(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-04
(45)【発行日】2024-10-15
(54)【発明の名称】装置
(51)【国際特許分類】
B25J 13/00 20060101AFI20241007BHJP
A63H 11/00 20060101ALI20241007BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20241007BHJP
【FI】
B25J13/00 Z
A63H11/00 Z
A63H33/00 P
(21)【出願番号】P 2022198328
(22)【出願日】2022-12-13
(62)【分割の表示】P 2018006268の分割
【原出願日】2018-01-18
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391001848
【氏名又は名称】株式会社ユピテル
(73)【特許権者】
【識別番号】508320239
【氏名又は名称】株式会社ユピテル鹿児島
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭三
(72)【発明者】
【氏名】豊辻 大士
(72)【発明者】
【氏名】野添 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】今重 善宏
(72)【発明者】
【氏名】古市 浩隆
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 祐介
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-179063(JP,A)
【文献】特開2007-069302(JP,A)
【文献】特開2002-307354(JP,A)
【文献】特開2006-247780(JP,A)
【文献】特開2010-089248(JP,A)
【文献】特開2011-167820(JP,A)
【文献】特開2015-164757(JP,A)
【文献】特開2016-068197(JP,A)
【文献】国際公開第2005/014242(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0078600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 3/00-19/04
A63H 11/00-33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を備えるロボットであって、
挨拶用の発話発生時に前記頭部をお辞儀させるようにモータを動かす速度と、
肯定的な意思疎通の用語の発話発生時に前記頭部をうなずかせるようにモータを動かす速度とを異なるように制御する機能を備えること
を特徴とするロボット。
【請求項2】
悲しい場合として、前記頭部をうなずいたまま
所定時間静止させ、その後デフォルト位置に戻すようにモータを制御する機能を備えること
を特徴とする請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
うれしい場合として、前記頭部をユーザーに向けたまま左右方向(時計回りと反時計回り)に首をかしげるように回動するようにモータを制御する機能を備えること
を特徴とする請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
トリガーの発話発生時
、前記頭部の顔面部が正面を向いていない場合や前記頭部が傾いている場合にモータを制御して正面のデフォルト位置に戻す機能を備えること
を特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のロボット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のロボットの機能をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、人とコミュニケーションを取る対話型のロボットに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のこの種の対話型ロボットは対話をする際のジェスチャー能力は対話内容の制御に比べて二の次のとなっており、人とのコミュニケーションを取る際にジェスチャー能力としては必ずしも十分とは言えなかった。
本願の発明の目的はこれに限定されず、本明細書および図面等に開示される構成の部分から奏する効果を得ることを目的とする構成についても分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。例えば本明細書において「~できる」と記載した箇所を「~が課題である」と読み替えた課題が本明細書には開示されている。課題はそれぞれ独立したものとして記載しているものであり、この課題を解決するための構成についても単独で分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。課題が明細書の記載から黙字的に把握されるものであっても、本出願人は本明細書に記載の構成の一部を補正または分割出願にて特許請求の範囲とする意思を有する。またこれら独立の課題を組み合わせた課題も開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)人と対面する顔部を有し、前記顔部は前記顔部表面と交差する仮想的な第1の軸線回りに第1の回動が可能であることがよい。
装置の顔部に、あたかも顔をかしげるような動作をさせることができ、装置のジェスチャーが人間らしくなって装置から人に伝えられる情報が人に好意的に受け入れられやすくなるからである。例えば装置と人との間でコミュニケーションが行われるような場合にこのような回動ができることがよい。
【0006】
「装置」は、例えばコミュニケーションを取る機能を備えるとよく、例えば対話することでコミュニケーションを取る機能を備えるとよい。音声以外に目視あるいはそれら以外の五感、例えば触感にうったえコミュニケーションを図る構成を備えると特によい。例えばコンピュータによって音声デバイスを制御し、コミュニケーションするためのインターフェースを備えるとよい。コミュニケーションを実行するための判断手段を有することがよい。例えば、人や動物を模したような、あるいは例えばそれら以外の擬人化した形態のロボットとすることがよい。1つの装置として存在しても、有線や無線を通じてネットワークが組まれたようなシステムで構成してもよい。例えば、スマートフォン、タブレット端末、スマートスピーカ、スマートカメラ等を備える構成としてもよい。
コミュニケーションするための「人(ユーザー)」側のインターフェースとして、例えば音声によるものとして、例えば、マイクロフォンでの音声データの取得、例えばキーボードのような入力装置、例えば文字を読み込んでデータ化する光学文字認識(OCR:Optical character recognition)機能等を備えるとよい。
出力側(装置側)のインターフェースとして、例えば音声によるものとして、例えばスピーカ装置、イヤフォン等を備えるとよい。目視によるものとして、例えば液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ、ブラウン管等の表示装置を備えるとよい。また、例えば、印刷物による出力機能を備えるとよい。
【0007】
「顔部」は、例えば、実際に人や動物や擬人化した形態の目や鼻や口や耳のある頭部を模してその顔として構成されると最もよい。実際の顔形状ではなく装置全体から「顔面と判断される部分」であってもよい。人の脳は実際の顔ではなくとも柔軟に「顔」的に判断できるためである。そのため、例えば「頭部」的な部分に「顔」的な部分を構成したり、例えば「胴体」的な部分に「顔」的な部分を設けるようにしてもよい。また、「顔部」が明瞭に頭部に形成されていなくとも、例えば「目」のような顔を構成する要素が形成されていれば、その部分は顔の一部と解釈できる。
また、「顔部」は、例えば表示画面を有し、その表示画面に顔が表示されるものがよい。表示画面には「目」が表示されるとよく、その「目」の形状が変化するとよい。
「顔部表面と交差する仮想的な第1の軸線」は、例えば人が顔部と対面した際にその人側から顔部奥方向に伸びる直線とすると特によい。この直線は顔部が平面的な表示装置の画面である場合にその面に直交するとよい。
装置に回動動作をさせる手段としては回転駆動装置、例えば、モータがよい。モータは例えば、電動機としてのステッピングモータやサーボモータがよい。また、モータ以外の駆動装置としてシリンダ装置、例えば、油圧シリンダや空圧シリンダを用いてもよい。
【0008】
(2)前記顔部と前記第1の軸線との交点を中心又は略中心として円形形状として視認される部位を備え、前記円形形状として認識される部位の中に前記顔部を構成する構成要素を有することがよい。
顔の構成要素自体を回転させなくても第1の軸線回りに顔の要素を回転させることができるとともにその境界が円形でありその円は第一の軸と顔との交点を中心として回転するため、円自体は回転していないようにみえ、あたかも顔の構成要素自体がその円の中で回転しているかの印象を与えることができる。尚、第2の軸線回り、第3の軸線回りに回転した場合にはこの円自体が動くので当該軸線回りに回転していることを容易に知ることができる。
