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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】ゲートウェイ装置および通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04M 3/00 20240101AFI20241007BHJP
【FI】
H04M3/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020155130
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049094
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2023-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】513267615
【氏名又は名称】ブライシス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504093744
【氏名又は名称】株式会社リンク
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】徳永 秀一
(72)【発明者】
【氏名】坂元 剛
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徹
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-115005(JP,A)
【文献】特開2015-103837(JP,A)
【文献】特開2007-325004(JP,A)
【文献】特開2008-258838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M3/00
H04M3/16-3/20
H04M3/38-3/58
H04M7/00-7/16
H04M11/00-11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置であって、
前記ユーザの拠点に設置され、通信キャリアの網に接続された通信機器に対して前記通信キャリアから提供された前記通信機器のIPアドレスと、前記通信キャリアのSIP(Session Initiation Protocol)サーバのIPアドレスとを取得する取得部と、
前記通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、前記SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを前記通信機器へ渡し、前記登録メッセージを前記通信機器から前記通信キャリアの網へ送信させる登録部と、
前記SIPサーバから前記通信機器へ送信され、前記通信機器から転送されたSIPメッセージを受け付ける受付部と、
前記通信機器から転送されたSIPメッセージを、前記ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機であって、前記ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御する交換機へ転送する転送部と、
を備えることを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項2】
前記転送部は、前記交換機から出力された、前記SIPサーバへ送信すべきSIPメッセージに含まれる送信元のIPアドレスを、前記通信キャリアから提供された前記通信機器のIPアドレスに変換して、変換後のSIPメッセージを前記通信機器へ渡し、前記変換後のSIPメッセージを前記通信機器から前記通信キャリアの網へ送信させることを特徴とする請求項1に記載のゲートウェイ装置。
【請求項3】
前記通信機器には、前記通信キャリアから提供された第1のIPアドレスに加えて、前記第1のIPアドレスとは異なる、本ゲートウェイ装置と通信するための第2のIPアドレスがさらに設定され、
前記転送部は、前記SIPサーバへ送信すべきSIPメッセージであって、前記SIPサーバを宛先とするSIPメッセージに対して前記通信機器の第2のIPアドレスを宛先とするヘッダを付加することにより前記SIPメッセージをカプセル化したパケットを生成し、前記パケットを前記通信機器へ送信することにより、前記パケットのカプセルを解除後のSIPメッセージを前記通信機器から前記通信キャリアの網へ送信させることを特徴とする請求項1または2に記載のゲートウェイ装置。
【請求項4】
ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置であって、
通信キャリアから提供された情報であって、前記ユーザの拠点に設置され、前記通信キャリアの網に接続された通信機器のIPアドレスと、前記通信キャリアのSIPサーバのIPアドレスとを含む情報を記憶する記憶部と、
前記通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、前記SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを前記通信機器へ渡し、前記登録メッセージを前記通信機器から前記通信キャリアの網へ送信させる登録部と、
前記SIPサーバから前記通信機器へ送信され、前記通信機器から転送されたSIPメッセージを受け付ける受付部と、
前記通信機器から転送されたSIPメッセージを、前記ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機であって、前記ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御する交換機へ転送する転送部と、
を備えることを特徴とするゲートウェイ装置。
【請求項5】
ユーザの拠点に設けられ、通信キャリアの網に接続された通信機器と、
前記ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機と、
前記ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置と、
を備え、
