を推定することができ、作業者5は、本加工が実行される前に高精度な推定加工結果を知ることができる。
【0055】
なお、試験項目推論装置30と試験項目モデル記憶部43とは、例えば、ネットワークを介して接続されてもよい。また、試験項目推論装置30および試験項目モデル記憶部43の少なくとも一方は、ワイヤ放電加工機1に内蔵されていてもよい。また、試験項目推論装置30および試験項目モデル記憶部43の少なくとも一方は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0056】
また、加工結果モデル更新装置20と基準加工結果モデル記憶部45とは、例えば、ネットワークを介して接続されてもよい。また、加工結果モデル更新装置20および基準加工結果モデル記憶部45は、ワイヤ放電加工機1に内蔵されていてもよい。また、加工結果モデル更新装置20および基準加工結果モデル記憶部45の少なくとも一方は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0057】
このように実施の形態1の加工条件調整装置10Aは、放電加工の要求仕様に対応する加工試験項目を推論し、加工試験に対応する加工結果に基づいて、基準加工結果モデルを更新した更新加工結果モデルを生成している。そして、加工条件調整装置10Aは、更新加工結果モデルと要求仕様とに基づいて、加工条件パラメータを調整している。これにより、加工条件調整装置10Aは、加工条件パラメータに対して高精度な加工を実現可能な調整ができる。また、加工条件調整装置10Aは、加工条件パラメータを調整した場合の加工結果を推定しているので、加工が実行される前に高精度に推定加工結果を推定することができる。
【0058】
また、加工条件調整装置10Aは、高精度な加工を実現できるように調整された加工条件パラメータおよびパラメータ調整量を表示するので、作業者5は、本加工が実行される前に高精度な加工結果を得ることができる加工条件パラメータおよびパラメータ調整量を知ることができる。
【0059】
実施の形態2.
つぎに、図4を用いて実施の形態2について説明する。実施の形態1では、加工条件調整装置10Aが基準加工結果モデルを表示した後に作業者5が要求仕様を入力しているが、実施の形態2では、作業者5が要求仕様を入力した後に加工条件調整装置10Aが基準加工結果モデルを表示する。なお、実施の形態2の加工条件調整装置10Aは、実施の形態1の加工条件調整装置10Aと同様の構成を有している。
【0060】
図4は、実施の形態2にかかる加工条件調整装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、実施の形態2の加工条件調整装置10Aが実行する処理の処理手順と、作業者5が実行する処理の処理手順とを説明する。なお、実施の形態2の加工条件調整装置10Aが実行する処理のうち、実施の形態1の加工条件調整装置10Aが実行する処理と同じ処理については、同じステップ番号を付しており、その説明を省略する。
【0061】
実施の形態2の加工条件調整装置10Aは、実施の形態1の加工条件調整装置10Aと比較して、ステップS10~S30の処理の代わりに、ステップS5,S10,S20の処理を実行する。
【0062】
具体的には、作業者5が、加工条件の調整作業を開始するために、所望の要求仕様を入力部7に入力する(ステップS5)。加工条件調整装置10Aは、所望の要求仕様を受け付けると、表示部44が、基準加工結果モデルを表示する(ステップS10)。これにより、作業者5は、基準加工結果モデルを確認する(ステップS20)。
【0063】
また、加工条件調整装置10Aの試験項目推論装置30は、試験項目モデルおよび入力された要求仕様に基づいて、基準加工結果モデルを更新するための加工試験項目を導出する(ステップS40)。以下、作業者5は、実施の形態1で説明したステップS60~S80の処理を実行し、加工条件調整装置10Aは、実施の形態1で説明したステップS90~S140の処理を実行する。また、作業者5は、実施の形態1で説明したステップS150の処理を実行する。
【0064】
このように実施の形態2によれば、加工条件調整装置10Aは、基準加工結果モデルが作業者5に確認される前に作業者5によって加工条件調整装置10Aに要求仕様が入力される。この後、加工条件調整装置10Aは、基準加工結果モデルの更新処理を開始し、作業者5は、基準加工結果モデルを確認する。これにより、作業者5は、基準加工結果モデルの確認を補助的に実行することができる。
【0065】
実施の形態3.
つぎに、図5から図7を用いて実施の形態3について説明する。実施の形態3では、後述する加工条件調整装置10Bが、ワイヤ放電加工機1から取得した種々の情報(後述する、機械特性、加工環境など)に基づいて、加工試験項目を推論し、基準加工結果モデルを更新する。
【0066】
図5は、実施の形態3にかかる加工条件調整装置の構成を示す図である。図5の各構成要素のうち図2に示す実施の形態1の加工条件調整装置10Aと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0067】
実施の形態3の加工条件調整装置10Bは、加工条件調整装置10Aと同様に、加工条件パラメータを調整するコンピュータである。加工条件調整装置10Bは、ワイヤ放電加工機1といった放電加工機に接続されている。
【0068】
加工条件調整装置10Bは、加工条件調整装置10Aと比較して、入力部7の代わりに要求仕様入力部11と、加工結果入力部12と、加工状態取得部13と、機械特性取得部14と、加工軌跡解析部15と、加工環境取得部16とを備えている。なお、加工条件調整装置10Bは、加工状態取得部13、機械特性取得部14、加工軌跡解析部15、および加工環境取得部16の何れかを備えていなくてもよい。
【0069】
要求仕様入力部11は、作業者5から入力される要求仕様を受け付けて、試験項目推論装置30およびパラメータ調整部41に入力する。加工結果入力部12は、作業者5によって入力される加工結果を受け付けて、加工結果モデル更新装置20に入力する。
【0070】
加工状態取得部13は、ワイヤ放電加工機1から加工試験中の加工状態を取得して、加工結果モデル更新装置20に入力する。加工状態は、ワイヤ放電加工機1による加工試験の際の加工速度、電圧、放電パルス数などの情報である。
【0071】
機械特性取得部14は、ワイヤ放電加工機1から機械特性を取得して、試験項目推論装置30および加工結果モデル更新装置20に入力する。機械特性は、ワイヤ放電加工機1の他のワイヤ放電加工機との機械構成の違い、号機間差などの情報である。号機間差は、ワイヤ放電加工機1における部材の組付け誤差などに起因している。
【0072】
機械構成は、例えば、ワイヤ放電加工機1が備える定盤T、コラム(図示せず)のサイズなどである。ワイヤ放電加工機1のユーザによっては、後付けでワイヤ放電加工機1に部品を追加する場合、または取り外す場合があるので、機械特性取得部14は、他のワイヤ放電加工機との機械構成の違いの情報を取得する。
【0073】
部材の組付け誤差は、ワイヤ搬送系のローラ(ワイヤ電極搬送ローラ83、下部ローラ84など)の取り付け角度等などである。ローラの角度は、経年変化するので、機械特性取得部14は、部材の組付け誤差の情報を取得する。機械特性取得部14は、予め記憶されている機械特性(初期値)と、変更された機械特性(最新値)とを取得する。
【0074】
加工軌跡解析部15は、ワイヤ放電加工機1から加工軌跡および加工軌跡に対応する位置指令プログラムを取得する。加工軌跡は、ワイヤ放電加工機1による加工試験に対して、所望の工作物4(完成品)を得るためにワイヤ放電加工機1に入力された加工の軌跡である。加工軌跡解析部15は、加工軌跡に基づいて、加工軌跡の大きさおよび複雑さを解析する。
【0075】
加工軌跡の複雑さは、例えば、加工軌跡に含まれる鋭角加工の曲がり角度、鋭角加工の曲がり回数、加工軌跡に含まれる円弧形状の連続数、複数の加工軌跡が隣接している箇所の数などである。
【0076】