顔部には顔部の構成要素として、例えば、目や鼻や口や耳を含むことがよい。また、目や鼻や口や耳のうちの選択された少なくとも1つを含まなくともよい。人の脳は実際の顔ではなくとも柔軟に「顔」的に判断できるためである。顔部の構成要素としては少なくとも2つの眼を備えるとよい。
【0009】
(2-1)円形の部位の内部に矩形の表示部を備え、矩形の表示部に顔の構成要素を表示し、顔の構成要素の表示内容を変更することで顔の表情を変更する機能を備えることがよい。
顔の表情を変更できると、顔をかしげるようなジェスチャー動作と組み合わせることで多彩な表現が可能となるからである。
表示部は例えば、一般的な矩形のドットマトリクスディスプレイとするとよい。例えば、安価に構成でき、あたかも顔の構成要素が回転しているかのような印象を与えることができる。
(2-1-1)円形の部位は矩形の表示部の前面に表示内容を透過しかつ表示部の外形を視認しづらくするマスク手段を備えること
例えば、安価に構成でき、にも関わらず機械っぽさをなくして人とコミュニケーションを図ることができる。
【0010】
(2-2)前記顔部の前記構成要素自体の表示を前記第1の軸回りに回転表示させないことがよい。
顔部が回動しても顔部の前記構成要素自体は基本位置のままで表示される。例えば頭部だけを回動させてあたかも顔部の外周部分だけが独立して回転しているような不思議な印象をあたえることができる。
(2-3)円形の部位の色と円形の部位の色とを異なる色とすることがよい。
円形の部位に注目させることができる。
(2-4)円形の部位は平面とし、円形の部位の外側部分は曲面とすることがよい。
円形の部位を目立たせることができ、表示部に平面形状の硬質のディスプレイデバイスを使用することが可能となる。また、曲面とすることで第1の回動や第2の回動をさせる際に頭部が収容される同部の収容部との隙間を空けさせないようにできる。
(2-4-1)円形の部位の当該円の面方向と前記外側部分の他の部分との接合部分を平行とすることがよい。
接合部分が平行であると第1の回動をする際に接合部分は常に変位せずに円形の部位と等距離を保って頭部表面の定位置に表れるため、人が回動の際に接合部分が頭部の接合部分を見て回動していることがわかってしまうということがない。
(2-5)円形の部位の外側に前記第1の軸回りの回転にともなって回転を視認可能とする部位を設けたこと
(8)円形の部位であると第1の回動をしても回動していることがわかりにくいが、そのような部位があると回動動作をしていることを確認することができる。
(2-5-1)前記第1の軸回りの回転にともなって回転を視認可能とする部位は耳に相当する部位としたこと
耳であれば顔部の周囲にあっても不自然ではないからである。
【0011】
(3)前記装置は前記第1の回動とは異なる方向の回動が可能であることがよい。
第1の回動に第1の回動と異なる方向の回動を組み合わせることで、顔部により複雑な動作をさせることができるため、装置のジェスチャーパターンが増えて装置から人に伝えられる情報に応じて様々な動作が可能となる。
(4)前記顔部は前記第1の軸線と交差する仮想的な第2の軸線回りに第2の回動が可能であることがよい。
第1の回動と第2の回動とを組み合わせて顔部により複雑な動作をさせることができるため、装置のジェスチャーのパターンが増えて装置から人に伝えられる情報に応じて様々な動作が可能となる。
ここに「第1の軸線と交差する仮想的な第2の軸線」とは第1の軸線と直交しても直交以外の角度であってもよい。直交すると平面上の座標の特定がしやすいので位置制御の計算上直交することがよりよい。第1の回動、第2の回動を単独で行ってもよく、2つの回動を同時に行ってもよく、同時でなく各回動動作を別々に連続的に行ってもよい。
【0012】
(5)前記第2の回動は前記顔部が斜め上方を向いた位置と斜め下方を向いた位置との間の回動であることがよい。
顔部にあたかも顔をかしげるような動作と、顔部がうなずくような動作をさせることができるため、「首かしげ」と「うなずき」を両用することで単独では表現できない微妙な表現が可能となる。例えば、うなずき動作に顔をかしげる動作を組み合わせることで単なるうなずき動作が意味ありげなうなずきや、明確に「はい」とはいいにくい微妙なうなずきを緩和するような効果が生まれる。
【0013】
(6)前記顔部は前記第1の軸線及び前記第2の軸線と交差する仮想的な第3の軸線回りに第3の回動が可能であることがよい。
第1の回動と第2の回動に更に第3の回動を組み合わせて顔部により複雑な動作をさせることができるため、装置のジェスチャーパターンが格段に増えて装置から人に伝えられる情報に応じて様々な動作が可能となる。第1の回動、第2の回動、第3の回動を単独で行ってもよく、3つの回動を同時に行ってもよく、第3の回動と第1の回動又は第2の回動のいずれかとのみ同時に行ってもよい。また、同時でなく各回動動作を別々に連続的に行ってもよい。
(7)前記第1の軸線と前記第2の軸線と前記第3の軸線は相互に直交することがよい。
各軸線が相互に直交するため、三次元座標を特定しやすく、そのため制御がしやすくな
る。
【0014】
(8)前記装置は頭部を有し、前記顔部は前記頭部外面に形成され、前記頭部は前記顔部とともに前記第2の回動をすることがよい。
(9)前記装置は頭部を有し、前記顔部は前記頭部外面に形成され、前記頭部は前記顔部とともに前記第1の回動をすることがよい。
顔部が頭部外面に形成されることで、実際の人や動物やこれらにもしたキャラクター等に近いイメージとなり、頭部なしで回動動作するよりも人に好意的に受け入れられやすい。また、頭部内に顔部を動作させる機構を収容することができてよい。(7)や(8)の裏返しとして(6)までは顔部は頭部に形成されていなくともよい。例えば、顔部単独で存在しても胴体に顔部があってもよい。
【0015】
(10)前記装置は胴部を有し、前記頭部は前記胴部の上部に配置されて前記胴部に対して回動動作をすることがよい。
胴部の上に頭部があり、その頭部と顔が一緒に回動するのであれば、顔だけが回動する場合に比べて動作がより人間に近く感じられるため、人は動作を好意的に受け入れやすくなる。
(10-1)第1の軸と第2の軸が頭部側にあり、第3の軸が胴部側にあることがよい。このように回動軸が頭部側と胴部側で分けられていると、頭部側だけで独自に回動動作をさせることができ、第3の回動とは機構的に無関係に第1の回動と第2の回動を実行できるため3軸が回動できる機構であっても機構的に複雑化しない。
(10-2)胴部には胴部の上部であって、頭部の前方部分に指をかけられる幅広の領域を設けることがよい。
装置運搬の際にこのような位置に指をかけられる領域が設けられていると、ユーザーは自然とこの面に指を添えるように仕向けられることとなる。ユーザーはこの幅広部分を利用してボディを挟んで持ち上げることができるため便利である。また、頭部をもたなくなるので頭部を持った場合に力がかかる可能性を低減できる。(頭部は軸があるので第1の軸と第2の軸があるため力をかけないことが望ましい。)
【0016】
(11)前記頭部は外周面が球面となる部分を有するとともに、前記胴部は前記外周面が球面となる部分のカーブと一致又は略一致する内周面の収容部を前記胴部の上部に有し、前記頭部は前記外周面が球面となる部分が前記収容部内に収容されていることがよい。
このような球面の内周面と外周面の凹凸関係となるカーブで頭部が胴部の収容部内に収容されると、頭部を様々な方向に回動させた際に頭部は収容部との間で大きく隙間が空くことがなく、隙間に異物が侵入しにくくなる。また、頭部が収容部内で常に周囲から保持されているようになるため、見た目の安定性にも寄与する。
(12)前記収容部を構成する前記頭部と面する壁面には内外に連通する通気孔が形成されていることがよい。
装置内部には種々の発熱する部材が収納されるため、内部にこもる熱を逃がすことがよい。特に胴部内には頭部を回動させるための機構が収容されるため、熱がこもりやすい。そのため通気孔を設けることがよい。しかし、その際に胴部の外部から目視できる位置に通気孔設けることは装置の外観をそこねたりデザイン化の邪魔になったりする。このようにすれば、収容部の頭部と面する壁面は頭部によって隠されるため、外部からは見えない位置に形成されることとなるためよい。
(13)前記顔部は回動動作をする際に前記胴部によって隠されることがないようにするとよい。
例えば、人(ユーザー)とコミュニケーションを取る際に顔部は常に人から隠れずに完全に目視されることとなり、顔部から得られる視覚的情報が目視されないということがなくなる。
【0017】
(14)前記顔部は円又は円の一部から構成される外周部を備えるとともに、前記胴部上部には上方に凹となるように湾曲した前記外周部のカーブと一致又は略一致する内周部となる切欠部を形成し、前記顔部の前記外周部を前記切欠部の前記内周部に沿って配置することがよい。
顔部の外周部を切欠部の内周部に沿って配置することで、前記顔部に第1の回動をさせた場合に外周部は切欠部の内周部に沿って移動することになり、顔部を切欠部の背後に隠れることがないように第1の回動をさせることができる。
【0018】
(15)前記装置は頭部を有し、前記顔部は前記頭部外面に形成され、前記頭部は前記顔部とともに前記第3の回動をすることがよい。
顔部が頭部外面に形成されることで、実際の人や動物やこれらに模したキャラクター等に近いイメージとなり、頭部なしで回動動作するよりも人に好意的に受け入れられやすい。また、頭部内に顔部を動作させる機構を収容することができてよい。
(16)前記装置は胴部を有し、前記頭部は前記胴部の上部に配置されており、前記胴部は上部と下部に分割され、前記上部が前記頭部とともに前記下部に対して前記第3の回動をすることがよい。