前記ゲートウェイ装置は、前記通信機器に対して前記通信キャリアから提供された前記通信機器のIPアドレスと、前記通信キャリアのSIPサーバのIPアドレスとを取得し、
前記ゲートウェイ装置は、前記通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、前記SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを前記通信機器へ渡し、
前記通信機器は、前記登録メッセージを前記通信キャリアの網へ送信し、
前記通信機器は、前記SIPサーバからSIPメッセージを受け付けた場合、そのSIPメッセージを前記ゲートウェイ装置へ転送し、
前記ゲートウェイ装置は、前記通信機器から転送されたSIPメッセージを前記交換機へ転送し、
前記交換機は、前記ゲートウェイ装置から転送されたSIPメッセージをもとに、前記ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
ユーザの拠点に設けられ、通信キャリアの網に接続された通信機器と、
前記ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機と、
前記ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置と、
を備え、
前記ゲートウェイ装置は、前記通信キャリアから提供された情報であって、前記通信機器のIPアドレスと、前記通信キャリアのSIPサーバのIPアドレスとを含む情報を記憶し、
前記ゲートウェイ装置は、前記通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、前記SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを前記通信機器へ渡し、
前記通信機器は、前記登録メッセージを前記通信キャリアの網へ送信し、
前記通信機器は、前記SIPサーバからSIPメッセージを受け付けた場合、そのSIPメッセージを前記ゲートウェイ装置へ転送し、
前記ゲートウェイ装置は、前記通信機器から転送されたSIPメッセージを前記交換機へ転送し、
前記交換機は、前記ゲートウェイ装置から転送されたSIPメッセージをもとに、前記ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御することを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信技術に関し、特にゲートウェイ装置および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、クラウド上(例えばユーザの拠点とは異なるデータセンタ等)に設置され、ユーザの拠点に設置された電話機に対してインターネットを介して内線交換機能および外線接続機能を提供するPBX(Private Branch eXchange)(以下「クラウドPBX」とも呼ぶ。)の利用が拡大している(例えば特許文献1参照)。クラウドPBXを用いた通信システムは、高額な交換機を購入することなく、サービス利用料を支払うことで内線通話を利用できるため、初期導入コストが低いというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-103837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラウドPBXを利用するユーザは、ユーザの拠点の電話番号(「地域番号」とも呼ばれる。)の継続使用を希望することがある。従来、これを実現するためには、通信キャリアとクラウドPBXを繋ぐためのプロトコル変換等を行う高価なVoIPゲートウェイ装置をユーザの拠点に設置する必要があり、多額のコストが掛かることがあった。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、ユーザの拠点の電話番号の継続使用と、クラウドPBXの安価な利用の両立を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様のゲートウェイ装置は、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置であって、ユーザの拠点に設置され、通信キャリアの網に接続された通信機器に対して通信キャリアから提供された通信機器のIPアドレスと、通信キャリアのSIP(Session Initiation Protocol)サーバのIPアドレスとを取得する取得部と、通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを通信機器へ渡し、登録メッセージを通信機器から通信キャリアの網へ送信させる登録部と、SIPサーバから通信機器へ送信され、通信機器から転送されたSIPメッセージを受け付ける受付部と、通信機器から転送されたSIPメッセージを、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機であって、ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御する交換機へ転送する転送部と、を備える。
【0007】
本開示の別の態様もまた、ゲートウェイ装置である。この装置は、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置であって、通信キャリアから提供された情報であって、ユーザの拠点に設置され、通信キャリアの網に接続された通信機器のIPアドレスと、通信キャリアのSIPサーバのIPアドレスとを含む情報を記憶する記憶部と、通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを通信機器へ渡し、登録メッセージを通信機器から通信キャリアの網へ送信させる登録部と、SIPサーバから通信機器へ送信され、通信機器から転送されたSIPメッセージを受け付ける受付部と、通信機器から転送されたSIPメッセージを、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機であって、ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御する交換機へ転送する転送部と、を備える。
【0008】