また、加工軌跡解析部15は、加工軌跡に対応する位置指令プログラムを解析することで、位置指令プログラムで規定されている加工のオフセット量および加工方向を抽出する。加工軌跡解析部15は、解析結果を試験項目推論装置30および加工結果モデル更新装置20に入力する。具体的には、加工軌跡解析部15は、加工軌跡の大きさ、加工軌跡の複雑さ、加工のオフセット量、および加工方向の少なくとも1つを試験項目推論装置30および加工結果モデル更新装置20に入力する。
【0077】
加工環境取得部(加工環境受付部)16は、ワイヤ放電加工機1から加工の環境である加工環境を受け付けて、試験項目推論装置30および加工結果モデル更新装置20に入力する。加工環境は、ワイヤ放電加工機1による加工試験の際の、ワイヤ放電加工機1の周囲温度、部品の劣化度、段取り状態、ノズル離れ量、工作物4の材質、ワイヤ電極6の線種などである。
【0078】
加工環境が部品の劣化度である場合、部品の劣化度は、例えば、総加工時間および加工内容に基づいて推定されてもよいし、劣化度に対応する情報を検出するセンサを用いて検出されてもよい。また、部品の劣化度は、例えば、電流値および電圧値などに基づいて、算出されてもよい。
【0079】
加工条件調整装置10Bの試験項目推論装置30は、導出用データ取得部31と、導出用データ評価部32と、試験項目導出部33と、試験項目記憶部34とを備えている。導出用データ取得部31は、要求仕様入力部11から要求仕様を受け付け、機械特性取得部14から機械特性を受け付ける。また、導出用データ取得部31は、加工軌跡解析部15から加工軌跡の解析結果(以下、軌跡解析結果という)を受け付け、加工環境取得部16から加工環境を受け付ける。導出用データ取得部31は、要求仕様、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境を加工試験項目の導出用データ(試験項目導出用データ)として導出用データ評価部32に送る。
【0080】
導出用データ評価部32は、要求仕様、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境のそれぞれに重み付けを行って、試験項目導出部33に送る。すなわち、導出用データ評価部32は、加工試験項目の導出用データに含まれる各要素に対して重み付けを行ったデータを推論用データとして試験項目導出部33に送る。
【0081】
試験項目導出部33は、導出用データ評価部32から送られてくる推論用データと、試験項目モデル記憶部43に記憶されている加工試験項目モデルとに基づいて、必要最小限(最小数)の加工試験項目となるように加工結果モデル更新用の加工試験項目を導出する。すなわち、試験項目導出部33は、推論用データと加工試験項目モデルとに基づいて、加工試験項目の個数ができるだけ少なくなるように加工試験項目を導出する。このように、加工試験項目モデルは、作業者5の利用形態(要求仕様)に応じて、加工試験項目を増減させる学習済モデルである。これにより、加工条件調整装置10Bは、作業者5の利用形態に応じた精度の高い加工試験項目を推論できる。
【0082】
試験項目導出部33が導出する加工試験項目は、加工条件パラメータ、機械特性、加工軌跡、および加工環境の少なくとも1つが基準値から変更された加工試験の項目である。なお、加工試験項目の導出用データには、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境の少なくとも1つと、要求仕様とが含まれていればよい。
【0083】
試験項目導出部33は、例えば、加工試験項目モデルが線形モデルである場合には、特定距離だけ離れた2点を教師データとして取得し、線形近似を行うことで加工試験項目を導出する。なお、試験項目導出部33は、試験項目の設定内容によって得られた2点が近い場合には、線形近似を行わず非線形近似によって加工試験項目を導出する。
【0084】
試験項目導出部33は、非線形近似を行う場合には、例えば、ベイズ最適化または制約条件に基づいて、加工試験項目を導出し実験計画を組む。この手法の場合、予め様々な試験パターンで加工試験が実施され、試験項目導出部33は、この加工試験の試験結果から把握されたできるだけ少ない加工試験項目を、加工結果モデル更新用の加工試験項目として導出する。
【0085】
試験項目記憶部34は、試験項目導出部33が導出した加工試験項目を記憶する。試験項目記憶部34は、加工試験項目を、表示部44および加工結果モデル更新装置20に送る。
【0086】
加工条件調整装置10Bの加工結果モデル更新装置20は、更新用データ取得部21と、更新用データ評価部22と、更新部23と、更新モデル記憶部24とを有している。
【0087】
更新用データ取得部21は、試験項目記憶部34から加工試験項目を読み出す。また、更新用データ取得部21は、加工試験後に、加工結果入力部12から加工結果を受け付け、加工状態取得部13から加工状態を受け付ける。また、更新用データ取得部21は、加工試験後に、機械特性取得部14から機械特性を受け付け、加工軌跡解析部15から軌跡解析結果を受け付け、加工環境取得部16から加工環境を受け付ける。
【0088】
更新用データ取得部21は、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境を、基準加工結果モデルのモデル更新用データとして更新用データ評価部22に送る。なお、基準加工結果モデルのモデル更新用データには、加工試験項目、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境の少なくとも1つと、加工結果とが含まれていればよい。
【0089】
更新用データ評価部22は、加工試験項目、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境のそれぞれに重み付けを行う。すなわち、更新用データ評価部22は、モデル更新用データに含まれる各要素に対して重み付けを行う。更新用データ評価部22は、重み付けを行ったデータと、加工結果とを含むデータを推論用データとして更新部23に送る。
【0090】
更新部23は、更新用データ評価部22から送られてくる推論用データと、基準加工結果モデル記憶部45で記憶されている基準加工結果モデルとに基づいて、基準加工結果モデルを更新する。具体的には、更新部23は、推論用データと基準加工結果モデルとを比較し、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境に合うように、基準加工結果モデルを、更新加工結果モデルに更新する。
【0091】
更新モデル記憶部24は、更新部23が生成した更新加工結果モデルを記憶する。更新モデル記憶部24は、更新加工結果モデルを、表示部44、パラメータ調整部41、および加工結果推定部42に送る。加工結果モデル更新装置20が更新した更新加工結果モデルは表示部44で表示され、作業者5に提示される。
【0092】
なお、更新部23は、更新済みの更新加工結果モデルをさらに更新してもよい。この場合、更新部23は、更新用データ評価部22から送られてくる推論用データと、更新モデル記憶部24で記憶されている更新加工結果モデルとに基づいて、更新加工結果モデルをさらに更新する。そして、更新モデル記憶部24は、更新加工結果モデルが更新部23によって更新されると、更新後の基準加工結果モデルを最新の更新加工結果モデルとして記憶する。更新モデル記憶部24は、更新加工結果モデルが更新部23によって更新されるたびに、最新の更新加工結果モデルを記憶する。
【0093】
作業者5は、表示部44に表示された加工試験項目に従って、基準加工結果モデルを更新するための加工試験を、ワイヤ放電加工機1を用いて行い、加工試験によって得られた工作物4の寸法誤差、面粗さなどの加工結果を加工結果入力部12に入力する。
【0094】
なお、加工条件調整装置10Bは、基準加工結果モデル記憶部45および更新モデル記憶部24の両方の機能を持つ記憶部を有していてもよい。
【0095】
加工条件調整装置10Bのパラメータ調整部41は、更新加工結果モデルに要求仕様を適用することで、要求仕様に対応する加工条件パラメータを計算する。また、パラメータ調整部41は、基準となる予め設定されている加工条件パラメータと、計算した加工条件パラメータとの差分に基づいて、パラメータ調整量を計算する。