これによって胴部の上部と下部との間に第3の回動をさせるための機構を設けることができる。また、これによって頭部には第1の回動と第2の回動に特化して機構を設けることができ、複雑な3つの軸の回りの回動を可能としているからでもある。
(17)前記胴部の前記上部は前記第3の回動をし、前記下部は設置面に設置されて動かないことがよい。
非移動型の装置となるが、非移動型であるにも関わらず3つの軸回りの動きを使用して細やかな動作ができるため、人(ユーザー)が飽きることなくコミュニケーションを取ることができる。特にユーザーが例えば、病人であったり要介護者であったりしてあまりその場所から移動しない人である場合によい。
【0019】
(18)前記装置は所定以上の回動を防止するための回動動作を規制する手段を有することがよい。
これによって必要以上の回動がされないこととなり、回動しすぎることによる装置の故障のおそれがなくなる。
「回動動作を規制する手段」は、例えば、相対的に回動する部材同士の所定の位置に形成された突起等の回動によって衝突する部材とすることがよい。
(19)回動動作時に検出手段に前記回動動作を規制する手段を検出させ、その検出情報に基づいて回動動作を実行させる駆動源の初期値を更新することがよい。
これによって、検出手段に所定の回動位置であることを検出させることができ、その検出信号に基づいて駆動源の初期位置の更新をし、装置の回動基準位置を正しく保つようにすることができる。
ここに「検出手段」は、リミットスイッチやマイクロスイッチや近接スイッチ、等の位置センサがよい。あるいは、モータの回転数を検出する回転センサ等がよい。「駆動源」は、例えば、ステッピングモータやサーボモータがよい。
(20)前記装置はスピーカを有し、前記スピーカは回動動作をしない部位に配設されていることがよい。
これによってスピーカからの音声出力方向が変化せず、装置から出力される音圧レベルが常に一定に保たれることとなる。
【0020】
(21)前記装置は前記コミュニケーションの内容がある条件を満たす場合に、所定の回動動作をすることがよい。
これによって、装置との間でのコミュニケーションの内容に応じたジェスチャーがされるためコミュニケーションを図る際の利便性が高まる。
例えば、音声によるコミュニケーションとしてユーザー(人)から所定の言葉が含まれ
た発話がされ、それを音声認識した場合に、それに対応した顔部の回動動作が行われるようにする。「所定の言葉」は、例えば、ユーザーの誕生日、ユーザーの子供の名前、装置の愛称、会社の名称、特定の宣伝用のキャッチフレーズ等である。「回動動作」は、例えば、第1の回動、第2の回動、第3の回動を単独で、あるいは任意に組み合わせて動作させることが可能である。
(22)前記顔部は表示部を備え、前記コミュニケーションによって前記表示部での表示態様を変化させるように表示させる表示機能を備えていることがよい。
これによって、装置との間でのコミュニケーションの内容に応じて顔部の表示が変化しコミュニケーションを図る際の利便性が高まる。
例えば、音声によるコミュニケーションとしてユーザー(人)から所定の言葉が含まれた発話がされ、それを音声認識した場合に、それに対応した顔部は表示部の表示動作が行われるようにする。「所定の言葉」「回動動作」については上記と同様である。
【0021】
(23)前記表示部には目の画像が表示されることがよい。
顔部に目の画像が表示されることで、一層「顔」という部分であることが目視する人に印象づけられコミュニケーションを取る際に人に好意的に受け入れられやすくなる。
(24)前記装置は人の位置を認識する位置認識機能を有し、前記位置認識機能で認識した方向に前記顔部を向ける機能を備えることがよい。
顔部がユーザーの位置方向を向くことで、実際に人と話しているような疑似感覚を得られることとなり、装置とコミュニケーションを取りたいという欲求もますこととなり、装置の利用価値が向上する。
(25)前記位置認識機能は、三角形の頂点に配置された3つのマイクロフォンと、音源から前記3つのマイクロフォンの各々までの音の到達時間の差に基づき、前記音源の位置を、前記三角形を含む平面に垂直な方向に沿って前記三角形を含む平面に投影した位置から前記平面の前記三角形で囲まれた領域の内側にある基準位置へ向かう音源方向を特定する特定部と、を備える音源方向特定機能であることがよい。
これによって3つのマイクロフォンで音源方向を特定することができる。そして、音源方向を特定することができれば、ユーザーが発話すればその方向に装置を向けさせることができるため、対話によるコミュニケーションをしているようにユーザーは感じることができる。
(26)人の声を音声認識するために取得するマイクロフォンが前記3つのマイクロフォン以外に設けられていることがよい。
人の声を音声認識するためのマイクロフォンを音源の位置を認識するためのマイクロフォンとは別に配設することで、確実に人と音声によるコミュニケーションを取ることが可能となる。
(27)前記コミュニケーションは音声によるものであることがよい。
音声でコミュニケーションを取る場合には自然と人は装置の顔部を向いて話すことになるため、顔部に上記のような回動動作をさせることは装置とコミュニケーションを取る際に人が積極的に対話をすることとなりコミュニケーションを推進させるために有効となる。
【0022】
上述した(1)から(25)に示した発明は、任意に組み合わせることができる。例えば、(1)に示した発明の全てまたは一部の構成に、(2)以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加える構成としてもよい。特に、(1)に示した発明に、(2)以降の少なくとも1つの発明の少なくとも一部の構成を加えた発明とするとよい。また、(1)から(25)に示した発明から任意の構成を抽出し、抽出された構成を組み合わせてもよい。本願の出願人は、これらの構成を含む発明について権利を取得する意思を有する。また「~の場合」「~のとき」という記載があったとしてもその場合やそのときに限られる構成として記載はしているものではない。これらの場合やときでない構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。また順番を伴った記載になっ
ている箇所もこの順番に限らない。一部の箇所を削除したり、順番を入れ替えた構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。
【発明の効果】
【0023】
装置の顔部に、あたかも顔をかしげるような動作をさせることができ、コミュニケーションにおいて装置のジェスチャーが人間らしくなって装置から人に伝えられる情報が人に好意的に受け入れられやすくなる。
本願の発明の効果はこれに限定されず、本明細書および図面等に開示される構成の部分から奏する効果についても開示されており、当該効果を奏する構成についても分割出願・補正等により権利取得する意思を有する。例えば本明細書において「~できる」と記載した箇所などは奏する効果を明示する記載であり、また「~できる」と記載がなくとも効果を示す部分が存在する。またこのような記載がなくとも当該構成よって把握される効果が存在する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明にかかる実施の形態のロボットの(a)は正面図(b)は背面図。
【
図2】同じ実施の形態のロボットの(a)は左側面図(b)は右側面図。
【
図3】同じ実施の形態のロボットの(a)は平面図(b)は底面図。
【
図4】同じ実施の形態のロボットの下方から見た斜視図。
【
図5】同じ実施の形態のロボットの
図1(a)のA-A線での縦断面図。
【
図6】同じ実施の形態のロボットの
図2(a)のB-B線での縦断面図。
【
図7】
図4においてボディを仮想線で示したボディ内部を説明する説明図。
【
図8】同じ実施の形態のロボットのボディの固定部側の斜視図。
【
図9】(a)は可動部の表側斜視図、(b)は裏側斜視図。
【
図10】同じ実施の形態のロボットのヘッド側の機構部を説明する説明図。
【
図11】同じ実施の形態のロボットのヘッド側の分解斜視図。
【
図12】(a)~(c)は同じ実施の形態のロボットの左右方向の首振り可能な配位を説明する説明図。
【
図13】(a)及び(b)は同じ実施の形態のロボットの前後方向の首振りを説明する説明図。
【
図14】同じ実施の形態のロボットのボディの固定部側から上方を見た裏面図。
【
図15】(a)は第3の回動の基部となる水平回動用ギアとベアリングセットの構造を説明する説明図、(b)は第1の回動の基部となる顔面部回動用ギアとベアリングセットの構造を説明する説明図。
【
図16】同じ実施の形態のロボットの電気的構成を説明するブロック図。
【
図17】(a)~(d)は同じ実施の形態のロボットのタッチパネル部に表示される顔画面のある表情の一例を捉えた説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下では発明の一実施の形態として、人と対話するコミュニケーションロボットであるロボット1について説明する。
図1~
図6に示すように、ロボット1は、プラスチック製のボディ2と、ボディ2上に配置されるボディ2と同素材のプラスチック製のヘッド3とを備えている。ボディ2とヘッド3によってロボット1の筐体が構成されている。
1.筐体としてのボディ2とボディ2周辺について
ボディ2は固定部2Aと可動部2Bに分かれている。まず、固定部2A側について説明する。
