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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】透明樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/04 20060101AFI20241007BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20241007BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241007BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20241007BHJP
【FI】
C08L67/04 ZBP
C08L33/12
C08K3/36
C08L101/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020179581
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070490
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】深谷 慶美
(72)【発明者】
【氏名】平井 隆行
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-316137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ乳酸(PLA)と二酸化ケイ素純度が90%以上のシリカとを含有し、
前記PMMAと前記PLAとの質量比がPMMA:PLA=5:95~25:75であり、
前記PMMAと前記PLAとの合計100容量部に対して前記シリカの含有量が1~8.7容量部である、
ことを特徴とする透明樹脂組成物。
【請求項2】
前記PMMAと前記PLAとの質量比がPMMA:PLA=10:90~20:80であることを特徴とする請求項1に記載の透明樹脂組成物。
【請求項3】
前記シリカの二酸化ケイ素純度が99.5%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明樹脂組成物に関し、より詳しくは、ポリメタクリル酸メチルとポリ乳酸とを含有する透明樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリ乳酸は、環境への負荷が少ない材料として注目されている。しかしながら、ポリ乳酸は、ガラス転移温度が低く、ガラス転移温度以上の温度域においては耐熱性が不足するという問題があった。
【0003】
そこで、特開2005-171204号公報(特許文献1)には、ポリ乳酸(PLA)にポリメタクリル酸メチル(PMMA)を配合し、これらの相溶性を向上させることによって、耐熱性、透明性、成形性、耐久性に優れたポリ乳酸含有樹脂組成物が得られることが記載されており、重量平均分子量が2万~30万のPMMAを20~98質量%とPLAを80~2質量部含有する樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-171204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂組成物においては、引張弾性率及び表面硬度が未だ十分ではなかった。
【0006】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、優れた引張弾性率及び表面硬度を有し、かつ、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ乳酸(PLA)との樹脂混合物の透明性が維持された透明樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ乳酸(PLA)とを特定の割合で含有する樹脂混合物にシリカを配合することによって、引張弾性率及び表面硬度が向上するとともに、PMMAとPLAとの樹脂混合物の透明性が維持されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の透明樹脂組成物は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ乳酸(PLA)と二酸化ケイ素純度が90%以上のシリカとを含有し、前記PMMAと前記PLAとの質量比がPMMA:PLA=5:95~25:75であり、前記PMMAと前記PLAとの合計100容量部に対して前記シリカの含有量が1~8.7容量部である、ことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の透明樹脂組成物においては、前記PMMAと前記PLAとの質量比がPMMA:PLA=10:90~20:80であることが好ましく、また、前記シリカの二酸化ケイ素純度が99.5%以上であることが好ましい。
【0010】