本開示のさらに別の態様は、通信システムである。この通信システムは、ユーザの拠点に設けられ、通信キャリアの網に接続された通信機器と、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機と、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置と、を備える。ゲートウェイ装置は、通信機器に対して通信キャリアから提供された通信機器のIPアドレスと、通信キャリアのSIPサーバのIPアドレスとを取得し、ゲートウェイ装置は、通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを通信機器へ渡し、通信機器は、登録メッセージを通信キャリアの網へ送信し、通信機器は、SIPサーバからSIPメッセージを受け付けた場合、そのSIPメッセージをゲートウェイ装置へ転送し、ゲートウェイ装置は、通信機器から転送されたSIPメッセージを交換機へ転送し、交換機は、ゲートウェイ装置から転送されたSIPメッセージをもとに、ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御する。
【0009】
本開示のさらに別の態様もまた、通信システムである。この通信システムは、ユーザの拠点に設けられ、通信キャリアの網に接続された通信機器と、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられた交換機と、ユーザの拠点とは異なる位置に設けられたゲートウェイ装置と、を備える。ゲートウェイ装置は、通信キャリアから提供された情報であって、通信機器のIPアドレスと、通信キャリアのSIPサーバのIPアドレスとを含む情報を記憶し、ゲートウェイ装置は、通信機器のIPアドレスを含む登録メッセージであって、SIPサーバのIPアドレスを宛先とする登録メッセージを通信機器へ渡し、通信機器は、登録メッセージを通信キャリアの網へ送信し、通信機器は、SIPサーバからSIPメッセージを受け付けた場合、そのSIPメッセージをゲートウェイ装置へ転送し、ゲートウェイ装置は、通信機器から転送されたSIPメッセージを交換機へ転送し、交換機は、ゲートウェイ装置から転送されたSIPメッセージをもとに、ユーザの拠点に設けられた電話端末を制御する。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を、方法、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを格納した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、ユーザの拠点の電話番号の継続使用と、クラウドPBXの安価な利用の両立を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】従来の通信システムの構成を示す図である。
図2】従来の通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図3図2に続く通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図4】実施例の通信システムの構成を示す図である。
図5図4のゲートウェイ装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図6】SIP-NAT後のSIPメッセージの例を示す図である。
図7】実施例の通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図8図7に続く通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図9】VPNトンネルを介した通信の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例の通信システムを説明する前に従来技術を説明する。図1は、従来の通信システム10の構成を示す。図1は、ユーザ拠点の電話番号を継続使用しつつ、クラウドPBX(PBX52)を利用するための従来構成を示している。キャリア網14は、IP電話サービスを提供する通信キャリア(言い換えれば電気通信事業者)の網であり、インターネットプロトコル技術を利用する次世代電話網(Next Generation Network)である。キャリア網14は、ISP(Internet Service Provider)20を介してインターネット12と接続される。
【0014】
キャリア網14には、IP電話サービスにおけるシグナリングを制御するSIPサーバ30と、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)サーバ32と、中継装置38とが設けられる。また、キャリア網14には、ユーザ拠点の電話端末(後述の電話端末46)と通話する電話端末36が接続される。
【0015】
アクセス回線16は、インターネット12とユーザ拠点とを結ぶ回線である。アクセス回線16は、ISP22を介してインターネット12と接続される。また、アクセス回線16には、ユーザ拠点の装置と接続される中継装置50が設けられる。
【0016】
サービスプロバイダ網18は、クラウドPBXサービスを提供するサービスプロバイダの網であり、例えば、サービスプロバイダのデータセンタに構築された網である。サービスプロバイダ網18は、L3(レイヤ3)スイッチ24を介してインターネット12に接続される。サービスプロバイダ網18には、クラウドPBXとしてのPBX52が設けられる。PBX52は、ユーザ拠点の電話端末(後述の電話端末46)を制御する構内交換機である。例えば、PBX52は、ユーザ拠点内の複数の電話端末間での内線通話や、外線(公衆回線)接続を制御する。
【0017】
ユーザ拠点は、クラウドPBXサービスを利用するユーザの拠点であり、例えば、ユーザ企業の本社、支社またはコールセンタである。ユーザ拠点には、ONU装置40、IP電話アダプタ42、VoIPゲートウェイ44、複数の電話端末46(例えば電話端末46a、電話端末46b)、L2(レイヤ2)スイッチ48が設けられる。
【0018】