【0096】
パラメータ調整部41は、基準加工結果モデルに対して加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境に応じた調整が加えられた更新加工結果モデルを用いて加工条件パラメータを計算している。このため、実施の形態3でもパラメータ調整部41が計算した加工条件パラメータは、調整された加工条件パラメータであるといえる。すなわち、パラメータ調整部41は、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、加工環境、および要求仕様を満たす加工結果を得るための、加工条件パラメータを計算している。加工結果推定部42は、実施の形態1と同様の処理によって、推定加工結果を推定する。
【0097】
なお、加工条件調整装置10Bが加工状態を用いない場合、加工条件調整装置10Bは加工状態取得部13を備えていなくてもよい。また、加工条件調整装置10Bが機械特性を用いない場合、加工条件調整装置10Bは機械特性取得部14を備えていなくてもよい。また、加工条件調整装置10Bが軌跡解析結果を用いない場合、加工条件調整装置10Bは加工軌跡解析部15を備えていなくてもよい。また、加工条件調整装置10Bが加工環境を用いない場合、加工条件調整装置10Bは加工環境取得部16を備えていなくてもよい。
【0098】
図6は、実施の形態3にかかる加工条件調整装置が加工試験項目を導出する処理の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、加工条件調整装置10Bが試験項目推論装置30を用いて加工試験項目を導出する処理について説明する。
【0099】
導出用データ取得部31は、要求仕様、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境を、加工試験項目の導出用データとして取得する(ステップS210)。導出用データ評価部32は、導出用データ取得部31から送られてくる導出用データを評価する(ステップS220)。すなわち、導出用データ評価部32は、加工試験項目の導出用データに対して重み付けを行う。導出用データ評価部32は、重み付けを行ったデータを推論用データとして試験項目導出部33に送る。
【0100】
試験項目導出部33は、導出用データ評価部32から送られてくる推論用データを試験項目モデル記憶部43に記憶されている加工試験項目モデルに入力する(ステップS230)。試験項目導出部33は、推論用データを加工試験項目モデルに入力することで、加工試験項目を導出する(ステップS240)。
【0101】
試験項目記憶部34は、試験項目導出部33が導出した加工試験項目を記憶する(ステップS250)。表示部44は、試験項目記憶部34が記憶している加工試験項目を表示する(ステップS260)。
【0102】
図7は、実施の形態3にかかる加工条件調整装置が加工結果モデルを更新する処理の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、加工条件調整装置10Bが加工結果モデル更新装置20を用いて、基準加工結果モデルを更新加工結果モデルに更新する処理について説明する。
【0103】
更新用データ取得部21は、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境を、基準加工結果モデルのモデル更新用データとして取得する(ステップS310)。
【0104】
更新用データ評価部22は、更新用データ取得部21から送られてくるモデル更新用データを評価する(ステップS320)。すなわち、更新用データ評価部22は、基準加工結果モデルのモデル更新用データに対して重み付けを行う。更新用データ評価部22は、重み付けを行ったデータを推論用データとして更新部23に送る。
【0105】
更新部23は、更新用データ評価部22から送られてくる推論用データと、基準加工結果モデル記憶部45で記憶されている基準加工結果モデルとを比較する(ステップS330)。
【0106】
更新部23は、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境に合うように、基準加工結果モデルを、更新加工結果モデルに更新する(ステップS340)。
【0107】
更新モデル記憶部24は、更新部23が生成した更新加工結果モデルを記憶する(ステップS350)。更新モデル記憶部24は、更新加工結果モデルを、表示部44、パラメータ調整部41、および加工結果推定部42に送る。
【0108】
パラメータ調整部41は、更新加工結果モデルおよび要求仕様に基づいて、加工条件パラメータ(調整後の加工条件パラメータ)を計算する(ステップS360)。加工結果推定部42は、更新加工結果モデルと調整後の加工条件パラメータとに基づいて、推定加工結果を推定する(ステップS370)。表示部44は、更新加工結果モデルと、パラメータ調整量と、調整後の加工条件パラメータと、推定された推定加工結果とを表示する(ステップS380)。
【0109】
なお、表示部44は、パラメータ調整量、および調整後の加工条件パラメータが計算された後は、何れのタイミングでパラメータ調整量、および調整後の加工条件パラメータを表示してもよい。また、表示部44は、更新加工結果モデルが生成された後は、何れのタイミングで更新加工結果モデルを表示してもよい。
【0110】
ところで、ワイヤ放電加工機1にて適用される加工条件は、ワイヤ径、工作物4の板厚毎に整備が必要である。また、ワイヤ放電加工機1の加工条件は、複数の加工条件パラメータで構成されており、加工条件パラメータの組合せは多岐に渡る。
【0111】
また、ワイヤ放電加工機1の周囲温度、部品の劣化度、段取り状態などの加工環境、所望の加工形状を得るための加工軌跡は作業者5の業種によって多種多様である。このため、各ワイヤ放電加工機1は、ワイヤ放電加工機1毎に、機械構成の違い、各部材の組付け精度などに伴う号機間差などの機械特性の違いを有するので、全ての利用形態を考慮した加工条件パラメータの調整は困難であった。
【0112】
実施の形態3では、加工条件調整装置10Bが、機械特性、加工軌跡、加工環境などに基づいて、加工条件パラメータを調整しているので、全ての利用形態を考慮して加工条件パラメータを容易に調整できる。
【0113】
このように実施の形態3によれば、加工条件調整装置10Bは、要求仕様、機械特性、軌跡解析結果、および加工環境に基づいて、加工試験項目を導出している。そして、加工試験項目に対応する加工試験が実行されると、加工条件調整装置10Bは、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、加工軌跡、および加工環境に基づいて、基準加工結果モデルを更新加工結果モデルに更新している。また、加工条件調整装置10Bは、更新後の更新加工結果モデルに基づいて、加工条件パラメータを調整している。したがって、加工条件調整装置10Bは、要求仕様、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、加工軌跡、および加工環境に基づいて、要求仕様を満たす推定加工結果を推定することができる。
【0114】
また、加工条件調整装置10Bは、本加工が実行される前に高精度に推定加工結果を推定することができ、作業者5は、本加工が実行される前に高精度な加工結果を得ることができる加工条件パラメータを知ることができる。また、加工条件調整装置10Bは、基準加工結果モデルの更新に必要な加工試験項目を必要最小限とすることができ、作業者5の加工試験に対する負担を軽減することができる。
【0115】
また、加工条件調整装置10Bは、加工のオフセット量に基づいて、基準加工結果モデルを更新加工結果モデルに更新している。したがって、加工条件調整装置10Bは、更新加工結果モデルを用いて、要求仕様に対応する正確な加工条件パラメータを計算することができる。
【0116】
実施の形態4.