固定部2Aはロボット1が回動動作をする際に設置面に設置されて動かない部材となる。固定部2Aは下から上に向かって開いた碗状の外観に形成されている。固定部2Aは円形の底板部4と、底板部4周縁から立ち上がる壁部5とから構成されボディ2の筐体の一
部をなしている。固定部2Aの真円形状の上縁6は同一平面上に存在する。固定部2Aの左右一対となる対向する側面位置には後述するスピーカ装置56の音出口となるスリット7が形成されている。一方の(ここでは左方の)スリット7に隣接した上部位置には、電源スイッチ8とスピーカ装置56の音量を調整するためのアップスイッチ9とダウンスイッチ10がそれぞれ配設されている。
図2~
図4に示すように、固定部2Aの後方位置には内側に窪んだ凹部12が形成されており、その奥位置にはUSBのOTG(On-The-Go)用の端子13、DC12V用の電源用ジャック14、マイクロSDカード用ソケット(リーダー)15が配設されている。固定部2Aの底板部4裏面には滑り止め手段でありかつクッション性の向上のための手段であるパッド16が配設されている。
【0026】
次に可動部2B側について説明する。
ボディ2の上半身側となる可動部2Bは、ヘッド3を搭載してヘッド3とともに固定部2Aに対して
図3(a)に示す矢印のように水平方向に回動可能なボディ2の筐体の一部である。この水平方向の回動は
図4に示す第3の軸R回りの回動であり、これが第3の回動となる。可動部2Bは固定部2Aと組み合わされてロボット1の下部側機器が収容される筐体を構成し、その上部位置にヘッド3が配設されている。尚、固定部2Aと可動部2Bによってボディ2が構成されるが、固定部2Aを設置するためのベースとなる台と見れば可動部2Bのみをボディ(胴部)と考えてもよい。
図5、
図6、
図9(a)(b)及び
図14等に示すように、可動部2Bは外壁部21と外壁部21内側に重複状に形成された内壁部22から構成されたケースである。外壁部21と内壁部22は同等の厚みに構成されている。外壁部21上端と内壁部22上端は一体化されて(連結されて)可動部2Bの上端部23を形成している。
可動部2Bの外壁部21の下縁24は固定部2Aの上縁6と同じ曲率の真円形状のカーブで構成されている。下縁24端部は同一平面上に存在する。下縁24の内周寄りには下方に向かって延出されたリング状のガイドレール26が形成されている。ガイドレール26は、可動部2Bを固定部2A上に設置した際に固定部2A側に進出し、可動部2Bが固定部2A上で周回する際の案内をする。
外壁部21の前方左右寄り位置と後方中央位置の120度ずつずれた同じ高さの3箇所の位置には後述するユーザーの位置認識用のマイクロフォン42の集音用の透孔27が形成されている。
【0027】
外壁部21の前方には凹部28が形成されている。凹部28は可動部2Bの同一平面上にある上端部23端面に対して半円形状に切り欠かれたように形成されている。凹部28内周の曲率(カーブ)は後述するヘッド3に形成された顔面部62の外周曲率に略一致する。凹部28は内壁部22が球面で構成され下方側ほど外壁部21に対して離間するため下方側ほど幅広に構成され平面視では
図3(a)のように中央が広く三日月状に表れる。外壁部21の各透孔27位置の裏面位置にはマイクロフォン42のモジュール46を収容する差し込みスロット29が形成されている。
可動部2Bの外壁部21の外面と固定部2Aの壁部5の外面とは三次元方向に連続的なカーブ面を構成しており、可動部2Bを固定部2A上に設置した状態でボディ2の外側面は半球状の下部形状から連続したほぼ円筒状の上方形状を備えたデザインとされる。ボディ2は固定部2Aと可動部2Bの接続部分がもっとも大径に構成されて、その接続部分を境界に上下方向に窄まっている。
【0028】
図5、
図6に示すように、可動部2Bの内壁部22は外に凹となる球面に形成されている。この球面の曲率(カーブ)は後述するヘッド3の外面曲率に略一致する。内壁部22には内外に連通する通気孔としてのスリット30が形成されている。内壁部22に包囲された内部側の空間領域がヘッド3が収容される収容領域Sとされる。
図9(a)に示すように、内壁部22の最下部中央の位置には、可動部2Bを回動させるためのベースやヘッド3を支持するためのベース等となる接続部31が形成されている
。接続部31は種々の機構を連結させるための凹凸形状やネジ孔、給電や情報の送受信のためのケーブル用の透孔等から構成されている。接続部31の上面に後述するヘッドホルダー61を固定するための収容凹部32が形成されている。接続部31の裏面には後述するベアリングセット45の内ベアリング45aを連結するためのネジ孔33が形成されている。
内壁部22の裏面には後述するカウンターウェイト(釣り合い錘)55を取り付けるカウンターウェイト取り付け座48が形成されている。
【0029】
2.主としてボディ2内部の機構について
次に
図5~
図8、
図14等に基づいて下部側機器等ボディ2内部の機構について説明する。尚、図示において内部の配線については省略している。
図7はボディ2を取り外した固定部2A内の機構配置の状態である。ヒートシンクを兼ねたアルミ合金製のベースフレーム35は、固定部2Aに対して図示しないネジによって固定されている。ベースフレーム35は円板状の外形とされ、その外周には冷却用の多数のフィン36が一体形成されている。ベースフレーム35の表裏には複数の機器制御基板が配設されている。ベースフレーム35の裏面に接する位置にはコントローラMC、無線LAN装置37等が搭載された第1の基板38が配設されている。第1の基板38の下方にはバッテリー等を搭載した電源基板となる第2の基板39が配設されている。第1の基板38の裏面にはドップラーセンサ34が搭載されたモジュラー52が配設されている。ベースフレーム35上方のベースフレーム35に隣接した位置にはユーザーの位置認識のための音検知用の第3の基板40が配設されている。無線LAN装置37はアンテナ部分の感度を向上させるためベースフレーム35のフィン36が切り欠かれた位置から側方外方に突出させられている。ベースフレーム35側方には端子13、電源用ジャック14、マイクロSDカード用ソケット15等の第4の基板41が配設されている。位置認識用マイクロフォン42とそのモジュール46は差し込みスロット29内に収容されている。ベースフレーム35の裏面には第1のモータ43が配設されている。第1のモータ43はステッピングモータであって正逆回転が可能となっている。
図8に示すように、第1のモータ43のモータ軸43aはベースフレーム35上方に突出させられている。モータ軸43a先端にはピニオン44が固着されている。
【0030】
ベースフレーム35上にはプラスチック製のベアリングセット45が配設されている。
図5、
図6及び
図15(a)に示すように、ベアリングセット45は内ベアリング45aと外ベアリング45bとから構成されている。内ベアリング45aは外ベアリング45bの内側に配置され、両者は内周面と外周面の関係で相対的に滑らかに回動可能とされている(より滑らかさを与えるためグリースが両者間に塗布されている)。外ベアリング45bはベースフレーム35に対して図示しないネジによって回動不能に設置されている。ベアリングセット45にはプラスチック製の水平回動用ギア47が冠着されている。水平回動用ギア47は内ベアリング45aとのみネジ49を介して回動軸が同軸となるように連結されている。つまり、内ベアリング45aと水平回動用ギア47とは一体的に同軸で回動し、かつベースフレーム35上に載置されてベースフレーム35に対しては回動自在とされている。水平回動用ギア47は第1のモータ43のモータ軸43aのピニオン44と噛合されている。
内ベアリング45aは可動部2Bの接続部31の裏面(下面)に固着されている。内ベアリング45aは
図9(b)に示す可動部2B側のネジ孔33に対して
図8に図示されるネジ49によって連結されている。内ベアリング45aの回動中心は可動部2Bの中心位置と一致する。つまり、可動部2Bと内ベアリング45aとは回動軸が同軸となるように連結されている。水平回動用ギア47の回動軸心方向は、
図4に示す第3の軸Rの軸心方向と一致する。
このような構成において、第1のモータ43が駆動されると、その回動力はピニオン44から水平回動用ギア47に伝達され、次いで水平回動用ギア47と連結された内ベアリ
ング45aに伝達される。更に、回動力は内ベアリング45aが連結固定された可動部2Bに伝達される。このような駆動伝達機構によってロボット1は固定部2Aに対して可動部2Bが水平方向に回動することとなる。その際には同径となる可動部2Bの下縁24が固定部2Aの上縁6上に載置され、一種のモノレールとしてガイドレール26によって脱落が防止された状態で左右方向に自在に周回する。
【0031】
図8に示すように、ベースフレーム35上であって水平回動用ギア47の外側位置には上方に向かって第1の係合突起50が形成されている。
図9(b)に示すように、可動部2Bの裏面であって回動中心から第1の係合突起50と等距離となる位置には第2の係合突起51が形成されている。可動部2Bが固定部2A上に載置され、かつデフォルト位置(つまり、固定部2Aの前方側に可動部2Bの凹部28が配置された状態)において第1の係合突起50と第2の係合突起51とは180度位相がずれた位置(つまり、回動中心をはさんだ対向位置)に配置される。そして、可動部2Bを180度近く回動させると第1の係合突起50と第2の係合突起51が衝突してそれ以上の回動が防止される。
また、
