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特許7566245リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241007BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20241007BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20241007BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F27/24 K
H01F27/24 J
H01F27/255
H02M3/155 Y
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021159002
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049329
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2024-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和宏
(72)【発明者】
【氏名】村下 将也
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-141122(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172403(WO,A1)
【文献】特開2020-53463(JP,A)
【文献】特開2009-33057(JP,A)
【文献】特開2000-294429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/30
H01F 27/32
H01F 27/36
H01F 27/42-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H02M 3/00- 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部を有するコイルと、ミドルコア部を有する磁性コアとを備え、
前記巻回部は、前記ミドルコア部に配置され、
前記ミドルコア部は、前記巻回部の軸方向に分割された第一ミドルコア部と第二ミドルコア部とを有し、
前記第一ミドルコア部の比透磁率が前記第二ミドルコア部の比透磁率よりも小さく、
前記巻回部における前記軸方向の中心位置は、前記ミドルコア部における前記軸方向の中心位置よりも第一ミドルコア部側に位置する、
リアクトル。
【請求項2】
前記第二ミドルコア部の比透磁率と前記第一ミドルコア部の比透磁率との差が50以上である、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記巻回部の前記中心位置と前記ミドルコア部の前記中心位置との距離が、前記巻回部における前記軸方向の長さの1%以上である、請求項1又は請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記距離が1.0mm以上である、請求項3に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記第一ミドルコア部の比透磁率が5以上50以下である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記第二ミドルコア部の比透磁率が50以上500以下である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記第一ミドルコア部は、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成され、
前記第二ミドルコア部は、軟磁性粉末を含む原料粉末の圧粉成形体で構成されている、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記ミドルコア部は、前記第一ミドルコア部と前記第二ミドルコア部との間にギャップ部を有し、
前記ギャップ部は、前記巻回部の内側に位置する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記磁性コアは、第一コアと第二コアとで構成され、
前記第一コアは、前記第一ミドルコア部を有し、
前記第二コアは、前記第二ミドルコア部を有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のリアクトル。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項11】
請求項10に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータ、及び電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車などの車両に搭載されるコンバータの構成部品にリアクトルがある。特許文献1は、コイルと、2つのコア片を組み合わせたコアとを備えるリアクトルを開示する。各コア片は、コイルの内側に配置されるコイル配置部と、コイルの外側に配置される露出部とを備える。コイル配置部と露出部とは一体に成形されている。両コア片は、各コア片のコイル配置部の端面同士が向かい合うように組み合わされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-239120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リアクトルの損失を低減することが求められている。
【0005】
本開示は、損失が小さいリアクトルを提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記リアクトルを備えるコンバータを提供することを別の目的の一つとする。更に、本開示は、上記コンバータを備える電力変換装置を提供することを他の目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、ミドルコア部を有する磁性コアとを備え、
前記巻回部は、前記ミドルコア部に配置され、
前記ミドルコア部は、前記巻回部の軸方向に分割された第一ミドルコア部と第二ミドルコア部とを有し、
前記第一ミドルコア部の比透磁率が前記第二ミドルコア部の比透磁率よりも小さく、
前記巻回部における前記軸方向の中心位置は、前記ミドルコア部における前記軸方向の中心位置よりも第一ミドルコア部側に位置する。
【0007】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備える。