つぎに、図8を用いて実施の形態4について説明する。実施の形態4では、後述する加工条件調整装置10Cが、作業者5から入力される加工環境を受け付けて、加工試験項目を推論し、基準加工結果モデルを更新加工結果モデルに更新する。
【0117】
図8は、実施の形態4にかかる加工条件調整装置の構成を示す図である。図8の各構成要素のうち図5に示す実施の形態3の加工条件調整装置10Bと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0118】
実施の形態4の加工条件調整装置10Cは、加工条件調整装置10Bと同様に、加工条件パラメータを調整するコンピュータである。加工条件調整装置10Cは、ワイヤ放電加工機1といった放電加工機に接続されている。
【0119】
加工条件調整装置10Cは、加工条件調整装置10Bと比較して、加工環境取得部16の代わりに加工環境入力部17を備えている。なお、加工条件調整装置10Cは、加工状態取得部13、機械特性取得部14、加工軌跡解析部15、および加工環境入力部17の何れかを備えていなくてもよい。
【0120】
加工環境入力部(加工環境受付部)17は、作業者5から入力される加工環境を受け付けて、試験項目推論装置30および加工結果モデル更新装置20に入力する。このように、加工条件調整装置10Bは、ワイヤ放電加工機1から加工環境を取得したが、加工条件調整装置10Cは、作業者5から加工環境を取得する。
【0121】
なお、加工条件調整装置10Cが加工試験項目を導出する処理および加工結果モデルを更新する処理は、加工条件調整装置10Bが加工試験項目を導出する処理および基準加工結果モデルを更新する処理と同じであるので、その説明を省略する。
【0122】
このように実施の形態4によれば、加工条件調整装置10Cは、作業者5によって入力された加工環境に基づいて、加工試験項目を導出でき、加工結果モデルを更新できる。したがって、加工条件調整装置10Cは、加工条件調整装置10Bと同様に、加工試験項目、加工結果、加工状態、機械特性、加工軌跡、および加工環境に基づいて、要求仕様を満たす推定加工結果を推定することができる。
【0123】
実施の形態5.
つぎに、図9を用いて実施の形態5について説明する。実施の形態5では、後述する加工条件調整装置10Dが、基準加工結果モデルに基づいて導出された標準的な加工条件で加工した場合の加工結果と、要求仕様とに基づいて、基準加工結果モデルの更新が必要であるか否かを判定する。
【0124】
図9は、実施の形態5にかかる加工条件調整装置の構成を示す図である。図9の各構成要素のうち図5に示す実施の形態3の加工条件調整装置10Bと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0125】
実施の形態5の加工条件調整装置10Dは、加工条件調整装置10Bと同様に、加工条件パラメータを調整するコンピュータである。加工条件調整装置10Dは、ワイヤ放電加工機1といった放電加工機に接続されている。
【0126】
加工条件調整装置10Dは、加工条件調整装置10Bが備える構成要素に加えて、更新要否判定部46を備えている。加工条件調整装置10Dでは、要求仕様入力部11は、作業者5から入力される要求仕様を、更新要否判定部46に入力する。また、加工結果入力部12は、作業者5によって入力される加工結果を更新要否判定部46に入力する。
【0127】
作業者5によって加工結果入力部12に入力される加工結果は、基準加工結果モデルに基づいて導出された標準的な加工条件で加工した場合の加工結果である。
【0128】
更新要否判定部46は、要求仕様および加工結果に基づいて、基準加工結果モデルの更新が必要であるか否かを判定する。更新要否判定部46は、要求仕様と加工結果との差分が特定値以下である場合に基準加工結果モデルの更新が不要であると判定する。一方、更新要否判定部46は、要求仕様と加工結果との差分が特定値よりも大きい場合に基準加工結果モデルの更新が必要であると判定する。
【0129】
更新要否判定部46が、基準加工結果モデルの更新が必要であると判定すると、作業者5は、基準加工結果モデルの更新を開始する指示を加工条件調整装置10Dに入力する。これにより、加工条件調整装置10Dは、基準加工結果モデルの更新を開始し、推定加工結果を推定する。加工条件調整装置10Dは、例えば、図7で説明した処理を実行する。
【0130】
なお、更新要否判定部46は、要求仕様および加工結果に基づいて、更新加工結果モデルのさらなる更新が必要であるか否かを判定してもよい。更新要否判定部46は、要求仕様と加工結果との差分が特定値以下である場合に更新加工結果モデルの更新が不要であると判定する。一方、更新要否判定部46は、要求仕様と加工結果との差分が特定値よりも大きい場合に更新加工結果モデルのさらなる更新が必要であると判定する。
【0131】
更新要否判定部46は、判定結果を示す更新要否信号を表示部44に送る。表示部44は、更新要否信号に基づいて、基準加工結果モデルの更新の要否を表示する。基準加工結果モデルの更新が必要であることが表示された場合、基準加工結果モデルの更新が実行される。この場合、実施の形態1~4の何れかで説明した基準加工結果モデルの更新処理が実行される。例えば、加工条件調整装置10Dは、図6および図7で説明した処理を実行する。
【0132】
このように実施の形態5によれば、加工条件調整装置10Dは、要求仕様および加工結果に基づいて、基準加工結果モデルの更新が必要であるか否かを判定できるので、作業者5は、基準加工結果モデルの更新が不要な場合には、加工条件パラメータの調整処理を加工条件調整装置10Dに実行させなくてすむ。
【0133】
実施の形態6.
つぎに、図10を用いて実施の形態6について説明する。実施の形態6では、後述する加工条件調整装置10Eが、ワイヤ放電加工機1による加工結果を自動計測する。
【0134】
図10は、実施の形態6にかかる加工条件調整装置の構成を示す図である。図10の各構成要素のうち図5に示す実施の形態3の加工条件調整装置10Bと同一機能を達成する構成要素については同一符号を付しており、重複する説明は省略する。
【0135】
実施の形態6の加工条件調整装置10Eは、加工条件調整装置10Bと同様に、加工条件パラメータを調整するコンピュータである。加工条件調整装置10Eは、ワイヤ放電加工機1といった放電加工機に接続されている。
【0136】
加工条件調整装置10Eは、加工条件調整装置10Bと比較して、加工結果入力部12の代わりに加工結果計測装置18を備えている。加工結果計測装置18は、ワイヤ放電加工機1に接続されており、ワイヤ放電加工機1による加工結果を自動計測する。加工結果計測装置18は、例えば、加工試験によって得られた工作物4の所望値からの寸法誤差、面粗さ、加工に要した時間、加工に要した消費電力などを計測する。加工結果計測装置18は、計測した加工結果を加工結果モデル更新装置20に送る。
【0137】
なお、加工条件調整装置10Eが加工試験項目を導出する処理および加工結果モデルを更新する処理は、加工条件調整装置10Bが加工試験項目を導出する処理および基準加工結果モデルを更新する処理と同じであるので、その説明を省略する。なお、実施の形態3~6が組み合わされてもよい。
【0138】
このように実施の形態6によれば、作業者5が加工結果を計測しなくても加工結果計測装置18が自動で加工結果を計測するので、加工条件調整装置10Eは、作業者5の負担を軽減することができる。
【0139】
実施の形態7.