図8に示すように、ベースフレーム35上であって第1の係合突起50の外側位置であって水平回動用ギア47の回動中心から等距離となる互いに隣接した位置には2つのセンサ用突起53が形成されている。
図14に示すように、第3の基板40の裏面であって回動中心から突起53と等距離となる位置には回動位置検出手段としての1つのマイクロスイッチ54が配設されている。マイクロスイッチ54は突起53から180度位相がずれた位置(つまり、回動中心をはさんだ対向位置)に配置される。可動部2Bとともにマイクロスイッチ54が左方あるいは右方に約180度(実際には2つの突起53間は10度離れているので約175度)回動してドグが突起53を検出することで第1のモータ43の左右方向の回動初期位置の値を更新することができる。この更新された初期位置の値に基づいてデフォルト位置を更新することができる。
図5に示すように、カウンターウェイト取り付け座48には角形ワッシャーからなるカウンターウェイト55が配設されている。固定部2Aの底板部4の上面には複数の(ここでは2つの)スピーカ装置56が配設されている。
【0032】
『主としてボディ2に関する効果』
(1)ボディ2は固定部2Aによって設置面に設置されており、設置された位置から動くことはない。しかし、可動部2を含んで可動部2から上方側が3つの軸方向回りに回動できるため、その場所に居ながらにして多くのジェスチャーを実行することができ、非移動型のロボットであるにも関わらず細やかな動きができるため、ユーザーが飽きることなく対話をすることができる。特にユーザーが病人であったり要介護者であったりしてあまりその場所から移動しない人である場合によい。
(2)スピーカ装置56からの音声が固定されているボディ2の固定部2Aのスリット7から出力されるため、ロボット1が様々に動作しても常に一定の方向からの音声がユーザーに伝えられるため、急に聞きづらくなったり音が遠くなったり逆に大きくなりすぎたりといった不具合がない。また、左右対向する両側のスリット7から音声が出力されるため、音出口が1つの場合に比べて広範囲に音を拡散でき、どの方向からでも音が聞き取りやすくなる。
(3)端子13、電源用ジャック14、マイクロSDカード用ソケット(リーダー)15のような筐体外側から取り付ける必要のある部材が周囲から包囲された凹部12内に配置されることとなり、これらに不用意に接触がされることがなくなる。
(4)内壁部22にスリット30が形成され、主としてボディ2内の機器からの熱を逃がすことができる(ヘッド3からの熱もヘッド3下方の穴から逃がすことができる)。スリット30はヘッド3を取り付けると外部からは見えなくなるため、スリット30があることによる外観を損なうことがなく、ボディ2外周にこのような発熱のための通気孔を配置する必要がないため通気孔を配慮してデザインする必要がなく設計上有利である。
【0033】
(5)ユーザーの位置認識用のマイクロフォン42のための透孔27がヘッド3を搭載してヘッド3とともに水平方向に回動する可動部2Bに形成されているため(つまりマイクロフォン42が可動部2Bに収納されているため)、ユーザーの発話に基づいてマイクロフォン42から取得した音声に基づいてユーザーの位置を認識した場合に可動部2Bを水平方向に回動させてその方向にヘッド3を向けることが可能となっている。
(6)回動しすぎないように回動防止手段を設けているため、可動部2Bが回動しすぎることがなくなる。
(7)マイクロスイッチ54によって第1のモータ43の左右回転方向の回動初期位置の値を更新することができる。これによって、例えば時々マイクロスイッチ54に接触するような制御をさせることでデフォルト位置のずれを修正することができる。
(8)
図5に示すように、カウンターウェイト55は前方位置に配設されている。この位置は重量バランスを考慮した場合に回動中心をはさんで後方側に重量がある部材が集中しているために設けられている。このようにカウンターウェイト55を配置したため、可動部2Bが水平回動する際にがたつくことなく滑らかに回動することとなる。
(9)凹部28上面は下方側ほど幅広に構成され平面視では下側の中央寄りが広く構成されている。そのため、ユーザーはロボット1を持って移動させる際に、自然とこの凹部28に指を添えるように仕向けられることとなる。ユーザーはこの幅広部分を利用してボディ2を挟んで持ち上げることができるため便利である。
【0034】
3.筐体としてのヘッド3とヘッド3周辺について
ヘッド3は(収容領域Sから外に露出される部分が)球体の一部が1つの平面でカットされた残余である球欠状の形状に構成されている。カット状に形成された前面部分は円形形状に現れロボット1の顔面部62を構成する。ヘッド3はヘッドホルダー61によって支持され可動部2B上に回動可能に立設されている。ヘッド3は顔面部62の面方向と平行となる略中央位置、つまり球体の直径付近で前後に分割され、それぞれ前側ケース3Aと後側ケース3Bとされている。ヘッド3は前側ケース3A側によってヘッドホルダー61に支持され、上部側機器はカウンターウェイト55を除いてすべて前側ケース3Aに配設されている。後側ケース3Bは前側ケース3Aに対してネジ60によって着脱可能に固着されている。
【0035】
まず、前側ケース3A側について説明する。
図11に示すように、前側ケース3Aは前面に顔面部62を構成するための平面部63を備えている。平面部63の中央には長方形形状の開口部64が形成されている。開口部64上方位置にはカメラ用透孔65が形成されている。開口部64下方位置にはマイクロフォン用の音取得口となる小透孔66が形成されている。開口部64内には液晶ディスプレイ(LCD)からなる表示部としてのタッチパネル部67が配設されている。平面部63には薄い円板形状の透明なカバープレート68が配設されている。タッチパネル部67上にカバープレート68が配設された状態でヘッド3前面に顔面部62が構成される。カバープレート68のタッチパネル部67と重複する部分以外は(つまりタッチパネル部67周囲)はスモーク状の不透明なパネルであり、タッチパネル部67背景とともに顔面部62全体が統一された濃色の背景となっている(但し、図示では塗りつぶさず描写している)。カバープレート68上部のカメラ用透孔65位置に対応する位置には透明パネル71が配設されている。カバープレート68下部位置には平面部63に形成された小透孔66に対応するマイクロフォン用の音取得口となる小透孔72が形成されている。
前側ケース3Aの平面部63と面一となる上方左右斜め位置にはケース外方に膨出した第1の収容部73と第2の収容部74が形成されている。第1の収容部73内には照度センサ77が収容されており、第2の収容部74内には高輝度白色LED78が収容されている。第1の収容部73と2の収容部74はヘッド3を正面側から目視した際にあたかも「耳」や「角」のように理解される部分でもある。
【0036】
次に、後側ケース3B側について説明する。
図7、
図11~
図13等に示すように、半球状の外観に構成された後側ケース3Bは下側に大きな切り欠き79が形成されている。ヘッドホルダー61は切り欠き79から下方に突出させられている(切り欠き79を通過して可動部2B上に立設されている)。
後側ケース3Bの裏面上部位置にはカウンターウェイト55を取り付けるカウンターウェイト取り付け座80が形成されている。カウンターウェイト取り付け座80はヘッドホルダー61と取り付けられたカウンターウェイト55と干渉しない位置に形成されている。
このようなヘッド3は、可動部2Bの収容領域Sに収容される。収容状態において外壁部21の上端部23位置がちょうど球としてのヘッド3の直径位置に配置される。収容領域Sを構成する内壁部22とヘッド3の曲率は略一致しており、かつ両者は近接して両者間には若干の隙間が形成される。
【0037】
4.主としてヘッド3内部の機構について
次に
図5、
図6、
図10~
図13等に基づいてヘッド3内部の機構について説明する。尚、図示においては内部の配線は省略している。
まず、
図4、
図12(b)に示す第2の軸Q回りの回動に関する機構から説明する。第2の軸Q回りの回動は
図13の実線と仮想線のようにヘッド3の前後方向への首振り回動動作となる。第2の軸Q回りの回動は第2の回動となる。
ヘッド3を支持するヘッドホルダー61は直方体形状のベース部61aと、ベース部61aから上方に延出された長尺の脚部61bと、脚部61b上端に形成された左右一対の平行に配置された軸受けプレート61cとから構成されている。ヘッドホルダー61のベース部61aはボディ2(可動部2B)の収容凹部32内に配置されており、ヘッドホルダー61は可動部2裏面側から図示しないネジによってベース部61aを介して可動部2Bに対して固着されている。軸受けプレート61cの前方寄りには軸受け孔82が形成されている。
ヘッドホルダー61の前方にはベースフレーム83が配設されている。
ベースフレーム83は略円形となる円板状の本体83aと、本体83aから後方に延出される一対のアーム83bとを備えている。
図6に示すように、それぞれのアーム83bは後端寄り外側に軸部84が突設形成されている。
図6に示すようにベースフレーム83は左右のアーム83bの軸部84が軸受けプレート61cの軸受け孔82に嵌挿されることでヘッドホルダー61に回動可能に支持されている。
【0038】
一方、装置正面側から見て右方(
図6では左方)に配置されたヘッドホルダー61の軸受けプレート61cの内側には第2のモータ85が配設されている。第2のモータ85はステッピングモータであって正逆回転が可能となっている。