【0008】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示のリアクトルは、損失を小さくすることができる。また、本開示のコンバータ及び電力変換装置は、損失が小さいリアクトルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1に係るリアクトルを示す概略斜視図である。
図2図2は、実施形態1に係るリアクトルを示す概略平面図である。
図3図3は、図1のIII-III断面図である。
図4図4は、実施形態2に係るリアクトルを示す概略平面図である。
図5図5は、実施形態3に係るリアクトルを示す概略平面図である。
図6図6は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
図7図7は、コンバータを備える電力変換装置の一例の概略を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
(1)本開示の実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、ミドルコア部を有する磁性コアとを備え、
前記巻回部は、前記ミドルコア部に配置され、
前記ミドルコア部は、前記巻回部の軸方向に分割された第一ミドルコア部と第二ミドルコア部とを有し、
前記第一ミドルコア部の比透磁率が前記第二ミドルコア部の比透磁率よりも小さく、
前記巻回部における前記軸方向の中心位置は、前記ミドルコア部における前記軸方向の中心位置よりも第一ミドルコア部側に位置する。
【0013】
本開示のリアクトルは、巻回部の上記中心位置がミドルコア部の上記中心位置と同じ位置である場合に比較して、損失を小さくすることができる。その理由は、巻回部の上記中心位置がミドルコア部の上記中心位置よりも第一ミドルコア部側に位置することで、巻回部の内側に配置される第一ミドルコア部の割合が増えるからである。つまり、巻回部から露出する第一ミドルコア部の割合が減る。第一ミドルコア部の比透磁率が第二ミドルコア部の比透磁率よりも小さいため、第一ミドルコア部では第二ミドルコア部に比べて漏れ磁束が発生し易い。本開示のリアクトルでは、巻回部から露出する第一ミドルコア部の割合が減るため、第一ミドルコア部での漏れ磁束が減少する。したがって、本開示のリアクトルは、第一ミドルコア部での漏れ磁束に起因する損失を低減できる。
【0014】
(2)本開示のリアクトルの一形態として、
前記第二ミドルコア部の比透磁率と前記第一ミドルコア部の比透磁率との差が50以上であることでもよい。
【0015】
上記の形態は、損失の低減を図り易い。
【0016】
(3)本開示のリアクトルの一形態として、
前記巻回部の前記中心位置と前記ミドルコア部の前記中心位置との距離が、前記巻回部における前記軸方向の長さの1%以上であることでもよい。
【0017】
上記の形態は、損失の低減を図り易い。
【0018】
(4)上記(3)に記載のリアクトルの一形態として、
前記距離が1.0mm以上であることでもよい。
【0019】
上記の形態は、損失を効果的に低減することができる。
【0020】
(5)本開示のリアクトルの一形態として、
前記第一ミドルコア部の比透磁率が5以上50以下であることでもよい。
【0021】
上記の形態は、所定のインダクタンスを得易い。
【0022】
(6)本開示のリアクトルの一形態として、
前記第二ミドルコア部の比透磁率が50以上500以下であることでもよい。
【0023】
上記の形態は、所定のインダクタンスを得易い。
【0024】
(7)本開示のリアクトルの一形態として、
前記第一ミドルコア部は、樹脂中に軟磁性粉末が分散された複合材料の成形体で構成され、
前記第二ミドルコア部は、軟磁性粉末を含む原料粉末の圧粉成形体で構成されていることでもよい。
【0025】
一般的に、複合材料の成形体の比透磁率は、圧粉成形体の比透磁率に比較して小さい。上記の形態は、第一ミドルコア部が複合材料の成形体で構成され、第二ミドルコア部が圧粉成形体で構成されていることで、第一ミドルコア部の比透磁率が第二ミドルコア部の比透磁率よりも小さくなるように磁性コアを構成できる。
【0026】
(8)本開示のリアクトルの一形態として、
前記ミドルコア部は、前記第一ミドルコア部と前記第二ミドルコア部との間にギャップ部を有し、
前記ギャップ部は、前記巻回部の内側に位置することでもよい。
【0027】
上記の形態は、ギャップ部からの漏れ磁束に起因する損失を低減することができる。その理由は、ギャップ部が巻回部の内側に位置することで、ギャップ部が巻回部の外側に位置する場合に比較して、ギャップ部からの漏れ磁束が減少するからである。
【0028】
(9)本開示のリアクトルの一形態として、
前記磁性コアは、第一コアと第二コアとで構成され、
前記第一コアは、前記第一ミドルコア部を有し、
前記第二コアは、前記第二ミドルコア部を有することでもよい。
【0029】
上記の形態は、磁性コアの組立作業性に優れる。
【0030】
(10)本開示の実施形態に係るコンバータは、
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載のリアクトルを備える。
【0031】
本開示のコンバータは、本開示のリアクトルを備えることから、損失が小さい。
【0032】
(11)本開示の実施形態に係る電力変換装置は、
上記(10)に記載のコンバータを備える。
【0033】
本開示の電力変換装置は、本開示のコンバータを備えることから、損失が小さい。
【0034】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0035】
[実施形態1]
〔リアクトル〕
図1から図3を参照して、実施形態1のリアクトル1aを説明する。リアクトル1aは、コイル2と磁性コア3とを備える。コイル2は巻回部20を有する。磁性コア3は、ミドルコア部31を有する。巻回部20はミドルコア部31に配置される。ミドルコア部31は、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとを有する。
【0036】
実施形態1のリアクトル1aの特徴の一つは、以下の要件(a)、(b)を満たす点にある。
(a)第一ミドルコア部31aの比透磁率が第二ミドルコア部31bの比透磁率よりも小さい。
(b)図2に示すように、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31よりも第一ミドルコア部31a側に位置する。
リアクトル1aは、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31と同じ位置である場合に比較して、損失を小さくすることができる。以下、リアクトル1aの構成を詳細に説明する。
【0037】
<コイル>