ONU装置40は、光回線終端装置であり、光信号と電気信号間の変換を行う。IP電話アダプタ42は、IP電話におけるシグナリングパケットであるSIPメッセージや、音声パケットであるRTP(Real-time Transport Protocol)パケットと、一般的なビジネスフォン向けのISDN(Integrated Services Digital Network)信号間の変換を行う。IP電話アダプタ42は、通信キャリアからIP電話サービス利用者に貸し出される場合もある。
【0019】
複数の電話端末46のそれぞれは、IP電話機であってもよく、IP電話に対応したソフトフォン(ソフトフォンがインストールされたPC等)であってもよい。L2スイッチ48は、ユーザ拠点とアクセス回線16との間で送受信されるデータを中継する。
【0020】
VoIPゲートウェイ44は、IP電話のSIPメッセージやRTPパケットと、IDSN信号間の変換を行う。VoIPゲートウェイ44は、IP電話アダプタ42から出力されたISDN信号に対応するSIPメッセージをPBX52へ送信し、また、PBX52から送信されたSIPメッセージに対応するISDN信号をIP電話アダプタ42へ出力する。
【0021】
図2は、従来の通信システム10の動作を示すシーケンス図である。電話端末36は、起動時にSIPサーバ30への登録処理を実行する。電話端末46は、起動時にPBX52への登録処理を実行する。ユーザ拠点のIP電話アダプタ42は、起動時にDHCPリクエストをDHCPサーバ32へ送信する。DHCPサーバ32は、IP電話アダプタ42に対してグローバルIPアドレスを割り当て、DHCPレスポンスをIP電話アダプタ42へ送信する。
【0022】
DHCPレスポンスは、(1)IP電話アダプタ42に割り当てたグローバルIPアドレス、(2)ネットワーク情報(サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ情報等)、(3)SIPサーバ30情報(SIPサーバ30のグローバルIPアドレス等)、(4)通信キャリアにおいて予め定められたIP電話アダプタ42の電話番号(具体的にはユーザ拠点に割り当てられた1つ以上の電話番号のリスト)を含む。これら(1)~(4)の情報を総称して以下「キャリア設定情報」とも呼ぶ。
【0023】
DHCPサーバ32は、IP電話アダプタ42に割り当てたグローバルIPアドレスをSIPサーバ30へも通知する。SIPサーバ30は、通信キャリアにおいて予め定められたユーザ拠点の回線情報(回線ID等)と、IP電話アダプタ42のグローバルIPアドレスとを対応付けて記憶する。IP電話アダプタ42は、登録リクエストを含むSIPメッセージをSIPサーバ30へ送信する。SIPサーバ30は、SIPメッセージに含まれるIP電話アダプタ42のグローバルIPアドレスと、そのSIPメッセージが送信された回線情報とをもとに正当な送信元であると判断し、SIPクライアントの登録処理を実行する。SIPサーバ30は、登録成功(200 OK (REGISTER))を示すSIPメッセージをIP電話アダプタ42へ送信する。
【0024】
以下、ユーザ拠点外に設けられた電話端末36から、ユーザ拠点内に設けられた電話端末46に発信する例を説明する。電話端末36は、ユーザ拠点の電話番号を指定したINVITEリクエストを含むSIPメッセージ(以下「INVITEメッセージ」とも呼ぶ。)をSIPサーバ30へ送信する。SIPサーバ30は、指定された電話番号にしたがって、INVITEメッセージをユーザ拠点のIP電話アダプタ42へ送信する。
【0025】
IP電話アダプタ42は、INVITEメッセージに対応するISDN信号「SETUP」をVoIPゲートウェイ44へ送信する。VoIPゲートウェイ44は、ISDN信号「SETUP」に対応するINVITEメッセージをPBX52へ送信する。このINVITEメッセージは、L2スイッチ48、アクセス回線16、インターネット12、L3スイッチ24を経由して、サービスプロバイダ網18のPBX52に到達する。
【0026】
PBX52は、指定された電話番号に対応する電話端末46へINVITEメッセージを送信する。以下、公知であるため詳細な説明は省略するが、処理中(100 trying)を示すSIPメッセージと、呼び出し中(180 Ringing)を示すSIPメッセージが順次、ユーザ拠点のIP電話アダプタ42からSIPサーバ30へ送信される。
【0027】
図3は、図2に続く通信システム10の動作を示すシーケンス図である。PRACKのリクエストとレスポンスについては説明を省略する。ユーザ拠点の担当者が電話に応答すると、電話端末46は、応答有り(200 OK w/SDP (INVITE))を示すSIPメッセージ(以下「応答有りメッセージ」とも呼ぶ。)をPBX52へ送信する。PBX52は、応答有りメッセージをVoIPゲートウェイ44へ送信する。VoIPゲートウェイ44は、応答有りメッセージに対応するISDN信号「CONNECT」をIP電話アダプタ42へ送信する。また、VoIPゲートウェイ44は、ACKリクエストを示すSIPメッセージ(以下「ACKメッセージ」とも呼ぶ。)をPBX52へ送信する。PBX52は、ACKメッセージを電話端末46へ送信する。
【0028】
IP電話アダプタ42は、ISDN信号「CONNECT」に対応する応答有りメッセージをSIPサーバ30へ送信する。SIPサーバ30は、応答有りメッセージを電話端末36へ送信する。電話端末36は、ACKメッセージをSIPサーバ30へ送信する。SIPサーバ30は、ACKメッセージをIP電話アダプタ42へ送信する。IP電話アダプタ42は、ACKメッセージに対応するISDN信号「CONNECT-ACK」をVoIPゲートウェイ44へ送信する。以上のシグナリング処理により、(1)電話端末36~IP電話アダプタ42間、(2)IP電話アダプタ42~VoIPゲートウェイ44間、(3)VoIPゲートウェイ44~電話端末46間のそれぞれで音声通話用のセッションが確立される。
【0029】
電話端末46に音声が入力されると、電話端末46は、音声データを含むRTPパケットをVoIPゲートウェイ44へ送信する。VoIPゲートウェイ44は、ISDNのBチャンネルを介して音声データをIP電話アダプタ42へ送信する。IP電話アダプタ42は、ISDNのBチャンネルを介して受信した音声データを含むRTPパケットを電話端末36へ送信する。
【0030】