図10に示すように、第2のモータ85のモータ軸85aは軸受けプレート61c外側に突出させられている。モータ軸85a先端にはピニオン86が固着されている。
第2のモータ85が取り付けられた軸受けプレート61cの外面にはカム装置87が配設されている。カム装置87は扇型歯車88を備えている。扇型歯車88はピニオン86に噛合されている。
図6及び
図10に示すように、カム装置87はアーム83bの軸部84に対してネジ105によって固着されている。つまり、ネジ105はカム軸の軸心方向であって、アーム83bの軸部84と一致する。この方向は第2の軸Qの軸心方向となる。
このような構成では、第2のモータ85が駆動されるとその回動力はピニオン86から扇型歯車88に伝達され、カム軸(ネジ105)を回動させる。ネジ105と軸部84とは連れ回りし、軸部84の回動に伴ってベースフレーム83は回動(狭い範囲での回動であるため揺動でもある)する。
【0039】
ここで、カム装置87のネジ105の下方位置には2つの係合突起90が形成されてい
る。そして、カム装置87の揺動に伴ってこの係合突起90と干渉する位置には回動位置検出手段としての1つのマイクロスイッチ91が配設されている。2つの係合突起90はカム装置87の揺動量に応じた最大と最小の振り幅位置に対応して配置されている。係合突起90がカム装置87の揺動(つまりベースフレーム83の揺動)に伴って移動する際にマイクロスイッチ91のドグがその位置を検出することでベースフレーム83が揺動しすぎないように保護されている。また、時々第2のモータ85の駆動制御をしてマイクロスイッチ91に係合突起90を検出させることで第2のモータ85の上下方向の回動初期位置のデフォルト位置を更新することができる。
【0040】
次に、
図4、
図13に示す第1の軸P回りの回動に関する機構について説明する。第1の軸P回りの回動は時計回り方向への首振り回動であって第1の回動となる。第1の軸Pは顔面部62中心を通過する。第1の軸P回りの回動は、ヘッド3を
図12(a)の向かって最も左に回動した状態と
図12(c)の向かって最も右に回動した状態の間を揺動する。ヘッド3は回動していない
図12(b)からそれぞれ等角度で左右に(実施の形態では15度ずつ)揺動する。尚、第3のモータ92の制御によってもっと大きく揺動させることも可能である。
ベースフレーム83の後面には第3のモータ92が配設されている。第3のモータ92はステッピングモータであって正逆回転が可能となっている。
図5、
図10等に示すように、第3のモータ92のモータ軸92aはベースフレーム83前方に突出させられている。モータ軸92a先端にはピニオン97が固着されている。
図10及び
図11に示すように、ベースフレーム83の前方には、ベースフレーム83側から順にベアリングセット93、顔面部回動用ギア94、ケースホルダー95、第5の基板96等が重複状に配設されている。
図6に示すように、ケースホルダー95はネジ100によって前側ケース3Aに連結固定されている。ケースホルダー95上部位置には顔認識用カメラ98が配設されている。顔認識用カメラ98のレンズ位置はカメラ用透孔65と一致する。
第5の基板96は対話用マイクロフォン99が搭載され、タッチパネル部67、照度センサ77、顔認識用カメラ98等の制御を行う。第5の基板96は前側ケース3Aに装着されている。
【0041】
図5、
図6及び
図15(b)に基づいて、第3のモータ92からの駆動をベアリングセット93、顔面部回動用ギア94を介してケースホルダー95に伝達する駆動伝達機構について説明する。
ベースフレーム86前面にはプラスチック製のベアリングセット93が配設されている。ベアリングセット93は内ベアリング93aと外ベアリング93bとから構成されている。内ベアリング93aは外ベアリング93bの内側に配置され、両者は内周面と外周面の関係で相対的に滑らかに回動可能とされている(より滑らかさを与えるためグリースが両者間に塗布されている)。外ベアリング93bはベースフレーム86に対して固着されている。ベアリングセット93前面にはプラスチック製の顔面部回動用ギア94が冠着されている。
顔面部回動用ギア94は内ベアリング93a及びケースホルダー95とネジ98を介して連結されている。つまり、内ベアリング93aと顔面部回動用ギア94とは一体的に同軸で回動し、かつベースフレーム35に対しては外ベアリング93bを介して回動自在とされている。顔面部回動用ギア94は第3のモータ92のモータ軸92aのピニオン97と噛合されている。
このような構成において、第3のモータ92が駆動されると、その回動力はピニオン44から顔面部回動用ギア94に伝達される。顔面部回動用ギア94は内ベアリング93aとケースホルダー95と一体的に連結されているため、この回動力はケースホルダー95に伝達される。ケースホルダー95はネジ106によって前側ケース3Aに連結固定されているため、このケースホルダー95の顔面部62の回動(時計回り方向の左右の回動)
はヘッド3の首をあたかもかしげるような回動動作となる(第1の回動)。
【0042】
ここで、
図6、
図11に示すように、ベースフレーム83前面であって上部左右位置には2つの第1の係合突起101が形成されている。一方、ベースフレーム83前面に対向するケースホルダー95の後面であって2つの第1の係合突起101の間には1つの第2の係合突起102が形成されている。固定されているベースフレーム83に対してケースホルダー95は時計回り方向に回動するが、第2の係合突起102は第1の係合突起101の内側に衝突してそれ以上の回動が防止される。つまり、ベースフレーム83は2つの第1の係合突起101によって規制された狭い範囲の(本実施の形態では30度の角度とされている)間を揺動する。
また、
図5及び
図10等に示すように、ベースフレーム83上部には回動位置検出手段としての1つのマイクロスイッチ103が配設されている。
図5に示すように、前側ケース3Aの内部における上部位置には左右一対の補強リブを兼ねた係合片104が形成されている(
図5は断面図であるので一方の係合片104のみが図示される)。
ヘッド3とともに(ケースホルダー95とともに)マイクロスイッチ103が時計回りに左方あるいは右方に回動し、ドグが係合片104を検出することで第3のモータ92の時計回り方向の回動初期(デフォルト)位置の値を更新することができる。また、ドグが係合片104を検出することでそれ以上の回動が防止される。この更新された初期位置の値に基づいてデフォルト位置を更新することができる。係合片104の間隔は第1の係合突起101よりもわずかに狭く第1の係合突起101と第2の係合突起102が衝突するよりもマイクロスイッチ103が先に係合片104を検出するため、通常の使用において外力が作用しない限りは第1の係合突起101と第2の係合突起102の衝突はない。
【0043】
『主としてヘッド3に関する効果』
(1)可動部2Bに対してヘッド3はお辞儀をするような、あるいはうなずくような前後方向の揺動(第2の回動)と時計回り方向への首をかしげる首振り回動(第1の回動)を行うことが同時、あるいは別個に行うことができ、ロボット1は水平方向の回動(第3の回動)とあわせて3つの回動動作を実行することができる。
(2)前後方向の揺動(第2の回動)と時計回り方向への首振り回動(第1の回動)はそれぞれ第2のモータ85や第3のモータ92を制御することで実行でき、更に上記のように第3の回動も第1のモータ43を制御できるため、3つの交差する軸回りの回動を自由に制御することができる。
(3)第1の軸Pは顔面部62中心を通過し、この第1の軸P回りの第1の回動として顔面部62は自転することとなる。この際に顔面部62は真円形状であり顔面部62中心で回動するために、顔面部62は常に円形の外形がぶれることなく回動できることとなり顔面部62を目視しやすくなる。
(3)ヘッド3は固定部2Aに対する可動部2Bの回動(第3の回動)とは機構的に無関係に第1の回動と第2の回動を実行できるため(ヘッド3独自に回動動作をさせることができるため)3軸が回動できる機構であっても機構的に複雑化しない。
また、
図4に示すように第1の軸Pと第2の軸Qとは直交する関係にあり、かつ同一平面上に存在する。同じく第3の軸Rと第2の軸Qとは直交する関係にあり、かつ同一平面上に存在する。また、第3の軸Rは第1の軸P方向に対して直交する。このように3軸が直交する関係に配置されているため、後述するコントローラMCの第1~第3のモータ43、85、92の制御においてロボット1の姿勢と制御量の関係を把握しやすくプログラムの設計上有利である。
【0044】
(4)第1の回動も第2の回動もいずれも回動しすぎないように回動防止手段を設けているため、ヘッド3が回動しすぎることがなくなる。
(5)ヘッド3は収容領域Sに収容された際に、収容領域Sを構成する内壁部22とヘッド3の外周面の曲率が略一致しかつ近接しているため、どのように回動させても両者の間
隔が大きく空いてしまうことがないため、ほこりや異物が侵入しにくくなり、それらを原因とする不具合が生じにくい。
(6)ヘッド3は収容領域S内に球の直径の下半分が収まるように収容されている。そのため、ロボット1全体として上下寸法が短くなって設置において安定化する。一方、ヘッド3を収容する可動部2Bの前面には半円形状に窪んだ凹部28が形成されており、ヘッド3前面の顔面部62はヘッド3が許容範囲内でどのように回動しても可動部2Bの外壁部21に隠されることがない。そのため、ユーザーは常にロボット1の顔面部62を目視して対話できるため、対話において顔が見えない不自然さや違和感を感じることがない。また、顔面部62は円形に構成されており、凹部28はその円形の曲率に対応したカーブで構成されているため、ヘッド3が第1の回動をした際にも顔面部62が可動部2Bの外壁部21に隠されてしまうことがない。