なお、本発明の透明樹脂組成物が、優れた引張弾性率及び表面硬度を有し、かつ、PMMAとPLAとの樹脂混合物の透明性が維持されたものとなる理由は必ずしも定かではないが、本発明者らは以下のように考察する。すなわち、本発明の透明樹脂組成物は、PMMAとPLAとを特定の割合で含有する樹脂混合物にシリカを特定の割合で配合したものである。このような透明樹脂組成物においては、シリカが含まれているため、その補強効果によって、前記樹脂混合物の引張弾性率及び表面硬度が向上すると考えられる。また、PMMAとPLAとを特定の割合で配合することによって、前記樹脂混合物とシリカとの屈折率差が小さくなるため、前記樹脂混合物の透明性が維持されると考えられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れた引張弾性率及び表面硬度を有し、かつ、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ乳酸(PLA)との樹脂混合物の透明性が維持された透明樹脂組成物を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0013】
本発明の透明樹脂組成物は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ乳酸(PLA)と二酸化ケイ素純度が90%以上のシリカとを含有するものである。
【0014】
本発明に用いられるPLAとしては特に制限はないが、PMMAとの相溶性及び機械的強度が向上するという観点から、乳酸単位を50モル%以上含有するものが好ましく、60モル%以上含有するものがより好ましく、70モル%以上含有するものが更に好ましく、100モル%含有するもの(すなわち、乳酸の単独重合体)が特に好ましい。
【0015】
前記乳酸単位が100モル%未満の場合において、乳酸と共重合可能な他のモノマーとしては、ポリカルボン酸、ポリオール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン等が挙げられる。
【0016】
前記PLAの重量平均分子量としては、1万~60万が好ましく、4万~60万がより好ましく、10万~50万が更に好ましい。前記PLAの重量平均分子量が前記下限未満になると、樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、PMMAとの相溶性が低下する傾向にある。
【0017】
本発明に用いられるPMMAとしては特に制限はないが、PLAとの相溶性及び機械的強度が向上するという観点から、メタクリル酸メチル単位を90モル%以上含有するものが好ましく、93モル%以上含有するものがより好ましく、95モル%以上含有するものが更に好ましく、100モル%含有するもの(すなわち、メタクリル酸メチルの単独重合体)が特に好ましい。
【0018】
前記メタクリル酸メチル単位が100モル%未満の場合において、メタクリル酸メチルと共重合可能な他のモノマーとしては、オレフィン、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(メタクリル酸メチルを除く)、スチレン等のメタクリル酸メチル以外のビニル系モノマーが挙げられる。
【0019】
前記PMMAの重量平均分子量としては、1万~40万が好ましく、4万~35万がより好ましく、5万~26万が更に好ましい。前記PMMAの重量平均分子量が前記下限未満になると、樹脂組成物の透明性や耐熱性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、PLAとの相溶性が低下し、樹脂組成物の透明性が低下する傾向にあり、また、樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向にある。
【0020】
本発明に用いられるシリカとしては、二酸化ケイ素純度が90%以上のものであれば特に制限はないが、樹脂組成物の透明性が向上するという観点から、二酸化ケイ素純度が95%以上のものが好ましく、97%以上のものがより好ましく、99.5%以上のものが特に好ましい。
【0021】
また、前記シリカの形状としては特に制限はなく、粒子状、繊維状のいずれの形状でもよい。
【0022】
前記シリカの形状が粒子状の場合、その平均粒径としては、0.1~50μmが好ましく、0.5~30μmがより好ましく、1~20μmが更に好ましい。平均粒径が前記下限未満になると、シリカ粒子のハンドリング性が悪化する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂組成物の加工性が低下する傾向にある。
【0023】
また、前記シリカの形状が繊維状の場合、その平均繊維長としては、0.01~10mmが好ましく、0.1~7mmがより好ましく、0.3~5mmが更に好ましい。平均繊維長が前記下限未満になると、シリカ繊維による機械的強度の向上効果が小さくなる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂組成物の加工性が低下するほか、成形品の外観が悪化する傾向にある。また、平均繊維径としては、1~50μmが好ましく、3~30μmがより好ましく、5~25μmが更に好ましい。平均繊維径が前記下限未満になると、シリカ繊維のハンドリング性が悪化する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、樹脂組成物の加工性が低下する傾向にある。
【0024】
本発明の透明樹脂組成物においては、前記PMMAと前記PLAとの質量比がPMMA:PLA=5:95~25:75の範囲内にある。前記PMMAの割合が前記下限未満になると、樹脂組成物の耐熱性が低下する。他方、前記PMMAの割合が前記上限を超えると、樹脂組成物の透明性が低下する。また、樹脂組成物の耐熱性及び透明性が向上するという観点から、前記PMMAと前記PLAとの質量比としては、10:90~20:80が好ましく、10:90~15:85がより好ましい。
