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  • 特許-防音塗料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-11-05
(54)【発明の名称】防音塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241007BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241007BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20241007BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021030750
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131683
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514222835
【氏名又は名称】TCユニオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181940
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 禎浩
(72)【発明者】
【氏名】成田 明
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102093788(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0073695(KR,A)
【文献】特開2017-186452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂素材の第1の中空ビーズと、無機化合物素材の第2の中空ビーズと、を塗膜形成材中に含む防音塗料であって、
前記第1、第2の中空ビーズのいずれか又は両方が、粒径差30μm以上の所定のサイズの粒径から構成されたものであり、80μmの粒径の中空ビーズの含有量(体積ベース)が最も大きい防音塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物や空調(エアコン)室外機等の防音塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題やエネルギー問題を鑑み様々な分野で省エネルギー化の取り組みがなされている。例えば、建築物のエネルギー消費の一定量を占めるエアコンに関しては、圧縮機の性能向上、センサーやインバーター制御による機器稼働の効率化等の技術面、設定温度の見直し等の運用面の両面からの取り組みが一般的になってきた。また、建築物そのものに関しても屋根や壁の断熱化等、省エネルギー化の取り組みがなされている。
【0003】
一方、防音に関する取り組みは省エネルギー化等の取り組みに比べて進んでいない。例えば、圧縮機のモータ音等の騒音問題が少なからずあることは周知の事実である。
【0004】
上記問題に取り組む一例として、エアコン室外機の周囲を防音カバーで囲う取り組みが挙げられる。しかしながら、このような方法ではエアコン室外機と防音カバーの間にホコリがたまり、また、熱だまりができて機器の周囲が高温環境になることで電力ロスが大きくなる等、新たな問題が生じる場合がある。
【0005】
このような中、塗料を用いて防音に取り組む技術として、合成樹脂に、鉛等の金属粉を混入し、加熱し、溶融混錬して均一分散させ、急速固化し、これを破砕して含金属塊状の粉末に形成したものに、エポキシ樹脂等をバインダーとして混入し、混錬均質分散をさせて形成した防振防音塗料(特許文献1)が挙げられる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は金属粉を用いるため高温になりやすいという問題がある。また、金属粉を用いることで成形性は向上すると考えられるが、防音防振に資するには塗膜の厚みをできるだけ大きくしなければならないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭62-058633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は建築物やエアコン室外機等に適用できる防音塗料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、弾力性を有する第1の中空ビーズと、前記第1の中空ビーズの素材より硬質である素材の第2の中空ビーズと、を含む防音塗料である。また、第2の発明は、前記第1、第2の中空ビーズのいずれか又は両方が、粒径差30μm以上の所定のサイズの粒径から構成されたものであり、最大粒径の中空ビーズの含有量(体積ベース)が最も大きいものである第1の発明の防音塗料である。ここで、粒径差30μm以上の所定のサイズの粒径から構成されたもの、とは、例えば、最大粒径80μmから最小粒径50μmまでの中空ビーズの構成が挙げられる。