(7)ヘッド3の顔面部62は顔面部62全体が統一された濃色の背景となっており、その他の筐体部分が相対的に薄い色である白色で統一されているのに対して異なる濃い色で彩色されることとなる。つまり、顔面部62とその外側との境界で異なる色で分けられていることとなる。そのため、ロボット1を目視した際にユーザーの視線は自然と色の異なる顔面部62に導かれることとなり、ユーザーを対話(コミュニケーション)に導きやすい雰囲気を与えている。
【0045】
(8)顔面部62は円形であるためヘッド3が第1の回動をしても回動していることがわかりにくいが、第1の収容部73と2の収容部74がヘッド3から突起しているため、ヘッド3が回動していることがわかるため、この突起部分を見ることで回動動作をしていることを確認することができる。
(9)ヘッド3が第1の回動と第2の回動をしてもヘッド3の回動範囲が規制されているためヘッド3が回りすぎることがなく、ヘッド3の下方位置に形成した切り欠き79が可動部2Bの外壁部21や凹部28の上方に露出してしまうことがない。
(10)マイクロスイッチ91、103によって第2のモータ85や第3のモータ92の回動初期(デフォルト)位置の値を更新することができる。これによって、例えば時々マイクロスイッチ91、103に接触するような制御をさせることでデフォルト位置のずれを修正することができる。
(11)ヘッド3は前側ケース3Aに上部側機器が配設されるため、前側に重量が偏ってしまうが、後側ケース3Bの裏面上部位置にカウンターウェイト55を取り付けるようにしているため、重量の偏りがなくヘッド3の回動時にモータに負荷がかかりにくい。
(12)後側ケース3Bは着脱可能であり、上部側機器は前側ケース3Aに配設されているためヘッド3から後側ケース3Bのみを取り外すことで内部を露出させることができるので上部側機器の点検が容易である。
(13)
図5に示すように、カウンターウェイト55はヘッド3の後方位置に配設されている。この位置は第2の回動をする際の重量バランスを考慮したものであり回動中心をはさんで前方側に重量のある部材が集中しているために設けられている。このようにカウンターウェイト55を配置したため、ヘッド3が前後方向に回動する際に第2のモータ85にかかる負荷が軽減される。
【0046】
5.ロボット1の電気的構成について
次に、
図16のブロック図に基づいて、実施の形態1のロボット1の電気的構成について説明する。
制御手段としてのコントローラMCには上記の第1~第3のモータ43、85、92、ドップラーセンサ34、位置認識用マイクロフォン42、対話用マイクロフォン99、タッチパネル部67、照度センサ77、高輝度白色LED78、顔認識用カメラ98、スピーカ装置56、無線LAN装置37、端子13、マイクロSDカード用ソケット15、マイクロスイッチ54、91、103等がそれぞれ接続されている。
【0047】
コントローラMCは周知のCPUやROM及びRAM、SSD等の記憶手段としてのメモリ、バス、リアルタイムクロック(RTC)等から構成されている。コントローラMCのROM内にはロボット1の各種機能を実行させるための各種プログラムが記憶されている。
各種プログラムとしては、例えばマイクロフォン99とスピーカ装置56を介したユーザーとの対話を制御するための対話プログラム、顔認識用カメラ98を使用した顔認識に関する顔認識プログラム、タッチパネル部67や第1~第3のモータ43、85、92を制御してロボット1との対話中におけるロボット1の表情や動作を変化させるための表示変動・ジェスチャープログラム、ユーザーとの対話やタッチパネル部67の操作に基づいて異なる画面や画像をタッチパネル部67上に表示させる画面表示プログラム、位置認識用マイクロフォン42から取得した電気信号に基づいて音源方向を算出する音源位置算出プログラム、他のコンピュータやスマートフォンとの間でロボット1側で取得した例えばカメラ画像やスマートフォン等からのeメール等を処理するデータ送受信プログラム、ユーザーが不在の際の見守りのための留守設定時プログラム、GUI機能・ネット接続機能、プロセス管理等の操作・運用・運転のためのOS等が記憶されている。RAM内には対話や顔認識における入出力データ、算出値等が一旦記憶される。各プログラムは他のプログラムと連携してあるいは独立してマルチタスクで対話、顔認識、ジェスチャー等の機能が実現される。
【0048】
タッチパネル部67はその表面に接触することで入力する入力操作機能を有する。タッチパネル部67は、複数の異なる画面を選択的に表示することが可能であり、後述する対話モードにおいては、コントローラMCは例えば
図17(a)~(d)のような目オブジェクトが表示される顔画面107を表示させることができる。目オブジェクトは複数用意されており、コントローラMCは対話内容に応じて異なる顔画面107やその他の画面表示をさせるよう制御する。
照度センサ77は、ロボット1の設置された環境の明るさを認識する。輝度白色LED78は照度センサ77の検出した数値に基づいて顔認識用カメラ98による撮影に光度が足りない場合に自動的に点灯される。
対話用マイクロフォン99は、ユーザーとの対話においてユーザーの発話を取得する音声入力手段である。
マイクロSDカード用ソケット15は挿入されるmicroSDカードのデータの読み取り及び書き換えをする。
無線LAN装置37は、Wi-Fi対応機器であるロボット1をインターネットに無線接続させるための機器である。本実施の形態ではIEEE802.11bの国際標準規格とされている。
ドップラーセンサ34は、マイクロ波を使用したセンサであって、マイクロ波を発射し、反射してきたマイクロ波の周波数と、発射した電波の周波数とを比較し、物体(人)が動いているかどうかを検出する。ドップラー効果により物体(人)が動いている場合の反射波の周波数が変化することを利用するものである。例えば、ユーザー不在時の不審者の有無等のように、ロボット1の周囲の異常を検知するために使用される装置である。
また、マイクロスイッチ54、91、103からの検出信号に基づいてコントローラMCは第1~第3のモータ43、85、92を制御し、これらに所定のパルス電力を与えることでヘッド3や固定部2Aに対する可動部2Bの初期位置を更新させる。
【0049】
位置認識用マイクロフォン42は、三角形の頂点に配置される3つのマイクロフォン12を同時に使用することで、これらの間での音の到達時間の差によって音源方向を特定することができる方向検知手段である。位置認識用マイクロフォン42による音源方向を特定する原理について概要を説明する。
原理的に複数のマイクロフォンを使用し、音源(ここではユーザーの発話)からの音の到達時間差Tdiffに基づいて音源方向を特定することができる。音は平面波とみなす。2つのマイクロフォンでも可能であるが、同一直線上にない3つのマイクロフォンを使用す
ることがより正確である。本実施の形態では3つの正三角形かつ水平面に配置された位置認識用マイクロフォン42を使用する。音源方向の計算上このような配置がよい。本実施の形態ではコントローラMCは各マイクロフォン42の取得した電気信号の位相差から到達時間差Tdiffを求める。コントローラMCは到達時間差Tdiffに基づいて基準方向に対する音源角度を算出する。コントローラMCは一定の繰り返しタイミングで算出ルーチンを行う。
このように音源方向が確定すると、コントローラMCは第1のモータ43を駆動させてその音源方向に顔面62を向けるように制御する。
【0050】
また、コントローラMCは対話プログラムを実行することによってユーザーとの対話によるコミュニケーションを制御する。
ここで、対話プログラムは、
1)マイクロフォン12から取得したユーザーの発話データ(音声データ)をクラウドサーバーにリクエスト発行し、サーバー側の音声認識エンジンを使用してテキスト化したユーザーの発話データ(文字列データ)をレスポンスするためのサブプログラム
2)ユーザーの発話(文字列データ)に基づいてビルトインシナリオの対話を実行させるビルトインシナリオサブプログラム
3)ユーザーの発話がビルトインシナリオに対応しない場合に発話データ(文字列データ)を再びクラウドサーバーにリクエスト発行し、対話API(アプリケーションプログラミングインタフェース)を利用して対話エンジンにロボット1の返答データ(文字列データ)を作成させる発話データ転送サブプログラム
4)レスポンスされた返答データ(文字列データ)を表示部としてのタッチパネル部67に表示させる文字列データ表示サブプログラム
5)レスポンスされた返答データ(文字列データ)を音声合成エンジンによって音声データに変換しスピーカ装置56からロボット1側の発話として音声出力させるための音声データサブプログラム
6)ユーザー側文字列データやロボット1側文字列データに基づいてタッチパネル部67上の表示態様やロボット1の動作を変動させる表示態様・動作変動サブプログラム、等を含む。
【0051】
6.対話時のロボット1のジェスチャー
コントローラMCは、以下のような様々なタイミングで第1~第3のモータ43、85、92を制御してロボット1の姿勢を変えるようにする。
このロボット1のジェスチャーはタッチパネル部67(顔面部62)における表示と組み合わせるとよい。対話によって顔面部62の例えば顔画面107の目の形状が変化して表示されることに応じて上記のようなジェスチャーを組み合わせるとよい。顔面部62の表示のない状態で上記のようなジェスチャーだけをさせてもよい。例えば起動時や終了時では顔面部62の表示はされていないためである。