つぎに、図11を用いて実施の形態7について説明する。実施の形態7では、加工条件調整装置10Bが、所望の要求仕様通りの加工結果が得られるよう、基準加工結果モデルを更新加工結果モデルに更新する。
【0140】
図11は、実施の形態7にかかる加工条件調整装置が加工結果モデルを更新する処理を説明するための図である。図11に示すグラフの横軸は加工条件パラメータであり、縦軸は加工結果である。以下では、実施の形態7にかかる加工条件調整装置が加工条件調整装置10Bである場合について説明するが、実施の形態7にかかる加工条件調整装置は、加工条件調整装置10C~10Eであってもよい。
【0141】
実施の形態7では、加工条件パラメータが調整される前に、予め加工試験が実施される。これにより、加工結果と加工条件パラメータとの関係を示す基準加工結果モデルBmが導出される。この場合において、機械特性、加工軌跡、加工環境によっては基準加工結果モデルBmの通りの加工結果が得られない場合がある。そのため、加工条件調整装置10Bは、基準加工結果モデルBmから更新加工結果モデルUmに加工結果モデルを更新する。すなわち、加工条件調整装置10Bは、加工条件パラメータと加工結果との関係を更新する。これにより、加工条件調整装置10Bは、所望の要求仕様通りの加工結果が得られるよう更新された更新加工結果モデルに基づいてパラメータ調整量Paを計算し、加工条件パラメータを調整する。
【0142】
加工条件調整装置10Bは、単純な線形回帰モデルの平行移動によって加工結果モデルを更新してもよいし、後述する教師あり学習、教師なし学習、強化学習等の複雑なAI(Artificial Intelligence、人工知能)モデルを用いて基準加工結果モデルを更新してもよい。
【0143】
加工条件調整装置10Bは、AIモデルを用いて基準加工結果モデルを更新する場合、例えば基準加工結果モデルBmが導出された際に行われた処理の続きの処理を実行する。例えば、基準加工結果モデルが後述するニューラルネットワークを用いて生成されている場合、加工条件調整装置10Bは、基準加工結果モデルが生成される際に用いられたニューラルネットワークをそのまま更新加工結果モデルを生成する際に用いる。これにより、加工条件調整装置10Bは、基準加工結果モデルBmが導出された際の処理の続きから、再学習を実行することで、更新加工結果モデルUmを生成することができる。
【0144】
このように実施の形態7によれば、加工条件調整装置10Bは、要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを、作業者5の利用形態に合わせて更新された更新加工結果モデルに基づいて調整できる。
【0145】
実施の形態8.
つぎに、図12図15を用いて実施の形態8について説明する。実施の形態8では、後述する加工結果モデル学習装置50が、基準加工結果モデルを生成する。
【0146】
図12は、実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置の構成を示す図である。加工結果モデル学習装置50は、学習によって基準加工結果モデルを生成する装置である。加工結果モデル学習装置50は、学習用データ取得部51と、学習用データ評価部52と、加工結果モデル導出部53とを備えている。
【0147】
学習用データ取得部51は、基準加工結果モデルを学習するための学習用データを取得する。具体的には、学習用データ取得部51は、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、加工軌跡の解析結果である軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工結果D6とを学習用データとして取得する。ここで、学習用データは、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工結果D6とが互いに関連付けられたデータである。
【0148】
学習用データ取得部51は、例えば、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工結果D6とを含んだ学習用データを同時に取得する。
【0149】
学習用データ取得部51は、作業者5から学習用データを取得する。なお、学習用データ取得部51は、ワイヤ放電加工機1から学習用データの少なくとも一部を取得してもよいし、他の外部装置から学習用データの少なくとも一部を取得してもよい。学習用データ取得部51は、取得した学習用データを学習用データ評価部52に送る。
【0150】
学習用データ評価部52は、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5とに重み付けを行って、加工結果モデル導出部53に送る。すなわち、学習用データ評価部52は、学習用データのそれぞれに重み付けを行ったデータと、加工結果D6とを学習用データとして加工結果モデル導出部53に送る。
【0151】
加工結果モデル導出部53は、学習用データ評価部52から送られてくる学習用データに基づいて、加工結果を推論する基準加工結果モデルを導出する。導出された基準加工結果モデルは、基準加工結果モデル記憶部45において記憶される。
【0152】
加工結果モデル学習装置50は、加工条件調整装置10B~10Eまたはワイヤ放電加工機1の内部に配置されてもよい。また、加工結果モデル学習装置50は、ネットワークを介して加工条件調整装置10B~10Eまたはワイヤ放電加工機1に接続された、加工条件調整装置10B~10Eまたはワイヤ放電加工機1とは別個の装置であってもよい。また、加工結果モデル学習装置50は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0153】
なお、学習用データ取得部51は、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工結果D6とを含んだ学習用データを同時に取得する場合について説明したが、学習用データを異なるタイミングで取得してもよい。すなわち、学習用データ取得部51は、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工結果D6とを関連付けて受け付けることができればよく、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工結果D6とをそれぞれ別々のタイミングで取得してもよい。
【0154】
また、加工結果モデル学習装置50は、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5との少なくとも1つと、加工結果D6とを関連付けた基準加工結果モデルを導出してもよい。
【0155】
加工結果モデル導出部53が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、強化学習等の公知の学習アルゴリズムを用いることができる。また、加工結果モデル導出部53に用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習(Deep Learning)を用いることもできる。また、加工結果モデル導出部53は、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。また、加工結果モデル導出部53は、数理最適化によって基準加工結果モデルを生成してもよい。
【0156】
ここでは、一例として、加工結果モデル導出部53が用いる学習アルゴリズムにニューラルネットワークを適用した場合について説明する。加工結果モデル導出部53は、例えば、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、基準加工結果モデルを学習する。この場合、学習用データが教師データである。ここで、教師あり学習とは、入力と結果(ラベル)とのデータの組を学習装置に与えることで、それらの学習用データにある特徴を学習し、入力から結果を推論する手法をいう。
【0157】
ニューラルネットワークは、複数のニューロンからなる入力層、複数のニューロンからなる中間層(隠れ層)、および複数のニューロンからなる出力層で構成される。中間層は、1層であってもよいし2層以上であってもよい。
【0158】
図13は、実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置が用いるニューラルネットワークを説明するための図である。例えば、図18に示すような3層のニューラルネットワークであれば、複数の入力が入力層(X1~X3)に入力されると、その値に重みW1(w11~w16)が掛けられて中間層(Y1~Y2)に入力される。そして、その結果にさらに重みW2(w21~w26)が掛けられて出力層(Z1~Z3)から出力される。この出力結果は、重みW1および重みW2の値によって変わる。
【0159】
図12の加工結果モデル学習装置50が用いるニューラルネットワークは、学習用データ取得部51によって取得される、目的変数と説明変数との組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、基準加工結果モデルを学習する。
【0160】
加工結果モデル学習装置50が用いるニューラルネットワークは、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5に対応する加工結果D6を学習する。換言すると、ニューラルネットワークは、学習用データ取得部51によって取得される第1の入力と第2の入力(正解)との組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、第1の入力に対応する第2の入力を学習する。
【0161】
すなわち、加工結果モデル学習装置50が用いるニューラルネットワークは、順伝播によって、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5を入力して出力層から出力された結果が、正解である加工結果D6(正解)に近づくように重みW1および重みW2を調整することで学習する。