ただし、最大粒径、最小粒径が限定されるものではない。また、第3の発明は、最大粒径の中空ビーズの粒径が50~100μmの範囲内である第2の発明の防音塗料である。また、第4の発明は、互いに隣接する前記最大粒径の中空ビーズの隙間に収まる粒径を含む第2または第3の発明の防音塗料である。なお、中空ビーズの所定のサイズは、塗布された際、形成された塗膜により中空ビーズが十分保持されるサイズ以下であり、防音特性等を発揮できる空気等の気体を中に保持できるサイズ以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、塗膜中において、弾力性を有する第1の中空ビーズと、これより硬質である素材の第2の中空ビーズを含むため、互いの接触によっても可逆的に形状を維持し、中空ビーズ同士が外圧等によって接触しても壊れることなく内部空間を維持することが可能になる。すなわち、中空ビーズの密な層を形成、維持することができ、長期間にわたって防音効果を奏することが期待できる。また、粒径の異なる中空ビーズによって構成され、かつ、最大粒径の含有量が最も大きいため、ビーズをより密にすることができ、かつ、ビーズの密な層を形成、維持すること可能になる。すなわち、塗料内に防音に有用な空間が増え、防音効果をより高めることが期待できる。また、中空ビーズの最大粒径を50~100μmの範囲内にすること、その最大粒径の中空ビーズの隙間に収まる粒径の中空ビーズを用いることで上記効果を安定的に得ることが期待できる。なお、本発明において防音とは、発生源から伝播する音(様々な波長、波形、周波数の振動)を低減又は遮断することを意味するものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明にかかる実施形態の塗料の構成の一例を示す模式図である。
図2】塗料中の中空ビーズ層の拡大図である。
図3】対象設備、塗膜、音の関係を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその実施形態に基づき詳細に説明する。
【0013】
<塗料>
図1に示すように、本実施形態に係る防音用の塗料の一例である塗料Pは、水性系・溶剤系等の塗膜形成材1と、弾力性を有する軟質素材の中空ビーズ2(第1の中空ビーズの一例)と、硬質素材の中空ビーズ3(第2の中空ビーズの一例)と、を有する。なお、図1は、中空ビーズの種類が複数あり、各種類の中空ビーズの粒径に幅があることを示すためイメージ図である。
【0014】
塗膜形成材1として、例えば、アクリルエマルジョン樹脂が挙げられる。塗膜形成材1は、アクリル系以外にウレタン系、シリコン系、フッ素系成分を主成分とする樹脂を塗膜形成材でもよい。
【0015】
弾力性を有する第1の中空ビーズの一例である軟質の中空ビーズ2の材質として、例えば、アクリル、ポリスチレン、ポリカーボネート等のプラスチック、ゴム等のエラストラマが挙げられる。軟質の中空ビーズ2は、塗膜形成材3と同じ素材が好ましく、例えば、塗膜形成材3がアクリルエマルジョン樹脂の場合、アクリル中空ビーズである。
【0016】
硬質の中空ビーズ3は、例えば、セラミック中空ビーズ、ガラス中空ビーズである。セラミック中空ビーズとして、二酸化ケイ素65~73%、酸化アルミニウム12~18%を主成分とする火山灰を原料とするものが挙げられる。
【0017】
軟質の中空ビーズ2と硬質の中空ビーズ3との割合は、重量ベースまたは体積ベースで1対1が好ましい。軟質の中空ビーズ2と硬質の中空ビーズ3との割合は、重量ベースで1対1付近ならばよい。軟質の中空ビーズ2の割合が高くなると、塗料が乾燥した際、塗装膜の柔軟性が高いが、1回の塗布による塗装膜の厚みが十分取れない。塗布の回数を増加させる必要がある。一方、硬質の中空ビーズ3の割合が高くなると、塗料が乾燥した際、1回の塗布による塗装膜の厚みが厚くなるが、塗装膜の柔軟性が損なわれる。経年経過を考慮すると、軟質の中空ビーズ2の割合は、体積ベースまたは重量ベースで、50%以上が好ましい。
【0018】
このように性質の異なる素材を複数用いるのは、それぞれの素材が有するビーズ特性(形状や成分から得られる防音効果、成形効果、断熱効果、耐久性能等)を活かすためである。なお、下記の実施例では、例えば、中空ビーズにはアクリル中空ビーズ及びセラミック中空ビーズを重量ベースで1対1の割合で用いた。
【0019】
ここで、中空ビーズとはビーズ内部に空隙、空間を有する粒子のことであり、ビーズ内外で空気が遮断された閉系、多孔構造やドーナツ構造等、ビーズ内外が通じた開放系のいずれであってもよい。
【0020】
軟質の中空ビーズ2および硬質の中空ビーズ3等の中空ビーズの粒径は、最大粒径を基準として、粒径差として所定の幅(例えば、粒径80μmから50μmの幅)を有することが好ましい。粒径の分布に所定の幅があることで、塗料Pから水等の溶媒が揮発して塗料膜が形成された際、最大粒径の中空ビーズ同士の間に、小さい粒径の中空ビーズが入り込むことにより、中空ビーズが、より稠密になる。なお、中空ビーズの最大粒径は、中空ビーズのフィルタリングに使用されるフィルタの目の粗さ、メッシュサイズ等により規定されてもよい。