他方、電話端末36に音声が入力されると、電話端末36は、音声データを含むRTPパケットをIP電話アダプタ42へ送信する。IP電話アダプタ42は、ISDNのBチャンネルを介して音声データをVoIPゲートウェイ44へ送信する。VoIPゲートウェイ44は、ISDNのBチャンネルを介して受信した音声データを含むRTPパケットを電話端末46へ送信する。
【0031】
このように、従来、ユーザ拠点の電話番号を継続使用しつつ、クラウドPBXを利用するためには、ユーザ拠点に高価なVoIPゲートウェイをオンプレミスで設置する必要があり、多額のコストが掛かることがあった。そこで実施例では、通信キャリアからユーザ拠点の装置へ提供されるキャリア設定情報をクラウド側から取得する仕組みと、クラウド側でVoIPゲートウェイが正常に動作する仕組みを実装した通信システムを提案する。以下、実施例の通信システムを詳細に説明する。
【0032】
図4は、実施例の通信システム100の構成を示す。図4では、通信システム100を構成する要素のうち、図1に示した従来の通信システム10を構成する要素と同一または対応する要素には同一の符号を付して説明する。また、従来の通信システム10に関連して説明済みの内容と重複する内容は再度の説明を適宜省略する。
【0033】
従来の通信システム10との差異として、実施例の通信システム100では、ユーザ拠点に、IP電話アダプタ42およびVoIPゲートウェイ44に代えてルータ装置62が設置される。ルータ装置62は、ユーザ拠点に設置された、キャリア網14と接続される通信機器である。
【0034】
また、実施例の通信システム100では、サービスプロバイダ網18に、クラウド側のVoIPゲートウェイとしてゲートウェイ装置64が設置される。ゲートウェイ装置64は、インターネット12、キャリア網14、中継装置38、ONU装置40を介してルータ装置62と接続される。そのため、サービスプロバイダ網18には、ゲートウェイ装置64~ルータ装置62間で送受信されるパケットを、インターネット12との間で中継するL3(レイヤ3)スイッチ60がさらに設置される。
【0035】
図5は、図4のゲートウェイ装置64の機能ブロックを示すブロック図である。本開示のブロック図で示す各ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのプロセッサ、CPU、メモリをはじめとする素子や電子回路、機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0036】
ゲートウェイ装置64は、キャリア側インタフェース70、ユーザ側インタフェース72、制御部74、記憶部76を備える。キャリア側インタフェース70は、L3スイッチ60を介してルータ装置62と通信するためのインタフェースである。図9に関連して後述するように、キャリア側インタフェース70には、PPP通信用のIPアドレスと、L2TP(Layer 2 Tunneling Protocol)/IPsec(Security Architecture for Internet Protocol)通信用のIPアドレスとが設定される。ユーザ側インタフェース72は、PBX52と通信するためのインタフェースである。ユーザ側インタフェース72には、PBX52との通信用のIPアドレスが設定される。
【0037】
制御部74は、図1のIP電話アダプタ42およびVoIPゲートウェイ44と同様に振る舞うための各種データ処理を実行する。制御部74は、キャリア側インタフェース70を介してルータ装置62とデータを送受信し、ユーザ側インタフェース72を介してPBX52とデータを送受信する。
【0038】
記憶部76は、制御部74により参照または更新されるデータを記憶する。記憶部76は、キャリア設定情報記憶部78を含む。キャリア設定情報記憶部78は、DHCPレスポンスとして通信キャリアからユーザ拠点(実施例ではルータ装置62)に提供されるキャリア設定情報を記憶する。
【0039】
制御部74は、キャリア設定情報取得部80、トンネル設定部82、登録部84、メッセージ受付部86、メッセージ転送部88を含む。これら複数の機能ブロックの機能を実装したコンピュータプログラムが、記録媒体に格納され、その記録媒体を介してゲートウェイ装置64のストレージ(記憶部76等)にインストールされてもよい。または、上記コンピュータプログラムが、ネットワークを介してダウンロードされ、ゲートウェイ装置64のストレージにインストールされてもよい。ゲートウェイ装置64のプロセッサは、上記コンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。
【0040】
キャリア設定情報取得部80は、ユーザ拠点に設置され、通信キャリアの網に接続された通信機器に対して通信キャリアから提供された通信機器のIPアドレスと、通信キャリアのSIPサーバのIPアドレスとを取得する取得部として機能する。実施例では、キャリア設定情報取得部80は、通信キャリアのDHCPサーバ32からルータ装置62に対して提供されたDHCPレスポンスに含まれるキャリア設定情報をルータ装置62から取得する。ここでのキャリア設定情報は、(1)ルータ装置62に割り当てたグローバルIPアドレス、(2)ネットワーク情報(サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ情報等)、(3)SIPサーバ30情報(SIPサーバ30のグローバルIPアドレス等)、(4)通信キャリアにおいて予め定められたルータ装置62の電話番号(具体的にはユーザ拠点に割り当てられた1つ以上の電話番号のリスト)を含む。キャリア設定情報取得部80は、取得したキャリア設定情報をキャリア設定情報記憶部78に格納する。
【0041】
トンネル設定部82は、公知の手法により、ルータ装置62と折衝して、ルータ装置62との間で、L2TP/IPsecを用いたインターネットVPN(Virtual Private Network)を確立する。このインターネットVPNによる仮想伝送路を以下「VPNトンネル」とも呼ぶ。
【0042】
登録部84は、キャリア設定情報記憶部78に記憶されたキャリア設定情報が示すルータ装置62のグローバルIPアドレスを含む登録メッセージ(具体的には登録リクエストを含むSIPメッセージ)であり、かつ、キャリア設定情報が示すSIPサーバ30のグローバルIPアドレスを宛先とする登録メッセージを生成する。登録部84は、VPNトンネルを介して登録メッセージをルータ装置62に渡すことにより、登録メッセージをルータ装置62からキャリア網14(SIPサーバ30)へ送信させる。