以下は一例である。
【0052】
1)起動時:ヘッド3の顔面部62が正面を向いていない場合やヘッド3が傾いている場合等に第1~第3のモータ43、85、92を制御して正面のデフォルト位置(
図1~
図3のような状態)に戻す。
2)画面タッチ時:1)と同様(顔認証における顔認識用カメラ10をユーザーと正対させるため)
3)「ねぇユピ坊」というトリガーの発話発生時:1)と同様(顔認証における顔認識用カメラ10をユーザーと正対させるため)
4)音声方向検出時:第1のモータ43を制御してヘッド3の顔面部6をその方向に向ける。
5)特別な感情発話として、例えばうれしい場合:ヘッド3を顔面部62をユーザーに向
けたまま左右方向(時計回りと反時計回り)に首をかしげるように回動するように第3のモータ92を制御する。顔面部62には対応する顔画面107が表示される。
6)特別な発話として、例えば悲しい場合:ヘッド3をうなずいたまましばらく静止させ、その後デフォルト位置に戻すように第2のモータ85を制御する。
7)感情は発話として、例えば「おはよう」「こんにちは」「こんばんわ」「ハロー」のような挨拶用の発話発生時:ヘッド3をお辞儀させるように第2のモータ85を制御する。顔面部62には対応する顔画面107が表示される。
8)特別ではない感情発話として、例えば「そうか」「わかった」「そうだね」「うん!」のような簡単な肯定的な意思疎通の用語の発話発生時:ヘッド3をうなずかせるように第2のモータ85を制御する。顔面部62には対応する顔画面107が表示される。6~8)では第2のモータ85の速度や時間を変更して悲しさとお辞儀とうなずきが異なるようにするとよい。
9)特別ではない感情発話として、例えば「いいえ」「できない」「だめだよ」のような簡単な否定的な意思疎通の用語の発話発生時:可動部3を何度か左右に回動させるように第1のモータ43を制御する。顔面部62には対応する顔画面107が表示される。
10)特別な感情発話や特別ではない感情発話と様々な対話に応じて、様々なジェスチャー、例えばヘッド3をなんどか左右方向(時計回りと反時計回り)や前後に回動させたり、それと可動部3全体を左右に回動させたり、大きく回動させたり小さくうなずくように回動させたりを第1~第3のモータ43、85、92を組み合わせて制御する。
【0053】
『6.対話時のロボット1のジェスチャー における効果』
(1)ロボット1にこれらのようなジェスチャーをさせることで、ユーザーはロボット1に親しみを覚えることとなり、ロボット1との対話を楽しむと同時にロボット1と積極的に触れ合う楽しみを覚えることになる。また、第1~第3のモータ43、85、92を組み合わせて制御することでロボット1の動作は様々な仕草を表現できることとなって特に対話の内容に応じて様々なジェスチャーを用意することができる。
(2)顔面部62は真円形状であり顔面部62中心で回動(第1の回動)をするため、顔面部62は常に円形の外形のままであるが、例えば顔画面107は第1の回動によって回転するように見える。そのためあたかも顔面部62は動かずに顔画面107のみが顔面部62内で動くような印象をユーザーに与えることとなって、対話する楽しみが増すこととなる。また、顔面部62外形に沿って凹部28のカーブが形成されているためどのような回動位置であっても顔面部62を可動部2Bの外壁部21が邪魔をすることがない。
【0054】
<実施の形態の変形例>
(1)ヘッド3の形状や顔面部62の形状は上記に限定されるものではない。上記では顔面部62は平面的なタッチパネル部67に画像が表示される「画面」状のものであったが、画像ではなく実際に三次元的な目や鼻や耳のある顔であってもよい。顔面部62形状は上記のように円形がよいが、円形でなくともよい。照度センサ77や高輝度白色LED78を顔面部62内に配置するようにしてもよい。
(2)ボディ2を構成する固定部2Aと可動部2Bの筐体形状については上記は一例であり、他の形状で構成することも可能である。
(3)第1~第3モータ23~25はステッピングモータ以外の他の駆動手段を使用するようにしてもよい。他の駆動手段とは、例えばサーボモータや油圧シリンダ、空圧シリンダ等である。
(4)第1の収容部73と第2の収容部74はヘッド3を正面側から目視した際にあたかも「耳」や「角」のように理解されるが、例えば顔面部62を円形ではなく円形部分の一部に斜め上方に突出する部分を設け、その部分を「耳」としてあたかも顔面部62の一部として同一面上に構成するようにしてもよい。つまり、顔面部62と「耳」を分けなくともよい。
(5)第1の収容部73と第2の収容部74に収容される照度センサ77や高輝度白色L
ED78をヘッド3の顔面部62内、あるいはヘッド3以外の別位置に配置し、ヘッド3にこの第1の収容部73と第2の収容部74のような突部を設けずにかえって顔面部62が回動していることをわかりにくくしてもよい。
(6)3軸は直交していたが、直交していなくともよい。第1の軸Pと第2の軸Qとは同一平面上に存在していなくともよい。第3の軸Rと第2の軸Qとは同一平面上に存在していなくともよい。
(7)前記顔面部62はヘッド3と第1の回動をするが、その際に顔画面107に表示される目を回動させないような制御も可能である。つまり、コントローラMCは第3のモータ92を制御する際に、その回動量に応じて顔画面107の表示を傾けて常に目が水平に配置されるように制御するようにしてもよい。これによって、顔面部62が回動しても顔面部62の構成要素である「目」自体は基本位置のままで表示される。これによってヘッド3だけが独立して回転しているような不思議な印象をあたえることができる。
(8)3つ以外の数の複数のマイクロフォンを使って音源方向を求めるようにしてもよい。
(9)マイクロスイッチ54、91、103以外の検出手段として、例えばリミットスイッチや近接スイッチ等を用いてもよい。
(10)上記ではヘッド3自体は2つの軸回りでの回動動作であったが、ヘッド3自体を3軸回りで動かす構成としてもよい。
(11)ボディ2内のヘッド3の下部に球面状の部分を設け、その部分を曲面モータで2軸ないし3軸回りに動かすようにしてもよい。
(12)例えば曲面リニアモーターを使い、リニアモーターでヘッド3を浮上させ、左右上下回転を自在に動かすようにしてもよい。 個々の電磁石のON/OFF、S/N反転、磁力の強弱を制御するようにしてもよい。
(13)ヘッド3は、リンクまたは紐等で回転駆動するようにしてもよい。カム駆動としてもよい。球面関節制御、特に広角球面間接制御にてヘッド3を回転させるようにしてもよい。
(14)ヘリコプターのスタビライザー式で主翼の回転面=例えばヘッド3の一つの軸の回転方向(例えばヘッド3の直径面)としてもよい。頑丈なサーボホーンとロッドエンドボールエンドを使うとよい。よりスムースな動きにするために構造的に可能な限り長いサーボホーンを使うとよい。頭の直径面は金属部品の方がよい。ただし、色々な部品が詰め込まれるので円形にする必要は無い。サーボホーン、ロッドエンドボールエンド、直径面以外にサーボモータまたはステッピングモータの回転軸に力が掛かるので、回転軸をサポートする機構を設けると良い。胴体の凹球面と頭の凸球面の勘合を合わせるのは難しいので、胴体と頭を1~2mm離した方が良い。ヘリの構造であれば、頭の上下左右の傾きに加えて頭の回転も可能となる。
【0055】
本発明の範囲は,明細書に明示的に説明された構成や限定されるものではなく,本明細書に開示される本発明の様々な側面の組み合わせをも,その範囲に含むものである。本発明のうち,特許を受けようとする構成を,添付の特許請求の範囲に特定したが,現在の処は特許請求の範囲に特定されていない構成であっても,本明細書に開示される構成を、将来的に特許請求の範囲とする意思を有する。
本願発明は上述した実施の形態に記載の構成に限定されない。上述した各実施の形態や変形例の構成要素は任意に選択して組み合わせて構成するとよい。また各実施の形態や変形例の任意の構成要素と,発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素または発明を解決するための手段に記載の任意の構成要素を具体化した構成要素とは任意に組み合わせて構成するとよい。これらについても本願の補正または分割出願等において権利取得する意思を有する。また「~の場合」「~のとき」という記載があったとしてもその場合やそのときに限られる構成として記載はしているものではない。これらの場合やときでない構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。また順番を伴った記載になっている箇所もこの順番に限らない。一部の箇所を削除したり、順番を入れ替え
た構成についても開示しているものであり、権利取得する意思を有する。
また,意匠出願への変更出願により,全体意匠または部分意匠について権利取得する意思を有する。図面は本装置の全体を実線で描画しているが,全体意匠のみならず当該装置の一部の部分に対して請求する部分意匠も包含した図面である。例えば当該装置の一部の部材を部分意匠とすることはもちろんのこと,部材と関係なく当該装置の一部の部分を部分意匠として包含した図面である。当該装置の一部の部分としては,装置の一部の部材としても良いし,その部材の部分としても良い。全体意匠はもちろんのこと,図面の実線部分のうち任意の部分を破線部分とした部分意匠を,権利化する意思を有する。
【符号の説明】
【0056】
1…装置としてのロボット、62…顔部としての画面部。