【0021】
中空ビーズはいずれの成分においても3つ粒径のラインナップ(粒径ラインナップ)からなる。ここで、粒径ラインナップとは中空ビーズの粒径が意図する複数の粒径構成になっていることを意味するものである。本実施例では、各素材の中空ビーズは、粒径80μm、60μm、50μmに中空率(粒径ごとの中空部分の体積の総和が塗膜中に占める割合)のピークを有し、重量比は5対3対2である(製造過程で生じた微細なビーズも含まれる)。
【0022】
本実施例では、80μmの中空ビーズが体積、重量ともに最大である。また、各粒径の中空ビーズの膜厚は約1μmから数μmであり、一般的にビーズ内の中空部分の体積はビーズの80%以上である。
【0023】
中空ビーズの粒径分布の確認方法は様々である。例えば、図2の拡大画像の中空ビーズの面積から粒子径を測定する方法がある。また、個々の粒子の体積を計測して相当する粒径を測定するコールター法、その他、いわゆる遠心沈降法、レーザ回折・散乱法等がある。なお、中空ビーズは非常に微細であることから、正確な粒径の中空ビーズの製造は技術的に困難である。そのため、製造誤差を前提に粒径分布が確認されるべきである。例えば、80μmから±5μmの粒径の全ての中空ビーズは、80μmの粒径の中空ビーズとしてカウントされる方法が挙げられる。
【0024】
塗膜中の中空ビーズの密度は図2のレベルが好ましい。このような密度レベルの塗膜によって防音効果、遮音効果、制振効果等が得られる。図3はその概念図である。塗膜形成材1によって軟質の中空ビーズ2と硬質の中空ビーズ3を含む塗膜が設備4の表面に形成される。こうして塗膜が外部から伝わる音5を遮断、低減する。
【0025】
また、軟質の中空ビーズ2および硬質の中空ビーズ3等の中空ビーズの形状は、図2に示すように、球形状が好ましいが、球形状でなくてもよい。中空ビーズが、破片のような歪な形で、球形でない場合の粒径は、中空ビーズの最大幅と最小幅の平均、中空ビーズの最大幅、または、中空ビーズの最小幅でもよい。
【0026】
<コーティング剤>
メタノール(90重量%以上)、水(4重量%以上)、酸化スズ(SnO)(0.1重量%)の混合物が主な塗膜コーティング剤である。コーティング剤は、特開2019-002671号公報に記載の親水コート又はこれに準じたものでよい。ただし、必ずしも必須のものではない。
【0027】
コーティング剤は、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ等の光触媒等、防音以外の効果を目的とした成分を含んでもよい。この場合、塗膜は防音のための下層部と別の機能を有する上層部の多機能構造となる。例えば、コーティング剤中の酸化チタン等の光触媒はその親水性と光触媒反応によって塗装表面を清浄にする。
【0028】
(実施例1)
本発明に係る塗料の防音効果の評価について以下、説明する。
本実施例では複数企業(鉄道、電力、製造業)の事務所、工場の屋根・外壁、空調・電気設備(エアコン室外機、変電所制御盤、鉄道通信設備、サーバー室)、飲料自動販売機が評価対象である。
【0029】
塗布は、対象設備の表面の汚れを高圧水洗で取り除く工程、ローラー刷毛で塗料を膜厚約400μm(乾燥時)とする工程からなる。塗布方法は限定されるものではない。例えば吹き付けによる塗布が挙げられる。ローラー刷毛では、1回目の塗布で約200μm(乾燥時)、2回目の塗布で約400μm(乾燥時)の膜厚が形成された。
【0030】
表1は塗膜の防音効果の通年観察結果である。事務所外壁への塗装によって外部音が軽減した。
【表1】
【0031】
表1において、低周波音の発生源が近くにある事務所が、評価対象設備である。表1は、事務所壁面に塗布された塗料が低周波音をどの程度低減させたかを示す官能評価結果である。塗料使用前の状態(表1中の「塗布前」の「音が聞こえる」)が比較対象である。本官能評価における指標は、「非常に不快な音が聞こえる」、「不快な音聞こえる」、「音が聞こえる」、「わずかに音が聞こえる」、「ほとんど音が聞こえない」の5段階である。表1が示すように、塗料によって低周波音が1段階軽減した。
【0032】
塗料を塗布した部分の外観に目視による汚れは確認されなかった(表2)。
【表2】
【0033】
表2は、事務所の壁面の塗料塗布部の外観の官能評価結果である。塗料を塗布しなかった部分が比較対象である。表2は、塗料の有無によって事務所壁面の汚れ具合がどの程度異なるのかを示すものである。今回、全ての対象設備において同様の結果が得られた。
【0034】
また、事務所外壁、エアコン室外機等全ての設備において、塗料を塗布した部分と塗布しなかった部分の夏季の温度差は、30~40℃程度あった(塗料塗布部は低温を維持した)。
【0035】
(実施例2)
本発明に係る塗料の有用な形態の検証について以下、説明する。
上記の通り、本実施例の中空ビーズは、硬質素材のセラミックビーズ及び軟質素材のアクリル樹脂ビーズである。このように2種類の素材を用いることで、各素材の特性を活かすことができる。
【0036】