【0043】
メッセージ受付部86は、SIPサーバ30からルータ装置62へ送信され、ルータ装置62から転送されたSIPメッセージ(例えばINVITEメッセージや各種レスポンスメッセージ)を、VPNトンネルを介して受け付ける。
【0044】
メッセージ転送部88は、ルータ装置62から転送されたSIPメッセージ(言い換えればメッセージ受付部86により受け付けられたSIPメッセージ)を、サービスプロバイダ網18のPBX52へ転送する。これにより、メッセージ転送部88は、そのSIPメッセージに基づいて、ユーザの拠点に設けられた電話端末46を制御する処理をPBX52に実行させる。
【0045】
メッセージ転送部88は、PBX52から出力された、SIPサーバ30へ送信すべきSIPメッセージ(例えばINVITEメッセージや各種レスポンスメッセージ)を受け付け、そのSIPメッセージに含まれる送信元のIPアドレスを、キャリア設定情報記憶部78に記憶されたキャリア設定情報が示すルータ装置62のグローバルIPアドレスに変換する。この変換を以下「SIP-NAT」とも呼ぶ。メッセージ転送部88は、VPNトンネルを介してSIP-NAT後のSIPメッセージをルータ装置62に渡すことにより、SIP-NAT後のSIPメッセージをルータ装置62からキャリア網14(SIPサーバ30)へ送信させる。
【0046】
図6は、SIP-NAT後のSIPメッセージの例を示す。同図は、SIP-NAT後のSIPメッセージ112と、SIPメッセージ112に付加されるIPヘッダ110を示している。IPヘッダ110は、SIP-NATの対象外である。IPヘッダ110の項目114には、ゲートウェイ装置64のIPアドレスが設定される。
【0047】
一方、SIPメッセージ112は、SIP-NATの対象である。SIPメッセージ112の項目116、項目118、項目120、項目122、項目124(総称して「対象項目」とも呼ぶ。)には、通信キャリアから割り当てられたルータ装置62のグローバルIPアドレス、言い換えれば、キャリア網14向けのルータ装置62のグローバルIPアドレスが設定される。例えば、PBX52から出力されたSIPメッセージの対象項目には、ゲートウェイ装置64のIPアドレスが設定されてもよい。メッセージ転送部88は、SIPメッセージの対象項目の値をゲートウェイ装置64のIPアドレスからルータ装置62のグローバルIPアドレスに置換してもよい。
【0048】
図6ではINVITEリクエストを含むSIPメッセージの例を示したが、メッセージ転送部88は、他の種類のSIPメッセージに対してもSIP-NATを実行する。例えば、登録リクエストを含むSIPメッセージの場合、メッセージ転送部88は、当該SIPメッセージ内のコンタクトヘッダに含まれる送信元IPアドレスを、キャリア設定情報が示すルータ装置62のグローバルIPアドレスに変換する。
【0049】
このように、ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、SIP-NATを行い、ルータ装置62は、SIPメッセージの内容を意識することなく、ゲートウェイ装置64から受け付けたSIPメッセージをそのままキャリア網14(SIPサーバ30)へ送出する。ルータ装置62から送信されるSIPメッセージには、通信キャリアが割り当てた正しいIPアドレスが設定されているため、SIPサーバ30は、当該SIPメッセージを正当なものと認識し、正常にシグナリング処理を実行することができる。
【0050】
図7は、実施例の通信システム100の動作を示すシーケンス図である。電話端末36は、起動時にSIPサーバ30への登録処理を実行する。電話端末46は、起動時にPBX52への登録処理を実行する。ユーザ拠点のルータ装置62は、起動時にDHCPリクエストをDHCPサーバ32へ送信する(S10)。DHCPサーバ32は、ルータ装置62に対してグローバルIPアドレスを割り当て、キャリア設定情報を含むDHCPレスポンスをルータ装置62へ送信する(S12)。
【0051】
実施例のキャリア設定情報も、従来技術のキャリア設定情報と同様に、(1)ルータ装置62に割り当てたグローバルIPアドレス、(2)ネットワーク情報(サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ情報等)、(3)SIPサーバ30情報(SIPサーバ30のグローバルIPアドレス等)、(4)通信キャリアにおいて予め定められたルータ装置62の電話番号(具体的にはユーザ拠点に割り当てられた1つ以上の電話番号のリスト)を含む。DHCPサーバ32は、ルータ装置62に割り当てたグローバルIPアドレスをSIPサーバ30へも通知する。SIPサーバ30は、通信キャリアにおいて予め定められたユーザ拠点の回線情報(回線ID等)と、ルータ装置62のグローバルIPアドレスとを対応付けて記憶する。
【0052】
ゲートウェイ装置64のキャリア設定情報取得部80は、ルータ装置62にSSH(Secure Shell)でログインし(S14)、通信キャリアから提供されたキャリア設定情報をルータ装置62から読み込む(S16)。ゲートウェイ装置64のトンネル設定部82は、ルータ装置62との間でL2TP/IPsecによる接続(VPNトンネル)を確立する(S18)。以降、ルータ装置62とゲートウェイ装置64間では、VPNトンネルを介して各種データが送受信される。
【0053】
ゲートウェイ装置64の登録部84は、登録メッセージをルータ装置62へ送信する(S20)。ルータ装置62は、登録メッセージをキャリア網14へ送信し、登録メッセージは、キャリア網14を介してSIPサーバ30に到達する(S22)。SIPサーバ30は、SIPメッセージ(コンタクトヘッダ等)に含まれるルータ装置62のグローバルIPアドレスと、そのSIPメッセージが送信された回線情報とをもとに、正当な送信元であると判断し、SIPクライアントの登録処理を実行する。SIPサーバ30は、登録成功を示すSIPメッセージをルータ装置62へ送信する(S24)。ルータ装置62は、SIPサーバ30から送信された登録成功を示すSIPメッセージをキャリア網14から受け付けると、そのSIPメッセージをクラウドのゲートウェイ装置64へ転送する(S26)。
【0054】