【0162】
また、加工結果モデル学習装置50が用いるニューラルネットワークは、逆伝播によって、加工結果D6を出力層に入力して入力層から出力された結果が、正解である加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5に近づくように重みW1および重みW2を調整することで学習する。
【0163】
ニューラルネットワークは、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5と、加工結果D6との対応関係を学習することで、推論用のデータが入力された場合に適切な推論結果を出力することができる基準加工結果モデルを生成する。
【0164】
ニューラルネットワークは、例えば、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5が入力された場合に適切な加工結果D6を出力する。また、ニューラルネットワークは、加工結果D6が入力された場合に適切な加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5を出力する。
【0165】
パラメータ調整部41が、基準加工結果モデルを用いる場合には、要求仕様を基準加工結果モデルに入力することで、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5を計算して加工結果推定部42に出力する。加工結果推定部42が、基準加工結果モデルを用いる場合には、パラメータ調整部41から受け付けた加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5を基準加工結果モデルに入力することで、推定加工結果を計算する。要求仕様に含まれる要求加工結果は、加工結果の範囲を示す情報であり、推定加工結果は、加工結果の特定値を示す情報である。推定加工結果は、要求加工結果の範囲内であり、作業者5が所望する範囲内となっている。
【0166】
加工結果モデル導出部53は、以上のような学習を実行することで基準加工結果モデルを生成し、出力する。基準加工結果モデル記憶部45は、加工結果モデル導出部53から出力された基準加工結果モデルを記憶する。
【0167】
図14は、実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、加工結果モデル学習装置50が、基準加工結果モデルを学習する処理の処理手順について説明する。
【0168】
学習用データ取得部51は、加工試験項目D1と、加工状態D2と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工結果D6とを学習用データとして取得する(ステップS410)。
【0169】
学習用データ評価部52は、学習用データ取得部51から送られてくる加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5を評価する(ステップS420)。すなわち、学習用データ評価部52は、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5に対して重み付けを行う。学習用データ評価部52は、重み付けを行ったデータと加工結果D6とを学習用データとして加工結果モデル導出部53に送る。
【0170】
加工結果モデル導出部53は、学習用データ評価部52から送られてくる学習用データに基づいて、基準加工結果モデルを導出する(ステップS430)。基準加工結果モデル記憶部45は、加工結果モデル導出部53が導出した基準加工結果モデルを記憶する(ステップS440)。
【0171】
ワイヤ放電加工機1は、例えば、加工ステップを連続して実行することで、最終的な要求仕様(面粗さ)を満たす加工を実行する。すなわち、ワイヤ放電加工機1は、所望の加工結果を得るために類似の加工軌跡を何度も往復しながら、徐々に所望の要求仕様に加工結果を近付けていく。このため、加工結果モデル学習装置50は、複数ステップの加工に含まれる各加工ステップに対して基準加工結果モデルを導出してもよい。
【0172】
図15は、実施の形態8にかかる加工結果モデル学習装置が基準加工結果モデルの導出対象とする複数ステップを説明するための図である。図15に示すグラフの横軸は加工ステップであり、縦軸は加工結果である。加工結果モデル学習装置50は、加工条件調整装置10B~10Eが用いる基準加工結果モデルを生成する。なお、以下では、加工結果が面粗さである場合について説明するが、加工結果は面粗さ以外であってもよい。
【0173】
図15では、ワイヤ放電加工機1が、第1の加工ステップ(1st)~第5の加工ステップ(5th)を実行することによって、工作物4を加工する場合を示している。ワイヤ放電加工機1が加工ステップを連続して実行する場合、各加工ステップには、加工可能な加工結果の範囲である加工可能範囲が存在する。
【0174】
加工可能範囲は、加工条件パラメータを種々変更して加工が実行された場合に実現し得る加工結果の範囲である。例えば、加工条件パラメータが3種類あり、各加工条件パラメータのパラメータ値が10種類である場合、加工条件パラメータの組合せは1000通りとなる。この場合、1000通りの加工条件パラメータで加工が実行された場合の加工結果の範囲が加工可能範囲となる。
【0175】
加工ステップには、加工可能範囲が広い加工ステップと、加工可能範囲が狭い加工ステップとがある。ワイヤ放電加工機1は、各加工ステップにおいて加工結果を推移させていくことで、最終的に要求仕様を満たす加工結果を得る。この場合において、加工可能範囲内で高速な加工が実行された場合と、精度良く加工が実行された場合とで、加工結果が推移する経路が異なることとなる。すなわち、加工速度を重視するか、寸法精度を重視するかに合わせて、加工結果が推移する経路は異なる。実施の形態8では、加工結果モデル学習装置50が、これらの加工結果の推移を、基準加工結果モデルのモデル化対象に含める。
【0176】
図15では、第1の加工ステップにおける加工可能範囲を、加工可能範囲R1として図示している。ワイヤ放電加工機1は、加工結果が加工可能範囲R1に収まる加工条件で加工を実行する。この場合において、例えば、高速な加工が実行された場合、加工結果である面粗さは大きくなり、低速な加工(高精度な加工)が実行された場合、加工結果である面粗さは小さくなる。図15では、第1の加工ステップにおいて高速な加工が実行された場合の加工結果を加工結果Faで示し、低速な加工が実行された場合の加工結果を加工結果Fbで示している。ワイヤ放電加工機1において、前(前段)の加工ステップにおける加工結果(面粗さ)に応じて、次(次段)の加工ステップにおける加工可能範囲は異なる。
【0177】
図15では、高速な加工が実行された場合の第2~第4の加工ステップにおける加工可能範囲を、加工可能範囲R2a~R4aとして図示している。また、低速な加工が実行された場合の第2~第4の加工ステップにおける加工可能範囲を、加工可能範囲R2b~R4bとして図示している。
【0178】
ワイヤ放電加工機1は、何れの加工条件を適用する場合であっても、最終的な要求仕様(面粗さ)を満たすように各加工ステップに対して加工を実行する。図15では、最終の加工ステップである第5の加工ステップにおける加工可能範囲を、加工可能範囲R5として図示している。
【0179】
このように、各加工ステップにおける加工結果は前ステップの加工結果の影響を受ける。工作物4が最終的な要求仕様を満たすためには、各加工ステップにおいて達成すべき、理想的な加工結果である理想的加工結果(図15における斜線の範囲)が存在する。この理想的加工結果は、要求される加工速度、寸法精度などに応じて決まる。ワイヤ放電加工機1は、各加工ステップの加工結果が理想的加工結果を推移するように加工していくことで、最終の第5の加工ステップにおいて要求仕様を満たした加工結果を得ることができる。
【0180】
なお、総加工ステップ数を多くして精度の高い加工結果を得たい場合、総加工ステップ数をできるだけ少なくして加工時間を短縮したいといった場合など所望する加工結果に応じて、加工結果が推移すべき理想的加工結果は異なる。このため、加工結果モデル学習装置50は、前の加工ステップの理想的加工結果と次の加工ステップの理想的加工結果との関係を、基準加工結果モデルをモデル化する際に用いる情報に含める。
【0181】
加工結果モデル学習装置50は、例えば、前の加工ステップの理想的加工結果と、次の加工ステップの理想的加工結果と、次の加工ステップにおける、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5との関係を学習することで、基準加工結果モデルを学習する。
【0182】
加工結果モデル学習装置50は、例えば、前の加工ステップの理想的加工結果と、次の加工ステップの理想的加工結果と、次の加工ステップにおける加工条件パラメータとの関係を学習することで、基準加工結果モデルを学習する。
【0183】
このように実施の形態8によれば、加工結果モデル学習装置50は、加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5に対応する加工結果D6を学習することで、基準加工結果モデルを学習しているので、高精度に加工結果を推論できる基準加工結果モデルを生成できる。また、加工結果モデル学習装置50は、複雑形状に対応した基準加工結果モデルを生成できる。
【0184】
また、加工結果モデル学習装置50は、前の加工ステップの理想的加工結果と、次の加工ステップの理想的加工結果と、次の加工ステップにおける加工試験項目D1、加工状態D2、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5の関係を学習しているので、前の加工ステップの影響を考慮した基準加工結果モデルを導出でき、基準加工結果モデルのモデル化精度を向上させることができる。
【0185】
実施の形態9.