一般的に、耐熱性に優れたセラミックやガラスを素材とする中空ビーズが様々な用途に使用されている。しかしながら、これらの硬質素材の中空ビーズのみが塗料に使用されると、その中空ビーズは互いの接触等によって割れてしまうことが多い。別の試験において、本実施例に使用した中空ビーズと同程度の量のガラスビーズのみではほとんどのビーズが割れるという結果になった。
【0037】
一方、本実施例において、ビーズの割れはほとんど認められなかった。すなわち、硬質素材の中空ビーズと軟質素材の中空ビーズの組み合わせが、密な中空ビーズの層を形成し得ることが示唆された。
【0038】
どのような素材が硬質素材や軟質素材であり、どのように素材選択するかは素材間の相対的なことである。本実施例において、セラミック中空ビーズとアクリル中空ビーズの組み合わせでは割れが生じなかった。これはアクリル中空ビーズの弾性によるものと考えられる。このように他方の素材の中空ビーズの応力に耐えることができる素材が選択されていればよい。
【0039】
ここで、材料の弾性の指標としてヤング率がある。合成樹脂のヤング率は4以下であることが多い。ガラスのヤング率は80、セラミックを形成する二酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機化合物のヤング率は100以上であると言われている。これらの技術常識と本実施例の結果を踏まえると、少なくともヤング率4以下の軟質素材と、80以上の硬質素材の組み合わせが、密な中空ビーズ層を塗料中に形成し得ることが示唆される。
【0040】
また、塗膜形成材としては、アクリル系以外にウレタン系、シリコン系、フッ素系が同程度の防音効果が有することが確認された。すなわち、合成樹脂全般が本発明に係る塗膜形成材として適用できることが示唆された。ただし、塗膜の成形性においては本発明に係る塗膜形成材にはアクリルが最も優れている。
【0041】
中空ビーズの使用量は、塗膜の厚さやビーズの粒径によって変わるものである。また、図2に示す中空ビーズの密度レベルは、所望の膜厚形成のための目安となる。
【0042】
また、本実施例において各素材の中空ビーズの粒径は、80μm、60μm、50μmで、重量比は5対3対2である。図2が示すように、体積比でも最大粒径の中空ビーズの割合が最も大きい。このように最大粒径の中空ビーズの体積比が最大の場合に、最大の防音効果となる知見が得られている。
【0043】
本実施例では、主に、最大粒径80μm、最小粒径50μm(粒径差30μm)の中空ビーズが使用された。経験的に、最大粒径は、50~100μmの範囲内にあることが好ましい。最小粒径は、限定されるものではなく、1μm未満でもよい。中空ビーズの密度を高めるのに寄与し得るからである。
【0044】
また、粒径ラインナップは、中空ビーズの密な構造を可能にし、これにより防音効果を大きくする。また、2つ以上の粒径分布のピークを有する中空ビーズの組み合わせも防音効果に寄与する可能性がある。そのようなピークは、60μmや50μm、さらに小さくてもよい。例えば、隣接する最大粒径の中空ビーズの隙間を埋める粒径のものでもよい。そのような粒径の中空ビーズは、理論的には、中空ビーズの密な状態を最大化することができる。
【0045】
また、最大粒径の中空ビーズがアクリル中空ビーズであって、このアクリル中空ビーズ同士の隙間を埋める粒径のビーズがセラミック中空ビーズでもよい。最大粒径のビーズがセラミックの場合、アクリル中空ビーズは、セラミック中空ビーズ同士が接触しないよう隔てることができる粒径のものでもよい。このように、中空ビーズ同士の接触による割れ等の悪影響を回避できる粒径と素材の構成になっていればよい。
【0046】
また、塗料の膜厚は様々な要因によって変化する。例えば、塗装直後と塗料乾燥後では後者の膜厚の方が小さい。これは塗料中の水等が揮発するためである。また、膜厚は温度や湿度等の影響を受けることでも伸縮する。そのため、隣り合う硬質の中空ビーズと軟質の中空ビーズは、塗膜収縮時には、前者が後者を凹状に変形させることが想定される。このような塗膜収縮に係る応力に耐えて、ビーズの中空構造を維持する素材が選択されることが重要である。
【0047】
また、本発明に係る塗料は、夏季において対象設備の表面を周辺より30~40℃下げた。この結果からは、塗膜中の中空ビーズ層が均質に形成されていることが示唆される。
【0048】
本実施例では、対象設備の表面に形成された約400μmの塗膜が、通年防音効果を実現した。中空ビーズの充填量がさらに多いもの、また、400μmを超える膜厚のものではさらに大きな防音効果が期待される。経験的には、膜厚は300~600μmであれば、成形性、耐久性に大きな影響を与えず防音塗料として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、建築物やエアコン室外機等の防音分野に利用することができる。また、本実施例に係る設備に限らず、例えば車両、航空機、船舶等様々な対象に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 塗膜形成材
2 第1の中空ビーズ
3 第2の中空ビーズ
P 塗料(防音塗料)
図1
図2
図3