【0025】
また、本発明の透明樹脂組成物においては、前記シリカの含有量が前記PMMAと前記PLAとの合計100容量部に対して1~100容量部の範囲内にある。前記シリカの含有量が前記下限未満になると、樹脂組成物の引張弾性率及び表面硬度が低下する。他方、前記シリカの含有量が前記上限を超えると、樹脂組成物の成形性及び透明性が低下する。また、樹脂組成物の透明性、機械的強度及び加工性が向上するという観点から、前記シリカの含有量としては、前記PMMAと前記PLAとの合計100容量部に対して、1~80容量部が好ましく、1~50容量部がより好ましい。
【0026】
本発明の透明樹脂組成物には、本発明の効果(特に、透明性)を損なわない範囲において、結晶核剤、加水分解抑制剤、酸化防止剤、熱安定剤、可塑剤、滑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、離型剤、抗菌剤等の公知の各種添加剤を配合してもよい。
【0027】
本発明の透明樹脂組成物の製造方法としては、前記PMMAと前記PLAと前記シリカとを所定の割合で均一に混合(混練)できる方法であれば特に制限はなく、例えば、前記PMMAと前記PLAとを、質量比が前記範囲内となるようにドライブレンドし、得られた樹脂混合物(ブレンド樹脂)と前記シリカとを、容量比が前記範囲内となるように混練(好ましくは溶融混練)する方法が挙げられる。混練温度としては特に制限はないが、通常、200~300℃の範囲内である。また、混練時間としては特に制限はないが、通常、3~15分間の範囲内である。
【0028】
本発明の透明樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、インフレーション成形、異形押出成形、射出ブロー成形、真空圧空成形、紡糸等の公知の成形方法により、各種形状の透明樹脂複合材料に成形することができる。このような透明樹脂複合材料としては、例えば、射出成形品、押出成形品、圧縮成形品、ブロー成形品、シート、フィルム、糸、ファブリック等が挙げられる。
【実施例
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
ポリメタクリル酸メチル(株式会社クラレ製「パラペットGグレード」、重量平均分子量:8.6万)とポリ乳酸(ユニチカ株式会社製「テラマックTE-2000」、重量平均分子量:12万)とを質量比PMMA:PLA=10:90でドライブレンドし、得られた樹脂混合物とシリカビーズ(株式会社アドマテックス製「SO-C6」、二酸化ケイ素純度:99.8%、平均粒子径:1.8~2.3μm)とを、容量比が樹脂混合物:シリカ=92体積%:8体積%(樹脂混合物100容量部に対してシリカ8.7容量部)となるように、卓上小型混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製マイクロコンパウンダー「Haake minilab」)に投入し、230℃で5分間混練した。得られた樹脂組成物を、小型テストプレス機(高千穂精機株式会社製「TW-08」)を用いて温度200℃、圧力10MPaの条件で30秒間加圧成形した後、得られた成形体を、水冷したプレス機(株式会社上島製作所製)を用いて固化させ、50mm×50mm×0.5mmの平板(複合材料)を得た。
【0031】
(実施例2)
前記ポリメタクリル酸メチルと前記ポリ乳酸との質量比をPMMA:PLA=20:80に変更した以外は実施例1と同様にして、50mm×50mm×0.5mmの平板(複合材料)を作製した。
【0032】
(比較例1)
ペレット状のポリ乳酸(ユニチカ株式会社製「テラマックTE-2000」、重量平均分子量:12万)のみを、小型テストプレス機(高千穂精機株式会社製「TW-08」)を用いて温度200℃、圧力10MPaの条件で30秒間加圧成形した後、得られた成形体を、水冷したプレス機(株式会社上島製作所製)を用いて固化させ、50mm×50mm×0.5mmの平板(樹脂材料)を得た。
【0033】
(比較例2)
シリカビーズを配合しなかった以外は実施例1と同様にして、50mm×50mm×0.5mmの平板(樹脂材料)を作製した。
【0034】
(比較例3)
シリカビーズを配合しなかった以外は実施例2と同様にして、50mm×50mm×0.5mmの平板(樹脂材料)を作製した。
【0035】
(比較例4)
前記ポリメタクリル酸メチルと前記ポリ乳酸との質量比をPMMA:PLA=30:70に変更し、シリカビーズを配合しなかった以外は実施例1と同様にして、50mm×50mm×0.5mmの平板(樹脂材料)を作製した。
【0036】
(比較例5)
ポリ乳酸(ユニチカ株式会社製「テラマックTE-2000」、重量平均分子量:12万)とシリカビーズ(株式会社アドマテックス製「SO-C6」、二酸化ケイ素純度:99.8%、平均粒子径:1.8~2.3μm)とを、容量比がPLA:シリカ=92体積%:8体積%(PLA100容量部に対してシリカ8.7容量部)となるように、卓上小型混練機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製マイクロコンパウンダー「Haake minilab」)に投入し、230℃で5分間混練した。得られた樹脂組成物を、小型テストプレス機(高千穂精機株式会社製「TW-08」)を用いて温度200℃、圧力10MPaの条件で30秒間加圧成形した後、得られた成形体を、水冷したプレス機(株式会社上島製作所製)を用いて固化させ、50mm×50mm×0.5mmの平板(複合材料)を得た。