コイル2は、図1図2に示すように、1つの巻回部20を有する。巻回部20は、巻線が螺旋状に巻回された部分である。巻線は公知の巻線を利用できる。巻線は、導体線と、導体線を覆う絶縁被覆とを有する被覆平角線である。導体線は銅製の平角線である。絶縁被覆はエナメルからなる。本実施形態では、コイル2は被覆平角線をエッジワイズ巻きすることによって形成されたエッジワイズコイルである。
【0038】
巻回部20の形状は筒状である。巻回部20の形状は多角筒状でもよいし、円筒状でもよい。多角筒状とは、巻回部20の軸方向から見た端面の輪郭形状が、多角形状であるものをいう。多角形状としては、例えば、四角形状、六角形状、八角形状などがある。四角形状には、矩形状が含まれる。矩形状には、正方形状が含まれる。円筒状とは、上記端面の輪郭形状が、円形状であるものをいう。円形状には、真円形状のみならず、楕円形状も含まれる。本実施形態では、巻回部20の形状が矩形筒状である。
【0039】
コイル2は端末部21を有する。端末部21は、巻回部20の両端部から巻線が引き出された部分である。端末部21は第一端末部21aと第二端末部21bとを有する。第一端末部21aは、巻回部20の一方の端部から巻回部20の外周側に引き出されている。第二端末部21bは、巻回部20の他方の端部から巻回部20の外周側に引き出されている。第一端末部21a及び第二端末部21bでは、絶縁被覆が剥がされて導体線が露出している。第一端末部21a及び第二端末部21bには、例えば、図示しないバスバが接続される。コイル2は、バスバを介して図示しない外部機器と接続される。外部機器は、コイル2に電力を供給する電源などである。
【0040】
図2に示す巻回部20の長さL20は、特に限定されないが、例えば10mm以上60mm以下、更に20mm以上50mm以下である。ここでいう長さは、巻回部20の軸方向に沿った長さをいう。巻回部20の長さL20は、巻線の厚さやターン数によって変わる。ターン数は、例えば10ターン以上60ターン以下、更に20ターン以上50ターン以下である。
【0041】
<磁性コア>
磁性コア3は、図1図2に示すように、ミドルコア部31と、サイドコア部33と、エンドコア部35とを有する。磁性コア3は、平面視において全体としてθ状に構成される。本実施形態では、磁性コア3は、第一コア3aと第二コア3bとを備える。磁性コア3は、第一コア3aと第二コア3bとが組み合わされて構成される。第一コア3aと第二コア3bとは、巻回部20の軸方向に組み合わされる。図2では、ミドルコア部31とエンドコア部35との境界、及びサイドコア部33とエンドコア部35との境界を二点鎖線で示している。第一コア3aと第二コア3bについては後述する。
【0042】
以下の説明では、巻回部20の軸方向に沿った方向をX方向とする。ミドルコア部31とサイドコア部33とが並列される方向をY方向とする。Y方向はX方向に直交する。X方向とY方向の双方に直交する方向をZ方向とする。Z方向において、コイル2の端末部21が位置する側を上側、その反対側を下側とする。上記した平面視とは、リアクトル1aを上側、即ちZ方向から見た状態のことをいう。
【0043】
磁性コア3の形状は、図2に示すようにZ方向から見て、θ状である。コイル2を通電すると、磁性コア3にはθ状の閉磁路が形成される。この閉磁路は、コイル2によって発生した磁束が、ミドルコア部31から、一方のエンドコア部35、各サイドコア部33、他方のエンドコア部35を通り、ミドルコア部31に戻る閉磁路である。
【0044】
(ミドルコア部)
ミドルコア部31は、巻回部20の内側に配置される部分を有する。ミドルコア部31は、磁性コア3のうち、第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとの間に挟まれる部分である。第一エンドコア部35a及び第二エンドコア部35bについては後述する。ミドルコア部31の数は1つである。ミドルコア部31はX方向に沿って延びている。ミドルコア部31の軸方向は巻回部20の軸方向と一致する。本実施形態では、ミドルコア部31の両端部が巻回部20の両端面から突出している。この突出する部分もミドルコア部31の一部である。
【0045】
ミドルコア部31の形状は、巻回部20の内側形状に対応した形状であれば特に限定されない。本実施形態では、ミドルコア部31の形状は略直方体状である。X方向から見て、ミドルコア部31の外周面の角部は、巻回部20の内周面に沿うように丸められていてもよい。
【0046】
ミドルコア部31は、X方向に分割されており、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとを有する。第一ミドルコア部31aの端面と第二ミドルコア部31bの端面とは、X方向に向かい合う。第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとの境界は巻回部20の内側に位置する。第一ミドルコア部31aは、第一コア3aが配置されるX方向の一方側に位置する。X方向の一方側は、図2では紙面左側である。第二ミドルコア部31bは、第二コア3bが配置されるX方向の他方側に位置する。X方向の他方側は、図2では紙面右側である。
【0047】
図2に示すミドルコア部31の長さL31は巻回部20の長さL20よりも長い。ミドルコア部31の長さL31はX方向に沿った長さである。ミドルコア部31の長さL31は、第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとの互いに向かい合う面間の距離と同等である。ミドルコア部31の長さL31は、例えば、巻回部20の長さL20の105%以上120%以下である。長さL31は、長さL20の105%以上115%以下、更に105%以上110%以下でもよい。また、長さL31と長さL20との差は、例えば1.0mm以上6.0mm以下である。つまり、ミドルコア部31の長さL31は、巻回部20の長さL20よりも1.0mm以上6.0mm以下長い。長さL31と長さL20との差は、1.5mm以上5.0mm以下、更に2.0mm以上4.0mm以下でもよい。
【0048】
第一ミドルコア部31a及び第二ミドルコア部31bの各々の長さは、適宜設定すればよい。ここでいう長さは、X方向に沿った長さをいう。本実施形態では、第一ミドルコア部31aの長さL1aと第二ミドルコア部31bの長さL1bとが異なる。長さL1aがL1bよりも長い。本実施形態とは異なり、長さL1aが長さL1bよりも短くてもよいし、長さL1aと長さL1bとが同じであってもよい。
【0049】