以下、ユーザ拠点外に設けられた電話端末36から、ユーザ拠点内に設けられた電話端末46に発信する例を説明する。電話端末36は、ユーザ拠点の電話番号を指定したINVITEメッセージをSIPサーバ30へ送信する(S28)。SIPサーバ30は、指定された電話番号にしたがって、INVITEメッセージをユーザ拠点のルータ装置62へ送信する(S30)。ルータ装置62は、SIPサーバ30から送信されたSIPメッセージをキャリア網14から受け付けた場合、そのINVITEメッセージをクラウドのゲートウェイ装置64へ転送する(S32)。
【0055】
ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、ルータ装置62から転送されたINVITEメッセージをPBX52へ転送する(S34)。PBX52は、ゲートウェイ装置64から転送されたSIPメッセージをもとに、ユーザ拠点に設けられた電話端末46に対するシグナリング処理を実行する。具体的には、PBX52は、ゲートウェイ装置64から転送されたINVITEメッセージで指定された電話番号をもとに、着信させる電話端末46を決定する。PBX52は、着信先として決定した電話端末46に対してINVITEメッセージを送信する(S36)。
【0056】
ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、S34の処理の後、処理中(100 trying)を示すSIPメッセージをルータ装置62へ送信し(S38)、ルータ装置62は、当該SIPメッセージをキャリア網14へ転送し(S40)、当該SIPメッセージはSIPサーバ30に到達する。SIPサーバ30は、処理中を示すSIPメッセージを電話端末36へ送信する(S42)。また、PBX52は、S36の処理の後、処理中を示すSIPメッセージをゲートウェイ装置64へ送信する(S44)。また、電話端末46は、処理中を示すSIPメッセージをPBX52へ送信する(S46)。
【0057】
図8は、図7に続く通信システム100の動作を示すシーケンス図である。電話端末46は、呼び出し中(180 Ringing)を示すSIPメッセージをPBX52へ送信する(S48)。PBX52は、呼び出し中を示すSIPメッセージをゲートウェイ装置64へ送信する(S50)。ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、呼び出し中を示すSIPメッセージをルータ装置62へ送信し(S52)、ルータ装置62は、当該SIPメッセージをキャリア網14へ転送し(S54)、当該SIPメッセージはSIPサーバ30に到達する。SIPサーバ30は、呼び出し中を示すSIPメッセージを電話端末36へ送信する(S56)。
【0058】
電話端末36は、PRACKリクエストを示すSIPメッセージ(以下「PRACKメッセージ」とも呼ぶ。)をSIPサーバ30へ送信する(S58)。SIPサーバ30は、PRACKメッセージをルータ装置62へ送信し(S60)、ルータ装置62は、PRACKメッセージをゲートウェイ装置64へ転送する(S62)。ゲートウェイ装置64は、PRACKメッセージに対する応答(200 OK (PRACK))を示す応答メッセージをルータ装置62へ送信し(S64)、ルータ装置62は、応答メッセージをキャリア網14へ転送し(S66)、応答メッセージはSIPサーバ30に到達する。SIPサーバ30は、応答メッセージを電話端末36へ送信する(S68)。
【0059】
ユーザ拠点の担当者が電話に出ると、電話端末46は、応答有りメッセージをPBX52へ送信する(S70)。PBX52は、応答有りメッセージをゲートウェイ装置64へ送信する(S72)。ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、応答有りメッセージをルータ装置62へ送信し(S74)、ルータ装置62は、応答有りメッセージをキャリア網14へ転送し(S76)、応答有りメッセージはSIPサーバ30に到達する。SIPサーバ30は、応答有りメッセージを電話端末36へ送信する(S78)。
【0060】
ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、S74の処理の後、ACKメッセージをPBX52へ送信し(S80)、PBX52は、ACKメッセージを電話端末46へ送信する(S82)。また、電話端末36は、ACKメッセージをSIPサーバ30へ送信する(S84)。SIPサーバ30は、ACKメッセージをルータ装置62へ送信し(S86)、ルータ装置62は、ACKメッセージをゲートウェイ装置64へ転送する(S88)。以上のシグナリング処理により、(1)電話端末36~ルータ装置62間、(2)ルータ装置62~ゲートウェイ装置64間、(3)ゲートウェイ装置64~電話端末46間のそれぞれで音声通話用のRTPセッションが確立される。
【0061】
電話端末46に音声が入力されると、電話端末46は、音声データを含むRTPパケットをゲートウェイ装置64へ送信する(S90)。ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、上記音声データを含むRTPパケットをルータ装置62へ送信する(S92)。ルータ装置62は、ゲートウェイ装置64から受信したRTPパケットをキャリア網14へ転送する(S94)。これにより、当該RTPパケットは電話端末36に到達し、電話端末36で音声が出力される。
【0062】
他方、電話端末36に音声が入力されると、電話端末36は、音声データを含むRTPパケットをキャリア網14を介してルータ装置62へ送信する(S96)。ルータ装置62は、電話端末36から受信したRTPパケットをゲートウェイ装置64へ転送する(S98)。ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、上記音声データを含むRTPパケットを電話端末46へ送信する(S100)。これにより、電話端末46で音声が出力される。
【0063】
図9は、VPNトンネルを介した通信の例を示す。ユーザ拠点のルータ装置62には、DHCPレスポンス(キャリア設定情報)にて通信キャリアから提供された第1のIPアドレス(X.X.7.74)(グローバルIPアドレス)と、ゲートウェイ装置64との通信用に予め定められた第2のIPアドレス(Y.Y.226.143)(グローバルIPアドレス)とが設定される。また、サービスプロバイダ網18のゲートウェイ装置64には、PPP通信用の第1のIPアドレス(192.168.100.222)と、L2TP/IPsec通信用の第2のIPアドレス(Z.Z.181.12)(グローバルIPアドレス)とが設定される。