【0037】
(比較例6)
前記ポリメタクリル酸メチルと前記ポリ乳酸との質量比をPMMA:PLA=30:70に変更した以外は実施例1と同様にして、50mm×50mm×0.5mmの平板(複合材料)を作製した。
【0038】
(比較例7)
前記シリカビーズの代わりにガラス繊維(日東紡績株式会社製「チョップドストランドCS3J-256LS」、二酸化ケイ素純度:53%、平均繊維長:3mm、平均繊維径:11μm)を、容量比が樹脂混合物:ガラス繊維=92体積%:8体積%(樹脂混合物100容量部に対してガラス繊維8.7容量部)となるように配合した以外は実施例1と同様にして、50mm×50mm×0.5mmの平板(複合材料)を作製した。
【0039】
(比較例8)
前記シリカビーズの代わりにガラス繊維(日東紡績株式会社製「チョップドストランドCS3J-256LS」、二酸化ケイ素純度:53%、平均繊維長:3mm、平均繊維径:11μm)を、容量比が樹脂混合物:ガラス繊維=92体積%:8体積%(樹脂混合物100容量部に対してガラス繊維8.7容量部)となるように配合した以外は実施例2と同様にして、50mm×50mm×0.5mmの平板(複合材料)を作製した。
【0040】
<引張弾性率>
実施例及び比較例で得られた各平板(50mm×50mm×0.5mm)から10mm×50mm×0.5mmの短冊状試験片を切出し、万能試験機(インストロン社製「5566」)を用いて変位速度2mm/minの条件で引張試験を行い、得られた応力-ひずみ曲線から引張弾性率を求めた。その結果を表1に示す。
【0041】
<透明性>
実施例及び比較例で得られた各平板(50mm×50mm×0.5mm)のヘーズ値を、ヘーズメータ(スガ試験機株式会社製「HGM-3DP」)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0042】
<表面硬度>
実施例及び比較例で得られた各平板(50mm×50mm×0.5mm)の表面硬度を、鉛筆硬度試験器(オールグッド株式会社製「054」、試験用鉛筆:鉛筆硬度試験用三菱uni鉛筆)を用いて測定した。その結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1に示したように、ポリメタクリル酸メチルとポリ乳酸とを所定の割合で含有する樹脂混合物にシリカビーズを配合した樹脂組成物からなる複合材料(実施例1~2)は、シリカビーズによる補強効果によって、優れた引張弾性率及び表面硬度を示すことが確認された。また、実施例1~2で得られた複合材料は、透明性に優れていることも確認された。これは、ポリメタクリル酸メチルとポリ乳酸とを所定の割合で配合することによって、前記樹脂混合物とシリカビーズとの屈折率差が小さくなったためと考えられる。
【0045】
一方、比較例1~3で得られた樹脂材料は、透明性に優れているものの、シリカビーズを含まないため、引張弾性率及び表面硬度に劣ることがわかった。また、比較例4で得られた樹脂材料は、透明性及び表面硬度に優れているものの、シリカビーズを含まないため、引張弾性率に劣ることがわかった。
【0046】
さらに、ポリ乳酸にシリカビーズを配合した樹脂組成物からなる複合材料(比較例5)は、シリカビーズによる補強効果によって、優れた引張弾性率及び表面硬度を示すものの、透明性に劣ることがわかった。これは、比較例5で得られた複合材料においては、樹脂としてポリ乳酸のみが配合されており、ポリ乳酸とシリカビーズとの屈折率差が大きいためと考えられる。また、ポリメタクリル酸メチルとポリ乳酸とを含有し、ポリメタクリル酸メチルが所定の割合より多い樹脂混合物にシリカビーズを配合した樹脂組成物からなる複合材料(比較例6)は、シリカビーズによる補強効果によって、優れた引張弾性率及び表面硬度を示すものの、透明性に劣ることがわかった。これは、比較例6で得られた複合材料においては、ポリメタクリル酸メチルが所定の割合より多く配合されており、前記樹脂混合物とシリカビーズとの屈折率差が大きいためと考えられる。
【0047】
また、ポリメタクリル酸メチルとポリ乳酸とを所定の割合で含有する樹脂混合物にガラス繊維を配合した樹脂組成物からなる複合材料(比較例7~8)は、ガラス繊維による補強効果によって、優れた引張弾性率及び表面硬度を示すものの、透明性に劣ることがわかった。これは、比較例7~8で得られた複合材料においては、充填材としてガラス繊維が配合されており、前記樹脂混合物とガラス繊維との屈折率差が大きいためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明によれば、優れた引張弾性率及び表面硬度を有し、かつ、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ乳酸(PLA)との樹脂混合物の透明性が維持された透明樹脂組成物を得ることが可能となる。したがって、本発明の透明樹脂組成物からなる透明樹脂複合材料は、バンパー、フェンダー、ドアパネル、マッドガード、ピラーカーニッシュ、スポイラー、サイドモール等の外板外装部品、インストルメントパネル、メーターパネル、ドアトリム、コンソールボックス、カップホルダー等の内装部品等の自動車部品等に用いられる複合材料として有用である。また、本発明の透明樹脂組成物からなる透明樹脂複合材料をシートとして使用する場合には、紙又は他のポリマーシートと積層し、多層構造の積層体として使用してもよい。