本実施形態では、ミドルコア部31がギャップ部3gを有する。ギャップ部3gは、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとの間に設けられている。ギャップ部3gは、巻回部20の内側に位置する。ギャップ部3gが巻回部20の内側に位置することで、ギャップ部3gが巻回部20の外側に位置する場合に比較して、ギャップ部3gからの漏れ磁束が減少する。そのため、ギャップ部3gからの漏れ磁束に起因する損失を低減することができる。ギャップ部3gのX方向に沿った長さLgは、所定のインダクタンスが得られるように適宜設定すればよい。ギャップ部3gの長さLgは、例えば0.1mm以上2mm以下、0.3mm以上1.5mm以下、更に0.5mm以上1mm以下である。ギャップ部3gは、エアギャップでもよい。ギャップ部3gには、樹脂やセラミックスなどの非磁性体が配置されていてもよい。ミドルコア部31がギャップ部3gを有する場合、ミドルコア部31の長さL31はギャップ部3gの長さLgを含む。ミドルコア部31の長さL31は、第一ミドルコア部31aの長さL1aと、第二ミドルコア部31bの長さL1bと、ギャップ部3gの長さLgとを合計した長さである。本実施形態とは異なり、ギャップ部3gはなくてもよい。この場合、第一ミドルコア部31aの端面と第二ミドルコア部31bの端面とは互いに接触しており、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとの間に実質的に隙間がない。
【0050】
(エンドコア部)
エンドコア部35は、巻回部20の外側に配置される部分である。エンドコア部35は第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとを有する。エンドコア部35の数は2つである。2つのエンドコア部35は、X方向に間隔をあけて配置されている。第一エンドコア部35aはX方向の一方側に位置する。第一エンドコア部35aは、巻回部20の一方の端面と向かい合う。第一エンドコア部35aには、ミドルコア部31におけるX方向の一方側の端部、具体的には第一ミドルコア部31aの端部が接続される。第二エンドコア部35bはX方向の他方側に位置する。第二エンドコア部35bは、巻回部20の他方の端面と向かい合う。第二エンドコア部35bには、ミドルコア部31におけるX方向の他方側の端部、具体的には第二ミドルコア部31bの端部が接続される。
【0051】
第一エンドコア部35a及び第二エンドコア部35bの各々の形状は、所定の磁路が形成される形状であれば特に限定されない。本実施形態では、第一エンドコア部35a及び第二エンドコア部35bの各々の形状は略直方体状である。
【0052】
(サイドコア部)
サイドコア部33は、巻回部20の外側に配置される部分である。サイドコア部33の数は2つである。サイドコア部33の各々はX方向に延びている。サイドコア部33の各々の軸方向は、ミドルコア部31の軸方向と平行である。2つのサイドコア部33は、Y方向に間隔をあけて配置されている。2つのサイドコア部33は、ミドルコア部31を挟んで、並べられている。つまり、2つのサイドコア部33の間に、ミドルコア部31が配置されている。一方のサイドコア部33は、Y方向の一方側に位置する。一方のサイドコア部33は、巻回部20の外周面のうち、Y方向の一方側の側面と向かい合う。Y方向の一方側は、図2では紙面上側である。他方のサイドコア部33は、Y方向の他方側に位置する。他方のサイドコア部33は、巻回部20の外周面のうち、Y方向の他方側の側面と向かい合う。Y方向の他方側は、図2では紙面下側である。サイドコア部33におけるX方向の一方側の端部は、第一エンドコア部35aに接続される。サイドコア部33におけるX方向の他方側の端部は、第二エンドコア部35bに接続される。サイドコア部33の各々の断面積は、同じであってもよいし、異なってもよい。本実施形態では、2つのサイドコア部33の断面積は同じである。また、本実施形態では、2つのサイドコア部33の合計の断面積は、ミドルコア部31の断面積と同等である。ここでいう断面積は、X方向に直交する断面での面積をいう。
【0053】
サイドコア部33の各々は、第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとをつなぐ長さを有していればよい。サイドコア部33の形状は特に限定されない。本実施形態では、サイドコア部33の各々の形状は略直方体状である。
【0054】
〈第一コア・第二コア〉
第一コア3aは、第一ミドルコア部31aを有する。第二コア3bは、第二ミドルコア部31bを有する。第一コア3a及び第二コア3bの各々の形状は、種々の組み合わせから選択できる。本実施形態では、図1図2に示すように、磁性コア3は、E字状の第一コア3aと、T字状の第二コア3bとを組み合わせたE-T型である。
【0055】
〈第一コア〉
本実施形態では、第一コア3aは、第一ミドルコア部31aと、第一エンドコア部35aと、2つのサイドコア部33とを有する。第一ミドルコア部31aと、第一エンドコア部35aと、2つのサイドコア部33とは一体に成形されている。第一コア3aは一体の成形体であるので、第一コア3aを構成する各コア部は同じ材質である。即ち、第一コア3aを構成する各コア部の磁気特性及び機械的特性は実質的に同じである。第一ミドルコア部31aは、第一エンドコア部35aにおけるY方向の中間部から第二ミドルコア部31bに向かってX方向に延びている。サイドコア部33の各々は、第一エンドコア部35aのY方向の両端部から第二エンドコア部35bに向かってX方向に延びている。第一コア3aの形状は、Z方向から見て、E字状である。
【0056】
〈第二コア〉
本実施形態では、第二コア3bは、第二ミドルコア部31bと、第二エンドコア部35bとを有する。第二ミドルコア部31bと、第二エンドコア部35bとは一体に成形されている。第二コア3bは一体の成形体であるので、第二コア3bを構成する各コア部は同じ材質である。即ち、第二コア3bを構成する各コア部の磁気特性及び機械的特性は実質的に同じである。第二ミドルコア部31bは、第二エンドコア部35bにおけるY方向の中間部から第一ミドルコア部31aに向かってX方向に延びている。第二コア3bの形状は、Z方向から見て、T字状である。
【0057】
本実施形態では、磁性コア3は、第一コア3aと第二コア3bといった2つのピースで構成されている。つまり、磁性コア3の分割数が2である。磁性コア3の分割数や磁性コア3を分割する位置は特に限定されない。磁性コア3は、3つ以上のピースで構成されていてもよい。例えば、第一エンドコア部35a、第二エンドコア部35b、第一ミドルコア部31a、第二ミドルコア部31b、及び2つのサイドコア部33のそれぞれを個別に構成し、これらを組み合わせて磁性コア3を構成してもよい。本実施形態のように、磁性コア3が第一コア3aと第二コア3bとで構成されている場合、組み合わせるコア片の数が2つしかないので、磁性コア3の組み立てが容易である。
【0058】
(第一ミドルコア部の比透磁率と第二ミドルコア部の比透磁率との関係)
第一コア3aの比透磁率が第二コア3bの比透磁率よりも小さい。つまり、ミドルコア部31において、第一ミドルコア部31aの比透磁率が第二ミドルコア部31bの比透磁率よりも小さい。第二ミドルコア部31bの比透磁率と第一ミドルコア部31aの比透磁率との差は、例えば50以上であることが好ましい。上記比透磁率の差の上限は、実用上、例えば500程度である。上記比透磁率の差は、50以上500以下、更に100以上400以下でもよい。