つぎに、図16および図17を用いて実施の形態9について説明する。実施の形態9では、後述する試験項目モデル学習装置60が、試験項目モデルを生成する。
【0186】
図16は、実施の形態9にかかる試験項目モデル学習装置の構成を示す図である。試験項目モデル学習装置60は、学習によって試験項目モデルを生成する装置である。試験項目モデル学習装置60は、学習用データ取得部61と、学習用データ評価部62と、試験項目モデル導出部63とを備えている。
【0187】
学習用データ取得部61は、試験項目モデルを学習するための学習用データを取得する。具体的には、学習用データ取得部61は、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1とを学習用データとして取得する。ここで、学習用データは、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1とが互いに関連付けられたデータである。
【0188】
学習用データ取得部61は、例えば、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1とを含んだ学習用データを同時に取得する。
【0189】
学習用データ取得部61は、ワイヤ放電加工機1から学習用データの少なくとも一部を取得してもよいし、他の外部装置から学習用データの少なくとも一部を取得してもよい。なお、学習用データ取得部61は、作業者5から要求仕様D11を取得する。学習用データ取得部61は、取得した学習用データを学習用データ評価部62に送る。
【0190】
学習用データ評価部62は、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5とに重み付けを行って、試験項目モデル導出部63に送る。すなわち、学習用データ評価部62は、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5とのそれぞれに重み付けを行ったデータと、加工試験項目D1とを学習用データとして試験項目モデル導出部63に送る。
【0191】
試験項目モデル導出部63は、学習用データ評価部62から送られてくる学習用データに基づいて、加工試験項目D1を推論する試験項目モデルを導出する。試験項目モデルは、試験項目モデル記憶部43において記憶される。
【0192】
試験項目モデル学習装置60は、加工条件調整装置10B~10Eまたはワイヤ放電加工機1の内部に配置されてもよい。また、試験項目モデル学習装置60は、ネットワークを介して加工条件調整装置10B~10Eまたはワイヤ放電加工機1に接続された、加工条件調整装置10B~10Eまたはワイヤ放電加工機1とは別個の装置であってもよい。また、試験項目モデル学習装置60は、クラウドサーバ上に存在していてもよい。
【0193】
なお、学習用データ取得部61は、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1とを含んだ学習用データを同時に取得する場合について説明したが、学習用データを異なるタイミングで取得してもよい。すなわち、学習用データ取得部61は、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1とを関連付けて受け付けることができればよく、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1とをそれぞれ別々のタイミングで取得してもよい。
【0194】
また、試験項目モデル学習装置60は、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5との少なくとも1つと、加工試験項目D1とを関連付けた試験項目モデルを導出してもよい。
【0195】
試験項目モデル導出部63が用いる学習アルゴリズムは教師あり学習、教師なし学習、半教師あり学習、強化学習等の公知の学習アルゴリズムを用いることができる。また、試験項目モデル導出部63に用いられる学習アルゴリズムとしては、特徴量そのものの抽出を学習する、深層学習を用いることもできる。また、試験項目モデル導出部63は、他の公知の方法、例えば遺伝的プログラミング、機能論理プログラミング、サポートベクターマシンなどに従って機械学習を実行してもよい。一例として、試験項目モデル導出部63が用いる学習アルゴリズムにニューラルネットワークを適用した場合について説明する。
【0196】
試験項目モデル導出部63は、例えば、ニューラルネットワークモデルに従って、いわゆる教師あり学習により、試験項目モデルを学習する。この場合、学習用データが教師データである。試験項目モデル導出部63が用いるニューラルネットワークの構成は、実施の形態8の図13で説明したニューラルネットワークと同様の構成とである。
【0197】
図16の試験項目モデル学習装置60が用いるニューラルネットワークは、学習用データ取得部61によって取得される、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1との組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、加工試験項目D1を推論するための試験項目モデルを学習する。すなわち、試験項目モデル学習装置60が用いるニューラルネットワークは、要求仕様D11、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5に対応する加工試験項目D1を学習する。換言すると、ニューラルネットワークは、学習用データ取得部61によって取得される第1の入力と第2の入力(正解)との組合せに基づいて作成される学習用データに従って、いわゆる教師あり学習により、第1の入力に対応する第2の入力を学習する。
【0198】
すなわち、試験項目モデル学習装置60が用いるニューラルネットワークは、要求仕様D11、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5を入力して出力層から出力された結果が、加工試験項目D1(正解)に近づくように重みW1および重みW2を調整することで学習する。
【0199】
ニューラルネットワークは、要求仕様D11、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5と加工試験項目D1との対応関係を学習することで、要求仕様D11、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5が入力された場合に適切な加工試験項目D1を出力することができる試験項目モデルを生成する。
【0200】
試験項目モデル導出部63は、以上のような学習を実行することで試験項目モデルを生成し、出力する。試験項目モデル記憶部43は、試験項目モデル導出部63から出力された試験項目モデルを記憶する。
【0201】
図17は、実施の形態9にかかる試験項目モデル学習装置が実行する処理の処理手順を示すフローチャートである。ここでは、試験項目モデル学習装置60が、試験項目モデルを学習する処理の処理手順について説明する。
【0202】
学習用データ取得部61は、要求仕様D11と、機械特性D3と、軌跡解析結果D4と、加工環境D5と、加工試験項目D1とを学習用データとして取得する(ステップS510)。
【0203】
学習用データ評価部62は、学習用データ取得部61から送られてくる要求仕様D11、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5を評価する(ステップS520)。すなわち、学習用データ評価部62は、要求仕様D11、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5に対して重み付けを行う。学習用データ評価部62は、重み付けを行ったデータと加工試験項目D1とを学習用データとして試験項目モデル導出部63に送る。