【0064】
通信キャリアのSIPサーバ30は、SIPメッセージを含むSIPパケット130をルータ装置62へ送信する。ルータ装置62は、SIPパケット130の宛先IPアドレスをゲートウェイ装置64の第1のIPアドレスに書き換えるNAT処理を実行し、NAT処理後のSIPパケット132に対してL2TPヘッダ134を付加することにより、SIPパケット132をカプセル化したL2TPパケット136を生成する。ここでのL2TPヘッダ134は、ゲートウェイ装置64の第2のIPアドレスを宛先とし、ルータ装置62の第2のIPアドレスを送信元とするものである。ルータ装置62は、L2TPパケット136をゲートウェイ装置64へ送信する。
【0065】
ゲートウェイ装置64のメッセージ受付部86は、L2TPパケット136を受け付けると、L2TPパケット136からL2TPヘッダ134を取り除くことによりL2TPパケット136のカプセルを解除する。メッセージ受付部86は、カプセル解除後のSIPパケット132を以降の処理(例えばメッセージ転送部88)に渡す。
【0066】
ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、PBX52から出力された、SIPサーバ30へ送信すべきSIPメッセージを受け付けると、SIPサーバ30のIPアドレスを宛先とし、ゲートウェイ装置64の第1のIPアドレスを送信元とするIPヘッダを付加することによりSIPパケット140を生成する。メッセージ転送部88は、SIPパケット140に対してL2TPヘッダ142を付加することにより、SIPパケット140をカプセル化したL2TPパケット144を生成する。ここでのL2TPヘッダ142は、ルータ装置62の第2のIPアドレスを宛先とし、ゲートウェイ装置64の第2のIPアドレスを送信元とするものである。
【0067】
ゲートウェイ装置64のメッセージ転送部88は、L2TPパケット144をルータ装置62へ送信する。ルータ装置62は、L2TPパケット144を受け付けると、L2TPパケット144からL2TPヘッダ142を取り除くことによりL2TPパケット144のカプセルを解除する。ルータ装置62は、カプセル解除後のSIPパケット140の送信元IPアドレスをルータ装置62の第1のIPアドレスに書き換えるNAT処理を実行する。ルータ装置62は、NAT処理後のSIPパケット146をキャリア網14へ送信する。
【0068】
このように、ゲートウェイ装置64とルータ装置62とをVPN接続することにより、SIPサーバ30へ送信すべきSIPメッセージを確実にルータ装置62からSIPサーバ30へ送信することができる。すなわち、ゲートウェイ装置64からSIPサーバ30へ送信すべきSIPメッセージを、SIPサーバ30が正当と判断する送信元IPアドレスおよび回線にてSIPサーバ30へ送信することができる。なお、図9では、SIPパケットの通信例を示したが、RTPパケットの通信も同様であり、この場合、SIPサーバ30が電話端末36に置き換わる。
【0069】
実施例の通信システム100によると、キャリア網14のSIPサーバ30と、サービスプロバイダ網18のPBX52のそれぞれに対して、従来ユーザ拠点に設置されたIP電話アダプタ42およびVoIPゲートウェイ44と同等に振る舞うゲートウェイ装置64をクラウド上(実施例ではサービスプロバイダ網18)に実現できる。ユーザは、所定の利用料を支払うことでゲートウェイ装置64の機能を利用でき、ユーザ拠点への高価なVoIPゲートウェイ44の導入と、VoIPゲートウェイ44の保守が不要になる。すなわち、実施例の通信システム100によると、ユーザの拠点の電話番号(地域番号)の継続使用と、クラウドPBXの安価な利用の両立を実現できる。
【0070】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、実施例に記載の各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0071】
上記実施例では、(1)ルータ装置62に割り当てたグローバルIPアドレス、(2)ネットワーク情報(サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ情報等)、(3)SIPサーバ30情報(SIPサーバ30のグローバルIPアドレス等)、(4)通信キャリアにおいて予め定められたルータ装置62の電話番号(具体的にはユーザ拠点に割り当てられた1つ以上の電話番号のリスト)を含むキャリア設定情報を、DHCPレスポンスとして通信キャリアの装置から動的に取得した。変形例として、ユーザ向けのキャリア設定情報は、通信キャリアにおいて予め静的に定められ、通信キャリアからユーザへ事前に提供・通知されてもよい。このように静的に定められたキャリア設定情報は、システム構築者により、ルータ装置62およびゲートウェイ装置64(キャリア設定情報記憶部78)に格納され、ルータ装置62およびゲートウェイ装置64(キャリア設定情報記憶部78)に記憶されてもよい。ゲートウェイ装置64は、キャリア設定情報記憶部78に記憶された、上記静的に定められたキャリア設定情報を用いて、SIPメッセージの処理(例えばSIPサーバ30に対する登録メッセージの生成・送信処理等)を実行してもよい。
【0072】
上記実施例の通信システム100における各装置は、物理的な筐体数に制限が無いことはもちろんである。例えば、図4に示した各装置(例えばゲートウェイ装置64)は、複数台の装置が連携するシステムとして実現されてもよい。
【0073】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0074】
30 SIPサーバ、 36 電話端末、 46 電話端末、 52 PBX、 62 ルータ装置、 64 ゲートウェイ装置、 80 キャリア設定情報取得部、 84 登録部、 86 メッセージ受付部、 88 メッセージ転送部、 100 通信システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9