【0059】
第一コア3a及び第二コア3bの各々の比透磁率は、上記関係を満たした上で、所定のインダクタンスが得られるように適宜設定すればよい。第一ミドルコア部31aの比透磁率は、例えば5以上50以下である。第二ミドルコア部31bの比透磁率は、例えば50以上500以下である。第一コア3aの比透磁率が5以上50以下の範囲内で、かつ、第二コア3bの比透磁率が50以上500以下の範囲内であれば、所定のインダクタンスを得易い。第一ミドルコア部31aの比透磁率は、10以上45以下、更に15以上40以下でもよい。第二ミドルコア部31bの比透磁率は、100以上500以下が好ましい。第二ミドルコア部31bは、100以上450以下、更に150以上400以下でもよい。
【0060】
比透磁率は、次のようにして求めることができる。第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bのそれぞれからリング状の測定試料を切り出す。各々の測定試料に、一次側:300巻き、二次側:20巻きの巻線を施す。B-H初磁化曲線をH=0(Oe)以上100(Oe)以下の範囲で測定し、このB-H初磁化曲線のB/Hの最大値を求める。この最大値を比透磁率とする。ここでいう磁化曲線とは、いわゆる直流磁化曲線のことである。
【0061】
(ミドルコア部の材質)
第一ミドルコア部31a及び第二ミドルコア部31bは、軟磁性材料の成形体で構成されている。成形体としては、例えば、圧粉成形体、複合材料の成形体などが挙げられる。第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとは、互いに異なる材質の成形体で構成されている。互いに異なる材質とは、第一ミドルコア部31a及び第二ミドルコア部31bを構成する各々の成形体において、個々の構成要素の材質が異なる場合は勿論、個々の構成要素の材質が同じであっても、構成要素の含有量が異なる場合も含む。例えば、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとが圧粉成形体で構成されていても、圧粉成形体を構成する軟磁性粉末の材質及び含有量の少なくとも1つが異なれば、互いに異なる材質である。また、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとが複合材料の成形体で構成されていても、複合材料を構成する軟磁性粉末の材質及び含有量の少なくとも1つが異なれば、互いに異なる材質である。
【0062】
圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を圧縮成形してなる。圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して軟磁性粉末の含有量が多い。そのため、圧粉成形体は、複合材料の成形体に比較して磁気特性が高い。磁気特性としては、比透磁率や飽和磁束密度が挙げられる。圧粉成形体は、バインダ樹脂や成形助剤などを含有してもよい。圧粉成形体における軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体を100体積%とするとき、例えば85体積%以上99.99体積%以下である。
【0063】
複合材料の成形体は、樹脂中に軟磁性粉末が分散されてなる。複合材料の成形体は、未固化の樹脂中に軟磁性粉末を分散させた流動性の素材を金型に充填し、樹脂を固化させることで得られる。複合材料の成形体は、軟磁性粉末の含有量を容易に調整できる。そのため、複合材料の成形体は、磁気特性を調整し易い。複合材料の成形体における軟磁性粉末の含有量は、複合材料の成形体を100体積%とするとき、例えば20体積%以上80体積%以下である。
【0064】
軟磁性粉末を構成する粒子は、軟磁性金属の粒子や、軟磁性金属の粒子の外周に絶縁被覆を備える被覆粒子、軟磁性非金属の粒子などが挙げられる。軟磁性金属は、純鉄や鉄基合金などが挙げられる。鉄基合金としては、例えば、Fe(鉄)-Si(シリコン)合金、Fe-Ni(ニッケル)合金などが挙げられる。絶縁被覆は、リン酸塩などが挙げられる。軟磁性非金属は、フェライトなどが挙げられる。
【0065】
複合材料の成形体の樹脂は、熱硬化性樹脂でもよいし、熱可塑性樹脂でもよい。熱硬化性樹脂は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、液晶ポリマー、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂などが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン9Tなどが挙げられる。その他、複合材料の成形体の樹脂には、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴムなども利用できる。
【0066】
複合材料の成形体は、軟磁性粉末及び樹脂に加えて、フィラーを含有していてもよい。フィラーは、例えば、アルミナ、シリカなどのセラミックスフィラーが挙げられる。複合材料の成形体がフィラーを含有することで、放熱性を高めることができる。フィラーの含有量は、複合材料の成形体を100体積%とするとき、例えば0.2体積%以上20体積%以下、更に0.3体積%以上15体積%以下、0.5体積%以上10体積%以下が挙げられる。
【0067】
圧粉成形体や複合材料の成形体における軟磁性粉末の含有量は、成形体の断面における軟磁性粉末の面積割合と等価とみなす。軟磁性粉末の含有量は、次のようにして求める。成形体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して観察画像を取得する。SEMの倍率は、例えば200倍以上500倍以下とする。観察画像の取得数は、10個以上とする。観察画像の総面積は0.1cm以上とする。一断面につき一つの観察画像を取得してもよいし、一断面につき複数の観察画像を取得してもよい。取得した各観察画像を画像処理して軟磁性粉末の粒子の輪郭を抽出する。画像処理としては、例えば二値化処理が挙げられる。各観察画像において軟磁性粉末の粒子の全面積を算出し、各観察画像に占める軟磁性粉末の粒子の面積割合を求める。全ての観察画像における面積割合の平均値を軟磁性粉末の含有量とみなす。
【0068】
本実施形態では、第一ミドルコア部31aを有する第一コア3aが複合材料の成形体である。第二ミドルコア部31bを有する第二コア3bが圧粉成形体である。第一コア3aが複合材料の成形体で構成され、第二コア3bが圧粉成形体で構成されていることで、磁性コア3全体の磁気特性を調整できる。また、第一ミドルコア部31aが複合材料の成形体で構成され、第二ミドルコア部31bが圧粉成形体で構成されていると、第一ミドルコア部31a及び第二ミドルコア部31bの各々の比透磁率が上記関係を満たし易い。本実施形態では、第一ミドルコア部31aの比透磁率が20以上30以下程度である。第二ミドルコア部31bの比透磁率が150以上250以下程度である。第二ミドルコア部31bの比透磁率と第一ミドルコア部31aの比透磁率との差が120以上230以下程度である。