【0204】
試験項目モデル導出部63は、学習用データ評価部62から送られてくる学習用データに基づいて、試験項目モデルを導出する(ステップS530)。試験項目モデル記憶部43は、試験項目モデル導出部63が導出した加工試験項目モデルを記憶する(ステップS540)。
【0205】
このように実施の形態9によれば、要求仕様D11、機械特性D3、軌跡解析結果D4、および加工環境D5に対応する加工試験項目D1を学習することで、試験項目モデルを学習しているので、高精度に試験項目を推論できる加工試験項目モデルを生成できる。
【0206】
つぎに、加工条件調整装置10A~10E、加工結果モデル学習装置50、および試験項目モデル学習装置60のハードウェア構成について説明する。なお、加工条件調整装置10A~10E、加工結果モデル学習装置50、および試験項目モデル学習装置60は、同様のハードウェア構成を有しているので、ここでは加工条件調整装置10Aのハードウェア構成について説明する。
【0207】
加工条件調整装置10Aは、処理回路により実現される。この処理回路は、メモリに格納されるプログラムを実行するプロセッサおよびメモリであってもよいし、専用のハードウェアであってもよい。処理回路は制御回路とも呼ばれる。
【0208】
図18は、実施の形態1にかかる加工条件調整装置が備える処理回路をプロセッサおよびメモリで実現する場合の処理回路の構成例を示す図である。図18に示す処理回路90は制御回路であり、プロセッサ91およびメモリ92を備える。処理回路90がプロセッサ91およびメモリ92を用いて構成される場合、処理回路90の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組合せにより実現される。ソフトウェアまたはファームウェアはプログラムとして記述され、メモリ92に格納される。処理回路90では、メモリ92に記憶されたプログラムをプロセッサ91が読み出して実行することにより、各機能を実現する。すなわち、処理回路90は、加工条件調整装置10Aの処理が結果的に実行されることになる加工条件調整プログラムを格納するためのメモリ92を備える。この加工条件調整プログラムは、処理回路90により実現される各機能を加工条件調整装置10Aに実行させるためのプログラムであるともいえる。この加工条件調整プログラムは、プログラムが記憶された記憶媒体により提供されてもよいし、通信媒体など他の手段により提供されてもよい。
【0209】
試験項目推論装置30および加工結果モデル更新装置20は、プロセッサ91がメモリ92に記憶された加工条件調整プログラムを実行することにより実現される。すなわち、加工条件調整装置10Aで実行される加工条件調整プログラムは、試験項目推論装置30と、加工結果モデル更新装置20とを含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0210】
なお、加工結果モデル学習装置50が用いる加工結果モデル学習プログラムは、学習用データ取得部51と、学習用データ評価部52と、加工結果モデル導出部53とを含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0211】
また、試験項目モデル学習装置60が用いる試験項目モデル学習プログラムは、学習用データ取得部61と、学習用データ評価部62と、試験項目モデル導出部63とを含むモジュール構成となっており、これらが主記憶装置上にロードされ、これらが主記憶装置上に生成される。
【0212】
ここで、プロセッサ91は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、またはDSP(Digital Signal Processor)などである。また、メモリ92は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(登録商標)(Electrically EPROM)などの、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、またはDVD(Digital Versatile Disc)などが該当する。
【0213】
図19は、実施の形態1にかかる加工条件調整装置が備える処理回路を専用のハードウェアで構成する場合の処理回路の例を示す図である。図19に示す処理回路93は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、またはこれらを組合せたものが該当する。
【0214】
処理回路90,93については、一部を専用のハードウェアで実現し、一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現するようにしてもよい。このように、処理回路90,93は、専用のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組合せによって、上述の各機能を実現することができる。なお、加工条件調整装置10Aは、1つの処理回路で実現されてもよいし、複数の処理回路で実現されてもよい。
【0215】
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
【符号の説明】
【0216】
1 ワイヤ放電加工機、2 制御装置、3 電源装置、4 工作物、5 作業者、6 ワイヤ電極、7 入力部、8a 上部給電子、8b 下部給電子、10A~10E 加工条件調整装置、11 要求仕様入力部、12 加工結果入力部、13 加工状態取得部、14 機械特性取得部、15 加工軌跡解析部、16 加工環境取得部、17 加工環境入力部、18 加工結果計測装置、20 加工結果モデル更新装置、21 更新用データ取得部、22 更新用データ評価部、23 更新部、24 更新モデル記憶部、30 試験項目推論装置、31 導出用データ取得部、32 導出用データ評価部、33 試験項目導出部、34 試験項目記憶部、41 パラメータ調整部、42 加工結果推定部、43 試験項目モデル記憶部、44 表示部、45 基準加工結果モデル記憶部、46 更新要否判定部、50 加工結果モデル学習装置、51,61 学習用データ取得部、52,62 学習用データ評価部、53 加工結果モデル導出部、60 試験項目モデル学習装置、63 試験項目モデル導出部、81 ワイヤ電極ボビン、82 ワイヤ電極回収箱、83 ワイヤ電極搬送ローラ、84 下部ローラ、85 ワイヤ走行速度制御モータ、86 上部ガイド、87 下部ガイド、88 加工部、89X X軸モータ、89Y Y軸モータ、90,93 処理回路、91 プロセッサ、92 メモリ、Bm 基準加工結果モデル、D1 加工試験項目、D2 加工状態、D3 機械特性、D4 軌跡解析結果、D5 加工環境、D6,Fa,Fb 加工結果、D11 要求仕様、Pa パラメータ調整量、R1,R2a~R4a,R2b~R4b,R5 加工可能範囲、T 定盤、Um 更新加工結果モデル。
【要約】
加工条件調整装置(10A)は、放電加工に対して作業者が所望する要求仕様から加工試験項目を推論するための学習済の加工試験項目モデルを用いて、要求仕様から加工試験項目を導出する試験項目推論装置(30)と、加工試験に対応する加工結果を取得し、加工結果から加工条件パラメータを推論し加工条件パラメータから加工結果を推論するための学習済の基準加工結果モデルと、取得した加工結果データとに基づいて、基準加工結果モデルを更新した更新加工結果モデルを生成する加工結果モデル更新装置(20)と、更新加工結果モデルを用いて、要求仕様から要求仕様を満たした加工結果を得るための加工条件パラメータを計算加工条件パラメータとして計算するパラメータ調整部(41)と、更新加工結果モデルと計算加工条件パラメータとに基づいて、計算加工条件パラメータに対応する推定加工結果を推定する加工結果推定部(42)とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19