【0069】
(ミドルコア部における巻回部の位置)
図2に示すように、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31よりも第一ミドルコア部31a側に位置する。つまり、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31よりも第一コア3aに寄っている。ここで、巻回部20の中心位置C20は、巻回部20におけるX方向の中心であり、巻回部20の長さL20を二等分する位置である。ミドルコア部31の中心位置C31は、ミドルコア部31におけるX方向の中心であり、ミドルコア部31の長さL31を二等分する位置である。また、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31よりも第一ミドルコア部31a側に位置するとは、巻回部20の中心位置C20とミドルコア部31の中心位置C31との距離Dが誤差範囲よりも大きいことをいう。距離Dは、中心位置C31から中心位置C20までのX方向の距離のことである。距離Dが巻回部20の長さL20の1%未満である範囲は誤差範囲とみなす。距離Dは、例えば、巻回部20の長さL20の1%以上であることが好ましい。距離Dの上限は、ミドルコア部31の長さL31と巻回部20の長さL20との差の半分である。距離Dは、巻回部20の長さL20の1%以上15%以下、更に1.5%以上10%以下でもよい。距離Dの具体的な数値は、例えば0.5mm以上3.0mm以下、更に1.0mm以上2.0mm以下である。距離Dは、特に1.0mm以上であることが好ましい。
【0070】
<その他>
リアクトル1aは、その他の構成として、樹脂モールド部材4、及び保持部材5を備える。図1では、樹脂モールド部材4は二点鎖線で示している。図2では、樹脂モールド部材4は省略している。図1図2では、保持部材5は省略している。図3は、磁性コア3のZ方向の中間位置において、Z方向に直交する平面で切断したリアクトル1aの断面を示している。
【0071】
(樹脂モールド部材)
樹脂モールド部材4は、磁性コア3の外周面の少なくとも一部を覆う。樹脂モールド部材4は、組み合わされた第一コア3aと第二コア3bとを一体化する。また、樹脂モールド部材4は、コイル2と磁性コア3とを一体化する。本実施形態では、樹脂モールド部材4が、図3に示すように、巻回部20の内周面とミドルコア部31との間にも充填されている。そのため、樹脂モールド部材4によって、磁性コア3に対してコイル2が位置決めされた状態で保持される。また、樹脂モールド部材4によって、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁を確保できる。樹脂モールド部材4を構成する樹脂としては、例えば、上述した複合材料の成形体の樹脂と同様の樹脂を用いることができる。樹脂モールド部材4は、巻回部20を外周面を覆っていてもよい。樹脂モールド部材4は、巻回部20の上側及び下側の少なくとも一方の面が露出するように形成されていてもよい。
【0072】
本実施形態では、樹脂モールド部材4の樹脂が、巻回部20の内周面とミドルコア部31との間を通って、ギャップ部3gにも充填されている。ギャップ部3gは、樹脂モールド部材4の樹脂によって構成されている。
【0073】
(保持部材)
保持部材5は、コイル2と磁性コア3との間に配置される。保持部材5は、コイル2と磁性コア3との相対的な位置を決める。また、保持部材5によって、コイル2と磁性コア3との間の電気的絶縁を確保できる。本実施形態では、保持部材5は、第一保持部材5aと第二保持部材5bとを有する。第一保持部材5aは、巻回部20の一方の端面と向かい合う環状の部材である。第一保持部材5aは、巻回部20の一方の端面と、第一エンドコア部35aとの間に配置される。第二保持部材5bは、巻回部20の他方の端面と向かい合う環状の部材である。第二保持部材5bは、巻回部20の他方の端面と、第二エンドコア部35bとの間に配置される。保持部材5を構成する樹脂としては、例えば、上述した複合材料の成形体の樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0074】
第一保持部材5aの厚さと第二保持部材5bの厚さは、同じであってもよいし、異なってもよい。例えば、第二保持部材5bの厚さが第一保持部材5aの厚さよりも厚くてもよい。第一保持部材5aの厚さは、巻回部20の一方の端面と向かい合う面と、第一エンドコア部35aと向かい合うの面との距離である。第二保持部材5bの厚さは、巻回部20の他方の端面と向かい合う面と、第二エンドコア部35bと向かい合う面との距離である。上述した樹脂モールド部材4を備えない場合は、第二保持部材5bが第一保持部材5aよりも厚くなるように構成するとよい。第二保持部材5bが第一保持部材5aよりも厚くなるようにすることで、上述した樹脂モールド部材4がなくても、X方向において、巻回部20をミドルコア部31に対して位置決めできる。
【0075】
〔実施形態1の作用効果〕
実施形態1のリアクトル1aは、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31と同じ位置である基準リアクトルに比較して、損失を小さくすることができる。その理由は、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31よりも第一ミドルコア部31a側に位置することで、巻回部20の内側に配置される第一ミドルコア部31aの割合が増えるからである。巻回部20から露出する第一ミドルコア部31aの割合が減るため、比透磁率が低い第一ミドルコア部31aでの漏れ磁束が減少する。したがって、リアクトル1aは第一ミドルコア部31aでの漏れ磁束に起因する損失を低減できる。
【0076】
リアクトル1aは、巻回部20の位置を第一コア3a側にずらすことのみによって、基準リアクトルよりも損失が低下する。損失が低下するため、リアクトル1aは、発熱による温度上昇を抑制できる。
【0077】
第二ミドルコア部31bの比透磁率と第一ミドルコア部31aの比透磁率との差が50以上であると、損失の低減を図り易い。また、巻回部20の中心位置C20とミドルコア部31の中心位置C31との距離Dが、巻回部20の長さL20の1%以上である場合、損失の低減を図り易い。特に、距離Dが1.0mm以上であると、損失を効果的に低減することができる。
【0078】
[実施形態2]
図4を参照して、実施形態2のリアクトル1bを説明する。実施形態2のリアクトル1bは、磁性コア3がE-E型である点が、実施形態1のリアクトル1aと相違する。以下の説明は、実施形態1との相違点を中心に行う。実施形態1と同様の構成は、同じ符号を付して説明を省略する。図4では、実施形態1で説明した樹脂モールド部材4及び保持部材5は省略している。
【0079】
<磁性コア>
磁性コア3は、実施形態1と同様に、第一コア3aと第二コア3bとがX方向に組み合わされることで構成される。磁性コア3の形状は、図4に示すようにZ方向から見て、θ状である。図4中、二点鎖線は、ミドルコア部31とエンドコア部35との境界、及びサイドコア部33とエンドコア部35との境界を示している。
【0080】
実施形態2では、2つのサイドコア部33の各々がX方向に分割されている。サイドコア部33は、第一サイドコア部33aと第二サイドコア部33bとを有する。第一サイドコア部33aはX方向の一方側に位置する。第一サイドコア部33aの端部は第一エンドコア部35aに接続される。第二サイドコア部33bはX方向の他方側に位置する。第二サイドコア部33bの端部は第二エンドコア部35bに接続される。
【0081】
第一サイドコア部33aの端面と第二サイドコア部33bの端面とは互いに接触している。第一サイドコア部33a及び第二サイドコア部33bの各々の長さは、適宜設定すればよい。ここでいう長さは、X方向に沿った長さをいう。図4では、第一サイドコア部33aが第二サイドコア部33bよりも長い。第一サイドコア部33aは第二サイドコア部33bよりも短くてもよい。第一サイドコア部33aの長さと第二サイドコア部33bの長さとが同じであってもよい。
【0082】
第一コア3aは、第一ミドルコア部31aと、第一エンドコア部35aと、2つの第一サイドコア部33aとを有する。第一ミドルコア部31aと、第一エンドコア部35aと、2つの第一サイドコア部33aとは一体に成形されている。第一サイドコア部33aの各々は、第一エンドコア部35aのY方向の両端部から第二サイドコア部33bに向かってX方向に延びている。第一コア3aの形状は、Z方向から見て、E字状である。
【0083】
第二コア3bは、第二ミドルコア部31bと、第二エンドコア部35bと、2つの第二サイドコア部33bとを有する。第二ミドルコア部31bと、第二エンドコア部35bと、2つの第二サイドコア部33bとは一体に成形されている。第二サイドコア部33bの各々は、第二エンドコア部35bのY方向の両端部から第一サイドコア部33aに向かってX方向に延びている。第二コア3bの形状は、Z方向から見て、E字状である。
【0084】
第一コア3aの比透磁率と第二コア3bの比透磁率との関係は、実施形態1と同様である。つまり、第一ミドルコア部31aの比透磁率が第二ミドルコア部31bの比透磁率よりも小さい。また、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31よりも第一ミドルコア部31a側に位置する点も、実施形態1と同様である。
【0085】
〔実施形態2の作用効果〕
実施形態2のリアクトル1bは、実施形態1のリアクトル1aと同様に、損失を小さくすることができる。
【0086】
[実施形態3]
図5を参照して、実施形態3のリアクトル1cを説明する。実施形態3のリアクトル1cは、コイル2が2つの巻回部20を有する点と、磁性コア3がU―U型である点が、実施形態1のリアクトル1aと相違する。以下の説明は、実施形態1との相違点を中心に行う。実施形態1と同様の構成は、同じ符号を付して説明を省略する。図5では、実施形態1で説明した樹脂モールド部材4及び保持部材5は省略している。
【0087】
<コイル>
コイル2は、2つの巻回部20を有する。2つの巻回部20は、互いの軸方向が平行するように並列に配置されている。巻回部20の各々の形状は矩形筒状である。巻回部20の各々の長さL20は同じである。巻回部20の各々は同じターン数である。
【0088】
図5に示す2つの巻回部20は、別々の巻線線を螺旋状に巻回して構成されている。図5では、巻回部20の各々の他方の端部から引き出された第二端末部21b同士が連結部材23を介して電気的に接続されている。連結部材23は、例えば、巻線と同一部材で構成されている。巻回部20の各々の一方の端部から引き出された第一端末部21aには、図示しないバスバが接続される。2つの巻回部20は、1本の連続する巻線で構成されていてもよい。この場合、一方の巻回部20を一方の端部側から形成した後、巻回部20の他方の端部側で巻線をU字状に屈曲させて折り返し、他方の巻回部20を他方の端部側から形成することが挙げられる。
【0089】
<磁性コア>
磁性コア3は、実施形態1と同様に、第一コア3aと第二コア3bとがX方向に組み合わされることで構成される。磁性コア3の形状は、図5に示すようにZ方向から見て、O状である。実施形態3では、磁性コア3は、2つのミドルコア部31と、2つのエンドコア部35とを有する。2つのミドルコア部31が並列される方向をY方向とする。図5中、二点鎖線は、ミドルコア部31とエンドコア部35との境界を示している。
【0090】
2つのミドルコア部31の各々はX方向に延びている。2つのミドルコア部31は、互いの軸方向が平行するように並列に配置されている。ミドルコア部31の各々は、2つの巻回部20の内側にそれぞれ配置される部分を有する。ミドルコア部31の各々の形状は略直方体状である。ミドルコア部31の各々は、X方向に分割されており、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとを有する。第一ミドルコア部31aの各々はX方向の一方側に位置する。第二ミドルコア部31bの各々はX方向の他方側に位置する。
【0091】
2つのミドルコア部31の長さL31は同じである。ミドルコア部31の長さL31は巻回部20の長さL20よりも長い。図5では、第一ミドルコア部31aの各々の長さL1aが第二ミドルコア部31bの各々の長さL1bよりも長い。また、ミドルコア部31の各々はギャップ部3gを有する。ギャップ部3gは、第一ミドルコア部31aと第二ミドルコア部31bとの間に設けられている。
【0092】
エンドコア部35は第一エンドコア部35aと第二エンドコア部35bとを有する。第一エンドコア部35aは、X方向の一方側に位置し、巻回部20の各々の一方の端面と向かい合う。第一エンドコア部35aには、第一ミドルコア部31aの各々の端部が接続される。つまり、第一エンドコア部35aは、第一ミドルコア部31aの端部同士をつなぐ。第二エンドコア部35bは、X方向の他方側に位置し、巻回部20の各々の他方の端面と向かい合う。第二エンドコア部35bには、第二ミドルコア部31bの各々の端部が接続される。つまり、第二エンドコア部35bは、第二ミドルコア部31bの端部同士をつなぐ。第一エンドコア部35a及び第二エンドコア部35bの各々の形状は略直方体状である。
【0093】
第一コア3aは、2つのミドルコア部31の各々の第一ミドルコア部31aと、第一エンドコア部35aとを有する。2つの第一ミドルコア部31aと、第一エンドコア部35aとは一体に成形されている。第一ミドルコア部31aの各々は、第一エンドコア部35aのY方向の両端部から第二ミドルコア部31bの各々に向かってX方向に延びている。第一コア3aの形状は、Z方向から見て、U字状である。
【0094】
第二コア3bは、2つのミドルコア部31の各々の第二ミドルコア部31bと、第二エンドコア部35bとを有する。2つの第二ミドルコア部31bと、第二エンドコア部35bとは一体に成形されている。第二ミドルコア部31bの各々は、第二エンドコア部35bのY方向の両端部から第一ミドルコア部31aの各々に向かってX方向に延びている。第二コア3bの形状は、Z方向から見て、U字状である。
【0095】
第一コア3aの比透磁率と第二コア3bの比透磁率との関係は、実施形態1と同様である。つまり、第一ミドルコア部31aの比透磁率が第二ミドルコア部31bの比透磁率よりも小さい。また、巻回部20の各々の中心位置C20がミドルコア部31の各々の中心位置C31よりも第一ミドルコア部31a側に位置する点も、実施形態1と同様である。
【0096】
〔実施形態3の作用効果〕
実施形態3のリアクトル1cは、実施形態1のリアクトル1aと同様に、損失を小さくすることができる。
【0097】
[実施形態4]
〔コンバータ・電力変換装置〕
実施形態1から実施形態3のリアクトルは、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度であることが挙げられる。実施形態1から実施形態3のリアクトル1a、1b、1cは、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに搭載されるコンバータの構成部品や、このコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用できる。
【0098】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、図6に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。図6では、車両1200の充電箇所としてインレットを示すが、プラグを備える形態とすることができる。
【0099】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0100】
コンバータ1110は、図7に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態1から実施形態3のいずれかのリアクトルを備える。損失が小さいリアクトルを備えることで、電力変換装置1100及びコンバータ1110の損失を低減できる。
【0101】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態1から実施形態3のいずれかのリアクトルと同様の構成を備え、適宜、大きさ又は形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータ又は降圧のみを行うコンバータに、実施形態1から実施形態3のいずれかのリアクトルを利用することもできる。
【0102】
<試験例1>
実施形態1のリアクトル1aと同様の構成のリアクトルについて、損失を評価した。
【0103】
試験例1では、試料No.1-1と試料No.10について、損失をCAE(Computer Aided Engineering)により解析した。試料No.1-1は、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31よりも第一ミドルコア部31a側に位置する。試料No.10は、試料No.1-1と異なり、巻回部20の中心位置C20がミドルコア部31の中心位置C31と同じ位置である。試験例1で用いたリアクトルの試料の構成は以下のように設定した。
【0104】
(コイル)
巻回部20の長さL20:38mm
ターン数:30ターン
【0105】
(磁性コア)
ミドルコア部31の長さL31:43mm
第一ミドルコア部31aの長さL1a:32mm
第二ミドルコア部31bの長さL1b:10mm
ギャップ部3gの長さLg:1mm
第一コア3aの比透磁率:25
第二コア3bの比透磁率:200
第一コア3aの材質:複合材料の成形体
第二コア3bの材質:圧粉成形体
【0106】
試料No.1-1では、巻回部20の中心位置C20とミドルコア部31の中心位置C31との距離Dを1.0mmに設定した。つまり、試料No.1-1での距離Dは、巻回部20の長さL20の2.6%である。試料No.10では、距離Dがゼロである。
【0107】
各試料のリアクトルを駆動したときの損失を求めた。損失の解析には、市販の電磁界解析ソフトウェアである株式会社JSOL製のJMAG-Designer19.0を使用した。直流電流0A、入力電圧300V、出力電圧600V、周波数20kHzの条件で駆動したときの総損失を解析した。総損失には、磁性コアの鉄損、及びコイルでの損失などが含まれる。各試料の損失を表1に示す。表1には、試料No.1-1の損失を、試料No.10の損失を100としたパーセントで示す。また、表1に、試料No.10の損失を基準として、試料No.1-1の損失の低下率を示す。低下率は、試料No.1-1の損失から試料No.10の損失を引いた値を試料No.10の損失で割った割合である。
【0108】
【表1】
【0109】
表1に示すように、試料No.1-1のリアクトルは、試料No.10のリアクトルに比較して、損失が低下している。
【符号の説明】
【0110】
1a、1b、1c リアクトル
2 コイル
20 巻回部
21 端末部、21a 第一端末部、21b 第二端末部
23 連結部材
3 磁性コア
3a 第一コア、3b 第二コア
31 ミドルコア部
31a 第一ミドルコア部、31b 第二ミドルコア部
33 サイドコア部
33a 第一サイドコア部、33b 第二サイドコア部
35 エンドコア部
35a 第一エンドコア部、35b 第二エンドコア部
3g ギャップ部
4 樹脂モールド部材
5 保持部材
5a 第一保持部材、5b 第二保持部材
C20、C31 中心位置
D 距離
L20、L31、L1a、L1b、Lg 長さ
1100 電力変換装置
1110 コンバータ、1111 スイッチング素子、1112 駆動回路
1115 リアクトル、1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ、1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ、1220 モータ、1230 サブバッテリ
1240 補機類、1250 車輪
1300 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7